【解決手段】人物検知方法は、間欠的に送信される複数のチャープ信号を含むFMCW変調した送信波を送信する送信ステップと、反射波を受信する受信ステップと、反射波に対応する受信信号を直交位相検波したときのIチャネルの信号をI信号として、I信号を含む第1入力信号を取得する検波ステップと、一つのチャープ信号に対応する第1入力信号を高速フーリエ変換することによって第1周波数成分を算出する変換ステップと、第1入力信号より前に取得したI信号を含む第2入力信号を高速フーリエ変換することによって算出された周波数成分に係る第2周波数成分と、第1周波数成分との差分の大きさを算出する差分演算ステップと、差分の大きさに係る閾値を生成する閾値生成ステップと、差分の大きさと閾値とを比較することで、人物の在否を検知する検知ステップとを含む。
前記検知ステップにおいて、前記差分の大きさが前記閾値より大きい場合に、前記人物が居ると判定し、前記差分の大きさが前記閾値以下である場合に、前記人物が居ないと判定する
請求項1に記載の人物検知方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された人物検知装置においては、人物の画像が記録されるため、人物のプライバシーを保護すべき用途には適していない。また、特許文献1に記載された人物検知装置では、常時撮影を行う必要があるため、電力消費量を抑制できない。このため、人物検知装置の電力源としてバッテリーを用いる場合に、長時間使用することができなくなる。
【0006】
そこで、本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、プライバシーを保護でき、かつ、電力消費量を抑制できる人物検知方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る人物検知方法は、間欠的に送信される複数のチャープ信号を含むFMCW変調した送信波を送信する送信ステップと、前記送信波が、前記送信波の伝搬経路に配置される物体において反射することによって生成される反射波を受信する受信ステップと、受信した前記反射波に対応する受信信号を直交位相検波したときのIチャネル及びQチャネルの信号をそれぞれI信号及びQ信号として、少なくとも1つの前記I信号を含む第1入力信号を取得する検波ステップと、前記複数のチャープ信号のうち、一つのチャープ信号に対応する前記第1入力信号を高速フーリエ変換することによって第1周波数成分を算出する変換ステップと、前記第1入力信号より前に取得した少なくとも一つの前記I信号を含む第2入力信号を高速フーリエ変換することによって算出された周波数成分に係る第2周波数成分と、前記第1周波数成分との差分の大きさを算出する差分演算ステップと、前記差分の大きさを所定の期間蓄え、前記第1周波数成分の変動を判定するための前記差分の大きさに係る閾値を生成する閾値生成ステップと、前記差分の大きさと前記閾値とを比較することで、前記伝搬経路における人物の在否を検知する検知ステップとを含む。
【0008】
ここで、前記検知ステップにおいて、前記差分の大きさが前記閾値より大きい場合に、前記人物が居ると判定し、前記差分の大きさが前記閾値以下である場合に、前記人物が居ないと判定してもよい。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る人物検知装置は、間欠的に送信される複数のチャープ信号を含むFMCW変調した送信波を送信する送信アンテナと、前記送信波が、前記送信波の伝搬経路に配置される物体において反射することによって生成される反射波を受信する受信アンテナと、受信した前記反射波に対応する受信信号を直交位相検波したときのIチャネル及びQチャネルの信号をそれぞれI信号及びQ信号として、少なくとも1つの前記I信号を含む第1入力信号を取得する検波回路と、前記複数のチャープ信号のうち、一つのチャープ信号に対応する前記第1入力信号を高速フーリエ変換することによって第1周波数成分を算出する変換回路と、前記第1入力信号より前に取得した少なくとも一つの前記I信号を含む第2入力信号を、高速フーリエ変換することによって算出された第2周波数成分と、前記第1周波数成分との差分の大きさを算出する差分演算回路と、前記差分の大きさを所定の期間蓄え、前記第1周波数成分の変動を判定するための前記差分の大きさに係る閾値を生成する閾値生成回路と、前記差分の大きさと前記閾値とを比較することで、前記伝搬経路における人物の在否を検知する比較回路とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示により、プライバシーを保護でき、かつ、電力消費量を抑制できる人物検知方法等を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0013】
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0014】
(実施の形態)
実施の形態に係る人物検知方法及び人物検知装置について説明する。
【0015】
[人物検知装置の構成]
まず、本実施の形態に係る人物検知装置の構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本実施の形態に係る人物検知装置10の機能構成を示すブロック図である。
図2は、本実施の形態に係る人物検知装置10の判定回路20の機能構成を示すブロック図である。
図2には、判定回路20に加えて、送信アンテナ21及び受信アンテナ22も記載されている。
【0016】
人物検知装置10は、所定の検知領域における人物の在否を検知する装置である。
図1に示されるように、本実施の形態に係る人物検知装置10は、通信モジュール12と、制御回路14と、判定回路20と、送信アンテナ21と、受信アンテナ22とを備える。
【0017】
通信モジュール12は、人物検知装置10の検知結果を示す信号を送信するモジュールである。通信モジュール12は、他の信号を送受信してもよい。通信モジュール12は、検知結果を他の回路に伝送する単なる線(電線)であってもよい。また検知結果を人物検知装置10内でのみ使う場合は、通信モジュール12は無くてもよい。
【0018】
制御回路14は、通信モジュール12及び判定回路20を制御する回路である。具体的には、判定回路20を制御することで、人物の在否を検知し、検知した情報を通信モジュールを用いて送信する。制御回路14は、例えば、プロセッサと、当該プロセッサによって実行されるプログラムが記録されたメモリとを備えるマイコンなどを用いて実現できる。
【0019】
送信アンテナ21は、間欠的に送信される複数のチャープ信号を含むFMCW((Frequency-Modulated Continuous Wave)変調した送信波を送信するアンテナである。送信アンテナ21は、判定回路20に接続され、判定回路20から出力された送信波を送信する。送信アンテナ21から送信される送信波の伝搬領域が、人物検知装置10の検知領域に相当する。又は、後述のように高速フーリエ変換することによって周波数成分が算出されるが、その中の特定の周波数範囲にあたる周波数成分だけを用いることにより検知領域を限定してもよい。
【0020】
受信アンテナ22は、送信アンテナ21によって送信された送信波が、当該送信波の伝搬経路に配置される物体において反射することによって生成される反射波を受信するアンテナである。受信アンテナ22は、判定回路20に接続され、受信した反射波を判定回路20に出力する。
【0021】
判定回路20は、人物の有無を判定する回路である。
図2に示されるように、判定回路20は、検波回路26と、変換回路28と、差分演算回路32と、閾値生成回路34と、比較回路36とを有する。本実施の形態では、判定回路20は、送信波生成回路24と、メモリ30とをさらに有する。
【0022】
送信波生成回路24は、FMCW変調した送信波を生成する回路である。本実施の形態では、送信波生成回路24は、間欠的に送信される複数のチャープ信号を含む送信波を生成する。ここで、送信波生成回路24が生成する送信波について
図3を用いて説明する。
図3は、本実施の形態に係るFMCW変調した送信波の周波数と時間との関係を示すグラフである。
【0023】
図3に示されるように、本実施の形態に係る送信波は、間欠的に送信される複数のチャープ信号を含む。
図3に示される例では、送信波は、256μsにわたって連続するチャープ信号である第1チャープ及び第2チャープを含む。これらの複数のチャープ信号が250ms毎に送信される。つまり、250msのうち、256μsの間だけ信号が送信され、その他の期間には、信号が送信されない。また、各チャープ信号の周波数は、時間に応じて徐々に変化する。
図3に示される例では、チャープ信号の周波数帯は、24GHz対であり、24.06GHzから24.24GHzまで時間に応じて一定の変化率で連続的に変化する。
【0024】
検波回路26は、受信した反射波に対応する受信信号を直交位相検波したときのIチャネル及びQチャネルの信号をそれぞれI信号及びQ信号として、少なくとも1つのI信号を含む第1入力信号を取得する回路である。第1入力信号には、Q信号が含まれてもよいし、複数のI信号及び複数のQ信号が含まれてもよい。また、人物検知装置10が複数の受信アンテナ22を備える場合には、複数の受信アンテナ22のうち、少なくとも一つの受信アンテナ22からのI信号及びQ信号が選択されて、第1入力信号に含まれてもよい。
【0025】
変換回路28は、複数のチャープ信号のうち、一つのチャープ信号に対応する第1入力信号を高速フーリエ変換することによって第1周波数成分を算出する回路である。変換回路28は、第1入力信号に含まれるすべてのI信号及びQ信号に対して実行される。第1周波数成分には、チャープ信号に含まれる複数の周波数成分が含まれてもよい。第1周波数成分は、高速フーリエ変換が出力することができる全ての周波数成分のうち、特定の周波数範囲にあたるものとしてもよい。周波数範囲は検知距離範囲に相当するため、検知領域を限定することができる。
【0026】
差分演算回路32は、第1入力信号より前に取得した少なくとも一つのI信号を含む第2入力信号を、高速フーリエ変換することによって算出された周波数成分に係る第2周波数成分と、第1周波数成分との差分の大きさを算出する回路である。差分は複素数であるため、大きさは差分の絶対値の2乗とすると、乗算と加算だけで算出できる。ただし、差分の大きさは、2乗に限定する必要はなく、差分の絶対値としてもよい。本実施の形態では、第2周波数成分は、第1入力信号より前に取得した少なくとも一つのI信号を含む第2入力信号を高速フーリエ変換することによって算出された周波数成分である。なお、第2周波数成分の構成はこれに限定されない。例えば、第2周波数成分は、複数の第2入力信号の各々を高速フーリエ変換することによって得られる複数組の周波数成分の平均値であってもよい。また、差分演算回路32の出力信号である第2周波数成分には、スムージング処理が施されてもよい。
【0027】
閾値生成回路34は、差分演算回路32で算出された差分の大きさを所定の期間蓄え、第1周波数成分の変動を判定するための差分の大きさに係る閾値を生成する回路である。閾値生成回路34は、人物が不在である場合に差分演算回路32にて算出される差分の大きさに基づいて閾値を生成する。例えば、閾値は、人物が不在である場合に差分演算回路32にて算出される差分の大きさを複数用いて算出された平均値に所定の値(マージン)を加算又は乗算した値であってもよい。閾値生成回路34における閾値生成方法は特に限定されないが、閾値は、随時更新されてもよい。これにより、人物検知装置10が置かれる環境などの変化に応じて適切な閾値を随時生成できる。例えば、人物検知装置10の検知領域内に壁などの送信波を反射する物体が存在する環境においては、当該物体を人物と誤検知する場合があり得る。本実施の形態に係る閾値生成回路によれば、当該物体で反射した反射波に対応する閾値として大きい値を設定することで、当該物体を人物と誤検知することを抑制できる。
【0028】
また、閾値生成回路34は、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタで構成されてもよい。IIRフィルタによって、差分の大きさをフィルタリングすることによって、差分の大きさに係る信号を出力し続けることができる。このため、メモリなどにより差分の大きさの値を一時的に蓄積する必要がなくなる。したがって、閾値生成回路34の構成を簡素化できる。なお、閾値生成回路34は、CFAR(Constant False Alarm Rate)手法を用いて構成されてもよい。
【0029】
比較回路36は、差分演算回路32によって算出された差分の大きさと、閾値生成回路34によって生成された閾値とを比較することで、送信波の伝搬経路における人物の在否を検知する回路である。比較回路36は、差分の大きさが閾値より大きい場合に、人物が居ると判定し、差分の大きさが閾値以下である場合に、人物が居ないと判定する。比較回路36は、判定結果を示す信号を制御回路14に出力する。
【0030】
メモリ30は、変換回路28が第2入力信号を高速フーリエ変換することによって算出した第2周波数成分を記憶する記憶部である。第2入力信号は、第1入力信号より前に取得した少なくとも一つのI信号を含む信号である。第2周波数成分は、変換回路28が出力する第1周波数成分のうち、最新の第1周波数成分以外の周波数成分に相当する。メモリ30は、変換回路28が出力した第1周波数成分を、少なくとも当該第1周波数成分が最新でなくなるまで記憶する。メモリ30は、所定の期間にわたって第1周波数成分及び第2周波数成分を記憶してもよいし、所定の容量の範囲内において第1周波数成分及び第2周波数成分を記憶し、最も古い第2周波数成分から順に削除してもよい。
【0031】
[人物検知方法]
次に、本実施の形態に係る人物検知方法について
図4を用いて説明する。
図4は、本実施の形態に係る人物検知方法を示すフローチャートである。
【0032】
図4に示されるように、本実施の形態に係る人物検知方法において、まず、送信アンテナ21は、送信波生成回路24によって生成された間欠的に送信される複数のチャープ信号を含むFMCW変調した送信波を送信する(S12)。
【0033】
続いて、受信アンテナ22は、送信アンテナ21によって送信された送信波が、送信波の伝搬経路に配置される物体において反射することによって生成される反射波を受信する(S14)。
【0034】
続いて、検波回路26は、受信した反射波に対応する受信信号を直交位相検波したときのIチャネル及びQチャネルの信号をそれぞれI信号及びQ信号として、少なくとも1つのI信号を含む第1入力信号を取得する(S16)。
【0035】
続いて、変換回路28は、複数のチャープ信号のうち、一つのチャープ信号に対応する第1入力信号を高速フーリエ変換することによって第1周波数成分を算出する(S18)。
【0036】
続いて、差分演算回路32は、第1入力信号より前に取得した少なくとも一つのI信号を含む第2入力信号を高速フーリエ変換することによって算出された周波数成分に係る第2周波数成分と、第1周波数成分との差分の大きさを算出する(S20)。本実施の形態では、差分演算回路32は、メモリ30が記憶する第2周波数成分と、変換回路28が出力する第1周波数成分との差分の大きさを算出する。
【0037】
続いて、閾値生成回路34は、差分演算回路32が算出した差分の大きさを所定の期間蓄え、第1周波数成分の変動を判定するための差分の大きさに係る閾値を生成する(S22)。
【0038】
続いて、比較回路36は、差分演算回路32が算出した差分の大きさと閾値生成回路34が生成した閾値とを比較することで、送信波の伝搬経路における人物の在否を判定する(S24)。比較回路36は、差分の大きさが閾値より大きいと判定した場合には、送信波の伝搬経路に人物が居ると判定する(S26)。一方、比較回路36は、差分の大きさが閾値以下と判定した場合には、送信波の伝搬経路に人物が居ないと判定する(S28)。比較回路36は、判定結果を示す信号を制御回路14に送信する。
【0039】
以上のように、本実施の形態に係る人物検知方法及び当該方法を用いる人物検知装置10によれば、24GHz帯の電波である送信波を用いて人物の在否のみを検知し、人物を特定しないため、プライバシーを保護できる。また、送信波は、間欠的に送信される複数のチャープ信号を含めばよいため、連続的に送信される信号を含む場合より、人物検知に要する消費電力を削減できる。これにより、人物検知装置10の電力源としてバッテリーを使用することが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態に係る人物検知方法によれば、閾値を随時更新するため、人物検知装置10が置かれる環境が変化する場合にも、誤検知を低減できる。
【0041】
(変形例等)
以上、本開示に係る人物検知方法などについて、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本開示の範囲内に含まれる。
【0042】
また、本開示における各構成要素は、回路でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0043】
また、本開示における各処理をコンピュータが実行してもよい。例えば、コンピュータが、プロセッサ(CPU)、メモリ及び入出力回路等のハードウェア資源を用いてプログラムを実行することによって、本開示における各処理を実行する。具体的には、プロセッサが処理対象のデータをメモリ又は入出力回路等から取得してデータを演算したり、演算結果をメモリ又は入出力回路等に出力したりすることによって、各処理を実行する。
【0044】
また、本開示における各処理を実行するためのプログラムが、コンピュータ読み取り可能なCD−ROM等の非一時的な記録媒体に記録されてもよい。この場合、コンピュータが、非一時的な記録媒体からプログラムを読み出して、プログラムを実行することにより、各処理を実行する。