【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
を出力する電気光学周波数変換部30と、校正信号を電気光学周波数変換部に与えて得られる位相差特性と、校正信号をミリ波帯信号測定回路に与えて得られる位相差特性とに基づいて該測定回路の位相特性を校正する校正処理部40とを備える。中間周波信号E
前記発生部(10)は、第1の連続波信号を発生する第1のCW信号発生器(11)と、前記第1の連続波信号の周波数の間隔で複数の光スペクトル成分を有する光コムを発生する光コム発生器(12)と、前記光コム発生器からの出力光を2つに分岐する光分岐器(13)と、前記光分岐器の一方及び他方の出力光から互いに異なる光スペクトル成分をそれぞれ抽出する第1の光バンドパスフィルタ(14)及び第2の光バンドパスフィルタ(15)と、第2の連続波信号を発生する第2のCW信号発生器(16)と、前記第2の光バンドパスフィルタの出力光に対して前記第2の連続波信号で振幅変調又は位相変調をかけて前記第2の連続波信号の周波数の間隔で複数の側帯波を発生させる光変調器(17)と、前記第1の光バンドパスフィルタの出力光と前記光変調器の出力光とを合波する光合波器(18)と、を有することを特徴とする請求項1に記載の位相特性校正装置。
前記第1のCW信号発生器、前記第2のCW信号発生器、及び前記生成部は、共通の基準周波数に同期した周波数の前記第1の連続波信号、前記第2の連続波信号、及び前記校正信号をそれぞれ生成し、前記中間周波信号の3波以上の連続波の周波数は、それぞれ前記基準周波数に同期していることを特徴とする請求項2に記載の位相特性校正装置。
前記周波数変換部と前記校正部との間に、前記中間周波信号の3波以上の連続波を増幅して周波数変換を行ない第2中間周波数帯の3波以上の連続波が合成された第2中間周波信号(EIF2)を出力する第2周波数変換部(60)を更に有し、前記校正部は、前記中間周波信号の代わりに、前記第2周波数変換部から出力される前記第2中間周波信号の3波以上の連続波の間の位相差を算出し、前記第2中間周波信号の3波以上の連続波のいずれの周波数も、前記中間周波信号の3波以上の連続波のいずれの周波数よりも低くなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の位相特性校正装置。
前記第2周波数変換部は、前記第2中間周波信号の同相成分と直交成分とを出力する直交周波数変換器(60A)であることを特徴とする請求項4に記載の位相特性校正装置。
前記周波数変換部と前記校正部との間に、前記中間周波信号の3波以上の連続波を増幅して周波数変換を行ない第2中間周波数帯の3波以上の連続波が合成された第2中間周波信号(EIF2)を出力する第2周波数変換部(60)を更に有し、前記校正部は、前記中間周波信号の代わりに、前記第2周波数変換部から出力される前記第2中間周波信号の3波以上の連続波の間の位相差を算出し、前記第2中間周波信号の3波以上の連続波のいずれの周波数も、前記中間周波信号の3波以上の連続波のいずれの周波数よりも低くなるように設定されていることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれか1項に記載の位相特性校正装置。
前記第2周波数変換部は、前記第2中間周波信号の同相成分と直交成分とを出力する直交周波数変換器(60A)であることを特徴とする請求項6に記載の位相特性校正装置。
前記第1のCW信号発生器、前記第2のCW信号発生器、及び前記生成部は、共通の基準周波数に同期した周波数の前記第1の連続波信号、前記第2の連続波信号、及び前記校正信号をそれぞれ生成し、前記第2周波数変換部は、前記基準周波数に同期した局発信号に基づいて周波数変換を行ない、前記第2中間周波信号の3波以上の連続波の周波数は、それぞれ前記基準周波数に同期していることを特徴とする請求項6又は請求項7のいずれか1項に記載の位相特性校正装置。
【背景技術】
【0002】
無線通信の伝送速度を向上させるために、従来よりもキャリア周波数が高いミリ波帯やサブミリ波帯やテラヘルツ波帯において、広帯域の変調信号を使用する通信方式が検討されている。以下の説明では、ミリ波帯やサブミリ波帯やテラヘルツ波帯などを総称してミリ波帯という。
【0003】
周波数利用効率の高い多値直交振幅変調方式では、小さな位相誤差が伝送特性の劣化をもたらすため、広帯域変調信号の位相誤差を精度良く測定することが求められている。一般に、ミリ波帯で使用される広帯域信号測定回路では、同測定回路内の周波数変換部の位相特性が無視できないため、広帯域信号測定回路の位相特性を校正することが重要となる。
【0004】
図10は、関連技術として位相特性校正システムの構成例1を示す(例えば、非特許文献1参照)。この位相特性校正システム100は、ミリ波帯信号測定部150の位相特性(位相の周波数特性)を校正するものであり、短パルス光源111と、光可変遅延器113と、同期処理部115と、校正信号生成部120と、電気光学周波数変換部130と、位相差算出部140とを備えている。
【0005】
短パルス光源111により所定の繰返し周波数で出力された短パルス光P
10は、光分岐器112を介して光可変遅延器113に送られ、光可変遅延器113で遅延されて電気光学周波数変換部130の偏波分離器132に送られる。光可変遅延器113は、ミラー113aの位置を機械的に移動させることにより光の遅延時間を変えるようになっている。
【0006】
一方、校正信号生成部120では、中間周波信号発生器121により発生された中間周波信号と、局発信号発生器122により発生されたCW(Continuous Wave)の局発信号とが、周波数変換器123に入力され、中間周波信号がミリ波帯に周波数変換(アップコンバート)されて校正信号E
rとしてホーンアンテナ124から電気光学結晶131に出力される。その際、中間周波信号と局発信号は、同期処理部115により、短パルス光源111の繰返し周波数に同期され、これにより、短パルス光源111の繰返し周波数に同期したミリ波帯の校正信号E
rが得られる。
【0007】
具体的には、位相同期ループ(PLL)回路を用いて、短パルス光源111の繰返し周波数の整数倍のサンプリングクロックを中間周波信号発生器121のD/A変換器に与えると共に、局発信号の周波数が短パルス光源111の繰返し周波数の整数倍になるように局発信号発生器122の基準周波数を制御する。中間周波信号の周波数が短パルス光源111の繰返し周波数の整数倍になるようにD/A変換器に与えるディジタルデータの周期を適切に設定することにより、校正信号の周波数が短パルス光源111の繰返し周波数の整数倍、即ち短パルス光源111の繰返し周期が校正信号の周期の整数倍となる。
【0008】
電気光学周波数変換部130では、校正信号E
rの電界が電気光学結晶131に印加されると共に、光可変遅延器113からの短パルス光P
11が偏波分離器132を介して電気光学結晶131に入力され、電気光学結晶131の先端で反射した短パルス光が偏波分離器132を介して受光器133に入力される(例えば、非特許文献2参照)。具体的には、電気光学結晶131に電界が印加されると電気光学効果によって電気光学結晶131からの反射光の偏波が変化し、偏波分離器132と受光器133によって反射光の偏波の変化を検出するようになっている。
【0009】
受光器133から出力される電気信号は、電気光学結晶131に印加される電界に比例すると共に電気光学結晶131からの反射光の光パワーにも比例する。従って、校正信号E
rの電界と短パルス光P
11の光パワーの積に比例した電気信号が出力され、低速の受光器133は低周波成分のみを検出するため、電気光学周波数変換部130は、ミリ波帯の校正信号E
rを低周波の電気信号E
10に周波数変換(ダウンコンバート)するミキサと同様の機能を有する。
【0010】
短パルス光P
11のパルス幅を校正信号E
rの最大周波数の逆数よりも十分短くすると、電気光学周波数変換部130から出力される電気信号E
10は、校正信号E
rを短パルス光P
11の繰返し周期でサンプリングしたものになる。短パルス光源111の繰返し周期が校正信号E
rの周期の整数倍であるため、校正信号E
rの繰返し波形の特定の点を繰返しサンプリングすることになる。光可変遅延器113の遅延時間を変えることにより、校正信号E
rを短パルス光P
11でサンプリングする時刻が変わるので、光可変遅延器113の遅延時間を変えながら電気光学周波数変換部130から出力される電気信号E
10を記録すると、低速の受光器133でミリ波帯の校正信号E
rの時間波形を測定することができる。校正信号E
rの時間波形に対し、位相差算出部140においてフーリエ変換等の信号処理が行われることで、周波数領域に変換され、位相特性が算出される。
【0011】
ミリ波帯信号測定部150は、CWの局発信号を発生する局発信号発生器152と、ミキサなどの周波数変換器151と、A/D変換器などの中間周波信号測定器153と、位相補正器154とを備え、ミリ波帯の校正信号E
r又は被測定信号を中間周波信号に周波数変換(ダウンコンバート)してディジタル信号に変換する。このディジタル信号を解析することによりエラーベクトル振幅(Error Vector Magnitude;EVM)などの測定結果を得ることができる。
【0012】
校正信号生成部120で生成された校正信号E
rは、ミリ波帯信号測定部150に送られて周波数変換器151に入力されると共に、局発信号発生器152により生成されたCWの局発信号が周波数変換器151に入力される。校正信号E
rは、周波数変換器151により中間周波信号に周波数変換(ダウンコンバート)された後、中間周波信号測定器153によりディジタル信号に変換される。このディジタル信号に対し、位相差算出部140においてフーリエ変換等の信号処理が行われることで、周波数領域に変換され、位相特性が算出される。
【0013】
上述のようにして電気光学周波数変換部130により測定した校正信号の位相特性と、校正信号をミリ波帯信号測定部150に入力して中間周波信号測定器153から出力されるディジタル信号の位相特性とに基づいて、ミリ波帯信号測定部150自体が有する位相特性が算出され、位相補正値として位相補正器154に設定される。被測定信号をミリ波帯信号測定部150で測定する場合には、位相補正器154によりミリ波帯信号測定部150の位相特性が補正されて測定結果として出力される。
【0014】
次に、ミリ波帯信号測定部150の振幅及び位相の周波数特性を校正する方法をさらに詳しく説明する。校正信号の周波数特性(位相を含む複素数)をX
c(f)、ミリ波帯信号測定部150の周波数特性(位相を含む複素数)をG(f)、校正信号をミリ波帯信号測定部150に入力した時の中間周波信号測定器153からの出力信号の周波数特性(位相を含む複素数)をY
c(f)とする。前述のように校正信号を電気光学周波数変換部130に入力して測定した校正信号の時間波形からX
c(f)が求まり、校正信号をミリ波帯信号測定部150に入力して周波数変換された中間周波信号の波形からY
c(f)が求まり、次式(1)よりG(f)を求めることができる。
【0015】
【数1】
ここで、f
LOはミリ波帯信号測定部150の局発信号の周波数である。
【0016】
被測定信号の周波数特性(位相を含む複素数)をX(f)、被測定信号をミリ波帯信号測定部150に入力した時の中間周波信号測定器153からの出力信号の周波数特性(位相を含む複素数)をY(f)とすると、次式(2)よりミリ波帯信号測定部150の周波数特性が補正されたX(f)を測定結果として求めることができる。
【0017】
【数2】
【0018】
図11は、関連技術として別の位相特性校正システムの構成例2を示す(例えば、非特許文献3参照)。この位相特性校正システム200は、上記構成例1の短パルス光源111及び光可変遅延器113の代わりに2トーン光源211が使用されている点、電気光学周波数変換部230において偏波分離器132の代わりに光サーキュレータ232等が使用されている点、及び校正信号生成部220に同期処理部115が接続されていない点を除いて、前述の位相特性校正システム100の構成例1と同じである。
【0019】
次に、位相特性校正システム200における周波数変換の原理を説明する。
図12は、
図11の位相特性校正システム200の動作をスペクトルにより示す説明図である。
図12(a)は、2トーン光源211から出力される出力光(2トーン光P
20)の周波数成分を示し、
図12(b)は、校正信号生成部220から出力される校正信号E
rの周波数成分を示し、
図12(c)は、光サーキュレータ232から光バンドパスフィルタ233に入力される光信号P
21の周波数成分を示し、
図12(d)は、受光器234から出力される電気信号E
20の周波数成分を示している。
【0020】
図12(a)に示すように、2トーン光源211は、光周波数f
1及びf
2の2つの光(2トーン光P
20)を同一偏波で出力し、このとき2つの光周波数の差をf
L=f
2−f
1とする。2トーン光源211から出力される2トーン光P
20は、光サーキュレータ232を介して電気光学結晶231に入力され、電気光学結晶231で反射した光が光サーキュレータ232を介して光バンドパスフィルタ233に入力される。一方、
図12(b)に示すように、校正信号生成部220では、キャリア周波数f
c、周波数間隔f
mのマルチトーン信号である校正信号E
rが生成され、ホーンアンテナ224を介して電気光学結晶231に送られる。
【0021】
校正信号生成部220からのマルチトーン信号の電界を電気光学結晶231に印加すると、電気光学結晶231で反射した光信号P
21には
図12(c)に示すように、側帯波が発生する。2トーン光P
20の光周波数差f
Lと校正信号E
rのキャリア周波数f
cの関係をf
L=f
c+f
IFとし、光周波数f
2付近の光を光バンドパスフィルタ233で抽出して受光器234に入力すると、光周波数f
2の光とf
2付近の側帯波との間のビートが発生し、
図12(d)に示すように、中心周波数がf
IFで周波数間隔がf
mの電気信号(中間周波信号E
20)が得られる。
【0022】
ここで、周波数間隔f
mの側帯波間のビートは無視しているが、f
IFとf
mの関係を適切に設定すると容易にバンドパスフィルタで側帯波間のビート成分を除去することができる。以上述べたようにして、キャリア周波数f
cの校正信号E
rが、中心周波数がf
IFの中間周波信号E
20に周波数変換される。
【0023】
上記の周波数変換ではマルチトーン間の位相関係が保たれるため、中間周波数f
IFをA/D変換可能な周波数帯に設定し、位相差算出部240にて中間周波信号E
20をA/D変換してマルチトーン間の位相差を算出することができる。そして、前述の関連技術の構成例1と同様に、校正信号を電気光学周波数変換部230に入力して測定した位相特性と、校正信号をミリ波帯信号測定部250に入力して測定した位相特性とから、位相補正値を求めてミリ波帯信号測定部250の位相補正器254に設定し、測定時には、被測定信号をミリ波帯信号測定部250に入力して位相特性が校正された測定結果を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
しかしながら、
図10の位相特性校正システムにあっては、校正信号の時間波形を得るために光可変遅延器113を掃引する必要がある。光可変遅延器113には機械的可動部が存在しており、機械的振動の影響を受ける、動作速度が限られる、寿命が短いといった問題があった。特に、位相校正の周波数分解能を良くするためには、時間波形の時間スパンを長くする、即ち光可変遅延器113の遅延時間を長くする必要があり、そうすると光可変遅延器113の物理的寸法が大きくなるという問題があった。また、電気光学周波数変換部130の変換効率を上げるためには短パルス光の光パワーを大きくする必要があるが、短パルスなのでピークパワーが非常に大きくなり、光ファイバ等の非線形効果によってパルス波形が変形し、電気光学周波数変換部130の変換特性が変化するという問題があった。
【0026】
図11の位相特性校正システムにあっては、光可変遅延器や短パルス光の問題は発生しないものの、電気光学周波数変換部230では校正信号がダウンコンバートされて全体的に周波数がシフトするだけなので、校正信号の3波の連続波の周波数間隔は周波数変換後も変わらず、比較的広い周波数間隔のスペクトル成分の位相差を算出する必要がある。このため、受光器234やそれ以降の電気回路の位相の周波数依存性の影響を受け、位相測定精度が悪化する問題があった。また、比較的広い帯域の受光器234や位相差算出部240内のA/D変換器が必要になり、A/D変換のサンプリング周波数が高くなりデータ量が多くなることから位相差算出の演算量も多くなり、装置が高価になるという問題があった。
【0027】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、ミリ波帯信号測定回路の位相特性を精度良く校正することができる安価な位相特性校正装置及び位相特性校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の請求項1に係る位相特性校正装置は、上記目的達成のため、測定回路(50)の位相特性を校正する位相特性校正装置(1)であって、互いに異なる周波数の3波以上の連続波が合成された校正信号(E
r)を生成する生成部(20)と、互いに異なる周波数の3波以上の連続光が合成された第1の光と、前記第1の光の3波以上の連続光のいずれの周波数よりも小さいか又は大きい周波数の連続光である第2の光とが合成された局発光(P
L)を発生する発生部(10)と、前記局発光を用いて電気光学効果により前記校正信号を周波数変換して中間周波数帯の3波以上の連続波が合成された中間周波信号(E
IF)を出力する周波数変換部(30)と、前記校正信号の3波以上の連続波の周波数を所定の周波数帯域内で変更する周波数変更部(70)と、前記周波数変更部による周波数変更毎に、変更される周波数の値に応じて前記第1の光と前記第2の光との周波数間隔を変更させ、前記中間周波信号の3波以上の連続波の間の位相差を算出していき、前記所定の周波数帯域全体に渡る第1の位相差特性を取得すると共に、前記周波数変更部による周波数変更毎に、前記測定回路を用いて前記校正信号を測定して前記測定回路から出力される3波以上の連続波の間の位相差を算出していき、前記所定の周波数帯域全体に渡る第2の位相差特性を取得し、取得した前記第1及び第2の位相差特性に基づいて、前記測定回路の位相特性を校正する校正部(40)と、を備え、前記中間周波信号の3波以上の連続波のいずれの周波数も、前記校正信号の3波以上の連続波のいずれの周波数よりも低く、かつ、前記校正信号の3波以上の連続波の周波数間隔と、前記第1の光の3波以上の連続光の周波数間隔とが異なり、かつ、前記中間周波信号の3波以上の連続波の周波数間隔が、前記校正信号の3波以上の連続波の周波数間隔よりも狭くなるように、前記校正信号及び前記局発光の前記各周波数が設定されることを特徴とする。
【0029】
この構成により、本発明の請求項1に係る位相特性校正装置は、
図10の構成例1に記載のような機械的可動部を有する光可変遅延器を使用していないので、機械的可動部に制約されることなく高い周波数分解能で位相特性の校正を行うことができる。また、
図10の構成例1のように短パルス光を用いていないので、短パルス光波形が変形して電気光学周波数変換部の変換特性が変化することもない。
【0030】
しかも、本発明の請求項1に係る位相特性校正装置は、中間周波信号の3波以上の連続波の周波数間隔が校正信号の3波以上の連続波の周波数間隔よりも狭くなるように設定されているので、従来よりも電気回路が扱う帯域を狭くできるので、低速のA/D変換器を用いて少ない演算量で校正信号の位相を高精度で測定可能となる。このため、装置価格を低減することもできる。
【0031】
本発明の請求項2に係る位相特性校正装置では、前記発生部(10)は、第1の連続波信号を発生する第1のCW信号発生器(11)と、前記第1の連続波信号の周波数の間隔で複数の光スペクトル成分を有する光コムを発生する光コム発生器(12)と、前記光コム発生器からの出力光を2つに分岐する光分岐器(13)と、前記光分岐器の一方及び他方の出力光から互いに異なる光スペクトル成分をそれぞれ抽出する第1の光バンドパスフィルタ(14)及び第2の光バンドパスフィルタ(15)と、第2の連続波信号を発生する第2のCW信号発生器(16)と、前記第2の光バンドパスフィルタの出力光に対して前記第2の連続波信号で振幅変調又は位相変調をかけて前記第2の連続波信号の周波数の間隔で複数の側帯波を発生させる光変調器(17)と、前記第1の光バンドパスフィルタの出力光と前記光変調器の出力光とを合波する光合波器(18)と、を有することを特徴とする。
【0032】
この構成により、本発明の請求項2に係る位相特性校正装置は、互いに異なる周波数の3波以上の連続光が合成された第1の光と、第1の光の3波以上の連続光のいずれの周波数よりも小さいか又は大きい周波数の連続光である第2の光とが合成された局発光を発生することができる。また、周波数変更部による周波数変更毎に、変更される周波数の値に応じて第1の光と第2の光との周波数間隔を連続的かつ広い範囲にわたって変更させることができる。
【0033】
本発明の請求項3に係る位相特性校正装置では、前記第1のCW信号発生器、前記第2のCW信号発生器、及び前記生成部は、共通の基準周波数に同期した周波数の前記第1の連続波信号、前記第2の連続波信号、及び前記校正信号をそれぞれ生成し、前記中間周波信号の3波以上の連続波の周波数は、それぞれ前記基準周波数に同期していることを特徴とする。
【0034】
この構成により、本発明の請求項3に係る位相特性校正装置は、周波数誤差なく中間周波数帯の3波以上の連続波が得られ、校正部において中間周波数帯の3波以上の連続波の間の位相差を容易に算出することができる。
【0035】
本発明の請求項4に係る位相特性校正装置は、前記周波数変換部と前記校正部との間に、前記中間周波信号の3波以上の連続波を増幅して周波数変換を行ない第2中間周波数帯の3波以上の連続波が合成された第2中間周波信号(E
IF2)を出力する第2周波数変換部(60)を更に有し、前記校正部は、前記中間周波信号の代わりに、前記第2周波数変換部から出力される前記第2中間周波信号の3波以上の連続波の間の位相差を算出し、前記第2中間周波信号の3波以上の連続波のいずれの周波数も、前記中間周波信号の3波以上の連続波のいずれの周波数よりも低くなるように設定されていることを特徴とする。
【0036】
この構成により、本発明の請求項4に係る位相特性校正装置は、第2周波数変換部を設けたことにより、中間周波数帯を電気回路の1/f雑音が小さくなる周波数に設定し、第2周波数変換部の増幅器で十分に増幅した後に、十分低い第2中間周波数帯に変換するようにできる。これにより、電気回路の1/f雑音を避けて高いS/N比を保ちつつ、校正部のA/D変換器等の帯域とサンプリング速度を低くして安価な装置を実現することができる。
【0037】
本発明の請求項5に係る位相特性校正装置では、前記第2周波数変換部は、前記第2中間周波信号の同相成分と直交成分とを出力する直交周波数変換器(60A)であることを特徴とする。
【0038】
この構成により、本発明の請求項5に係る位相特性校正装置は、第2周波数変換部による負の周波数成分の折り返しが発生しないようにすることができる。
【0039】
本発明の請求項6に係る位相特性校正装置は、前記周波数変換部と前記校正部との間に、前記中間周波信号の3波以上の連続波を増幅して周波数変換を行ない第2中間周波数帯の3波以上の連続波が合成された第2中間周波信号(E
IF2)を出力する第2周波数変換部(60)を更に有し、前記校正部は、前記中間周波信号の代わりに、前記第2周波数変換部から出力される前記第2中間周波信号の3波以上の連続波の間の位相差を算出し、前記第2中間周波信号の3波以上の連続波のいずれの周波数も、前記中間周波信号の3波以上の連続波のいずれの周波数よりも低くなるように設定されていることを特徴とする。
【0040】
この構成により、本発明の請求項6に係る位相特性校正装置は、第2周波数変換部を設けたことにより、中間周波数帯を電気回路の1/f雑音が小さくなる周波数に設定し、第2周波数変換部の増幅器で十分に増幅した後に、十分低い第2中間周波数帯に変換するようにできる。これにより、電気回路の1/f雑音を避けて高いS/N比を保ちつつ、校正部のA/D変換器等の帯域とサンプリング速度を低くして安価な装置を実現することができる。
【0041】
本発明の請求項7に係る位相特性校正装置では、前記第2周波数変換部は、前記第2中間周波信号の同相成分と直交成分とを出力する直交周波数変換器(60A)であることを特徴とする。
【0042】
この構成により、本発明の請求項7に係る位相特性校正装置は、第2周波数変換部による負の周波数成分の折り返しが発生しないようにすることができる。
【0043】
本発明の請求項8に係る位相特性校正装置では、前記第1のCW信号発生器、前記第2のCW信号発生器、及び前記生成部は、共通の基準周波数に同期した周波数の前記第1の連続波信号、前記第2の連続波信号、及び前記校正信号をそれぞれ生成し、前記第2周波数変換部は、前記基準周波数に同期した局発信号に基づいて周波数変換を行ない、前記第2中間周波信号の3波以上の連続波の周波数は、それぞれ前記基準周波数に同期していることを特徴とする。
【0044】
この構成により、本発明の請求項8に係る位相特性校正装置は、周波数誤差なく中間周波数帯の3波以上の連続波が得られ、校正部において中間周波数帯の3波以上の連続波の間の位相差を容易に算出することができる。
【0045】
本発明の請求項9に係る位相特性校正方法は、測定回路(50)の位相特性を校正する位相特性校正方法であって、互いに異なる周波数の3波以上の連続波が合成された校正信号(E
r)を生成する生成ステップと、互いに異なる周波数の3波以上の連続光が合成された第1の光と、前記第1の光の3波以上の連続光のいずれの周波数よりも小さいか又は大きい周波数の連続光である第2の光とが合成された局発光(P
L)を発生する発生ステップと、前記局発光を用いて電気光学効果により前記校正信号を周波数変換して中間周波数帯の3波以上の連続波が合成された中間周波信号(E
IF)を出力する周波数変換ステップと、前記校正信号の3波以上の連続波の周波数を所定の周波数帯域内で変更する周波数変更ステップと、前記周波数変更ステップによる周波数変更毎に、変更される周波数の値に応じて前記第1の光と前記第2の光との周波数間隔を変更させ、前記中間周波信号の3波以上の連続波の間の位相差を算出していき、前記所定の周波数帯域全体に渡る第1の位相差特性を取得すると共に、前記周波数変更ステップによる周波数変更毎に、前記測定回路を用いて前記校正信号を測定して前記測定回路から出力される3波以上の連続波の間の位相差を算出していき、前記所定の周波数帯域全体に渡る第2の位相差特性を取得し、取得した前記第1及び第2の位相差特性に基づいて、前記測定回路の位相特性を校正する校正ステップと、を備え、前記中間周波信号の3波以上の連続波のいずれの周波数も、前記校正信号の3波以上の連続波のいずれの周波数よりも低く、かつ、前記校正信号の3波以上の連続波の周波数間隔と、前記第1の光の3波以上の連続光の周波数間隔とが異なり、かつ、前記中間周波信号の3波以上の連続波の周波数間隔が、前記校正信号の3波以上の連続波の周波数間隔よりも狭くなるように、前記校正信号及び前記局発光の前記各周波数が設定されることを特徴とする。
【0046】
この構成により、本発明の請求項9に係る位相特性校正方法は、
図10の構成例1に記載のような機械的可動部を有する光可変遅延器を使用していないので、機械的可動部に制約されることなく高い周波数分解能で位相特性の校正を行うことができる。また、
図10の構成例1のように短パルス光を用いていないので、短パルス光波形が変形して電気光学周波数変換部の変換特性が変化することもない。
【0047】
しかも、本発明の請求項9に係る位相特性校正方法は、中間周波信号の3波以上の連続波の周波数間隔が校正信号の3波以上の連続波の周波数間隔よりも狭くなるように設定されているので、従来よりも電気回路が扱う帯域を狭くでき、低速のA/D変換器を用いて少ない演算量で校正信号の位相を高精度で測定可能となる。このため、装置価格を低減することもできる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、ミリ波帯信号測定回路の位相特性を精度良く校正することができる安価な位相特性校正装置及び位相特性校正方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0051】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る位相特性校正装置1の構成図である。
位相特性校正装置1は、校正対象の測定回路であるミリ波帯信号測定部50の所定の周波数帯域における位相特性を校正するものである。位相特性校正装置1は、局発光発生部10と、校正信号生成部20と、電気光学周波数変換部30と、校正処理部40と、周波数変更部70とを備えている。
【0052】
[局発光発生部]
まず、局発光発生部10について説明する。
局発光発生部10は、第1のCW信号発生器11と、光コム発生器12と、光分岐器13と、第1光バンドパスフィルタ(BPF)14と、第2光バンドパスフィルタ(BPF)15と、第2のCW信号発生器16と、光位相変調器17と、光合波器18とを備えている。局発光発生部10は、互いに異なる周波数の3波以上の連続光が合成された第1の光P
4と、第1の光の3波以上の連続光のいずれの周波数よりも小さいか又は大きい周波数の連続光である第2の光P
2とが合成された局発光P
Lを発生するようになっている。なお、局発光発生部10は、本発明の発生部に対応する。
【0053】
第1のCW信号発生器11は、周波数f
L1のCW信号(電気信号)E
1を出力するようになっている。
【0054】
光コム発生器12は、周波数f
L1のCW信号E
1を受け、
図2(a)に示すように光周波数f
0を中心として周波数間隔f
L1の多数の光スペクトル成分を有する光コムP
1を発生するようになっている。具体的には、光コム発生器12は、光周波数f
0のCW光源と、周波数f
L1のCW信号が入力される光位相変調器と、f
L1の整数分の1のフリースペクトルレンジのファブリペロー共振器と、を組み合わせたものでもよく、或いは、繰返し周波数f
L1の短パルス光を出力する中心光周波数f
0のモード同期レーザであってもよい。前者の場合には、ファブリペロー共振器のフィネスを高くすることにより、後者の場合には、短パルス光のパルス幅を狭くすることにより、光コムP
1のスペクトル幅を広くすることができる。
【0055】
光コム発生器12の出力側に、図示しない高非線形光ファイバなどの光パルス圧縮器を追加することにより、光コムP
1のスペクトル幅を更に広くすることも可能である。例えば、数10GHz間隔で数100GHz〜数THz幅の光コムP
1を発生することができる。
【0056】
光分岐器13は、光コム発生器12から出力される光コムP
1を2つに分岐し、第1光バンドパスフィルタ14及び第2光バンドパスフィルタ15にそれぞれ送られるようになっている。
【0057】
第1光バンドパスフィルタ14及び第2光バンドパスフィルタ15は、互いに異なる所定の光スペクトル成分をそれぞれ抽出するようになっている。抽出した光スペクトル成分の光周波数をそれぞれf
1,f
2とすると、周波数間隔は次式(3)により表される。
【数3】
上記式(3)において、光周波数が高い方をf
2としている(f
2>f
1)。nは整数である。
【0058】
後で詳述するように、所定の周波数帯域における校正信号の位相特性を求める際には、校正信号の周波数に応じて、2つの光スペクトル成分の周波数間隔f
2−f
1を変更するようにする。具体的には、第1のCW信号発生器11により発生されるCW信号E
1の周波数f
L1を変える、或いは第1光バンドパスフィルタ14又は第2光バンドパスフィルタ15で選択する光スペクトル成分を変えることでnを変えることにより、周波数間隔f
2−f
1を変えることができる。CW信号E
1の周波数f
L1は連続的に変えることができるが、広い周波数範囲を可変にすることは困難である。第1光バンドパスフィルタ14又は第2光バンドパスフィルタ15により選択する光スペクトル成分を変えてnを変えるようにすると、周波数間隔f
2−f
1を大きく変えることができるが、連続的に可変にすることはできない。よって、両者を組み合わせることにより、連続的かつ広い範囲にわたって周波数間隔f
2−f
1を変えることができる。
【0059】
ここで、第1及び第2光バンドパスフィルタ14及び15により抽出する光スペクトル成分は、光コムP
1の中心光周波数f
0から等間隔(f
2−f
0=f
0−f
1)、即ち振幅がほぼ等しい2つの光スペクトル成分となるようにしてもよい。或いは、後述の光位相変調器17の損失を考慮して、
図2(a)に示すように第2光バンドパスフィルタ15側の振幅が大きくなるように、中心光周波数f
0から近い光スペクトルを抽出する(f
2−f
0<f
0−f
1)ようにしてもよい。また、光分岐器13、第1及び第2光バンドパスフィルタ14及び15の代わりにアレイ導波路格子(Arrayed Waveguide Grating;AWG)を用いて、1つのデバイスで分岐と光スペクトル抽出を行なうようにしてもよい。第1及び第2光バンドパスフィルタ14、15からの出力光P
2、P
3の光スペクトルは
図2(b)に示すようになる。
【0060】
第2のCW信号発生器16は、周波数f
L2のCW信号(電気信号)E
2を光位相変調器17に出力する。
【0061】
光位相変調器17は、例えば、LiNbO
3結晶の電気光学効果を用いて、該結晶に電圧を印加することにより該結晶に入力される光の位相を変化させるものである。周波数f
L2のCW信号E
2を光位相変調器17に入力することにより、光周波数f
2の光スペクトル成分に位相変調をかけ、
図2(c)に示すように光周波数f
2を中心として周波数間隔f
L2の側帯波を発生させる。なお、光位相変調器17は本発明の光変調器に対応する。
【0062】
ここで、位相変調の変調度によって側帯波の振幅が変わり、例えば、光位相変調器17の入力電圧を0.913V
π(peak-to-peak)の正弦波とすると、光周波数f
2−f
L2,f
2,f
2+f
L2の3つの光スペクトル成分がほぼ同振幅となる。ここで、V
πは光位相変調器17において光の位相をπだけ変化させるのに必要な電圧値である。
【0063】
さらに、周波数f
L2の正弦波に加えて周波数2f
L2の正弦波を重畳して光位相変調器17に入力することにより、光周波数f
2−2f
L2,f
2−f
L2,f
2,f
2+f
L2,f
2+2f
L2の5つの光スペクトル成分をほぼ同振幅にすることもできる。
【0064】
また、光位相変調器17の代わりに、光強度変調器を用いて同様に周波数間隔f
L2の側帯波を発生させるようにしてもよい。例えば、マッハツェンダ型光強度変調器の入力電圧と出力光電界振幅がほぼ比例する領域を使用する、或いは入力電圧と出力光電界振幅の関係の非線形特性を補正することにより、線形の光変調を行なうことができる。
【0065】
例えば、直流成分と周波数f
L2の正弦波を光強度変調器に入力して光周波数f
2−f
L2,f
2,f
2+f
L2の3つの光スペクトル成分を生成したり、或いは直流成分と周波数f
L2及び周波数2f
L2の正弦波を光強度変調器に入力して光周波数f
2−2f
L2,f
2−f
L2,f
2,f
2+f
L2,f
2+2f
L2の5つの光スペクトル成分を生成するなど、様々な光スペクトル成分を生成することが可能である。光コムP
1の周波数間隔よりも光位相変調器17又はそれに代わる光強度変調器による光スペクトルの広がりの方が小さい場合は、第2光バンドパスフィルタ15と光位相変調器17又は光強度変調器の順序を逆にしてもよい。
【0066】
光合波器18は、第1光バンドパスフィルタ14の出力光P
2と、光位相変調器17の出力光P
4とを偏波を合わせて合波し、局発光P
Lとして出力するようになっている。局発光P
Lの光スペクトルは
図2(d)に示すようになる。なお、光位相変調器17の出力光P
4は、本発明の第1の光に対応し、第1光バンドパスフィルタ14の出力光P
2は、本発明の第2の光に対応する。
【0067】
局発光発生部10には、必要に応じて光パワーを調整する光減衰器や光増幅器を挿入してもよい。例えば、光周波数f
1と光周波数f
2の光スペクトル成分の強度比を調整するために、第1光バンドパスフィルタ14の光路又は第2光バンドパスフィルタ15の光路の少なくとも一方に可変光減衰器を挿入してもよい。また、局発光P
Lの光パワーを大きくするために、光合波器18の後に光ファイバ増幅器を挿入してもよい。
【0068】
[校正信号生成部]
次に、校正信号生成部20について説明する。
図1に示すように、校正信号生成部20は、中間周波信号発生器21と、局発信号発生器22と、周波数変換器23とを備えている。校正信号生成部20は、所定の周波数帯域内で互いに異なる周波数の3波以上の連続波が合成された校正信号E
rを生成するようになっている。具体的には、校正信号生成部20は、
図2(e)に示すように、周波数f
c−f
m,f
c,f
c+f
mの少なくとも3つのスペクトル成分を含むミリ波帯の電気信号(校正信号E
r)を出力する。なお、校正信号生成部20は本発明の生成部に対応する。
【0069】
中間周波信号発生器21は、D/A変換器を備え、周波数間隔f
mの少なくとも3つのスペクトル成分を含む中間周波信号E
3をD/A変換器で直接出力するようになっている。D/A変換器の代わりに、中間周波数のCW信号を発生する発振器と、周波数f
mのCW信号を発生する発振器と、ミキサとを用いて中間周波信号E
3を生成するようにしてもよい。
【0070】
局発信号発生器22は、CWの局発信号E
4を発生するようになっている。局発信号発生器22は、ミリ波帯の局発信号E
4を発生するために、周波数を整数倍に変換する周波数逓倍器を含んでいてもよい。
【0071】
周波数変換器23は、例えば、ミキサを備えており、局発信号発生器22が発生した局発信号E
4を用いて、中間周波信号E
3を周波数変換(アップコンバート)して、例えば、ホーンアンテナ24より校正信号E
rとして放射するようになっている。ホーンアンテナ24の代わりに導波管や同軸ケーブル・同軸コネクタを用いて電気光学周波数変換部30またはミリ波帯信号測定部50と接続するようにしてもよい。
図1の校正信号生成部20は、1回の周波数変換を行なう構成であるが、複数回の周波数変換を行なう構成であってもよい。
【0072】
中間周波信号発生器21及び局発信号発生器22は、例えば、10MHzの基準信号などを用いて、局発光発生部10の第1のCW信号発生器11及び第2のCW信号発生器16と周波数を同期させるようにしているが、必ずしも周波数を同期させる必要は無い。
【0073】
一般に、位相特性の測定では、校正信号として、位相特性校正が必要な周波数帯域をカバーする広帯域信号を用いて、1回で測定する方法や、位相特性校正が必要な周波数帯域を複数に分割し、それぞれ狭帯域信号を校正信号として用いて複数回の測定を行なって、必要な帯域の位相特性を得る方法がある。本実施形態は、後者の方法を用いるものであり、3波以上のマルチトーン信号(即ち、互いに異なる周波数の3波以上の連続波)を校正信号として用い、所定の周波数帯域内でマルチトーン信号の周波数を変えつつ、マルチトーン間の位相差を検出することにより該周波数帯域の位相特性を得るようにしたものである。但し、本発明は後者の方法に限られるものではなく、校正信号の連続波の波数および第1の光の連続光の波数を増やすことにより位相特性校正が必要な周波数帯域をカバーして前者の1回で測定する方法に適用することも可能である。
【0074】
一般に、比較的高速のD/A変換器やA/D変換器の時間原点を固定して動作させることは容易ではないが、後で詳述するように、3波以上のマルチトーン信号を用いて第1及び第2位相差算出器41、43において位相の2階差分を求めることにより、時間原点が不定、即ち絶対時間が不明の場合でも位相特性を得ることができる。
【0075】
[電気光学周波数変換部]
次に、電気光学周波数変換部30について説明する。
図1に示すように、電気光学周波数変換部30は、電気光学結晶31と、光分岐部32と、受光器33とを備えている。この電気光学周波数変換部30は、局発光発生部10からの局発光P
Lのビートをローカル信号として、校正信号生成部20からの校正信号E
rを電気光学効果により周波数変換(ダウンコンバート)して中間周波数帯の3波以上の連続波が合成された中間周波信号E
IFを出力するようになっている。なお、電気光学周波数変換部30は、本発明の周波数変換部に対応する。
【0076】
電気光学周波数変換部30は、校正信号E
rの電界を電気光学結晶31の所定の方位に印加すると共に、局発光P
Lを光分岐部32を介して電気光学結晶31に入力し、電気光学結晶31の先端で反射した局発光を光分岐部32を介して受光器33に入力する構成となっている。
【0077】
図4は、電気光学周波数変換部30の構成例を示す構成図である。この電気光学周波数変換部30'は、電気光学結晶31からの反射光の偏波の変化を検出する方式である。具体的には、電気光学周波数変換部30は、偏光ビームスプリッタ(PBS)32'と、1/2波長板(HWP)35と、1/4波長板(QWP)36と、電気光学結晶31と、受光器33と、を備えている。
【0078】
偏光ビームスプリッタ32'は、入力された直線偏波の局発光P
Lが透過するように、偏光ビームスプリッタ32'の方向が設定されている。1/2波長板35と1/4波長板36は、電気光学結晶31に電界を印加しない場合に電気光学結晶31からの反射光の光パワーの1/2が偏光ビームスプリッタ32'で反射して受光器33に入力され、かつ、電気光学結晶31に電界を印加した場合に受光器33に入力される光パワーの変化が最大となるように、1/2波長板35及び1/4波長板36の方向を調整することが望ましい。また、局発光の反射率を高くするために、電気光学結晶31の先端に誘電体反射膜34を付けることが望ましい。この構成により、電気光学結晶31からの反射光の光パワーの1/2に相当するオフセットに電気光学結晶31に印加された電界に比例する振幅成分が重畳した電気信号が出力される。
【0079】
図5は、電気光学周波数変換部の別の構成例を示す。この電気光学周波数変換部30Aは、電気光学結晶31からの反射光の偏波の変化を差動で検出する方式となっている。具体的には、電気光学周波数変換部30Aは、
図4の構成の電気光学周波数変換部30'と同様の偏光ビームスプリッタ(PBS)32aと、1/2波長板(HWP)35aと、1/4波長板(QWP)36と、電気光学結晶31と、受光器33aとに加えて、偏光ビームスプリッタ(PBS')32bと、1/2波長板(HWP')35bと、ファラデーローテータ(FR)37と、受光器33bと、差動増幅器38とを備えている。
【0080】
電気光学周波数変換部30Aは、入力された直線偏波の局発光P
Lが透過するように、偏光ビームスプリッタ32bの方向が設定されている。また、1/2波長板35bは、入射光のファラデーローテータ37による45度の偏波回転を戻すように、その方向が設定されている。そして、電気光学結晶31からの反射光のうち偏光ビームスプリッタ32aを透過した光は、90度偏波が回転し偏光ビームスプリッタ32bで反射して受光器33bに入力されるようになっている。
【0081】
この構成により、受光器33a及び受光器33bの出力は、電気光学結晶31からの反射光の光パワーの1/2に相当するオフセットに電気光学結晶31に印加された電界に比例する振幅成分が互いに逆方向に重畳するため、差動増幅器38からの出力はオフセットが相殺してゼロとなり、電界に比例する振幅成分が2倍となる。差動構成によって信号の振幅が2倍になるのに対して雑音は2倍にならないので、信号対雑音比が改善される。
【0082】
また、電気光学周波数変換部30は、
図11の電気光学周波数変換部230として記載のように、光分岐部32として光サーキュレータ及び光バンドパスフィルタを用いて電気光学結晶31からの反射光の側帯波を検出する方式としてもよい。
【0083】
次に、電気光学周波数変換部30における周波数変換動作を説明する。
図3(a)は、光合波器18から出力された局発光P
Lの光スペクトルであり、
図2(d)の横軸を拡大したものである。
図3(b)は、校正信号生成部20から出力された校正信号E
rのスペクトルであり、
図2(e)の横軸を拡大したものである。f
2−f
1とf
cは異なる周波数に設定されており、ここではf
c>f
2−f
1の例を示すが、大小関係を逆にしてもよい。通常はf
2−f
1をf
cに近い値に設定することが望ましく、次式(4)が成り立つようにする。
【0085】
さらに、第1の光の3波以上の連続光の周波数間隔f
L2と、校正信号E
rの3波以上の連続波の周波数間隔f
mとは、異なる周波数に設定されており、ここではf
m>f
L2の例を示すが、大小関係を逆にしてもよい。通常はf
L2をf
mに近い値に設定することが望ましく、次式(5)が成り立つようにする。
【0087】
局発光P
Lの周波数f
1の光スペクトル成分と、周波数f
2の光スペクトル成分とによって、f
2−f
1=nf
L1の周波数のビートが発生し、電気光学周波数変換部30により校正信号E
rの周波数f
cのスペクトル成分が、周波数f
IF1=f
c−nf
L1に周波数変換される。
【0088】
同様に、局発光P
Lの周波数f
1の光スペクトル成分と、周波数f
2−f
L2の光スペクトル成分とによって、f
2−f
L2−f
1=nf
L1−f
L2の周波数のビートが発生し、電気光学周波数変換部30により校正信号E
rの周波数f
c−f
mのスペクトル成分が、周波数f
IF1−f
m1=f
c−f
m−(nf
L1−f
L2)に周波数変換される。ここで、周波数変換後の周波数間隔はf
m1=f
m−f
L2となる。
【0089】
同様に、局発光P
Lの周波数f
1の光スペクトル成分と、周波数f
2+f
L2の光スペクトル成分とによって、f
2+f
L2−f
1=nf
L1+f
L2の周波数のビートが発生し、電気光学周波数変換部30により校正信号E
rの周波数f
c+f
mのスペクトル成分が、周波数f
IF1+f
m1=f
c+f
m−(nf
L1+f
L2)に周波数変換される。(4)式及び(5)式の関係より次式(6)及び(7)が成り立つ。
【0091】
すなわち、高周波(ミリ波帯)の校正信号E
rのキャリア周波数f
cが、低周波の中間周波数f
IF1に変換されると同時に、校正信号E
rにおける広い周波数間隔f
mが、中間周波信号E
IFにおける狭い周波数間隔f
m1に変換される。別言すれば、中間周波信号E
IFの3波以上の連続波のいずれの周波数も、校正信号E
rの3波以上の連続波のいずれの周波数よりも低くなるように設定され、かつ、中間周波信号E
IFの3波以上の連続波の周波数間隔が、校正信号E
rの3波以上の連続波の周波数間隔よりも狭くなるように設定される。
【0092】
このようにして、ミリ波帯の校正信号E
rをA/D変換可能な中間周波数に変換すると共に、中間周波信号E
IFにおける周波数間隔f
m1を十分狭く設定することにより、電気光学周波数変換部30の受光器33以降の電気回路の周波数特性によるf
IF1−f
m1,f
IF1,f
IF1+f
m1の3つのスペクトル成分の位相差の変化を十分小さくすることができる。
【0093】
中間周波数f
IF1は、低過ぎると電気回路の1/f雑音により信号対雑音比が悪化し、高過ぎると高速な受光器やA/D変換器等が必要になるため、適切な周波数を選択することが望ましい。
【0094】
前述の周波数変換以外にも、例えば、局発光P
Lの周波数f
1の光スペクトル成分と周波数f
2+f
L2の光スペクトル成分との間のf
2+f
L2−f
1=nf
L1+f
L2の周波数のビートにより、校正信号E
rの周波数f
cのスペクトル成分が周波数|f
c−(nf
L1+f
L2)|に周波数変換されるなどの様々な組み合わせが存在し、電気光学周波数変換部30からの出力信号のスペクトルは
図3(c)に示すようになる。これらのスペクトルから、図示しないローパスフィルタ又はバンドパスフィルタ、或いは帯域の狭い受光器などを用いて、f
IF1−f
m1,f
IF1,f
IF1+f
m1を含むf
IF1付近のスペクトル成分を抽出するようにしてもよい。
図3(c)のうち周波数f
IF1付近を拡大したものが
図3(d)である。電気光学周波数変換部30は、少なくともf
IF1−f
m1,f
IF1,f
IF1+f
m1の3つのスペクトル成分を含む中間周波信号E
IFを出力する。
【0095】
[周波数変更部]
周波数変更部70は、校正処理部40から指示信号を受け、校正信号E
rの3波以上の連続波の周波数を所定の周波数帯域内で変更するようになっている。また、周波数変更部70は、変更する校正信号E
rの3波以上の連続波の周波数の値に応じて、第1の光(3波以上の連続光)と第2の光との周波数間隔を変更するようになっている。
【0096】
[校正処理部]
次に、校正処理部40について説明する。
図1に示すように、校正処理部40は、第1位相差算出器41と、第2位相差算出器43と、加算器42と、位相補正値算出器44とを備えている。校正処理部40は、電気光学周波数変換部30を用いて取得した校正信号Erの位相差特性と、校正信号Erをミリ波帯信号測定部50に入力した時に該ミリ波帯信号測定部50から出力される信号E
8の位相差特性とに基づいて、ミリ波帯信号測定部50の位相特性を校正するための位相補正値を算出し、位相補正器55が保持している位相補正値のデータを更新するようになっている。なお、校正処理部40は、本発明の校正部に対応する。
【0097】
第1位相差算出器41は、周波数変更部70による周波数変更毎に、変更される周波数の値に応じて第1の光と第2の光との周波数間隔を変更させ、中間周波信号E
IFの3波以上の連続波の間の位相差を算出していき、所定の周波数帯域全体に渡る第1の位相差特性を取得するようになっている。
【0098】
具体的には、第1位相差算出器41は、校正信号E
rを電気光学周波数変換部30に入力した場合に、電気光学周波数変換部30から出力される中間周波信号E
IFの周波数f
IF1−f
m1,f
IF1,f
IF1+f
m1のスペクトル成分の位相差を算出する。例えば、所定のサンプリング周波数で中間周波信号E
IFをA/D変換し、得られたディジタル信号において各周波数f
IF1−f
m1,f
IF1,f
IF1+f
m1の正弦関数及び余弦関数を乗算して所定のサンプル数の間積算し、逆正接関数により各スペクトル成分の位相を算出し、後述のように位相の2階差分を算出するようにしてもよい。
【0099】
第2位相差算出器43は、校正信号E
rをミリ波帯信号測定部50に入力した場合に、周波数変更部70による周波数変更毎に、ミリ波帯信号測定部50の中間周波信号測定器53から出力される信号E
8の3波以上の連続波の間の位相差を算出していき、所定の周波数帯域全体に渡る第2の位相差特性を取得するようになっている。第2位相差算出器43の処理内容は、第1位相差算出器41と同様であるが、第2位相差算出器43では、ミリ波帯信号測定部50の中間周波信号測定器53のA/D変換器によりA/D変換されて得られたディジタル信号を使用するようにしてもよい。
【0100】
第1位相差算出器41から出力された位相差(2階差分値)は、必要に応じて加算器42を介して局発光P
Lの位相差(2階差分値)が加算された後、位相補正値算出器44に入力される。局発光発生部10の光位相変調器17の代わりに光振幅変調器が用いられ、それが理想的な振幅変調の場合は、局発光P
Lの位相差はゼロとなるため、加算器42による局発光P
Lの位相差の加算は不要である。
【0101】
位相補正値算出器44は、第1位相差算出器41により算出された位相差に対し必要に応じて局発光P
Lの位相差を加算して得られた位相差の特性と、第2位相差算出器43により算出された位相差の特性とに基づいて、ミリ波帯信号測定部50の位相補正値を算出するようになっている。算出した位相補正値は、位相補正値算出器44からミリ波帯信号測定部50の位相補正器55に送られ、被測定信号をミリ波帯信号測定部50で測定する際の位相補正に用いられる。
【0102】
なお、校正処理部40および周波数変更部70は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インタフェース、外部記憶装置等を有するコンピュータを用いる構成であってもよく、その機能の一部または全部(A/D変換を除く)は、ROM等に記憶された各種プログラムをCPUで実行することにより実現することができる。
【0103】
[ミリ波帯信号測定部]
次に、校正対象であるミリ波帯信号測定部50について説明する。
【0104】
ミリ波帯信号測定部50は、ミリ波帯の高周波信号を周波数変換(ダウンコンバート)し、その信号特性を測定するシグナルアナライザであり、例えば、変調信号を解析してエラーベクトル振幅(EVM)などを表示する機能を有していてもよい。具体的には、ミリ波帯信号測定部50は、局発信号発生器52と、周波数変換器51と、中間周波信号測定器53と、位相補正器55とを備えている。なお、校正対象はこの構成に限定されるものではなく、ミリ波帯の高周波信号を扱う任意の回路を校正対象とすることができる。
【0105】
局発信号発生器52は、CWの局発信号を生成する。周波数変換器51は、局発信号を用いて、例えばホーンアンテナ56により受信した校正信号E
rまたは被測定信号の周波数変換(ダウンコンバート)を行ない中間周波信号に変換する。ホーンアンテナ56の代わりに導波管や同軸ケーブル・同軸コネクタを用いて校正信号生成部20または被測定信号と接続するようにしてもよい。中間周波信号測定器53は、A/D変換器を含んでおり、中間周波信号をディジタル信号に変換する。中間周波信号測定器53から出力されるディジタル信号は、切替スイッチ54により第2位相差算出器43又は位相補正器55に選択的に送られる。位相補正器55は、中間周波信号測定器53からのディジタル信号に対して、位相補正値算出器44により更新された情報を用いて位相補正を行ない、測定結果として出力する。変調信号を解析してエラーベクトル振幅(EVM)などを表示する場合は、位相補正器55の出力を用いて変調解析を行う。
【0106】
局発信号発生器52は、周波数を整数倍に変換する周波数逓倍器を含んでいてもよい。また、ここでは1回の周波数変換を行なう構成を示したが、複数回の周波数変換を行なう構成でもよく、不要な周波数成分を除去するフィルタが含まれていてもよい。
【0107】
[校正方法]
次に、ミリ波帯信号測定部50の周波数特性を校正する方法を説明する。
【0108】
校正信号の周波数特性(位相を含む複素数)をX
c(f)とし、ミリ波帯信号測定部50の周波数特性(位相を含む複素数)をG(f)とし、校正信号をミリ波帯信号測定部50に入力した時の中間周波信号測定器53からの出力信号の周波数特性(位相を含む複素数)をY
c(f)とする。X
c(f)は、校正信号を電気光学周波数変換部30に入力して3波以上のスペクトル成分を含む中間周波信号の位相差を測定することを、所定周波数帯域内でキャリア周波数f
cを変えて繰り返すことにより求めることができる。Y
c(f)は、校正信号をミリ波帯信号測定部50に入力し、該ミリ波帯信号測定部50から出力される3波以上のスペクトル成分を含む中間周波信号の位相差を測定することを、所定周波数帯域内でキャリア周波数f
cを変えて繰り返すことにより求めることができる。G(f)は、次式(8)より求めることができる。
【0109】
【数8】
ここで、f
LOはミリ波帯信号測定部50の局発信号の周波数である。
【0110】
そして、被測定信号の周波数特性(位相を含む複素数)をX(f)、被測定信号をミリ波帯信号測定部50に入力した時の中間周波信号測定器53からの出力信号の周波数特性(位相を含む複素数)をY(f)とすると、次式(9)よりミリ波帯信号測定部50の周波数特性が補正されたX(f)を測定結果として求めることができる。
【0112】
以上のように、振幅と位相を含む複素数の周波数特性を求めることにより、振幅特性と位相特性を同時に校正することも可能である。
以下では、位相特性を校正する方法を詳細に説明する。
【0113】
上述のように、第1位相差算出器41は、f
IF1−f
m1,f
IF1,f
IF1+f
m1のスペクトル成分の各位相を算出する。f
IF1−f
m1のスペクトル成分の位相をφ
1、f
IF1のスペクトル成分の位相をφ
2、f
IF1+f
m1のスペクトル成分の位相をφ
3、Δfを校正信号の周波数間隔f
mとすると、次式(10)、(11)、(12)より、位相差Δ
2φ/Δf
2を算出する。
【0115】
位相差Δ
2φ/Δf
2を算出する操作を、校正信号の周波数f
cを必要な範囲内で変えて繰り返し、f
cの関数としての位相差Δ
2φ(f
c)/Δf
2を得る。位相の2階の差分をとることにより、絶対時間によらずに(即ち時間原点が不明でも)位相特性を得ることができる。
【0116】
上記で求めた位相差は、局発光P
Lの光スペクトル成分の位相差に依存するため、局発光P
Lの光スペクトル成分の位相差がゼロでない場合は、補正を行なう必要がある。具体的には、局発光P
Lのf
2−f
L2の光スペクトル成分の位相をφ
L1とし、f
2の光スペクトル成分の位相をφ
L2とし、f
2+f
L2の光スペクトル成分の位相をφ
L3とすると、次式(13)、(14)、(15)より、局発光P
Lの位相差Δ
2φ
L/Δf
2を算出する。そして、次式(16)のとおり、電気光学周波数変換部30からの出力信号の位相差Δ
2φ(f
c)/Δf
2に局発光P
Lの位相差Δ
2φ
L/Δf
2を加算することにより、局発光P
Lの光スペクトル成分の位相が補正された位相差Δ
2φ
c(f
c)/Δf
2を得ることができる。
【0117】
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【0118】
例えば、局発光発生部10の光位相変調器17が理想的な位相変調の場合は、φ
L1=π/2,φ
L2=0,φ
L3=π/2なので、Δ
2φ
L/Δf
2=π/f
2mとなる。局発光発生部10の光位相変調器17の代わりに光振幅変調器が用いられ、それが理想的な振幅変調の場合は、φ
L1=0,φ
L2=0,φ
L3=0なので、Δ
2φ
L/Δf
2=0となる。この位相差は、光周波数f
2の光スペクトル成分の変調特性によって決まるため、通常f
2−f
1=nf
L1には依存せず、校正信号の周波数f
cを変えて繰り返す際は一定値の位相差補正を行なえばよい。
【0119】
局発光発生部10の第1のCW信号発生器11と第2のCW信号発生器16と校正信号生成部20(中間周波信号発生器21と局発信号発生器22)と第1位相差算出器41のA/D変換のサンプリング周波数とを、共通の基準周波数に同期するように構成すると、第1位相差算出器41でA/D変換された結果には周波数誤差が含まれず、正確に周波数f
IF1−f
m1,f
IF1,f
IF1+f
m1のスペクトル成分が得られるので、位相差の算出が容易かつ正確になる。
【0120】
次いで、校正信号生成部20から出力される校正信号E
rをミリ波帯信号測定部50に入力する。
【0121】
具体的には、周波数f
c−f
m′,f
c,f
c+f
m′の少なくとも3つのスペクトル成分を有する校正信号E
rをミリ波帯信号測定部50に入力し、中間周波信号測定器53から出力される校正信号のうち、f
c−f
m′のスペクトル成分の位相測定結果をφ
1′とし、f
cのスペクトル成分の位相測定結果をφ
2′とし、f
c+f
m′のスペクトル成分の位相測定結果をφ
3′とし、Δf′を校正信号E
rの周波数間隔f
m′とすると、次式(17)、(18)、(19)より、位相差Δ
2φ′/Δf′
2を算出する。
【0123】
位相差Δ
2φ′/Δf′
2を算出する操作を、校正信号E
rの周波数f
cを必要な範囲内で変えて繰り返し、f
cの関数としての位相差Δ
2φ′(f
c)/Δf′
2を取得する。
【0124】
周波数f
cにおける位相補正値θ(f
c)は、次式(20)、(21)、(22)を用いて求めることができる。
【0126】
式(21)、(22)において、総和Σは、最低周波数から周波数f
cまでΔf
c間隔でf
ciを変えながらの積算である。
【0127】
位相補正器55は、校正信号E
rをミリ波帯信号測定部50に入力した時のスペクトル成分の位相差が、第1位相差算出器41により算出された位相差と等しくなるように位相補正を行なう。
【0128】
位相補正器55における位相補正の方法としては、周波数領域補正法や時間領域補正法を採用することができる。周波数領域補正法は、中間周波信号測定器53で得られた時間領域のディジタル信号を離散フーリエ変換して周波数領域の信号に変換し、位相補正値θ(f
c)だけ位相を回転し、離散逆フーリエ変換して時間領域の信号に変換するものである。時間領域補正法は、位相補正値θ(f
c)から複素振幅exp{jθ(f
c)}を求め、離散逆フーリエ変換してインパルス応答に変換し、該インパルス応答を係数とする有限インパルス応答(FIR)フィルタで中間周波信号測定器53からのディジタル信号にフィルタ処理を行なうものである。
【0129】
電気光学周波数変換部30で校正信号E
rの位相差を測定する時のスペクトル間隔f
mと、ミリ波帯信号測定部50で校正信号E
rの位相差を測定する時のスペクトル間隔f
m′は、等しく設定するのが望ましいが、必ずしもそれに限られるものではない。また、電気光学周波数変換部30で校正信号E
rの位相差を測定する時の複数のf
cと、ミリ波帯信号測定部50で校正信号E
rの位相差を測定する時の複数のf
cは、等しく設定するのが望ましいが、必ずしもそれに限られるものではなく、補間処理等で位相差情報の周波数を合わせるようにしてもよい。
【0130】
以上のようにして位相補正ができるようになった後、校正信号の代わりに被測定信号をミリ波帯信号測定部50に入力し、位相が補正された測定結果を出力する。被測定信号がQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation)などの変調信号の場合、位相が補正された信号の変調解析を行ない、エラーベクトル振幅(EVM)などを正確に測定することができる。必要に応じて定期的に、又は周囲温度が大きく変化した場合に、再度校正信号を用いた位相校正を行なうようにしてもよい。
【0131】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る位相特性校正装置1Aを説明する。
【0132】
本実施形態に係る位相特性校正装置1Aは、電気光学周波数変換部30と第1位相差算出器41の間に第2周波数変換部60を設けている点で、第1の実施形態と異なっている。その他の構成は第1の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0133】
図6に示すように、第2周波数変換部60は、増幅器61と、CW信号発生器62と、ミキサ63と、低域通過フィルタ(LPF)64とを備えている。第2周波数変換部60は、電気光学周波数変換部30からの中間周波信号E
IFをさらに周波数の低い第2中間周波信号E
IF2に変換するものである。
【0134】
具体的には、増幅器61が、電気光学周波数変換部30から入力した中間周波信号E
IFを増幅してミキサ63に出力すると共に、CW信号発生器62が、CWの第2局発信号を発生してミキサ63に出力する。ミキサ63は、第2局発信号を用いて中間周波信号E
IFに対して第2の周波数変換(ダウンコンバート)を行ない、低域通過フィルタ64に出力する。低域通過フィルタ64は、所望のスペクトル成分を抽出して、第2中間周波信号E
IF2を出力する。第2の周波数変換時に高調波等によって発生するスプリアス成分を低減するために、ミキサ63の前に図示しないバンドパスフィルタを挿入してもよい。
【0135】
図7(a)は、電気光学周波数変換部30から出力された中間周波信号E
IFのスペクトルを示す。前述のように、周波数f
IF1を中心に周波数間隔f
m1で3つ以上のスペクトル成分が存在する。
図7(b)は、CW信号発生器62から出力される第2局発信号のスペクトルを示す。
図7(c)は、低域通過フィルタ64から出力される第2中間周波信号E
IF2のスペクトルを示す。CW信号発生器62からの第2局発信号の周波数をf
LO2とすると、第2中間周波数はf
IF2=f
IF1−f
LO2となり、第2中間周波信号E
IF2の周波数間隔はf
m1である。
【0136】
図7(c)に示されるように、f
IF1−f
m1より低い周波数のスペクトル成分、例えば周波数f
IF1−2f
m1が第2局発周波数f
LO2より低い場合、第2中間周波信号E
IF2のスペクトルは周波数ゼロで折り返されるので、折り返されたスペクトルがf
IF2−f
m1,f
IF2,f
IF2+f
m1の3つのスペクトル成分に重ならないようにf
LO2を設定するのが望ましい。ここでは、f
LO2<f
IF1に設定した例を示したが、逆にf
LO2>f
IF1となるように設定してもよい。
【0137】
第2の実施形態では、中間周波数f
IF1を電気回路の1/f雑音が小さい周波数に設定し、第2周波数変換部60の増幅器61で十分に増幅した後に、十分低い第2中間周波数f
IF2に変換している。前述のように中間周波信号E
IFの周波数間隔はf
m1=f
m−f
L2で表され、第2のCW信号発生器16の周波数f
L2を適切に設定することによりf
m1を十分狭い周波数間隔に設定することが可能であり、かつ、第2中間周波信号E
IF2の3つのスペクトル成分の周波数f
IF2−f
m1,f
IF2,f
IF2+f
m1をいずれも十分低くすることが可能である。よって、電気回路の1/f雑音を避けて高いS/N比を保ちつつ、第1位相差算出器41のA/D変換器等の帯域とサンプリング速度を低くして安価な装置を実現することができる。
【0138】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る位相特性校正装置1Bを説明する。
【0139】
本実施形態に係る位相特性校正装置1Bは、第2周波数変換部60Aが直交周波数変換を行う構成となっている点で、第2の実施形態と異なっている。その他の構成は第2の実施形態と同一であり、同一の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0140】
第2の実施形態では、第2周波数変換部60が行う第2周波数変換において負の周波数成分が折り返され、負の周波数領域の雑音も折り返されるため、第2周波数変換を行なわない場合と比較してS/N比が3dB程度悪化する。f
LO2以下の周波数成分を遮断するフィルタを第2周波数変換前の信号経路に配置することにより、第2周波数変換後の負の周波数領域の雑音を除去することができるが、一般に急峻なフィルタは位相の非線形が大きく、位相測定の誤差要因となる。このため、第3の実施形態では、第2周波数変換部60Aとして直交周波数変換を行なう構成とし、第2周波数変換における負の周波数成分の折り返しが発生しないようにしている。
【0141】
図8に示すように、第2周波数変換部60Aは、増幅器61と、CW信号発生器62aと、2つのミキサ63a、63bと、90度移相器65と、2つの低域通過フィルタ(LPF)64a、64bとを備えている。
【0142】
具体的には、増幅器61は、電気光学周波数変換部30から入力した中間周波信号E
IFを増幅して2つのミキサ63a、63bに出力する。CW信号発生器62aは、CWの第2局発信号を発生して一方のミキサ63aに出力すると共に、90度移相器65にも出力する。90度移相器65は、90度移相させた第2局発信号を他方のミキサ63bに出力する。ミキサ63a、63bは、互いに90度位相が異なる第2局発信号を用いて中間周波信号E
IFに対して第2の周波数変換(ダウンコンバート)を行ない、それぞれ低域通過フィルタ64a、64bに出力する。低域通過フィルタ64a、64bは、所望のスペクトル成分を抽出して出力する。この構成により、第2周波数変換部60Aへの入力信号が直交周波数変換され、同相成分と直交成分の2つの信号が第2中間周波信号E
IF2として第1位相差算出器41に出力される。
【0143】
CW信号発生器62aと90度移相器65の代わりに、90度位相が異なる正弦波を生成する2つのD/A変換器を使用してもよい。第2の周波数変換時に高調波等によって発生するスプリアス成分を低減するために、ミキサ63a、63bの前に図示しないバンドパスフィルタを挿入してもよい。
【0144】
図9(a)は、電気光学周波数変換部30から出力される中間周波信号E
IFのスペクトルを示す。前述のように、周波数f
IF1を中心に周波数間隔f
m1で3つ以上のスペクトル成分が存在する。
図9(b)は、CW信号発生器62aから出力される第2局発信号のスペクトルを示す。
図9(c)は、低域通過フィルタ64a、64bから出力される第2中間周波信号E
IF2のスペクトルを示す。CW信号発生器62aからの第2局発信号の周波数をf
LO2とすると、第2中間周波数はf
IF2=f
IF1−f
LO2となり、第2中間周波信号E
IF2の周波数間隔はf
m1である。
【0145】
但し、2つのミキサ63a、63bのバランスや直交度のずれによって正負の周波数成分が完全に分離されず、イメージ成分が発生する場合があるため、|f
IF2−f
m1|,|f
IF2|,|f
IF2+f
m1|が互いに重ならないようにf
LO2を設定するのが望ましい。また、周波数ゼロは直流オフセットの影響を受けるため、f
IF2−f
m1,f
IF2,f
IF2+f
m1の各周波数成分がゼロにならないようにf
LO2を設定するのが望ましい。本実施形態では、f
LO2<f
IF1に設定しているが、逆にf
LO2>f
IF1となるように設定してもよい。
【0146】
第3の実施形態では、中間周波数f
IF1を電気回路の1/f雑音が小さい周波数に設定し、第2周波数変換部60Aの増幅器61で十分に増幅した後に、十分低い第2中間周波数f
IF2に変換している。前述のように、中間周波信号E
IFの周波数間隔f
m1を十分狭く設定することが可能であり、かつ、第2中間周波信号E
IF2の3つのスペクトル成分の周波数f
IF2−f
m1,f
IF2,f
IF2+f
m1をいずれも十分低くすることが可能である。よって、電気回路の1/f雑音を避けて高いS/N比を保ちつつ、第1位相差算出器41のA/D変換器等のサンプリング速度を低くして安価な装置を実現することができる。そして、直交周波数変換された同相成分と直交成分により正負の周波数成分を分離することができるため、基本的に負の周波数成分の折り返しは発生せず、第2の実施形態で生じ得るS/N比の悪化は生じない特徴を有する。
【0147】
第2の実施形態及び第3の実施形態において、基準周波数に同期するようにするためには、局発光発生部10の第1のCW信号発生器11と第2のCW信号発生器16と校正信号生成部20と第1位相差算出器41のA/D変換のサンプリング周波数とに加えて、第2周波数変換部60、60Aの第2局発信号を生成するCW信号発生器62、62aも共通の基準周波数に同期させるとよい。
【0148】
以上述べたように、本発明は、ミリ波帯信号測定回路の位相特性を精度良く校正することができるという効果を有し、位相特性校正装置及び位相特性校正方法の全般に有用である。