【実施例】
【0056】
次に、製造例、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における「部」及び「%」は特に断りのない限り質量基準である。
【0057】
<環状カーボネート化合物の製造>
[製造例1:環状カーボネート化合物(I)の合成]
エポキシ当量187のビスフェノールA型エポキシ樹脂〔エポトート YD−128(商品名)、新日鉄住金化学社製〕100部と、ヨウ化ナトリウム(和光純薬社製)20部と、N−メチル−2−ピロリドン150部とを、撹拌装置及び大気解放口のある還流器を備えた反応容器内に仕込んだ。次いで、撹拌しながら二酸化炭素を連続して吹き込み、100℃にて10時間の反応を行った。その後、反応液に300部の水を加え、生成物を析出させ、ろ別した。得られた白色粉末をトルエンにて再結晶を行い、白色の粉末52部(収率42%)を得た。
【0058】
得られた粉末を、IR(FT/IR−350、日本分光社製、他も同様の装置で測定)にて分析したところ、910cm
-1付近の原材料エポキシ由来のピークは消失しており、1800cm
-1付近に原材料には存在しないカーボネート基のカルボニル由来のピークが確認された。また、HPLC〔LC−2000(商品名)、日本分光社製、カラム:FinePakSIL C18−T5、移動相:アセトニトリル+水〕による分析の結果、原材料のピークは消失し、高極性側に新たなピークが出現し、その純度は98%であった。また、DSC(示差走査熱量)測定の結果、融点は178℃であり、融点の範囲は±5℃であった。
【0059】
以上のことから、上記で得た白色粉末は、エポキシ基と二酸化炭素との反応により環状カーボネート基が導入された、下記式で表される構造の化合物と確認された。以下、これを化合物(I)と呼ぶ。この化合物(I)の化学構造中に二酸化炭素由来の成分が占める割合は、20.5%(計算値)であった。
【0060】
【0061】
[製造例2:環状カーボネート化合物(II)の合成]
製造例1で使用したエポキシ化合物の替わりに、エポキシ当量138のネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル〔デナコールEX211(商品名)、ナガセケムテックス社製〕を用いた以外は、製造例1と同様の方法で製造した。得られた環状カーボネート化合物はオイル状であり、IRにて分析したところ、910cm
-1付近の原材料エポキシ由来のピークは消失しており、1800cm
-1付近に原材料には存在しないカーボネート基のカルボニル由来のピークが確認された。また、製造例1で行ったと同様の条件でHPLCによる分析をした結果、原材料のピークは消失し、高極性側に新たなピークが出現し、その純度は97%であった。
【0062】
以上のことから、この物質は、エポキシ基と二酸化炭素との反応により環状カーボネート基が導入された、下記式で表される構造の化合物と確認された。以下、このオイル状の化合物を、化合物(II)と呼ぶ。この化合物(II)の化学構造中に二酸化炭素由来の成分が占める割合は、24.2%(計算値)であった。
【0063】
【0064】
<予備反応液(A)の合成>
[合成例1:予備反応液(A−1)の合成]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、環状カーボネート化合物として製造例1で得た化合物(I)を78.7部、アミン化合物としてヘキサメチレンジアミン(略記:HMD、旭化成ケミカルズ社製、以下同様)を21.3部、さらに、反応溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を100部加えた。そして、100℃の温度で撹拌しながら、0.5時間反応を行い、予備反応液(A−1)を得た。
【0065】
得られた予備反応液(A−1)について、N,N−ジメチルホルムアミドを移動相としたGPC測定〔GPC−8220(商品名)、東ソー社製、カラム:SuperAW2500+AW3000+AW4000+AW5000〕をしたところ、その重量平均分子量は、5000(ポリスチレン換算)であった。また、得られた予備反応液(A−1)をIRにて分析したところ、1760cm
-1付近にウレタン結合のカルボニル基由来の吸収が確認された。このことによって、反応容器内に、重合物と未反応物が共存していることが確認できる。なお、下記の他の合成例でも同様のことがいえる。
【0066】
[合成例2:予備反応液(A−2)の合成]
0.5時間であった合成例1の反応時間を1時間にした以外は、合成例1と同様に行って、予備反応液(A−2)を得た。得られた予備反応液(A−2)の重量平均分子量は、9500(ポリスチレン換算)であった。また、得られた予備反応液(A−2)をIRにて分析したところ、1760cm
-1付近にウレタン結合のカルボニル基由来の吸収が確認された。
【0067】
[合成例3:予備反応液(A−3)の合成]
0.5時間であった合成例1の反応時間を2時間にした以外は、合成例1と同様に行って予備反応液(A−3)を得た。得られた予備反応液(A−3)の重量平均分子量は、17000(ポリスチレン換算)であった。また、得られた予備反応液(A−3)をIRにて分析したところ、1760cm
-1付近にウレタン結合のカルボニル基由来の吸収が確認された。
【0068】
[合成例4:予備反応液(A−4)の合成]
合成例1で使用した化合物(I)を68.2部、合成例1で使用したヘキサメチレンジアミンの替わりにドデカジアミン(小倉合成社製)を31.8部用いた以外は、合成例1と同様にして、予備反応液(A−4)を得た。得られた予備反応液(A−4)の重量平均分子量は、6000(ポリスチレン換算)であった。また、得られた予備反応液(A−4)をIRにて分析したところ、1760cm
-1付近にウレタン結合のカルボニル基由来の吸収が確認された。
【0069】
[合成例5:予備反応液(A−5)の合成]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、環状カーボネート化合物として、製造例1で得た化合物(I)を38.6部と、製造例2で得た化合物(II)を38.6部とを用い、アミン化合物としてヘキサメチレンジアミンを23.4部、さらに、反応溶剤として、N,N−ジメチルホルムアミドを100部加えた。そして、100℃の温度で撹拌しながら、0.5時間反応を行って、予備反応液(A−5)を得た。得られた予備反応液(A−5)の重量平均分子量は、5500(ポリスチレン換算)であった。また、得られた予備反応液(A−5)をIRにて分析したところ、1760cm
-1付近にウレタン結合のカルボニル基由来の吸収が確認された。
【0070】
[合成例6:予備反応液(A−6)の合成]
合成例1の反応温度を80℃にした以外は、合成例1と同様にして予備反応液(A−6)を得た。得られた予備反応液(A−6)の重量平均分子量は、2300(ポリスチレン換算)であり、本発明で規定するよりも重量平均分子量が小さかった。また、得られた予備反応液(A−6)をIRにて分析したところ、1760cm
-1付近にウレタン結合のカルボニル基由来の吸収が確認された。
【0071】
[合成例7:予備反応液(A−7)の合成]
0.5時間であった合成例1の反応時間を8時間にした以外は、合成例1と同様に行って、予備反応液(A−7)を得た。得られた予備反応液(A−7)の重量平均分子量は、24000(ポリスチレン換算)であり、本発明で規定するよりも重量平均分子量が大きかった。また、得られた予備反応液(A−7)をIRにて分析したところ、1760cm
-1付近にウレタン結合のカルボニル基由来の吸収が確認された。
【0072】
【0073】
<熱可塑性ポリヒドロキシウレタン樹脂の製造>
[実施例1]
高粘度液用の薄膜型蒸発機であるエクセバ(登録商標)EX−02(神鋼環境ソリューション社製)を用い、合成例1で得た予備反応液(A−1)を供給し、130℃、50torrの加熱減圧の条件下で、液膜の形成と脱揮による予備反応液の基質の濃縮、さらなる重合及び脱溶剤を行って、取り出し口より溶融したポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。より具体的には、上記装置内で、予備反応液(A−1)からなる2mm程度の厚みの液膜を形成させて、脱揮して予備反応液(A−1)の基質の濃縮、さらなる重合及び脱溶剤して、樹脂の重合と反応溶媒の留去を行った。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は99.8%と高く、重量平均分子量は28000で、十分な分子量を有していた。予備反応液(A−1)の滞留時間は、25分であった。
【0074】
[実施例2]
実施例1で使用した予備反応液(A−1)を、合成例2で得た予備反応液(A−2)にした以外は、実施例1と同様にして、工程[2]を実施し、取り出し口より溶融したポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は99.7%と高く、重量平均分子量は31000で、十分な分子量を有していた。予備反応液(A−2)の滞留時間は、25分であった。
【0075】
[実施例3]
実施例1で使用した予備反応液(A−1)を、合成例3で得た予備反応液(A−3)にした以外は、実施例1と同様にして、工程[2]を実施し、取り出し口より溶融したポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は99.7%と高く、重量平均分子量は47000で、十分な分子量を有していた。予備反応液(A−3)の滞留時間は、25分であった。
【0076】
[実施例4]
実施例1で使用した薄膜型蒸発機エクセバの条件を、130℃、20torrと、実施例1の場合よりもより低圧にした以外は実施例1と同様にして、工程[2]を実施し、取り出し口より溶融したポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は99.9%と高く、重量平均分子量は34000で、十分な分子量を有していた。予備反応液(A−1)の滞留時間は、30分であった。
【0077】
[実施例5]
実施例1で使用した薄膜型蒸発機エクセバの条件を、150℃、50torrと、実施例1の場合よりもより高温に変えた以外は実施例1と同様にして、工程[2]を実施し、取り出し口より溶融したポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は99.8%と高く、重量平均分子量は29000で、十分な分子量を有していた。予備反応液(A−1)の滞留時間は、20分であった。
【0078】
[実施例6]
実施例1で使用した予備反応液(A−1)を、合成例4で得た予備反応液(A−4)にした以外は、実施例1と同様にして、工程[2]を実施し、取り出し口より溶融したポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は99.8%と高く、重量平均分子量は35000で、十分な分子量を有していた。予備反応液(A−4)の滞留時間は、25分であった。
【0079】
[実施例7]
実施例1で使用した予備反応液(A−1)を、合成例5で得た予備反応液(A−5)にし、また、実施例1で使用した薄膜型蒸発機エクセバの条件を、100℃、10torrと、実施例1の場合よりもより高温及び高圧に変えた以外は、実施例1と同様にして、工程[2]を実施し、取り出し口より溶融したポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は99.7%と高く、重量平均分子量は30000で、十分な分子量を有していた。予備反応液(A−5)の滞留時間は、35分であった。
【0080】
[比較例1]
撹拌装置と減圧蒸留装置を付帯した常圧の反応容器内に、合成例1で得た予備反応液(A−1)を入れ、130℃に昇温して、反応容器内を減圧にさせながら溶剤を留去した。この方法はバッチ処理であり、液膜を形成しないため、発泡等を防ぎながら行う必要があったので、反応容器内が50torrに到達するまでに、2.5時間を要した。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は98.2%で、実施例1で得られた樹脂より不揮発分の値が低く、重量平均分子量は20000で、実施例1で得られた樹脂より分子量が小さかった。また、予備反応液(A−1)の反応時間は3時間であり、実施例1の滞留時間に比べて格段に長かった。
【0081】
[比較例2]
撹拌装置及び大気開放口のある還流器を備えた反応容器内に、製造例1で得た環状カーボネート化合物である化合物(I)を78.7部、ヘキサメチレンジアミンを21.3部加え、100℃の温度で撹拌しながら、8時間反応を行って、ポリヒドロキシウレタン樹脂を合成した。反応物は、8時間反応させたにもかかわらず、一部の化合物(I)が反応しておらず、不透明であった。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は91.5%であり、実施例1で得られた樹脂より不揮発分の値が格段に低く、重量平均分子量は3700で、実施例1で得られた樹脂より格段に分子量が小さかった。
【0082】
[比較例3]
実施例1で使用した薄膜型蒸発機エクセバの条件を、本発明で規定する範囲外である、70℃、5torrと、実施例1の場合よりもより低温低圧に変えた以外は実施例1と同様に行い、取り出し口より溶融したポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は93.8%で、実施例1で得られた樹脂より不揮発分の値が低く、重量平均分子量は9000で、実施例1で得られた樹脂より格段に分子量が小さかった。予備反応液(A−1)の滞留時間は、45分であった。
【0083】
[比較例4]
実施例1で使用した薄膜型蒸発機エクセバの条件を、185℃、100torrと、本発明で規定するよりも高温にし、且つ、実施例1の場合よりも高圧にした以外は、実施例1と同様に行い、取り出し口より溶融したポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は99.1%で、実施例1よりも若干低く、重量平均分子量は14500で、実施例1で得られた樹脂より分子量も小さかった。予備反応液(A−1)の滞留時間は、15分であった。
【0084】
[比較例5]
実施例1で使用した薄膜型蒸発機エクセバの条件を、130℃、300torrと、実施例1の場合と同様の温度で、且つ、本発明で規定するよりも高圧にした以外は、実施例1と同様に行い、取り出し口より溶融したポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は、95.2%で、実施例1で得られた樹脂より不揮発分の値が低く、重量平均分子量は19000で、実施例1で得られた樹脂より分子量が小さかった。予備反応液(A−1)の滞留時間は、15分であった。
【0085】
[比較例6]
実施例1で使用した予備反応液(A−1)を、重量平均分子量が2300である本発明で規定するよりも小さい、合成例6で得た予備反応液(A−6)にした以外は、実施例1と同様にして、工程[2]を実施し、取り出し口より溶融したポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は99.2%で、実施例1よりも若干低く、重量平均分子量は12000で、実施例1で得られた樹脂より分子量も小さかった。予備反応液(A−6)の滞留時間は、20分であった。
【0086】
[比較例7]
実施例1で使用した予備反応液(A−1)を、重量平均分子量が24000である本発明で規定するよりも大きい、合成例7で得た予備反応液(A−7)にした以外は、実施例1と同様にして、工程[2]を実施し、取り出し口より溶融したポリヒドロキシウレタン樹脂を得た。得られたポリヒドロキシウレタン樹脂の不揮発分は、99.1%で、実施例1よりも若干低く、重量平均分子量は25000で、反応前の予備反応液(A−7)の分子量とあまり変わらなかった。予備反応液(A−7)の滞留時間は、28分であった。
【0087】
表2及び表3に、実施例と比較例の製造方法における反応条件を示した。表中の滞留時間は、高粘度液用の薄膜型蒸発機であるエクセバを使用した工程にかかった時間である。エクセバに送る速度は、供給する予備反応液(A)の不揮発分が50%であることから、留出した溶剤量と、処理されて排出された樹脂量が時間当たり同じになるように調節した。比較例1、2では、エクセバを使用していないため、それぞれの反応時間を表中に記載した。
【0088】
【0089】
【0090】
〔評価〕
実施例及び比較例の製造方法でそれぞれに得たポリウレタン樹脂の製造方法を、下記の方法及び基準にて評価した。表4、5に、測定結果及び評価結果をまとめて示した。
【0091】
[重量平均分子量]
実施例及び比較例で得た各樹脂について、N,N−ジメチルホルムアミドを移動相としたGPC測定を行い、それぞれ重量平均分子量を測定した。GPC測定は、東ソー社製のGPC−8220(商品名)で、カラムに、SuperAW2500+AW3000+AW4000+AW5000を用いて重量平均分子量を測定した。表4、5中に、分子量として測定値を示した。
【0092】
[不揮発分]
実施例及び比較例で得た樹脂をそれぞれ約3.0gとって秤量し、150℃のオーブンにて1時間加熱し、その後デシケーター中で冷却してから、再び秤量した。そして、得られた秤量値を用い、加熱後の重量/加熱前の重量×100にて算出して不揮発分(%)とした。
【0093】
[総工程時間]
表4、5に、原料である5員環環状カーボネート基を有する化合物と、アミノ基を有する化合物とから、ポリヒドロキシウレタン樹脂を得るまでの総工程にかかる時間を総工程時間として、それぞれ示した。具体的には、実施例では、予備反応液(A)を得る工程[1]にかかった時間と、次の工程[2]の滞留時間の和である。高粘度液用の薄膜型蒸発機であるエクセバを使用した比較例3〜7も同様であり、予備反応液(A)を得るのに要した時間と、エクセバにおける予備反応液(A)の滞留時間の和を示した。比較例1では、減圧蒸留装置の反応容器内に予備反応液(A)を入れ、その後に減圧蒸留したので、予備反応液(A)を得るのに要した時間と、減圧蒸留にかかった時間の和を示した。また、比較例2では、大気開放口のある還流器を備えた反応容器内で行った、環状カーボネート化合物である化合物(I)と、ヘキサメチレンジアミンとの重合時間を示した。
【0094】
[破断点強度]
実施例及び比較例で得た各ポリヒドロキシウレタン樹脂で、フィルムをそれぞれ作製し、評価用試料とし、JISK6251に準拠して、得られたフィルムの破断点強度をそれぞれ測定した。具体的には、実施例及び比較例で得たポリヒドロキシウレタン樹脂をそれぞれ用い、温度140℃、時間5分、圧力100kg/cm
2の条件下、厚み500μmのプレスフィルムを作製し、得られたフィルムからJIS3号ダンベルを切り出した後、オートグラフにて室温(25℃)で測定した。そして、得られた破断点強度の測定値を下記のA〜Eの5段階に分け、評価した。なお、脆くて成型できないものは成型不能とした。本発明では、A、Bを合格とし、C、D、Eを不合格とした。
A:50MPa以上
B:30MPa以上〜50MPa未満
C:20MPa以上〜30MPa未満
D:10MPa以上〜20MPa未満
E:10MPa未満
【0095】
[成型性]
破断点強度の測定の際に用いた評価用試料の作製の方法と同様にして、フィルムを作製し、得られたフィルムの10cm×10cmの面積中に気泡が入っているかを確認した。気泡の数にて3段階に分けて評価した。なお、脆くて成型できないものは、表4、5中に成型不能と記載した。
○:気泡の数が0〜2個
△:気泡の数が3〜5個
×:気泡の数が6個以上
【0096】
【0097】
【0098】
実施例1、4、5及び比較例3〜5では、いずれも、環状カーボネート化合物に、化合物(I)を使用し、アミン化合物に、ヘキサメチレンジアミンを使用して得た同じ予備反応液(A−1)を使用し、この予備反応液(A−1)を同様の薄膜型蒸発機に供給して薄膜型蒸発機での工程を行っているが、その際に、表2、3に示されているように、薄膜型蒸発機での工程における温度と圧力の条件を変えている。その結果、表4、5に示されているように、薄膜型蒸発機での工程における温度と圧力条件の違いによって、最終的に得られた熱可塑性ポリヒドロキシウレタン樹脂の、重量平均分子量、機械的強度及び不揮発分の違いに大きく影響することが確認された。薄膜型蒸発機での工程における温度、圧力条件が成型性に与える影響を比較すると、本発明で規定した条件を満足する実施例では、機械的強度が十分な分子量であり、成型性も問題がない、高い不揮発分の樹脂が得られることがわかった。
【0099】
これに対し、比較例1の製造方法は、予備反応液(A−1)を使用するものの、実施例のように、該予備反応液の液膜を形成しないものである。具体的には、バッチ式で、減圧蒸留装置を付帯した常圧の反応容器内に入れて、減圧にしながら溶剤を留去して反応するものであるため、溶剤の気化熱により温度低下が起こって濃縮に時間がかかり、また、濃縮とともに粘度が上昇することにより、表5に示したように、完全に脱溶剤をすることが難しくなる。比較例2の大気中で還流させながら反応させる製造方法によって得られる反応物は、重量平均分子量が3700で、十分な分子量のものにならなかった。このことから、ヘキサメチレンジアミンと反応させる環状カーボネート化合物に使用した化合物(I)が、固体で融点が高いことから、溶剤を使用しないと反応が難しいことが理解できる。
【0100】
比較例6、7の製造方法は、本発明で規定する工程[2]の要件を満たすが、工程[2]に供給する予備反応液の重量平均分子量が、本発明で規定する3000以上20000以下の範囲外であり、表5に示したように、この場合は、本発明の顕著な効果を十分に得ることができない。比較例6に示したように、本発明で規定した範囲内よりも分子量が小さいと、十分な分子量の樹脂が得られない。また、比較例7に示したように、本発明で規定した範囲内よりも分子量が大きい場合には、工程[2]に供給するための予備反応液を得る工程[1]で、長時間を要し、さらに、工程[2]で分子量が殆ど大きくならず、熱可塑性ポリヒドロキシウレタン化合物を短時間に効率的に製造するとした、本発明の目的を達成することができない。
【0101】
これに対し、実施例1〜7に示されているように、工程[1]で得る、工程[2]に供給する予備反応液の重量平均分子量が、本発明で規定する3000以上20000以下の範囲内であれば、環状カーボネート化合物及びアミン化合物の種類を替えた場合であっても、熱可塑性ポリヒドロキシウレタン樹脂を短時間に効率的に製造でき、しかも、最終的に得られる熱可塑性ポリヒドロキシウレタン樹脂は、不揮発分が高く、十分な分子量をもち、しかも、破断強度や成型性に優れるものになるため、本発明の製造方法は工業的に有用である。