特開2019-192458(P2019-192458A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-192458(P2019-192458A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】端子付電線
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20191004BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
   H01R4/18 A
   H01R4/62 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-83089(P2018-83089)
(22)【出願日】2018年4月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】川口 拓也
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB03
5E085BB12
5E085CC03
5E085CC09
5E085DD14
5E085EE08
5E085FF01
5E085HH34
5E085JJ06
5E085JJ11
5E085JJ19
5E085JJ50
(57)【要約】
【課題】端子と電線の導体との間で良好な電気的導通を図りつつ、ガルバニック腐食を抑制することができる端子付電線を提供する。
【解決手段】端子付電線1は、電線10と、電線10の絶縁材33が除去された絶縁材除去部34の先端部34Aを被覆する第1の樹脂51と、電線10の絶縁材33の縁部33Aを挟んで両側に位置する絶縁材除去部34Bと絶縁材33Bとを被覆する第2の樹脂52と、端子20とを備える。第1の樹脂51と第2の樹脂52とは互いに離間し、第1の樹脂51と第2の樹脂52との間で絶縁材除去部34の導体32が露出する導体露出部34Cが形成される。端子20は、導体露出部34Cに圧着される導通部60と、第1の樹脂51に圧着される第1の樹脂固定部71と、第2の樹脂52に圧着される第2の樹脂固定部72とを有する。第1の樹脂固定部71には第1の開口61が形成され、第1の開口61内で第1の樹脂51が盛り上がる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなる複数の素線から構成される導体と、該導体を被覆する絶縁材とを有する電線と、
前記電線の前記絶縁材が除去された絶縁材除去部の先端部を被覆する第1の樹脂と、
前記電線の前記絶縁材の縁部を挟んで両側に位置する前記絶縁材除去部と前記絶縁材とを一定の長さにわたって被覆する第2の樹脂と、
銅又は銅合金からなる端子と
を備え、
前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とは互いに離間しており、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂との間で前記絶縁材除去部の前記導体が露出する導体露出部が形成され、
前記端子は、
前記導体露出部に圧着される導通部と、
前記導通部と一体的に形成され、前記第1の樹脂に圧着される第1の樹脂固定部と、
前記導通部と一体的に形成され、前記第2の樹脂に圧着される第2の樹脂固定部と
を有し、
前記第1の樹脂固定部には第1の開口が形成され、該第1の開口内で前記第1の樹脂が盛り上がっている、端子付電線。
【請求項2】
前記端子の前記第2の樹脂固定部には第2の開口が形成され、該第2の開口内で前記第2の樹脂が盛り上がっている、請求項1に記載の端子付電線。
【請求項3】
前記端子の前記導通部は、前記導体露出部の外面に接触するセレーションを備える、請求項1又は2に記載の端子付電線。
【請求項4】
前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂はウレタンアクリレート系樹脂から構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の端子付電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付電線に係り、特に端子と電線の導体とが異種金属から形成された端子付電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線に端子を接続した端子付電線として、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる複数の素線から構成された導体に絶縁材が被覆された電線と、銅又は銅合金からなる端子とを接続したものが知られている。電線の導体と端子とが異種金属から形成されたこのような端子付電線では、電線の導体と端子との接続部分が被水すると、イオン化傾向が大きい卑な金属(アルミニウム又はアルミニウム合金)からなる電線の導体が電解質溶液(塩水など)に溶出してガルバニック腐食と呼ばれる腐食が生じ、その結果、導体において素線切れが生じて電気的信頼性が低下する可能性がある。
【0003】
このようなガルバニック腐食を防止するために、電線の導体が露出している部分を樹脂で覆うことも考えられている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような方法では、端子と電線の素線との間に形成される狭い空間に樹脂を浸透させる必要があり、電線の導体が露出している部分を完全に樹脂で覆って保護することが難しい。また、樹脂が十分に充填されない場合には端子の内部に空間が生じることとなるが、電線の被覆が熱などによって収縮して生じた隙間などからこの空間に電解質溶液が入り込んで腐食が進行する可能性も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−238500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、端子と電線の導体との間で良好な電気的導通を図りつつ、ガルバニック腐食を抑制することができる端子付電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、端子と電線の導体との間で良好な電気的導通を図りつつ、ガルバニック腐食を抑制することができる端子付電線が提供される。この端子付電線は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる複数の素線から構成される導体と、該導体を被覆する絶縁材とを有する電線と、上記電線の上記絶縁材が除去された絶縁材除去部の先端部を被覆する第1の樹脂と、上記電線の上記絶縁材の縁部を挟んで両側に位置する上記絶縁材除去部と上記絶縁材とを一定の長さにわたって被覆する第2の樹脂と、銅又は銅合金からなる端子とを備える。上記第1の樹脂と上記第2の樹脂とは互いに離間しており、上記第1の樹脂と上記第2の樹脂との間で上記絶縁材除去部の上記導体が露出する導体露出部が形成される。上記端子は、上記導体露出部に圧着される導通部と、上記導通部と一体的に形成され、上記第1の樹脂に圧着される第1の樹脂固定部と、上記導通部と一体的に形成され、上記第2の樹脂に圧着される第2の樹脂固定部とを有している。上記第1の樹脂固定部には第1の開口が形成され、該第1の開口内で上記第1の樹脂が盛り上がっている。
【0007】
このような構成によれば、導体露出部の両側の絶縁材除去部がそれぞれ第1の樹脂及び第2の樹脂で完全に被覆されているため、導体露出部が被水することが抑制され、その結果、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。また、第1の樹脂と第2の樹脂との間の導体露出部に導通部が直接圧着されるので、強い力を必要とせずに端子と電線の導体との間の電気的導通を図ることができる。したがって、圧着時に導体露出部に過度な力が作用することが抑制され、素線切れを防ぐことができる。
【0008】
また、第1の樹脂固定部には第1の開口が形成されているため、第1の樹脂固定部を第1の樹脂に圧着する際に第1の樹脂が第1の開口に逃げるため、圧着後には第1の開口に逃げた第1の樹脂が第1の開口内で盛り上がって固定される。これにより、盛り上がった第1の樹脂が第1の開口に引っ掛かるので、第1の樹脂が大きく位置ずれを生じて絶縁材除去部が外部に露出することが防止され、その結果、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
【0009】
上記端子の上記第2の樹脂固定部に第2の開口が形成され、該第2の開口内で上記第2の樹脂が盛り上がっていてもよい。この場合には、第2の樹脂固定部を第2の樹脂に圧着する際に第2の樹脂が第2の開口に逃げるため、圧着時には過度の力が第2の樹脂に被覆された絶縁材除去部の導体に作用することが抑制され、素線切れを防ぐことができる。また、圧着後には第2の開口に逃げた第2の樹脂が第2の開口内で盛り上がって固定される。これにより、盛り上がった第2の樹脂が第2の開口に引っ掛かるので、第2の樹脂が大きく位置ずれを生じて絶縁材除去部が外部に露出することが防止され、その結果、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
【0010】
上記端子の上記導通部は、上記導体露出部の外面に接触するセレーションを備えることが好ましい。このようなセレーションにより端子の導通部と導体露出部との電気的接触をより確実にすることができる。
【0011】
圧着時に絶縁材除去部に過度な力を作用させないために、上記第1の樹脂及び上記第2の樹脂としてウレタンアクリレート系樹脂を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導体露出部の両側の絶縁材除去部がそれぞれ第1の樹脂及び第2の樹脂で完全に被覆されているため、導体露出部が被水することが抑制され、その結果、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。また、第1の樹脂と第2の樹脂との間の導体露出部に導通部が直接圧着されるので、強い力を必要とせずに端子と電線の導体との間の電気的導通を図ることができる。したがって、圧着時に導体露出部に過度な力が作用することが抑制され、素線切れを防ぐことができる。また、第1の樹脂固定部には第1の開口が形成されているため、第1の樹脂固定部を第1の樹脂に圧着する際に第1の樹脂が第1の開口に逃げるため、圧着後には第1の開口に逃げた第1の樹脂が第1の開口内で盛り上がって固定される。これにより、第1の樹脂が大きく位置ずれを生じて絶縁材除去部が外部に露出することが防止され、その結果、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態における端子付電線を模式的に示す平面図である。
図2図2は、図1に示す端子付電線を模式的に示す側面図である。
図3図3は、図2に示す端子付電線の端子に取り付けられる前の電線を示す平面図である。
図4図4は、図3に示す端子付電線の端子に取り付けられる前の電線を第1の樹脂及び第2の樹脂とともに示す平面図である。
図5図5は、図1の端子付電線の端子の一部の展開図である。
図6図6は、図4に示す電線、第1の樹脂、及び第2の樹脂と図5の端子との位置関係を説明する平面図である。
図7図7は、図1に示す端子付電線を製造する工程を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る端子付電線の実施形態について図1から図7を参照して詳細に説明する。なお、図1から図7において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図7においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。
【0015】
図1は本発明の一実施形態における端子付電線1を模式的に示す平面図、図2は側面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態の端子付電線1は、X方向に延びる電線10と、電線10に取り付けられた端子20とを備えている。なお、以下の説明では、図1における+X方向側を「前」、−X方向側を「後」ということがある。
【0016】
図3は、端子20に取り付けられる前の電線10を示す平面図である。図3に示すように、電線10は、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、これらを総称してアルミニウム材料という)からなる複数の素線31から構成される導体32と、この導体32を被覆する絶縁材33とを有している。電線10の絶縁材33は、+X方向側の端部において一定の長さにわたって除去されており、これにより導体32が露出する絶縁材除去部34が形成されている。また、図1及び図2に示すように、電線10の絶縁材除去部34の先端部は第1の樹脂51で被覆されており、電線10の絶縁材33の一部と絶縁材除去部34の一部とが第2の樹脂52で被覆されている。なお、図1から図7においては、理解を容易にするために、第1の樹脂51と第2の樹脂52にハッチングを付している。
【0017】
図4は、第1の樹脂51及び第2の樹脂52が形成された電線10を示す平面図である。上述したように、電線10の絶縁材除去部34の先端部34Aは第1の樹脂51で被覆されている。また、電線10の絶縁材33の前縁部33Aから+X方向に延びる絶縁材除去部34の一部34Bと、絶縁材33の前縁部33Aから−X方向に延びる絶縁材33の一部33Bとが第2の樹脂52で被覆されている。換言すれば、第2の樹脂52は、絶縁材33の前縁部33Aを挟んで両側に位置する絶縁材除去部34と絶縁材33とをX方向に沿って一定の長さにわたって被覆している。また、第1の樹脂51と第2の樹脂52とはX方向において互いに離間しており、第1の樹脂51と第2の樹脂52との間には、絶縁材除去部34における電線10の導体32が露出する導体露出部34Cが形成されている。
【0018】
なお、第1の樹脂51及び第2の樹脂52は、同一の材料から形成されていてもよいし、異なる材料から形成されていてもよい。また、第1の樹脂51及び第2の樹脂52としては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、吸湿硬化樹脂など各種の樹脂を用いることができるが、圧着時に絶縁材除去部34に過度な力を作用させないために、ウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂などの軟性樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
端子20は、銅又は銅合金(以下、これらを総称して銅材料という)の板材を所定の端子形状に打ち抜き、これに曲げ加工を施すことにより作製されるものである。図1及び図2に示すように、この端子20は、電線10の絶縁材33上の第2の樹脂52に圧着される1対の被覆保持片41と、被覆保持片41の前方に配置される1対の圧着片42(圧着部)と、圧着片42の前方に配置され、相手方端子(図示せず)と電気的に接続されるボックス部43とを含んでいる。
【0020】
図5は、端子20のボックス部43を除く部分の展開図である。図5に示すように、端子20の圧着片42は、X方向に沿って延びる基部45からそれぞれ+Y方向及び−Y方向に延びている。また、端子20の被覆保持片41は、基部45からそれぞれ+Y方向及び−Y方向に延びている。
【0021】
それぞれの圧着片42は、略矩形の形状を有しており、X方向の中央に配置された導通部60と、導通部60の前方に導通部60と一体的に形成される第1の樹脂固定部71と、導通部60の後方に導通部60と一体的に形成される第2の樹脂固定部72とを含んでいる。導通部60の表面には、電線10の絶縁材除去部34の導体露出部34C(図4参照)の表面に形成される酸化皮膜を突き破るための微小な突起(セレーション)63が形成されている。第1の樹脂固定部71には矩形状の第1の開口61が形成されている。また、第2の樹脂固定部72には矩形状の第2の開口62が形成されている。
【0022】
図6は、電線10と第1の樹脂51と第2の樹脂52と端子20との位置関係を説明する平面図である。図6に示すように、第1の樹脂51は、第1の樹脂固定部71の第1の開口61のX方向の全幅を横断するように配置され、その一部はX方向において導通部60と重なっている。また、第2の樹脂52は、第2の樹脂固定部72の第2の開口62のX方向の全幅を横断し、さらに被覆保持片41のX方向の全幅を横断するように配置されている。第2の樹脂52の一部はX方向において導通部60と重なっている。
【0023】
第1の樹脂51及び第2の樹脂52と端子20とがこのような位置関係にあるため、端子20の圧着片42を加締めることにより、図1及び図2に示すように、第1の樹脂固定部71が第1の樹脂51に圧着され、導通部60が絶縁材除去部34の導体露出部34Cに圧着され、第2の樹脂固定部72が第2の樹脂52に圧着されている。また、端子20の被覆保持片41を加締めることにより、電線10の絶縁材33上の第2の樹脂52に被覆保持片41が圧着されている。
【0024】
次に、このような端子付電線1の製造方法について説明する。まず、図3に示すように、電線10の絶縁材33の+X方向側の端部を一定の長さにわたって除去し、素線31を露出させて絶縁材除去部34を形成する。
【0025】
そして、図4に示すように、電線10の絶縁材除去部34の先端部34Aに第1の樹脂51として例えばウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂を塗布するとともに、絶縁材除去部34の一部34Bと電線10の絶縁材33の一部33Bとに第2の樹脂52として例えばウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂を塗布する。このとき、塗布する第1の樹脂51及び第2の樹脂52のX方向の長さ及び位置は、端子20に対して図6に示すような関係となるように調整する。そして、塗布した第1の樹脂51及び第2の樹脂52に例えば紫外線を照射することで第1の樹脂51及び第2の樹脂52を硬化させる。
【0026】
次に、図7に示すように、第1の樹脂51及び第2の樹脂52が形成された電線10を組立前の端子20上に載置する。このとき、X方向において、第1の樹脂51が圧着片42の第1の開口61の全幅を横断して導通部60と重なり、また第2の樹脂52が圧着片42の第2の開口62の全幅を横断して導通部60と重なり、第1の樹脂51と第2の樹脂52との間で露出する導体露出部34Cが導通部60と重なるように電線10のX方向の位置を調整する。本実施形態では、X方向において第2の樹脂52が被覆保持片41の全幅と重なるように形成されているが、X方向において第2の樹脂52が被覆保持片41と重なっていなくてもよい。
【0027】
そして、被覆保持片41を加締めて第2の樹脂52に被覆保持片41を圧着し、圧着片42を加締めて第1の樹脂51、導体露出部34C、及び第2の樹脂52にそれぞれ第1の樹脂固定部71、導通部60、及び第2の樹脂固定部72を圧着する。なお、被覆保持片41による圧着と圧着片42による圧着はいずれを先に行ってもよい。
【0028】
このように、電線10を端子20に取り付ける前に電線10の絶縁材除去部34に第1の樹脂51及び第2の樹脂52を塗布し、その後、電線10を端子20に取り付けているので、導体露出部34Cの両側の絶縁材除去部34がそれぞれ第1の樹脂51及び第2の樹脂52で完全に被覆されることとなる。したがって、導体露出部34Cが被水することが抑制され、その結果、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
【0029】
また、圧着片42を加締めるときに、導体露出部34Cに導通部60が直接圧着されるので、強い力を必要とせずに端子20と電線10の導体32との間の電気的導通を図ることができる。したがって、導体露出部34Cに過度な力が作用することが抑制され、素線切れを防ぐことができる。特に本実施形態では、導体露出部34Cに圧着される導通部60の表面にセレーション63が形成されているため、導通部60と導体露出部34Cとの電気的接触がより確実になる。
【0030】
また、圧着片42の第1の樹脂固定部71には第1の開口61が形成されているため、圧着時に第1の樹脂51が第1の開口61に逃げて第1の開口61内で第1の樹脂51が盛り上がる。同様に、圧着片42の第2の樹脂固定部72には第2の開口62が形成されているため、圧着時に第2の樹脂52が第2の開口62に逃げて第2の開口62内で第2の樹脂52が盛り上がる。圧着後は、図2に示すように、第1の開口61及び第2の開口62内で盛り上がった第1の樹脂51及び第2の樹脂52がそのまま固定される。したがって、盛り上がった第1の樹脂51及び第2の樹脂52がそれぞれ第1の開口61及び第2の開口62に引っ掛かるので、第1の樹脂51及び第2の樹脂52が大きく位置ずれを生じて絶縁材除去部34が外部に露出することが防止され、その結果、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
【0031】
以上の工程により、図1及び図2に示すような端子付電線1が完成する。このようにして完成した端子付電線1においては、上述したように、導体露出部34Cの両側の絶縁材除去部34がそれぞれ第1の樹脂51及び第2の樹脂52で完全に被覆されるため、導体露出部34Cが被水することが抑制され、その結果、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。また、導体露出部34Cに導通部60が直接圧着されるので、強い力を必要とせずに端子20と電線10の導体32との間の電気的導通を図ることができる。
【0032】
また、上述のように、第1の樹脂51及び第2の樹脂52を硬化させてから圧着片42を第1の樹脂51及び第2の樹脂52に圧着しているので、圧着作業を安定して行うことができる。一方で、圧着時には、上述のように第1の樹脂固定部71の第1の開口61及び第2の樹脂固定部72の第2の開口62に第1の樹脂51及び第2の樹脂52が逃げることができる程度の軟性も必要であるので、に第1の樹脂51及び第2の樹脂52として上述したようにウレタンアクリレート系紫外線硬化型樹脂などの軟性樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
上述の例では、圧着片42の導通部60にセレーション63を形成しているが、導通部60と導体露出部34Cとの電気的導通が可能であればセレーション63は必ずしも必要ではない。また、圧着片42の第2の樹脂固定部72に第2の開口62が形成されていなくてもよい。
【0034】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
1 端子付電線
10 電線
20 端子
31 素線
32 導体
33 絶縁材
33A 前縁部
34 絶縁材除去部
34A 先端部
34C 導体露出部
41 被覆保持片
42 圧着片
43 ボックス部
45 基部
51 第1の樹脂
52 第2の樹脂
60 導通部
61 第1の開口
62 第2の開口
63 セレーション
71 第1の樹脂固定部
72 第2の樹脂固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7