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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-192652(P2019-192652A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】新しい高表面伝導率電極材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/58 20100101AFI20191004BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20191004BHJP
   H01M 10/0565 20100101ALI20191004BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20191004BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20191004BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20191004BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20191004BHJP
   H01G 11/46 20130101ALI20191004BHJP
   H01G 11/56 20130101ALI20191004BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20191004BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20191004BHJP
   G02F 1/155 20060101ALI20191004BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20191004BHJP
   G02F 1/1523 20190101ALI20191004BHJP
   C01B 21/084 20060101ALI20191004BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20191004BHJP
   C01G 45/00 20060101ALI20191004BHJP
   C01B 33/02 20060101ALI20191004BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20191004BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20191004BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20191004BHJP
   C01G 23/04 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
   H01M4/58
   H01M4/36 C
   H01M10/0565
   H01M10/052
   H01M10/0569
   H01M10/0568
   H01M4/485
   H01G11/46
   H01G11/56
   H01G11/60
   H01G11/62
   G02F1/155
   G02F1/15 508
   G02F1/1523
   C01B21/084
   C01B25/45 Z
   C01G45/00
   C01B33/02 Z
   C01B33/12 A
   C01G49/00 A
   C01G23/00 B
   C01G23/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-140658(P2019-140658)
(22)【出願日】2019年7月31日
(62)【分割の表示】特願2018-115540(P2018-115540)の分割
【原出願日】2013年10月2日
(31)【優先権主張番号】2270771
(32)【優先日】1999年4月30日
(33)【優先権主張国】CA
(71)【出願人】
【識別番号】599116904
【氏名又は名称】アセップ インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】503337254
【氏名又は名称】セーエヌエールエス
(71)【出願人】
【識別番号】599116890
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ モントリオール
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー ラーブ
(72)【発明者】
【氏名】シモン ベスナー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン シモノー
(72)【発明者】
【氏名】アライン バレー
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル アーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−フランソワーズ マグナン
【テーマコード(参考)】
2K101
4G002
4G047
4G048
4G072
5E078
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB04
2K101DC02
2K101DC52
2K101EG52
2K101EG54
2K101EG62
4G002AA12
4G002AD02
4G002AE05
4G047CA06
4G047CA07
4G047CB08
4G047CC03
4G047CD01
4G048AA01
4G048AB04
4G048AC08
4G048AD01
4G048AD02
4G072AA38
4G072BB02
4G072BB09
4G072GG02
4G072JJ02
4G072QQ06
4G072QQ09
4G072UU30
5E078AA01
5E078AA05
5E078AB01
5E078BA27
5E078BA31
5E078DA02
5E078DA06
5E078DA12
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK04
5H029AL01
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM16
5H029CJ02
5H029CJ22
5H029CJ24
5H029DJ08
5H029DJ09
5H029EJ04
5H029EJ12
5H029EJ14
5H029HJ14
5H029HJ15
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA12
5H050BA06
5H050BA15
5H050BA18
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA09
5H050CA10
5H050CB01
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA09
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA23
5H050EA28
5H050FA17
5H050FA18
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA22
5H050GA24
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
【課題】電極材料の提供。
【解決手段】本発明ではアルカリイオン及び電子を電解質と交換することによってレドックス反応を行うことができる電極材料(B)を提供する。本発明の用途は、1次(2次)電気化学ジェネレーター、スーパーキャパシター、及びスーパーキャパシタータイプの光変調装置である。Aの一般式に対応する複合酸化物を含む電極材料であって、Aは、アルカリ金属を包含し、Mは、少なくとも1種の遷移金属、及び随意に少なくとも1種の非遷移金属、又はそれらの混合物を包含し、Zは、少なくとも1種の非金属を包含し、Oは酸素であり、Nは窒素であり、且つFはフッ素であり、また係数a、m、z、o、n、fはそれぞれ0以上であり且つ電気的中性を確実にするように選択され、ここで、伝導性炭質材料が前記材料の表面に均一に堆積して、この材料の粒子の表面において、実質的に規則的な電場分布が得られる電極材料。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質との電子及びアルカリイオン交換によってレドックス反応を行うことができる電極材料に関する。本出願は、1次(バッテリー)又は2次電気化学ジェネレーター、スーパーキャパシター、及びエレクトロクロミックタイプの光変調デバイスの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
挿入化合物(以下では、電気的に活性な材料又はレドックス材料として示す)は既知であり、それらの操作は、アルカリイオン、特にリチウムイオンと、少なくとも1種の遷移元素の荷電子とを交換して、固体マトリックスの中立性を維持することに基づいている。材料構造の部分的又は完全な維持は、反応の可逆性を可能にする。複数の相をもたらすレドックス反応は通常は不可逆的であり、又は部分的にのみ可逆的である。硫黄−硫黄結合の可逆的な切断、又は共役ポリマーを包含するキノノイド型の芳香族有機構造の転移で起こるレドックス反応によって、固相で反応を行うことも可能である。
【0003】
挿入材料は、特に電気化学ジェネレーター、スーパーキャパシター、又は光変調デバイス(エレクトロクロミックデバイス)で使用される電気化学反応活性成分である。
【0004】
イオン−電子交換反応の進行は、電子とイオン、特にリチウムイオンとを同時に挿入する2重伝導性挿入材料を必要とする。これらの伝導性のいずれか一方が弱すぎると、特に電気化学ジェネレーター又はスーパーキャパシターにおいて、材料の使用のために必須の動的な交換を確実にすることができない。この問題は、いわゆる「複合」電極の使用によって部分的に解決することができる。複合電極では、電極材料は、電解質とポリマーバインダーとを含むマトリックス中に分散させる。電解質が、溶媒の存在下で作用するポリマーゲル又はポリマー電解質である場合、機械的な結合の役割は高分子によって直接に行われる。ゲルは、極性液体及び塩を保持しており且つ溶媒和している又は溶媒和していないポリマーマトリックスを意味している。ゲルは、極性液体の伝導性を少なくとも一部は維持しながら、混合物に固体の機械的性質を与える。液体電解質と電極材料は、少ない割合の不活性ポリマーによって、すなわち溶媒と相互作用しないポリマーによって、接触を維持させることができる。これらの手段のいずれにおいても、それぞれの電極材料粒子はそのように電解質に取り囲まれており、電極材料表面のほぼ全体をイオンと接触させることができる。電気的な交換を促進するために、一般に従来技術では、上述の電解質及び電極材料の混合物の一方に、伝導性材料の粒子を加える。そのような粒子は、非常に微細化されている。一般に、カーボンに基づく材料、特にカーボンブラック(Shawinigan又はKetjenblack(商標))を選択する。しかしながら、そのような材料の体積分率は低く維持しなければならない。これは、そのような材料が、特にポリマー中において、それらのサスペンションのレオロジーを、大きく変化させて、反応速度、すなわち利用できる電力及び使用可能な容量の割合に関して、複合電極の操作効率の低下をもたらすこと及び過剰な気孔をもたらすことによる。カーボン粒子を低濃度で使用する場合、これらのカーボン粒子自身は鎖状構造であるので、電極材料とこれらのカーボン粒子との接触点はかなり少ない。結果としてそのような構成は、電気的に活性な物質における電位分布を不良にする。特に、過剰な濃度及び不足は、以下に示す3重接合点において起こると考えられる:
【化1】
【0005】
移動可能なイオンの局所的な濃度の過剰な偏差及び電気的に活性な材料内における勾配は、多数のサイクルにわたる電極操作の可逆性に好ましくない影響を与える。これらの化学的及び機械的な制約及びストレスは、微視的なレベルで電気的に活性な材料粒子の分解(粒状化)をもたらし、それらの一部はカーボン粒子との接触を失う傾向があり、従って電気化学的に不活性になる。材料構造は、遷移金属誘導体又は電極中の他の要素の放出及び新しい相の発生でも破壊される。これらの有害な現象は、電極に必要とされる電流密度及び電力が大きいと、かなり容易に観察される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、Aの一般式に対応する複合酸化物を含む電極材料を提供し、ここで、
Aは、アルカリ金属を含み、
Mは、少なくとも1種の遷移金属、及び随意に少なくとも1種の非遷移金属、例えばマグネシウム又はアルミニウム、並びにそれらの混合物を含み、
Zは、少なくとも1種の非金属を含み、
Oは酸素、Nは窒素、且つFはフッ素である。
また、係数a、m、z、o、n、fはそれぞれ0以上であり且つ電気的中性を確実にするように選択する。ここで、伝導性炭質材料は前記材料の表面に均一に堆積させて、この材料の粒子表面において実質的に規則的な電場分布を得る。酸素、フッ素、及び窒素のイオン半径が同様であるので、電気的な中性が維持される限り、これらの元素の相互置換が可能になる。単純化のために及び酸素が最も頻繁に使用される元素であることを考慮して、これらの電極材料は複合酸化物と呼ぶ。好ましい遷移金属は、鉄、マンガン、バナジウム、チタン、モリブデン、ニオブ、タングステン、亜鉛、及びそれらの混合物を含む。好ましい非遷移金属は、マグネシウム及びアルミニウムを含む。好ましい非金属は、硫黄、セレン、リン、ヒ素、シリコン、ゲルマニウム、ホウ素、及びそれらの混合物を含む。
【0007】
好ましい態様においては、炭質材料の最終的な質量分率は0.1〜55%、より好ましくは0.2〜15%である。
【0008】
更に好ましい態様においては、複合酸化物は、リチウム及び遷移金属のスルフェート類、ホスフェート類、シリケート類、オキシスルフェート類、オキシホスフェート類、オキシシリケート類及びそれらの混合物、並びにその混合物を含む。構造的な安定性のために、遷移金属を部分的に、同じイオン半径を持つがレドックスプロセスに参加しない元素で置換することも重要である。例えば、マグネシウム及びアルミニウムの濃度は好ましくは1〜25%である。
【0009】
本発明は、少なくとも1つの電極が本発明の電極材料で作られている電気化学セルにも関する。この電池は、1次若しくは2次バッテリー、スーパーキャパシター、又は光変調デバイスとして使用することができ、1次又は2次バッテリーは好ましい使用形態である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、従来技術による電極(A)と本発明による電極(B)との違いを表す図であり、本発明による電極(B)では、電気的に活性な物質の粒子は炭質コーティングによって被覆されている。
図2図2は、コーティングされていない試料と、炭質の堆積物でコーティングされたLiFePO試料との比較を示している。これらの結果は、80℃において3〜3.7Vで20mV・h−1のサイクルを行ったLiFePO/POE20LiTFSI/Liバッテリーのサイクリックボルタンメトリーによって得た。ここでこの図は、1回目のサイクルを示している。
図3図3は、5回目のサイクルの場合の、図2と同様な図である。
図4図4は、カーボンでコーティングされたLiFePO試料とコーティングされていないLiFePO試料をそれぞれ含むバッテリーの、サイクルの間の容量の評価を示している。
図5図5は、カーボンでコーティングされたLiFePOを含むバッテリーの性能を示しており、C/1に対応する充電及び放電速度で、80℃における3〜3.8Vのインテンショスタティック様式でサイクルを行っている。
図6図6は、室温において3〜3.7V及び20mV・h1でサイクルを行ったカーボンでコーティングされたLiFePO/γ−ブチロラクトンLiTFSI/Liの、電流対時間の評価を示している。
図7図7は、カーボンでコーティングされた試料を含有するLiFePO/POE20LiTFSI/Liの電流対時間の評価を示している。
図8図8は、カーボンでコーティングされたLiFePO試料とコーティングされていないLiFePO試料の比較をサイクルを行って示している。結果は、80℃において3〜3.7V及び20mV・h−1でサイクルを行ったLiFePO/POE20LiTFSI/Liバッテリーのサイクリックボルタンメトリーによって得た。ここでは、1回目のサイクルを示している。
図9図9は、5回目のサイクルの場合の、図8と同様な図である。
図10図10は、カーボンでコーティングしたLiFePO試料とコーティングしていないLiFePO試料でそれぞれ調製したバッテリーのサイクル間の容量の評価を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、化学的に堆積させた伝導性炭質材料の均一コーティングによって被覆され、表面又は大部分が特に様々な組成の電極材料を製造することを可能にする。本発明の電極材料における均一コーティングの存在は、従来技術の伝導性添加剤又はカーボン粉末で得られる点状(punctual)の接触と比較すると、電気的に活性な材料の粒子表面での電場の規則的な分布を可能にする。更に、イオンの濃度勾配はかなり小さくなる。粒子表面での電気化学反応のそのような改良された分布は、材料構造の完全性を維持し、且つ電極での電流密度及び電力の利用可能性に関する速度論を改良する。これは、接近可能な表面を増加させることによる。
【0012】
本明細書においては、炭質材料とは、主に、すなわち60〜100モル%の炭素を含み、室温における導電率が10−6S/cmよりも大きい、好ましくは10−4S/cmよりも大きい固体ポリマーを意味している。電気化学的な操作の間のカーボンの化学的な不活性さに影響を与えない限り存在していてよい他の元素は、水素、酸素、窒素である。炭質材料は、熱的な分解又は脱水素化、例えば様々な有機材料の部分的な酸化によって得ることができる。一般に、一段階の反応又は一連の反応によって、複合酸化物の安定性に影響を与えないで所望の性質を有する固体炭質材料をもたらす任意の材料は、適当な先駆材料である。好ましい先駆材料としては、限定するわけではないが、炭化水素類及びそれらの誘導体、特に多環芳香族部分を有する炭化水素類及びそれらの誘導体、例えばピッチ及びタールの誘導体、ペレリン及びその誘導体;多水酸基(polyhydric)化合物類、例えば糖類及びカーボンハイドレート類及びその誘導体;並びにポリマー類を挙げることができる。そのようなポリマーの好ましい例としては、ポリオレフィン類、ポリブタジエン類、ポリビニルアルコール、アルデヒドとの反応で得られるものを含むフェノール縮合生成物類、フルフリルアルコールから誘導されたポリマー類、スチレンのポリマー誘導体類、ジビニルベンゼン、ナフタレン、ペリレン、アクリロニトリル、ビニルアセテート;セルロース、スターチ、及びそれらのエステル類及びエーテル類、並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0013】
本発明の炭質材料コーティングによって得られる粒子の表面における伝導性の改良は、導電性が十分ではない電気的に活性な物質を含む電極の満足な操作を可能にして、許容できる性能を得る。有益な電圧範囲でのレドックス対を持ち及び/又は高価でない若しくは毒性がない元素を使用する複合酸化物であって、伝導性コーティングが存在しなければ伝導性が小さすぎて使用することができない複合酸化物が、この伝導性コーティングが存在することによって電極材料として有益になる。レドックス性であるが導電率が小さすぎる相混合物類又は構造物の選択の幅は、リチウムと遷移金属の混合酸化物である従来技術の化合物類でよりもかなり広くなる。レドックス構造が、非金属類(メタロイド類)から選択される少なくとも1種の元素、例えば硫黄、セレン、リン、ヒ素、シリコン、又はゲルマニウムを含むことが特に可能である。ここで、比較的大きい電気陰性度は、導電率を犠牲にするが、遷移元素のレドックス電位の変更を可能にする。同様な効果は、フッ素又は窒素での酸素原子の完全な又は部分的な置換によって得ることができる。
【0014】
本発明のレドックス材料は、Aの一般式で示される。ここで、
Aは、Li、Na、又はKのようなアルカリ金属を含み、
Mは、少なくとも1種の遷移金属、及び随意に、マグネシウム又はアルミニウムのような少なくとも1種の非遷移金属、又はそれらの混合物を含み、
Zは、S、Se、P、As、Si、Ge、Bのような少なくとも1種の非金属を含み、
Oは酸素であり、
Nは窒素であり、そしてFはフッ素であり、ここで、これらの元素は、F、O2−、及びN3−のイオン半径が同様であるので、複合酸化物中の酸素を置換することができ、また
それぞれの係数a、m、z、o、n、及びfはそれぞれ独立に0以上で、この材料の電気的中性を確実にする。
【0015】
好ましい本発明の複合酸化物は一般式が、Li1+xMP1−xSi;Li1+x−yMP1−xSi4−y;Li3−x+z(P1−x−zSi;Li3+u−x+z2−z−wFeTi(P1−x−zSi;又はLi4+xTi12Li4+x−2yMgTi12であるものを含み、ここで、w≦2;0≦x,y≦1;z≦1であり、MはFe又はMnを含む。
【0016】
炭質コーティングは、本発明の一部である様々な技術によって堆積させることができる。好ましい方法は、レドックス材料の存在下での有機材料、好ましくは炭素に富む有機材料の熱分解を含む。特に有利なものは、レドックス材料粒子の表面において均一な層を、機械的に又は溶液からの含浸若しくはその場での重合によって容易に成形するメソ分子類及びポリマー類である。その後のそれらの熱分解又は脱水素化工程は、レドックス材料粒子の表面において、炭質材料の均一で微細な層を提供する。熱分解又は脱水素化反応がレドックス材料に好ましくない影響を与えないことを確実にするために、材料から遊離する酸素の圧力が、熱分解によって作られるカーボンの酸化を防ぐのに十分に小さい組成を選択することが好ましい。化合物Aの酸素活性は、アルカリ金属の濃度によって制御することができ、これは、遷移元素又はこの材料に含まれる元素類の酸化状態を決定する。このことは本発明に含まれる。特に重要なものは組成であり、アルカリ金属濃度の係数「a」は、Fe2+、Mn2+、V2+、V3+、Ti2+、Ti3+、Mo3+、Mo4+、Nb3+、Nb4+、及びW4+の酸化状態を維持することを可能にする。一般に、0℃で10−20bar程度の酸素圧、及び900℃で10−10bar程度の酸素圧は、熱分解によるカーボンの堆積を可能にするのに十分に低圧である。ここでは、熱分解に起因する炭化水素質残留物の存在下でのカーボン形成の反応速度は、レドックス材料からの酸素の形成よりも不活性であり、また比較的迅速である。平衡における酸素圧が比較的低い材料と共に材料を選択することも、可能であり有利である。
C+O ←→ CO
【0017】
この場合には、炭質材料は複合酸化物と比較して熱反応速度的に安定であってよい。対応する圧力は以下の式によって得ることができる:
InP(O)=InP(CO)=94050/{R(273.2+θ)}
ここで、Rは理想気体定数(1,987cal・mol−1・K−1)であり、
θは温度(℃)である。
【0018】
表1は、複数の温度における酸素圧を示す。
【表1】
【0019】
以下の式に従って、800℃未満の温度において酸化炭素の不均化反応によってカーボンの堆積を行うこともできる:
2CO ←→ C+CO
【0020】
この反応は発熱反応であるが低速である。複合酸化物粒子は、100〜750℃、好ましくは300〜650℃の温度で、純粋な一酸化炭素又は不活性ガスで希釈した一酸化炭素と接触させることができる。有利には、反応を流動層で行って、気相と固相との大きい交換面積を与える。複合酸化物中に存在する遷移金属類のカチオン及び元素は、不均化反応の触媒である。粒子の表面に少量の遷移金属塩類、好ましくは鉄、ニッケル、又はコバルトを加えることが重要であることもある。これらの元素は、不均化反応の触媒として特に活性である。一酸化炭素の不均化反応に加えて、気体状の炭化水素を中間の温度から高温で分解して、カーボン堆積物をもたらすこともできる。特に重要な操作は、生成エネルギーが小さい炭化水素類、例えばアルケン類、アルキン類、又は芳香環類である。
【0021】
1つの様式では、炭質材料の堆積は、アルカリ金属類Aの組成の変更と同時に行うことができる。これを行うために、有機酸又は多価酸の塩を複合酸化物と混合する。もう1つの可能性は、その場でのモノマー又はモノマー混合物類の重合を含む。熱分解によって、化合物は表面に炭質材料を堆積させ、且つアルカリ金属Aを以下の式に従って組み込む:
a’ + Aa−a’R’
→ A
ここで、R’は有機ラジカルであり、ポリマー鎖の一部である
【0022】
この反応を受ける化合物としては、限定をするわけではないがカルボン酸の塩を挙げることができる。カルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、クエン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、安息香酸、フタル酸、プロピオン酸、アセチレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ペリレンテトラカルボン酸及びジフェン酸を挙げることができる。
【0023】
明らかに、アルカリ元素塩とアルカリ元素を持たない有機材料との熱分解は、複合化合物の所望の化学量論比をもたらすこともある。
【0024】
以下の式による炭素−ハロゲン結合の還元によって、特に低温又は中間の範囲の温度、400℃未満の温度で、炭質材料堆積物を得ることもできる:
CY−CY + 2e → −C=C− + 2Y
ここで、Yはハロゲン又は疑似(pseudo−)ハロゲンを示している。ここでこの疑似ハロゲンという用語は、イオンY の形で存在することができる有機又は無機ラジカルであって、対応するプロトン化化合物HYを作ることができるものを意味している。ハロゲン及び疑似ハロゲンの例としては、F、Cl、Br、I、CN、SCN、CNO、OH、N、RCO、RSOを挙げることができ、ここでRはH又は有機ラジカルである。CY結合の還元による形成は、還元元素の存在下で行うことが好ましい。この還元元素としては、水素、亜鉛、マグネシウム、Ti3+イオン、Ti2+イオン、Sm2+イオン、Cr2+イオン、V2+イオン、テトラキス(ジアルキルアミノエチレン)、又はホスフィン類を挙げることができる。これらの試薬は、電気化学的に再生すること又は得ることができる。更に、還元速度を増加させる触媒を使用することも有利である。パラジウム又はニッケルの誘導体類は、特に2,2’−ビピリジンのような窒素化合物類又はリン化合物類との錯体の形で、効果的である。同様に、これらの化合物は、上述のような還元剤の存在下で活性な形で化学的に又は電気化学的にもたらすことができる。還元によってカーボンをもたらすことができる化合物類としては、ペルハロゲン化炭素類、特にポリマーの形のペルハロゲン化炭素類、ヘキサクロロブタジエン、及びヘキサクロロシクロペンタジエンを挙げることができる。
【0025】
低温のプロセスでカーボンを遊離させるもう1つの様式は、以下の式での水素化化合物HYの除去を含む、ここでYは先に定義したようなものである:
−CH−CY− + B → −C=C− + BHY
【0026】
還元によってカーボンをもたらすことができる化合物類は、等しい数の水素原子とY基を有する有機化合物類を含む。この有機化合物類としては、ハロゲン化炭化水素、特にポリマーの形のハロゲン化炭化水素、例えばビニリデンポリフルオライド、ポリクロライド、若しくはポリブロミド、又は炭素水化物を挙げることができる。脱水(疑似)ハロゲン化は、塩基をHY化合物と反応させて塩を作ることによって、室温を含む低温で行うことができる。適当な塩基の例としては、第3塩基、アミン類、アミジン類、クアニジン類、イミダゾール類、無機塩基類、例えばアルカリヒドロキシド類、強塩基として作用する有機金属化合物類、例えばA(N(Si(CH、LiN[CH(CH、及びブチルリチウムを挙げることができる。
【0027】
最後の2つの方法では、カーボンの堆積の後で材料をアニールすることが有利なことがある。そのような処理は、炭質堆積物の構造又は結晶性を改良する。炭質材料による複合酸化物の還元の可能性を防ぐために、この処理は100℃〜1,000℃、好ましくは100℃〜700℃の温度で行うことができる。
【0028】
一般に、十分な導電性を確実にする均一な炭質材料のコーティングを得ることが可能である。すなわち、少なくとも酸化物粒子のイオン伝導性と同程度の導電性を得ることが可能である。厚いコーティングは十分な伝導性を提供して、炭質材料でコーティングされた複合酸化物粒子と、電解質、液体、又は電解質で湿らせた高分子又は不活性高分子のバインダーとの2成分混合物を、粒子間の単純な接触によって伝導性にする。一般に、そのような性質は、10〜70%の体積分率で見出すことができる。
【0029】
炭質材料の堆積物を十分に薄くすることを選択して、粒子の表面での電気化学電位の分布を確実にしながら、イオンの通過を妨害しないようにすることが有利であることもある。この場合には、2成分混合物は、電極基材(電流コレクター)との電子交換を確実にするのに十分な導電性を持たない。微粉末又はファイバーの形の第3の導電性成分の添加は、十分な巨視的伝導性を提供して、電極基材との電子交換を改良する。カーボンブラック又はカーボンファイバーはこの目的のために特に有利であり、電極の使用の間のレオロジーにほとんど又は全く影響を与えない体積分率で十分な結果をもたらす。これは、電極材料粒子の表面における導電性のためである。0.5〜10%の体積分率が特に好ましい。Shawinigan(商標)又はKetjenblack(商標)のようなカーボンブラックが好ましい。カーボンファイバーとしては、タール、ピッチ、ポリアクリロニトリルのようなポリマー類の熱分解によって得られるカーボンファイバー、及び炭化水素類のクラッキングによって得られるカーボンファイバーが好ましい。
【0030】
軽量性及び可鍛性のためにアルミニウムが電流コレクター成分として使用されていることは興味深い。しかしながらこの金属は絶縁性の酸化物層でコーティングされている。腐食から金属を保護するこの層は、状況によっては厚さが増加して、界面での抵抗を増加させ、電気化学セルの良好な操作に好ましくない影響を与えることがある。従来技術でのようにカーボン粒子が限られた数の接触点を持つ場合には、導電性が部分的に確立される場合に、この現象は特に有害で迅速であることがある。アルミニウムと組み合わせて伝導性炭質材料層でコーティングされた電極材料を使用すると、アルミニウム電極の交換表面が増加する。従って、アルミニウム腐食効果は、打ち消され又は少なくも有意に小さくなる。シート状のアルミニウムコレクターを使用すること、又は延伸した若しくは穿孔した金属若しくはファイバー状のコレクターを使用することが可能であり、このことは重量に関する改良を示す。本発明の材料の性質によって、延伸金属又は穿孔金属の場合でさえも、コレクターレベルでの電子交換は、抵抗をあまり増加させないで起こる。
【0031】
電流コレクターが熱的に安定である場合は常に、コレクターに直接に熱分解又は脱水素化を行って、カーボン堆積後に、連続気孔フィルムを得ることができる。ここでこの連続気孔フィルムには、イオン伝導性液、又はその場での重合によってポリマー電解質をもたらすモノマー若しくはモノマーの混合物を含浸させることができる。炭質コーティングが炭素鎖を作る多孔質フィルムは、金属基材上にフィルムの形で堆積した複合酸化物−ポリマー複合材料の熱分解によって、本発明で容易に得ることができる。
【0032】
電気化学セル、好ましくは1次バッテリー又は2次バッテリーにおいて本発明による電極材料を使用する場合、電解質は好ましくはポリマーである。このポリマーは、溶解した1又は複数の金属塩、好ましくは少なくとも1種のリチウム塩を含有する極性液によって、随意に可塑化又はゲル化され、溶媒和になっている又は溶媒和になっていないポリマーである。そのような場合には、好ましくはポリマーは、アルキル又はオキサアルキル基を伴う類イタコン酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリル酸エステル類、フッ化ビニリデン、アクリロニトリル、オキシプロピレン、オキシエチレンの単位から作る。電解質は、微孔質セパレータ中で不動化された極性液であってもよい。この微孔質セパレータとしては、アルミン酸リチウムLiAlO、アルミナ、シリカのナノ粒子、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。極性液体の例としては、環状又は直鎖状カーボネート類、アルキルホルミネート類、オリゴエチレングリコール類、α−ωアルキルエーテル類、N−メチルピロリジオン、γ−ブチロラクトン、テトラアラルキルスルファミド類、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0033】
本発明の好ましい態様を説明するために以下の例を提供するが、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0034】
例1
この例は、炭質堆積物でコーティングされた挿入材料を直接にもたらす本発明の材料の合成を説明する。
【0035】
炭質堆積物でコーティングされた材料LiFePOを、以下の反応の化学量論量の、ラン鉄鋼Fe(PO・8HO及びリチウムオルトホスフェートLiPOから調製する:
Fe(PO・8HO + LiPO
→ 3LiFePO
【0036】
ラン鉄鋼の3wt%に対応する量のポリプロピレン粉末を加える。これらの3つの成分を、ジルコニアボールミルにおいて共によく混合して微粉砕する。その後、この混合物をアルゴンの不活性雰囲気で加熱して、初めに3時間にわたって350℃にしてラン鉄鋼を脱水する。その後、温度を徐々に上げて700℃にし、材料を結晶化させ、且つポリプロピレンを炭化する。温度は7時間にわたって700℃に維持する。得られる材料の構造は、x線によって評価すると、公開されているトリフィライト(triphylite)の構造に対応している。試料中に存在する炭素の量は、元素解析によって決定し、この濃度は0.56%であった。比較のために、ポリプロピレン粉末を添加せずに、同様な条件において同様な試料を調製した。この比較例の試料も、LiFePOタイプの純粋な結晶構造を示す。
【0037】
電気化学的な性質
調製した材料を、室温及び80℃においてCR2032タイプのボタン電池で試験した。
【0038】
80℃での試験(ポリマー電解質)
上述のようにして得た材料を、CR2032タイプのボタン電池で試験した。カソードは、活性材料の粉末とカーボンブラック(Ketjenblack(商標))とを混合して得て、電流コレクターとの電子交換を確実にし、分子量400,000のポリエチレンオキシドをバインダー及びイオン伝導体の両方として加える。重量による割合は、35:9:56である。アクリロニトリルを混合物に加えて、エチレンポリオキシドを溶解する。この混合物を均一化し、1.7cmのステンレス鋼ディスクに注ぐ。カソードは減圧下で乾燥させ、ヘリウムの減圧雰囲気(HO,Oが1vpm未満)のグローブボックスに輸送する。ニッケル基材に積層されたリチウムシート(27μm)をアノードとして使用する。ポリマー電解質は、分子量5,000,000のポリエチレンオキシド及びLiTFSI(リチウムビス−トリフルオロメタンスルホンイミド)を、オキシエチレン単位の酸素とリチウムとの比が20:1になる量で含む。
【0039】
電気化学的な実験は80℃において行った。この温度での電解質のイオン伝導度は十分であった(2×10−3Scm−1)。電気化学的な研究は、Macpile(商標)タイプのバッテリーサイクルによって制御したゆっくりとしたボルタンメトリー(20mV・h−1)によって行った。このバッテリーは、3.7V〜3Vで充電及び放電を行った。
【0040】
図2は、上述のように調製した炭質及び非炭質材料で得られる1回目のサイクルを示している。非炭質試料(カーボンでコーティングされていない試料)では、酸化還元現象が広い電位範囲に広がっている。炭質試料(カーボンでコーティングされた試料)では、ピークは狭い電位領域にかなり良好に定められている。初めの5回のサイクルの間のこれら両方の試料の変化は非常に異なっている(図3)。カーボンでコーティングされた試料では、酸化及び還元の速度はかなり迅速になって、比較的良く定められたピークをもたらす(比較的大きいピーク電流、及び比較的狭いピーク幅)。しかしながら、非炭質試料では、この速度はかなり低速になる。これら両方の試料の容量の変化は図4に示している。炭質試料では、交換される容量は安定である。これは試料に依存して理論容量(170mAh・g−1)の94〜100%を示している。非炭質材料の初期容量は約145mAh・g−1であり、つまり理論容量の約85%である。この試料では交換容量はすぐに低下する。5サイクル後には、バッテリーは初期容量の20%を失っている。
【0041】
炭質試料はインテンショスタティック(intentiostatic)様式で、3.8V〜3Vで素早く充電及び放電させて、サイクルを行わせる。加えた電流はC/1比に対応しており、これは1時間で全ての容量を交換することを意味している。これらのサイクルの結果は図5に示している。最初の5サイクルはボルタンメトリー様式で行って、カソードを活性化させてその容量を決定した。この場合には、最初のボルタンメトリーサイクルの間に理論容量の100%を交換し、最初の80回のインテンショスタティックサイクルの間には96%を交換している。その後、容量はゆっくりと減少し、1,000サイクル後には、この速度で容量の70%(120mAh・g−1)がまだ交換された。950サイクル後に行ったポテンショダイナミック(potentiodynamic)様式でのサイクルは、実際に、初期容量の89%がまだ比較的ゆっくりとした放電速度で利用できることを示している。電力の損失は、リチウム/ポリマー電解質表面での抵抗の増加に関連している。パラメーター(充電の間の容量)/(放電の間の容量)は、不安定であるように見える。サイクルの最後に図5で示されるこのパラメーターC/Dは、樹状構造(dendrite)の形成を推定させる。
【0042】
室温での試験(液体電解質)
炭質堆積物でコーティングしたLiFePOは室温でも試験した。この場合において、複合材カソードは、85:5:10の比で、活性材料、カーボンブラック、及びEPDM(好ましくはシクロヘキサンに溶解したEPDM)を混合することによって調製する。この混合物は、1.7mのディスク状にしてステンレス鋼電流コレクター上に拡げ、減圧下で乾燥し、そしてヘリウム雰囲気のグローブボックスに維持する。上述のように、アノードとしてはリチウムを使用する。これら両方の電極は、Celgard(商標)多孔質膜によって分離する。使用した電解質は、γ−ブチロラクトン中のLiTFSIの0.8M溶液である。図6に示されるボルタンペログラム(voltamperograms)は、3〜3.8Vのゆっくりとしたボルタンメトリー(20mV・h−1)で室温において得た。そのような構成では、酸化及び還元の速度は80℃でよりもかなり低速であると考えられる。更に、バッテリーの電力は、サイクルを重ねるとゆっくりと減少する。他方で、理論容量全体が達成可能である。(第1サイクルで97.5%、第5サイクルで99.4%)。すなわち、サイクル(5サイクル)の間の損失なしに、可逆的な交換が可能である。電解質が結合ポリマーをよく濡らさずに、電解質の電極への浸透が不十分であることによって、このバッテリーの電力が小さくなることは除外されない。
【0043】
粒子表面の炭質堆積物の存在が反応速度、容量、及び反復可能性に影響を与えるので、この例は本発明の材料の改良を示している。更に、その役割は、複合材カソードの調製の間に加えるカーボンブラック類の役割とは独立である。
【0044】
例2
この例は、炭化水素ガスからの伝導性炭質堆積物の形成を示している。ポリプロピレン粉末を添加せず、熱処理不活性雰囲気を窒素中の1%プロペンの混合物で置き換えて、リチウム鉄ホスフェートの調製のために例1で説明される合成を繰り返す。熱処理の間に、プロペンは分解して、合成する材料上でカーボンの堆積物を作る。化学解析によれば、得られる試料は2.5%のカーボンを含んでいる。サイクルボルタンメトリーは、例1で説明されるのと同じ条件でこの試料に行い、1回目のサイクルでは重要な活性現象を示す(図6参照)。この場合においてレドックス反応速度の改良は、反復的な交換の容量の増加として達成される。放電工程の間の測定によれば、調製したLiFePO試料の初期容量は、2.5%の電気化学的に不活性なカーボンを考慮に入れると、理論容量の77%である。5回目のサイクルの後では容量は91.4%に達する。観察される活性化現象は、粒子をコーティングしている多孔質のカーボン層厚さに関連し、またカチオンの拡散を遅らせることがある。
【0045】
以下の例3〜5は、複合酸化物、すなわち伝導性炭質コーティングを得るために熱的に及び独立に調製したリチウム鉄ホスフェートLiFePOの処理を説明している。
【0046】
例3
上述のように調製したトリフィライト試料LiFePOを解析する。その質量分率は、Fe:34.6、Li:4.2%、P:19.2であり、これは化学量論量とは5%異なっている。
【0047】
処理する粉末は、商業的なスクロースの水溶液に浸漬し、そして乾燥させる。溶液の量は、処理する材料の重量に対して、スクロースの重量が10%になるように選択する。水は撹拌しながら完全に蒸発させ、均一な分散を得る。糖の使用は、本発明の好ましい態様である。これは、糖が炭化の前に溶解して、粒子に良好なコーティングを提供するためである。熱分解の後のカーボンの収率は比較的低いが、これは糖のコストが低いことによって補償される。
【0048】
熱処理は、アルゴン雰囲気において700℃で行う。この温度は3時間にわたって維持する。元素解析は、この生成物が1.3wt%の炭素を含んでいることを示す。このような熱処理は、単純な商業的電気抵抗計で導電性を測定することができる黒色の粉末をもたらす。1回目(図8)及び5回目(図9)の充電放電サイクルで測定したその電気活性は、それぞれ155.9mAhg−1及び149.8mAhg−1であり、これは理論値の91.7%と88.1%である。これらの値を、カーボン堆積物でコーティングしていない生成物の値と比較する。このカーボン堆積物でコーティングしていない生成物の電気活性はたったの64%である。5サイクル後には、この値は37.9%(図10)まで低下する。
【0049】
例4
セルロースアセテートを、カーボンコーティング先駆物質として、例3のホスフェートLiFePOに加える。このポリマーは、24%程度の高い炭化率で分解することが知られている。これは200℃〜400℃で分解する。これよりも高い温度では、アモルファスカーボンが転移してグラファイトタイプ構造を与える。このグラファイトタイプ構造は、付着する傾向があり、且つかなり伝導性のカーボン堆積物である。
【0050】
セルロースアセテートは、処理する材料の5wt%に対応する割合でアセトン中に溶解させ、上述のように乾燥させる。最終的な生成物中の炭素濃度は1.5%である。熱処理は、同様な様式で、表面伝導性を有する黒色粉末をもたらす。1回目(図8)及び5回目(図9)の充放電サイクルで測定したその電気活性は、それぞれ152.6mAhg−1及び150.2mAhg−1であり、これは理論値の89.8%と88.3%である。この値を、カーボン堆積物でコーティングしていない生成物の値と比較する。このカーボン堆積物でコーティングしていない生成物の電気活性はたったの64%である。5サイクル後には、この値は37.9%(図10)まで低下する。
【0051】
例5
ペリレン及びその誘導体類は、熱分解によって、グラファイト状タイプカーボンをもたらすことが知られている。これは開始分子中の縮合環の存在に起因している。特に、ペリレン−テトラカルボキン酸無水物は560℃以上で分解して、カーボンコーティングを提供する。しかしながら、この生成物の溶解性は低く、例3のLiFePO である複合酸化物との均一な混合は実施することが困難である。この問題を解決するために、エチレンポリオキシド鎖で離したペリレン基を含むポリマーを、第1の工程において調製した。オキシエチレン部分は、通常の有機溶媒類に芳香族基を溶解させる溶解剤として作用するのに十分に長くなるように選択する。従って、商業的な3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸無水物(Aldrich)は、以下の反応に従って高温で、Jaffamine 600(Hunstmann)と反応させる。
【化2】


ここで、R=−[CH(CH)CHO−](CHCHO−)[CH−CH(CH)O]p−1CH−CH(CH)
、であり、1≦p≦2、10≦n≦14である。
【0052】
合成は、還流条件(166℃)のジメチルアセトアミド中において48時間で完了する。作られたポリマーを水の中で沈殿させ、固体と液体を分離する。これはアセトンへの溶解とその後のエーテル中での再沈殿で純化する。この処理は、反応していない開始物質、及び低分子量生成物の除去を可能にする。最後に、この粉末を乾燥させる。
【0053】
この生成物の炭化率は20%程度である。このポリマーは、処理する材料の重量の5%に対応する量でジクロロメタンに溶解させ、その後、例3及び4でのように処理する。最終的な生成物の炭素含有率は1%である。上述のように、熱処理は黒色の伝導性粉末をもたらす。1回目(図8)及び5回目(図9)の充放電サイクルで測定したその電気活性は、それぞれ148.6mAhg−1及び146.9mAhg−1であり、これらは理論値の87.4%と86.4%である。これらの値を、カーボン堆積物でコーティングしていない生成物の値と比較する。このカーボン堆積物でコーティングしていない生成物の電気活性はたったの64%である。5サイクル後には、この値は37.9%(図10)まで低下する。
【0054】
例6
この例は、本発明の炭質堆積物をもたらすポリマーからの脱離反応の使用を説明している。
【0055】
「Nasicon」斜方構造の鉄(III)スルフェートFe(SOを、減圧下において450℃での脱水によって、商業的な鉄(III)スルフェート水和物(Aldrich)から得た。冷却を行いながら撹拌して、ヘキサン中に懸濁されるこの粉末を、化学量論量の2Mのブチルリチウムによってリチウム化して、Li1.5Fe(SOの組成を得た。やや着色した白色のこの粉末20gを、100mlのアセトン中においてスラリーにして、2.2gのポリ(ビニリデンブロマイド)(−CHCBr−を加えた。この混合物を12時間にわたってボールミルにおいてアルミナボールで処理した。そのようにして得られたサスペンションを、ロータリーエバポレーターで乾燥させて、乳鉢での粗粉末状に粉砕した。この固体は、還流しているアセトニトリル中において3時間にわたって、3gのジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−セン(DBU)で処理した。そのようにして得られた黒色粉末をろ過して、得られるアミンブロマイド及び過剰な試薬を除去し、アセトニトリルで洗浄し、減圧下において60℃で乾燥した。炭質堆積物の更なるアニール処理は、400℃で3時間にわたって酸素を含まない(<1ppm)アルゴン中において行った。
【0056】
炭質材料でコーティングした材料は、金属リチウム電極を伴うリチウムセルで、電気化学活性を試験した。ここでは、エチレンカルボネート−ジメトキシエタンの50:50混合物中の1Mのリチウムビス−(トリフルオロメタンスルホンイミド)を、電解質として、25μm微孔質ポリプロピレンセパレータ中で不動化した。カソードは、Ketjenblack(商標)と混合して調製したレドックス材料から得て、エチレン−プロピレン−ジエンポリマー(Aldrich)溶液中においてスラリー化した。ここでこれらの固体含有率は85:10:5であった。カソード混合物は、延伸金属アルミニウムグリッドに拡げて、1トン/cm−2の圧力で圧縮して、厚さを230μmにした。ボタン電池アセンブリーを、2.8〜3.9Vのカットオフ電位において1mAcm−2で充電した(試験した材料はアノードである)。材料の容量は120mAhg−1であり、これは理論値の89%に対応している。Li:Liに対する平均電位は3.6Vであった。
【0057】
例7
この例は、電極材料としての窒素含有化合物の使用を説明している。
【0058】
共に商業的な粉末状の酸化マンガンMnO及び窒化リチウム(Aldrich)を、1:1のモル比で、ヘリウム条件においてドライボックス中で混合した。これらの反応体を、グラスカーボンるつぼに入れて、酸素を含まない(<1rpm)窒素条件で800℃において処理した。非ほたる石(antifluorite)構造の得られる酸窒化物LiMnNOの12gを、0.7gのマイクロメートルサイズポリエチレン粉末に加えて、分散助剤としての乾燥ヘプタン及び界面活性剤としての20mgのBrij(商標)35(ICI)と共に、ポリエチレン容器においてヘリウム条件でボールミル粉砕した。フィルターにかけた混合物を、750℃の炉において酸素を含まない窒素流れ中で処理して、ポリエチレンからカーボンへの分解を確実にした。
【0059】
カーボンでコーティングされた電極材料は、湿った空気中では素早く加水分解される黒色粉末状である。全てのその後の取り扱いは、ドライボックスにおいて行った。ここでは、例6と同様なセルを作って、調製した材料の電気化学活性について試験した。この場合の電解質は、商業的なテトラエチルスルファミド(Fluka)及びジオキソランの体積比が40:60の混合物である。これらの溶媒の両方は、水素化ナトリウムでの蒸留によって純化した(スルファミドに対しては10Torr(1.333kPa)の減圧で)。この溶媒混合物にリチウムビス−(トリフルオロメタンスルホンイミド)(LiTFSI)を加えて、0.85Mの溶液を作った。例6と同様に、セルは金属リチウム電極を含んでおり、電解質は25μm多孔質ポリプロピレンセパレーター中で不動化し、そしてこの材料を例6と同様な様式で処理した。
【0060】
カソードは、Ketjenblack(商標)と混合して調製したレドックス材料から得て、エチレン−プロピレン−ジエンポリマーの溶液中でスラリー化した。ここでこれらの固体成分は90:5:5である。カソード混合物は延伸金属銅グリッドに1ton/cmで押しつけて、厚さを125μmにした。ボタン電池アセンブリーは、0.9〜1.8Vのカットオフ電位において0.5mAcm−2で充電した(酸窒化物はアノード)。材料の容量は370mAhg−1、すなわち式単位当たり2つの電子の理論容量の70%であった。平均電位はLi:Liに対して1.1Vである。この材料は、リチウムイオンタイプバッテリーにおいて負極材料として使用するのにふさわしい。このタイプの実験的なセルは、先に試験したのと同様な金属銅グリット上の電極材料と、アセトニトリル中のブロミンによって例1のリチウム鉄ホスフェートを化学的に脱リチウム化して得られる正極材料とで作られる。得られる鉄(III)ホスフェートは、アルミニウムグリッドに押しつけて正極を作り、0.85MのLiTFSIテトラエチルスルファミド/ジオキソラン溶液を電解質として使用した。そのようなセルの平均電圧は2.1Vであり、活性材料の重量に基づくエネルギー密度は240Wh/kgである。
【0061】
例8
「Nasicon」構造のリチウムバナジウム(III)ホスホシリケートLi3.5(PO2.5(SiO0.5を、以下のようにして調製した。
【0062】
リチウムカルボネート(13.85g)、リチウムシリケートLiSiO(6.74g)、二水素アンモニウムホスフェート(43.2g)、及びアンモニウムバナデート(35.1g)を、250mLのエチルメチルケトンと混合して、ポリエチレンの厚い壁で覆われた容器において、ボールミルでアルミニウムボールと共に3日間にわたって処理した。得られるスラリーをフィルターにかけて、乾燥し、そして12時間にわたって600℃の窒素ガス流れで水素を10%にして管状炉において処理した。冷却の後で、10gの得られた粉末を、炭化タングステンボールと共に遊星運動ボールミルに導入した。得られる粉末は例5で調製したポリ芳香族ポリマーの溶液(5mLアセトン中のポリオキシエチレン−コ−ペリレンテトラカルボキシルジイミド)に加えて、よく均一化し、そして溶媒を蒸発させた。
【0063】
赤褐色の粉末を酸素を含まないアルゴン流れ中において2時間にわたって700℃に加熱し、冷却の後で、測定可能な表面伝導率を持つ黒色粉末を得た。炭質材料でコーティングした材料に、リチウムイオンセルでの電気化学活性についての試験を行った。このセルは、銅電流コレクターにコーティングした24mg/cmに対応する天然のグラファイト電極(NG7)を持つ。ここでは、エチレンカルボネート−ジメチルカルボネートの50:50混合物中の1Mのリチウムヘキサフルオロホスフェートを、電解質として、25μm微孔質ポリプロピレンセパレーター中で不動化した。カソードは、Ketjenblack(商標)と混合されたリチウムバナジウムホスホシリケートから得て、アセトン中のフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペンコポリマーの溶液中でスラリー化した。ここで固体成分の比は85:10:5である。カソード混合物は延伸金属アルミニウムグリッド上に拡げて、1ton/cmで圧縮して厚さを190μmにした。これは、35mg/cmの活物質装填量に対応している。ボタン電池アセンブリーは、0及び4.1Vのカットオフ電位において1mAcm−2で充電した(試験材料はアノードである)。カーボンでコーティングした材料の容量は184mAhg−1であり、これは理論値(式当たり3.5個のリチウム)の78%に対応しており、サイクルを重ねるにつれてゆっくりと減少した。比較例において、コーティングしていない材料を使用して作った同様なセルの容量は105mAhg−1であり、サイクルを重ねると素早く低下した。ここでこのコーティングしていない材料は、ペリレンポリマーを加えないで熱処理した無機先駆材料を粉砕して得た。
【0064】
例9
この例は、レドックス材料におけるアルカリ金属含有率の変化を伴う炭質コーティングの形成を説明している。
【0065】
13.54gの商業的なフッ化鉄(III)(Aldrich)、1.8gのヘキサ−2,4−ジイン(dyine)ジカルボン酸リチウム塩を、100mLのアセトニトリルの存在下でアルナボールによって、ポリエチレンの厚い壁を付けた容器内においてボールミル粉砕した。12時間後に、得られたスラリーをろ過して、酸素を含まない乾燥した窒素の流れで、管状炉において700℃で3時間にわたって処理した。得られる黒色粉末は、元素解析によればFe:47%、F:46%、Li:1.18%、C:3.5%を含んでおり、これは式Li0.2FeF0.35に対応している。電極材料の容量は、例6と同様なセルで試験した。例6との違いは、初めにセルを放電させ(カソードとしての電極材料)、その後で再充電したことである。カットオフ電圧は、2.8〜3.7Vで選択した。1回目のサイクルの実験による容量は190mAhg−1であり、これは理論値の83%に対応している。比較として挙げると、電極材料としてFeFを含み炭質コーティングを含まないセルの理論容量は246mAhg−1である。実際には、本発明の材料と同様の条件で得られた1回目の放電サイクルでは137mAhg−1であった。
【0066】
例10
この例は、レドックス材料におけるアルカリ金属含有率の変化を伴う炭質コーティングの形成を説明している。
【0067】
分子量15,000の商業的なポリアクリル酸を、水/メタノール混合物中に溶解させて10%溶液を作り、水酸化リチウムで滴定してpHを7にした。4μLのこの溶液を、80℃の空気雰囲気において熱重量計のるつぼで乾燥させて、水/メタノールを蒸発させた。加熱は500℃まで継続して、0.1895mgのか焼残留物をリチウムカルボネートとして残した。
【0068】
18.68gの商業的な鉄(III)ホスフェート二水和物(Aldrich)、8.15gのリチウムオキサレート(Aldrich)、39mLのリチウムポリアクリレート溶液、80mLのアセトン、及び水のスカベンジャーとしての40mLの2,2−ジメトキシアセトンを、アルミナボールと共にポリエチレンの厚い壁を付けた容器において、ボールミル粉砕した。24時間後に、得られたスラリーをフィルターにかけて乾燥させた。得られた粉末は、3時間にわたって管状炉において700℃で、酸素を含まない乾燥した窒素流れ条件で処理して、黒みがかった粉末を得た。得られた生成物の組成は元素解析によれば、Fe:34%、P:18.8%、Li:4.4%、C:3.2%であった。x線解析は、唯一の結晶性成分としてトリフィライトLiFePOの存在を確認した。PEO電解質を伴う例1のセルと同様なセルで電極材料の容量を試験し、その後で再充電した。カットオフ電圧は、2.8〜3.7Vで選択した。第1のサイクルの実験による容量は135mAhg−1であり、これは理論値の77%に対応している。この容量はサイクルを重ねる毎に増加して156mAhg−1(89%)まで増加する。Li:Liに対して3.3〜3.6Vの電圧では、この容量の容量の80%が利用可能である。
【0069】
例11
化合物LiCo0.75Mn0.25POは、空気中において10時間にわたって850℃で焼成することによって、微粉砕したコバルトオキサレート二水和物、マンガンオキサレート二水和物、及び二水素アンモニウムホスフェートから調製した。得られる藤色(mauve)粉末を、炭化タングステンボールと共に遊星ミルで粉砕して、平均粒度を4μmにした。10gのこの複合ホスフェートを、メチルホルメート中の例5のペリレンポリマーの6%溶液10mLと共に、すり鉢ですりつぶした。溶媒は素早く蒸発した。得られる粉末を、酸素を含まない乾燥したアルゴンの流れで、管状炉において740℃で3時間にわたって処理して、黒色の粉末を得た。このセルの電気化学活性は、例6と同様なリチウムイオンセルで試験した。この場合の電解質は、耐酸化性溶媒ジメチルアミノ−トリフルオロエチルスルファメートCFCHOSON(CHに1Mの濃度で溶解したリチウムビス−フルオロメタンスルホンイミド(Li[FSON)である。最初に充電する場合、Li:Liに対して4.2〜4.95Vの電圧範囲で、セルの容量は145mAhg−1であった。バッテリーは50回の深い放電−充電サイクルでの容量の低下が10%未満であり、このことは高い電位に対する電解質の耐性を示している。
【0070】
例12
エタノール水の80:20混合物中のリチウムアセテート二水和物、マンガンアセテート四水和物、及びテトラエトキシシランの化学量論量混合物の反応によって得られるゲルをか焼することによって、化合物LiMnSiOを得た。ゲルは炉において80℃で48時間にわたって乾燥させ、粉末状にし、そして空気条件において800℃でか焼した。3.28gの得られるシリケート、及び例3からの12.62gのリチウム鉄ホスフェートを、例11と同様な遊星ミルでボールミル粉砕し、そして粉末を、6時間にわたって740℃の管状炉において酸素を含まない乾燥したアルゴン流れ条件で800℃で処理した。冷却の後で得られた複合酸化物の式はLi1.2Fe0.8Mn0.20.8Si0.2である。粉末は3mLの2%コバルトアセテート溶液で湿らせ、そして乾燥させた。2時間にわたって窒素中の10%の一酸化炭素の1mL/sの流れで、前記管状炉において500℃で、この粉末を処理した。冷却の後で、得られた黒色粉末の電気化学活性を、例1の条件と同じ条件で試験した。80℃のPEO電解質では、サイクリックボルタンメトリー曲線から測定した容量は、Li:Liに対して2.8〜3.9Vのカットオフ電圧で185mAhg−1(理論値の88%)であった。同様な条件において試験したコーティングされていない材料は、比容量が105mAhg−1であった。
【0071】
例13
アルゴン条件において、例3からの3gのリチウム鉄ホスフェートを50mLのアセトニトリル中に懸濁させ、そこに0.5gのヘキサクロロシクロペンタジエン及び10mgのテトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)を加えた。激しく撹拌しながら、室温において1.4mLのテトラキス(ジメチルアミノ)エチレンを滴状で加えた。溶液は青色に変化し、更に還元剤を加えると黒色になった。添加が完了した後で、反応物を24時間にわたって撹拌し続けた。得られる黒色沈殿物をろ過し、エタノールで洗浄し、そして減圧下で乾燥させた。カーボン堆積物のアニーリングを、3時間にわたって酸素を含まないガス流れ条件において400℃で行った。得られる黒色粉末の電気化学活性を、例1の条件と同じ条件で試験した。Li:Liに対して2.9〜3.7Vのカットオフ電圧で測定した容量は、実験にれば160mAhg−1(理論値の91%)であった。コーティングされていない材料の比容量は、同じ実験条件で112mAhg−1であった。
【0072】
例14
300mLの80:20イソプロパノール−水中のチタンテトラ(イソプロポキシド)(28.42g)、リチウムアセテート二水和物(35.7g)、及びマグネシウムアセテート四水和物(10.7g)を使用して、ゾルーゲル技術によってスピネル化合物Li3.5Mg0.5Ti12を調製した。得られる白色のゲルを80℃で炉において乾燥させ、そして空気中で3時間にわたって800℃でか焼し、その後で5時間にわたって850℃でアルゴン中の10%水素条件でか焼した。10gの得られた青色粉末を、アセトン中のセルロースアセテート13wt%溶液12mLと混合した。このペーストを乾燥させ、そして700℃の不活性雰囲気において例4の条件でポリマーをか焼した。
【0073】
電気化学スーパーキャパシターの正極を、以下の様式で作った。例3からのカーボンでコーティングされた5gのLiFePO、5gのNorit(商標)活性化カーボン、4gのグラファイト粉末(直径2μm)、3gの細断した(長さ20μm)アルミニウムファイバー(直径5mm)、気孔形成剤としての9gのアントラセン粉末(10μm)、及び6gのポリアクリロニトリルを、ジメチルホルムアミド中で混合し、ポリマーを溶解させた。スラリーを均一化して、アルミニウム箔(25μm)上にコーティングし、そして溶媒を蒸発させた。窒素雰囲気においてコーティングをゆっくりと加熱して380℃にした。アントラセンは蒸発して材料を均一な多孔質にし、アクリロニトリルを熱環化させて縮合ピリジン環からなる伝導性ポリマーをもたらす。得られる層の厚さは75μmである。
【0074】
LiFePOを上述のように調製したコーティングされたスピネルで置き換えて、同様なコーティングを負極に行った。スーパーキャパシターアセンブリーは、アセトニトリル/ジメトキシエタン混合物(50:50)中の1MのLiTFSIを染み込ませた厚さ10μmのポリプロピレンセパレーターによって互いに離して、調製した2つの電極を向かい合わせに配置して得る。この装置は、30mAcm−2及び2.5Vで充電することができ、1.8Vで3kW/L−1の比電力を提供する。
【0075】
例15
光変調デバイス(エレクトロクロミック窓)を以下の様式で製造した。
【0076】
例3によるLiFePOを、高エネルギーミルにおいてボールミル粉砕して、平均サイズが120nmの粒子にする。2gのこの粉末を、メチルホルメート中の例5のペリレン−コ−ポリオキシエチレンポリマーの2wt%溶液1mLと混合した。このペーストを摩砕して、粒子表面におけるポリマーの均一な分布を確実にし、そして溶媒を蒸発させた。乾燥粉末を、3時間にわたって酸素を含まない乾燥した窒素流れ中において管状炉で処理して、明るい灰色の粉末を得た。
【0077】
1gのカーボンでコーティングされた粉末を、10mLのアセトニトリル中の、1.2gのポリエチレンオキシド−コ−(2−メチレン)プロパン−1,3−ジイル、280mgのLiTFSI、及び光開始剤としての15mgのジフェニルベンジルジメチルアセタールの溶液中でスラリーにした。ここでこのポリエチレンオキシド−コ−(2−メチレン)プロパン−1,3−ジイルは、J.Electrochem.Soc.、1994年、141(7)、1915に従って調製し、エチレンオキシド部分の分子量は1,000であった。この溶液は、ドクターブレードプロセスを使用して、インジウム−スズオキシド(ITO)で覆われたガラス(20S−1□)に8μmの厚さで適用した。溶媒が蒸発した後で、3分間にわたって254nmのUV光(200mWcm−2)でこのポリマーを硬化させた。
【0078】
三酸化タングステンを、熱蒸発によって、ITOで覆われた他のガラスに340nmの厚さで堆積させた。このデバイスは、塩に対する酸素(ポリマー)の比が12のLiTFSIを伴うポリエチレンオキシド(120μm)電解質の層を適用することによって組み立てる。ここで、この層は予めポリプロピレン箔上にコーティングされており、また付着転写技術を使用してWOによってコーティングされている電極に適用する。2つのガラス電極を押し付けて、電気化学結合を形成する。
ガラス/ITO/WO/PEO−LiTFSI/LiFePO複合電極/ITO/ガラス
【0079】
電圧を印可するとこの装置は30秒間で青色に変化し(1.5Vの電圧を印加、LiFePO側がアノード)、反対向きの電圧を印可すると色が消える。光透過率は、85%(色が消えた状態)から20%(着色した状態)に変化する。
【0080】
本発明を特定の態様に関して説明してきたが、更なる変更を行えることは理解すべきである。また、本出願は、本発明の原理及び本発明に基づいて当業者の考慮する範囲による本発明の全ての変更、使用、又は付加を包含することを意図している。更に、ここまでで説明してきた本発明の特徴を応用することは、当然に当業者の行う範囲である。本発明の範囲は特許請求の範囲によって定められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【外国語明細書】
2019192652000001.pdf