【実施例】
【0034】
例1
この例は、炭質堆積物でコーティングされた挿入材料を直接にもたらす本発明の材料の合成を説明する。
【0035】
炭質堆積物でコーティングされた材料LiFePO
4を、以下の反応の化学量論量の、ラン鉄鋼Fe
3(PO
4)
2・8H
2O及びリチウムオルトホスフェートLiPO
4から調製する:
Fe
3(PO
4)
2・8H
2O + Li
3PO
4
→ 3LiFePO
4
【0036】
ラン鉄鋼の3wt%に対応する量のポリプロピレン粉末を加える。これらの3つの成分を、ジルコニアボールミルにおいて共によく混合して微粉砕する。その後、この混合物をアルゴンの不活性雰囲気で加熱して、初めに3時間にわたって350℃にしてラン鉄鋼を脱水する。その後、温度を徐々に上げて700℃にし、材料を結晶化させ、且つポリプロピレンを炭化する。温度は7時間にわたって700℃に維持する。得られる材料の構造は、x線によって評価すると、公開されているトリフィライト(triphylite)の構造に対応している。試料中に存在する炭素の量は、元素解析によって決定し、この濃度は0.56%であった。比較のために、ポリプロピレン粉末を添加せずに、同様な条件において同様な試料を調製した。この比較例の試料も、LiFePO
4タイプの純粋な結晶構造を示す。
【0037】
電気化学的な性質
調製した材料を、室温及び80℃においてCR2032タイプのボタン電池で試験した。
【0038】
80℃での試験(ポリマー電解質)
上述のようにして得た材料を、CR2032タイプのボタン電池で試験した。カソードは、活性材料の粉末とカーボンブラック(Ketjenblack(商標))とを混合して得て、電流コレクターとの電子交換を確実にし、分子量400,000のポリエチレンオキシドをバインダー及びイオン伝導体の両方として加える。重量による割合は、35:9:56である。アクリロニトリルを混合物に加えて、エチレンポリオキシドを溶解する。この混合物を均一化し、1.7cm
2のステンレス鋼ディスクに注ぐ。カソードは減圧下で乾燥させ、ヘリウムの減圧雰囲気(H
2O,O
2が1vpm未満)のグローブボックスに輸送する。ニッケル基材に積層されたリチウムシート(27μm)をアノードとして使用する。ポリマー電解質は、分子量5,000,000のポリエチレンオキシド及びLiTFSI(リチウムビス−トリフルオロメタンスルホンイミド)を、オキシエチレン単位の酸素とリチウムとの比が20:1になる量で含む。
【0039】
電気化学的な実験は80℃において行った。この温度での電解質のイオン伝導度は十分であった(2×10
−3Scm
−1)。電気化学的な研究は、Macpile(商標)タイプのバッテリーサイクルによって制御したゆっくりとしたボルタンメトリー(20mV・h
−1)によって行った。このバッテリーは、3.7V〜3Vで充電及び放電を行った。
【0040】
図2は、上述のように調製した炭質及び非炭質材料で得られる1回目のサイクルを示している。非炭質試料(カーボンでコーティングされていない試料)では、酸化還元現象が広い電位範囲に広がっている。炭質試料(カーボンでコーティングされた試料)では、ピークは狭い電位領域にかなり良好に定められている。初めの5回のサイクルの間のこれら両方の試料の変化は非常に異なっている(
図3)。カーボンでコーティングされた試料では、酸化及び還元の速度はかなり迅速になって、比較的良く定められたピークをもたらす(比較的大きいピーク電流、及び比較的狭いピーク幅)。しかしながら、非炭質試料では、この速度はかなり低速になる。これら両方の試料の容量の変化は
図4に示している。炭質試料では、交換される容量は安定である。これは試料に依存して理論容量(170mAh・g
−1)の94〜100%を示している。非炭質材料の初期容量は約145mAh・g
−1であり、つまり理論容量の約85%である。この試料では交換容量はすぐに低下する。5サイクル後には、バッテリーは初期容量の20%を失っている。
【0041】
炭質試料はインテンショスタティック(intentiostatic)様式で、3.8V〜3Vで素早く充電及び放電させて、サイクルを行わせる。加えた電流はC/1比に対応しており、これは1時間で全ての容量を交換することを意味している。これらのサイクルの結果は
図5に示している。最初の5サイクルはボルタンメトリー様式で行って、カソードを活性化させてその容量を決定した。この場合には、最初のボルタンメトリーサイクルの間に理論容量の100%を交換し、最初の80回のインテンショスタティックサイクルの間には96%を交換している。その後、容量はゆっくりと減少し、1,000サイクル後には、この速度で容量の70%(120mAh・g
−1)がまだ交換された。950サイクル後に行ったポテンショダイナミック(potentiodynamic)様式でのサイクルは、実際に、初期容量の89%がまだ比較的ゆっくりとした放電速度で利用できることを示している。電力の損失は、リチウム/ポリマー電解質表面での抵抗の増加に関連している。パラメーター(充電の間の容量)/(放電の間の容量)は、不安定であるように見える。サイクルの最後に
図5で示されるこのパラメーターC/Dは、樹状構造(dendrite)の形成を推定させる。
【0042】
室温での試験(液体電解質)
炭質堆積物でコーティングしたLiFePO
4は室温でも試験した。この場合において、複合材カソードは、85:5:10の比で、活性材料、カーボンブラック、及びEPDM(好ましくはシクロヘキサンに溶解したEPDM)を混合することによって調製する。この混合物は、1.7m
2のディスク状にしてステンレス鋼電流コレクター上に拡げ、減圧下で乾燥し、そしてヘリウム雰囲気のグローブボックスに維持する。上述のように、アノードとしてはリチウムを使用する。これら両方の電極は、Celgard(商標)多孔質膜によって分離する。使用した電解質は、γ−ブチロラクトン中のLiTFSIの0.8M溶液である。
図6に示されるボルタンペログラム(voltamperograms)は、3〜3.8Vのゆっくりとしたボルタンメトリー(20mV・h
−1)で室温において得た。そのような構成では、酸化及び還元の速度は80℃でよりもかなり低速であると考えられる。更に、バッテリーの電力は、サイクルを重ねるとゆっくりと減少する。他方で、理論容量全体が達成可能である。(第1サイクルで97.5%、第5サイクルで99.4%)。すなわち、サイクル(5サイクル)の間の損失なしに、可逆的な交換が可能である。電解質が結合ポリマーをよく濡らさずに、電解質の電極への浸透が不十分であることによって、このバッテリーの電力が小さくなることは除外されない。
【0043】
粒子表面の炭質堆積物の存在が反応速度、容量、及び反復可能性に影響を与えるので、この例は本発明の材料の改良を示している。更に、その役割は、複合材カソードの調製の間に加えるカーボンブラック類の役割とは独立である。
【0044】
例2
この例は、炭化水素ガスからの伝導性炭質堆積物の形成を示している。ポリプロピレン粉末を添加せず、熱処理不活性雰囲気を窒素中の1%プロペンの混合物で置き換えて、リチウム鉄ホスフェートの調製のために例1で説明される合成を繰り返す。熱処理の間に、プロペンは分解して、合成する材料上でカーボンの堆積物を作る。化学解析によれば、得られる試料は2.5%のカーボンを含んでいる。サイクルボルタンメトリーは、例1で説明されるのと同じ条件でこの試料に行い、1回目のサイクルでは重要な活性現象を示す(
図6参照)。この場合においてレドックス反応速度の改良は、反復的な交換の容量の増加として達成される。放電工程の間の測定によれば、調製したLiFePO
4試料の初期容量は、2.5%の電気化学的に不活性なカーボンを考慮に入れると、理論容量の77%である。5回目のサイクルの後では容量は91.4%に達する。観察される活性化現象は、粒子をコーティングしている多孔質のカーボン層厚さに関連し、またカチオンの拡散を遅らせることがある。
【0045】
以下の例3〜5は、複合酸化物、すなわち伝導性炭質コーティングを得るために熱的に及び独立に調製したリチウム鉄ホスフェートLiFePO
4の処理を説明している。
【0046】
例3
上述のように調製したトリフィライト試料LiFePO
4を解析する。その質量分率は、Fe:34.6、Li:4.2%、P:19.2であり、これは化学量論量とは5%異なっている。
【0047】
処理する粉末は、商業的なスクロースの水溶液に浸漬し、そして乾燥させる。溶液の量は、処理する材料の重量に対して、スクロースの重量が10%になるように選択する。水は撹拌しながら完全に蒸発させ、均一な分散を得る。糖の使用は、本発明の好ましい態様である。これは、糖が炭化の前に溶解して、粒子に良好なコーティングを提供するためである。熱分解の後のカーボンの収率は比較的低いが、これは糖のコストが低いことによって補償される。
【0048】
熱処理は、アルゴン雰囲気において700℃で行う。この温度は3時間にわたって維持する。元素解析は、この生成物が1.3wt%の炭素を含んでいることを示す。このような熱処理は、単純な商業的電気抵抗計で導電性を測定することができる黒色の粉末をもたらす。1回目(
図8)及び5回目(
図9)の充電放電サイクルで測定したその電気活性は、それぞれ155.9mAhg
−1及び149.8mAhg
−1であり、これは理論値の91.7%と88.1%である。これらの値を、カーボン堆積物でコーティングしていない生成物の値と比較する。このカーボン堆積物でコーティングしていない生成物の電気活性はたったの64%である。5サイクル後には、この値は37.9%(
図10)まで低下する。
【0049】
例4
セルロースアセテートを、カーボンコーティング先駆物質として、例3のホスフェートLiFePO
4に加える。このポリマーは、24%程度の高い炭化率で分解することが知られている。これは200℃〜400℃で分解する。これよりも高い温度では、アモルファスカーボンが転移してグラファイトタイプ構造を与える。このグラファイトタイプ構造は、付着する傾向があり、且つかなり伝導性のカーボン堆積物である。
【0050】
セルロースアセテートは、処理する材料の5wt%に対応する割合でアセトン中に溶解させ、上述のように乾燥させる。最終的な生成物中の炭素濃度は1.5%である。熱処理は、同様な様式で、表面伝導性を有する黒色粉末をもたらす。1回目(
図8)及び5回目(
図9)の充放電サイクルで測定したその電気活性は、それぞれ152.6mAhg
−1及び150.2mAhg
−1であり、これは理論値の89.8%と88.3%である。この値を、カーボン堆積物でコーティングしていない生成物の値と比較する。このカーボン堆積物でコーティングしていない生成物の電気活性はたったの64%である。5サイクル後には、この値は37.9%(
図10)まで低下する。
【0051】
例5
ペリレン及びその誘導体類は、熱分解によって、グラファイト状タイプカーボンをもたらすことが知られている。これは開始分子中の縮合環の存在に起因している。特に、ペリレン−テトラカルボキン酸無水物は560℃以上で分解して、カーボンコーティングを提供する。しかしながら、この生成物の溶解性は低く、例3のLiFePO
4 である複合酸化物との均一な混合は実施することが困難である。この問題を解決するために、エチレンポリオキシド鎖で離したペリレン基を含むポリマーを、第1の工程において調製した。オキシエチレン部分は、通常の有機溶媒類に芳香族基を溶解させる溶解剤として作用するのに十分に長くなるように選択する。従って、商業的な3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸無水物(Aldrich)は、以下の反応に従って高温で、Jaffamine 600(Hunstmann)と反応させる。
【化2】
ここで、R=−[CH(CH
3)CH
2O−]
p(CH
2CH
2O−)
q[CH
2−CH(CH)
3O]
p−1CH
2−CH(CH)
3−
、であり、1≦p≦2、10≦n≦14である。
【0052】
合成は、還流条件(166℃)のジメチルアセトアミド中において48時間で完了する。作られたポリマーを水の中で沈殿させ、固体と液体を分離する。これはアセトンへの溶解とその後のエーテル中での再沈殿で純化する。この処理は、反応していない開始物質、及び低分子量生成物の除去を可能にする。最後に、この粉末を乾燥させる。
【0053】
この生成物の炭化率は20%程度である。このポリマーは、処理する材料の重量の5%に対応する量でジクロロメタンに溶解させ、その後、例3及び4でのように処理する。最終的な生成物の炭素含有率は1%である。上述のように、熱処理は黒色の伝導性粉末をもたらす。1回目(
図8)及び5回目(
図9)の充放電サイクルで測定したその電気活性は、それぞれ148.6mAhg
−1及び146.9mAhg
−1であり、これらは理論値の87.4%と86.4%である。これらの値を、カーボン堆積物でコーティングしていない生成物の値と比較する。このカーボン堆積物でコーティングしていない生成物の電気活性はたったの64%である。5サイクル後には、この値は37.9%(
図10)まで低下する。
【0054】
例6
この例は、本発明の炭質堆積物をもたらすポリマーからの脱離反応の使用を説明している。
【0055】
「Nasicon」斜方構造の鉄(III)スルフェートFe
2(SO
4)
3を、減圧下において450℃での脱水によって、商業的な鉄(III)スルフェート水和物(Aldrich)から得た。冷却を行いながら撹拌して、ヘキサン中に懸濁されるこの粉末を、化学量論量の2Mのブチルリチウムによってリチウム化して、Li
1.5Fe
2(SO
4)
3の組成を得た。やや着色した白色のこの粉末20gを、100mlのアセトン中においてスラリーにして、2.2gのポリ(ビニリデンブロマイド)(−CH
2CBr
2)
n−を加えた。この混合物を12時間にわたってボールミルにおいてアルミナボールで処理した。そのようにして得られたサスペンションを、ロータリーエバポレーターで乾燥させて、乳鉢での粗粉末状に粉砕した。この固体は、還流しているアセトニトリル中において3時間にわたって、3gのジアザビシクロ[5.4.0]ウンデ−7−セン(DBU)で処理した。そのようにして得られた黒色粉末をろ過して、得られるアミンブロマイド及び過剰な試薬を除去し、アセトニトリルで洗浄し、減圧下において60℃で乾燥した。炭質堆積物の更なるアニール処理は、400℃で3時間にわたって酸素を含まない(<1ppm)アルゴン中において行った。
【0056】
炭質材料でコーティングした材料は、金属リチウム電極を伴うリチウムセルで、電気化学活性を試験した。ここでは、エチレンカルボネート−ジメトキシエタンの50:50混合物中の1Mのリチウムビス−(トリフルオロメタンスルホンイミド)を、電解質として、25μm微孔質ポリプロピレンセパレータ中で不動化した。カソードは、Ketjenblack(商標)と混合して調製したレドックス材料から得て、エチレン−プロピレン−ジエンポリマー(Aldrich)溶液中においてスラリー化した。ここでこれらの固体含有率は85:10:5であった。カソード混合物は、延伸金属アルミニウムグリッドに拡げて、1トン/cm
−2の圧力で圧縮して、厚さを230μmにした。ボタン電池アセンブリーを、2.8〜3.9Vのカットオフ電位において1mAcm
−2で充電した(試験した材料はアノードである)。材料の容量は120mAhg
−1であり、これは理論値の89%に対応している。Li
+:Li
0に対する平均電位は3.6Vであった。
【0057】
例7
この例は、電極材料としての窒素含有化合物の使用を説明している。
【0058】
共に商業的な粉末状の酸化マンガンMnO及び窒化リチウム(Aldrich)を、1:1のモル比で、ヘリウム条件においてドライボックス中で混合した。これらの反応体を、グラスカーボンるつぼに入れて、酸素を含まない(<1rpm)窒素条件で800℃において処理した。非ほたる石(antifluorite)構造の得られる酸窒化物Li
3MnNOの12gを、0.7gのマイクロメートルサイズポリエチレン粉末に加えて、分散助剤としての乾燥ヘプタン及び界面活性剤としての20mgのBrij(商標)35(ICI)と共に、ポリエチレン容器においてヘリウム条件でボールミル粉砕した。フィルターにかけた混合物を、750℃の炉において酸素を含まない窒素流れ中で処理して、ポリエチレンからカーボンへの分解を確実にした。
【0059】
カーボンでコーティングされた電極材料は、湿った空気中では素早く加水分解される黒色粉末状である。全てのその後の取り扱いは、ドライボックスにおいて行った。ここでは、例6と同様なセルを作って、調製した材料の電気化学活性について試験した。この場合の電解質は、商業的なテトラエチルスルファミド(Fluka)及びジオキソランの体積比が40:60の混合物である。これらの溶媒の両方は、水素化ナトリウムでの蒸留によって純化した(スルファミドに対しては10Torr(1.333kPa)の減圧で)。この溶媒混合物にリチウムビス−(トリフルオロメタンスルホンイミド)(LiTFSI)を加えて、0.85Mの溶液を作った。例6と同様に、セルは金属リチウム電極を含んでおり、電解質は25μm多孔質ポリプロピレンセパレーター中で不動化し、そしてこの材料を例6と同様な様式で処理した。
【0060】
カソードは、Ketjenblack(商標)と混合して調製したレドックス材料から得て、エチレン−プロピレン−ジエンポリマーの溶液中でスラリー化した。ここでこれらの固体成分は90:5:5である。カソード混合物は延伸金属銅グリッドに1ton/cm
2で押しつけて、厚さを125μmにした。ボタン電池アセンブリーは、0.9〜1.8Vのカットオフ電位において0.5mAcm
−2で充電した(酸窒化物はアノード)。材料の容量は370mAhg
−1、すなわち式単位当たり2つの電子の理論容量の70%であった。平均電位はLi
+:Li
0に対して1.1Vである。この材料は、リチウムイオンタイプバッテリーにおいて負極材料として使用するのにふさわしい。このタイプの実験的なセルは、先に試験したのと同様な金属銅グリット上の電極材料と、アセトニトリル中のブロミンによって例1のリチウム鉄ホスフェートを化学的に脱リチウム化して得られる正極材料とで作られる。得られる鉄(III)ホスフェートは、アルミニウムグリッドに押しつけて正極を作り、0.85MのLiTFSIテトラエチルスルファミド/ジオキソラン溶液を電解質として使用した。そのようなセルの平均電圧は2.1Vであり、活性材料の重量に基づくエネルギー密度は240Wh/kgである。
【0061】
例8
「Nasicon」構造のリチウムバナジウム(III)ホスホシリケートLi
3.5V
2(PO
4)
2.5(SiO
4)
0.5を、以下のようにして調製した。
【0062】
リチウムカルボネート(13.85g)、リチウムシリケートLi
2SiO
3(6.74g)、二水素アンモニウムホスフェート(43.2g)、及びアンモニウムバナデート(35.1g)を、250mLのエチルメチルケトンと混合して、ポリエチレンの厚い壁で覆われた容器において、ボールミルでアルミニウムボールと共に3日間にわたって処理した。得られるスラリーをフィルターにかけて、乾燥し、そして12時間にわたって600℃の窒素ガス流れで水素を10%にして管状炉において処理した。冷却の後で、10gの得られた粉末を、炭化タングステンボールと共に遊星運動ボールミルに導入した。得られる粉末は例5で調製したポリ芳香族ポリマーの溶液(5mLアセトン中のポリオキシエチレン−コ−ペリレンテトラカルボキシルジイミド)に加えて、よく均一化し、そして溶媒を蒸発させた。
【0063】
赤褐色の粉末を酸素を含まないアルゴン流れ中において2時間にわたって700℃に加熱し、冷却の後で、測定可能な表面伝導率を持つ黒色粉末を得た。炭質材料でコーティングした材料に、リチウムイオンセルでの電気化学活性についての試験を行った。このセルは、銅電流コレクターにコーティングした24mg/cm
2に対応する天然のグラファイト電極(NG7)を持つ。ここでは、エチレンカルボネート−ジメチルカルボネートの50:50混合物中の1Mのリチウムヘキサフルオロホスフェートを、電解質として、25μm微孔質ポリプロピレンセパレーター中で不動化した。カソードは、Ketjenblack(商標)と混合されたリチウムバナジウムホスホシリケートから得て、アセトン中のフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペンコポリマーの溶液中でスラリー化した。ここで固体成分の比は85:10:5である。カソード混合物は延伸金属アルミニウムグリッド上に拡げて、1ton/cm
2で圧縮して厚さを190μmにした。これは、35mg/cm
2の活物質装填量に対応している。ボタン電池アセンブリーは、0及び4.1Vのカットオフ電位において1mAcm
−2で充電した(試験材料はアノードである)。カーボンでコーティングした材料の容量は184mAhg
−1であり、これは理論値(式当たり3.5個のリチウム)の78%に対応しており、サイクルを重ねるにつれてゆっくりと減少した。比較例において、コーティングしていない材料を使用して作った同様なセルの容量は105mAhg
−1であり、サイクルを重ねると素早く低下した。ここでこのコーティングしていない材料は、ペリレンポリマーを加えないで熱処理した無機先駆材料を粉砕して得た。
【0064】
例9
この例は、レドックス材料におけるアルカリ金属含有率の変化を伴う炭質コーティングの形成を説明している。
【0065】
13.54gの商業的なフッ化鉄(III)(Aldrich)、1.8gのヘキサ−2,4−ジイン(dyine)ジカルボン酸リチウム塩を、100mLのアセトニトリルの存在下でアルナボールによって、ポリエチレンの厚い壁を付けた容器内においてボールミル粉砕した。12時間後に、得られたスラリーをろ過して、酸素を含まない乾燥した窒素の流れで、管状炉において700℃で3時間にわたって処理した。得られる黒色粉末は、元素解析によればFe:47%、F:46%、Li:1.18%、C:3.5%を含んでおり、これは式Li
0.2FeF
3C
0.35に対応している。電極材料の容量は、例6と同様なセルで試験した。例6との違いは、初めにセルを放電させ(カソードとしての電極材料)、その後で再充電したことである。カットオフ電圧は、2.8〜3.7Vで選択した。1回目のサイクルの実験による容量は190mAhg
−1であり、これは理論値の83%に対応している。比較として挙げると、電極材料としてFeF
3を含み炭質コーティングを含まないセルの理論容量は246mAhg
−1である。実際には、本発明の材料と同様の条件で得られた1回目の放電サイクルでは137mAhg
−1であった。
【0066】
例10
この例は、レドックス材料におけるアルカリ金属含有率の変化を伴う炭質コーティングの形成を説明している。
【0067】
分子量15,000の商業的なポリアクリル酸を、水/メタノール混合物中に溶解させて10%溶液を作り、水酸化リチウムで滴定してpHを7にした。4μLのこの溶液を、80℃の空気雰囲気において熱重量計のるつぼで乾燥させて、水/メタノールを蒸発させた。加熱は500℃まで継続して、0.1895mgのか焼残留物をリチウムカルボネートとして残した。
【0068】
18.68gの商業的な鉄(III)ホスフェート二水和物(Aldrich)、8.15gのリチウムオキサレート(Aldrich)、39mLのリチウムポリアクリレート溶液、80mLのアセトン、及び水のスカベンジャーとしての40mLの2,2−ジメトキシアセトンを、アルミナボールと共にポリエチレンの厚い壁を付けた容器において、ボールミル粉砕した。24時間後に、得られたスラリーをフィルターにかけて乾燥させた。得られた粉末は、3時間にわたって管状炉において700℃で、酸素を含まない乾燥した窒素流れ条件で処理して、黒みがかった粉末を得た。得られた生成物の組成は元素解析によれば、Fe:34%、P:18.8%、Li:4.4%、C:3.2%であった。x線解析は、唯一の結晶性成分としてトリフィライトLiFePO
4の存在を確認した。PEO電解質を伴う例1のセルと同様なセルで電極材料の容量を試験し、その後で再充電した。カットオフ電圧は、2.8〜3.7Vで選択した。第1のサイクルの実験による容量は135mAhg
−1であり、これは理論値の77%に対応している。この容量はサイクルを重ねる毎に増加して156mAhg
−1(89%)まで増加する。Li
+:Li
0に対して3.3〜3.6Vの電圧では、この容量の容量の80%が利用可能である。
【0069】
例11
化合物LiCo
0.75Mn
0.25PO
4は、空気中において10時間にわたって850℃で焼成することによって、微粉砕したコバルトオキサレート二水和物、マンガンオキサレート二水和物、及び二水素アンモニウムホスフェートから調製した。得られる藤色(mauve)粉末を、炭化タングステンボールと共に遊星ミルで粉砕して、平均粒度を4μmにした。10gのこの複合ホスフェートを、メチルホルメート中の例5のペリレンポリマーの6%溶液10mLと共に、すり鉢ですりつぶした。溶媒は素早く蒸発した。得られる粉末を、酸素を含まない乾燥したアルゴンの流れで、管状炉において740℃で3時間にわたって処理して、黒色の粉末を得た。このセルの電気化学活性は、例6と同様なリチウムイオンセルで試験した。この場合の電解質は、耐酸化性溶媒ジメチルアミノ−トリフルオロエチルスルファメートCF
3CH
2OSO
2N(CH
3)
2に1Mの濃度で溶解したリチウムビス−フルオロメタンスルホンイミド(Li[FSO
2]
2N)である。最初に充電する場合、Li
+:Li
0に対して4.2〜4.95Vの電圧範囲で、セルの容量は145mAhg
−1であった。バッテリーは50回の深い放電−充電サイクルでの容量の低下が10%未満であり、このことは高い電位に対する電解質の耐性を示している。
【0070】
例12
エタノール水の80:20混合物中のリチウムアセテート二水和物、マンガンアセテート四水和物、及びテトラエトキシシランの化学量論量混合物の反応によって得られるゲルをか焼することによって、化合物Li
2MnSiO
4を得た。ゲルは炉において80℃で48時間にわたって乾燥させ、粉末状にし、そして空気条件において800℃でか焼した。3.28gの得られるシリケート、及び例3からの12.62gのリチウム鉄ホスフェートを、例11と同様な遊星ミルでボールミル粉砕し、そして粉末を、6時間にわたって740℃の管状炉において酸素を含まない乾燥したアルゴン流れ条件で800℃で処理した。冷却の後で得られた複合酸化物の式はLi
1.2Fe
0.8Mn
0.2P
0.8Si
0.2O
4である。粉末は3mLの2%コバルトアセテート溶液で湿らせ、そして乾燥させた。2時間にわたって窒素中の10%の一酸化炭素の1mL/sの流れで、前記管状炉において500℃で、この粉末を処理した。冷却の後で、得られた黒色粉末の電気化学活性を、例1の条件と同じ条件で試験した。80℃のPEO電解質では、サイクリックボルタンメトリー曲線から測定した容量は、Li
+:Li
0に対して2.8〜3.9Vのカットオフ電圧で185mAhg
−1(理論値の88%)であった。同様な条件において試験したコーティングされていない材料は、比容量が105mAhg
−1であった。
【0071】
例13
アルゴン条件において、例3からの3gのリチウム鉄ホスフェートを50mLのアセトニトリル中に懸濁させ、そこに0.5gのヘキサクロロシクロペンタジエン及び10mgのテトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)を加えた。激しく撹拌しながら、室温において1.4mLのテトラキス(ジメチルアミノ)エチレンを滴状で加えた。溶液は青色に変化し、更に還元剤を加えると黒色になった。添加が完了した後で、反応物を24時間にわたって撹拌し続けた。得られる黒色沈殿物をろ過し、エタノールで洗浄し、そして減圧下で乾燥させた。カーボン堆積物のアニーリングを、3時間にわたって酸素を含まないガス流れ条件において400℃で行った。得られる黒色粉末の電気化学活性を、例1の条件と同じ条件で試験した。Li
+:Li
0に対して2.9〜3.7Vのカットオフ電圧で測定した容量は、実験にれば160mAhg
−1(理論値の91%)であった。コーティングされていない材料の比容量は、同じ実験条件で112mAhg
−1であった。
【0072】
例14
300mLの80:20イソプロパノール−水中のチタンテトラ(イソプロポキシド)(28.42g)、リチウムアセテート二水和物(35.7g)、及びマグネシウムアセテート四水和物(10.7g)を使用して、ゾルーゲル技術によってスピネル化合物Li
3.5Mg
0.5Ti
4O
12を調製した。得られる白色のゲルを80℃で炉において乾燥させ、そして空気中で3時間にわたって800℃でか焼し、その後で5時間にわたって850℃でアルゴン中の10%水素条件でか焼した。10gの得られた青色粉末を、アセトン中のセルロースアセテート13wt%溶液12mLと混合した。このペーストを乾燥させ、そして700℃の不活性雰囲気において例4の条件でポリマーをか焼した。
【0073】
電気化学スーパーキャパシターの正極を、以下の様式で作った。例3からのカーボンでコーティングされた5gのLiFePO
4、5gのNorit(商標)活性化カーボン、4gのグラファイト粉末(直径2μm)、3gの細断した(長さ20μm)アルミニウムファイバー(直径5mm)、気孔形成剤としての9gのアントラセン粉末(10μm)、及び6gのポリアクリロニトリルを、ジメチルホルムアミド中で混合し、ポリマーを溶解させた。スラリーを均一化して、アルミニウム箔(25μm)上にコーティングし、そして溶媒を蒸発させた。窒素雰囲気においてコーティングをゆっくりと加熱して380℃にした。アントラセンは蒸発して材料を均一な多孔質にし、アクリロニトリルを熱環化させて縮合ピリジン環からなる伝導性ポリマーをもたらす。得られる層の厚さは75μmである。
【0074】
LiFePO
4を上述のように調製したコーティングされたスピネルで置き換えて、同様なコーティングを負極に行った。スーパーキャパシターアセンブリーは、アセトニトリル/ジメトキシエタン混合物(50:50)中の1MのLiTFSIを染み込ませた厚さ10μmのポリプロピレンセパレーターによって互いに離して、調製した2つの電極を向かい合わせに配置して得る。この装置は、30mAcm
−2及び2.5Vで充電することができ、1.8Vで3kW/L
−1の比電力を提供する。
【0075】
例15
光変調デバイス(エレクトロクロミック窓)を以下の様式で製造した。
【0076】
例3によるLiFePO
4を、高エネルギーミルにおいてボールミル粉砕して、平均サイズが120nmの粒子にする。2gのこの粉末を、メチルホルメート中の例5のペリレン−コ−ポリオキシエチレンポリマーの2wt%溶液1mLと混合した。このペーストを摩砕して、粒子表面におけるポリマーの均一な分布を確実にし、そして溶媒を蒸発させた。乾燥粉末を、3時間にわたって酸素を含まない乾燥した窒素流れ中において管状炉で処理して、明るい灰色の粉末を得た。
【0077】
1gのカーボンでコーティングされた粉末を、10mLのアセトニトリル中の、1.2gのポリエチレンオキシド−コ−(2−メチレン)プロパン−1,3−ジイル、280mgのLiTFSI、及び光開始剤としての15mgのジフェニルベンジルジメチルアセタールの溶液中でスラリーにした。ここでこのポリエチレンオキシド−コ−(2−メチレン)プロパン−1,3−ジイルは、J.Electrochem.Soc.、1994年、141(7)、1915に従って調製し、エチレンオキシド部分の分子量は1,000であった。この溶液は、ドクターブレードプロセスを使用して、インジウム−スズオキシド(ITO)で覆われたガラス(20S
−1□)に8μmの厚さで適用した。溶媒が蒸発した後で、3分間にわたって254nmのUV光(200mWcm
−2)でこのポリマーを硬化させた。
【0078】
三酸化タングステンを、熱蒸発によって、ITOで覆われた他のガラスに340nmの厚さで堆積させた。このデバイスは、塩に対する酸素(ポリマー)の比が12のLiTFSIを伴うポリエチレンオキシド(120μm)電解質の層を適用することによって組み立てる。ここで、この層は予めポリプロピレン箔上にコーティングされており、また付着転写技術を使用してWO
3によってコーティングされている電極に適用する。2つのガラス電極を押し付けて、電気化学結合を形成する。
ガラス/ITO/WO
3/PEO−LiTFSI/LiFePO
4複合電極/ITO/ガラス
【0079】
電圧を印可するとこの装置は30秒間で青色に変化し(1.5Vの電圧を印加、LiFePO
4側がアノード)、反対向きの電圧を印可すると色が消える。光透過率は、85%(色が消えた状態)から20%(着色した状態)に変化する。
【0080】
本発明を特定の態様に関して説明してきたが、更なる変更を行えることは理解すべきである。また、本出願は、本発明の原理及び本発明に基づいて当業者の考慮する範囲による本発明の全ての変更、使用、又は付加を包含することを意図している。更に、ここまでで説明してきた本発明の特徴を応用することは、当然に当業者の行う範囲である。本発明の範囲は特許請求の範囲によって定められる。