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特開2019-192775ワーク矯正方法およびワーク矯正装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-192775(P2019-192775A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】ワーク矯正方法およびワーク矯正装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20191004BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20191004BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20191004BHJP
【FI】
   H01L21/68 P
   H01L21/78 M
   H01L21/304 622J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-83886(P2018-83886)
(22)【出願日】2018年4月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】394016601
【氏名又は名称】日東精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【弁理士】
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】石井 直樹
【テーマコード(参考)】
5F057
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5F057AA04
5F057BA21
5F057EC05
5F057EC15
5F057FA30
5F057FA31
5F057FA34
5F063AA04
5F063AA11
5F063DG23
5F063EE21
5F063FF41
5F063FF43
5F131AA02
5F131BA32
5F131BA53
5F131CA08
5F131CA09
5F131EB02
5F131EB05
5F131EB37
5F131EB53
5F131EB72
5F131EB89
5F131FA14
5F131FA32
5F131KA12
5F131KA33
5F131KB05
5F131KB42
(57)【要約】
【課題】ウエハや基板を例とする薄型のワークに変形や損傷を与えることなく、当該ワークを平坦に矯正できるワーク矯正方法およびワーク矯正装置を提供する。
【解決手段】保持テーブル9に載置させたウエハWに対し、保持テーブル9に設けられている吸着孔17
を介して吸着を行うとともに、ウエハWの上方に設けられている気体噴射ノズル27を介してウエハWに気体Nを吹き付ける。吹き付けられた気体Nの圧力により、ウエハWは保持テーブル9の載置面に向けて押圧されるので、ウエハWの反りを確実に矯正して平坦化できる。ウエハWを矯正するに際し、上向きに露出されているウエハWの回路面に対して押圧プレートなどの部材が物理的に接触することがない。従って、物理的接触によってウエハWの回路に損傷などの不具合が発生するという事態を確実に回避できる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な保持テーブルでワークを保持する保持過程と、
前記保持テーブルの上方に設けられている気体供給機構から前記ワークの上面に供給される気体の圧力により前記ワークを押圧させる気体供給過程と、
前記保持テーブルに設けられている吸着孔を介して前記ワークの下面を前記保持テーブルに吸着させる吸着過程と、
を備えることを特徴とするワーク矯正方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク矯正方法において、
前記気体供給過程は、
複数設けられている前記気体供給機構を複数のブロックに分割し、前記気体供給機構から供給される気体の圧力を前記ブロックごとに独立制御する
ことを特徴とするワーク矯正方法。
【請求項3】
請求項2に記載のワーク矯正方法において、
前記気体供給過程は、
複数設けられている前記気体供給機構を前記ワークの中心からの距離に応じて複数のブロックに分割し、
前記気体供給機構から供給される気体の圧力を、前記ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するよう前記ブロックごとに独立制御する
ことを特徴とするワーク矯正方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のワーク矯正方法において、
前記吸着過程は、
複数設けられている前記吸着孔を複数のブロックに分割し、前記吸着孔を介して前記ワークを吸着する力を前記ブロックごとに独立制御する
ことを特徴とするワーク矯正方法。
【請求項5】
請求項4に記載のワーク矯正方法において、
前記吸着過程は、
複数設けられている前記吸着孔を前記ワークの中心からの距離に応じて複数のブロックに分割し、
前記吸着孔を介して前記ワークを吸着する力を、前記ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するよう前記ブロックごとに独立制御する
ことを特徴とするワーク矯正方法。
【請求項6】
ワークを保持する平坦な保持テーブルと、
前記保持テーブルの上方に設けられており、前記ワークの上面に気体を供給して前記気体の圧力により前記ワークを押圧させる気体供給機構と、
前記保持テーブルに設けられている吸着孔を介して前記ワークの下面を前記保持テーブルに吸着させる吸着機構と、
を備えることを特徴とするワーク矯正装置。
【請求項7】
請求項6に記載のワーク矯正装置において、
複数設けられている前記気体供給機構は複数のブロックに分割されており、
前記気体供給機構から供給される気体の圧力を前記ブロックごとに独立制御する供給制御機構を備える
ことを特徴とするワーク矯正装置。
【請求項8】
請求項7に記載のワーク矯正装置において、
複数設けられている前記気体供給機構は前記ワークの中心からの距離に応じて複数のブロックに分割されており、
前記供給制御機構は、
前記気体供給機構から供給される気体の圧力を、前記ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するよう前記ブロックごとに独立制御する
ことを特徴とするワーク矯正装置。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のワーク矯正装置において、
複数設けられている前記吸着孔は複数のブロックに分割されており、
前記吸着孔を介して前記ワークを吸着する力を前記ブロックごとに独立制御する吸着制御機構を備える
ことを特徴とするワーク矯正装置。
【請求項10】
請求項9に記載のワーク矯正装置において、
複数設けられている前記吸着孔は前記ワークの中心からの距離に応じて複数のブロックに分割されており、
前記吸着制御機構は、
前記吸着孔を介して前記ワークを吸着する力を、前記ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するよう前記ブロックごとに独立制御する
ことを特徴とするワーク矯正装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ(以下、適宜「ウエハ」という)や基板を例とする薄板状のワークに対して、粘着テープの貼り付け操作などの各種操作を行うに際し、ワークの反りを矯正して平坦化するためのワーク矯正方法およびワーク矯正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハの表面に回路パターン形成処理を行った後、ウエハの裏面全体を均一に研削してさらに薄型化するバックグラインド処理が施される。当該バックグラインド処理を行う前に、回路を保護するべくウエハの表面全体に保護用の粘着テープ(保護テープ)を貼り付けている。また、バックグラインド処理を行った後、薄型化したウエハの裏面全体と当該ウエハの周囲を囲む形状のリングフレームとにわたって支持用の粘着テープ(ダイシングテープ)が貼り付けられる。
【0003】
ウエハに粘着テープを貼り付ける場合、ウエハを安定に保持する方法として、ウエハを平坦な保持テーブルに載置させた後に保持テーブルでウエハの下面全体を吸着する方法が一般的に用いられている。しかし、ウエハに対して粘着テープを貼り付ける工程において、ウエハに反りなどの歪みが発生している場合がある。
【0004】
この場合、保持テーブルが吸着できる対象はウエハの一部に限られるので、ウエハを安定に吸着保持することが困難となる。さらに、歪みが発生しているウエハの全面に対して均一かつ精度よく粘着テープを貼り付けることは困難である。
【0005】
そこで、ウエハに粘着テープを貼り付ける操作を行う前段階として、平坦な保持テーブルにウエハを載置させ、押圧プレートでウエハの全面を押圧することによってウエハの反りを矯正して平坦化させている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2012−114465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来装置では次のような問題がある。
すなわち、従来の矯正方法では、ウエハを矯正するためには押圧プレートをウエハに接触させる必要がある。そのため、一例として回路面が露出しているウエハを矯正対象とする場合、押圧プレートで接触・押圧させるとウエハの回路に変形や損傷が発生する等の問題が懸念される。
【0008】
従って、押圧プレートのような部材を機械的に接触させて押圧する操作が不適切な対象については押圧プレートを使用できないので、精度良く矯正して平坦化させることは困難である。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ウエハや基板を例とする薄型のワークに変形や損傷を与えることなく、当該ワークを平坦に矯正できるワーク矯正方法およびワーク矯正装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、本発明は、
平坦な保持テーブルでワークを保持する保持過程と、
前記保持テーブルの上方に設けられている気体供給機構から前記ワークの上面に供給される気体の圧力により前記ワークを押圧させる気体供給過程と、
前記保持テーブルに設けられている吸着孔を介して前記ワークの下面を前記保持テーブルに吸着させる吸着過程と、
を備えるワーク矯正方法であることを特徴とする。
【0011】
(作用・効果)この構成によれば、平坦な保持テーブルでワークを保持し、保持テーブルの上方に設けられている気体供給機構から供給される気体の圧力によりワークを押圧させる。そして、保持テーブルに設けられている吸着孔を介してワークの下面を保持テーブルに吸着させる。ワークは上面に供給される気体の圧力により押圧され、反りが矯正されていく。
【0012】
このとき、ワークの上面には気体が供給されるに留まり、プレートなどの部材が接触することがない。よって、回路面が上面に露出するようなワークについても、当該回路に不具合を発生させることなくワークを矯正して平坦化できる。
【0013】
また、上述した発明において、前記気体供給過程は、複数設けられている前記気体供給機構を複数のブロックに分割し、前記気体供給機構から供給される気体の圧力を前記ブロックごとに独立制御することが好ましい。
【0014】
(作用・効果)この構成によれば、複数設けられている気体供給機構を複数のブロックに分割し、気体供給機構から供給される気体の圧力をブロックごとに独立制御する。この場合、ワークのうち反りが大きい部分に対応する気体供給機構と、反りが小さい部分に対応する気体供給機構とをそれぞれ異なるブロックに分割し、ブロックごとにワークを押圧する気体の圧力を独立制御できる。
【0015】
そのため、ワークのうち反りの大きい部分に対して比較的高い圧力の気体を供給するので、反りを確実かつ速やかに矯正できる。一方、ワークのうち反りが小さい部分には比較的低い圧力の気体を供給するので、当該反りの小さい部分が過剰な圧力の気体で押圧されて新たに歪みが発生するという事態を回避できる。よって、ワークに新たな歪みを発生させることなく、反りを速やかに矯正して平坦化できる。
【0016】
また、上述した発明において、前記気体供給過程は、複数設けられている前記気体供給機構を前記ワークの中心からの距離に応じて複数のブロックに分割し、前記気体供給機構から供給される気体の圧力を、前記ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するよう前記ブロックごとに独立制御することが好ましい。
【0017】
(作用・効果)この構成によれば、気体供給機構をワークの中心からの距離に応じて複数のブロックに分割し、気体供給機構から供給される気体の圧力を、ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するよう、ブロックごとに独立制御する。
【0018】
ワークの反りは、一般的に中心から外縁部に向かうにつれて反りの量が段階的に変化する形状となっている。そのため、気体供給機構から供給される気体の圧力を、ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するように制御することにより、ワークのうち反りの大きい部分については高圧の気体を供給して、反りを確実かつ速やかに矯正できる。一方、ワークのうち反りが小さい部分には比較的低い圧力の気体を供給し、過剰な圧力による新たな歪みの発生を回避する。よって、ワークに新たな歪みを発生させることなく、反りを速やかに矯正して平坦化できる。
【0019】
また、上述した発明において、前記吸着過程は、複数設けられている前記吸着孔を複数のブロックに分割し、前記吸着孔を介して前記ワークを吸着する力を前記ブロックごとに独立制御することが好ましい。
【0020】
(作用・効果)この構成によれば、複数設けられている吸着孔を複数のブロックに分割し、吸着孔を介してワークを吸着する力をブロックごとに独立制御する。この場合、ワークのうち反りが大きい部分に対応する吸着孔と、反りが小さい部分に対応する吸着孔とをそれぞれ異なるブロックに分割し、ブロックごとにワークを吸着する力を独立制御できる。
【0021】
そのため、ワークのうち反りの大きい部分は比較的強い力で吸着されるので、反りを確実かつ速やかに矯正して吸着できる。一方、ワークのうち反りが小さい部分は比較的弱い力で吸着されるので、当該反りの小さい部分が過剰な力で吸着されて新たに歪みが発生するという事態を回避できる。よって、ワークに新たな歪みを発生させることなく、反りを速やかに矯正して平坦化できる。
【0022】
また、上述した発明において、前記吸着過程は、複数設けられている前記吸着孔を前記ワークの中心からの距離に応じて複数のブロックに分割し、前記吸着孔を介して前記ワークを吸着する力を、前記ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するよう前記ブロックごとに独立制御することが好ましい。
【0023】
(作用・効果)この構成によれば、複数の吸着孔をワークの中心からの距離に応じて複数のブロックに分割し、吸着孔を介してワークを吸着する力を、ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するよう、ブロックごとに独立制御する。
【0024】
ワークの反りは、一般的に中心から外縁部に向かうにつれて反りの量が段階的に変化する形状となっている。そのため、ワークの中心から外縁部に向かうにつれて吸着力を段階的に変化するように制御することにより、ワークのうち反りの大きい部分は強い力で吸着されるので、反りを確実かつ速やかに矯正できる。一方、ワークのうち反りが小さい部分は比較的弱い力で吸着されるので、過剰な力で吸着されて新たに歪みが発生する事態を回避できる。よって、ワークに新たな歪みを発生させることなく、反りを速やかに矯正して平坦化できる。
【0025】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、本発明は、ワークを保持する平坦な保持テーブルと、
前記保持テーブルの上方に設けられており、前記ワークの上面に気体を供給して前記気体の圧力により前記ワークを押圧させる気体供給機構と、
前記保持テーブルに設けられている吸着孔を介して前記ワークの下面を前記保持テーブルに吸着させる吸着機構と、
を備えるワーク矯正装置であることを特徴とする。
【0026】
(作用・効果)この構成によれば、平坦な保持テーブルでワークを保持し、保持テーブルの上方に設けられている気体供給機構から供給される気体の圧力によりワークを押圧させる。そして、保持テーブルに設けられている吸着孔を介してワークの下面を保持テーブルに吸着させる。
【0027】
このとき、ワークの上面に供給される気体によってワークを押圧させて反りを矯正するので、プレートなどの部材をワークの上面に接触させることなくワークの反りを矯正できる。よって、回路面が上面に露出するようなワークについても、当該回路に不具合を発生させることなくワークを矯正して平坦化できる。
【0028】
また、上述した発明において、複数設けられている前記気体供給機構は複数のブロックに分割されており、前記気体供給機構から供給される気体の圧力を前記ブロックごとに独立制御する供給制御機構を備えることが好ましい。
【0029】
(作用・効果)この構成によれば、複数設けられている気体供給機構を複数のブロックに分割し、気体供給機構から供給される気体の圧力は供給制御機構によってブロックごとに独立制御される。この場合、ワークのうち反りが大きい部分に対応する気体供給機構と、反りが小さい部分に対応する気体供給機構とをそれぞれ異なるブロックに分割し、ブロックごとにワークを押圧する気体の圧力を独立制御できる。よって、上記方法を好適に実行できる。
【0030】
また、上述した発明において、複数設けられている前記気体供給機構は前記ワークの中心からの距離に応じて複数のブロックに分割されており、前記供給制御機構は、前記気体供給機構から供給される気体の圧力を、前記ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するよう前記ブロックごとに独立制御することが好ましい。
【0031】
(作用・効果)この構成によれば、気体供給機構をワークの中心からの距離に応じて複数のブロックに分割する。そして気体供給機構から供給される気体の圧力は、供給制御機構によってワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するよう、ブロックごとに独立制御される。
【0032】
ワークの反りは、一般的に中心から外縁部に向かうにつれて反りの量が段階的に変化する形状となっている。そのため、気体供給機構から供給される気体の圧力を、ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するように制御することにより、ワークのうち反りの大きい部分については高圧の気体を供給する一方、ワークのうち反りが小さい部分には比較的低い圧力の気体を供給できる。よって、ワークに新たな歪みを発生させることなく、反りを速やかに矯正して平坦化できる。
【0033】
また、上述した発明において、複数設けられている前記吸着孔は複数のブロックに分割されており、前記吸着孔を介して前記ワークを吸着する力を前記ブロックごとに独立制御する吸着制御機構を備えることが好ましい。
【0034】
(作用・効果)この構成によれば、複数設けられている吸着孔を複数のブロックに分割し、吸着孔を介してワークを吸着する力は吸着制御機構によってブロックごとに独立制御される。この場合、ワークのうち反りが大きい部分に対応する吸着孔と、反りが小さい部分に対応する吸着孔とをそれぞれ異なるブロックに分割し、ブロックごとにワークを吸着する力を独立制御できる。よって、上記方法を好適に実行できる。
【0035】
また、上述した発明において、複数設けられている前記吸着孔は前記ワークの中心からの距離に応じて複数のブロックに分割されており、前記吸着制御機構は、前記吸着孔を介して前記ワークを吸着する力を、前記ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するよう前記ブロックごとに独立制御することが好ましい。
【0036】
(作用・効果)この構成によれば、複数の吸着孔をワークの中心からの距離に応じて複数のブロックに分割し、吸着孔を介してワークを吸着する力は、ワークの中心から外縁部に向かうにつれて段階的に変化するよう、吸着制御機構によってブロックごとに独立制御される。
【0037】
ワークの反りは、一般的に中心から外縁部に向かうにつれて反りの量が段階的に変化する形状となっている。そのため、ワークの中心から外縁部に向かうにつれて吸着力を段階的に変化するように制御することにより、ワークのうち反りの大きい部分は強い力で吸着される一方、ワークのうち反りが小さい部分は比較的弱い力で吸着される。よって、ワークに新たな歪みを発生させることなく、反りを速やかに矯正して平坦化できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明に係るワーク矯正方法およびワーク矯正装置によれば、保持テーブルの上方に設けられている気体供給機構から供給される気体の圧力によりワークを平坦な保持テーブルに押圧させるとともに、保持テーブルに設けられている吸着孔を介してワークの下面を保持テーブルに吸着させる。この場合、プレートなどの部材をワークの上面に接触させることなく、ワークの上面に供給される気体によってワークを押圧させる。よって、ワークに変形や損傷を与えることなく、当該ワークを平坦に矯正できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施例1に係るワーク矯正装置の基本構成を示す斜視図である。
図2】実施例1に係るワーク矯正装置の要部を示す図である。(a)は保持テーブルの平面図であり、(b)は保持テーブルの縦断面図である。
図3】実施例1に係るワーク矯正装置の要部を示す図である。(a)は加圧機構の平面図であり、(b)は加圧機構の縦断面図である。
図4】ウエハに発生する一般的な反りの形状を示す図である。(a)は第1のパターンを示す縦断面図であり、(b)は第2のパターンを示す縦断面図である。
図5】実施例1に係るワーク矯正装置の動作を示す図である。(a)はウエハを保持テーブルの支持ピンで受け取る状態を示す縦断面図であり、(b)はウエハを保持テーブルの載置面に載置された状態を示す縦断面図である。
図6】実施例1に係るワーク矯正装置の動作を示す正面図である。(a)は保持テーブルによるウエハの吸引を実行している状態を示す縦断面図であり、(b)は気体噴射ノズルによる気体の噴射を実行している状態を示す縦断面図である。
図7】実施例1に係るワーク矯正装置の動作を示す正面図である。(a)はウエハの反りが矯正されていく状態を示す縦断面図であり、(b)はウエハが平坦となり、保持テーブルに吸着されている状態を示す縦断面図である。
図8】実施例2に係るワーク矯正装置の要部を示す図である。(a)は保持テーブルの平面図であり、(b)は保持テーブルの縦断面図である。
図9】実施例2に係るワーク矯正装置の要部を示す図である。(a)は加圧機構の平面図であり、(b)は加圧機構の縦断面図である。
図10】実施例2に係るワーク矯正装置の動作を示す図である。
図11】実施例2に係るワーク矯正装置の動作を示す図である。
図12】変形例に係るワーク矯正装置の構成を示す図である。(a)はリング状の支持部を備える変形例に係る保持テーブルの平面図であり、(b)は矯正装置の縦断面図であり、(c)はピン状の支持部を備える変形例に係る保持テーブルの平面図である。
図13】変形例に係るワーク矯正装置の構成を示す図である。(a)は矯正装置の構成を示す縦断面図であり、(b)は矯正装置において気体を噴射させる動作を示す縦断面図であり、(c)は矯正装置において噴射された気体が外縁部へ向けて広がっていき、ウエハの中央部から外縁部にわたって平坦に矯正していく状態を示す縦断面図である。
図14】変形例に係るワーク矯正装置の構成を示す図である。(a)は変形例において気体噴射ノズルを複数ブロックに分割する構成を示す図であり、(b)はウエハに形成される反りの形状の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0040】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。なお、本実施例では、矯正して平坦化させる対象であるワークとして、表面に回路パターンが形成された半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」と略称する)を用いる構成を例示して説明する。
【0041】
<全体構成の説明>
図1に示すように、実施例1に係るウエハ処理ユニット1は、ウエハ収納部3、ウエハ搬送機構5、および矯正装置7などを備えている。
【0042】
ウエハ収納部3は、一例としてウエハWを収納するカセットCを備えている。カセットCには多数枚のウエハWが、回路形成面(表面)を上向きにした水平姿勢で多段に差込み収納されている。
【0043】
ウエハ搬送機構5は、搬送アーム6を備えており、図示しない駆動機構によって水平進退、旋回、および昇降可能となるように構成されている。搬送アーム6の先端には馬蹄型のウエハ保持部6aが設けられている。搬送アーム6は、カセットCに多段収納されたウエハW同士の間隙を、ウエハ保持部6aが進退可能に構成されている。
【0044】
ウエハ保持部6aには吸着孔が設けられており、ウエハWを裏面から真空吸着して保持するように構成されている。ウエハ搬送機構5は、駆動機構によって、搬送アーム6のウエハ保持部6aの位置が調整される。そしてウエハ保持部6aはウエハWを、ウエハ収納部3のカセットCから保持テーブル7へと搬送する。搬送されるウエハWが辿る経路は、図1において矢印Kで示されている。
【0045】
矯正装置7は、保持テーブル9と加圧機構11とを備えている。保持テーブル9は一例として金属製またはセラミック製のチャックテーブルであり、図2(a)および図2(b)に示すように、ウエハWを載置させる平坦なウエハ載置部13を備えている。ウエハ載置部13には複数の支持ピン15および吸着孔17が備えられている。矯正装置7は本発明におけるワーク矯正装置に相当する。
【0046】
なお図2(a)において、ウエハWが載置される位置を符号Rが付された点線で示している。本実施例では、ウエハWの中心とウエハ載置部13の中心とが一致するようにウエハWを載置させるものとする。
【0047】
支持ピン15は図4(a)に示すように、シリンダ16によって出退昇降可能に構成されている。すなわちシリンダ16によって上昇することにより、各々の支持ピン15の先端は図4(a)に示すように、ウエハ載置部13から突出する。またシリンダ16によって下降することにより、各々の支持ピン15の先端は図4(b)に示すように、ウエハ載置部13に内蔵される。
【0048】
吸着孔17は図2(a)に示すように、ウエハ載置部13の表面に複数設けられている。実施例1において、吸着孔17の各々は図2(b)に示すように、ウエハ載置部13の下部で纏められ、電磁バルブ18を備えた流路19を介して真空装置20と連通接続されている。
【0049】
電磁バルブ18の開閉および真空装置20の動作は、制御部21によってそれぞれ制御されている。真空装置20を用いて真空吸引を行うことにより、ウエハ載置部13は載置されたウエハWを吸着保持する。なお説明の便宜上、図2(b)において、支持ピン15およびシリンダ16を省略している。
【0050】
加圧機構11は、図1などに示すように、保持テーブル9の上方に設けられている。加圧機構11は図3(a)に示すように、可動台23と気体供給ユニット25とを備えている。可動台23は、図示しない支柱に沿って昇降可能に構成されている。
【0051】
気体供給ユニット25は可動台23の下部に配設されており、可動台23の昇降移動によって気体供給ユニット25も昇降移動する。気体供給ユニット25は、保持テーブル9に載置されたウエハWに対して気体を吹き付ける構成を有している。
【0052】
気体供給ユニット25の形状および大きさはワーク(本実施例ではウエハW)の形状および大きさに応じて適宜調整できる。本実施例において、気体供給ユニット25は図3(b)に示すように、ウエハWよりやや大きい径の円形となっている。気体供給ユニット25の下面には気体噴射ノズル27が配設されている。
【0053】
実施例1において、気体噴射ノズル27は複数設けられている。各々の気体噴射ノズル27は気体供給ユニット25の上部で纏められており、電磁バルブ29を備えた流路30を介してポンプ31と連通接続されている。
【0054】
すなわちポンプ31は流路30を介して、気体噴射ノズル27へと気体を供給する。そして保持テーブル9上のウエハWに対して、上方に位置する気体噴射ノズル27から気体が吹き付けられるように構成されている。気体噴射ノズル27は、本発明における気体供給機構に相当する。
【0055】
電磁バルブ29の開閉およびポンプ31の動作は、制御部21によって統括制御される。なお制御部21は、矯正装置7における各種動作の他、支持ピン15の昇降移動や搬送アーム6の各種動作など、ウエハ処理装置1の各種動作についても統括制御する。制御部21は、本発明における供給制御機構および吸着制御機構に相当する。
【0056】
ここで、ウエハWの反り形状について説明する。ウエハWに反りが発生する場合、ウエハWは弓状に湾曲した形状、すなわち中央部から外縁部に向かうにつれて反りが大きくなる形状となることが一般的である。すなわち、反りが発生しているウエハWを、回路形成面を上向きにして平坦なウエハ載置部13に載置させた場合、正面視におけるウエハWとウエハ載置部13との位置関係は、図4(a)に示すパターン、または図4(b)に示すパターンとなる。
【0057】
図4(a)に示す第1のパターンでは、ウエハWの中央部においてウエハ載置部13とウエハWとが接している。そしてウエハWの外縁部へ向かうに従って、ウエハWはウエハ載置部13からの浮き上がりが大きくなる。すなわちウエハWとウエハ載置部13の表面との距離Tは、ウエハWの中央部から外縁部へと近づくに従って大きくなり、ウエハWの外縁部において最大となる。
【0058】
一方、図4(b)に示す第2のパターンでは、ウエハWの外縁部においてウエハ載置部13とウエハWとが接している。そして、ウエハWとウエハ載置部13の表面との距離Tは、ウエハの外縁部からウエハWの中央部へと近づくに従って大きくなり、ウエハWの中央部において最大となる。なお実施例1において、ウエハWには図4(a)に示す第1のパターンの反りが発生しているものとする。
【0059】
<動作の説明>
次に、実施例1に係る矯正装置7が備えられたウエハ処理装置1を用いて、ウエハWを矯正して平坦化させるための一連の動作を説明する。
【0060】
ウエハ処理装置1の動作を開始すると、支持ピン15の先端がウエハ載置部13の載置面から突出するとともに、ウエハ搬送機構5の搬送アーム6がウエハ収納部3のカセットCに挿入される。搬送アーム6のウエハ保持部6aは、所定のウエハWを裏面側から吸着保持して取り出し、矯正装置7の保持テーブル9上へと搬送する。
【0061】
ウエハ保持部6aによって裏面吸着されているウエハWは、図5(a)に示すように、保持テーブル9から突出している複数本の支持ピン15に載置される。その後、図5(b)に示すように、支持ピン15が下降し、ウエハWはウエハ載置部13の上面に載置される。
【0062】
ウエハWが保持テーブル9に載置されると、制御部21は真空装置20を作動させるとともに、電磁バルブ18を開放する。当該制御により、ウエハ載置部13に載置されているウエハWの裏面は、吸着孔17を介して吸引される。
【0063】
このとき、ウエハWの中央部はウエハ載置部13と接しているため、中心部におけるウエハWの裏面はウエハ載置部13によって安定に吸着保持される。ウエハWの少なくとも一部が吸着保持されることにより、ウエハ載置部13に載置されているウエハWの位置を固定できる。一方、ウエハWの外縁部はウエハ載置部13から浮き上がっているため、外縁部におけるウエハWの裏面はウエハ載置部13の載置面に吸着されていない。すなわちこの時点ではウエハWの裏面全体を吸着保持する状態には至っていない。
【0064】
そこで、制御部21は保持テーブル9によるウエハWの吸着を続行させつつ、加圧機構11を制御することによってウエハWを非接触で上方から加圧する操作を行う。すなわち制御部21は可動部23を下降させ、図6(a)に示すように、気体噴射ノズル27の噴射口をウエハWの表面へと近づける。さらに制御部21は電磁バルブ29を開放させるとともに、ポンプ31を作動させ、気体噴射ノズル27へと気体を供給させる。
【0065】
気体噴射ノズル27の各々は図6(b)に示すように、供給された気体をウエハWの表面に向けて噴射させる。噴射された気体Nの圧力によって、ウエハWはウエハ載置部13の載置面へ向けて下方に押圧される。
【0066】
その結果、ウエハ載置部13から浮き上がっていたウエハWの外縁部は徐々にウエハ載置部13の載置面へと近づいていく(図7(a))。すなわち、徐々にウエハWの反りが矯正されて平坦になっていく。なお、このときウエハWの中央部はウエハ載置部13に吸着されているので、気体Nが吹き付けられることによってウエハWの位置がずれるという事態を確実に防止できる。
【0067】
そして、ウエハWの外縁部がウエハ載置部13の載置面へと近づいていくことにより、ウエハWの中央部のみならず、ウエハWの外縁部も吸着孔17を介して保持テーブル9に吸着され、ウエハWは平坦化される(図7(b))。ウエハWを平坦化させることにより、ウエハWの裏面全体がウエハ載置部13に吸着される。よって、ウエハWは保持テーブル9によって安定に吸着保持される。
【0068】
このように、気体噴射ノズル27からウエハWに気体Nを吹き付けることにより、非接触の状態すなわち押圧プレートなどの部材による機械的接触を行わない状態であっても、気体Nの圧力によってウエハの反りを精度よく矯正できる。
【0069】
ウエハWを平坦化させてウエハWの裏面全体を保持テーブル9に吸着させた後、気体噴射ノズル27による気体Nの噴射と吸着孔17を介した吸引とをさらに所定時間続行させる。十分にウエハWの矯正が行われた後、制御部21は電磁バルブ18および29を閉じるとともに、真空装置20およびポンプ31の作動を停止させる。以上の工程により、実施例1に係る矯正装置7が備えられたウエハ処理装置1を用いて、ウエハWを矯正して平坦化させるための一連の動作は完了する。
【0070】
矯正過程が完了して平坦化されたウエハWは、搬送アーム6などの搬送手段により矯正装置7から搬出され、ウエハWに粘着テープを貼り付ける工程を例とする、以降の工程が行われる。以上で一巡の動作が終了し、以後同じ動作が繰り返される。
【0071】
<実施例1の構成による効果>
実施例1に係る構成では、保持テーブル9に載置させたウエハWに対し、保持テーブル9に設けられている吸着孔を介して吸着を行うとともに、ウエハWの上方に設けられている気体噴射ノズル27を介してウエハWに気体Nを吹き付ける。
【0072】
すなわち、吹き付けられた気体Nの圧力により、ウエハWは保持テーブル9の載置面に向けて押圧される。従って、ウエハWに対して十分な圧力を加えることができるので、ウエハWの反りを確実に矯正して平坦化できる。
【0073】
またウエハWを矯正するに際し、上向きに露出されているウエハWの回路面に対して押圧プレートなどの部材が物理的に接触することがなく、気体Nが吹き付けられるに留まる。従って、物理的接触によってウエハWの回路に損傷などの不具合が発生するという事態を確実に回避できる。よって、回路面が露出しているウエハWなど従来の矯正装置では対応が困難なワークであっても、実施例1に係る矯正装置7は当該ワークを確実かつ精度よく矯正できる。
【0074】
なお、実施例1において、図4(b)に示すような第2のパターンの反りが発生しているウエハWを矯正する工程も、上述した第1のパターンの反りを矯正する工程と同様である。
【0075】
すなわち、搬送アーム6でウエハWを吸着保持し、ウエハ収納部3から搬送装置7へと搬送する。そして上昇した状態の支持ピン15を介してウエハWを受け取り、支持ピン15を下降させてウエハWを保持テーブル9に載置させる。その後、真空装置20を作動させて吸着孔17を介した吸引を行うことにより、ウエハWの外縁部が保持テーブル9のウエハ載置部13に吸着される。
【0076】
ウエハWの外縁部の吸着によりウエハWの位置が固定されると、制御部21はポンプ31を作動させ、気体噴射ノズル27から気体NをウエハWの表面に吹き付ける。ウエハ載置部13から浮き上がっていたウエハWの中央部は、噴射された気体Nの圧力により押圧され、ウエハ載置部13へと近づいていく。
【0077】
そして吸着孔17によってウエハWの中央部もウエハ載置部13に吸着され、ウエハWの裏面全体にわたって吸着保持される。保持テーブル9による吸着と気体噴射ノズル27による気体Nの噴射とを所定時間行うことにより、第2のパターンの反りが発生しているウエハWについても好適に矯正されて平坦化できる。
【実施例2】
【0078】
次に、本発明の実施例2を説明する。実施例1と実施例2において共通する構成については同一符号を付し、以下、実施例2に特徴的な構成について図面を用いて説明する。
【0079】
実施例1に係る矯正装置7では、吸着孔17の各々および気体噴射ノズル27の各々は、いずれも1つに纏められており単一の制御を受けている。一方、実施例2に係る矯正装置7は、吸着孔17および気体噴射ノズル27の少なくとも一方について、複数のブロックに分割されている。そしてブロックごとに纏められて当該ブロックごとに独立制御を受けるという点で実施例1の構成と相違する。
【0080】
実施例2において、吸着孔17の各々を複数のブロックに分割する構成の一例を説明する。図8(a)に示すように、複数の吸着孔17について、ウエハ載置部13の中心からの距離、言い換えれば載置されるウエハWの中心からの距離に応じて、吸着孔17を複数のブロックに分割する。
【0081】
具体的には、ウエハ載置部13の中心を共有する複数の同心円が形成されるように分割される。図8(a)に示される実施例2の構成において、吸着孔17の各々は、最も中心部に近いブロックB1から、最も外縁部に近いブロックB4までの4つのブロックに分割される。
【0082】
そして、吸着孔17の各々は、ブロックごとにそれぞれ独立したラインに纏められる。すなわち図8(b)に示すように、吸着孔17のうち、ブロックB1に属する吸着孔17aの各々はラインL1に纏められ、電磁バルブ18aを備えた流路19aを介して真空装置20aと連通接続されている。
【0083】
吸着孔17のうち、ブロックB2に属する吸着孔17bの各々はラインL2に纏められ、電磁バルブ18bを備えた流路19bを介して真空装置20bと連通接続されている。ブロックB3に属する吸着孔17cの各々は、ラインL3に纏められ、電磁バルブ18cを備えた流路19cを介して真空装置20cと連通接続されている。ブロックB4に属する吸着孔17cの各々はラインL4に纏められ、電磁バルブ18dを備えた流路19dを介して真空装置20dと連通接続されている。
【0084】
ラインL1〜L4、および流路19a〜19dはそれぞれ独立している。また、制御部21は、電磁バルブ18a〜18dを独立制御するとともに、真空装置20a〜20dを独立制御する。このように、吸着孔17の各々をブロックごとに分割し、ブロックごとに制御することにより、ウエハ載置部13の中央部における吸着孔17を介した吸引力と、外縁部における吸着孔17を介した吸引力とを独立に調整できる。
【0085】
次に、実施例2において、気体噴射ノズル27の各々を複数のブロックに分割する構成の一例を説明する。図9(a)に示すように、複数の気体噴射ノズル27について、気体供給ユニット25の中心からの距離、言い換えれば載置されるウエハWの中心に対面する位置からの距離に応じて、複数の気体噴射ノズル27を複数のブロックに分割する。図9(a)において、気体噴射ノズル27の各々は最も中心部に近いブロックC1から、最も外縁部に近いブロックC5までの5つのブロックに分割される。
【0086】
そして、気体噴射ノズル27の各々は、ブロックごとにそれぞれ独立したラインに纏められる。すなわち図9(b)に示すように、気体噴射ノズル27のうち、ブロックC1に属する気体噴射ノズル27aの各々は、同じラインL1に纏められ、電磁バルブ29aを備えた流路30aを介してポンプ31aと連通接続されている。
【0087】
同様に、ブロックC2に属する気体噴射ノズル27bの各々はラインL2に纏められ、電磁バルブ29bを備えた流路30bを介してポンプ31bと連通接続されている。ブロックC3に属する気体噴射ノズル27cの各々はラインL3に纏められ、電磁バルブ29cを備えた流路30cを介してポンプ31cと連通接続されている。
【0088】
ブロックC4に属する気体噴射ノズル27dの各々はラインL4に纏められ、電磁バルブ29dを備えた流路30dを介してポンプ31dと連通接続されている。ブロックC5に属する気体噴射ノズル27eの各々はラインL5に纏められ、電磁バルブ29eを備えた流路30eを介してポンプ31eと連通接続されている。
【0089】
制御部21は、電磁バルブ29a〜29eを独立制御するとともに、ポンプ31a〜31eを独立制御する。このように、気体噴射ノズル27の各々をブロックごとに分割し、ブロックごとに制御することにより、気体Nの噴射によりウエハWの中央部に対して作用する圧力と、ウエハWの外縁部に対して作用する圧力とを独立に調整できる。
【0090】
また、実施例2に係る矯正装置7はセンサ35を備えている。センサ35は、ウエハ載置部13に載置されたウエハWの反りの形状を検知する。また、センサ35の例として、図8(b)に示すような、ウエハ載置部13の周囲に配設された光学センサや超音波センサ、またはウエハ載置部13に配設された接触センサなどが挙げられる。一例としてセンサ35が接触センサである場合、ウエハWのうち中央部がウエハ載置部13と接触している場合、ウエハWの反りの形状は図4(a)に示す第1のパターンであると検知できる。
【0091】
センサ35が検知した、ウエハWの反りの形状に関する情報は制御部21に送信される。制御部21は反りの形状に関する情報に基づいて、ブロックB1〜B4の各々における吸着孔17の吸引力と、ブロックC1〜C5の各々における気体噴射ノズル27の噴射力とを独立して制御できる。
【0092】
次に、実施例2に係る矯正装置7が備えられたウエハ処理装置1を用いて、ウエハWを矯正して平坦化させるための一連の動作を説明する。なお実施例2においても実施例1と同様に、ウエハWには図4(a)に示す第1のパターンの反りが発生しているものとする。
【0093】
ウエハWを保持テーブル9に載置させるまでの工程は実施例1と実施例2とは共通する。すなわち、ウエハ処理装置1の動作を開始すると、支持ピン15の先端をウエハ載置部13の載置面から突出させるとともに、ウエハ収納部3に収納されていたウエハWを保持テーブル9へと搬送させる。そして保持テーブル9から突出している支持ピン15にウエハWを載置させる。その後、支持ピン15が下降し、ウエハWはウエハ載置部13の上面に載置される。
【0094】
ウエハWが保持テーブル9に載置されると、センサ35が作動してウエハWの反りの形状が検知される。この場合、ウエハWの反りの形状は第1のパターンである旨の情報が制御部21へと送信される。すなわち、保持テーブル9に載置されたウエハWは、中央部においてウエハ載置部13の載置面に接している。
【0095】
制御部21は真空装置20a〜20dの各々を作動させるとともに、電磁バルブ18a〜18dを開放する。当該制御により、ウエハWのうち少なくとも中央部は吸着孔17を介してウエハ載置部13に吸着される。
【0096】
その後、制御部21はさらにポンプ31a〜31eの各々を作動させるとともに、電磁バルブ29a〜29eを開放させ、気体噴射ノズル27a〜27eの各々に気体を供給する。このとき、制御部21はウエハWの反りの形状に応じて、ポンプ31a〜31eの各々と電磁バルブ29a〜29eの各々とを独立に制御する。
【0097】
ウエハWの反りが第1のパターンである場合、ウエハWの中央部と比べて外縁部の方がウエハ載置部13から浮き上がっている。すなわち、ウエハWの中央部と比べて外縁部の方をより強く押圧する必要がある。そこで制御部21は、ウエハWの外縁部に近づくにつれて気体噴射ノズル27の噴射力を段階的に強くするように制御する。
【0098】
すなわち図10に示すように、気体噴射ノズル27a〜27eの各々から吹き付けられる気体N1〜N5のうち、気体噴射ノズル27aから噴射される気体N1の圧力を最も低くする。そして、気体噴射ノズル27bから噴射される気体N2、気体噴射ノズル27cから噴射される気体N3、気体噴射ノズル27dから噴射される気体N4、気体噴射ノズル27eから噴射される気体N5の順に、噴射される気体Nの圧力を段階的に変化させる。すなわち、気体噴射ノズル27eから噴射される気体N5の圧力が最も高くなるように制御される。
【0099】
ウエハWの中央部には気体噴射ノズル27aから噴射される気体N1が吹き付けられ。ウエハWの外縁部には気体噴射ノズル27eから噴射される気体N5が吹き付けられる。そのため、気体N5の圧力を最も高くすることにより、ウエハ載置部13から大きく浮き上がっているウエハWの外縁部は気体N5によってより強く押圧され、速やかにウエハ載置部13へと近づく。
【0100】
また、制御部21は吸着孔17の各々についても同様の制御を行う。すなわち真空装置20a〜20dの各々と電磁バルブ18a〜18dの各々とを独立に制御し、吸着孔17a〜17eのうち、吸着孔17aの吸引力を最も弱くさせる。そして吸着孔17b、吸着孔17c、吸着孔17dの順に吸引力を段階的に変化させていき、吸着孔17dの吸引力を最も強くさせる。
【0101】
吸着孔17dの吸引力を最も強く制御することにより、気体N5によってより強く押圧されてウエハ載置部13へと近づいていたウエハWの外縁部は、より確実かつ速やかに吸着孔17dによって吸着される。従って、ウエハWの中心からの距離に応じて吸着孔17の吸引力と気体噴射ノズル27の噴射力とを独立制御することにより、最も反りの大きいウエハWの外縁部をより確実かつ速やかに矯正し、ウエハWの全体を平坦化できる。
【0102】
実施例1と同様、平坦化されたウエハWの裏面全体を保持テーブル9で吸着しつつ、気体噴射ノズル27による気体Nの噴射を所定時間行うことにより、ウエハWを矯正する一連の過程は完了する。
【0103】
なお、センサ35によって検知されたウエハWの反りの形状が、図4(b)に示すような第2のパターンで合った場合、制御部21による各構成の制御は図11に示す通りとなる。
【0104】
ウエハWの反りが第2のパターンである場合、ウエハWの外縁部と比べて中央部の方がウエハ載置部13から浮き上がっている。すなわち、ウエハWの外縁部と比べて中央部の方をより強く押圧する必要がある。
【0105】
そこで制御部21は、ウエハWの中央部に近づくにつれて気体噴射ノズル27の噴射力を段階的に強くするように制御する。すなわち、気体噴射ノズル27a〜27eの各々から吹き付けられる気体N1〜N5のうち、気体噴射ノズル27aから噴射される気体N1の圧力を最も高くする。
【0106】
そして、気体N2、気体N3、気体N4、気体N5の順に、噴射される気体Nの圧力を段階的に変化させ、気体噴射ノズル27eから噴射される気体N5の圧力が最も低くなるように制御される。気体N1の圧力を最も高くすることにより、ウエハ載置部13から大きく浮き上がっているウエハWの中央部は気体N1によってより強く押圧され、速やかにウエハ載置部13へと近づくこととなる。
【0107】
一方、既にウエハ載置部13と近接しているウエハWの外縁部は、低圧の気体N5によって押圧されるので、過度に高い圧力がウエハWの外縁部に作用し、当該外縁部がウエハ載置部13に押し当てられて歪むという事態を回避できる。
【0108】
また、制御部21は吸着孔17の各々についても同様の制御を行う。すなわち真空装置20a〜20dの各々と電磁バルブ18a〜18dの各々とを独立に制御し、吸着孔17a〜17dのうち、吸着孔17dの吸引力を最も弱くさせる。
【0109】
そして吸着孔17c、吸着孔17b、吸着孔17aの順に吸引力を段階的に変化させていき、吸着孔17aの吸引力を最も強くさせる。吸着孔17aの吸引力を最も強く制御することにより、気体N1によってより強く押圧されてウエハ載置部13へと近づいていたウエハWの中央部を、より確実かつ速やかに吸着できる。よって、第2のパターンに沿った反りについても精度良く矯正できる。
【0110】
<実施例2の構成による効果>
実施例2に係る矯正装置7は、気体噴射ノズル27の各々を複数のブロックに分割し、噴射される気体の圧力をブロックごとに独立制御する。独立制御することにより、ウエハWのうち反りが比較的小さい部分には低圧の気体Nを吹き付けて押圧する一方、反りが比較的大きい部分には高圧の気体Nを吹き付けて押圧することができる。
【0111】
このように、反りの大きさに応じて気体噴射ノズル27から吹き付けられる気体の圧力を調節することにより、ウエハWのうち反りの大きい部分については高圧の気体を吹き付けることにより、反りが大きくとも確実かつ速やかに当該反りを矯正できる。一方、反りの小さい部分については低圧の気体を吹き付けることにより、反りの小さい部分に対して過度に大きい圧力が作用することにより、ウエハWの当該部分に歪みが新たに発生する事態を回避できる。従って、より精度良くウエハWの反りを矯正して平坦化できる。
【0112】
また、一端側の外縁部と他端側の外縁部など、反りの量が略同じ部位における気体噴射ノズル27の各々は同じブロックに纏められて共通の制御を受ける。従って、ブロックごとに独立制御する構成とすることにより、気体噴射ノズル27ごとに独立制御する構成と比べて制御機構を単純化できる。
【0113】
さらに、実施例2では吸着孔17の各々についても複数のブロックに分割し、吸引力をブロックごとに独立制御する。そのため、ウエハW全体のうち、反りが比較的大きい部分をより強い力で吸引するので、当該吸引力によって反りが大きい部分を確実かつ速やかに平坦となるよう矯正し、吸着孔17に吸着させることができる。
【0114】
一方、ウエハW全体のうち反りが比較的小さい部分については比較的弱い力で吸引するので、過度に強い力で吸引することによって、反りの小さい部分が過剰な力で保持テーブル9に吸着されて新たに歪みが発生するという事態を回避できる。従って、ウエハWの反りを矯正する精度を向上できる。
【0115】
実施例2において好ましい構成として、センサ35を用いてウエハWの反りの形状を予め検知しておき、当該反りの形状に応じて気体噴射ノズル27から噴射される気体の圧力を独立制御する。予めウエハWの反りの形状を検知することにより、ウエハWの反りの形状に対して、各々の部分に対して適切な大きさの圧力を気体噴射ノズル27によって作用させることができる。よって、さらに精度よくウエハWの反りを矯正して平坦化できる。
【0116】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0117】
(1)上記各実施例に係る構成において、保持テーブル9または加圧機構11に位置合わせ用の支持部が設けられていることが好ましい。
【0118】
図12(a)には、保持テーブル9に支持部45が立設されている構成を例示している。支持部45は一例としてリング状であり、その内径はウエハWの径よりわずかに大きくなるように構成されている。また、ウエハ載置部13と中心を共有している。そのため、ウエハ載置部13に載置されたウエハWは支持部45によって位置合わせされる。
【0119】
また、所定の高さDを備える支持部45を立設させることにより、気体供給ユニット25を下降させて気体噴射ノズル27を保持テーブル9上のウエハWに近づける際に、支持部45の先端が気体供給ユニット25に当接するため、気体噴射ノズル27とウエハWとの距離が過度に近づくことを防止できる。すなわち、支持部45は保持テーブル9上におけるウエハWの位置ズレを防止するに留まらず、上下方向(z方向)における気体噴射ノズル27とウエハWとの間の位置合わせも行う。
【0120】
支持部45には図12(a)および図12(b)に示すように、気体排出孔47が設けられている。そのため、リング状の支持部45によってウエハWが囲まれた状態で気体噴射ノズル27から気体Nが吹き付けられた場合であっても、気体Nを気体排出孔47から排出できる。なお、ウエハWの位置合わせを行える限りにおいて、支持部45の形状はリング状に限ることはなく、一例として図12(c)に示すようなピン状であってもよい。
【0121】
(2)上記各実施例に係る構成において、複数の気体噴射ノズル27が設けられている構成を例示しているが、気体噴射ノズル27は1つでもよい。この場合、図13(a)に示すように、気体噴射ノズル27はウエハWの中央部に対向する位置に設けられることが好ましい。
【0122】
当該変形例の構成において、気体噴射ノズル27からウエハWに向けて気体Nを噴射することにより、図13(b)のように気体NはウエハWの中央部に吹き付けられ、ウエハWの中央部がまず気体Nによってウエハ載置部13へ押圧される。
【0123】
その後、図13(c)に示すように、気体NはウエハWの上面に沿って広がるように流れ、ウエハWの中間部および外縁部をウエハ載置部13へと押圧する。その結果、ウエハWは全面にわたってウエハ載置部13に吸着保持されて平坦化する。矯正装置7に支持部45が設けられている場合、気体Nは気体排出孔47から矯正装置7の外部へと排出される。このように、気体噴射ノズル27の数に関わらず、ウエハWを非接触の状態で精度よく矯正できる。
【0124】
(3)上記実施例2および実施例2をベースとする各変形例において、吸着孔17または気体噴射ノズル27を、中心からの距離に応じて複数のブロックに分割する構成を例示している。しかし、吸着孔17または気体噴射ノズル27を複数のブロックに分割する構成はこれに限られない。
【0125】
複数のブロックに分割する構成の他の一例として、図14(a)に示すように、x方向またはy方向に並ぶ1列または複数列の気体噴射ノズル27を1つのブロックとして、気体噴射ノズル27の各々を複数のブロックE1〜E5に分割する構成が挙げられる。
【0126】
このような変形例に係るブロック分割を行って当該ブロックごとに独立制御を行うことにより、図4(a)および図4(b)に示す一般的な形状とは異なる形状の反りがウエハWに発生している場合であっても、精度良く当該反りを矯正できる。
【0127】
一例として、図14(b)に示すように、x方向に波打つような形状の反りが発生しているウエハWに対し、ウエハWの各部分に発生している反りの大きさに応じて、気体噴射ノズル27から吹き付けられる気体Nの圧力を適宜調整できる。よって、当該波打つ形状の反りを矯正し、ウエハWを平坦化できる。
【0128】
(4)上記各実施例および各変形例に係る構成において、反りなどの歪みを矯正して平坦化させる対象であるワークとして、表面に形成された回路パターンが露出している状態のウエハWを用いる場合を例示したがこれに限られない。
【0129】
矯正の対象となるワークとして用いられる構成としては、ウエハWの他にガラスやセラミック、有機材料などで構成される基板などが挙げられる。また、ワークの形状も円形に限ることはなく、ノッチやオリエンテーションフラットを備えるウエハの形状に沿った、凹部や直線部を含む略円形状や、基板などの形状に応じた、矩形状、略矩形状、多角形状など種々の形状のワークについても本発明の構成を適用できる。
【0130】
この場合、ウエハ載置部13および気体供給ユニット25の形状、並びに吸着孔17の配置および気体噴射ノズル27の配置は、ワークの形状に応じて適宜変更できる。
【符号の説明】
【0131】
1 … ウエハ処理装置
3 … ウエハ収納部
5 … ウエハ搬送機構
6 … 搬送アーム
6a … ウエハ保持部
7 … 矯正装置
9 … 保持テーブル
11 … 加圧機構
13 … ウエハ載置部
15 … 支持ピン
17 … 吸着孔
20 … 真空装置
21 … 制御部
27 … 気体噴射ノズル
31 … ポンプ
W … 半導体ウエハ
C … カセット
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