【解決手段】配線板10は、基材20と、相互に電気的に接続された第1及び第2のアンテナパターン311,312を有するアンテナ回路31を含む導体部30と、基材20上に設けられた絶縁層41と、を備え、第1のアンテナパターン311は、一つの第1のループ部311aを有し、基材20上に設けられていると共に絶縁層41に覆われており、第2のアンテナパターン312は、一つの第2のループ部312aを有し、絶縁層42上に設けられており、平面視において、第1のループ部311aと第2のループ部312aとは相互に重複している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなアンテナコイルでは、リーダライタ端末との通信を確立するために、渦巻き状のアンテナコイルの巻き数を増やすことで、所定の大きさのインダクタンスを確保する必要がある。しかしながら、基材のサイズが小さい場合やICチップの実装エリアが大きい場合には、アンテナコイルの形成エリアが小さくなってしまうため、十分な巻き数を確保し得ない場合がある、という問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、小型化を図りつつアンテナ回路の十分な巻き数を確保することが可能な配線板及び回路板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る配線板は、基材と、相互に電気的に接続された第1及び第2のアンテナパターンを有するアンテナ回路を含む導体部と、前記基材上に設けられた絶縁層と、を備え、前記第1のアンテナパターンは、少なくとも一つの第1のループ部を有し、前記基材上に設けられていると共に前記絶縁層に覆われており、前記第2のアンテナパターンは、少なくとも一つの第2のループ部を有し、前記絶縁層上に設けられており、平面視において、前記第1のループ部と前記第2のループ部とは、相互に重複している配線板である。
【0007】
[2]上記発明において、前記絶縁層は、貫通孔を有しており、前記絶縁層の一方面に形成された前記第2のアンテナパターンと、前記絶縁層の他方面に形成された前記第1のアンテナパターンとは、前記貫通孔を介して相互に接続されていてもよい。
【0008】
[3]上記発明において、前記絶縁層は、前記基材において電子部品が実装される実装エリアを露出させる開口を有しており、前記導体部は、前記開口を介して、前記第2のアンテナパターンの端部から前記実装エリアに延在している配線パターンを含んでいてもよい。
【0009】
[4]上記発明において、前記配線板は、前記基材上に順次積層された複数の前記絶縁層を備え、前記アンテナ回路は、複数の前記絶縁層上にそれぞれ設けられた複数の前記第2のアンテナパターンを有しており、平面視において、前記第1のループ部と、複数の前記第2のループ部とは、相互に重複していてもよい。
【0010】
[5]上記発明において、前記絶縁層の一方面に形成された前記第2のアンテナパターンと、前記絶縁層の他方面に形成された前記第2のアンテナパターンとは、前記貫通孔を介して相互に接続され、前記配線パターンは、前記開口を介して、最上段の前記第2のアンテナパターンの端部から前記実装エリアに延在していてもよい。
【0011】
[6]上記発明において、相互に積層された複数の前記絶縁層は、上段に向かうに従って前記開口の少なくとも一部が広がることで形成された階段形状を有しており、前記配線パターンは、前記階段形状に沿って、最上段の前記第2のアンテナパターンの端部から前記実装エリアに延在していてもよい。
【0012】
[7]上記発明において、基材は、基材本体と、前記基材本体上に設けられた下地層と、を含み、前記第1のアンテナパターンは、前記下地層上に設けられ、前記導体部は、導電性粒子同士が相互に融着することで形成されており、前記下地層の表面は、前記基材本体の表面よりも粗く、前記絶縁層の表面も、前記基材本体の表面よりも粗くてもよい。
【0013】
[8]上記発明において、前記下地層が、第1の樹脂部と、前記第1の樹脂部に保持された複数の第1の粒子と、を含んでおり、前記絶縁層も、第2の樹脂部と、前記第2の樹脂部に保持された複数の第2の粒子と、を含んでいてもよい。
【0014】
[9]上記発明において、前記導体部の金属含有率は、90vol%以上であってもよい。
【0015】
[10]本発明に係る回路板は、上記の配線板と、前記配線板に実装された電子部品と、を備えた回路板であって、前記電子部品は、前記アンテナ回路と電気的に接続されていると共に、前記アンテナ回路の内側に配置されている回路板である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1のアンテナパターンと第2のアンテナパターンとが絶縁層を介して積層されており、平面視において、第1のループ部と第2のループ部とが相互に重複している。このため、基材のサイズが小さくても、アンテナ回路の巻き数を増やすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
<<第1実施形態>>
図1は本実施形態における配線板を示す平面図であり、
図2は本実施形態における配線板を示す断面図であり、
図3〜
図5は本実施形態における1層目〜第3層目のアンテナパターンをそれぞれ示す平面図である。
【0020】
本実施形態の回路板1は、例えば、RFID(Radio Frequency Identification)に用いられるRFタグである。この回路板1は、
図1及び
図2に示すように、配線板10と、当該配線板10に実装された電子部品100と、を備えている。なお、回路板1や配線板10の用途は、RFタグに特に限定されない。
【0021】
配線板10は、いわゆるメンブレン配線板であり、基材20と導体部30を備えている。本実施形態では、導体部30は、4つのアンテナパターン311〜314を有するアンテナ回路31を含んでいる。そして、配線板10は、この第1〜第4のアンテナパターン311〜314の間にそれぞれ介在する第1〜第3の中間絶縁層41〜43をさらに備えている。なお、導体部30が有するアンテナパターンの層数は上記に特に限定されず、導体部30のアンテナ回路31に要求されるインダクタンス等に応じて任意に設定することができる。また、中間絶縁層の層数も上記に特に限定されず、アンテナパターンの層数等に応じて設定することができる。
【0022】
本実施形態における基材が本発明における基材の一例に相当し、本実施形態における第1〜第3の中間絶縁層41〜43が本発明における絶縁層の一例に相当する。また、本実施形態における第1のアンテナパターン311が本発明における第1のアンテナパターンの一例に相当し、本実施形態における第2〜第4のアンテナパターン312〜314が本発明における第2のアンテナパターンの一例に相当する。
【0023】
基材20は、電気絶縁性を有する材料から構成されたフィルム(シート)である。この基材20を構成する材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂材料を挙げることができる。特に限定されないが、この基材20は、例えば、10μm〜250μm程度の厚さを有している。
【0024】
導体部30は、導電性ペーストを印刷して硬化することで形成されている。導電ペーストの具体的な印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、グラビアオフセット法、バーコート法等を例示することができる。
【0025】
本実施形態において、導体部30を形成するための導電性ペーストは、導電性粒子、バインダ、溶剤等から構成されている。
【0026】
導電性ペーストを構成する導電性粒子は、特に限定されないが、平均一次粒子径が数μm程度の金属粒子から構成されている。このような金属粒子を構成する材料としては、銀、金、銅、ニッケル、白金、パラジウム等を例示することができる。なお、複数種の材料から構成される金属粒子の混合物として導電性粒子を構成してもよい。
【0027】
導電性ペーストを構成するバインダとしては、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等を例示することができる。なお、これらの樹脂を複数種用いて構成される混合物をバインダとしてとして用いてもよい。
【0028】
導電性ペーストを構成する溶剤としては、ブチルカルビトールアセテート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールn‐ブチルエーテル、ベンジルグリコール、メチルポリグリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、イソプロパノール、ブタノール、テルピネオール、チキサノール、ブチルセロソルブアセテート、イソホロン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、γ‐ブチロラクトンの単独またはこれらの混合溶剤を例示することができる。
【0029】
なお、導電性ペーストは、必要に応じて、顔料、チクソトロピー付与剤、消泡剤、分散剤、防錆剤、還元剤等を含んでいてもよい。
【0030】
本実施形態における導体部30は、
図1及び
図2に示すように、RFタグのアンテナ回路31と、当該アンテナ回路31を電子部品100に接続する接続配線パターン32,33と、を形成している。そして、アンテナ回路31は、相互に電気的に接続された4つのアンテナパターン311〜314で構成されている。この4つのアンテナパターン311〜314は、上下方向において相互に重なるように配置されており、アンテナ回路31は、4層構造を有している。
【0031】
3つの中間絶縁層41〜43は、4つのアンテナパターン311〜314の間にそれぞれ設けられている。それぞれの中間絶縁層41〜43は、樹脂材料を印刷して硬化させることで形成されており、電気絶縁性を有している。こうした中間絶縁層41〜43を構成する樹脂材料の具体例としては、アクリル系、エポキシ系、シリコーン系の樹脂材料等を例示することができる。また、樹脂材料の具体的な印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、グラビアオフセット法、バーコート法等を例示することができる。
【0032】
図3に示すように、基材20上には第1のアンテナパターン311が設けられている。この第1のアンテナパターン311は、基材20の外縁に沿ってほぼ一周する矩形の略環形状を有する1つのループ部311aを含んでいる。このループ部311aは、基材20の外縁の一辺201で途切れており、当該ループ部311aの一方の端部311bは、第1の接続配線パターン32を介して、電子部品100と接続されている。なお、第1のアンテナパターン311が複数のループ部311aを含んでいてもよく(すなわち、第1のアンテナパターン311が渦巻き形状を有していてもよく)、第2〜第4のアンテナパターン312〜314についても同様である。
【0033】
図4に示すように、第1の中間絶縁層41は、この第1のアンテナパターン311を覆うように、基材20上に設けられている。この第1の中間絶縁層41の中央部分には、開口41aが形成されている。この開口41aは、電子部品100の実装エリア203に対応しており、開口41a内に電子部品100が配置されている。また、この第1の中間絶縁層41には貫通孔41cが形成されており、この貫通孔41cを介してループ部311aの他方の端部311c(
図3参照)が第1の中間絶縁層41から露出している。
【0034】
この第1の中間絶縁層41上には第2のアンテナパターン312が設けられている。この第2のアンテナパターン312は、基材20の外縁に沿ってほぼ一周する矩形の略環形状を有する1つのループ部312aを含んでおり、このループ部312aは、平面視において、第1のアンテナパターン311のループ部311aと重なるように配置されている。そして、このループ部312aは、基材20の外縁の一辺201で途切れており、当該ループ部312aの一方の端部312bは、第1の中間絶縁層41の貫通孔41cを介して、ループ部311aの他方の端部311c(
図3参照)と接続されている。このように貫通孔41cを介してループ部311a,312a同士を接続することで、ループ部311a,312aを屈曲等させる必要がなく、アンテナ回路31の特性を低下させずにループ部311a,312a同士を接続することができる。
【0035】
図5に示すように、第2の中間絶縁層42は、この第2のアンテナパターン312を覆うように、第1の中間絶縁層41上に設けられている。この第2の中間絶縁層42の中央部分には、開口42aが形成されている。この開口42aは、第1の中間絶縁層42の開口41aに対応しており、開口42a内に電子部品100が配置されている。この開口42aの辺42bは、第1の中間絶縁層42の開口41aの辺41bよりも外側に位置しており、当該開口42aは、第1の中間絶縁層42の開口41aよりも大きくなっている。また、この第2の中間絶縁層42には貫通孔42cが形成されており、この貫通孔42cを介してループ部312aの他方の端部312c(
図4参照)が第2の中間絶縁層42から露出している。
【0036】
この第2の中間絶縁層42上には、第3のアンテナパターン313が設けられている。この第3のアンテナパターン313は、基材20の外縁に沿ってほぼ一周する矩形の略環形状を有する1つのループ部313aを含んでいる。このループ部313aは、平面視において、第2のアンテナパターン312のループ部312aと重なるように配置されている。ループ部313aの一方の端部313bは、第2の中間絶縁層42の貫通孔42cを介して、ループ部312aの他方の端部312c(
図4参照)と接続されている。
【0037】
図1に示すように、第3の中間絶縁層43は、この第3のアンテナパターン313を覆うように、第2の中間絶縁層42上に設けられている。この第3の中間絶縁層43の中央部分には、開口43aが形成されている。この開口43aは、第1及び第2の中間絶縁層42,43の開口41a,42aに対応しており、開口43a内に電子部品100が配置される。また、この第3の中間絶縁層43には貫通孔43cが形成されており、この貫通孔43cを介してループ部313aの他方の端部313c(
図5参照)が第3の中間絶縁層43から露出している。
【0038】
この第3の中間絶縁層43の開口43aの辺43bは、第2の中間絶縁層42の開口42aの辺42bよりも外側に位置しており、当該開口43aは、第2の中間絶縁層42の開口42aよりも大きくなっている。すなわち、本実施形態では、中間絶縁層41〜43の積層位置が上側である程、開口41a〜43aの辺41b〜43bが外側に位置しており、第1〜第3の中間絶縁層41〜43は、開口41a〜43aの辺41b〜43bによって形成された階段形状45を有している。なお、第1〜第3の中間絶縁層41〜43の開口41a〜43aの平面形状を実質的に同一として、当該第1〜第3の中間絶縁層41〜43が階段形状を備えていなくてもよい。
【0039】
この第3の中間絶縁層43上には第4のアンテナパターン314が設けられている。この第4のアンテナパターン314は、基材20の外縁に沿ってほぼ一周する矩形の略環形状を有する1つのループ部314aを含んでいる。このループ部314aは、平面視において、第3のアンテナパターン313のループ部313aと重なるように配置されている。すなわち、本実施形態では、平面視において、全てのループ部311a〜314aが相互に重複している。なお、平面視において、ループ部311a〜314aが部分的に重複していてもよいし、ループ部311a〜314aのうちの一部のループ部のみが相互に重複していてもよい。
【0040】
このループ部314aは、基材20の角部202で途切れており、ループ部314aの一方の端部314bは、第3の中間絶縁層43の貫通孔43cを介して、ループ部313aの他方の端部313c(
図5参照)と接続されている。
【0041】
一方、このループ部314aの他方の端部314cは、第2の接続配線パターン33を介して、電子部品100と接続されている。本実施形態では、第2の接続配線パターン33は、第1〜第3の中間絶縁層41〜43の階段形状45に沿って、第4のアンテナパターン314のループ部314aの端部314cから実装エリア203に延在している。これにより、第2の接続配線パターン33の断線を抑制することができる。また、第1〜第3の中間絶縁層41〜43の開口41a〜43aを介して第2の接続配線パターン33を第4のアンテナパターン314のループ部314aの端部314cから実装エリア203に延在させることで、第1〜第3の中間絶縁層41〜43に貫通孔を形成する必要がないので、開口41a〜43aの面積を広げることができる。本実施形態における第2の接続配線パターン33が、本発明における配線パターンの一例に相当する。
【0042】
電子部品100は、メモリや制御回路等を含むICチップである。この電子部品100は、例えば半田或いは導電性接着剤等によって、接続配線32,33とそれぞれ接続されている。この回路板1をRFタグとして用いる場合には、相手方のリーダライタ端末に当該回路板1を近づけることでICチップが駆動して、非接触で回路板1とリーダライタ端末との間で情報を授受する。
【0043】
以上のように、本実施形態では、平面視においてループ部311a〜314aが相互に重なるように、第1〜第4のアンテナパターン311〜314が第1〜第3の中間絶縁層41〜43を介して積層されている。このため、基材20のサイズが小さくなる場合や電子部品100の実装エリアが広くなる場合でも、アンテナ回路31の巻き数を増やすことができる。
【0044】
<<第2実施形態>>
図6は本発明の第2実施形態における回路板を示す断面図であり、
図7は
図6のVII部の拡大図であり、
図8は
図7のVIII部の拡大図である。
【0045】
本実施形態では、(1)基材20Bが下地層22を有している点、(2)導体部30Bの組成、及び、(3)中間絶縁層41B〜43Bの組成、が第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は第1実施形態と同様である。すなわち、本実施形態における回路基板1Bは、配線板10Bと電子部品100を備え、配線板10Bは、基材20Bと、4層のアンテナパターン311〜314を有する導体部30Bと、アンテナパターン311〜314の間にそれぞれ介在する第1〜第3の中間絶縁層41B〜43Bと、を備えている。以下に、第2実施形態における回路板について、第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成である部品については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
本実施形態における配線板10Bの基材20Bは、基材本体21と、当該基材本体21上に形成された下地層22と、を備えている。
【0047】
基材本体21は、電気絶縁性を有する材料から構成されたフィルム(シート)である。この基材本体21を構成する材料の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂材料を挙げることができる。特に限定されないが、この基材本体21は、例えば、10μm〜250μm程度の厚さを有している。また、この基材本体21の上面211は、0.1μm以下の表面粗さを有している。この表面粗さは、JIS法(JIS B0601:2013)により測定することができ、本実施形態における「表面粗さ」は、上記のJIS法における「算術平均粗さRa」である。表面粗さを測定する測定器の具体例としては、例えば、表面粗さ計、白色干渉計、レーザー変位計等を例示することができる。
【0048】
下地層22は、
図7に示すように、樹脂部222と、当該樹脂部222に保持された多数の粒子223と、を含んでおり、電気絶縁性を有する層である。この下地層22は、基材21の上面211の全体を覆っている。なお、基材21の上面211における下地層22の形成領域は、導体部30Bに対応する領域を少なくとも含んでいれば、当該上面211の全体に限定されない。この下地層22は、例えば、5μm〜50μm程度の厚さを有しているが、下地層22の厚さが基材本体21の厚さよりも薄いのであれば、特にこれに限定されない。本実施形態における樹脂部222が本発明における第1の樹脂部の一例に相当し、本実施形態における粒子223が本発明における第2の粒子の一例に相当する。
【0049】
この下地層22は、例えば、粒子223を分散させた樹脂材料を基材21の上面211に印刷して硬化させることで形成されている。樹脂材料の具体的な印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、グラビアオフセット法、バーコート法等を例示することができる。樹脂部222を構成する樹脂材料の具体例としては、例えば、ポリエステル系、或いは、アクリル系の樹脂材料を例示することができる。特に、ポリエステル系の樹脂材料で樹脂部222を構成することで、下地層22と基材21との高い密着性を確保することができる。
【0050】
また、下地層22の粒子223は、電気絶縁性を有する絶縁性粒子であり、例えば、タルク、珪酸アルミニウム、炭酸カルシウム、或いは、酸化チタン等の無機材料から構成されている。本実施形態では、下地層22が粒子223を含有していることで、当該下地層22の上面221が、0.1μm〜10μmの表面粗さを有しており、下地層22の上面221が基材本体21の上面211よりも粗くなっている。このため、本実施形態では、この下地層22に対する導体部30Bの密着性が優れている。また、下地層22が粒子223を含んでいることで、下地層22の上面221に凹凸を確実に形成することができる。このため、下地層22に熱が印加されても、当該凹凸を維持することができるので、回路板1Bの耐久性が向上する。粒子223の粒径としては、0.1μm〜10μmであることが好ましい。特に、タルクからなる粒子223は、不規則な薄片形状を有しているので、下地層22の上面221を効率的に粗化することができる。
【0051】
なお、下地層22の上面221が基材21の上面211よりも粗くなっているのであれば、基材21の上面211の表面粗さは上記の数値範囲に特に限定されない。同様に、下地層22の上面221が基材21の上面211よりも粗くなっているのであれば、下地層22の上面221の表面粗さも上記の数値範囲に特に限定されない。
【0052】
本実施形態における導電性ペーストは、銀化合物からなる粒子を分散媒に分散又は溶解させることで構成されており、バインダを含有していない。銀化合物としては、特に限定されないが、例えば、酸化銀(例えば、酸化第1銀、酸化第2銀等)、炭酸銀、並びに、酢酸銀、及び、アセチルアセトン銀錯体等の有機銀からなる群より選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。また、分散媒の具体例としては、水、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール系、イソホロン、テルピネオール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルセロソルブアセテート等を例示することができる。
【0053】
下地層22に印刷された導電性ペーストを加熱硬化することで導体部30Bが形成される。この際、
図8に示すように、銀化合物が前駆体として機能し、還元反応により生成された金属銀粒子30aが相互に融着して、連続した金属銀の塊からなる導電性被膜が形成される。本実施形態における金属銀粒子30aが、本発明における導電性粒子の一例に相当する。
【0054】
本実施形態では、上述のように導電性ペーストがバインダを含有していないため、硬化後の導体部30Bの空隙部分30bを除いた金属含有率が90vol%以上となっている。なお、導体部30Bの空隙部分30bを除いた金属含有率が99vol%以上であることがより好ましい。空隙部分30bを樹脂部分の面積に含めた場合であっても、導体部30Bの金属含有率が90vol%以上であることがより好ましい。なお、導体部30Bにおいて金属銀粒子30a同士が相互に融着しているのであれば、当該導体部30Bの金属含有率は上記の数値範囲に特に限定されない。
【0055】
ここで、導体部30Bの金属含有率は、例えば、以下の要領で測定することができる。すなわち、導体部30Bを切断してその断面をSEMで観察した際に、下記(1)式を満たす値S[vol%]として金属含有率を測定することができる。
S=S
1/(S
1+S
2)×100・・・(1)
但し、上記(1)式において、S
1は導体部30Bの断面における単位面積(当該断面に形成されている空隙部分30bを除く)に占める金属部分の面積であり、S
2は導体部30Bの断面における単位面積(当該断面に形成されている空隙部分30bを除く)に占める樹脂部分の面積である。
【0056】
なお、この導電性ペーストが、銀化合物からなる粒子に加えて、金属銀からなる粒子を含有していてもよい。また、この導電性ペーストが、還元促進剤や分散剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0057】
第1〜第3の中間絶縁層41B〜43Bは、上述の下地層22と同様の材料から構成されており、特に図示しないが、樹脂部と、当該樹脂部に保持された多数の粒子と、を含んでいる。本実施形態における中間絶縁層41B〜43Bの樹脂部が本発明における第1の樹脂部の一例に相当し、本実施形態における中間絶縁層41B〜43Bの粒子が本発明における第2の粒子の一例に相当する。
【0058】
本実施形態では、上述の下地層22と同様に、中間絶縁層41B〜43Bが絶縁性粒子をそれぞれ含有していることで、当該中間絶縁層41B〜43Bの上面が、0.1μm〜10μmの表面粗さを有しており、中間絶縁層41B〜43Bの上面が基材本体21の上面211よりも粗くなっている。このため、本実施形態では、この中間絶縁層41B〜43Bに対する導体部30Bの密着性が優れている。また、中間絶縁層41B〜43Bが絶縁性粒子を含んでいることで、中間絶縁層41B〜43Bの上面に凹凸を確実に形成することができる。このため、中間絶縁層41B〜43Bに熱が印加されても、当該凹凸を維持することができるので、回路板1Bの耐久性が向上する。なお、中間絶縁層41B〜43Bの上面が基材21の上面211よりも粗くなっているのであれば、中間絶縁層41B〜43Bの上面の表面粗さは上記の数値範囲に特に限定されない。
【0059】
以上のように、本実施形態では、上述の第1実施形態と同様に、平面視においてループ部311a〜314aが相互に重なるように、第1〜第4のアンテナパターン311〜314が第1〜第3の中間絶縁層41B〜43Bを介して積層されている。このため、基材20Bのサイズが小さくなる場合や電子部品100の実装エリアが広くなる場合でも、アンテナ回路31の巻き数を増やすことができる。
【0060】
また、RFタグを小型化する場合に、アンテナ回路の抵抗値が高いと、そもそもリーダランタ端末との通信が困難になってしまう場合がある。これに対し、本実施形態では、導電性ペーストがバインダ成分を含有しておらず、導体部30Bの金属銀粒子30aが相互に融着しているので、導体部30Bがバルク金属に近い比抵抗を有している。このため、アンテナ回路31の抵抗値を低くすることができるので、リーダライタ端末と通信を維持しつつ、RFタグの小型化を図ることができる。
【0061】
一方で、導電性ペーストがバインダ成分を含有していないと、導体部と基材との密着性が著しく劣ってしまう。これに対し、本実施形態では、基材本体21と導体部30Bとの間に下地層22が介在しており、この下地層22は、基材本体21の表面211よりも粗い表面221を有している。このため、還元反応により金属銀粒子30aが生成される際に、
図7に示すように、下地層22の表面221の凹凸に倣うように金属銀粒子30aが焼成されるので、導体部30Bの密着性の向上を図ることができる。
【0062】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0063】
以下に、本発明をさらに具体化した実施例及び比較例により本発明の効果を確認した。以下の実施例及び比較例は、上述した実施形態における実装エリア及び通信可能距離に関する効果を確認するためのものである。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
<実施例1>
実施例1では、上述した
図6に示すような回路板を作製した。この実施例1では、基材の外形を10mm×25mmとし、アンテナ回路を4層構造とし、それぞれのアンテナパターンの巻き数を1とした。導電性ペーストとして、バインダ成分を含有しない銀ペーストを用いた。
【0065】
この実施例1の回路板における実装エリアの面積を測定したところ、下の表1に示すように、197mm
2であった。また、この実施例1の回路板の通信距離を確認する試験を行ったところ、回路板とリーダライタ端末との通信可能距離は15mmであった。
【0066】
【表1】
【0067】
<比較例1>
比較例1では、(1)アンテナ回路を積層構造とせずに、基材上に形成された矩形渦巻き状のアンテナパターンでアンテナ回路を構成すると共に、(2)中間絶縁層を設けなかったこと以外は、上述の実施例1と同様の構成を有する回路板を作製した。このアンテナパターンの巻き数は、実施例1における4層のアンテナパターンの巻き数の合計と同一(すなわち、巻き数を4)とした。この比較例1の回路板における実装エリアの面積を測定したところ、69mm
2であった。また、この比較例1の回路板に対して、実施例1と同様の条件で回路板とリーダライタ端末との通信可能距離を測定したところ、回路板とリーダライタ端末との通信可能距離は16mmであった。
【0068】
<比較例2>
比較例2では、(1)アンテナ回路を積層構造とせずに、巻き数が1のアンテナパターンでアンテナ回路を構成すると共に、(2)中間絶縁層を設けなかったこと以外は、上述の実施例1と同様の構成を有する回路板を作製した。この比較例2の回路板における実装エリアの面積を測定したところ、197mm
2であった。また、この比較例2の回路板に対して、実施例1と同様の条件で回路板とリーダライタ端末との通信可能距離を測定したところ、この回路板とリーダライタ端末との間で通信を行うことはできなかった。
【0069】
実施例1と比較例1の結果から、アンテナ回路を積層構造とすることで、同じ巻き数であっても実装エリアを拡大することが確認された。その一方で、アンテナ回路を積層構造としても、非積層構造のアンテナ回路とほぼ同等の通信可能距離を確保し得ることも確認された。
【0070】
また、実施例1と比較例2の結果から、アンテナ回路の巻き数を十分に増やさなければ、所定の大きさのインダクタンスを確保することができず、回路板とリーダライタ端末との通信を確立し得ないことが確認された。