【課題】本開示のいくつかの実施形態は電流コラプスを引き起こす捕獲キャリアの影響を緩和するための一つまたは複数のホール注入構造を含む窒化ガリウム(GaN)ベーストランジスタに関する。
【解決手段】窒化ガリウムトランジスタはゲートとドレインとの間に位置する一つまたは複数のP型ホール注入構造を含む。P型ホール注入構造は捕獲キャリア(例えば、電子)と結合させるためにトランジスタチャネルにホールを注入するように構成され、それによりチャネルの電気伝導性はトランジスタに前に印加された電位の影響を受けにくくなる。
前記連続した金属層が前記基板の前記ドレイン領域にわたって延在し、前記P型層の第一の側面に隣接し、前記P型層の上面の第一の領域にわたって延在する、請求項1に記載のトランジスタ。
前記誘電体層が前記基板の表面にわたって延在し、前記P型層の第二の側面に隣接し、前記P型層の前記上面の第二の領域にわたって延在する、請求項2に記載のトランジスタ。
前記ホール注入領域が第一のホール注入領域であり、第二のホール注入領域が前記基板内に形成され前記第一のホール注入領域と前記ゲート領域との間に位置する、請求項1に記載のトランジスタ。
前記連続した金属層が前記P型層の上面のおよそ半分にわたって形成され、前記誘電体層が前記P型層の前記上面の残りの部分にわたって形成される、請求項1に記載のトランジスタ。
前記金属層が前記ホール注入電極を形成するために前記基板の前記ドレイン領域にわたって延在し、前記P型層の第一の側面に隣接し、前記P型層の前記上面の前記第二の領域にわたって延在する、請求項11に記載のトランジスタ。
前記誘電体層が前記基板の表面にわたって延在し、前記P型層の第二の側面に隣接し、前記P型層の前記上面の前記第一の領域にわたって延在する、請求項13に記載のトランジスタ。
前記フィールドプレートが前記誘電体層の前記第一の領域にわたって延在し、前記P型層の前記第二の側面と同一平面になる前に終端する、請求項14に記載のトランジスタ。
前記ホール注入領域が第一のホール注入領域であり、第二のホール注入領域が前記基板内に形成され前記第一のホール注入領域と前記ゲート領域との間に位置する、請求項11に記載のトランジスタ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のある実施形態はトランジスタにおける「電流コラプス(current collapse)」を緩和するためのチャネルにホールを注入するホール注入構造を有するGaNベースエンハンスメントモード電界効果トランジスタに関する。電流コラプスはデバイスの伝導電流が前に印加された電圧、またこれらの前に印加された電圧がどれほど長く存在したかにも依存し得る、望ましくない「メモリ(memory)」効果である。より具体的には、トランジスタの動作中、電子はエピタキシャル層および/または誘電体層内で捕獲される可能性があり(捕獲キャリアとして知られている)、トランジスタチャネルを通る他の電子の流れを妨害して伝導電流が2DEG層を流れるのをより困難にし、その結果チャネルを通る抵抗が増加する。いくつかの実施形態では追加の一つまたは複数のホール注入構造はチャネルにホールを注入するために使用され、ホールは捕獲電子と結合してそれを中性化する。捕獲キャリアが減少することによってチャネル内の電気抵抗が弱められ、メモリ効果が緩和される。
【0016】
本開示のいくつかの実施形態はドレインコンタクトに隣接して形成されたP型ホール注入構造を有するGaNベーストランジスタに関する。ホール注入電極はP型ホール注入構造上に形成することができ、ホール注入電極はドレインオーミック金属に電気的に結合する。他の実施形態ではP型ホール注入構造はドレインオーミック金属から電気的に絶縁させることができ、ドレインオーミック金属に容量的に結合させることができる。
【0017】
本開示に基づくP型ホール注入構造を有するGaNベーストランジスタの特徴および側面をよりよく理解するために本開示の実施形態に基づく半導体デバイスのいくつかの特別な実施を論じることにより、以下のセクションにおいて本開示についてのさらなる背景が提供される。これらの実施形態は、ガリウムヒ素、インジウムリンおよび他のタイプの半導体材料等の、しかしこれらに限定されない他の半導体デバイスにおいて用いることのできる、例えばただ一つまたは他の実施形態である。
【0018】
図1はGaNベース半導体トランジスタ100の単純化された平面図を示す。
図1に示されるように、トランジスタ100は基板105上に構築される。トランジスタ100はトランジスタへの電気的な接続を形成するために使用されるソース端子120、ゲート端子125およびドレイン端子130を含む不活性領域115により囲まれる活性領域110を有することができる。本明細書においてより詳細に論じるように、活性領域110は活性領域にわたって繰り返される一つまたは複数のトランジスタ「セル(cell)」を有することができる。トランジスタ100は本開示の実施形態に基づくホールインジェクタを有するGaNトランジスタの例示であるが、当業者においては、他の実施形態においてGaNトランジスタ100が本明細書で明らかにされる特定の例とは異なるサイズ、形状および構成を有することができ、また本開示が本明細書に示される例には決して限定されないことを理解されるであろう。
【0019】
図2は
図1のトランジスタ100の活性領域110の一部を形成し得るGaNベーストランジスタのドレイン領域220の拡大された部分的な平面図を示す。
図3は
図2のドレイン領域220の線A−Aにおける部分的な断面図を示しており、トランジスタセル205のソース領域210およびゲート領域215の断面図も示す。以下の説明では
図2および
図3を同時に参照する。
【0020】
いくつかの実施形態では高電圧に耐えるためにソース領域210とドレイン領域220との間にドリフト領域225が配置される。チャネル領域がゲートスタック320の下の2DEG内に形成され、ゲート端子125(
図1を参照)とソース端子120との間に印加される電圧に応じて電流を遮断するかまたは流すように構成される。以下でより詳細に説明されるように、一つまたは複数のホールインジェクタ230がドリフト領域225に隣接して配置され、捕獲電子と結合させるためにチャネルにホールを注入するように構成される。
【0021】
図3に示されるように、いくつかの実施形態では基板105はシリコンカーバイド、サファイア、窒化アルミニウムまたは他の材料を含むことのできる第一の層305を含むことができる。第二の層310は第一の層305上に配置され、窒化ガリウムまたは他の材料を含むことができる。第三の層315は第二の層310上に配置され、窒化アルミニウム、窒化インジウムおよび窒化アルミニウムガリウムや窒化インジウムガリウムのような三族窒化物合金等であるがこれらに限定されない、他の三族窒化物の化合物の積層を含むことができる。一つの実施形態では第三の層315はAl
0.20Ga
0.80Nである。
【0022】
いくつかの実施形態では、層を含む二次元電子ガス(2DEG)が基板105の内部に形成され、第二の層310と第三の層315との間の界面の近傍に位置することができる。いくつかの実施形態では、2DEG層は圧電効果(応力)、バンドギャップの差、および/または分極電荷の組み合わせによって誘導される。例えば、表面において伝導帯の減少がみられることがあり、電子で満たされたポテンシャル井戸を生成するためにフェルミ準位を下回る。いくつかの実施形態では、2DEG誘導層は例えば、厚さ約20ナノメートルのAl
0.25Ga
0.75Nの範囲内のAlGaNを備える。別の実施形態では、2DEG誘導層はAlN、AlGaInN、または別の材料を備えることができる。いくつかの実施形態では2DEG誘導層は高Al含有量の薄い境界層および低Al含有量のより厚い層を備える。いくつかの実施形態では2DEG誘導層はGaNキャップ層を有することができる一方で他の実施形態では2DEG誘導層はGaNキャップ層を有していない。
【0023】
いくつかの実施形態ではゲート構造を形成するために基板105上に一つまたは複数のゲートスタック320が形成される。例えば、ゲートスタック320は、それぞれが窒素およびアルミニウム、ガリウム、インジウムまたは他のもの(例えば、3N層)のような周期表の第三列からの一つまたは複数の元素を含むことのできるいくつかの化合物半導体の層を含むことができる。これらの層はドーピングされていてもされていなくてもよい。これらがドーピングされる場合はN型またはP型ドーパントのどちらを用いてもドーピングすることができる。いくつかの実施形態では、ゲートスタック320は絶縁ゲート、ショットキーゲート、PNゲート、埋込み型ゲート、または他のタイプのゲートとすることができる。
【0024】
いくつかの実施形態では一つまたは複数のホールインジェクタ230が基板105上に形成される。ホールインジェクタ230は基板105上に配置されたP型構造325を用いて形成することができる。いくつかの実施形態ではP型構造325は非限定的な例としてはマグネシウムである、P型ドーパントを用いてドーピングされた窒化ガリウムを使用して形成することができる。本明細書でより詳細に説明されるように、P型構造325はトランジスタ100の性能および/または信頼性を向上させるために半導体デバイスの動作中にホールインジェクタとして振る舞うことができる。
【0025】
オーミック金属層323はソースオーミックパッド330と基板105との間に形成されたソースオーミックコンタクト327、ドレインオーミックパッド335と基板105との間に形成されたドレインオーミックコンタクト333、および必要に応じて他の領域を含む基板105へのオーミックコンタクトを形成するために堆積させパターニングすることができる。いくつかの実施形態ではオーミック金属層323はアルミニウム、チタン、ニッケル、金または他の金属を含むことができる。オーミック金属層323を堆積させパターニングした後、オーミック金属層は、残りのオーミック金属とオーミック接触領域(例えば、ソースおよびドレイン)内の露光することのできる2DEG誘導層との間に抵抗の小さい電気的接続を形成するためにアニールすることができる。
【0026】
追加して連続で堆積された金属層は商業的に利用可能なプロセスを使用してパターニングすることのできるMG層(ゲート金属層)340、M0層345、M1層350、M2層355等を含むことができる。金属層340、345、350および355を互いから、および/または基板105から電気的に絶縁させるために、一つまたは複数の介在する誘電体層を使用することができる。いくつかの実施形態では誘電体層は堆積させパターニングすることのできる窒化ケイ素(例えば、Si3N4、Si2N、またはSN)または酸化ケイ素(例えばSiO2または類似のもの)を含むことができるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、介在する誘電体層はそれぞれ絶縁材料の単一の層のみを備える一方で、他の実施形態では各層は複数の層を備えることができる。絶縁層は例えば、化学機械研磨または他の技術を使用して平坦化することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、MG層340はMGソースフィールドプレート365、ゲート電極370、およびホール注入電極375を形成するために使用することができる。様々な実施形態では、ホール注入電極375はドレインオーミックパッド335に直接に隣接して、かつ電気的に接触して位置することができ、それによりホールインジェクタ230はドレインオーミックパッド335と実質的に同じ電圧を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、M0層345はM0ソースフィールドプレート380およびM0ドレインフィールドプレート385を形成するために使用することができる。様々な実施形態では、M1層350はM1ソースフィールドプレート390およびM1媒介ドレインプレート395を形成するために使用することができる。いくつかの実施形態では、M2層355はソースバス235、ゲートバス240およびドレインバス245を形成するために使用することができる。ソースバス235は各トランジスタセル205のソースオーミックパッド330とソース端子120(
図1を参照)とを電気的に結合させる。ゲートバス240は各トランジスタセル205のゲート電極375とゲート端子125(
図1を参照)とを電気的に結合させる。ドレインバス245は各トランジスタセル205のドレインオーミックパッド335とドレイン端子130(
図1を参照)とを電気的に結合させる。
【0029】
いくつかの実施形態では、一つまたは複数のビア360は一つまたは複数の金属層340、345、350および355を互いに電気的に接続させるために一つまたは複数の介在する絶縁層を通して形成することができる。
【0030】
いくつかの実施形態ではトランジスタ100は2DEGチャネル下部の電気伝導性を制御するためにゲートスタック320の下に印加された電界に反応する。チャネルの電気伝導性はゲート端子125(
図1を参照)とソース端子120との間に印加される電位の関数である。ゲート端子125は物理的なゲートの開閉を制御すると考えることができる。ゲート端子125に印加される電圧はゲートの下に2DEGチャネルを生成するかまたは除去することによって、電子および/またはホールがソース端子120とドレイン端子130との間を流れるのを許可し、またはそれらの経路を遮断する。チャネルの電気伝導性はゲート端子125(
図1を参照)とソース端子120との間に印加される電位の大きさに影響される。
【0031】
いくつかの実施形態では、トランジスタ100の動作中、ソース端子120とドレイン端子130との間を流れる電流に対する抵抗を増加させることで、電子は基板105内部のエピタキシャル層または誘電体層において捕獲され(一般に「捕獲キャリア(trapped carrier)」と呼ばれる)、電子がドリフト領域225を通って流れるのを妨害する。この現象はドリフト領域225内の電気抵抗の増加(例えば、R
DSONの増加)をもたらし、一般に「動的Rdson(dynamic Rdson)」または「電流コラプス(current collapse)」と呼ばれる。動的Rdsonはデバイスの伝導電流がソース端子120とドレイン端子130との間に前に印加された電圧およびこれらの前に印加された電圧がどれほど長く存在したかにも依存し得る、望ましくない「メモリ効果」である。
【0032】
より具体的には、ドリフト領域225の電気抵抗はトランジスタがオフになった後に再びオンになる際に一定期間増加し得る。動的Rdsonの増加を抑制するために、
図1および
図2に示される実施形態では、複数のP型GaNのホールインジェクタ230の島がドレインオーミックパッド335に直接に隣接して配置され、MG層340内に形成されるホール注入電極375を用いてドレインオーミック金属と電気的に結合させる。各ホールインジェクタ230はドレイン領域220近くのドリフト領域225にホールを注入する。これらのホールは電流コラプスを抑制するか、または少なくとも緩和して捕獲電子を中性化するためにそれらと結合する。
【0033】
一つの実施形態では各ホールインジェクタ230の島は0.5から5ミクロン平方の間とすることができる一方、他の実施形態では各島は0.75から2ミクロン平方の間とすることができ、また一つの実施形態では各島は0.9から1.1ミクロン平方の間であるが、当業者においては本発明は四角形の形状または前述の寸法に限定されるものではなく他の形状および/または寸法を有するホールインジェクタを使用することができることを理解されたい。
【0034】
図1に関して前述したように、トランジスタ100は繰り返しセル内に配置することができ、その一例を
図2および
図3に示す。各セルはソース、ゲート、ドレインおよび一つまたは複数のホール注入構造を含むことができる。隣接するセルは共通のドレインを使用することができ、自身のゲート終端およびソース終端を有し得る。同様に、隣接するセルは共通のソースを使用することができ、自身のドレイン終端を有する。いくつかの実施形態ではトランジスタ構造は、各ソースフィンガーとドレインフィンガーとの間に配置されるゲート構造と併せて複数の相互に嵌合するソースフィンガーおよびドレインフィンガーを含む。したがって、
図3に示されるように、ドリフト領域225をドレイン領域220の両側に形成することができる。
【0035】
図4は本開示の別の実施形態に基づくGaNベーストランジスタ400のドレイン領域220の単純化された平面図を示す。トランジスタ400は(同様の数字は同様の要素を指す)
図1から
図3に示されるトランジスタ100と同様に構築されるが、以下でより詳細に説明されるように、トランジスタ400は複数の容量的に結合したホールインジェクタを有する。
図5は(同様の数字は同様の要素を指す)
図3に示される断面と同様のトランジスタの領域に作られた断面を用いた、トランジスタ400を横切る部分的な断面図を示す。以下の説明は
図4および
図5を同時に参照する。
【0036】
図1から
図3に示される実施形態と同様に、トランジスタ400は基板105上に形成された一つまたは複数のホールインジェクタ430を含む。ホールインジェクタ430は基板105上に配置されたP型構造325を用いて形成することができる。いくつかの実施形態ではマグネシウム等のP型ドーパントを用いてドーピングされる窒化アルミニウムガリウムまたは窒化ガリウムの組み合わせを使用してP型構造325を形成することができる。以下でより詳細に説明されるように、P型構造325はトランジスタ400の性能および信頼性を向上させるために半導体デバイスの動作中にホールインジェクタとして振る舞うことができる。
【0037】
図1から
図3のトランジスタ100と比較すると、
図4および
図5のトランジスタ400はホールインジェクタ430を含むが、ホール注入電極375(
図3を参照)を有しておらずホールインジェクタ430がドレインオーミックパッド335から電気的に絶縁されるようにホールインジェクタ430はドレインオーミックパッド335から離隔される。より具体的には、トランジスタ400のホールインジェクタ430はP型構造325のみを含み、ホール注入電極を含まない(例えば、P型構造325の上面に金属が存在しない)。さらに、トランジスタ400のホールインジェクタ430はP型構造325とドレインオーミックパッド335との間に位置する間隙450を含み、間隙はホールインジェクタを電気的に浮遊させる誘電材料で充填される。本明細書で用いられるように、用語「浮遊ホールインジェクタ(floating hole injectors)」はホール注入構造(例えば、P型GaN領域)がソース電極、ゲート電極またはドレイン電極にオーミック結合しないが、代わりに浮遊ホールインジェクタがドリフト領域225にホール注入することを可能にするために容量的な結合または容量的な結合とリーク電流との組み合わせを使用することを意味する。
【0038】
図6は本開示の別の実施形態に基づくGaNベーストランジスタ600のドレイン領域220の単純化された平面図を示す。トランジスタ600は(同様の数字は同様の要素を指す)
図1から
図3に示されるトランジスタ100と同様に構築されるが、以下でより詳細に説明されるように、トランジスタ600は複数のストライプ形状のホールインジェクタ630およびドレインオーミック電極とホール注入電極の両方の役割を果たすドレインオーミック金属を有する。
図7は(同様の数字は同様の要素を指す)
図3に示される断面と同様のトランジスタの領域に設けられた断面を用いた、トランジスタ600を横切る部分的な断面図を示す。以下の説明は
図6および
図7を同時に参照する。
【0039】
図1から
図3に示される実施形態と同様に、トランジスタ600は基板105上に形成された一つまたは複数のホールインジェクタ630を含む。ホールインジェクタ630は基板105上に配置されたP型構造325を用いて形成することができるが、ドレインコンタクト333の両側に位置する四角形の島の代わりに、P型構造はドレインコンタクトにわたり、ドレインコンタクトの両側に形成されるドリフト領域225にまで延在する繰り返しのストライプに配置される。
【0040】
図1から
図3のトランジスタ100と比較すると、
図6および
図7のトランジスタ600はホールインジェクタ630を含むが、
図3に示されるような別々に形成されるホール注入電極375を有していない。より具体的には、ドレインオーミックパッド335はドレインオーミックコンタクト333およびホール注入電極の両方を形成する。これは
図7に示されるトランジスタ600の断面B−Bである
図8においてより明確に示される。
図8に示されるように、繰り返しのP型構造325は基板105上に形成される。ドレインオーミックパッド335はドレインコンタクト333とP型構造コンタクト805の両方に接触する。したがってドレインオーミックパッド335はP型構造325をドレインコンタクト333に電気的に結合させる。
【0041】
図9は本開示の別の実施形態に基づくGaNベーストランジスタ900の部分的な断面図を示す。トランジスタ900は(同様の数字は同様の要素を指す)
図6から
図8に示されるトランジスタ600と同様に構築されるが、以下でより詳細に説明されるように、トランジスタ900はストライプ形状のP型構造325にわたって形成される誘電体層905およびドレインオーミック電極とホール注入電極の両方の役割を果たすドレインオーミックパッド335を有する。
図10は
図9に示されるトランジスタ900を横切る部分的な断面
図C−Cを示す。以下の説明は
図9および
図10を同時に参照する。
【0042】
図6から
図8に示される実施形態と同様に、トランジスタ900は基板105上に形成された一つまたは複数のホールインジェクタ930を含む。ホールインジェクタ930は基板105上に配置されたP型構造325を用いて形成することができる。P型構造325はドレインコンタクト333にわたり、ドレインコンタクトの両側に形成されるドリフト領域225にまで延在する繰り返しのストライプに配置することができる。
【0043】
図6から
図8のトランジスタ600と比較すると、
図9および
図10のトランジスタ900はP型構造325および基板105の一部にわたって形成される誘電体層905を含む。P型構造325への電気的な接触を生成するために、開口部910は誘電体層905内に形成され、ドレインオーミックパッド335は開口部910内部の誘電体層の上面に形成される。いくつかの実施形態では開口部910は基板105の一部が露出しているP型構造325の間の空間にわたって延在することができ、ドレインオーミックパッド335は各P型構造の間にドレインコンタクト333を形成することができる。他の実施形態は誘電体層905内に形成される開口部の異なる構成を有してもよく、そのためドレインオーミックパッド335はホール注入電極およびドレイン電極の両方を形成することができる。ドレインオーミックパッド335がドレインコンタクト333とP型構造325の両方に接触するため、ドレインオーミック金属層はP型構造325をドレインコンタクト333に電気的に結合させる。
【0044】
図11は本開示の別の実施形態に基づくGaNベーストランジスタ1100の部分的な断面図を示す。トランジスタ1100は(同様の数字は同様の要素を指す)
図9および
図10に示されるトランジスタ900と同様に構築されるが、以下でより詳細に説明されるように、トランジスタ1100はドレインコンタクト333の間に間隙を有する二つの別々のP型構造325を有する。
【0045】
図9および
図10に示される実施形態と同様に、トランジスタ1100は基板105上に形成された一つまたは複数のホールインジェクタ1130を含む。ホールインジェクタ1130は基板105上に配置されたP型構造325を用いて形成することができる。P型構造325はドレインコンタクト333の両側に配置された繰り返しの島に配置することができる。トランジスタ1100は各P型構造325の全体を覆う誘電体層1105を含み、ドレインオーミックパッド335から電気的に絶縁される。ドレインオーミックパッド335はドレインコンタクト333を形成する基板105に接触するためにP型構造325の間に延在する。ドレインオーミック金属層とP型構造との間に位置する誘電体層1105を用いて、ドレインオーミックパッド335はまたP型構造325の上面にわたって延在する。したがって、ホールインジェクタ1130はドレインオーミックパッド335から電気的に絶縁されホールインジェクタはP型構造325がドリフト領域225にホールを注入することを可能にするためにドレインオーミックパッド335への容量的な結合を使用する。
【0046】
引き続き
図11を参照すると、いくつかの実施形態ではソースフィールドプレート365、380および/または390のドレイン端における電界は周辺のエリアよりも高くてもよく、結果としてこれらの領域によりドリフト領域225における捕獲キャリアの集中度をより高いものにすることができる。したがって、いくつかの実施形態ではソースフィールドプレート365、380および/または390のドレイン端を用いて揃えられる一つまたは複数の浮遊P型GaN構造1100a...1110cのポジショニングはドリフト領域225内の捕獲キャリアを効率的および/または効果的に中性化させることができる。
【0047】
より具体的には、本明細書ならびに
図13および
図14でさらに詳細に説明されるように、いくつかの実施形態では高電界が存在する場合には浮遊P型GaN構造1100a...1110cはドリフト領域225にホールを注入するように構成される。いくつかの実施形態では浮遊P型GaN構造1100a...1110cは例えばマグネシウムとすることのできるP型ドーパントを用いてドーピングされる窒化ガリウムを使用して形成することができる。
【0048】
図12は本開示の別の実施形態に基づくGaNベーストランジスタ1200の単純化された平面図を示す。トランジスタ1200は(同様の数字は同様の要素を指す)
図11に示されるトランジスタ1100と同様に構築されるが、三つのソースフィールドプレート365、380、390の各々の下に複数の浮遊P型GaN構造を有する代わりに、トランジスタ1200はソースフィールドプレート380のドレイン端の下にのみ位置しそれを用いて揃えられる複数の浮遊P型GaN構造1205を有する。より具体的には、
図12に示される実施形態では、複数の浮遊P型GaN構造1205はドリフト領域225内のM0ソースフィールドプレート380の下にその一部が、M1ソースフィールドプレート390の下にその全体が位置する。他の実施形態では浮遊P型GaN構造1205はドリフト領域225の内部に
図2に示されたのとは異なる位置で配置することができる。いくつかの実施形態では、浮遊P型GaN構造1205は上記でより詳細に説明されたP型GaN構造325(
図11を参照)と同じ役割を実行することができる。いくつかの実施形態では浮遊P型GaN構造1205は例えばマグネシウムとすることのできるP型ドーパントを用いてドーピングされる窒化ガリウムを使用して形成することができる。
【0049】
図13は本開示の別の実施形態に基づくGaNベーストランジスタ1300の単純化された平面図を示す。トランジスタ1300は(同様の数字は同様の要素を指す)
図11に示されるトランジスタ1100と同様に構築されるが、三つのソースフィールドプレート365、380、390の各々の下に複数の浮遊P型GaN構造を有する代わりに、トランジスタ1300はフィールドプレート390のドレイン端の下にのみ位置しそれによってアラインされる複数の浮遊P型GaN構造1305を有する。より具体的には、
図13に示される実施形態では、複数の浮遊P型GaN構造1305はドリフト領域225内のM1ソースフィールドプレート390の下にその一部が位置する。他の実施形態では浮遊P型GaN構造1305はドリフト領域225内部に
図13に示されたのとは異なる位置で配置することができる。いくつかの実施形態では、浮遊P型GaN構造1305は上記でより詳細に説明されたP型GaN構造325(
図11を参照)と同じ役割を実行することができる。いくつかの実施形態では浮遊P型GaN構造1305は例えばマグネシウムとすることのできるP型ドーパントを用いてドーピングされる窒化ガリウムを使用して形成することができる。
【0050】
図14は本開示の別の実施形態に基づくGaNベーストランジスタ1400の単純化された平面図を示す。トランジスタ1400は(同様の数字は同様の要素を指す)
図1から
図3に示されるトランジスタ100と同様に構築されるが、トランジスタ1400はソースフィールドプレート365、380および390に隣接しその下のドリフト領域225の内部のゲート電極370の隣に位置する複数のP型GaN構造1405を有する。
図14に示される実施形態では、P型GaN構造1405はゲート電極370に最も近いMGソースフィールドプレート365の第一の端部に集中しているが、他の実施形態ではそれらはゲート電極370に隣接する任意の位置に配置することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、P型GaN構造1405は容量的な結合またはリークによってゲート電極に近いポテンシャルとみなすことができる。電子の捕獲は誘電体または基板領域に向けてホットエレクトロンを加速する高電界によって引き起こすことができる。P型GaN構造1405はドリフト領域内の高電圧および高電界がゲート領域に到達するのを防ぎ、その領域内で生じる捕獲の量を減らすことができる。このキャリア注入を減らすことで動的Rdson効果を減らし製品の寿命を向上させることができる。トランジスタ1400は
図1から
図3に示されるトランジスタ100と類似しているが、当業者においてはトランジスタ1400はこれまでの図に示されるトランジスタ400、600、900または1100の構造を含む、異なる構造または任意の他の構成を有することができることを理解されたい。
【0052】
図15は本開示の別の実施形態に基づくGaNベーストランジスタ1500の部分的な断面図を示す。トランジスタ1500はドレイン端子にオーミック結合するP型構造を含む(同様の数字は同様の要素を指す)
図11に示されるトランジスタ1100と同様に構築されるが、以下でより詳細に説明されるように、トランジスタ1500はP型構造325の一部のみを覆う誘電体層1510を有し、ドレインオーミックパッド335はP型構造とオーミック接触する。加えて、トランジスタ1500はドレインコンタクト333のソース側に位置する浮遊ホールインジェクタ1545を含む。
【0053】
図11に示される実施形態と同様に、トランジスタ1500は基板105上に形成される一つまたは複数のホールインジェクタ1530を含む。各ホールインジェクタ1530は基板105上に配置されるP型構造325を用いて形成することができる。
図15においてドレイン領域の左側部分のみを示すために対照中心線1535が使用されており、右側部分は右側部分の鏡像である。P型構造325は両側(すなわち、ドレインコンタクト333の左側および右側)に配置される繰り返しの島に配置することができる。
【0054】
トランジスタ1500はドレインオーミックパッド335を用いてオーミック接触領域1505を形成する各P型構造の一部を残して各P型構造325の一部を覆う誘電体層1510を含む。
図15に示される実施形態では誘電体層1510はP型構造325のおよそ半分を覆うが、他の実施形態ではP型構造を半分より多く、または半分より少なく覆うことができる。
【0055】
いくつかの実施形態ではドレインオーミックパッド335は(1)ドレイン電極333を形成するために基板105のドレイン領域220にわたってそれと接触して形成され、(2)ホール注入電極375を形成するためにP型層325の第二の部分にわたってそれと接触して形成され、(3)ホール注入領域にフィールドプレート1515を形成するために誘電体層1510の一部にわたってそれと接触して形成される、連続した金属層として構成することができる。他の実施形態では一つまたは複数の別々の、しかし電気的に結合された金属層を前述の連続した金属層の代わりに使用することができる。
図15に示される実施形態ではフィールドプレート1515は誘電体層1510の少なくとも一部にわたって延在し、いくつかの実施形態ではP型層325のソース側の端部1550と同一平面まで延在するが、他の実施形態ではP型層325のソース側の端部を越えて延在する。一つの実施形態ではフィールドプレート1515はP型層のソース側の端部1550を0.125ミクロンから2ミクロンの間で越えて延在するが、他の実施形態では0.2から0.75ミクロンの間で越えて延在する。
【0056】
いくつかの実施形態では複数の個々のホールインジェクタ1530は一連の連続的なホールインジェクタの島を形成するドレイン領域220の長さに沿って形成される。
図10に示される構造と同様に、ドレインオーミックパッド335はドレインコンタクト333の一部を形成する基板105に接触するために個々のP型構造325の間にも延在し得る。
【0057】
いくつかの実施形態では第二のフィールドプレート385はフィールドプレート1515の上方に位置することができ、第三のフィールドプレート395は第二のフィールドプレートの上方に位置することができる。フィールドプレート1515、385および395の先端は破線の円によって特定される高電界強度領域1540をもたらすことができる。
【0058】
いくつかの実施形態では任意選択的な浮遊ホールインジェクタ1545はP型層325の一部から形成することができる。浮遊ホールインジェクタ1545はドレインオーミックパッド335にオーミック結合しておらず、ドレインオーミックパッドに容量的に結合し得る。浮遊ホールインジェクタ1545はホールインジェクタ1530とゲート領域(
図11を参照)との間に位置し得る。
【0059】
図16は本開示の別の実施形態に基づくGaNベーストランジスタ1600の平面図を示す。トランジスタ1600は
図1から
図3に示されるトランジスタ100と同様に構築されるが、以下でより詳細に説明されるように、トランジスタ1600はP型GaNの島を使用して形成されるゲート構造を含む。GaNベーストランジスタ1600は
図1の基板105と同様であり得る基板1605上に製造され、間にゲート電極1615および活性2DEG領域1625を有するソースオーミック金属パッド1610およびドレインオーミック金属パッド1620を含むことができる。ゲート電極1615の下で、間に間隙を有する一つまたは複数のP型GaNの島1630a、1630bを基板1605上に配置することができる。様々な実施形態では単一のゲート電極1615を一つまたは複数のP型GaNの島1630a、1630bにわたって形成することができ、ゲート電極とP型GaNの島の間の接触を形成することができる。
【0060】
ソースオーミック金属パッド1610に関してゲート電極1615にゼロ電圧が印加されると、電流は領域1635内のP型GaNの島1630a、1630bの間の2DEG層を通る。正のゲート電圧が印加されると、P型GaNの島1630a、1630bの下に2DEGが形成され、ゲートの下の活性2DEG領域の幅全体にわたって電流が流れることができる。ソースオーミック金属パッド1610に関してゲート電極1615に負のバイアスがかかる場合、P型GaNの島1630a、1630bの間の間隙はP型GaNの島の周りに逆バイアス接合を形成する。この逆バイアス状態は各P型GaNの島1630a、1630bの周りに空乏領域を形成し、電子が領域1635を流れるのを制限する。ソースオーミック金属パッド1610と比較してゲート電極1615に負のバイアスが強くかかるほど、トランジスタ1600が全ての電流をピンチオフするまで領域1635の抵抗はますます大きくなる。したがって、各P型GaNの島1630a、1630bはトランジスタチャネルを通る電流を制御するゲート構造を形成する。これにより構造でドレイン1620に印加される電圧を遮断することが可能になり、ゲートのソース側の電界を制限する。これは
図12に示されるP型GaN構造1205によって達成されるのと同様の電界制限効果である。
【0061】
前述の詳細な説明において、実施形態ごとに異なり得る多数の特有の詳細に関して本発明の実施形態が説明された。したがって、詳細な説明および図面は限定する意味よりもむしろ例示する意味にみなされるべきである。本発明の範囲の唯一かつ排他的な指示および出願人が本発明の範囲と意図するものは、その後のあらゆる修正を含め、そのような主張が生じる特有の形態での、本出願から生じる一連の主張の文字通りかつ同等の範囲である。