【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成29年12月20日に、株式会社アサヒが、下記アドレスのウェブサイトに掲載した。https://www.youtube.com/watch?v=−−3aWeDfYlI https://www.youtube.com/watch?v=SheLxywlc88
【解決手段】 通信波が通り抜けにくい遮蔽物越しの通信を行う遮蔽物越し通信システム及び遮蔽物越し無線通信具であって、遮蔽物の一面に通信波の方向に揃えるリフレクターを有する第1のアンテナが配置され、遮蔽物の他面の、第1のアンテナの略対向する位置に第2のアンテナが配置されて、第1のアンテナからの通信波はリフレクターで方向を揃えられて遮蔽物に向かって送信され、遮蔽物を通過した通信波は第2のアンテナで受信され、第2のアンテナから送信され遮蔽物を通過した通信波は第1のアンテナのリフレクターで集められ受信されるように通信されるので、簡単な構成で、より強力に通信波が遮蔽物を通り抜け通信することができる遮蔽物越し通信システム及び遮蔽物越し無線通信具が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、水中にある無線装置と水の外にある通信装置との通信では、有線を用いて、一方のアンテナ部を水面上に出す必要があった。例えば水族館では、水槽はアクリルガラスで仕切られており、水槽内の水中カメラの撮影者等と水槽外の観客等はお互い姿はアクリルガラスを通して良く見えるのに、直接は無線通信することはできないという不都合があった。
【0012】
また、特許文献2に記載の技術では、他の無線信号に妨害されず良好な通信環境を確保はできるが、水のような通信波が通りにくい遮蔽物の影響への対応については、無線通信用補助具により直接結ぶことが必要であるいう不都合があった。
【0013】
本発明の目的は、簡単な構成で、より強力に通信波が遮蔽物を通り抜け通信することを可能とする遮蔽物越し無線通信システム及び遮蔽物越し無線通信具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。
すなわち、本出願人が先に提案した特許文献1に示されたような水中無線LAN通信システム及び水中無線LAN通信ケーブルを基本にし、例えばスクーバダイビングのトレーニング用水槽において実際に潜水する等して実験し、更に鋭意研究を重ねた結果、以下の構成を開発するに至ったものである。
【0015】
本発明は、通信波が通り抜けにくい遮蔽物越しの通信を行う遮蔽物越し通信システムに関する。
そして、遮蔽物の一面に、通信波の方向を揃える第1のリフレクターを有する第1のアンテナが配置され、遮蔽物の他面の、第1のアンテナの略対向する位置に第2のアンテナが配置されて、第1のアンテナからの通信波は、第1のリフレクターで方向を揃えられて遮蔽物に向かって送信され、遮蔽物を通過した通信波は第2のアンテナで受信され、第2のアンテナから送信され遮蔽物を通過した通信波は、第1のアンテナの第1のリフレクターで集められて受信され、第1のアンテナと第2のアンテナとの間で通信が行われるように構成されていることを特徴とする。
【0016】
また、第1のリフレクターは、円弧面状の略放物面を有していることを特徴とする。
【0017】
また、遮蔽物は、所定の厚さを有し面状に構成されていることを特徴とする。
【0018】
また、第2のアンテナには、通信波の方向を揃える第2のリフレクターを有していて、第2のアンテナからの通信波は、第2のリフレクターで方向を揃えられて遮蔽物に向かって送信され、第1のアンテナから送信された通信波は、第2のアンテナの第2のリフレクターで集められて受信されるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
また、第1のアンテナは第1の通信線によって第3のアンテナと接続され、第3のアンテナは第1の通信装置と通信可能に配置されており、第2のアンテナは、第2の通信装置に備えられたアンテナであって、第1の通信装置と第2の通信装置は、第3のアンテナ、第1の通信線、第1のアンテナ及び第2のアンテナを介して通信されるように構成されていることを特徴とする
【0020】
また、第1のアンテナは第1の通信線によって第3のアンテナと接続され、第3のアンテナは第1の通信装置と通信可能に配置されており、第2のアンテナは第2の通信線によって第4のアンテナと接続され、第4のアンテナは第2の通信装置と通信可能に配置されており、第1の通信装置と第2の通信装置は、第3のアンテナ、第1の通信線、第1のアンテナ、第2のアンテナ、第2の通信線及び第2のアンテナを介して通信されるように構成されていることを特徴とする。
【0021】
また、遮蔽物は、水族館の水槽に使用されるアクリルガラスであって、第1のアンテナは、水槽内にあって、アクリルガラスの一面に密着又は密接して配置され、第2のアンテナは、水槽外にあって、アクリルガラスの、第1のアンテナの略対向する位置に配置され、第1のアンテナと第2のアンテナとで通信されるよう構成されていることを特徴とする。
【0022】
また、遮蔽物は、水族館の水槽に使用されるアクリルガラスであって、第1のアンテナは、水槽内にあって、アクリルガラスの一面に密着又は密接して配置され、第2のアンテナは、水槽外にあって、アクリルガラスの、第1のアンテナの略対向する位置に配置され、第1の通信装置は水中カメラであって、第2の通信装置はスマートフォンであることを特徴とする。
【0023】
また、遮蔽物は、水族館の水槽に使用されるアクリルガラスであって、第1のアンテナは、水槽内にあって、アクリルガラスの一面に密着又は密接して配置され、第2のアンテナは、水槽外にあって、アクリルガラスの、第1のアンテナの略対向する位置に配置され、第1の通信装置は水中カメラであって、第2の通信装置は無線ルーターであることを特徴とする。
【0024】
また、遮蔽物は、建築物の壁又は床であって、第1のアンテナは、壁又は床の一面の所定箇所に配置され、第2のアンテナは、壁又は床の他面の第1のアンテナの略対向する位置に配置されて、第1のアンテナと第2のアンテナとで、壁又は床越しに通信が行われるように構成されていることを特徴とする。
【0025】
また、通信波が通り抜けにくい遮蔽物越しの通信を行う遮蔽物越し通信システムに使用される遮蔽物越し通信具であって、第5のアンテナと第3の通信線と第6のアンテナとを備え、第5のアンテナは第3通信線の一端に接続され、第3通信線の他端には第6のアンテナが接続されるとともに、第5のアンテナは通信波の方向を揃える第3のリフレクターを有していることを特徴とする。
【0026】
また、第3のリフレクターは、円弧面状の略放物面を有していることを特徴とする。
【0027】
また、第6のアンテナは通信波の方向を揃える第4のリフレクターを有していることを特徴とする。
【0028】
また、通信波が通り抜けにくい遮蔽物越しの通信を行う遮蔽物越し通信システムに使用される遮蔽物越し通信具であって、第7のアンテナと第4の通信線とコネクターとを備え、第7のアンテナは第4通信線の一端に接続され、第4通信線の他端にはコネクターが接続されるとともに、第7のアンテナは通信波の方向を揃える第4のリフレクターを有していることを特徴とする。
【0029】
そして、第4のリフレクターは、円弧面状の略放物面を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、上述の特徴を有することから、下記に示すことが可能となる。
【0031】
通信波が通り抜けにくい遮蔽物越しの通信を行う遮蔽物越し通信システムであって、遮蔽物の一面に、通信波の方向を揃える第1のリフレクターを有する第1のアンテナが配置され、遮蔽物の他面の、第1のアンテナの略対向する位置に第2のアンテナが配置されて、第1のアンテナからの通信波は、第1のリフレクターで方向を揃えられて遮蔽物に向かって送信され、遮蔽物を通過した通信波は第2のアンテナで受信され、第2のアンテナから送信され遮蔽物を通過した通信波は、第1のアンテナの第1のリフレクターで集められて受信され、第1のアンテナと第2のアンテナとの間で通信が行われるように構成されているので、簡単な構成で、より強力に通信波が遮蔽物を通り抜け通信することが可能となる。
【0032】
また、第1のリフレクターは、円弧面状の略放物面を有しているので、通信波を一方向に揃えるリフレクターをコンパクトに形成することが可能となる。
【0033】
また、遮蔽物は、所定の厚さを有し面状に構成されているので、所定の厚さを有し面状に構成されているような遮蔽物について、遮蔽物越し通信が可能となる。
【0034】
また、第2のアンテナには、通信波の方向を揃える第2のリフレクターを有していて、第2のアンテナからの通信波は、第2のリフレクターで方向を揃えられて遮蔽物に向かって送信され、第1のアンテナから送信された通信波は、第2のアンテナの第2のリフレクターで集められて受信されるように構成されているので、第2のアンテナから送信される通信波をより強力に遮蔽物を通り抜けさせて、また第1のアンテナから送信された通信波を集めることが可能となる。
【0035】
また、第1のアンテナは第1の通信線によって第3のアンテナと接続され、第3のアンテナは第1の通信装置と通信可能に配置されており、第2のアンテナは、第2の通信装置に備えられたアンテナであって、第1の通信装置と第2の通信装置は、第3のアンテナ、第1の通信線、第1のアンテナ及び第2のアンテナを介して通信されるように構成されているので、第1の通信装置と第2の通信装置とは遮蔽物越しの通信を行うことができる。
【0036】
また、第1のアンテナは第1の通信線によって第3のアンテナと接続され、第3のアンテナは第1の通信装置と通信可能に配置されており、第2のアンテナは第2の通信線によって第4のアンテナと接続され、第4のアンテナは第2の通信装置と通信可能に配置されており、第1の通信装置と第2の通信装置は、第3のアンテナ、第1の通信線、第1のアンテナ、第2のアンテナ、第2の通信線及び第2のアンテナを介して通信されるように構成されているので、第1の通信装置と第2の通信装置とは遮蔽物越しの通信を行うことができる。
【0037】
また、遮蔽物は、水族館の水槽に使用されるアクリルガラスであって、第1のアンテナは、水槽内にあって、アクリルガラスの一面に密着又は密接して配置され、第2のアンテナは、水槽外にあって、アクリルガラスの、第1のアンテナの略対向する位置に配置され、第1のアンテナと第2のアンテナとで通信されるよう構成されているので、水族館のアクリルガラス越しの通信を行うことができる。
【0038】
また、遮蔽物は、水族館の水槽に使用されるアクリルガラスであって、第1のアンテナは、水槽内にあって、アクリルガラスの一面に密着又は密接して配置され、第2のアンテナは、水槽外にあって、アクリルガラスの、第1のアンテナの略対向する位置に配置され、第1の通信装置は水中カメラであって、第2の通信装置はスマートフォンであるので、水槽内の水中カメラと水槽外のスマートフォンとがアクリルガラス越しに通信を行うことができる。
【0039】
また、遮蔽物は、水族館の水槽に使用されるアクリルガラスであって、第1のアンテナは、水槽内にあって、アクリルガラスの一面に密着又は密接して配置され、第2のアンテナは、水槽外にあって、アクリルガラスの、第1のアンテナの略対向する位置に配置され、第1の通信装置は水中カメラであって、第2の通信装置は無線ルーターであるので、水槽内の水中カメラと水槽外の無線ルーターとがアクリルガラス越しの通信を行うことができる。
【0040】
また、遮蔽物は、建築物の壁又は床であって、第1のアンテナは、壁又は床の一面の所定箇所に配置され、第2のアンテナは、壁又は床の他面の第1のアンテナの略対向する位置に配置されて、第1のアンテナと第2のアンテナとで、壁又は床越しに通信が行われるように構成されているので、壁又は床越しに通信することが可能となる。
【0041】
また、通信波が通り抜けにくい遮蔽物越しの通信を行う遮蔽物越し通信システムに使用される遮蔽物越し通信具であって、第5のアンテナと第3の通信線と第6のアンテナとを備え、第5のアンテナは第3通信線の一端に接続され、第3通信線の他端には第6のアンテナが接続されるとともに、第5のアンテナは通信波の方向を揃える第3のリフレクターを有しているので、簡単な構成の遮蔽物越し通信具を得ることができる。
【0042】
また、第3のリフレクターは、円弧面状の略放物面を有しているので、通信波を一方向に揃えるリフレクターをコンパクトに形成することが可能となる。
【0043】
また、第6のアンテナは通信波の方向を揃える第4のリフレクターを有しているので、より強力に通信波を送受信することができる。
【0044】
また、通信波が通り抜けにくい遮蔽物越しの通信を行う遮蔽物越し通信システムに使用される遮蔽物越し通信具であって、第7のアンテナと第4の通信線とコネクターとを備え、第7のアンテナは第4通信線の一端に接続され、第4通信線の他端にはコネクターが接続されるとともに、第7のアンテナは通信波の方向を揃える第4のリフレクターを有しているので、コネクターを用いて、例えば無線ルーターに遮蔽物越し通信具を直接接続することが可能となる。
【0045】
そして、第4のリフレクターは、円弧面状の略放物面を有しているので、通信波を一方向に揃えるリフレクターをコンパクトに形成することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0048】
(第1の実施形態)
図1乃至
図7を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。
本実施形態では、遮蔽物越し通信システム1(遮蔽物越し通信システム)は、防水撮像端末2(第1の通信装置)、第1の携帯端末3(第2の通信装置)と通信用ケーブル4(遮蔽物越し通信具)とから構成される。
【0049】
ここで、防水撮像端末2と第1の携帯端末3とは、いずれもWi―Fi(登録商標)認証を受けた無線LAN装置であり、互いに連携操作がされる。防水撮像端末2と第1の携帯端末3とを無線LAN通信接続することにより、通常の空気中における使用においてはコードレスで、第1の携帯端末3による防水撮像端末2の操作が可能となる。すなわち、防水撮像端末2の撮影前の画角や、撮影中の撮像映像又は撮影後の再生映像等について、第1の携帯端末3の画面上で確認することが可能となる。また、防水撮像端末2の撮像、撮像停止、再生等について、第1の携帯端末3により指示して操作することが可能となる。
【0050】
図1は、水族館のアクリルガラス窓Aを有する水槽において、防水撮像端末2と第1の携帯端末3とが、通信用ケーブル4を介してアクリルガラス窓A越しに通信を行っている様子を示す斜視図である。すなわち、水面S下に位置する防水撮像端末2の撮っている魚F等の画像を確認しながら、水槽外の第1の携帯端末3により、アクリルガラス窓A越しに操作が行われている様子を示している。
図2は、遮蔽物越し通信システム1の主要構成の回路を示すブロック図である。
図3は通信用ケーブル4の構成を示す斜視図であり、
図4乃至
図6は通信用ケーブル4の詳細を示す図である。
図7は、遮蔽物越し通信システム1を使用者U1、U2が使用している一例を示す模式図である。
【0051】
遮蔽物越し通信システム1の各部の詳細について、まず、防水撮像端末2について説明する。
図1に示すように、防水撮像端末2は、撮像端末用防水ケース2aに収納された図示されないデジタルカメラであり、撮像端末用防水ケース2aにより水深30m〜50mの水中でも使用可能とするものである。防水撮像端末2は、動画又は/及び静止画を撮像して記録し、再生をする機能を有しており、撮像端末用防水ケース2aの外部に設けられた操作部2b、2bを介して、操作可能に構成される。防水撮像端末2は、略六面体の形状を有し、前面には撮像レンズ2c、背面には液晶モニター2dがそれぞれ水密の窓で保護され配置されている。なお、撮像端末用防水ケース2aの材料には、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂やポリカーボネート樹脂、ガラス繊維入りのナイロン樹脂等の丈夫で剛性の高い樹脂が用いられる。
【0052】
防水撮像端末2は、図示されない無線LAN通信用の撮像端末アンテナ部2eを、撮像端末用防水ケース2aの内部に収容された図示されないデジタルカメラに備えている。撮像端末アンテナ部2eは、ここでは背面の液晶モニター2dの下部に設けられている。すなわち、ユーザーUが防水撮像端末2を持ち操作しているときに、撮像端末アンテナ部2eを手で覆わないような位置に、撮像端末アンテナ部2eは配設されている。持った手の指等により撮像端末アンテナ部2eが被われ、手によって無線LAN信号が吸収される可能性を低くするためである。
【0053】
図2に示すように、防水撮像端末2は、他に、撮像素子2f、映像信号処理回路2g、防水マイク2h、音声信号処理回路2i、制御部2j、メモリ2kと映像表示信号処理回路2m、無線通信部2nとを有している。
【0054】
図2に示すように、撮像レンズ2cで撮像された映像は、撮像素子2fと映像信号処理回路2gにより信号処理され、制御部2jに入力される。また、防水マイク2hで収音された音声は、音声信号処理回路2iにより信号処理され、制御部2jに入力される。操作部2bの操作内容は、制御部2jに入力される。映像や音声等のデジタル信号は、制御部2jに接続されたメモリ2kにより記録され、また再生される。撮像レンズ2cで撮像された映像や映像が再生されたデジタル信号は、映像表示信号処理回路2mにより信号処理され液晶モニター2dに表示される。無線通信部2nは、デジタル信号を無線LAN信号に変換し、又は無線LAN信号をデジタル信号に変換する。制御部2jは、無線通信部2nを介して、撮像端末アンテナ部2eにより無線LAN通信を行う。
【0055】
次に、第1の携帯端末3について説明する。
図1に示すように、本実施形態では、遮蔽物越し通信システム1を構成する第1の携帯端末3はスマートフォンであり、略矩形で扁平な形状のケース3aを有している。前面には被写体撮影用の図示されない撮像レンズ3bが配設される。(なお、水中無線LAN通信システム1としては、この撮像レンズ3bの使用はされない。)背面には、タッチパネル付の表示部3cが配設される。このタッチパネルと、背面及び図示されない側面等に設けられた操作ボタンにより、操作部3dが形成される。
【0056】
図2に示すように、第1の携帯端末3は無線LAN通信用の携帯端末アンテナ部3eをケース3aの内部に備える。第1の携帯端末3のケース3aの前面部分は、一部を除き薄板状のアルミニウム等の金属で構成されているが、携帯端末アンテナ部3e近傍を覆っている部分は、金属ではなく、ガラスや樹脂等の非金属の材質からなる。金属製のケース3aは、無線LAN信号を遮るからである。携帯端末アンテナ部3e近傍を覆っている部分は非金属の材質から構成されるので、無線LAN信号は、ケース3aの前面部分に遮られることなく、通過する。
【0057】
図2に示すように、第1の携帯端末3は、他に、スピーカ3f、映像表示信号処理回路3g、音声信号処理回路3h、制御部3j、メモリ3kと無線通信部3nとを有している。なお、記載は省略しているが、第1の携帯端末3はスマートフォンであるので、いわゆるスマートフォンとしての一般的な機能等のための回路を有しているということは勿論である。
【0058】
図2に示すように、制御部3jは、無線通信部3nを介して、撮像端末アンテナ部3eにより無線LAN通信を行う。無線通信部3nは無線LAN信号をデジタル信号に変換し、又はデジタル信号を無線LAN信号に変換する。操作部3dの操作により、受信された映像や音声等のデジタル信号は、制御部3jに接続されたメモリ3kにより記録され、又は再生される。また、受信された映像や音声等のデジタル信号は、映像信号処理回路3gを介して表示部3cに表示され、音声信号処理回路3hを介してスピーカ3fにより音声として出力される。
【0059】
図2に示すように、防水撮像端末2の撮像開始、撮像停止、再生等の指示について、第1の携帯端末3の操作部3dの操作が行われると、操作部3dの操作内容は、制御部3jに入力される。制御部3jは、無線通信部3nを介して、撮像端末アンテナ部3eにより無線LAN通信を行い、指示内容を伝送する。
【0060】
また次に、通信用ケーブル4について説明する。
図1に示すように、通信用ケーブル4は、ケーブル部4a(通信線)と、ケーブル部4aの両端にそれぞれ接続された第1の端末用アンテナ部4b(第3のアンテナ)と窓越通信用アンテナ部4c(第1のアンテナ)とを有する。第1の端末用アンテナ部4bは防水撮像端末2に接合され、窓越通信用アンテナ部4cはアクリルガラス窓Aの一面の所定箇所に接合される。本実施形態では、第1の端末用アンテナ部4bと窓越通信用アンテナ部4cとは、略矩形の形状をなし、それぞれ樹脂等の非電導体の中空で水密なアンテナケース4d、4dに収納され、同一の形状及び構成を有している。
【0061】
図2に示すように、第1の端末用アンテナ部4bと窓越通信用アンテナ部4cのアンテナケース4d、4dの内部には、無線LAN信号を送受信可能な第1のアンテナ本体4e、4eが配設されている。また、詳細は後述するが、アンテナケース4d、4dの内面にはリフレクター4f、4fが設けられ、第1のアンテナ本体4e、4eからの通信波を一方向に方向を揃えて送信し、また送られてくる通信波を第1のアンテナ本体4e、4eに集める機能を有している。
【0062】
図1及び
図2に示すように、第1の端末用アンテナ部4bは防水撮像端末2に、窓越通信用アンテナ部4cはクリルガラス窓Aに水密に密着している。すなわち、
図3示すように、第1の端末用アンテナ部4bと窓越通信用アンテナ部4cの裏面の、防水撮像端末2、第1の携帯端末3との接合される面には、接合部として粘着部4g、4gが設けられている。本実施形態では、粘着部4g、4gは、再剥離可能な粘着シートから構成される。粘着シートは再剥離可能なシートであるので、必要なときだけアンテナ部4bを無線LAN装置に接合させ、不要なときは剥離させることができる。
【0063】
ここで、使用される粘着シートは、片面が再剥離可能な粘着面、他面が強粘着のものであり、強粘着面を第1の端末用アンテナ部4bと窓越通信用アンテナ部4cの裏面に貼り付けて構成される。粘着部4g、4gに粘着シート等のシート状のものを用いることにより、第1の端末用アンテナ部4bと窓越通信用アンテナ部4cを全体として薄く構成することが可能となる。
【0064】
このような粘着部4g、4gを持つ再剥離可能な粘着シートとしては、例えば、TGシート(商品名)やウレシート(商品名)等がある。TGシート(商品名)では、再剥離可能な粘着面に特殊なエラストマが用いられる。そのため、シートに付着したごみ、埃等は水洗いすれば除去が可能で、繰り返し使用できて、貼り付けた無線LAN装置に移行が起こらず、痛めることがない。また、ウレシート(商品名)の場合も、水で拭けば再剥離可能な粘着面の粘着力が復活する。粘着シートの基材としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等の樹脂フィルムが用いられるが、発泡フォーム材のシートを用いてもよい。
なお、粘着部4g、4gについて、再剥離可能な粘着シートではなく、通常の両面粘着シート等を用いても良い。
【0065】
図1及び
図2に示すように、窓越通信用アンテナ部4cは、窓越通信用アンテナ用保持具4hによって、クリルガラス窓Aから簡単に外れないように保持されている。窓越通信用アンテナ用保持具4hは樹脂シートからなり、両端部に再剥離可能な窓越通信用アンテナ用保持具用粘着シート4iを有し、クリルガラス窓Aに窓越通信用アンテナ用保持具4hを固定する。窓越通信用アンテナ用保持具4hと窓越通信用アンテナ部4cとは、図示されない粘着シートで固定されている。
また、第1の端末用アンテナ部4bに付いても、例えば面ファスナー付きのベルトを用いて、防水撮像端末2により強固に固定するようにしてもよい。
【0066】
図4乃至
図6に示すように、第1のアンテナ本体4eはアンテナケース4dの中空の位置に設けられている。
図4に示すように、アンテナケース4dは、凹面を有するリフレクターケース4jと、凹部を閉じる蓋状ケース4kを有している。リフレクターケース4jの凹部内面は、側面から見たときに略放物線となるような、円弧面状の略放物面の形に形成され、薄い金属板、例えばアルミ箔からなるリフレクター4f(第1のリフレクター)が貼付される。
なお、
図3に示すように、第1の端末用アンテナ部4bのリフレクターケース4jの外面には把持部状の突起が形成されているが、これはアンテナ部の取り外し用の突起である。
【0067】
図5に示すように、第1のアンテナ本体4eは略Tの字状に形成され、左右2本のアンテナ棒を有し、2本のアンテナ棒の中央近傍でケーブル部4aの芯線とシールド用導体である網組み線がそれぞれ半田付けされて構成される。
図4に示すように、ケーブル部4aはオーリング4lとブッシュ4mにより、アンテナケース4dと水密に固定される。また、リフレクターケース4jと蓋状ケース4kは、額縁状の形状をなすケース固定テープnにより水密に固定される。蓋状ケース4kの外面には、粘着部4gが貼付される。
【0068】
図6に示すように、リフレクター4fの内面は側面から見たときに、略放物線を描くような円弧状の略放物面に形成され、第1のアンテナ本体4eは略放物線の略重心の位置に位置している。このような構成となっているため、第1のアンテナ本体4eからの通信波はリフレクター4fで反射されて、前方に方向を揃えて送信されるし、第1のアンテナ本体4eへの通信波はリフレクター4fで反射されて、第1のアンテナ本体4eで集められる。なお、第1のアンテナ本体4eをアンテナケース4d内でしっかりと固定するため、アンテナケース4d内にアンテナ保持部を設け、第1のアンテナ本体4eを保持し固定するように構成してもよい。
【0069】
図5及び
図6に示すように、窓越通信用アンテナ部4cは、円弧面状の略放物面に形成されたリフレクター4fの略重心の位置に、略直線状に形成された第1のアンテナ本体4eを有している。このようにアンテナ部をカマボコ形に形成したため、コンパクトな簡単な構成で、より強力に通信波の方向を揃えることを可能とした。
図6に示すように、通信波はリフレクター4fにより、アクリルガラス窓Aの表面に対して直交する方向に送信される。
【0070】
ここで、通信波の方向を揃えるため、いわゆる回転放物面を有するパラボラ型アンテナを用いてもよい。しかしながら、回転放物面を有するパラボラ型アンテナの場合には、アンテナを構成するために、大きな面積が必要となる。また、パラボラ型アンテナの前方に突出した受信部等がある場合には、アクリルガラス窓Aに受信部等がぶつからないようにするため、かなり大がかりなものとなってしまう。
【0071】
図6に示すように、アクリルガラス窓Aは、所定の厚さを有し面状に構成されている。そして、アクリルガラス窓Aの厚さは、水深にもよるが通常厚く構成されており、通信波が通りにくく、通り抜けさせるには増幅させたり、出力を上げたりして本来は強い通信波が必要となる。
【0072】
本実施形態では、アクリルガラス窓Aの内面に窓越通信用アンテナ部4cを配置させ、リフレクター4fにより通信波を束ねて方向を揃えて、内面と直交する方向に通信波を送信し、また、通信波をリフレクター4fで集める構成とした。そのため、強力に通信波がアクリルガラス窓Aを通り抜けし、通信することを可能とした。また、アクリルガラス窓Aの外面の、撮像端末アンテナ部2eと対向する位置に配置された第1の携帯端末3と、撮像端末用操作部2bとのアクリルガラス窓A越しの通信を、簡単に可能とすることができた。
【0073】
ここで、防水撮像端末2と第1の携帯端末3との通信について、
図1及び
図2を用いて、説明する。
図1及び
図2に示すように、第1の端末用アンテナ部4bは防水撮像端末2のケース2aに水密に接合しているので、撮像端末アンテナ部2eから発信された通信波は、水の影響を受けることなく、第1の端末用アンテナ部4bで受信される。ケーブル部4aは無線LAN信号をそのままの形で伝達できるので、第1の端末用アンテナ部4bで受信された通信波は、そのまま窓越通信用アンテナ部4cに伝達される。窓越通信用アンテナ部4cから送信された無線LAN信号は、アクリルガラス窓A越しに携帯端末アンテナ部3eにより受信される。
【0074】
なお、以上の説明では、防水撮像端末2から通信用ケーブル4を介して第1の携帯端末3に、無線LAN信号を送付する場合について説明したが、その逆の場合も同様である。すなわち、第1の携帯端末3から通信用ケーブル4を介して防水撮像端末2に、無線LAN信号を送付する。このようにして、防水撮像端末2と第1の携帯端末3とは、防水撮像端末2が水中にあり、通信波を通しにくいアクリルガラス窓Aがある場合であっても、アクリルガラス窓A越しに互いに通信することが可能となる。
【0075】
図7は、本実施形態の遮蔽物越し通信システム1の、水族館の水槽における一使用例を示したものである。水槽はアクリルガラス窓Aによって仕切られ、撮影者であるユーザーU1が防水撮像端末2により撮影している魚F等の映像を、アクリルガラス窓A越しに観客であるユーザーU2が、第1の携帯端末3で直接通信波を受けて、見たりして楽しんでいる様子である。
【0076】
図7では、防水撮像端末2はユーザーU1が操作し、撮影していたが、防水撮像端末2に水中パンティルターを取り付けて、水槽内に三脚等で固定するように構成してもよい。ユーザーU2は、第1の携帯端末3を用いて水中パンティルターや防水撮像端末2を操作可能となる。例えば、防水撮像端末2を自分の方に向け、水槽中から見たユーザーU2の姿等を、その前を泳いでいる魚F等と共に、防水撮像端末2により撮影することができる。
【0077】
また、例えばスクーバダイビングのトレーニング用水槽においては水深5mの深さのものがあるが、従来の技術では、防水撮像端末2により水深5mで撮影されている映像を、水槽外で見るには、少なくとも水面までの5mの長さの通信用ケーブル4が必要であった。本実施形態の遮蔽物越し通信システム1を用いれば、水槽の途中に設けられたアクリルガラス窓A越しに通信が可能なので、もっと短い通信用ケーブル4での通信が可能となる。
【0078】
また、水槽の底部にある水槽の弁の検査するようなとき、水槽内でユーザーU1により撮影されている映像を、水槽外の弁の専門家が映像を見ながらアクリルガラス窓A越しに指示を与え、更に弁の詳細を撮影させて、その映像を確認することも可能となる。
また、例えば無線LAN通信できる水中通話装置を使用して、アクリルガラス窓A越しに互いに通話可能とすれば、水槽内で練習している者をインストラクターが水槽外から指示を出すこと等も可能となる。
【0079】
ここで、本実施形態の防水撮像端末2として、撮像端末用防水ケース2aに収納されたデジタルカメラを用いて説明したが、これに限定されることはない。例えば、いわゆるスポーツカメラ等と呼ばれる防水性能を持つ防水型デジタルカメラや、防水型の携帯端末、防水ケースに入った携帯端末等も防水撮像端末2として適用可能である。
【0080】
またここで、本実施形態のアンテナ部のアンテナ構造は、窓越通信用だけでなく、第1の端末用アンテナ部4bとしても有用であり、防水撮像端末2の撮像端末アンテナ部2eと感度良く通信することを可能としている。また、通信波を束ねて方向を揃え、又は通信波を集めるアンテナとして、前述したパラボラ型アンテナ等と比べ、簡単な構成で、薄くコンパクトに形成することを可能とした。
また、本実施形態のリフレクター4fは、アンテナケース4dの内面側に設けたが、これに限定されず、例えば、アンテナケース4dの外面形状を円弧面状の略放物面に形成して、外面側にアルミ箔等を貼ったりして、リフレクター4fを設けてもよい。
【0081】
すなわち、本実施形態のアンテナ部のアンテナ構造は、以下のように表現することができる。
通信波を束ねて方向を揃えて発信し、又は/及び、通信波を集めて受信するリフレクターを有するアンテナであって、リフレクターは円弧面状の略放物面の形に形成され、リフレクターの略放物面の略重心の位置に略直線状に形成されたアンテナ本体が配置されている構成を有するアンテナ。
なお、アンテナ本体の構成については、本実施形態の構成に限定されず、後述する実施形態の構成や、または様々な構成にしてもよいことは勿論である。
【0082】
またここで、本実施形態でアクリルガラス窓Aと呼んだのは、水族館等の水槽を仕切る透明壁の代表例として記載したものであり、例えば、ガラス等でできた透明壁についても、アクリルガラス窓Aに含まれるものとする。
【0083】
(第2の実施形態)
図8を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、前述した第1の実施形態とほぼ同一の構成を有しているが、第1のアンテナ本体4eの構造が異なっている。ここでは、異なっている部分だけ説明し、他の部分は第1の実施形態で説明した通りとする。
【0084】
第1の実施形態では、
図5に示すように、第1のアンテナ本体4eは略Tの字状に形成され、左右2本のアンテナ棒からなり、アンテナ棒にケーブル部4aの芯線と網組み線がそれぞれ半田付けされる構成としたが、本実施形態では、
図8に示すように、ケーブル部4aの端部を略Tの字状にフォーミングするようにして第2のアンテナ本体4pを形成したものである。このように構成することにより、安価で少量生産にも適した通信用ケーブル4を得ることができる。
【0085】
すなわち、ケーブル部4aの端部の外皮を所定長さ取り除き、網組み線の部分を芯線から分離して少し捻るようにしてまとめる。そして、内側の被覆の付いたままの芯線を一方向に折り曲げ、少し捻られた網組み線を他方向に折り曲げて略Tの字状に形成する。このように、ケーブル部4aの端部をフォーミングすることにより、簡単に第1のアンテナ本体4eを形成することができる。
【0086】
(第3の実施形態)
図9乃至
図11を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態は、前述した第1の実施形態及び第2の実施形態とほぼ同一の構成を有しているが、アンテナケース4dとその内部の構成を変えたものである。ここでは、異なっている部分だけ説明し、他の使用例等は第1の実施形態で説明した通りとする。
【0087】
第1の実施形態では、
図5に示すように、第1のアンテナ本体4eは略Tの字状に形成され、左右2本のアンテナ棒からなり、アンテナ棒の中央近傍でケーブル部4aの芯線と網組み線がそれぞれ半田付けされる構成とした。また、第2の実施形態では、
図8に示すように、略Tの字状にケーブル部4aの端部をフォーミングするようにして第2のアンテナ本体4pを形成した。本実施形態では、
図11に示すように、略Iの字状の形にケーブル部4aの端部をフォーミングするようにして第3のアンテナ本体4qを形成している。
【0088】
第3の実施形態において、第1の実施形態と同一の機能を有する部分については、同一の記号を付けて説明を省略する。また、
図9においては、
図3に記載した窓越通信用アンテナ用保持具4hの記載は省略して記載した。窓越通信用アンテナ用保持具4hは、窓越通信用アンテナ部4cをアクリルガラス窓Aに取り付けたときの補強のためのものだからである。
【0089】
図9に示すように、第1の端末用アンテナ部4bと窓越通信用アンテナ部4cとは、同一の形状及び構成を有している。
図10に示すように、アンテナケース4d、4dに対してケーブル部4aは側面から取り付けられる構成となっている。アンテナケース4d、4dは、第1の実施形態と同様の工程により組み立てられる。
なおここで、
図10に示すように、蓋状ケース4kの内面側中央に突出した補強リブが設けられている。補強リブは、例えば窓越通信用アンテナ部4cを深い水深において、アクリルガラス窓Aに取り付け作業をする際などに、大きな水圧によって蓋状ケース4kが破壊されるのを防止するためである。また、補強リブを、第3のアンテナ本体4qを所定の位置に保持するためのアンテナ保持具として用いてもよい。
【0090】
図11に示すように、第3のアンテナ本体4qはケーブル部4aの端部をフォーミングするようにして形成される。すなわち、ケーブル部4aの端部の外皮を所定長さ取り除き、更に通信波をシールドする網組み線を、被覆された芯線から同じく所定長さ取り除く。このようにしてアンテナ部を被覆された芯線から構成することにより、生産にも適した通信用ケーブル4を得ることができる。
【0091】
ここで、第1の実施形態と同様に
図6に示すように、リフレクター4fは側面から見たときに、略放物線を描くような円弧状の略放物面に形成され、第3のアンテナ本体4qは略放物線の略重心の位置に固定されている。このような構成となっているため、第3のアンテナ本体4qからの通信波はリフレクター4fで反射されて、前方に方向を揃えて送信されるし、第3のアンテナ本体4qへの通信波はリフレクター4fで反射されて、第3のアンテナ本体4qで集められる。なお、第3のアンテナ本体4qをアンテナケース4d内でしっかりと固定するため、アンテナケース4dにアンテナ保持部を設け、第3のアンテナ本体4qを保持し固定するように構成してもよい。
【0092】
なお、アンテナケース4d内部は中空として説明してきたが、例えば樹脂等を用いて中空部に充填し、固化させた状態としてもよい。アンテナの保持が強化されるとともに、高い水圧にも耐えやすくなり、頑丈で衝撃や振動に強い通信用ケーブル4が得られる。
【0093】
(第4の実施形態)
図12を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
この第4の実施形態は、前述した第1の実施形態と、窓越通信用アンテナ部4cとケーブル部4aの構成はほぼ同一であるが、リフレクター4fを有していない第2の端末用アンテナ部4rを採用している。ここでは、異なっている部分だけ説明し、他の部分は第1の実施形態で説明した通りとする。
【0094】
図12に示すように、第2の端末用アンテナ部4rでは、ここでは、略Ω(オメガ)型の形状をしたループアンテナである第4のアンテナ本体4sを配設している。そして、同軸ケーブルの芯線と網組み線は、第4のアンテナ本体4sの2つの端部の根本の部分に、半田付け等により通電可能に接続される。
【0095】
ここで、第4のアンテナ本体4sは、金属板状のものを用いてもよいし、フィルム上にアンテナが金属薄膜等で形成されているフィルムアンテナを用いてもよい。また、ワイヤー等をリング形等にフォーミングして用いてもよいし、ケーブル部4aの端部の電線をそのまま使用し、フォーミングして用いてもよい。
また、ケーブル部4aに同軸ケーブルを用いたが、第4のアンテナ本体4sで受信した無線LAN信号をそのまま伝達することができるものであれば、他の種類の電線を用いてもよい。
【0096】
第2の端末用アンテナ部4rは、一般的なインサート成形により、形成されている。すなわち、まず同軸ケーブルが接続された第4のアンテナ本体4sを、金型内に装填する。次に、樹脂を金型に注入し充填して、第4のアンテナ本体4sを溶融樹脂で包んで固化させ、一体化させる。本実施形態では、金型に注入する樹脂として、ポリカーボネイト樹脂やABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂等の、丈夫で剛性の高い樹脂が用いられる。
【0097】
図12に示すように、ケーブル部4aの端部には、筒状のケーブル保護ブッシュ部4tが設けられ、ケーブル部4aの両端の付け根部を保護している。このケーブル保護ブッシュ部4tは、別部品を結合させたり、第4のアンテナ本体4s等と一緒にインサート成形させたりしてもよい。注入する樹脂に可撓性のあるものを使用する場合には、第2の端末用アンテナ部4rと一体に成型することにより、ケーブル保護ブッシュ部4tを形成するようにしてもよい。
【0098】
ここで、アンテナ本体としてループアンテナを用いたが、無線LAN信号を通信可能であれば、アンテナの形式は限定されない。例えば、T字アンテナとかバーアンテナとかを用いてもよい。また、アンテナ部は、略矩形で板状の扁平な形状であるが、これに限定されない。例えば、円盤状、ドーナツ型のリング状、長円状、長いバー状等にしてもよい。
ここで、平らなケースの上に取り付ける場合には、取り付けやすさから、アンテナ部の形が、平板状であることが好ましい。
【0099】
また、アンテナ部を樹脂で封止する構成としたが、これに限定されない。例えば、水密に密閉された中空の樹脂容器を用いて、樹脂容器の中空部にアンテナ本体を固定して配設し、アンテナ部を構成するようにしてもよい。
【0100】
また、通信用ケーブルのアンテナ部を接合する位置を、無線LAN装置のアンテナ部に概略対向する位置又はその近傍としたが、これはより強い感度が得るためであり、接合位置はこれに限定されない。実用的に無線LAN通信が可能な接合位置ならば、接合位置は広くなるので、他の部分に接合してもよい。また、水中使用の場合、アンテナ部を水密に密着させてもよいし、水中での必要な感度が得られるならば、密接させるだけでもよい。
またここで、水中使用しない無線LAN装置の場合には、無線LAN装置にアンテナ部を接合せずに隣接して配置しても使用が可能である。水中では電波は水に吸収されるが、空中では吸収されないからである。
【0101】
なお、この第4の実施形態では、第1の実施形態における第1の端末用アンテナ部4bからリフレクター4fを取り外し変えた場合を示したが、第2の実施形態や第3の実施形態についても、同様に変えてもよいことは、勿論である。
ここで、第1の実施形態乃至第4の実施形態では、アンテナ本体や端末用アンテナ部の構成は異なるが、リフレクターを有する窓越通信用アンテナ部4cの機能はいずれも同一であり、いずれの実施形態のものも、通信用ケーブル4(遮蔽物越し通信具)と呼ぶこととする。
【0102】
(第5の実施形態)
図13(C)及び(D)を参照して、本発明の第5の実施形態について説明する。
第1の実施形態乃至第4の実施形態では水槽内の構成についての記載であったが、第5の実施形態では、水槽外に配置された第1の携帯端末3の通信システムを変更したものである。
【0103】
まず、
図13(A)には第1の実施形態乃至第3の実施形態、
図13(B)には第4の実施形態を模式的に示している。すなわち、アクリルガラス窓Aの内面に窓越通信用アンテナ部4cを配置させ、外面の、窓越通信用アンテナ部4cと対向する位置に第1の携帯端末3を配置して、アクリルガラス窓A越しの通信を行うようにしたものである。この場合、通信させるためには、第1の携帯端末3を所定箇所にずっと保持しておく必要があり、例えば、第1の携帯端末3を手持ちで持ち続けるのは大変だった。そこで本実施形態では、外面側も、通信用ケーブルを用いるように構成した。
【0104】
図13(C)に示すように、アンテナ部の一方はリフレクター4fを有さない通信用ケーブル4の窓越通信用アンテナ部4cを、内面側の窓越通信用アンテナ部4cと対向する外面の位置に配置して、第2の端末用アンテナ部4rを第1の携帯端末に固定した。このように構成すると、内面側と外面側の2つの撮像端末アンテナ部2eが相互に通信可能となり、防水撮像端末2と第1の携帯端末3とが通信できる状態となる。このとき、第1の携帯端末3は、通信用ケーブル4の範囲で自由に動かすことができる。そして、これをもっと簡単にしたのが、
図13(D)に示す構成である。
【0105】
図13(D)に示す構成では、外面側の通信用ケーブル4を変更している。
図13(C)に示す構成では、両端にリフレクターの付いていない第2の端末用アンテナ部4rを備えたケーブル部4aである伝達通信用ケーブル5を用いた。すなわち、伝達通信用ケーブル5は、
図12において、第2の端末用アンテナ部4rをケーブル部4aの有している構成としたものである。ここで、水槽の外面側は、第1の携帯端末に内蔵された、リフレクターのついていない携帯端末アンテナ部3eで通信可能であったので、リフレクターなしでも通信可能となる。そこで、アクリルガラス窓Aに取り付けるアンテナ部をリフレクターの付いていない第2の端末用アンテナ部4rと置換えたものである。
【0106】
ここで、
図13(C)で示したような、内面外面ともにリフレクター4fの付いた第2の端末用アンテナ部4rで行う方が、
図13(D)で示した構成より、より感度が上がり、通信がより安定する。なお、外面側の通信用ケーブル4、伝達通信用ケーブル5は空気中で使用するものなので、水密構造でなくてもよい。
【0107】
(第6の実施形態)
図13(E)を参照して、本発明の第6の実施形態について説明する。
第1の実施形態乃至第5の実施形態では実施形態では、防水撮像端末2と第1の携帯端末3との一対一の通信について説明したが、本実施形態では、複数の通信装置との通信を可能とするものである。
【0108】
図13(E)に示すように、通信用ケーブル4を用いて、無線LANルーター(無線ルーター)6に接続することができる。すなわち、
図13(C)に示す構成において、第2の端末用アンテナ部4rを第1の携帯端末3ではなく、無線LANルーター6に接続したものである。このように構成することにより、防水撮像端末2と無線LANルーター6とがアクリルガラス窓A越しに無線LAN通信接続されることになる。そして、無線LANルーター6により、水族館の複数の観客に対して、防水撮像端末2の撮像画像等をリアルタイムで配布可能となるし、また、他の無線LANルーター6と通信したり、ネットワークNを通じて撮像画像等を配布したりすることも可能となる。
【0109】
なお、ここでは、第2の端末用アンテナ部4rを用いて通信用ケーブル4に接続したが、両端にリフレクター4fのある第1の端末用アンテナ部4bを用いてもよい。また、通信用ケーブル4の端部にコネクターを取り付け、無線LANルーター6のアンテナ端子にコネクターを直接接続するように構成してもよい。
【0110】
(第7の実施形態)
図14を参照して、本発明の第7の実施形態について説明する。
今まで説明した実施形態では、遮蔽物として水族館におけるアクリルガラス窓A越しの通信について説明してきた。本実施形態は、通信波を通しにくい建築物の壁B(遮蔽物)越しに、通信用ケーブル4を用いることにより、第1の携帯端末3と第2の携帯端末7が通信を行うことを可能とした遮蔽物越し通信システム1についてのものである。
【0111】
ここで、第2の携帯端末7はタブレット端末であり、略矩形で大きな扁平な形状のケースの中に、図示されない大画面のタッチパネル付の表示部を有している。第2の携帯端末7は、第1の携帯端末3と同様、Wi―Fi(登録商標)認証を受けた無線LAN装置であり、第1の携帯端末3と相互の無線LAN通信が可能に構成されている。しかしながら、第2の携帯端末7を隣の部屋に持ち込んだ場合、2つの部屋を仕分ける壁Bにより、相互の無線LAN通信が途切れる場合があるものとする。
【0112】
図14(A)に示すように、通信用ケーブル4の第2の端末用アンテナ部4rは第1の携帯端末3に固定され、携帯端末アンテナ部3eと通信を行う。第2の端末用アンテナ部4rの受信された通信波は、そのままケーブル部4aによって窓越通信用アンテナ部4cに伝達される。そして、壁Bの一面の所定箇所に固定された窓越通信用アンテナ部4cは、
通信波を束ねて、方向を揃えて送信し、通信波は壁Bを通過し、第2の携帯端末7の図視されない内部アンテナに到達する。
【0113】
逆の場合も同様であり、第2の携帯端末7からの通信波は、壁Bを通過し、窓越通信用アンテナ部4cで集められ、ケーブル部4aを経由して、第2の端末用アンテナ部4rにより第1の携帯端末3に受信される。このようにして、第1の携帯端末3と第2の携帯端末7との壁B越しの通信が行われる。
【0114】
次に、
図14(B)に示す構成では、第2の携帯端末7側も通信用ケーブル4を使用して通信するように構成したものである。
図14(A)で示した構成よりも、より感度の高い通信が可能となる。
また、
図14(C)に示す構成では、
図14(B)に示した構成の通信用ケーブル4を伝達通信用ケーブル5に変えたものである。壁Bに固定したアンテナ部にリフレクターがない分、
図14(A)で示した構成よりも、より感度は下がるが、
図14(A)で示した構成よりも、感度の高い通信が可能となる。
【0115】
以上説明した通り、遮蔽物越し通信システム1は、通信波の通りにくい遮蔽物として、アクリルガラス窓Aだけでなく、建物の壁Bにも適用可能であり、また、建物の床や窓等にも適用が可能となる。なお、通信用ケーブル4は、いずれも空気中で使用するものであり、防水構造にはしなくてもよい。
【0116】
なお、以上の実施形態では、第1の携帯端末3に第2の端末用アンテナ部4rを用いて通信用ケーブル4に接続したが、リフレクター4fのある第1の端末用アンテナ部4bを用いてもよい。より感度が上がる。
【0117】
また、無線装置として第1の携帯端末3と第2の携帯端末7との組み合わせの例を示したが、これに限定されないことは勿論である。例えば、監視カメラ等のいわゆるネットワーク・カメラや、いわゆるネットワーク・テレビ、ネットワーク・オーディオ等と組み合わせてもよいのは、勿論である。
【0118】
(第8の実施形態)
図15を参照して、本発明の第8の実施形態について説明する。
本実施形態は、通信装置が無線LANルーターであって、2つの無線LANルーターを壁越しに通信させる遮蔽物越し通信システム1に関するものである。
【0119】
いわゆるマンションの横並びの2室を使用するような場合、1室では無線LANルーターを使用しているが、2室を仕切る壁Bのため、隣室では無線LANは使えないというようなことがある。このような場合、2室を有線のLANケーブルを用いて結ぶのもなかなか難しく、簡単な構成で壁B越え通信できる装置が求められている。
【0120】
図15(A)に示すように、ネットワークNに接続された無線LANルーター6の親機が設けられ、更に無線LANルーター6の子機に無線LAN接続されているような場合を考える。この場合、壁Bにより、隣室には無線LAN信号は届かないものとする。
ここで、無線LANルーター6の子機(第1の通信装置)に通信用ケーブル4(第1の通信線)を接続し、リフレクター4fを有する窓越通信用アンテナ部4cを壁Bの一面の所定箇所に固定する。
【0121】
そして、隣室においても、無線LANルーター6の別の子機(第2の通信装置)に通信用ケーブル4(第2の通信線)を接続し、リフレクター4fを有する窓越通信用アンテナ部4cを壁Bの他面の、対向するところに窓越通信用アンテナ部4cを固定する。このようにして、壁B越しの無線LAN通信をさせ、隣室でも無線LANルーター6の別の子機により、無線LAN通信をすることを可能とした。
【0122】
ここで、壁Bに鉄筋が入っている個所では、通信波が吸収され、通信は困難となる。そこで、あらかじめ設計図面や鉄筋探査機により鉄筋の位置を確認し、窓越通信用アンテナ部4cを壁Bの一面の所定箇所に固定する。次に隣室では、壁際の電波感度を測定し、感度の得られた他面の所定箇所に、窓越通信用アンテナを設置する。
【0123】
窓越通信用アンテナ部4cは、コンパクトに形成されているので、ピンポイントで通信できる個所を選ぶことができる。また、リフレクター4fは横長であり、窓越通信用アンテナ部4cを縦にしたり、横にしたりすることは有効である。壁Bの一面と他面の窓越通信用アンテナ部4cについて、例えば方向を揃え縦同士に組み合わせれば、感度の高い通信が可能となり、縦と横とにして組み合わせれば、感度の得られる幅は大きくなるが、感度は下がる。なお、感度が得られるのならば、一方の窓越通信用アンテナ部4cとして、リフレクターのない第2の端末用アンテナ部4rを使用してもよい。
【0124】
なお、無線LANルーター6と通信用ケーブル4との接続においては、通信用ケーブル4の端部に設けられた第1の端末用アンテナ部4bや第2の端末用アンテナ部4rを、無線LANルーター6の外筐に固定し取り付けてもよい。また、通信用ケーブル4の端部にコネクターを取り付け、無線LANルーター6のアンテナ端子に直接接続するように構成してもよい。また、無線LANルーター6の子機ではなく、親機に通信用ケーブル4を直接接続するようにしてもよい。
【0125】
図15(B)に示すように、通信用ケーブル4との接続された無線LANルーター6の代わりに、無線LANルーター6と窓越通信用アンテナ部4cとが一体に内蔵された、窓越通信用アンテナ部付き無線LANルーター8を用いてもよい。無線LANルーター6の取り付けが、より簡単になる。
【0126】
本実施形態のように構成することにより、横並びの2室を使用するような場合、隣室でも無線LANルーターを使用することができるようになった。
【0127】
なお、以上の無線装置としては、無線LAN通信の規格としてWi―Fi(登録商標)規格の例を上げたが、無線LAN装置が通信可能な無線LAN通信規格であれば、これに限定されない。また、本発明は、無線LAN通信に限定されない。Bluetooth(登録商標)等、いろいろな無線装置に適用することが可能である。また、無線LAN装置に内蔵される無線LAN通信用アンテナの位置についても、一例を上げたものであり、これに限定はされない。
【0128】
また、アンテナ本体の形状等について、無線LAN信号を通信可能であれば、アンテナの形式は限定されない。例えば、円盤状、ドーナツ型のリング状、長円状、長いバー状等にしてもよい。また、これらのアンテナを、ケーブル部の端部をフォーミングするようにして形成してもよい。
【0129】
また、通信用ケーブルの両端に設けられた2つのアンテナ部は、同一の形状及び構成を有するものとしたが、これに限定されず、一方のアンテナ部を他方と違った形状及び構成にしてもよい。
【0130】
また、ケーブル部に用いられる同軸ケーブルには、アルミ箔等により単数又は複数のシールド層を設けたものを用いてもよい。不要輻射を防止するためである。また、ケーブル部は、外皮等が耐水性や耐海水性等に強いものを用いることが好ましく、必要に応じて耐衝撃性に強いケーブルを用いてもよい。
【0131】
また、アンテナ部と無線LAN装置のケースとの接合部の構成として、アンテナ部に粘着部を設けて接合する構成と、アンテナ部等を付勢してケースと密着させる構成とを示したが、これに限定されない。例えば、アンテナ部に吸盤を設けたり、アンテナ部とケースに互いに引き合う磁石等を配置する構成にしたりして、接合部を構成してもよいことは勿論である。なお、吸盤で構成した場合には、アンテナ部を外殻体に取り付けたときに出っ張る高さが大きくなる。
【0132】
また、本発明の遮蔽物越し通信システム1は、以下のようにも表現することができる。
すなわち本発明は、通信波が通り抜けにくい遮蔽物越しの通信を行う遮蔽物越し通信システム及び遮蔽物越し無線通信具であって、遮蔽物の一面に通信波の方向に揃えるリフレクターを有する第1のアンテナが配置され、遮蔽物の他面の、第1のアンテナの略対向する位置に第2のアンテナが配置されて、第1のアンテナからの通信波はリフレクターで方向を揃えられて遮蔽物に向かって送信され、遮蔽物を通過した通信波は第2のアンテナで受信され、第2のアンテナから送信され遮蔽物を通過した通信波は、第1のアンテナのリフレクターで集められて受信されるようにして、通信が行われるように構成したので、簡単な構成で、より強力に通信波が遮蔽物を通り抜け通信させることができる遮蔽物越し通信システム及び遮蔽物越し無線通信具が得られるというものである。
【0133】
また、本発明の遮蔽物越し通信システム及び遮蔽物越し通信具は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0134】
例えば、上述した実施の形態においては、通信装置として防水撮像端末と携帯端末、タブレット端末や無線ルーター等に適用した例について説明しているが、これに限定されず、PDA、パソコン、デジタルカメラ、携帯用ゲーム機、携帯電話、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯型音声再生機その他の通信装置に適用できるものである。また、腕時計型端末やHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)等のいわゆるウェアラブル通信端末等にも適用できるものである。