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特開2019-193340振動系の制御装置およびワーク搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-193340(P2019-193340A)
(43)【公開日】2019年10月31日
(54)【発明の名称】振動系の制御装置およびワーク搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/06 20060101AFI20191004BHJP
   G01D 5/48 20060101ALI20191004BHJP
   B65G 27/32 20060101ALI20191004BHJP
   B65G 27/34 20060101ALN20191004BHJP
【FI】
   H02N2/06
   G01D5/48 B
   B65G27/32
   B65G27/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-80383(P2018-80383)
(22)【出願日】2018年4月19日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】前田 峰尚
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲行
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝信
【テーマコード(参考)】
2F077
3F037
5H681
【Fターム(参考)】
2F077AA13
2F077LL05
2F077TT23
2F077UU20
3F037AA06
3F037BA01
3F037BA03
3F037CA11
3F037CA18
3F037CB06
3F037CC05
5H681AA06
5H681BB03
5H681BB13
5H681BC00
5H681CC02
5H681CC06
5H681CC07
5H681DD53
5H681FF26
5H681FF30
5H681FF33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】パーツフィーダや超音波モータ等の振動を利用した装置に適用され、安定・高効率にこれらを駆動させることを可能とした、振動系の制御装置を提供する。
【解決手段】共振周波数がf1、f2と異なる2つの振動系1、2を共通の駆動指令を通じて駆動する際に利用されるものであって、各振動系1、2の振動の振幅を検出する第一振幅検出器61および第二振幅検出器62と、これらの振幅検出手段61、62により検出された振幅を比較する差分器63と、差分器63を通じて得られる両振幅の偏差が0となるように駆動指令の周波数fを追尾させる追尾手段7とを備えるものとした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振周波数の異なる2つの振動系を共通の駆動指令を通じて駆動する際に利用される制御装置であって、
前記各振動系の振動の振幅を検出する振幅検出手段と、これらの振幅検出手段により検出された振幅を比較する比較手段と、前記比較手段を通じて得られる両振幅の偏差が0となるように前記駆動指令の周波数を追尾させる追尾手段とを具備することを特徴とする振動系の制御装置。
【請求項2】
前記追尾手段は、前記比較手段を通じて得られる振幅の偏差に基づき少なくとも比例項および積分項を用いて制御量を算出する制御量算出部と、偏差の正負に応じた方向に前記制御量分だけ周波数を増減させる周波数調節器とを含む請求項1に記載の振動系の制御装置。
【請求項3】
前記2つの振動系の何れか一方に入力される駆動指令にゲインを乗じるゲイン乗算部と、当該振動系の振幅検出手段から検出される検出信号を前記ゲインで除するゲイン除算部とを備え、このゲイン除算部で除した検出信号が前記比較器に入力される請求項1又は2に記載の振動系の制御装置。
【請求項4】
前記2つの振動系の何れか一方の振幅検出手段から検出される検出信号をゲインで除するゲイン除算部を備え、このゲイン除算部で除した検出信号が前記比較器に入力される請求項1又は2に記載の振動系の制御装置。
【請求項5】
ワークを載置した状態で搬送する搬送部と、位相の異なる2つの定在波が合成されることにより前記搬送部をたわみ振動させるための進行波を発生させる進行波発生手段と、を備え、前記進行波発生手段の2つの定在波の生成に請求項1乃至4の何れかに記載の振動系の制御装置が適用されることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項6】
ワークを載置した状態で搬送する搬送部と、搬送方向および搬送方向と交差し鉛直成分を含む方向の2つの振動が合成されることにより前記搬送部を楕円振動させる楕円振動発生手段と、を備え、前記楕円振動発生手段の2つの振動の生成に請求項1乃至4の何れかに記載の振動系の制御装置が適用されることを特徴とするワーク搬送装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーツフィーダや超音波モータ等の振動を利用した装置に適用され、安定・高効率にこれらを駆動させることを可能とした、振動系の制御装置およびワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、楕円振動パーツフィーダや進行波型のパーツフィーダ、超音波モータ等のように、複数の振動系を有し、それらを単一の周波数で駆動させることにより種々の機能を発揮する装置が知られている。ここで、複数の振動系とは、複数の構造物による振動系や、複数の振動方向を持つ振動系、同一の構造物の複数の振動モード、のいずれをも含んでいる。
【0003】
このような装置では、搬送部を効率よく振動させるために、これら複数の振動系の共振周波数が近い値となるように設計・調整を行い、これらの共振周波数付近の周波数で駆動することが多い。また、複数の振動系うちの一つの振動系の共振周波数に応じて駆動周波数を調節する制御が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1は超音波モータの駆動回路を示しており、駆動状態に応じた電圧(駆動検出用の圧電素子から得られる電圧)と、圧電体への印加電圧(2つの電極のうちの一方への印加電圧)との位相差が、予め設定された位相差となるように駆動周波数を制御するように構成されている。
【0005】
一方、特許文献2は楕円振動パーツフィーダの駆動制御装置を示しており、水平方向振動と垂直方向振動のいずれか一方の振幅が最大となるように出力周波数を設定するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平07−2023号公報
【特許文献2】特開平11−227926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明において対象としている楕円振動パーツフィーダや進行波型のパーツフィーダは、一般的に2つの振動系の共振周波数にずれがある。特に進行波型パーツフィーダでは、空間的位相が90°ずれた2つの定在波モードを利用しているが、振動部が対称形状ではないことから共振周波数のずれが生じやすく、一致させるような調整は困難である。また、温度変化等によって共振周波数が変化する現象が確認されており、この場合には各振動系の共振周波数が同じように変化するとは限らず、ずれが大きくなることも考えられる。
【0008】
このため、従来の一つの振動系の共振周波数に基づいて駆動周波数を調整する制御では、共振周波数のずれの影響によって装置全体の効率は最大とはならない。また、各振動系の振動の応答倍率の差が大きくなり、一部の振動系で必要な振幅を出すために過大な加振力が必要となる、一部の振動系で振幅が不足する、などの問題が生じることが考えられる。
【0009】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、従来のように1つの振動系の共振周波数を追尾するのではなく、2つの振動系の共振周波数の間の、振動の応答倍率がほぼ等しくなる周波数で駆動するように制御を行うことで問題の解決を図った、振動系の制御装置およびワーク搬送装置を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、本発明に係る振動系の制御装置は、共振周波数の異なる2つの振動系を共通の駆動指令を通じて駆動する際に利用されるものであって、前記各振動系の振動の振幅を検出する振幅検出手段と、これらの振幅検出手段により検出された振幅を比較する比較手段と、前記比較手段を通じて得られる両振幅の偏差が0となるように前記駆動指令の周波数を追尾させる追尾手段とを具備することを特徴とする。
【0012】
このような制御をすれば、2つの振動系を振幅のほぼ一致する周波数で駆動することができる。そして、その周波数は2つの振動系の共振周波数の間に位置することから、一つの振動系の共振周波数に基づいて駆動周波数を調整する制御に比べて、各振動系の振動の応答倍率の差が小さくなり、一部の振動系で必要な振幅を出すために過大な加振力が必要となったり、一部の振動系で振幅が不足することを防止して、装置全体を効率良く制御することが可能となる。さらに振幅の一致するところに制御するだけであるから、駆動指令と振動系の応答の間の位相差を利用して共振周波数を探索する場合等に比べて制御も簡単となる。
【0013】
この場合、前記追尾手段は、前記比較手段を通じて得られる振幅の偏差に基づき少なくとも比例項および積分項を用いて制御量を算出する制御量算出部と、偏差の正負に応じた方向に前記制御量分だけ周波数を増減させる周波数調節器とを含むことが望ましい。
【0014】
振幅が一致すれば周波数は調整されない。一方、振幅の偏差が大きくなるほど、振幅一致の周波数から外れるため、偏差に応じて周波数の調整量が大きくなる。そして、比例項と積分項を含んだ制御によって、迅速に目標値に到達させることができる。
【0015】
また、前記2つの振動系の何れか一方に入力される駆動指令にゲインを乗じるゲイン乗算部と、当該振動系の振幅検出手段から検出される検出信号を前記ゲインで除するゲイン除算部とを備え、このゲイン除算部で除した検出信号が前記比較器に入力されるように構成することが好適である。
【0016】
このようにすれば、本発明を楕円振動系のように振幅が比較的大きく異なる2つの振動系に適用したり、進行波パーツフィーダのように機械的な誤差を修正して振幅を一致させる目的に適用するなど、共通の駆動指令で2つの振動系を同一周波数のもとに適切な振幅で振らせることができる。しかも、振幅検出手段から検出される信号の一方をゲインで除して偏差を比較するため、2つの振動系に対してバランスのとれた周波数に調整することができる。
【0017】
また、前記2つの振動系の何れか一方の振幅検出手段から検出される検出信号をゲインで除するゲイン除算部を備え、このゲイン除算部で除した検出信号が前記比較器に入力されるように構成することも好適である。
【0018】
このように構成した場合、加振信号の大きさは2つの振動系で等しく、応答倍率が所定の比率となるような周波数で駆動されることで振幅比も所定の比率となる。この場合、振幅比の設定値によらず2つの振動系への加振信号の大きさを等しくできるため、ドライバ等の増幅器の動作が安定する。
【0019】
そして、ワークを載置した状態で搬送する搬送部と、位相の異なる2つの定在波が合成されることにより前記搬送部をたわみ振動させるための進行波を発生させる進行波発生手段と、を備え、前記進行波発生手段の2つの定在波の生成に上記振動系の制御装置を適用して、ワーク搬送装置を構成することが好適である。
【0020】
このようなワーク搬送装置であれば、2つの定在波から進行波を適切に生成して高効率の搬送を行うことが可能になる。
【0021】
あるいは、ワークを載置した状態で搬送する搬送部と、搬送方向および搬送方向と交差し鉛直成分を含む方向の2つの振動が合成されることにより前記搬送部を楕円振動させる楕円振動発生手段と、を備え、前記楕円振動発生手段の2つの振動の生成に上記振動系の制御装置を適用して、ワーク搬送装置を構成することも好適である。
【0022】
このようなワーク搬送装置であれば、2つの振動から楕円振動を適切に生成して、高効率の搬送を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0023】
以上、説明した本発明によれば、パーツフィーダや超音波モータ等の振動を利用した装置に適用した場合に、安定・高効率にこれらを駆動させることを可能とする、新規有用な振動系の制御装置およびワーク搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る振動系の制御装置を示すブロック図。
図2】同実施形態における制御の概要を示すグラフ。
図3】同実施形態における制御の概要を示すグラフ。
図4】本発明に係るワーク搬送装置の構成例としてのパーツフィーダを示す図。
図5】同パーツフィーダを構成するボウルフィーダに対する制御ブロック図。
図6】同パーツフィーダを構成するリニアフィーダに対する制御ブロック図。
図7】本発明の変形例を示す図1に対応したブロック図。
図8】同変形例における制御の概要を示すグラフ。
図9】本発明に係るワーク搬送装置の変形例を示す図。
図10】本発明と対比される従来の制御の概要を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は本実施形態に係る振動系の制御装置Cをブロック図で示したものである。この制御装置Cは、第一、第二振動系1、2を持ち、各振動系1、2の共振周波数f1、f2が近い値にあるような振動部(1x、2x)を有する。このような共振周波数f1、f2が近い値にあるような振動系としては、例えば空間的位相差のある複数箇所を複数の振動モードで加振することによって進行波を発生させるパーツフィーダ等の超音波振動系や、XZ方向あるいはYZ方向への振動を通じて楕円振動を発生させる平面搬送装置等のバネマスダンパ振動系などが挙げられる。
【0027】
具体的には、第一、第二振動系1,2は、それぞれ第一、第二加振器11、21によって加振される。
【0028】
第一、第二加振器11、21へは、発信器等の駆動指令生成部3で生成される、周波数可変で正弦波や矩形波などの周期信号が、第一、第二増幅器12、22で増幅されて入力される。駆動指令生成部3で生成する駆動指令の周波数は外部から可変とされる。また、増幅器12、22の増幅率は等しいものとする。第二加振器21に関しては、第一振動系1を基準として第二振動系2に相対的な位相差を与えるべく、駆動指令生成部3からの周期信号を移相器4において位相をずらして第二増幅器22で増幅したものが入力される。
【0029】
すなわち、駆動指令生成部3からの周期信号は、第一増幅器12に入力されるとともに、位相器4によって位相をずらして第二増幅器22に入力される。
【0030】
ここで、通常の制御であれば、駆動指令生成部3は第一振動系1の共振周波数f1又は第2振動系2の共振周波数f2の何れかの周波数で駆動指令を生成し、移相器4で90°の位相差をつけて両振動系1、2を駆動するように構成される。
【0031】
しかしながら、前述したように第一振動系1の共振周波数f1で全体を駆動する制御は、第二振動系2においては共振周波数f2から外れた駆動となるため、第一振動系1との間で応答倍率の差が大きくなり、第二振動系2で必要な振幅を出すために第二増幅器22で過大な加振力が必要となったり、振幅が不足するなど、種々の問題が生じることが考えられる。これは、第二振動系2の共振周波数f2で全体を駆動するようにした場合にも事情は同様である。
【0032】
そこで本実施形態は、前記各振動系1、2の振動を検出する振動検出手段である第一振動検出器51および第二振動検出器52と、これらの振動検出器51、52が検出した振動信号から振幅を検出する振幅検出手段である第一振幅検出器61および第二振幅検出器62と、これらの振幅検出器61、62により検出された振幅を比較する比較手段たる差分器63と、比較手段63を通じて得られる両振幅の偏差が0となるように駆動指令生成部3における駆動指令の周波数を追尾させる追尾手段7とを設けている。
【0033】
この場合、第一、第二の振動検出器51、52が検出するのは、第一、第二振動系1、2の振動部1x、2xから取り出した変位信号同士、速度信号同士または加速度信号同士の何れかとされる。
【0034】
追尾手段7は、差分器63を通じて得られる振幅の偏差に基づき少なくとも比例項および積分項を用いて制御量Δfを算出する制御量算出部たるPI制御部71と、偏差の正負に応じた方向に前記制御量Δf分だけ周波数fを増減させる周波数調節器72とを含んで構成される。
【0035】
例えば、図2に示すように、第一振動系1の共振周波数f1よりも第二振動系2の共振周波数f2が高いとした場合に、第二振幅検出器62で検出される振幅A2と第一振幅検出器61で検出される振幅A1との大小関係に応じて、下記のような周波数の変更を行う。
【0036】
A2<A1のとき(図2(a)参照)は、f=f+Δfに変更する。
A2>A1のとき(図2(b)参照)は、f=f−Δfに変更する。
【0037】
ΔfはPI制御部72によって算出される制御量であり、両振動系1、2の振幅の偏差が大きいほど大きい値として算出される。
【0038】
これにより、駆動指令生成部3が出力する駆動指令の周波数は、両振動系1、2の振幅の偏差を0にする方向、すなわち図3に示すように両振動系1、2の振幅を一致させるような周波数f0に向かって修正される。
【0039】
その際、この実施形態では、第二振動系2に入力される駆動指令にゲイン係数Kαを生じるゲイン乗算部81と、当該第二振動系2の第二振幅検出手段52から検出される検出信号を前記ゲイン係数Kαで除するゲイン除算部82とを設け、このゲイン除算部82で除した検出信号を差分器63に入力している。
【0040】
これにより、第一振動系1と第二振動系2の振幅比は1:Kaとなる。また、第二振幅検出器62からの出力信号は1/Kα倍された後、第一振幅検出器61の出力信号と比較される。そして、この偏差が0となるように駆動周波数が調節される。
【0041】
このように構成すると、第二振動系2について指令信号がKα倍されたあと振動検出値が1/Kα倍されているため、偏差の演算に用いられる信号ではこれらのゲインはキャンセルされる。そのため、応答倍率が等しくなる周波数において偏差が0となる。したがって、本実施形態の制御方法により、応答倍率が等しくなる周波数、つまり2つの共振周波数f1、f2の間の周波数fで駆動することができる。このような周波数fは2つの振動系1、2の共振周波数f1、f2のどちらにも近く、応答倍率が高いため、両振動系1、2を効率よく振動させることができる。また、共振周波数f1、f2の変化等が生じてもそれに対応して駆動周波数が自動調整されることになる。
【0042】
このように、第一振動系1と第二振動系2との間で振動の応答倍率の差が小さくなることで、一方の振動系で過大な加振力が必要となるといった問題や、一方の振動系の振幅が不足するといった問題が解消される。また、一方の共振周波数で駆動するような場合と比べて、必要な電力は全体的に小さくなる。
【0043】
さらに、駆動周波数が自動調整されるため、第一、第二振動系1、2の共振周波数f1、f2を手作業で模索するような手間がなくなる。すなわち、共振周波数を追尾するのに、位相差を検出したり周波数スイープを行うような必要がないため、検出回路が単純になり、制御が容易となる。
【0044】
また、駆動周波数だけでなく、加振信号のゲインKαによって第一振動系1と第二振動系2の振幅比が1:Kaに制御されるため、駆動状態が安定するとともに、適用対象に応じて積極的に振幅比を設定することができる。振幅を一定にする制御を並行して行う場合は、第一、第二振動系のどちらか一方の振幅検出信号を利用して制御すればよく、それによってもう一方の振動系の振幅も一定に制御されることになる。
【0045】
また、追尾手段7は、差分器63を通じて得られる振幅の偏差に基づき少なくとも比例項および積分項を用いて制御量を算出するPI制御部71と、偏差の正負に応じた方向に制御量Δf分だけ周波数を増減させる周波数調節器72とを含んで構成されているため、振幅の偏差が大きくなるほど偏差に応じて周波数の調整量が大きくなる。そして、比例項と積分項を含んだ制御によって、迅速に目標値に到達させることができる。
【0046】
以上において、例えば超音波モータや進行波型パーツフィーダのように、2つの振動モードの振幅が等しいことが望ましい場合は、Ka=1とする。
【0047】
図3に示したものは、共振周波数f1、f2がずれた2つの振動系の周波数応答関数の例である。図からわかるように、等価質量や等価剛性といった振動特性が近く、かつ共振周波数が若干ずれたような2つの振動系では、応答倍率のグラフが交差する点がそれぞれの共振周波数の間に存在する。
【0048】
そのため、本実施形態の構成は、構造上どうしても2つの振動系の共振周波数にずれが生じやすい進行波型パーツフィーダにおいて特に有効である。
【0049】
図4は、本実施形態に係る振動系の制御装置Cが適用される一例としてのワーク搬送装置たるパーツフィーダPFを示している。このパーツフィーダPFは、投入されるワークを螺旋搬送部T1に沿って登坂させるボウルフィーダBfと、このボウルフィーダBfから排出されるワークに対し整列搬送部t1で整列や方向判別等を行って適正姿勢のワークのみを通過させるとともに不適切なワークをリターン搬送部t2を通じてボウルフィーダBfにリターンさせるリニアフィーダLfとから構成される。
【0050】
このうちボウルフィーダBfは、図5に示すように、フィーダ本体底面の円環状の振動領域のうち、第一領域にあって0°モードで振動する第一振動系1の振動部1x、および第二領域にあって90°モードで振動する第二振動系の振動部2xに対して、圧電素子を用いた第一加振器11および第二加振器21を通じて加振することで、位相の異なる定在波が合成されることにより前記搬送部T1をたわみ振動させるための進行波を発生させる進行波発生手段BZが構成されている。
【0051】
そして、このボウルフィーダBfに上記制御装置Cを適用する場合、進行波発生手段BZの第一、第二加振器11、21に図1及び図2に示した第一、第二増幅器12、22で増幅された周期信号が入力され、第一、第二振動系1(1x)、2(2x)の振動が第一、第二振動検出器51、52を通じて取り出されるように構成すればよい。図5において制御装置C(図1及び図2参照)の他の部分は省略してあり、構成及び制御方法は上記実施形態と同様である。
【0052】
このようなパーツフィーダPFを駆動する場合、各加振部1x、2xでの共振周波数f1、f2はぼほ同じとみて駆動するのが通例であり、振動部1x、2xの底面に圧電素子を貼り付けると圧電素子の発熱によって複数の加振点での共振周波数が数%変化し、定在波比が低下して搬送効率が著しく損なわれる可能性があったが、制御装置Cを通じた制御によって、かかる課題を有効に解決することが可能となる。
【0053】
一方、図4のリニアフィーダLfは、図6に示すように、フィーダ本体底面の長円状の振動領域のうち、第一領域にあって0°モードで振動する第一振動系1の振動部1x、および第二領域にあって90°モードで振動する第二振動系の振動部2xに対して、圧電素子を用いた第一加振器11および第二加振器12を通じて加振することで、位相の異なる定在波が合成されることにより前記搬送部t1、t2をたわみ振動させるための進行波を発生させる進行波発生手段LZが構成されている。
【0054】
そして、このリニアフィーダLfに上記制御装置Cを適用する場合も、進行波発生手段LZに第一、第二加振器11、21に図1及び図2に示した第一、第二増幅器12、22で増幅された周期信号が入力され、第一、第二振動系1(1x)、2(2x)の振動が第一、第二振動検出器51、52を通じて取り出されるように構成すればよい。図6においても制御装置C(図1及び図2参照)の他の部分は省略してあり、構成及び制御方法は上記実施形態と同様である。
【0055】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0056】
例えば、前記実施形態における制御量算出部にはPI制御を用いたが、これに限らず2つの信号の大きさを一致させるような様々な制御手法を採用することができる。
【0057】
また、ゲインKαを第2増幅器22ではなく第一増幅器12への入力信号に与え、第二振幅検出器52ではなく第一振幅検出器51の出力信号にゲイン1/Kαを与えてもよい。この場合、第一、第二振動系1、2の振幅比はKa:1となる。
【0058】
さらに、図7のような、第二増幅器22への入力信号に対してゲインKαを与えず、第二振幅検出器62の出力信号のみをゲインKαで除してもよい。この場合、加振信号の大きさは第一、第二振動系1、2で等しく、応答倍率の比が1:Kαとなるような周波数で駆動されることで振幅比が1:Kαとなる(図8参照)。この場合、振幅比の設定値に依らず2つの振動系への加振信号の大きさを等しくできるため、ドライバ(増幅器等)の動作が安定する。ただし、設定可能な増幅比の範囲は2つの振動系1、2の特性に依存する。したがって、2つの振動系1、2の共振周波数f1、f2が近く、どの周波数においても応答倍率の差が小さいような場合は、設定可能な振幅比の範囲は狭くなる傾向となる。
【0059】
また、図9に示すものは、ワークを載置した状態で搬送する搬送部txと、搬送方向(X方向および/またはY方向)および搬送方向と交差し鉛直成分を含む方向(Z方向)の2つの振動が合成されることにより搬送部txを楕円振動させる楕円振動発生手段Pzとを備えたワーク搬送装置たる楕円振動パーツフィーダPFである。楕円振動発生手段Pzは、第一板バネ11aを加振器(圧電素子)11で加振することで搬送部txをZ方向に振動させる第一振動系1と、第二板バネ21aを加振器(圧電素子)21で加振することで搬送部txをX方向および/またはY方向に振動させる第二振動系2によって構成される。そして、この楕円振動発生手段Pzの2つの振動系1、2のうち、第一振動系1の加振器11を図1の第一増幅器12を通じて加振し、第二振動系2の加振器21を図1の第二増幅器22を通じて加振し、それらの振動系1、2から振動検出器51、52を通じて取り出した振動の信号を図1の第一振幅検出器61および第二振幅検出器62に入力すれば、上記に準じて楕円振動を適切に制御することが可能になる。
【0060】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…第一振動系
2…第二振動系
7…追尾手段
51…振動検出手段(第一振動検出器)
52…振動検出手段(第二振動検出器)
63…比較器(差分器)
71…制御量算出部(PI制御部)
72…周波数調節部
81…ゲイン乗算部
82…ゲイン除算部
f1、f2…共振周波数
BZ、LZ…進行波発生手段
Pz…楕円振動発生手段
PF…ワーク搬送装置(パーツフィーダ)
T1、t1、t2、tx…搬送部

図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
図10