【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・平成29年度 日本太陽エネルギー学会・日本風力エネルギー学会 合同研究発表会(開催日 平成29年10月26日) 太陽/風力エネルギー講演論文集(2017)、第179頁〜182頁、一般社団法人日本太陽エネルギー学会(発行日 平成29年10月26日) ・平成29年度 日本大学理工学部 学術講演会(開催日 平成29年12月 1日) 平成29年度(第61回)日本大学理工学部学術講演会予稿集、第977頁〜978頁、日本大学理工学部学術講演会実行委員会(研究事務課)(発行日 平成29年12月 1日) ・平成30年電気学会全国大会(開催日 平成30年 3月14日) 平成30年電気学会全国大会DVD−ROM版講演論文集、第28頁〜29頁、一般社団法人電気学会(発行日 平成30年 3月 5日) ・平成30年電気学会全国大会(開催日 平成30年 3月14日) 平成30年電気学会全国大会DVD−ROM版講演論文集、第30頁〜31頁、一般社団法人電気学会(発行日 平成30年 3月 5日)
【解決手段】領域抽出装置は、ダイオードと、1つ以上のセルとが並列に接続されたクラスタが直列に複数接続された太陽電池モジュールを撮像して、太陽電池モジュールの表面の温度分布情報を示す温度画像を生成する撮像部と、太陽電池モジュールの電力出力端に周期的に変化する電圧が印加されることに伴う温度変化を示す複数の画像であって、互いに異なる時刻において撮像部が撮像した複数の温度画像を取得する取得部と、取得部が取得した複数の温度画像の各々に示される温度分布情報の差に基づいて、周期的に温度が変化する領域を抽出する領域抽出部とを備える。
ダイオードと、1つ以上のセルとが並列に接続されたクラスタが直列に複数接続された太陽電池モジュールを撮像して、前記太陽電池モジュールの表面の温度分布情報を示す温度画像を生成する撮像部と、
前記太陽電池モジュールの電力出力端に周期的に変化する電圧が印加されることに伴う温度変化を示す複数の画像であって、互いに異なる時刻において前記撮像部が撮像した複数の温度画像を取得する取得部と、
前記取得部が取得した複数の前記温度画像の各々に示される温度分布情報の差に基づいて、周期的に温度が変化する領域を抽出する領域抽出部と
を備える、領域抽出装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
以下、図を参照して本実施形態の領域抽出装置1の構成について説明する。
本実施形態の領域抽出装置1は、撮像部110を備える。撮像部110は、アレイARの表面の温度分布を撮像し、画像を生成する。アレイARとは、複数のストリングSTを接続した構成の名称である。ストリングSTとは、複数の太陽電池モジュールを接続した構成の名称である。太陽電池モジュールは、日射光等の光の照射に伴い、発電する装置である。領域抽出装置1は、撮像部110が生成した画像に基づいて、アレイARの故障を検出する。
まず、領域抽出装置1の観測対象であるアレイARについて図を参照して説明する。
【0011】
[太陽光発電システムSPSの構成]
まず、図を参照して太陽光発電システムSPSの構成について説明する。
図1は、本実施形態の領域抽出装置1の観測対象である太陽光発電システムSPSの一例を示す模式図である。
図1に示す通り、太陽光発電システムSPSは、アレイARと、接続箱JBと、パワーコンディショナPCとを備える。アレイARには、複数のストリングSTが含まれる。この一例では、3つのストリングSTが架台Mに設置される場合について説明する。具体的には、ストリングST1、ストリングST2およびストリングST3が架台Mに設置される場合について説明する。
【0012】
図1に示す通り、アレイARと、接続箱JBとは、配線WR1によって接続される。また、接続箱JBと、パワーコンディショナPCとは、配線WR2によって接続される。接続箱JBとは、ストリングSTと、パワーコンディショナPCとを接続する配線を集約する機器である。これにより、ストリングSTが発電した電力が接続箱JBを介してパワーコンディショナPCへ供給される。以降の説明において、配線WR1と、配線WR2とを特に区別しない場合には、総称して配線WRと記載する。
パワーコンディショナPCとは、アレイARが発電した直流電力を交流電力に変換する装置である。例えば、パワーコンディショナPCは、アレイARが発電した電力を家庭等で使用される商用100Vに変換する。つまり、アレイARが発電した電力は、パワーコンディショナPCを介して調整され、家庭等で使用される電力に変換される。
【0013】
次に、
図2を参照して太陽光発電システムSPSの詳細な構成について説明する。
図2は、本実施形態の領域抽出装置1の観測対象である太陽光発電システムSPSの構成の一例を示す構成図である。この一例では、太陽光発電システムSPSがパワーコンディショナPCと、接続箱JBと、アレイARとを備える場合について説明する。
図2に示す通り、パワーコンディショナPCと、接続箱JBと、アレイARとは、配線WRを介して接続される。具体的には、パワーコンディショナPCの正極の端子である端子TPCPと、接続箱JBの正極の端子である端子TJBPとが配線WRPを介して接続される。また、パワーコンディショナPCの負極の端子である端子TPCNと、接続箱JBの負極の端子である端子TJBNとが配線WRNを介して接続される。これにより、接続箱JBにおいて集約された電力は、パワーコンディショナPCへ供給される。
以降の説明において、配線WRPと、配線WRNとを特に区別しない場合には、配線WR2と記載する。また、以降の説明において、接続箱JBの正極の端子である端子TJBPと、負極の端子である端子TJBNとを総称して電力出力端TSPと記載する。
【0014】
[アレイARの構成]
以下、
図2、
図3、および
図4を参照してアレイARの構成について説明する。
図2に示す通り、この一例では、アレイARが、複数のストリングSTを備える。具体的には、アレイARは、ストリングST1と、ストリングST2と、ストリングST3とを備える。以降の説明において、ストリングST1、ストリングST2、およびストリングST3を特に区別しない場合には、総称してストリングSTと記載する。
図2に示す通り、ストリングSTが発電した電力は、接続箱JBを介してパワーコンディショナPCへ供給される。
まず、
図3を参照してストリングSTについて説明し、接続箱JBについては後述する。
【0015】
図3は、太陽光発電システムSPSのストリングSTの構成の一例を示す模式図である。
図3に示す通り、この一例では、ストリングSTが3つのクラスタCSを備える。具体的には、ストリングSTは、クラスタCS1、クラスタCS2、およびクラスタCS3を備える。つまり、ストリングSTとは、複数のクラスタCSが直列に接続された構成の名称である。
また、この一例では、
図2に示すストリングST1、ストリングST2、およびストリングST3が
図3に示すストリングSTと同一の構成を有する。
以下、
図4を参照してストリングSTの詳細について説明する。
【0016】
図4は、太陽光発電システムSPSのストリングSTの構成の詳細な一例を示す構成図である。
図4に示す通り、クラスタCS1は、複数のセルCLが直列に接続された集合セルCLS1と、バイパスダイオードDp1とを備える。また、クラスタCS2は、複数のセルCLが直列に接続された集合セルCLS2と、バイパスダイオードDp2とを備える。また、クラスタCS3は、複数のセルCLが直列に接続された集合セルCLS3と、バイパスダイオードDp3とを備える。以降の説明において、クラスタCS1、クラスタCS2、およびクラスタCS3を特に区別しない場合には、総称してクラスタCSと記載する。また、バイパスダイオードDp1、バイパスダイオードDp2、およびバイパスダイオードDp3を特に区別しない場合には、総称してバイパスダイオードDpと記載する。
つまり、クラスタCSとは、複数のセルCLとバイパスダイオードDpとを含む構成の名称である。
【0017】
セルCLとは、太陽電池素子である。セルCLは、日射光等の照射光の量に応じた量の電力を発生させる。また、セルCLは、日射光等の照射光が少ない場合、その抵抗が高くなる。バイパスダイオードDpとは、セルCLの抵抗が日射光等の照射光が少ないことにより高い場合、他のクラスタCSから当該セルCLへ電流が流れること防ぐため、電流をバイパスするダイオードである。
【0018】
クラスタCS1は、バイパスダイオードDp1と、複数のセルCLが直列で接続された集合セルCLS1とが並列に接続される。より具体的には、バイパスダイオードDp1のカソード端子である端子TD1kと、集合セルCLS1の端子TCLS1Pとが接続される。また、バイパスダイオードDp1のアノード端子である端子TD1aと、集合セルCLS1の端子TCLS1Nとが接続される。
【0019】
また、クラスタCS2は、バイパスダイオードDp2と、複数のセルCLが直列で接続された集合セルCLS2とが並列に接続される。より具体的には、バイパスダイオードDp2のカソード側の端子TD2kと、集合セルCLS2の端子TCLS2Pとが接続される。また、バイパスダイオードDp2のアノード側の端子TD2aと、集合セルCLS2の端子TCLS2Nとが接続される。
また、クラスタCS3は、バイパスダイオードDp3と、複数のセルCLが直列で接続された集合セルCLS3とが並列に接続される。より具体的には、バイパスダイオードDp3のカソード側の端子TD3kと、集合セルCLS3の端子TCLS3Pとが接続される。また、バイパスダイオードDp3のアノード側の端子TD3aと、集合セルCLS3の端子TCLS3Nとが接続される。
【0020】
図4に示す通り、クラスタCS1、クラスタCS2、およびクラスタCS3とは、直列に接続される。具体的には、
図4に示すクラスタCS1の端子TCS1Nと、クラスタCS2の端子TCS2Pとが接続される。また、クラスタCS2の端子TCS2Nと、クラスタCS3の端子TCS3Pとが接続される。
すなわち、ストリングSTには、バイパスダイオードDpと、1つ以上のセルCLとが並列に接続されたクラスタCSが直列に複数接続される。
【0021】
図3に戻り、クラスタCS1の端子TCS1Pと、ストリングSTの端子TSTPとは、接続される。また、クラスタCS3の端子TCS3Nと、ストリングSTの端子TSTNとは、接続される。
図2に戻り、ストリングST1の端子TST1Pと、接続箱JBの端子TJB1とは、配線WR11を介して接続される。また、ストリングST2の端子TST2Pと、接続箱JBの端子TJB2とは、配線WR12を介して接続される。また、ストリングST3の端子TST3Pと、接続箱JBの端子TJB3とは、配線WR13とを介して接続される。また、ストリングST1の端子TST1Nと、ストリングST2の端子TST2Nと、ストリングST3の端子TST3Nと、接続箱JBの端子TJBCNとは、配線WR14を介して接続される。以降の説明において、配線WR11と、配線WR12と、配線WR13と、配線WR14とを特に区別しない場合には、配線WR2と記載する。
【0022】
以下、
図5を参照して接続箱JBについて説明する。
図5は、太陽光発電システムSPSの接続箱JBの一例を示す模式図である。
図5に示す通り、この一例では、接続箱JBは、出力開閉器OSWと、逆流防止用ダイオードDbfと、アレイARが備えるストリングSTの数に応じたストリング開閉器SSWとを備える。
出力開閉器OSWとは、ストリングSTが発電した電力をパワーコンディショナPCへ接続するスイッチである。出力開閉器OSWが開閉されることにより、ストリングSTが発電した電力のパワーコンディショナPCへの供給が制御される。例えば、出力開閉器OSWとは、落雷やアレイARの破損に伴い、パワーコンディショナPCが破損することを防ぐブレーカーである。
【0023】
ストリング開閉器SSWとは、ストリングSTと、出力開閉器OSWとを接続するスイッチである。ストリング開閉器SSWが開閉されることにより、ストリングSTが発電した電力の出力開閉器OSWへの供給が制御される。例えば、ストリング開閉器SSWとは、ストリングSTの破損に伴い、パワーコンディショナPCが破損することを防ぐブレーカーである。接続箱JBは、アレイARが備えるストリングSTと同数のストリング開閉器SSWを備える。すなわち、この一例では、接続箱JBは、3つのストリング開閉器SSWを備える。具体的には、接続箱JBは、ストリング開閉器SSW1、ストリング開閉器SSW2、およびストリング開閉器SSW3を備える。以降の説明において、ストリング開閉器SSW1、ストリング開閉器SSW2、およびストリング開閉器SSW3を特に区別しない場合には、総称してストリング開閉器SSWと記載する。
【0024】
ストリング開閉器SSWと、ストリングSTとは、逆流防止用ダイオードDbfを介して接続される。逆流防止用ダイオードDbfとは、逆流防止用ダイオードDbfと接続されるストリングSTが短絡すること等によって生じる過電流保護として機能するダイオードである。
【0025】
図5に示す通り、出力開閉器OSWの端子TOSW1は、接続箱JBの端子TJBPと接続される。これにより、出力開閉器OSWの端子TOSW1は、配線WRPを介してパワーコンディショナPCの端子TPCPと接続される。また、出力開閉器OSWの端子TOSW2は、端子TJBNと接続される。これにより、出力開閉器OSWの端子TOSW2は、配線WRNを介してパワーコンディショナPCの端子TPCNと接続される。
【0026】
また、出力開閉器OSWの端子TOSW4は、接続箱JBの端子TJBCNと接続される。これにより、出力開閉器OSWの端子TOSW4は、配線WR14を介してアレイARが備える各ストリングSTの端子TSTNに接続される。具体的には、
図5に示す通り、端子TOSW4と、端子TST1Nと、端子TST2Nと、端子TST3Nとは、接続される。これにより、ストリングSTの端子TSTNは、接続箱JBを介してパワーコンディショナPCの端子TPCNと接続される。
【0027】
図5に示す通り、ストリング開閉器SSW1の端子TSSW11と、ストリング開閉器SSW2の端子TSSW21と、ストリング開閉器SSW3の端子TSSW31とは、出力開閉器OSWの端子TOSW3と接続される。
また、ストリング開閉器SSW1の端子TSSW12と、ストリングST1とは、逆流防止用ダイオードDbf1を介して接続される。具体的には、ストリング開閉器SSW1の端子TSSW12と、逆流防止用ダイオードDbf1のカソード端子である端子TDbf1kとが接続される。また、逆流防止用ダイオードDbf1のアノード端子である端子TDbf1aと、接続箱JBの端子TJB1とが接続される。
【0028】
また、ストリング開閉器SSW2の端子TSSW22と、ストリングST2とは、逆流防止用ダイオードDbf2を介して接続される。具体的には、ストリング開閉器SSW2の端子TSSW22と、逆流防止用ダイオードDbf2のカソード端子である端子TDbf2kとが接続される。また、逆流防止用ダイオードDbf2のアノード端子である端子TDbf2aと、接続箱JBの端子TJB2とが接続される。
【0029】
また、ストリング開閉器SSW3の端子TSSW32と、ストリングST3とは、逆流防止用ダイオードDbf3を介して接続される。具体的には、ストリング開閉器SSW3の端子TSSW32と、逆流防止用ダイオードDbf3のカソード端子である端子TDbf3kとが接続される。また、逆流防止用ダイオードDbf3のアノード端子である端子TDbf3aと、接続箱JBの端子TJB3とが接続される。
【0030】
[アレイARの発電時の正常動作]
以下、
図6、および
図7を参照してアレイARの具体的な動作について説明する。
図6は、太陽光発電システムSPSの晴天時のクラスタCSの動作の一例を示す構成図である。
図6に示す通り、この一例では、ストリングSTが正常に動作しており、かつストリングSTが備える各セルCLが日射光等の光の照射に伴い、電力を発電している場合の動作の一例を示す模式図である。
クラスタCSが備える集合セルCLSが発電する発電量は、日射強度により大きく左右される。この一例では、集合セルCLSには、集合セルCLSが発電するために十分な日射光が照射されている。
【0031】
集合セルCLS3が発電することに伴い、集合セルCLS3には、電流I32が流れる。具体的には、集合セルCLS3の端子TCLS3Nから複数のセルCLを介して端子TCLS3P方向へ電流I32が流れる。すなわち、
図6に示す通り、クラスタCS3には、電圧V13が生じる。具体的には、クラスタCS3の端子TCS3Nから端子TCS3P方向へ電圧V13が生じる。より具体的には、クラスタCS3の端子TCS3Nと、端子TCS3Pとでは、端子TCS3Pの方が、電位が高い。
【0032】
この場合、バイパスダイオードDp3には、逆電源電圧が印加される。そのため、クラスタCS3の端子TCS3Nから流入する電流I31は、バイパスダイオードDp3の端子TD3aから端子TD3kへわずかに流れる漏れ電流を除いて、集合セルCLS3へ流れる。ただし、バイパスダイオードDp3の端子TD3aから端子TD3kへわずかに流れる漏れ電流は、集合セルCLS3へ流れる電流と比較して十分に小さい。このため、電流I31は、ほとんどが集合セルCLS3へ流れる。
【0033】
また、集合セルCLS2が発電することに伴い、集合セルCLS2には、電流I22が流れる。具体的には、集合セルCLS2の端子TCLS2Nから複数のセルCLを介して端子TCLS2P方向へ電流I22が流れる。すなわち、
図6に示す通り、クラスタCS2には、電圧V12が生じる。具体的には、クラスタCS2の端子TCS2Nから端子TCS2P方向へ電圧V12が生じる。より具体的には、クラスタCS2の端子TCS2Nと、端子TCS2Pとでは、端子TCS2Pの方が、電位が高い。
【0034】
この場合、バイパスダイオードDp2には、逆電源電圧が印加される。そのため、クラスタCS2の端子TCS2Nから流入する電流I21は、バイパスダイオードDp2の端子TD2aから端子TD2kへわずかに流れる漏れ電流を除いて、集合セルCLS2へ流れる。ただし、バイパスダイオードDp2の端子TD2aから端子TD2kへわずかに流れる漏れ電流は、集合セルCLS2へ流れる電流と比較して十分に小さい。このため、電流I21は、ほとんどが集合セルCLS2へ流れる。
【0035】
また、集合セルCLS1が発電することに伴い、集合セルCLS1には、電流I12が流れる。具体的には、集合セルCLS1の端子TCLS1Nから複数のセルCLを介して端子TCLS1P方向へ電流I12が流れる。すなわち、
図6に示す通り、クラスタCS1には、電圧V11が生じる。具体的には、クラスタCS1の端子TCS1Nから端子TCS1P方向へ電圧V11が生じる。より具体的には、クラスタCS1の端子TCS1Nと、端子TCS1Pとでは、端子TCS1Pの方が、電位が高い。
【0036】
この場合、バイパスダイオードDp1には、逆電源電圧が印加される。そのため、クラスタCS1の端子TCS1Nから流入する電流I11は、バイパスダイオードDp1の端子TD1aから端子TD1kへわずかに流れる漏れ電流を除いて、集合セルCLS1へ流れる。ただし、バイパスダイオードDp1の端子TD1aから端子TD1kへわずかに流れる漏れ電流は、集合セルCLS1へ流れる電流と比較して十分に小さい。このため、電流I11は、ほとんどが集合セルCLS1へ流れる。
【0037】
次に、
図7を参照して、ストリングST全体の動作について説明する。
図7は、太陽光発電システムSPSの晴天時のストリングSTの動作の一例を示す構成図である。上述したように、この一例では、ストリングSTは、直列に接続されたクラスタCS1と、クラスタCS2と、クラスタCS3とが含まれる。つまり、ストリングSTの両端である端子TSTNから端子TSTPには、クラスタCS1と、クラスタCS2と、クラスタCS3とにかかる電圧を足した電圧を生成する。具体的には、ストリングSTには、クラスタCS3に印加される電圧V13と、クラスタCS2に印加される電圧V12と、クラスタCS1に印加される電圧V11とを足し合わせた電圧V1を生成する。
すなわち、電圧V1は、V1=V11+V12+V13によって示される。ここで、この一例では、クラスタCS1と、クラスタCS2と、クラスタCS3とは、同一の構成を有しており、電圧V11と、電圧V12と、電圧V13とは同じ電圧である。これにより、電圧V1は、V1=V11×3によって示される。
【0038】
なお、上述では、ストリングSTには、3つのクラスタCSが接続される場合について説明したが、これに限られない。ストリングSTには、1つ以上のクラスタCSが含まれていればよい。つまり、ストリングSTが生成する電圧V1はV1=発電可能なセルCLを含むクラスタCSの数×発電可能なセルCLを含むクラスタCSが生成する電圧によって示される。
【0039】
[アレイARに影が生じている時の正常動作]
以下、
図8、および
図9を参照してアレイARの具体的な動作について説明する。
図8は、太陽光発電システムSPSの影が生じている時のクラスタCSの動作の一例を示す構成図である。
図8に示す通り、この一例では、クラスタCS1、クラスタCS2、およびクラスタCS3が正常に動作している。また、この一例では、クラスタCS2が備える各セルCLのうち、一部が日射光等の光の照射に伴い発電しており、一部が曇天、または遮蔽物等によって影が生じることにより、発電していない場合の動作の一例を示す模式図である。
【0040】
図8に示す通り、この一例では、クラスタCS1と、クラスタCS3とには、発電するに際して必要な光の照射が十分に得られている。また、この一例では、集合セルCLS2のセルCLの一部には、影の影響により、発電するに際して必要な光の照射が十分に得られていない。これにより、集合セルCLS2のうち、一部のセルCLは発電しない。以降の説明において、影の影響により発電しないセルCLを非発電セルSCLと記載する。
【0041】
図8に示す通り、集合セルCLS2には、セルCLと、非発電セルSCLとが含まれる。これにより、集合セルCLS2に流れる電流I22が制限される。すなわち、集合セルCLS2は、発電するに際して必要な光の照射が十分に得られていない場合、抵抗が大きくなる。したがって、クラスタCS2の端子TCS2Pと、端子TCS2Nとでは、端子TCS2Pの方が、電位が低くなる。具体的には、
図8に示す通り、クラスタCS2には、端子TCS2Pから端子TCS2N方向へ電圧V12が生じる。
【0042】
この場合、バイパスダイオードDp2には、順電源電圧が印加される。そのため、バイパスダイオードDp2がON状態となり、クラスタCS3からクラスタCS2へ流入する電流I33は、バイパスダイオードDp2を通過する。つまり、
図8に示す通り、バイパスダイオードDp2を通過する電流IDp2と、集合セルCLS2に流れる電流I22との和によって示される電流と、電流I21と、電流I23とは、同じ大きさの電流である。
また、バイパスダイオードDp2がON状態となることにより、クラスタCS2が生成する電圧V12は、バイパスダイオードDpのON電圧とほぼ同じ大きさの電圧である。
つまり、電圧V12は、V12≒1Vである。
【0043】
次に、
図9を参照して、ストリングST全体の動作について説明する。
図9は、太陽光発電システムSPSの影が生じている時のストリングSTの動作の一例を示す構成図である。
上述したように、影が生じている場合、ストリングSTが生成する電圧V1は、V1=V11+V13−V12によって示される。ここで、この一例では、クラスタCS1と、クラスタCS2と、クラスタCS3とは、同一の構成を有しており、電圧V11と、電圧V13とは同じ電圧値である。ここで、電圧V1の大きさをV1とし、電圧V11の大きさをV11とし、電圧V12の大きさをV12とした場合、V1と、V11と、V12との関係は式(1)によって示される。
【0045】
なお、上述では、ストリングSTには、3つのクラスタCSが接続される場合について説明したが、これに限られない。ストリングSTには、1つ以上のクラスタCSが含まれていればよい。つまり、ストリングSTに印加される電圧V1は、V1=発電可能なセルCLを含むクラスタCSの数×発電可能なセルCLを含むクラスタCSが生成する電圧−非発電セルSCLを含むクラスタCSの数×非発電セルSCLを含むクラスタCSに生じる電圧によって示される。具体的には、電圧V1の大きさは、V1=発電可能なセルCLを含むクラスタCSの数×発電可能なセルCLを含むクラスタCSが生成する電圧値−非発電セルSCLを含むクラスタCSの数×バイパスダイオードDpのON電圧値によって示される。
【0046】
また、上述では、非発電セルSCLが発電しない要因が日射光等の照射光の不足による場合について説明したが、これに限られない。非発電セルSCLが発電しない要因は、日射光等の照射光の不足のほか、セルCL自体の破損等の故障であってもよい。
【0047】
[バイパスダイオードDp開放故障時かつ影が生じている時の動作]
以下、
図10を参照してアレイARの具体的な動作について説明する。
図10は、太陽光発電システムSPSのバイパスダイオードDpが開放故障しており、かつクラスタCSの影が生じている時の動作の一例を示す構成図である。
図10に示す通り、この一例では、クラスタCS2が備える各セルのうち、一部が日射光等の光の照射に伴い電力を発電しており、一部が影の影響により電力を発電していない場合の動作の一例を示す模式図である。また、この一例では、クラスタCS2が備えるバイパスダイオードDp2が開放故障している。つまり、バイパスダイオードDp2の端子TD2kと、端子TD2aとが接続されておらず、開放状態である。
【0048】
上述したように、集合セルCLS2には、セルCLと、非発電セルSCLとが含まれる。これにより、集合セルCLS2に流れる電流I22が制限される。すなわち、集合セルCLS2は、発電するに際して必要な光の照射が得られない場合、抵抗が大きくなる。
この一例の場合、上述したように、端子TD2kと、端子TD2aとが接続されておらず、開放状態であるため、クラスタCS3からクラスタCS2へ流入する電流I33は、集合セルCLS2へ流れる。すなわち、電流I33が抵抗である集合セルCLS2に流れることで、集合セルCLS2に含まれる各セルCLが高温になる。
【0049】
以降の説明において、発熱した状態のセルCLを異常セルACLと記載する。集合セルCLSに異常セルACLが生じると、セルCL自体が破損する場合がある。具体的には、セルCLが長時間にわたって異常セルACLの状態であると、セルCLが破損、または焼損する場合がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、アレイARが備えるストリングSTのうち、バイパスダイオードDpが開放故障しているクラスタCSを検出する。
【0050】
[領域抽出装置1の構成]
以下、
図11から
図22までを参照して領域抽出装置1の構成について説明する。
図11は、本実施形態における領域抽出装置1の一例を示す模式図である。
図11に示す通り、
図1と比較して、アレイARと各接続箱JBとの接続が解除されている。ファンクションジェネレータ250と、電源装置200とが、配線WR3によって接続される。また、電源装置200と、アレイARに含まれるストリングST1の端子TST1PとストリングST2の端子TST2PとストリングST3の端子TST3Pとの各々と、WR4によって接続される。また、電源装置200と、アレイARに含まれるストリングST1の端子TST1NとストリングST2の端子TST2NとストリングST3の端子TST3Nとの各々とが、WR5によって接続される。また、
図11に示す通り、領域抽出装置1は、撮像部110を備える。撮像部110は、アレイARを撮像し、複数の温度画像を生成する。複数の温度画像には、第1温度画像P1と第2温度画像P2とが含まれる。第1温度画像P1は、アレイARに含まれるストリングST1とストリングST2とストリングST3との各々に電源装置200から、ファンクションジェネレータ250が生成した正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加される前のアレイARの表面の温度分布を示す情報が撮像された画像である。また、第2温度画像P2は、アレイARに含まれるストリングST1とストリングST2とストリングST3との各々に電源装置200から、ファンクションジェネレータ250が生成した正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加された後のアレイARの表面の温度分布を示す情報が撮像された画像である。
【0051】
アレイARと各接続箱JBとが接続されている場合に、接続箱JBを介してアレイARに直流電源PSが印加されることに伴うアレイARの表面の温度の変化について図を参照して説明する。
まず、
図12を参照して直流電源PSと、接続箱JBとの接続について説明する。
図12は、本実施形態における直流電源PSと、接続箱JBとの構成の一例を示す構成図である。
図12に示す通り、接続箱JBと、直流電源PSとは、配線WR2を介して接続される。具体的には、直流電源PSの負極の端子である端子TPSNと、接続箱JBの正極の端子である端子TJBPとが配線WRPを介して接続される。また、直流電源PSの正極の端子である端子TPSPと、アレイARの負極の端子である端子TJBNとが配線WRNを介して接続される。
【0052】
これにより、直流電源PSは、上述において説明したアレイARが発電することにより生じる電圧とは逆の方向に電圧を印加する。具体的には、ストリングST1には、端子TST1Pから端子TST1Nへ電源電圧ApVが印加される。より具体的には、ストリングST1の端子TST1Pと、端子TST1Nとでは、端子TST1Nの方が、電位が高い。また、ストリングST2には、端子TST2Pから端子TST2Nへ電源電圧ApVが印加される。より具体的には、ストリングST2の端子TST2Pと、端子TST2Nとでは、端子TST2Nの方が、電位が高い。また、ストリングST3には、端子TST3Pから端子TST3Nへ電源電圧ApVが印加される。より具体的には、ストリングST3の端子TST3Pと、端子TST3Nとでは、端子TST3Nの方が、電位が高い。
【0053】
[電源装置200から電圧の印加:アレイAR正常時の動作]
次に、
図13を参照して、電源装置200が、ファンクションジェネレータ250が生成した正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVをアレイARに印加した場合のストリングSTの動作について説明する。
図13は、本実施形態における電源装置200がアレイARに含まれるストリングSTに電圧を印加した場合のストリングSTの構成の詳細な一例を示す構成図である。
図13に示す通り、この一例では、クラスタCS1、クラスタCS2、およびクラスタCS3が備える各バイパスダイオードDpが正常に動作している。また、ストリングSTの端子TSTPと接続されるクラスタCS1の端子TCS1PからストリングSTの端子TSTNと接続されるクラスタCS3の端子TCS3Nへ電源装置200から正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加される。具体的には、クラスタCS1の端子TCS1Pと、クラスタCS3の端子TCS3Nとでは、端子TCS3Nの方が、電位が高い。
また、この一例では、クラスタCSが備える集合セルCLSには、集合セルCLSが発電するために必要最低限の日射光が照射されている。
【0054】
図13に示す通り、電源装置200から正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加されることに伴い、クラスタCS3には、電流I31が周期的に流入する。
図13に示す通り、クラスタCS3の端子TCS3Nと、端子TCS3Pとでは、端子TCS3Nの方が、電位が高い。これにより、バイパスダイオードDp3には、順電圧が周期的に印加される。すなわち、電流I31は、バイパスダイオードDp3と、集合セルCLS3とを通過する。また、上述したように、集合セルCLS3が発電することに伴い、集合セルCLS3には、電流I32が流れる。具体的には、集合セルCLS3の端子TCLS3Nから複数のセルCLを介して端子TCLS3P方向へ電流I32が流れる。つまり、
図13に示す通り、クラスタCS3からクラスタCS2へ流れる電流I33の大きさをI33とし、電流I31の大きさをI31とし、電流I32の大きさをI32とし、電流IDp3の大きさをIDp3とした場合、I31と、I32と、I33と、IDp3との関係は、式(2)によって示される。
【0055】
I31=I33=IDp3+I32…(2)
【0056】
図13に示す通り、電源装置200から正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加されることに伴い、クラスタCS3には、電流I31が周期的に流入する。
図13に示す通り、クラスタCS3の端子TCS3Nと、端子TCS3Pとでは、端子TCS3Nの方が、電位が高い。これにより、バイパスダイオードDp3には、順電圧が周期的に印加される。すなわち、電流I31は、バイパスダイオードDp3と、集合セルCLS3とを通過する。つまり、
図13に示す電流I31の大きさをI31とし、バイパスダイオードDp3を通過する電流IDp3の大きさをIDp3とした場合、IDp3と、I31との関係は、式(3)によって示される。
【0058】
図13に示す通り、電源装置200から正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加されることに伴い、クラスタCS2には、クラスタCS3から電流I21が周期的に流入する。つまり、
図13に示す通り、電流I21の大きさをI21とした場合、I21と、I31との関係は、式(4)によって示される。
【0060】
また、
図13に示す通り、クラスタCS2の端子TCS2Nと、端子TCS2Pとでは、端子TCS2Nの方が、電位が高い。これにより、バイパスダイオードDp2には、順電圧が周期的に印加される。すなわち、電流I21は、バイパスダイオードDp2と、集合セルCLS2とを通過する。つまり、
図13に示す電流I21の大きさをI21とし、バイパスダイオードDp2を通過する電流IDp2の大きさをIDp2とした場合、I21と、IDp2と、I22との関係は、式(5)によって示される。
【0062】
また、上述したように、集合セルCLS2が発電することに伴い、集合セルCLS2には、電流I22が流れる。具体的には、集合セルCLS2の端子TCLS2Nから複数のセルCLを介して端子TCLS2P方向へ電流I22が流れる。つまり、
図13に示す通り、クラスタCS2からクラスタCS1へ流れる電流I23の大きさをI23とし、バイパスダイオードDp2を通過する電流の大きさをIDp2とした場合、I23と、IDp2と、I22との関係式は、式(6)によって示される。
【0064】
図13に示す通り、電源装置200から正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加されることに伴い、クラスタCS1には、クラスタCS2から電流I11が周期的に流入する。つまり、
図13に示す通り、電流I11の大きさをI11とした場合、I11と、I21との関係は、式(7)によって示される。
【0066】
また、
図13に示す通り、クラスタCS1の端子TCS1Nと、端子TCS1Pとでは、端子TCS1Nの方が、電位が高い。これにより、バイパスダイオードDp1には、順電圧が周期的に印加される。すなわち、電流I11は、バイパスダイオードDp1を通過する。つまり、
図13に示す電流I11の大きさをI11とし、電流I12の大きさをI12とし、バイパスダイオードDp1を通過する電流IDp1の大きさをIDp1とした場合、IDp1と、I11との関係は、式(8)によって示される。
【0068】
また、上述したように、集合セルCLS1が発電することに伴い、集合セルCLS1には、電流I12が流れる。具体的には、集合セルCLS1の端子TCLS1Nから複数のセルCLを介して端子TCLS1P方向へ電流I11が流れる。つまり、
図13に示す通り、クラスタCS1から流出する電流I13の大きさをI13とし、クラスタCS1へ流入する電流I11の大きさをI11とした場合、I13と、I11と、I12との関係式は、式(9)によって示される。
【0069】
I13=I11=IDp1+I12…(9)
【0070】
つまり、ストリングSTを流れる各電流の関係は、式(10)によって示される。
【0071】
I31=I33=I21=I23=I11=I13…(10)
【0072】
これにより、上述した通り、ストリングSTが正常に動作しており、かつストリングSTが備える各セルCLが日射光等の光の照射に伴い、電力を発電している場合の動作と、各クラスタCSが備える各バイパスダイオードDpが正常に動作しており、かつストリングSTに電源装置200から正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加される場合とは、各クラスタCSに流れる電流I11、電流I12、電流I13、電流I21、電流I22、電流I23、電流I31、電流I32、および電流I33の方向が同じである。これに対し、ストリングSTが正常に動作しており、かつストリングSTが備える各セルCLが日射光等の光の照射に伴い、電力を発電している場合の動作と、各クラスタCSが備える各バイパスダイオードDpが正常に動作しており、かつストリングSTに電源装置200から正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加される場合とは、印加される電圧V11、電圧V12、および電圧V13の極性が反転する。
【0073】
すなわち、ストリングSTが正常に動作しており、かつストリングSTが備える各セルCLが日射光等の光の照射に伴い、電力を発電している場合の動作では、ストリングSTが発電素子であることに対し、各クラスタCSが備える各バイパスダイオードDpが正常に動作しており、かつストリングSTに電源装置200から変調された電源電圧ApVが印加される場合の動作では、ストリングSTは、負荷である。
【0074】
[電源装置200から電圧の印加:バイパスダイオードDp故障時の動作]
以下、
図14を参照して、電源装置200が、ファンクションジェネレータ250が生成した正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVをアレイARに印加した場合のストリングSTの動作について説明する。
図14は、本実施形態における電源装置200がアレイARに電圧を印加した場合のストリングSTの構成の詳細な一例を示す構成図である。
図14に示す通り、この一例では、クラスタCS2が備えるバイパスダイオードDp2が開放故障している。つまり、バイパスダイオードDp2の端子TD2kと、端子TD2aとが接続されておらず、開放状態である。
また、この一例では、クラスタCSが備える集合セルCLSには、集合セルCLSが発電するために必要最低限の日射光が照射されている。
【0075】
ここで、
図13に示すストリングSTの構成の一例と、
図14に示すストリングSTの構成の一例とでは、クラスタCS2の構成のみが異なるため、クラスタCS1と、クラスタCS3の説明については割愛する。以下、
図14を参照してクラスタCS2の動作について詳細に説明する。
【0076】
図14に示す通り、電源装置200から正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加されることに伴い、クラスタCS2には、クラスタCS3から電流I21が周期的に流入する。上述した通り、この一例では、端子TD2kと、端子TD2aとが開放状態である。すなわち、クラスタCS3から流入した電流I21は、集合セルCLS2へ流入する。ここで、電流I21の大きさをI21とし、電流I22の大きさをI22とした場合、I21と、I22との関係は、式(11)によって示される。
【0078】
図14に示す通り、電源装置200から正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加されることに伴い、クラスタCS2の端子TCS2Nと、端子TCS2Pとでは、端子TCS2Nの方が、電位が高くなる。これにより、集合セルCLS2の端子TCLS2Pから端子TCLS2N方向へ電圧V12が周期的に印加される。
ここで、以降の説明において、集合セルCLS2が消費する電力を電力PW2と記載する。この場合、集合セルCLS2に含まれる各セルCLに電圧V12が印加されるため、電力PW2の大きさをPW2とし、集合セルCLS2に印加される電圧V12の大きさをV12とした場合、PW2と、V12と、I22との関係は、式(12)によって示される。
【0080】
式(12)に示す通り、電圧V12と、電流I22との大きさに伴い、電力PW2が変化する。電力PW2の値が大きいほど、クラスタCS2が消費する電力が大きいことを示す。つまり、電力PW2の値が大きいほど、クラスタCS2が高温になる。
【0081】
ここで、バイパスダイオードDp2が接続されている場合、バイパスダイオードDp2には、順方向電圧である電圧V12が印加される。これにより、バイパスダイオードDp2がON状態となる。すなわち、電圧V12がバイパスダイオードDp2のON電圧に抑制される。この一例では、バイパスダイオードDp2のON電圧が1V未満である。つまり、電圧V12が1V未満に抑制されることに伴い、電力PW2は、バイパスダイオードDp2が接続されていない場合と比較して小さい値を示す。つまり、バイパスダイオードDp2が接続されている場合には、クラスタCS2は、高温にならない。
【0082】
これに対し、バイパスダイオードDp2が接続されていない場合、集合セルCLS2には、電圧V12が印加される。これにより、バイパスダイオードDp2が印加される場合とは異なり、電圧V12がバイパスダイオードDp2のON電圧に抑制されない。つまり、バイパスダイオードDp2が接続されている場合と比較して、電力PW2は、大きい値を示す。つまり、バイパスダイオードDp2が接続されていない場合には、クラスタCS2は高温になる。
【0083】
すなわち、アレイARに電源装置200から正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVを印加することにより、アレイARに照射される光の強弱にかかわらず、バイパスダイオードDp故障により生じるアレイARの表面が周期的に温度上昇している領域を検出することができる。
【0084】
なお、上述した電源装置200からアレイARに印加する正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVは、ApV=バイパスダイオードDpが正常なクラスタCSの数×バイパスダイオードDpが正常なクラスタCSに生じる電圧+バイパスダイオードDpが開放故障しているクラスタCSの数×バイパスダイオードDpが開放故障しているクラスタCSに生じる電圧の条件を満たす電圧値であれば、いずれの電圧値であってもよい。
【0085】
[領域抽出装置1の構成]
以下、
図15を参照して、領域抽出装置1の構成について説明する。
図15は、本実施形態における領域抽出装置1の構成の一例を示す構成図である。
図15に示す通り、領域抽出装置1は、情報処理部100と、撮像部110と、記憶部120とを備える。
撮像部110は、電源装置200がストリングSTに正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVを印加する前のアレイARを撮像し、撮像したアレイARの表面の温度分布情報を示す第1温度画像P1を生成する。また、撮像部110は、電源装置200がストリングSTに正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVを印加した後のアレイARを撮像し、撮像したアレイARの表面の温度分布情報を示す第2温度画像P2を生成する。撮像部110とは、例えば、赤外線カメラなどの熱画像を造り出す装置である。熱画像を造り出す装置は、あらゆる物体から放射される赤外線エネルギーを、レンズによって赤外線検出素子に結像し、電気変換された値をデジタル演算処理をすることで温度に変換する。撮像部110は、生成した第1温度画像P1と、第2温度画像P2とを情報処理部100へ供給する。以降の説明において、第1温度画像P1と、第2温度画像P2とを特に区別しない場合には、総称して温度画像Pと記載する。
図16を参照して、アレイARに含まれるストリングSTに印加される変調された電源電圧ApVについて説明する。前述したように変調された電源電圧ApVは、周期的に変化する。
図16は、本実施形態における変調された電源電圧ApVの一例を示す図である。
図16において、横軸は時間(Timet)であり、縦軸は電圧(VoltageV)であり、Tは周期であり、V0は印加電圧であり、T0はパルス幅である。印加電圧V0の一例は、60Vである。
図16の上図に示す通り、変調された電源電圧ApVの一例は、正弦波である。正弦波で表される変調された電源電圧ApVの一例は、周波数F(=1/T)が0.01Hz、0.005Hz、0.003Hzなどである。
図16の下図に示す通り、変調された電源電圧ApVの一例は、方形波である。方形波で表される変調された電源電圧ApVの一例は、周波数F(=1/T)が0.01Hz、0.005Hz、0.003Hzなどであり、デューティ比(T0/T)が0.3、0.5などである。
【0086】
以下、
図17を参照して温度画像Pに撮像されるアレイARの一例について説明する。
図17は、本実施形態における第1温度画像P1の一例を示す模式図である。
図17に示す通り、温度画像Pには、アレイARの全体が撮像される。具体的には、撮像部110は、クラスタCS1、クラスタCS2、およびクラスタCS3を含むストリングSTの全体を撮像する。すなわち、この一例では、アレイARには、ストリングSTが含まれ、ストリングSTには、クラスタCS1、クラスタCS2、およびクラスタCS3が含まれる。
この一例では、領域抽出装置1が、温度が上昇しているか否かを判定するために抽出する検出対象の領域である検査対象領域CARが温度画像Pに撮像されるアレイAR全体である。
【0087】
この一例では、撮像部110がアレイARを撮像し、第1温度画像P1を撮像した後に、電源装置200からアレイARに正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加される。つまり、この一例では、撮像部110は、第1温度画像P1を生成した後に、第2温度画像P2を生成する。つまり、撮像部110は、互いに異なる時刻において第1温度画像P1と、第2温度画像P2とを生成する。
【0088】
なお、上述では、検査対象領域CARが温度画像Pに撮像されるアレイAR全体である場合について説明したが、これに限られない。温度画像Pには、複数のアレイARが撮像されていてもよい。この場合、領域抽出装置1は、既知の方法によって、温度画像Pに撮像されるアレイARに基づいて、撮像されるアレイARの位置や、検査対象領域CARの位置等を検出してもよい。
【0089】
図15に戻り、記憶部120には、閾値情報THが記憶される。閾値情報THとは、バイパスダイオードDpが開放故障することにより、アレイARの表面が温度上昇する場合は、バイパスダイオードDpが故障していると判定する周波数領域の信号(周波数スペクトラム)の値を示す情報である。
【0090】
情報処理部100は、CPU(Central Processing Unit)を備えており、取得部101と、導出部102と、領域抽出部103とを備える。
取得部101は、撮像部110から第1温度画像P1と、第2温度画像P2とを取得する。取得部101は、取得した第1温度画像P1と、第2温度画像P2とを導出部102へ供給する。
【0091】
導出部102は、取得した第1温度画像P1と、第2温度画像P2とに基づいて、第1温度画像P1と、第2温度画像P2とに示されるアレイARの表面温度の温度分布の差などの統計量を表した画像(以下「差分画像」という)を導出する。
【0092】
次に、
図18と、
図19とを参照して、導出部102が導出する差分領域DARの一例について説明する。
図18は、本実施形態における差分領域の一例を示す図である。
この一例では、アレイARに含まれるストリングSTのうち、クラスタCS2のバイパスダイオードDp2が開放故障している。すなわち、バイパスダイオードDp2が開放故障していることに伴い、第1温度画像P1と、第2温度画像P2とでは、第2温度画像P2に示されるアレイARの表面の温度分布情報の方が高い。導出部102は、
図18に示す通り、導出部102は、第1温度画像P1、および第2温度画像P2に撮像されるアレイARの全体を差分領域DARとして抽出する。
導出部102は、差分領域DARにおいて、第1温度画像P1に撮像されるアレイARの全体の表面温度の温度分布と、第2温度画像P2に撮像されるアレイARの全体の表面温度の温度分布との差を表した差分画像を導出する。具体的には、導出部102は、第1温度画像P1から、画素毎の温度情報(以下「基準画像」という)を読み出す。また、導出部102は、第2の温度画像のうち、k番目(kは、k>1の整数)の温度画像(以下「第k温度画像」という)から、画素毎の温度画像(以下「k画像」という)を読み出す。導出部102は、導出した基準画像とk画像とに基づいて、k画像の画素毎の温度情報と基準画像の画素毎の温度情報との差分などの統計量を導出する。以下、統計量の一例として、k画像の画素毎の温度情報と基準画像の画素毎の温度情報との差分を導出する場合について説明を続ける。
【0093】
図19を参照して、差分画像について具体的に説明する。
図19は、本実施形態における差分画像の導出の一例を示す模式図である。
図19によれば、k画像と基準画像とは、縦m個、横n個(m,nは、m>0,n>0の整数)の画素を含む。
図19では、基準画像において、縦m番目、横n番目の画素の温度を、T0m,nと記載する。k画像において、縦m番目、横n番目の画素の温度を、Tkm,nと記載する。差分画像において、縦m番目、横n番目の画素における温度の差分情報を、ΔTkm,nと記載する。
導出部102は、第k温度画像の画素毎の温度情報Tk1,1〜温度情報Tkm,nを導出し、導出した第k温度画像の画素毎の温度情報Tk1,1〜温度情報Tkm,nに基づいて、k画像を生成する。導出部102は、第1温度画像P1の画素毎の温度情報T01,1〜温度情報T0m,n(m,nは、m>0,n>0の整数)を導出し、導出した第1温度画像P1の画素毎の温度情報T01,1〜温度情報T0m,nに基づいて、基準画像を生成する。
導出部102は、k画像の画素毎の温度情報Tk1,1〜温度情報Tkm,nの各々と基準画像の画素毎の温度情報T01,1〜温度情報T0m,nの各々とに基づいて、k画像の画素毎の温度情報Tk1,1〜温度情報Tkm,nの各々と基準画像の画素毎の温度情報T01,1〜温度情報T0m,nの各々との差分情報ΔTk1,1〜差分情報ΔTkm,nを導出する。導出部102は、k画像の各画素又は基準画像の各画素のうち、対応する画素に、導出した差分情報ΔTk1,1〜差分情報ΔTkm,nを表した差分画像を導出する。
【0094】
図20は、本実施形態における太陽電池モジュールの表面の温度変化の一例を示す図である。
図20において、横軸は経過時間を示し、縦軸は温度差(差分情報)を示す。ここで、経過時間は、kに対応付けることができる。
図20の左図は、日射強度600W/m2〜700W/m2において、太陽電池モジュールに、変調された電源電圧ApVとして、正弦波が印加された場合における、故障していないストリングSTに含まれる正常クラスタ(Normal cluster)の表面温度の変化と、開放故障しているストリングSTに含まれる異常クラスタ(Abnormal cluster)の表面温度の変化とを、印加電圧が50Vと60Vとについて示す。
図20の左図によれば、印加電圧を大きくするほど、温度変化が大きくなっている。画素における、経過時間と差分情報との関係についても、
図20の左図と同様の傾向である。
図20の右図は、日射強度500W/m2〜600W/m2において、太陽電池モジュールに、変調された電源電圧ApVとして、方形波が印加された場合における、故障していないストリングSTに含まれる正常クラスタ(Normal cluster)の表面温度の変化と、開放故障しているストリングSTに含まれる異常クラスタ(Abnormal cluster)の表面温度の変化とを、印加電圧が50Vと60Vとについて示す。
図20の右図によれば、印加電圧による温度上昇傾向に大きな差が見られない。画素における、経過時間と差分情報との関係についても、
図20の右図と同様の傾向である。
【0095】
図20の左図と右図との間で異なる点は日射強度であり、日射強度により太陽電池モジュールの短絡電流(short-circuit current: ISC)が変化する。このため、600W/m2〜700W/m2の高日射においては、50Vと60Vで太陽電池モジュールに流れる電流値の変化が大きいため、表面温度の変化として現れている。しかし、それよりも低い500W/m2〜600W/m2の日射においては、ISCが下がり、50Vと60Vで太陽電池モジュールに流れる電流値の変化が小さいため、表面温度の変化として現れていない。
また、
図20の左図と右図とともに、印加電圧にかかわらず、故障していない正常クラスタ(Normal cluster)と、開放故障している異常クラスタ(Abnormal cluster)との間では、表面温度の変化が大きく異なる。また、開放故障している異常クラスタ(Abnormal cluster)の表面温度の変化には、印加電圧の周波数の変動が温度変化として現れている。このため、印加電圧が50V以下である場合でも、開放故障している異常クラスタ(Abnormal cluster)を判別することができる。導出部102について説明を続ける。
【0096】
さらに、導出部102は、導出した複数の差分情報に基づいて、画素毎に複数(k個)の差分情報をフーリエ変換することによって、周波数領域の信号(周波数スペクトル)を導出する。導出部102は、導出した周波数領域の信号を、領域抽出部103へ出力する。
図21は、本実施形態における太陽電池モジュールの表面の温度変化の周波数スペクトルの一例を示す図である。
図21において、横軸は周波数を示し、縦軸は周波数スペクトルを示す。
図21の上図は、印加電圧波形が正弦波での異常クラスタ、正常クラスタ、正常モジュールにおいて各点(画素)での温度変化の周波数スペクトルを示す。
図21の下図は、各印加電圧の波形(正弦波、方形波、一定)による周波数スペクトルの比較を示す。
図21の上図によれば、異常クラスタの温度上昇は印加電圧の波形の周波数に追従し、その周波数成分が強く出ることがわかる。
図21の上図では、印加電圧波形が正弦波である場合の周波数スペクトルを示したが、印加電圧波形が方形波である場合でも、同様の傾向が得られる。
図21の下図によれば、正弦波と方形波とを比較すると正弦波の方が、周波数成分がより強く出ている。これは、方形波の方が正弦波より高調波成分を多く含んでいるためである。なお、一定電圧では異常クラスタでの周波数スペクトルは正常クラスタ、正常モジュールと差異がない。
【0097】
領域抽出部103は、導出部102が出力した周波数領域の信号を取得し、取得した周波数領域の信号に基づいて、周波数領域の信号の振幅が、記憶部120に記憶されている閾値情報TH以上である画素や、印加電圧と同じ周波数を有する画素を抽出する。領域抽出部103は、抽出した画素に該当する太陽電池モジュールにおける領域を抽出することによって、高温領域HARを抽出する。
図22は、本実施形態における高温領域HARの一例を示す模式図である。
領域抽出部103は、周波数領域の信号の振幅が、閾値情報TH以上である画素や、印加電圧と同じ周波数を有する画素を一又は複数抽出する。領域抽出部103は、抽出した一又は複数の画素の各々に対応する差分画像における領域を求めることによって、高温領域HARを抽出する。
上述したように、この一例では、ストリングSTに含まれるクラスタCS2のバイパスダイオードDp2が開放故障している。これにより、クラスタCS1、およびクラスタCS3と比較してクラスタCS2の温度が高くなる。
【0098】
以下、
図23を参照して領域抽出装置1の動作について説明する。
図23は、本実施形態における領域抽出装置1の動作の一例を示す流れ図である。
撮像部110は、電源装置200がアレイARに正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVを印加する前のアレイARを撮像し、第1温度画像P1を生成する(ステップS100)。撮像部110は、第1温度画像P1を取得部101へ供給する(ステップS110)。
また、撮像部110は、電源装置200がアレイARに正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVを印加した後のアレイARを撮像し、第2温度画像P2を生成する(ステップS120)。撮像部110は、生成した第2温度画像P2を取得部101へ供給する(ステップS130)。
【0099】
取得部101は、撮像部110から第1温度画像P1を取得する(ステップS140)。また、取得部101は、撮像部110から第2温度画像P2を取得する(ステップS150)。取得部101は、取得した第1温度画像P1と、第2温度画像P2とを導出部102へ供給する(ステップS160)。
【0100】
導出部102は、取得部101から第1温度画像P1と、第2温度画像P2とを取得する(ステップS170)。
導出部102は、取得した第1温度画像P1と、第2温度画像P2とに基づいて、第1温度画像P1に示されるアレイARの表面温度の温度分布と、第2温度画像P2に示されるアレイARの表面温度の温度分布との差分情報を表した差分画像を導出する(ステップS180)。具体的には、導出部102は、第1温度画像P1と、第k温度画像との各々から、画素毎の温度情報を読み出す。導出部102は、第1温度画像P1の画素毎の温度を示した基準画像と第k温度画像の画素毎の温度を示したk画像とを導出する。導出部102は、導出した基準画像とk画像とに基づいて、k画像の画素毎の温度情報と基準画像の画素毎の温度情報との差分情報を導出し、導出した差分情報を表した差分画像を導出する。
導出部102は、導出した複数の差分画像に基づいて、画素毎にk個の差分情報をフーリエ変換することによって、周波数領域の信号を導出し、導出した周波数領域の信号を、領域抽出部103へ供給する(ステップS190)。
【0101】
領域抽出部103は、導出部102から周波数領域の信号を取得する(ステップS200)。領域抽出部103は、記憶部120から閾値情報THを読み出す(ステップS210)。領域抽出部103は、周波数領域の信号と、閾値情報THとに基づいて、周波数領域の信号の振幅が、閾値情報THより高い画素に該当する高温領域HARを抽出する(ステップS220)。
【0102】
以上説明したように、本実施形態の領域抽出装置1は、情報処理部100と、撮像部110と、記憶部120とを備える。
撮像部110は、バイパスダイオードDpと、1つ以上のセルCLとが並列に接続されたクラスタCSが直列に複数接続されたアレイARを撮像して、アレイARの表面の温度分布情報を示す温度画像Pを生成する。撮像部110は、生成した温度画像Pを情報処理部100へ供給する。
情報処理部100は、取得部101と、導出部102と、領域抽出部103とをその機能部として備える。取得部101は、アレイARに正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加されることに伴う温度変化を示す複数の画像であって、互いに異なる時刻において撮像部110が撮像した第1温度画像P1と、第2温度画像P2とを取得する。取得部101は、取得した第1温度画像P1と、第2温度画像P2とを導出部102へ供給する。
【0103】
導出部102は、取得部101が取得した第1温度画像P1に示される温度分布情報と、第2温度画像P2に示される温度分布情報との差分情報に基づいて、差分画像を導出する。導出部102は、導出した複数の差分画像に基づいて、画素毎にk個の差分情報をフーリエ変換することによって、周波数領域の信号を導出し、導出した周波数領域の信号を、領域抽出部103へ供給する。
領域抽出部103は、導出部102から周波数領域の信号を取得し、取得した周波数領域の信号と、閾値情報THとに基づいて、周波数領域の信号の振幅が、閾値情報THより高い画素に該当する高温領域HARを抽出する。
【0104】
このように構成することによって、本実施形態の領域抽出装置1は、アレイARが撮像された温度画像Pに基づいて、バイパスダイオードDpの故障に伴うアレイARの表面温度が上昇している領域を抽出することができる。
従来の技術では、クラスタCSが備えるバイパスダイオードDpが開放故障することに伴い、接続箱JBが備える逆流防止用ダイオードDbfの電流値の上昇、または逆流防止用ダイオードDbf自体の温度の上昇を検出することにより、アレイARの故障をストリングST毎に検出していた。
【0105】
しかしながら、この技術では、アレイARに含まれる複数のストリングSTのうち、いずれのストリングSTが故障しているかを検出することができても、ストリングSTのうち、いずれのクラスタCSが故障しているかを検出する手間を低減することができない場合があった。特に、メガソーラー等のように、1つのストリングSTに多数のクラスタCSが含まれているアレイARが多数設置されている場合には、バイパスダイオードDpの故障を検出する手間を低減することができない場合があった。
【0106】
また、従来の技術では、バイパスダイオードDpの故障を逆流防止用ダイオードDbfの状態によって検出するため、アレイARと接続される接続箱JBの回路と、アレイARの位置の対応を示す情報が求められる場合があった。
また、従来の技術では、太陽電池モジュールの温度上昇が、バイパス回路の開放故障を要因とするのか、バイパス回路の開放故障以外を要因とするのか区別ができない場合があった。また、屋外においては、太陽電池モジュールの温度の正確な検出が難しい場合があった。
【0107】
本実施形態の領域抽出装置1よれば、撮像部110が、電源装置200が正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVをアレイARに印加する前の第1温度画像P1と、印加した後の第2温度画像P2とを撮像する。領域抽出装置1は、第1温度画像P1に示されるアレイARの表面温度の温度分布と、第2温度画像P2に示されるアレイARの表面温度の温度分布との差分情報を表した差分画像を導出する。領域抽出装置1は、導出した複数の差分画像に基づいて、画素毎にk個の差分情報をフーリエ変換することによって、周波数領域の信号を導出する。領域抽出装置1は、周波数領域の信号と、閾値情報THとに基づいて、周波数領域の信号の振幅が、閾値情報THより高い画素に該当する高温領域HARを抽出する。
このように構成することによって、太陽電池モジュールの温度上昇が、バイパス回路の開放故障を要因とするのか、バイパス回路の開放故障以外を要因とするのか区別できる。つまり、周波数領域の信号の振幅が閾値情報THより高い画素に該当するアレイARの領域は、周期的に温度が変化している領域である。アレイARには、正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加されるため、周期的に温度が変化する領域は、バイパス回路の開放故障を要因とすると判断できる。このため、太陽電池モジュールの温度上昇が、バイパス回路の開放故障を要因とする判定精度を向上できる。
また、このように構成することによって、領域抽出装置1は、検査対象領域CARを面的に検出することができる。
検査対象領域CARを面的に検出することにより、アレイARの故障領域を、ストリングST等の回路毎ではなく、検査対象領域CARに含まれる高温領域HARとして面的に抽出することができる。
つまり、本実施形態の領域抽出装置1によれば、温度画像Pに基づいて高温領域HARを面的に抽出することにより、バイパスダイオードDpの開放故障を検出するに際して、従来の技術で必要であった、逆流防止用ダイオードDbfの電流値、または温度を検出するセンサを設置する手間を低減することができる。
【0108】
また、本実施形態の領域抽出装置1によれば、温度画像Pに基づいて高温領域HARを面的に抽出することにより、高温領域HARが抽出されるアレイARの領域のうち、いずれのクラスタCSにバイパスダイオードDpの開放故障が生じているかを抽出することができる。
つまり、本実施形態の領域抽出装置1は、温度画像Pに基づいて高温領域HARを抽出することにより、バイパスダイオードDpの開放故障を検出するに際して、電源装置200と、アレイARの位置の対応を示す情報を用いる手間を低減することができる。
すなわち、本実施形態の領域抽出装置1によれば、バイパスダイオードDpの開放故障を検出する手間を低減することができる。
【0109】
なお、上述では、第1温度画像P1がアレイARの電力出力端TSPに変調された電源電圧ApVが印加される前に撮像部110が撮像した温度画像Pである場合について説明したが、これに限られない。第1温度画像P1は、アレイARの電力出力端TSPに変調された電源電圧ApVが印加された直後の温度画像Pであってもよい。具体的には、第1温度画像P1は、変調された電源電圧ApVが印加されることに伴う、アレイARの温度の上昇が少ないアレイARが撮像された温度画像Pであれば、いずれの時刻に撮像された温度画像Pであってもよい。
すなわち、第1温度画像P1が、変調された電源電圧ApVが印加されることに伴う、アレイARの温度の上昇が少ないアレイARが撮像された温度画像Pであれば、アレイARの電力出力端TSPに変調された電源電圧ApVが印加される回数が複数回であってもよい。
【0110】
また、上述では、クラスタCSが備える集合セルCLSには、集合セルCLSが発電するために十分な日射光が照射されている場合であって、かつクラスタCS2が備えるバイパスダイオードDp2が開放故障している場合について説明したが、これに限られない。
本実施形態の領域抽出装置1は、クラスタCSが備える各セルに対して日射光等の光の照射の強弱にかかわらず、バイパスダイオードDpが故障していることに伴い、アレイARの表面が温度上昇している領域を検出することができる。つまり、領域抽出装置1は、領域抽出装置1が備えるクラスタCSの一部が影の影響により、わずかな電力を発電している場合でも、バイパスダイオードDpが開放故障してアレイARの表面が温度上昇している領域を検出することができる。
【0111】
[電源装置200から電圧の印加:バイパスダイオードDp故障時および影が生じている時の動作]
以下、
図24を参照して、電源装置200がアレイARに、ファンクションジェネレータ250が生成した正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVを印加した場合のストリングSTの動作について説明する。
図24は、本実施形態におけるアレイARに電源装置200が正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVを印加した場合の影が生じている時のストリングSTの構成の詳細な一例を示す構成図である。
図24に示す通り、この一例では、クラスタCS2が備える各セルのうち、一部が日射光等の光の照射に伴い電力を発電しており、一部が影の影響により、電力を発電していない場合の動作の一例を示す模式図である。また、この一例ではクラスタCS2が備えるバイパスダイオードDp2が開放故障している。つまり、バイパスダイオードDp2の端子TD2kと、端子TD2aとが接続されておらず、開放状態である。
【0112】
上述したように、集合セルCLS2には、セルCLと、非発電セルSCLとが含まれる。これにより、集合セルCLS2に流れる電流I22が制限される。すなわち、集合セルCLS2は、発電するに際して必要な光の照射が得られない場合、抵抗が大きくなる。
この一例の場合、上述したように、端子TD2kと、端子TD2aとが接続されておらず、開放状態であるため、クラスタCS3からクラスタCS2へ流入する電流I33は、集合セルCLS2へ流れる。すなわち、電流I33が抵抗である集合セルCLS2に流れることで、集合セルCLS2に含まれる各セルCLが周期的に高温になる。
つまり、アレイARに電源装置200から正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVを印加することにより、アレイARに照射される光の有無にかかわらず、バイパスダイオードDp故障により生じるアレイARの表面が周期的に温度上昇している領域を検出することができる。
【0113】
なお、上述した電源装置200からアレイARに印加する正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVは、ApV=発電可能なセルCLを含むクラスタCSの数×発電可能なセルCLを含むクラスタCSに生じる電圧+非発電セルSCLを含むクラスタCSの数×非発電セルSCLを含むクラスタCSに生じる電圧の条件を満たす電圧値であれば、いずれの電圧値であってもよい。
【0114】
上述したように、集合セルCLS2には、セルCLと、非発電セルSCLとが含まれる。これにより、集合セルCLS2に流れる電流I22が制限される。すなわち、集合セルCLS2は、発電するに際して必要な光の照射が得られない場合、抵抗が大きくなる。
この一例の場合、上述したように、端子TD2kと、端子TD2aとが接続されておらず、開放状態であるため、クラスタCS3からクラスタCS2へ流入する電流I33は、集合セルCLS2へ流れる。すなわち、電流I33が抵抗である集合セルCLS2に流れることで、集合セルCLS2に含まれる各セルCLが周期的に高温になる。
【0115】
また、上述では、第2温度画像P2が、正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVがアレイARに印加された後に、撮像部110が撮像した温度画像Pである場合について説明したが、これに限られない。第2温度画像P2は、正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加中の温度画像Pであってもよい。具体的には、第2温度画像P2は、正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加されることに伴うアレイARの温度の上昇の経過があるアレイARが撮像された温度画像Pであれば、いずれの時刻に撮像された温度画像Pであってもよい。
すなわち、第2温度画像P2は、正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加されることに伴うアレイARの温度の上昇の経過があるアレイARが撮像された温度画像Pであれば、アレイARの電力出力端TSPに変調された電源電圧ApVが印加される回数が複数回であってもよい。
【0116】
また、上述では、撮像部110が、第1温度画像P1を撮像した後、第2温度画像P2を撮像する場合について説明したが、これに限られない。第1温度画像P1が、正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加されることに伴う、アレイARの温度の上昇が少ないアレイARが撮像された温度画像Pであって、かつ第2温度画像P2は、正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加されることに伴うアレイARの温度の上昇の経過があるアレイARが撮像された温度画像Pであれば、第1温度画像P1より以前に第2温度画像P2が撮像されていてもよい。
【0117】
以上説明したように、第1温度画像P1は、アレイARに、正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加される前、または印加された直後の温度画像Pである。また、第2温度画像P2は、アレイARに、正弦波、方形波などの周期的に変化する変調された電源電圧ApVが印加中の温度画像Pである。取得部101は、第2温度画像P2が撮像された時刻より以前に第1温度画像P1を取得する。
【0118】
これにより、本実施形態の領域抽出装置1は、アレイARに変調された電源電圧ApVが印加されることに伴う温度の上昇が少ない第1温度画像P1を撮像する。また、本実施形態の領域抽出装置1は、第1温度画像P1を撮像した後、アレイARに変調された電源電圧ApVが印加されることに伴うアレイARの温度の上昇の経過がある第2温度画像P2を撮像する。
【0119】
ここで、第1温度画像P1と、第2温度画像P2を撮像するに際して、第2温度画像P2を先に撮像した場合を一例に説明する。この場合、第2温度画像P2を撮像した直後では、アレイARの電力出力端TSPに変調された電源電圧ApVが印加されることに伴うアレイARの温度の上昇が生じている。つまり、第1温度画像P1を撮像するに際して、アレイARの温度の上昇が少ない状態となるまで時間を要する場合がある。
【0120】
すなわち、本実施形態の領域抽出装置1によれば、第1温度画像P1と、第2温度画像P2とのうち、第1温度画像P1を撮像することにより、アレイARの温度の上昇が少ない状態となるまで要する時間を低減することができる。つまり、本実施形態の領域抽出装置1によれば、第1温度画像P1と、第2温度画像P2とのうち、第1温度画像P1を撮像することにより、バイパスダイオードDpの開放故障を検出する時間を低減することができる。
【0121】
また、上述では、撮像部110が検査対象領域CARであるアレイAR全体を撮像する場合について説明したが、これに限られない。撮像部110がアレイARを撮像し、生成される温度画像Pには、少なくとも2つのクラスタCSが撮像されていればよい。
【0122】
以上説明したように、撮像部110は、アレイARのうち、少なくとも2つのクラスタCSを撮像し、温度画像Pを生成する。
これにより、本実施形態の領域抽出装置1は、2つのクラスタCSの温度画像Pを撮像する。領域抽出装置1は、撮像した2つのクラスタCSの温度画像Pのうち、第1温度画像P1に示されるアレイARの表面温度の温度分布と、第2温度画像P2に示されるアレイARの表面温度の温度分布との差分情報を表した差分画像を導出する。領域抽出装置1は、導出した複数の差分画像に基づいて、画素毎にk個の差分情報をフーリエ変換することによって、周波数領域の信号を導出する。領域抽出装置1は、周波数領域の信号と、閾値情報THとに基づいて、周波数領域の信号の振幅が、閾値情報THより高い画素に該当する高温領域HARを抽出する。このように構成することによって、本実施形態の領域抽出装置1は、アレイARの電力出力端TSPに変調された電源電圧ApVが印加されることに伴う2つのクラスタCSの温度の変化を比較することができる。つまり、本実施形態の領域抽出装置1は、少なくとも2つのクラスタCSが撮像されていれば、高温領域を抽出することにより、バイパスダイオードDpの開放故障の有無を検出することができる。すなわち、本実施形態の領域抽出装置1は、多数のアレイARが撮像された画像であっても、少なくとも2つのクラスタCSが検出できる温度画像Pであれば、バイパスダイオードDpの開放故障の有無を検出することができる。
つまり、本実施形態の領域抽出装置1によれば、バイパスダイオードDpの開放故障を検出する手間を低減することができる。
【0123】
なお、上記の各実施形態における領域抽出装置1が備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
【0124】
なお、領域抽出装置1が備える各部は、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、領域抽出装置1が備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0125】
また、領域抽出装置1が備える各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0126】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0127】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。