【実施例】
【0054】
(実施例1)
実施例1では、難聴及び/又は耳鳴りの疑いのある患者1に対して、純音聴力検査を行
い、聴力のタイプ、程度及び形態を(先述したように)定量化した。耳鳴りマッチ(TM
)、耳鳴りラウドネスマッチ(TLM)及び最小マスキングレベル(MML)を含む心理
音響評価を(先述したように)行った。
【0055】
患者1のオージオグラムの結果は、
図2から見て取ることができる(×印は左耳、○印
は右耳に対応している)。
図2は、多少簡略化された難聴プロフィールによって表された
両側性ノイズによる感音難聴を示している。右耳は、4kHzで25dBの損失を示し、
左耳は4kHzで30dBの損失を示している。患者1の耳鳴りの音響心理評価の結果(
図2に図示せず)は、左耳では4kHzで20dBの純音にマッチする耳鳴りがあり、右
耳では耳鳴りがなかった。
【0056】
本発明の実施形態によれば、帯域ブーストフィルタは、上記の難聴及び耳鳴り評価に基
づく特定周波数(
図3に例示あり)に較正されており、耳にその後伝達されることになる
音響信号に適用される。それぞれの耳は異なる難聴プロフィールを有するため、異なる形
でカスタマイズされた信号がそれぞれの耳に対して生成される。本例では、右耳に耳鳴り
は診られないため、カスタマイズされた信号は左耳のみに対して生成される。オージオグ
ラムに基づいて、ブースト率及び中心周波数(Fc)を算出することができ、これらを帯
域ブーストフィルタの設計に用いることができる。本例では、ブースト率は、+25dB
ブーストするために設定され、中心周波数(Fc)は4kHz(これは、この場合は耳鳴
りにマッチする周波数でもある)と特定される。フィルタの帯域幅は、中心周波数から1
オクターブ上及び下に規定される。この場合、フィルタによるブーストのための高域カッ
トオフ周波数及び低域カットオフ周波数の間の帯域幅は、2kHz〜8kHz(すなわち
、6kHzの範囲)である。フィルタの傾きは、(立ち上がり端及び立ち下り端の両方で
)25dB/オクターブと規定される。こうしたタイプのフィルタを上記の特定の難聴プ
ロフィールで苦しむ患者に適用することは、患者に知覚されるノイズのスペクトル強度を
正常化するという効果がある。純白色ノイズがこのフィルタを通じて患者1に伝達されて
も、患者1はノイズを純白色ノイズとして知覚する。
(実施例2)
実施例2では、難聴及び/又は耳鳴りの疑いのある患者2に対して、純音聴力検査を行
い、聴力のタイプ、程度及び形態を(先述したように)定量化した。耳鳴りマッチ(TM
)、耳鳴りラウドネスマッチ(TLM)及び最小マスキングレベル(MML)を含む心理
音響評価を(先述したように)行った。
【0057】
患者2のオージオグラムの結果は、
図4から見て取ることができる。
図4は、片側性の
高周波感音難聴を示している。左耳は、2kHzで50dB、4kHzで55dB及び6
kHzでdB60の難聴を示している。右耳は、正常聴力を示している(なお、
図4のオ
ージオグラムには図示されていない)。耳鳴りの音響心理評価の結果(
図4に図示せず)
は、左耳では5kHzで40dBの純音にマッチする耳鳴りがあり、右耳では耳鳴りが見
られなかった。
【0058】
本発明の実施形態によれば、帯域ブーストフィルタは、上記の難聴及び耳鳴り評価に基
づく高周波シェルフフィルタ(
図5には、本例に特有ではない例が示されている)として
機能するように較正されている。患者2は片側性高周波難聴を示しているため、この場合
は、中心周波数は3dBのコーナー周波数、すなわち、難聴が3dBロールオフ(減衰)
される最初の点と規定される。ブースト率は、最大で+45dBブーストするように規定
され、中心周波数(Fc)(3dBのコーナー周波数とする)は1kHzと特定され、帯
域幅は1kHz〜人の聴力の限界(約20kHz)まで広がるものと規定される。フィル
タの中心周波数から傾きは、45dB/3オクターブ(1kHz〜8kHzの難聴の平均
)と規定され、これは、15dB/オクターブに等しい。こうしたタイプのフィルタを上
記の特定の難聴プロフィールで苦しむ患者に適用することは、患者に知覚されるノイズの
スペクトル強度を正常化するという効果がある。純白色ノイズがこのフィルタを通じて患
者1に伝達されても、患者2はノイズを純白色ノイズとして知覚する。
【0059】
実施例3では、難聴及び/又は耳鳴りの疑いのある患者3に対して、純音聴力検査を行
い、聴力のタイプ、程度及び形態を(先述したように)定量化した。耳鳴りマッチ(TM
)、耳鳴りラウドネスマッチ(TLM)及び最小マスキングレベル(MML)を含む心理
音響評価を(先述したように)行った。
【0060】
患者3のオージオグラムの結果は、
図6から見て取ることができる(×印は左耳、○印
は右耳に対応している)。
図6は、左側が感音難聴、右側が混合難聴である両側性混合難
聴を示している。これは、
図1のオージオグラムによって示されているものより比較的複
雑な難聴プロフィールである。左耳は、8kHzで25dB、2kHzで20dB、25
0Hzで15dBの難聴を示している。右耳は、8kHzで45dB、2kHzで30d
B、500Hzで50dB、250Hzで40dBの難聴を示している。耳鳴りの音響心
理評価の結果(
図6に図示せず)は、左耳では4kHzで15dBの純音にマッチする耳
鳴りがあり、右耳では2kHzで25dBの耳鳴りがあった。
【0061】
本発明の実施形態によれば、上記の難聴及び耳鳴り評価に基づいて、第1帯域ブースト
フィルタは、左耳に伝達されることになる音響信号の特定周波数をブーストするように較
正され、第2帯域ブーストフィルタは、右耳に伝達されることになる音響信号のハイ/ロ
ー・シェルフィルタ(図示せず)として機能するように較正されている。左耳のオージオ
グラムに基づいて、左耳用帯域ブーストフィルタのブースト率及び中心周波数(Fc)を
算出することができる。本例では、ブースト率は、+30dBブーストするために設定さ
れ、中心周波数(Fc)は4kHz(これは、この場合は耳鳴りにマッチする周波数でも
ある)と特定される。右耳については、(3dBのコーナー周波数として設定される)第
1Fcは1kHz(これは、低周波の難聴が3dB超減衰される最初の点である)と特定
され、(別の3dBのコーナー周波数として設定される)第2Fcは6kHz(これは、
高周波の難聴が3dB超減衰される最初の点である)と特定される。低周波シェルフィル
タの傾きは、15dB/2オクターブ(1kHz〜250Hzの難聴の平均)、すなわち
、7.5dB/オクターブに規定され、高周波シェルフィルタの傾きは、20dB/半オ
クターブ(6kHz〜8kHzの難聴の平均)、すなわち、40dB/オクターブに規定
される。したがって、2kHzの周波数で、+15dBのブーストが得られることになる
。こうしたタイプのフィルタを上記の特定の難聴プロフィールで苦しむ患者に適用するこ
とは、患者の両耳で知覚されるノイズのスペクトル強度を正常化するという効果がある。
純白色ノイズがこのフィルタを通じて患者3に伝達されても、患者3はノイズを純白色ノ
イズとして知覚する。
(実施例4)
本発明の実施形態に従った方法及び装置を、持続する難治性耳鳴りの治療及び症状緩和
のために使用する効果についての臨床パイロット研究を行った。研究結果を以下に説明す
る。
(題材及び方法)
研究の目的は、持続する難治性耳鳴りの自覚的及び他覚的な評価に対する、聴覚及び触
覚による多モードの神経調節の効果を判定することであった。これは、16週にわたる研
究であった。被験者はスクリーニングを4週間、治療を10週間を受け、さらに治療後2
週間の追跡検査を受けた。この試験は、4週間の導入期間のベースライン数値を定め、1
0週間にわたる治療の結果をベースライン数値と比較して、試験期間中の装置の使用及び
耐性を評価することを目的としたものであった。
【0062】
検査は、耳鼻咽喉科学会、欧州耳科・神経耳科学会、英国王立医学協会:耳科学、 喉
頭科学及び鼻科学、プロスパメニエール学会、アイルランド耳鼻咽喉科学会及び米国聴覚
学会の一員であるシニアコンサルタントの耳鼻咽喉科・耳鼻喉外科医の臨床監視下で、I
rish Society of Hearing Aid Audiologists
(ISHAA)(仮訳:アイルランド補聴器/オージオロジスト学会)及びIrish
Academy of Audiology(IAA)(仮訳:アイルランド聴覚学校
)に登録している臨床オージオロジストによって行われた。
【0063】
研究の被験者の適任性を、以下に挙げる合格/不合格基準によって判定した。患者は、
装置の合計使用が最低でも1日30分間、すなわち、1週毎に3.5時間であり、刺激レ
ベルはゼロ超であり、検査日時の可能なタイミングを受け入れる、という条件を満たした
場合に適任と見なされた。ベースラインインタビューは、新たな治療を開始してから4週
間以内に行う必要があった。
【0064】
合格基準:65歳未満;難治性自覚的耳鳴りを6ヶ月超煩っている;年齢又はノイズが
関与した感音難聴に関連の耳鳴り;英語の読み書き能力あり;全16週間にわたる継続期
間の研究への参加可能/希望、インフォームドコンセントあり。
【0065】
不合格基準:口腔又は舌の潰瘍;口腔粘膜又は口腔内の重大な病気(これらの症状のさ
らなる悪化のリスクを低下するため);(一般的に聴覚過敏症が見られる変動性難聴患者
による)メニエール病(音の感受性のさらなる悪化を防止するため);耳鳴り又は聴力に
関する現在の医療訴訟事件(利害の対立を防止するため);耳鳴りの何らかの治療を継続
中(介入独自の効果を正確に測定するため);ペースメーカー(磁気干渉の可能性から)
。
(不適任性及び辞退)
この特定の研究に加わるには適任でないとプレスクリーンで見なされた参加者は、かか
りつけ医(GP)に回されて正式な断り状を受け取る。本研究の開始後に中途辞退する被
験者については、治療企図(ITT)法によって分析した。患者は、研究への参加は完全
に自主的であり、理由を言うことなく何時でも研究を自由に中途辞退することができた。
募集工程は、患者に参加を熟考するための十分な時間を与えた。
(偏見の最小化)
無記名の参加や、他覚的及び自覚的なゴールド標準の結果測定を用いることによって、
偏見を最小化した。
(治療)
前治療段階は、治療の開始前の4週間の導入期で構成された。この段階では、2週間毎
、すなわち、0週、2週及び4週にベースライン測定を行いサンプリングした。治療段階
は、10週間の期間で構成された。この段階では、被験者は、自宅で、推奨されたとおり
1日60分間装置を使用した。全ての被験者について、装置の使用のログが埋め込みSD
リーダカードに残された。先述したように、他覚的及び自覚的な試験を、エンロールされ
た検査において、2週間毎に研究期間にわたって行った。
(結果測定の評価及びコンプライアンス)
重要な結果測定は、研究期間を通して臨床環境における「レビュー」検査で評価された
。ログ技法や、アンケートによって研究終了時に評価された許容度を用いて、被験者のコ
ンプライアンスを測定した。
(自覚的結果測定)
耳鳴り障害目録(THI)は、耳鳴りの測定のための25項目の問診表である。被験者
は、2週間毎及びレビュー検査直前にTHI問診表に記入した。THIのスコアは「改善
」から「悪化」まで5段階の重症度に分類される。
(他覚的結果測定)
耳鳴りマッチ(TM)は、耳鳴りの周波数の高低を判定する音響心理評価である。耳鳴
りラウドネスマッチ(TLM)は、耳鳴りの強度を判定する音響心理評価である。最小マ
スキングレベル(MML)は、耳鳴り[45]をマスキングするために必要な最小レベル
のノイズを判定する音響心理評価である。TM、TLM及びMMLによる評価を2週間毎
にレビュー検査で患者に行った。
(器具)
本研究では、本発明の実施形態に従った聴覚刺激装置及び触覚刺激装置を使用した。こ
の非侵襲性の装置は、ハイファイヘッドホンを通じて聴覚刺激を耳に伝達すると同時に、
32個の経皮的電気刺激器のアレイを通じて触覚パターンを舌に伝達することができる。
【0066】
本研究では、(本明細書中では「有色ノイズ」と呼称される)広域スペクトル音を含ん
だ聴覚刺激と、リラックスさせる音楽とを伝達するために装置を使用した。これらは患者
のオージオグラムに対応するように帯域ブーストフィルタにかけられたものである。聴覚
刺激と同時に、装置は舌の前面及び背面の経皮的電気刺激を与えた。ここで、電気刺激は
、聴覚刺激の瞬間周波数領域係数を表す空間時間的に符号化されたパターンであった。
(結果及び分析)
(分析人口及びコンプライアンス)
治療企図(ITT)に基づく人口から得られたデータに対して統計分析を行った。被験者
のデータは、以下のコンプライアンス及び最低適用条件が満たされた場合に適格であるも
のと見なされた:1日最低30分間又は毎週3.5時間の合計使用量;ゼロ超の最小レベ
ルの刺激;予定の日時から1週間以内のレビュー検査。
(人口統計およびベースライン特性)
前治療段階において、ベースライン測定及び基本人口統計データ(年齢/性別)を得た
。
【0067】
以下に、それぞれの特性のサマリ表及び数値を示す。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
グループの平均年齢は47歳であった。最年少の患者は21歳で、最年長は64歳であ
った。患者の半数超(57%)は50歳未満(63%)であった。34人(63%)の患
者は男性で20人(37%)の患者は女性であった。
(難聴プロフィール)
BS EN 60645−1(IEC 60645−1)及び関連のBS EN IS
O 389(ISO 389)シリーズ規格に従って較正したGN Otometric
s Madsen社のAstera臨床オージオメータを用いて、左耳及び右耳の難聴プ
ロフィールをそれぞれ測定した。難聴を、正常、軽度、軽度〜軽中度、軽中度、軽中度〜
高度、高度の重症度に分類した。重症度の分布を以下の表に要約した。
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
大半のケースは、スクリーニングでの難聴の重症度は軽度〜軽中度の範囲であった。高度
と診断されたケースは非常に少なかった。
(耳鳴りプロフィール)
スクリーニングではTHI、MML、TLM及びTMのスコアを用いて患者の耳鳴りプ
ロフィールを測定した。サマリ統計を以下の表に示す。
【0074】
【表6】
【0075】
(分析)
THI、MML、TLM及びTMのスコアの経時的変化を測定することによって、持続
する難治性耳鳴りの他覚的及び自覚的な評価に対する、聴覚及び触覚による多モードの神
経調節の効果を判定した。スコアは、スクリーニングV0、ベースラインV2、そして検
査期間の間2週間毎に得た。ベースラインV2(4週/治療1週目)及びV7(14週/
治療10週目)の主効果の比較と、ベースラインV2及びV4(8週/治療4週目)の暫
定効果の比較とを行った。被験者がまだ治療を受けていないスクリーニング検査V0及び
ベースラインV2の比較によって、プラセボ/文脈効果を調べた。治療の最終週V7(1
4週/治療10週目)及びV8(16週/治療後2週目)の比較によって、治療の短期的
な効果を測定した。
【0076】
ボックスプロット及び繰り返し分散分析(ANOVA)を全ての試験測定に対して行い
、統計上の有意性を判定した。対t検定を行って、主効果(ベースラインV2及びV7[
14週/治療10週目]の間の変化)の、暫定効果(ベースラインV2及びV4[8週/
治療4週目]の間の変化)との比較を行った。
【0077】
V0及びベースラインV2の測定値を比較することによって、潜在的なプラセボ/文脈
効果を予備的に分析した。これは、介入は実行されないが、耳鳴りの自覚性により何らか
の有効効果が見られ得る4週間の導入期であった。対t検定では、スクリーニング検査V
0及びベースラインV2を比較し、潜在的なプラセボ/文脈効果のエビデンスを検査した
。
(最小マスキングレベル[MML])
MMLのスコアの経時的変化を
図7に示した。繰り返しANOVA全体が統計学的に有
意であった(p値<0.001)。また、対t検定によるベースラインV0及びV7(1
4週/治療10週目)の比較も有意であった(p値<0.001)。MMLスコアは、ベ
ースラインV2の平均値47.4(SD[標準偏差]=2.54、95%Cl[95%信
頼限界]:42.3〜52.6、N[数]=39)からV7(14週/治療10週目)の
38.8(SD=2.7、95%CI:33.4〜43.34、N=39)に低下した。
また、暫定効果(ベースラインV2からV4[8週/治療4週目]までの間のMMLの平
均変化)も有意であり(p値=0.0088)、ベースラインV0の48.15(SD=
2.69、95%CI:42.66〜53.64、N=33)からV4(8週)の43.
79(SD=3.13、95%CI:37.4〜50.16、N=33)まで低下した。
MMLスコアにはプラセボ/文脈効果のいくつかのエビデンスがあったが、有意ではなか
った(p値=0.01)。スクリーニング検査V0及びベースラインV2の間で、平均M
MLスコアはV0の50.8(SD=2.3)からV2の46.7(SD=2.2)(N
=54)に変化した。
(耳鳴りラウドネスマッチ[TML])
TLMスコアの経時変化を
図8に示す。繰り返しANOVA全体は統計的に有意であっ
た(p値<0.001)。対t検定によるベースラインV2及びV7(14週/治療10
週目)の比較も有意であった(p値=0.001)。TLMスコアは、ベースラインV2
の平均値45.3(SD=2.5、95%CI:40.2〜50.4、N=39)からV
7(14週/治療10週目)の38.1(SD=2.75、95%CI:32.5〜43
.6、N=33)に低下した。また、暫定効果(ベースラインV2からV4[8週/治療
4週目]までの間のTMLの平均変化)も有意であり(p値=0.045)、ベースライ
ンV2の44.63(SD=2.61、95%CI:39.31〜50、N=33)から
V4(8週/治療4週目)の40.18(SD=3.28、95%CI:33.5〜46
.85、N=33)に低下した。TLMスコアにはプラセボ/文脈効果のエビデンスはな
かった。スクリーニング検査V0及びベースラインV2の間の平均変化は1ポイント未満
の42.9(SD=2.68)から43.4(SD=2.1)までの変化であり、有意で
はなかった。
(耳鳴り障害目録[THI])
THIスコアの経時変化を
図9に示す。繰り返しANOVA全体は統計的に有意であっ
た(p値<0.001)。対t検定によるベースラインV2及びV7(14週/治療10
週目)の比較も有意であると判定された(p値<0.001)。THIスコアは、ベース
ラインV0の平均値34.3(95%CI:27.3〜41.2、N=46)からV7(
14週/治療10週目)の24.9(95%CI:19.8〜30.7、N=42)に低
下した。また、暫定効果(ベースラインV2からV4[8週/治療4週目]までの間のT
HIの平均変化)も有意であり(p値=0.0052)、ベースラインV2の34.42
(95%CI:27.5〜41.3、N=50)からV4(8週/治療4週目)の31.
12(95%CI:24.2〜38.1、N=50)に低下した。THIスコアには大き
なプラセボ/文脈効果が見られた。平均THIスコアはスクリーニング検査V0の41.
1(SD3.04)からベースライン検査V2の34.2(SD3.2)(N=54)ま
で低下し、この変化は統計的に有意であった(p値<0.001)。
(耳鳴りマッチ)
TMスコアの経時変化を
図10に示す。繰り返しANOVA全体で値が低下する傾向が
いくらか見られたが、有意ではなかった。それぞれの検査のサマリ値を以下の表に示す。
【0078】
【表7】
【0079】
(考察)
本研究は、目に見える有効性の早期のエビデンスを実証しており、この新規な介入が耳
鳴り治療における有望な成果であることを示唆している。患者グループは、他覚的測定値
における統計的に有意な平均改善率を示し、ベースライン検査(V2/4週)及び治験終
了時(V7/14週)の間で最小マスキングレベルでは8.6dBの低下、耳鳴りラウド
ネスマッチでは7.2dBの低下を示した。これらの結果は、同様の他覚的測定を用いた
その他の研究(ニューロモニクス療法による2か月で7.68dBの低下)に有利に匹敵
するものである。同様に、患者グループは、THIの自覚的測定においても統計的に有意
な改善を示した。ここで評価されている介入は、その他の治療とは違って、心理学的カウ
ンセリングを含まないことを考慮すれば、これは非常に重要な結果である。これは、その
他の単独(カウンセリングなし)の技術(ANM)が用いられた研究に有利に匹敵する。
【0080】
図11を参照すると、本発明の一実施形態に従ったシステムが示されている。システム
は、刺激伝達機器1100を有する。機器は、接続ケーブル1104によって機器本体1
101に接続された触覚刺激1102と、音響刺激部(図示せず)とを有する。同時かつ
相補的な音響信号及び触覚刺激部駆動信号の再生を、インタフェースボタン1106及び
音量コントロール1108によって制御することができる。本発明の本実施形態では、デ
ジタル信号プロセッサは別個のデジタル信号処理機器(図示)に含まれており、刺激伝達
機器1100は、上記デジタル信号処理機器によって生成された電子ファイルを読み取り
、当該ファイルを音響信号及び複数の触覚刺激部駆動信号に変換し、当該信号を上記音響
伝達部及び上記触覚刺激部1102それぞれに送信するための電子ファイルリーダを有す
る。
【0081】
代替的な実施形態では、システムは、本発明の全ての構成要素を有する単一の機器を有
することができ、デジタル信号プロセッサは、入力音響信号から補正音響信号及び複数の
触覚刺激機器駆動信号を動的かつ同時に生成するように構成されている。
【0082】
本明細書中で本発明を参照して用いられるとき、「含む」、「有する」及びそれらの同
根語は、記載の特徴、整数、ステップ又は構成要素の存在を特定するために使用されるが
、その他の特徴、整数、ステップ、構成要素又はこれらの組み合わせのうち1又は複数の
存在又は追加を否定するものではない。
【0083】
理解されているように、明瞭さのために別の実施形態の文脈で説明されている本発明の
特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて実施することもできる。逆に、明瞭さのた
めに単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は別個に又は適切な副組
み合わせで実施することもできる。