特開2019-194053(P2019-194053A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-194053(P2019-194053A)
(43)【公開日】2019年11月7日
(54)【発明の名称】インホイールモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 7/00 20060101AFI20191011BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20191011BHJP
   H02K 9/197 20060101ALI20191011BHJP
   H02K 9/22 20060101ALI20191011BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20191011BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20191011BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20191011BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20191011BHJP
【FI】
   B60K7/00
   H02K9/19 A
   H02K9/197
   H02K9/22 A
   H02K5/22
   B60L15/20 S
   B60L9/18 P
   B60L3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-88867(P2018-88867)
(22)【出願日】2018年5月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】米盛 敬
(72)【発明者】
【氏名】任田 功
(72)【発明者】
【氏名】平野 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋
(72)【発明者】
【氏名】甲原 靖裕
【テーマコード(参考)】
3D235
5H125
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB25
3D235BB28
3D235CC42
3D235FF33
3D235FF34
3D235FF35
3D235FF43
3D235GA02
3D235GA13
3D235GA59
3D235GA62
3D235GA70
3D235GB22
3D235GB27
3D235GB32
3D235GB35
3D235GB36
3D235HH02
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125FF02
5H125FF22
5H605BB05
5H605BB10
5H605BB17
5H605CC06
5H605CC08
5H605EC08
5H609BB02
5H609BB12
5H609PP06
5H609QQ05
5H609QQ13
5H609RR37
5H609RR52
5H609RR59
5H609RR62
(57)【要約】
【課題】給電線の信頼性と車両の操縦性とを両立することができるインホイールモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】サスペンションを構成するアッパアーム11とロアアーム12との間に枢支され且つタイロッド15の一端部を連結部を介して連結した転舵可能なナックル部材13に支持されるIWM5がホイールを駆動するインホイールモータ駆動装置Dにおいて、IWM5から延びてホイール中心に対してIWM5のタイロッド15の連結部と反対側位置に設置された第1接続部54に至るモータ側給電線51と、サスペンションを収容するホイールハウスの内壁部から延びてアッパアーム11に係止された第2接続部55に至る車体側給電線52と、第2接続部55から車幅方向外向き且つ下方に延びて第1接続部54に至る可撓性の可動給電線53とを有している。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションを構成する上部支持部材と下部支持部材との間に枢支され且つタイロッドの一端部を連結部を介して連結した転舵可能なナックル部材に支持される三相誘導モータがホイールを駆動するインホイールモータ駆動装置において、
前記三相誘導モータから延びて前記ホイール中心に対して前記三相誘導モータの前記タイロッドの連結部と反対側位置に設置されたモータ側接続部に至るモータ側給電線と、
前記サスペンションを収容するホイールハウスの内壁部から延びて前記上部支持部材に係止された車体側接続部に至る車体側給電線と、
前記車体側接続部から車幅方向外向き且つ下方に延びて前記モータ側接続部に至る可撓性の可動給電線とを有することを特徴とするインホイールモータ駆動装置。
【請求項2】
前記可動給電線が、3本のモータ側給電線を1本に束ねた集合電線であることを特徴とする請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項3】
前記モータ側給電線は、前記三相誘導モータの車幅方向内側であって前記サスペンションのキングピン軸に対応する部位から取り出されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項4】
前記三相誘導モータが、車幅方向内側の壁部を有し、
前記モータ側給電線は、前記車幅方向内側の壁部から取り出されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項5】
前記三相誘導モータのステータを収容する収容室に充填された作動液を冷却可能な熱交換器を備えたヒートパイプを有し、
前記熱交換器が、リム内において前記ホイール中心に対して前記モータ側接続部と反対側領域に配設されたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のインホイールモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールのリムの内周側空間に三相誘導モータを備えたインホイールモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の動力の伝達効率を高めることを狙いとして、ホイールのリムの内周側空間内に駆動用電動モータを収容したインホイールモータ駆動装置が知られている。
駆動用電動モータのうち三相誘導モータ(SRモータともいう)は、ステータコイル(固定子)に三相交流電流を流すことで回転磁界を発生させる一方、電磁誘導作用によりロータ(回転子)に誘導電流を発生させる。この回転磁界と誘導電流によって電磁力が生じてロータが回転している。この三相誘導モータは、永久磁石を用いるPMモータに比べて、コギングトルクが発生しない点、空走時の誘導起電力が発生しない点等の優位性があるため、車両用インホイールモータに適している。
【0003】
通常、インホイールモータの給電線は、車載電源から配索された車体側給電線と、インホイールモータから配索されたモータ側給電線とによって形成されている。
車両がバウンド或いはリバウンドした場合やステアリングホイールが操舵された場合、車輪が大きく上下運動或いは回転運動するため、給電線に許容値以上の引張力が作用することがあり、給電線の断線等が懸念される。
そこで、車両の走行状態に伴う車輪の運動に拘らず、給電線の信頼性を確保する技術が提案されている。
【0004】
特許文献1のインホイールモータの配線構造は、車軸支持部に切欠き部を有するインホイールモータ支持部材と、切欠き部を通って端子から引き出された給電線と、端子から引き出された給電線をインホイールモータ支持部材に取り付けるための第1取付部と、第1取付部からの給電線の上下方向位置及び車幅方向位置を規制する給電線の位置規制部材と、位置規制部材によって位置が規制された給電線を車体に取り付けるための第2取付部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−189107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のインホイールモータの配線構造は、給電線の断線等を回避することができ、給電線の信頼性を確保することが可能である。
しかし、特許文献1の技術では、車両の操縦性を悪化させる虞がある。
特許文献1の技術は、給電線が長尺化すると共に給電線の途中部をインホイールモータ支持部材と車体とに取り付けるための第1,第2取付部を夫々設けているため、バネ下重量の増加を招いている。このバネ下重量の増加は、バネ下固有振動数の低下によって車輪の路面追従性を低下させるため、結果的に、乗員による操縦性を阻害することになる。
即ち、インホイールモータ駆動装置において、給電線の信頼性を確保しつつ、同時に車両の操縦性を確保することは容易ではない。
【0007】
本発明の目的は、給電線の信頼性と車両の操縦性とを両立可能なインホイールモータ駆動装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のインホイールモータ駆動装置は、サスペンションを構成する上部支持部材と下部支持部材との間に枢支され且つタイロッドの一端部を連結部を介して連結した転舵可能なナックル部材に支持される三相誘導モータがホイールを駆動するインホイールモータ駆動装置において、前記三相誘導モータから延びて前記ホイール中心に対して前記三相誘導モータの前記タイロッドの連結部と反対側位置に設置されたモータ側接続部に至るモータ側給電線と、前記サスペンションを収容するホイールハウスの内壁部から延びて前記上部支持部材に係止された車体側接続部に至る車体側給電線と、前記車体側接続部から車幅方向外向き且つ下方に延びて前記モータ側接続部に至る可撓性の可動給電線とを有することを特徴としている。
【0009】
このインホイールモータ駆動装置では、前記三相誘導モータから延びて前記ホイール中心に対して前記三相誘導モータの前記タイロッドの連結部と反対側位置に設置されたモータ側接続部に至るモータ側給電線を有しているため、タイロッドとモータ側給電線との干渉を回避することができる。
前記サスペンションを収容するホイールハウスの内壁部から延びて前記上部支持部材に係止された車体側接続部に至る車体側給電線を有しているため、路面からの飛散物による車体側接続部の破損を防止することができる。
前記車体側接続部から車幅方向外向き且つ下方に延びて前記モータ側接続部に至る可撓性の可動給電線を有しているため、別途取付部を必要とすることなく、必要十分な可動給電線を確保することができ、バネ下重量の増加を抑制することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記可動給電線が、3本のモータ側給電線を1本に束ねた集合電線であることを特徴としている。
この構成によれば、可動給電線の取り回しを良好にすることができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記モータ側給電線は、前記三相誘導モータの車幅方向内側であって前記サスペンションのキングピン軸に対応する部位から取り出されていることを特徴としている。
この構成によれば、車輪の転舵に伴うモータ側給電線の回転移動変位を最小限に抑制することができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1又は2の発明において、前記三相誘導モータが、車幅方向内側の壁部を有し、前記モータ側給電線は、前記車幅方向内側の壁部から取り出されていることを特徴としている。
この構成によれば、アウタロータタイプの三相誘導モータであっても、給電線の信頼性と車両の操縦性とを確保することができる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記三相誘導モータのステータを収容する収容室に充填された作動液を冷却可能な熱交換器を備えたヒートパイプを有し、前記熱交換器が、リム内において前記ホイール中心に対して前記モータ側接続部と反対側領域に配設されたことを特徴としている。
この構成によれば、給電線とヒートパイプとの干渉を回避することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインホイールモータ駆動装置によれば、給電線の信頼性と車両の操縦性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1に係るハイブリッド車両のレイアウト図である。
図2】右側前輪を左前方から視た斜視図である。
図3】右側前輪を左後方から視た斜視図である。
図4】右側前輪の左側面図である。
図5】右側前輪の縦断面図である。
図6】インホイールモータを右前方から視た斜視図である。
図7】インホイールモータを左前方から視た斜視図である。
図8】インホイールモータの縦断面図である。
図9】ヒートパイプの説明図である。
図10】ヒートパイプの別の説明図である。
図11】転舵に伴う給電線の変位軌跡の説明図である。
図12】実施例2に係る右側前輪の左側面図である。
図13】実施例2に係る図6相当図である。
図14】実施例2に係る図7相当図である。
図15】実施例2に係る図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
以下、本発明の実施例1について図1図11に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施例の車両Vは、インホイールモータ駆動装置Dが搭載されたハイブリッド自動車である。
インホイールモータ駆動装置Dの説明に当り、車両Vの前提構造について説明する。
この車両Vは、車体前部に内燃機関であるエンジン3が搭載され、主駆動輪である左右1対の後輪2を駆動するFR(Front engine Rear drive)車である。
また、主駆動輪の後輪2は、エンジン3の代わりに主駆動モータ4によっても駆動され、副駆動輪である左右1対の前輪1は、副駆動モータであるインホイールモータ(以下、IWMという)5によって所定の運転領域に駆動されている。
エンジン3と主駆動モータ4は、クラッチ(図示略)を介して締結解除可能に接続されている。
【0018】
エンジン3は、フライホイールを省略したフライホイールレスエンジンに構成され、動力伝達機構6を介して後輪2を駆動している。
動力伝達機構6は、プロペラシャフト6aと、クラッチ6bと、後輪2に車軸(図示略)を介して接続された有段変速機としてのトランスミッション6c等を備えている。
主駆動モータ4は、例えば、48Vで駆動される25kWの永久磁石同期モータ(PMモータ)によって構成され、48Vのバッテリ8(例えば、3.5kWhのリチウムイオンバッテリ等)の電流を変換するインバータ7から交流電流が供給されている。
この主駆動モータ4は、エンジン3と直列に接続され、主駆動モータ4が発生した駆動力は、エンジン3の駆動力と同様に、動力伝達機構6を介して後輪2に伝達される。
IWM5は、例えば、120Vで駆動される17kWの三相誘導モータ(SRモータ)によって構成され、キャパシタ10aの電流を変換するインバータ10dから交流電流が供給されている。
【0019】
制御装置9は、エンジン3、主駆動モータ4及びIWM5を制御している。
図1に示すように、キャパシタ10aの近傍には、電圧変換器である高圧DC/DCコンバータ10bと低圧DC/DCコンバータ10cが夫々配設されている。
これらキャパシタ10a、高圧DC/DCコンバータ10b、低圧DC/DCコンバータ10c、インバータ10dはユニット化され、統合ユニット10を構成している。
【0020】
制御装置9は、切替スイッチ(図示略)によってEVモードが選択されたとき、発進時及び低速走行時、主駆動モータ4のみで車両Vを駆動し、高車速領域である加速走行時、IWM5を作動させて主駆動モータ4とIWM5が協働して車両Vを駆動している。
また、減速時、主駆動モータ4とIWM5は、発電機として機能し、運動エネルギーを回生して電力を生成する。主駆動モータ4によって回生された電力は、バッテリ8に蓄積され、IWM5によって回生された電力は、キャパシタ10aに蓄積されている。
キャパシタ10aの電荷が不足する場合、バッテリ8の電圧を昇圧してキャパシタ10aに充電し、キャパシタ10aの端子間電圧が過剰に上昇した場合、キャパシタ10aの電荷を降圧してバッテリ8に充電している。
【0021】
次に、前輪1及びこの前輪1を支持するフロントサスペンション装置について説明する。
このフロントサスペンション装置は、1対の前輪1に夫々対応して形成されたホイールハウス(図示略)の車幅方向外側に収容されている。
図2図3に示すように、本実施例のフロントサスペンション装置は、ダブルウィッシュボーン型であって、上方車体部材(図示略)に上下回動自在に軸支されたアッパアーム11と、サブフレームの前側部材(図示略)に上下回動自在に軸支されたロアアーム12と、アッパアーム11とロアアーム12とに回転自在に取り付けられたナックル部材13と、上下方向に延びる緩衝装置14等を備えている。
尚、前輪1及びこの前輪1を支持するフロントサスペンション装置は左右対称構造であるため、以下、右側の構造について主に説明する。
また、図において、矢印F方向を前方向とし、矢印L方向を左方向とし、矢印U方向を上方向として説明する。
【0022】
図2図5に示すように、ナックル部材13は、前輪1及びブレーキディスク25等を仮想キングピン軸回りに回転自在に支持している。このナックル部材13は、車幅方向内側に開口された略椀状に形成され、その上端部及び下端部がアッパアーム11とロアアーム12とに夫々軸支されている。緩衝装置14は、ダンパ及びコイルスプリングを備え、それらの上端部がサスタワー(図示略)に固定され、ダンパの下端部がロアアーム12に回転自在に取り付けられている。
このフロントサスペンション装置は、車幅方向に延びるステアリングギアユニット(図示略)、及びこのステアリングギアユニットから車幅方向外側に延びてナックル部材13の前側部分に回動自在な連結部を介して取り付けられたタイロッド15を有している。
ステアリングギアユニットに連動連結されたステアリングホイール(図示略)の操作によってタイロッド15が左右に移動し、ナックル部材13を介して前輪1が転舵される。
【0023】
図4図5に示すように、前輪1は、タイヤ21と、このタイヤ21が装着される筒状のリム22と、このリム22の車幅方向外側に配置され且つ略円盤状のホイールディスク23と、このホイールディスク23の中央部分に複数の締結部材を介して固定される円盤状のハブ24等を備えている。これらリム22、ホイールディスク23、ハブ24等によって前輪1のホイールが構成されている。
ハブ24の車幅方向外側には、中空円盤状のブレーキディスク25が固定されている。
ブレーキキャリパ26は、IWM5の後方に配設されている。
このブレーキキャリパ26は、ナックル部材13の後側部分に固定され、ブレーキディスク25の後側部分を制動可能に構成されている。尚、27は、ブレーキディスク25の車幅方向内側に設けられた遮熱用保護カバーである。
以上により、リム22の径方向内側空間には、IWM5、ブレーキディスク25、ブレーキキャリパ26等が収容されている。
【0024】
次に、インホイールモータ駆動装置Dについて説明する。
インホイールモータ駆動装置Dは、各前輪1に設けられたIWM5と、各IWM5に対応して設けられた冷却機構としてのヒートパイプ40等を備えている。
【0025】
IWM5は、リム22の径方向内側空間において、右側部分がナックル部材13に部分的に囲繞された状態でナックル部材13に支持されている。
このIWM5は、右側端部が有底とされた略筒状のアウタケース31と、このアウタケース31の左側端部を閉塞するリッド32と、固定子であるステータ33と、前輪1を回転駆動する回転子としてのロータ34と、シール部材35を主な構成要素としている。
このIWM5は、ステータ33の径方向内側空間に設けられたロータ34が回転するインナロータタイプの誘導電動機である。
【0026】
図6図8に示すように、アウタケース31の外周壁31cの径方向外側には、上部で且つ仮想キングピン軸に対応した位置に3つの電極端子取出部31u,31v,31wが形成され、前側上下及び後側上下に2対の取付部31dが形成されている。
電極端子取出部31u,31v,31wは、後述するモータ側給電線51が夫々電気的に接続され、2対の取付部31dは、締結部材を介してナックル部材13の左側壁部に夫々締結固定されている。外周壁31cの左端部には、径方向外側に張り出したフランジ部31fが形成され、このフランジ部31fにリッド32が締結固定されている。
【0027】
図8に示すように、アウタケース31の外周壁31cの径方向内側には、ロータ34の周囲を取り囲むようにステータ33が外周壁31cと一体的に形成されている。
ステータ33は、外周壁31cの内周に分布巻により取り付けられたU相コイル、V相コイル及びW相コイルからなるステータコイル33aを有している。
ロータ34は、ロータシャフト34sと、このロータシャフト34sの周囲に分布巻により取り付けられたロータコイル34aを有している。ロータコイル34aとステータコイル33aには、電気絶縁性被覆(例えば、エナメル被覆)が施されている。
ロータコイル34aは、ステータコイル33aが生成する回転磁界により誘導電流が発生するようにステータコイル33aに対向配置されている。
【0028】
ロータシャフト34sは、その軸心延長線上に前輪1の中心が位置するように設けられている。IWM5は、特定の加速走行時に限りアシスト駆動するため、コンパクト化されると共に、減速機構が省略されている。
ロータシャフト34sは、左側部分が左右1対のベアリングb1によってアウタケース31に支持され、右側部分がハブ24に一体形成されたインナレース24aに連結されている。インナレース24aは、ベアリングb2及びアウタレース24bを介してナックル部材13に回転自在に支持されている。
【0029】
図8に示すように、シール部材35は、縦断面略ハット状に形成され、外周壁31cを含むアウタケース31の一部と協働してステータ33を収容するリング状の収容室Rを形成している。このシール部材35は、非磁性体材料(アルミニウム又はカーボン等)で構成され、ステータコイル33aとロータコイル34aとの間を液密状にシールしている。
この収容室Rには、電気絶縁性を有する作動液、例えば、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、がステータコイル33aを全体的に浸漬するために充填されている。
本実施例では、シール部材35が収容室Rの径方向内端壁と左端壁を形成し、アウタケース31が収容室Rの径方向外端壁と右端壁を形成している。
また、シール部材35として、弱磁性体材料であるステンレスを用いることも可能である。
【0030】
次に、冷却機構としてのヒートパイプ40について説明する。
図4図9に示すように、ヒートパイプ40は、パイプ状の上流及び下流通路41,42(還流通路)と、外部への放熱部に相当する熱交換器43と、ステータ33(ステータコイル33a)から受熱する受熱部に相当する収容室R等により構成されている。
このヒートパイプ40では、ステータ33によって加熱された作動液は蒸発潜熱を奪って気化すると共に収容室Rと熱交換器43との間に圧力差が生じるため、気化した作動液は上流通路41を流れて熱交換器43に移動する。熱交換器43では、気化した作動液が凝縮し、等量の凝縮潜熱を放出する。凝縮した作動液は重力により下流通路42を流れて収容室Rに還流される。作動液の加熱及び冷却に応じて蒸発及び凝縮のサイクルが繰り返されている。
【0031】
HFEは、その性質上、粘性が極めて低いため、分布巻により取り付けられた各々のステータコイル33a間に浸入し、浸入した作動液は、ステータコイル33aの表面全域から受熱することにより気化する。HFEの沸点は、約40℃である。
図10に示すように、収容室Rは、ステータコイル33aとの間に微小な隙間が形成されている。ステータコイル33aの左端、右端、及び径方向内側端には、例えば、3mmの隙間が形成され、気化した作動液は、この隙間を通り収容室Rの上端部分に移動している。
【0032】
図4図8図10に示すように、上流通路41は、収容室Rの上端近傍部分に形成された導出部31aから上方に延設され、下流通路42は、収容室Rの下端近傍部分に形成された導入部31bから一旦下側後方に延びた後、上方に延設されている。導入部31bを収容室Rの下端近傍部分に配置することにより、還流された作動液を用いて収容室Rに充填された作動液を攪拌し、冷却機構全体の熱交換効率の向上を図っている。
上流通路41の通路長は、下流通路42の通路長よりも短く形成されている。
上流通路41が長い場合、気化した作動液が熱交換器43に到達する前に凝縮し、上流通路41を逆流する虞があり、ヒートパイプ40の冷却サイクルを循環方向に正常に機能させるためである。
【0033】
図4図5に示すように、熱交換器43は、リム22の内側空間、具体的には、アウタケース31の外周とリム22の内周との間の空間に配置されている。
この熱交換器43は、前輪1のホイール中心(ロータ34の軸心)に対してブレーキキャリパ26と反対側領域、具体的には、ホイール中心よりも前側且つ上側領域に配設されている。熱交換器43の配置スペースを確保すると共に、ブレーキキャリパ26からの受熱を回避するためである。
【0034】
図4図9に示すように、熱交換器43は、上流通路41の下流端に連通され且つ略水平状に前後に延びる上部容積室43aと、下流通路42の上流端に連通され且つ略水平状に前後に延びる下部容積室43bと、上部容積室43aと下部容積室43bとの間を連通し且つ上下に延びる複数の縦通路43cと、複数の縦通路43cに接続された複数の冷却フィン43fを有している。
上部容積室43aは、上部ブラケット44によってナックル部材13の前側上部に支持され(図11参照)、下部容積室43bは、下部ブラケット45によってリッド32の前側部分に支持されている。
【0035】
次に、給電系について説明する。
図2図4図6図7図11に示すように、給電系は、モータ側給電線51と、車体側給電線52と、モータ側給電線51と車体側給電線52を接続する可動給電線53等を備え、車載電源(図示略)からIWM5に電力を供給可能に構成されている。
モータ側給電線51は、取出部31u,31v,31wに連結されたバスバー36u,36v,36wから外周壁31cに沿って夫々後方に延びると共に、IWM5の後端部近傍位置に配置された第1接続部54(モータ側接続部)において3本の給電線が1本に束ねられ、集合電線を構成している。これにより、モータ側給電線51は、前輪1のホイール中心に対してヒートパイプ40と反対側領域に配設されている。
【0036】
車体側給電線52は、ホイールハウスの内壁部から延びてアッパアーム11に係止された第2接続部55(車体側接続部)に連結されている。第2接続部55は、アッパアーム11近傍位置以上の高さ位置に揺動可能に形成されている。
本実施例では、図2図3に示すように、第2接続部55は、アッパアーム11の揺動軸と同軸上に形成された揺動軸を有し、車幅方向に対して揺動自在に構成されている。
可動給電線53は、可撓性材料で形成され、第1,第2接続部54,55に接続可能な集合電線に構成されている。この可動給電線53は、第2接続部55から右側且つ下方に延びた後、上側前方に向けて湾曲した略U字状に形成され、第1接続部54に接続されている。
【0037】
取出部31u,31v,31wが、仮想キングピン軸に対応した位置に配置されている、所謂、モータ側給電線51が、IWM5の左側であって仮想キングピン軸に対応した部位から取り出されているため、前輪1が転舵された場合でも、取出部31u,31v,31wの移動軌跡半径を極力小さくしている。
第2接続部55が、アッパアーム11の揺動軸と同軸上に配設されているため、車両Vのバウンドやリバウンドに拘らず、第2接続部55の揺動により第1,第2接続部54,55の離隔距離を略一定に維持している。
【0038】
図11(a)に示すように、前輪1が左側に転舵されたとき、平面視にて、第1接続部54(取出部31u,31v,31w)が第2接続部55から最も離隔している。
しかし、図11(b)に示す中立状態のとき、可動給電線53が車幅方向に対して略U字状に形成されているため、下端部が上昇変位されることで可動給電線53の転舵追随性を担保している。
図11(c)に示すように、前輪1が右側に転舵されたとき、平面視にて、第1接続部54が第2接続部55に最も接近している。
しかし、第1接続部54がホイール中心に対してタイロッド15と反対側に配設されているため、可動給電線53とタイロッド15の干渉を生じることなく下端部を下降変位させて可動給電線53の転舵追随性を担保している。
【0039】
次に、上記インホイールモータ駆動装置Dの作用、効果について説明する。
このインホイールモータ駆動装置Dでは、IWM5から延びてホイール中心に対してIWM5のタイロッド15の連結部と反対側位置に設置された第1接続部54に至るモータ側給電線51を有しているため、タイロッド15とモータ側給電線51との干渉を回避することができる。サスペンションを収容するホイールハウスの内壁部から延びてアッパアーム11に係止された第2接続部55に至る車体側給電線52を有しているため、路面からの飛散物による第2接続部55の破損を防止することができる。
第2接続部55から車幅方向外向き且つ下方に延びて第1接続部54に至る可撓性の可動給電線53を有しているため、別途取付部を必要とすることなく、必要十分な可動給電線53を確保することができ、バネ下重量の増加を抑制することができる。
【0040】
可動給電線53が、3本のモータ側給電線51を1本に束ねた集合電線であるため、可動給電線53の取り回しを良好にすることができる。
【0041】
モータ側給電線53は、IWM5の車幅方向内側であってキングピン軸に対応する部位から取り出されているため、前輪1の転舵に伴うモータ側給電線51の回転移動変位を最小限に抑制することができる。
【0042】
IWM5のステータ33を収容する収容室Rに充填された作動液を冷却可能な熱交換器43を備えたヒートパイプ40を有し、熱交換器43が、リム22内においてホイール中心に対してモータ側接続部54と反対側領域に配設されたため、給電線51,53とヒートパイプ40との干渉を回避することができる。
【実施例2】
【0043】
次に、実施例2に係るインホイールモータ駆動装置DAについて図12図15に基づいて説明する。
実施例1では、ステータ33の径方向内側空間に設けられたロータ34が回転するインナロータタイプのIWM5であったのに対し、実施例2では、ステータ63の径方向外側に設けられたアウタケース61が回転するアウタロータタイプのIWM5Aである。
尚、実施例1と同様の部材には、同じ符号を付している。
【0044】
図12に示すように、IWM5Aは、リム22の径方向内側空間において、右側部分がナックル部材13に部分的に囲繞された状態でナックル部材13に支持されている。
図13図15に示すように、IWM5Aは、右側端部が有底とされた略筒状のアウタケース61と、このアウタケース61に収容されたインナ部材62と、固定子であるステータ63と、アウタケース61の左端部分を閉塞する端壁部64と、シール部材65を主な構成要素としている。このIWM5Aは、ステータ63の径方向外側に設けられたアウタケース61が回転するアウタロータタイプの誘導電動機である。
【0045】
図15に示すように、アウタケース61は、ロータコイル61aと、略筒状の外周壁61bと、シール部61cと、ロータシャフト61s等を備えている。
ロータコイル61aは、外周壁61bの内周に分布巻により取り付けられている。
このロータコイル61aは、後述するステータコイル63aが生成する回転磁界により誘導電流が発生するようにステータコイル63aに対向配置されている。
外周壁61bの左端部分には、右側部分に比べて大径で且つ左方に延びるシール部61cが形成されている。
【0046】
ロータシャフト61sは、アウタケース61の軸心と同軸状に一体形成され、アウタケース61内(左方)に延びる左半部と、アウタケース61外(右方)に延びる右半部とを有している。ロータシャフト61sは、その軸心延長線上に前輪1Aの中心が位置するように設けられている。
ロータシャフト61sの左半部は、インナ部材62に挿通され、左右1対のベアリングb1を介してインナ部材62に支持されている。
ロータシャフト61sの右半部は、ハブ24に一体形成されたインナレース24aに連結されている。インナレース24aは、ベアリングb2及びアウタレース24bを介してナックル部材13に回転自在に支持されている。
【0047】
図15に示すように、インナ部材62は、略筒状のステータ63と、このステータ63の左端部から径方向外側に張り出した略円環状の端壁部64とを備えている。
ステータ63は、径方向外側部分に分布巻により取り付けられたU相コイル、V相コイル及びW相コイルからなるステータコイル63aを有している。
端壁部64には、径方向内側部分で且つ仮想キングピン軸に対応した位置に3つの電極端子取出部(図示略)が形成され、モータ側給電線51A(図12参照)がバスバー66u,66v,66w(図14参照)を介して夫々電気的に接続されている。
端壁部64の外側端部には、右方に屈曲してシール部61cと対向するシール部64cが形成されている。このシール部64cとシール部61cは、ダストシール67により挟み込まれて液密状に保持されている。前後2対の取付部64dは、ナックル部材13の左側壁部に締結部材を介して端壁部64(インナ部材62)を固定している。
【0048】
シール部材65は、縦断面略ハット状に形成され、端壁部64を含むインナ部材62の一部と協働してステータ63を収容するリング状の収容室RAを形成している。このシール部材65は、非磁性体材料で構成され、ステータコイル63aとロータコイル61aとの間を液密状にシールしている。この収容室RAには、電気絶縁性を有する作動液がステータコイル63aを全体的に浸漬するために充填されている。
本実施例では、シール部材65が収容室RAの径方向外端壁と右端壁を形成し、インナ部材62が収容室RAの径方向内端壁と左端壁を形成している。
【0049】
図15に示すように、収容室RAの上端近傍位置及び下端近傍位置に対応した部分に端壁部64を貫通した導出部64a及び導入部64bが夫々設けられている。
ヒートパイプ40Aの上流通路41Aに連通された導出部64aは、左側程上方に移行するように形成され、下流通路42Aに連通された導入部64bは、左側程下方に移行するように形成されている。端壁部64の左側には、導出部64a、導入部64b、及びバスバー66u,66v,66wを保護するため、これらの周囲を覆う端子ボックス68が装着されている。
【0050】
図12に示すように、給電系は、モータ側給電線51Aと、車体側給電線52と、モータ側給電線51Aと車体側給電線52を接続する可動給電線53等を備え、車載電源(図示略)からIWM5Aに電力を供給可能に構成されている。
モータ側給電線51Aは、端壁部64から取り出されている、具体的には、取出部に連結されたバスバー66u,66v,66wから夫々後方に延びると共にIWM5Aの後端部近傍位置に配置された第1接続部54Aにおいて3本の給電線が1つに束ねられている。
これにより、アウタロータタイプの三相誘導モータであっても、給電線51〜53の信頼性と車両の操縦性とを確保することができる。
【0051】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例1,2においては、FR車の前輪にIWMを装着した例を説明したが、FF車の後輪にIWMを装着しても良い。また、IWMとして、SRモータの例を説明したが、少なくとも、三相誘導モータであれば良く、PMモータを採用しても良い。
【0052】
2〕前記実施例1,2においては、ダブルウィッシュボーン型サスペンションの例を説明したが、少なくとも、上部支持部材と下部支持部材が存在すれば良く、ストラット型サスペンション等に適用しても良い。
【0053】
3〕前記実施例2においては、モータ側給電線が取出部に連結されたバスバーから夫々後方に延びる例を説明したが、少なくとも、モータ側接続部である第1接続部がタイロッド及び熱交換器とホイール中心に対して反対領域に配設されれば良く、モータ側給電線が取出部に連結されたバスバーから夫々下方に延びても良い。
【0054】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0055】
1,1A 前輪
5,5A IWM
11 アッパアーム
12 ロアアーム
13 ナックル部材
15 タイロッド
22 リム
51,51A モータ側給電線
52 車体側給電線
53 可動給電線
54,54A 第1接続部
55 第2接続部
64 端壁部
D,DA インホイールモータ駆動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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