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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-194055(P2019-194055A)
(43)【公開日】2019年11月7日
(54)【発明の名称】インホイールモータ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 7/00 20060101AFI20191011BHJP
   B60K 11/04 20060101ALI20191011BHJP
   H02K 9/22 20060101ALI20191011BHJP
   H02K 9/197 20060101ALI20191011BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20191011BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20191011BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20191011BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20191011BHJP
【FI】
   B60K7/00
   B60K11/04 G
   H02K9/22 A
   H02K9/197
   H02K9/19 A
   B60L3/00 Z
   B60L9/18 P
   B60L15/20 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-88869(P2018-88869)
(22)【出願日】2018年5月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】米盛 敬
(72)【発明者】
【氏名】任田 功
(72)【発明者】
【氏名】平野 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋
(72)【発明者】
【氏名】甲原 靖裕
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H125
5H609
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB01
3D038AC01
3D235AA01
3D235BB45
3D235CC42
3D235FF34
3D235FF35
3D235FF43
3D235GA02
3D235GA13
3D235GA59
3D235GA62
3D235GA70
3D235GB27
3D235GB32
3D235GB35
3D235GB36
3D235HH02
5H125AA01
5H125AB01
5H125AC08
5H125AC12
5H125FF02
5H125FF22
5H609BB02
5H609BB12
5H609BB19
5H609PP06
5H609QQ05
5H609QQ06
5H609RR37
5H609RR52
5H609RR59
5H609RR62
(57)【要約】
【課題】三相誘導モータの冷却性能を向上することができるインホイールモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】インホイールモータ駆動装置Dにおいて、ロータ34とステータ33との間を仕切る円筒部35aと円筒部35aの軸方向両端部でアウタケース31の内壁面に接触してシールする円環部35b,35cとを有すると共にアウタケース31と協働してステータ33を収容する収容室Rを形成するシール部材35と、収容室Rに充填された作動液を介してステータ33を冷却可能なヒートパイプ40とを有し、ヒートパイプ40が、アウタケース31に形成された導出部31aと導入部31bとを連結するようにIWM5の外部に配索され且つその内部に作動液を流通可能なパイプ状還流通路41,42と、還流通路41,42の途中部に設けられて外気と熱交換可能な熱交換器43とを備えている。
【選択図】 図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールに連結されたロータとサスペンションのナックル部材に支持されたステータとを有すると共に前記ホイールのリムの内周側空間に収容された三相誘導モータを備えたインホイールモータ駆動装置において、
前記ロータとステータとの間を仕切る円筒部と前記円筒部の軸方向両端部において前記三相誘導モータのアウタケースの内壁面に接触して液密状にシールする円環部とを有すると共に前記アウタケースと協働して前記ステータを収容する収容室を形成するシール部材と、
前記収容室に充填された作動液を介して前記ステータを冷却可能なヒートパイプ機構とを有し、
前記ヒートパイプ機構が、前記アウタケースの外周壁に形成された導出部と前記アウタケースの外周壁に形成された導入部とを連結するように前記三相誘導モータの外部に配索され且つその内部に作動液を流通可能なパイプ状の還流通路と、前記還流通路の途中部に設けられて外気と熱交換可能な熱交換器とを備えたことを特徴とするインホイールモータ駆動装置。
【請求項2】
前記三相誘導モータの給電線が、前記アウタケースの外周壁の前記導出部及び導入部と略同一周上で且つ前記導出部及び導入部から離隔した部位から取り出されていることを特徴とする請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項3】
前記三相誘導モータの給電線が、前記アウタケースの外周壁の略同一周上で且つ各相毎離隔する部位から夫々取り出されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項4】
前記ロータの回転軸が前記ホイール中心と同軸状に配置され、
前記熱交換器が前記ホイール中心に対して前後方向一方側に配設されると共に、
前記三相誘導モータの給電線が前記ホイール中心に対して前後方向他方側に配索されたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項5】
前記三相誘導モータの給電線が可動給電線を介して車体側給電線に接続され、
前記可動給電線は、前記給電線の端部から車幅方向内側且つ上方に配索されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のインホイールモータ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相誘導モータをホイールのリムの内周側空間に収容したインホイールモータ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の動力の伝達効率を高めることを狙いとして、ホイールのリムの内周側空間内に駆動用電動モータを収容したインホイールモータ駆動装置が知られている。
駆動用電動モータのうち三相誘導モータ(SRモータともいう)は、ステータコイル(固定子)に三相交流電流を流すことで回転磁界を発生させる一方、電磁誘導作用によりロータ(回転子)に誘導電流を発生させる。この回転磁界と誘導電流によって電磁力が生じてロータが回転している。この三相誘導モータは、永久磁石を用いるPMモータに比べて、コギングトルクが発生しない点、空走時の誘導起電力が発生しない点等の優位性があるため、車両用インホイールモータに適している。
【0003】
インホイールモータ駆動装置を高負荷又は高回転状態で運転した場合、インホイールモータ(駆動用電動モータ)、特にコイルを含むステータの温度が急激に上昇するため、インホイールモータの稼動効率低下や潤滑油の粘度低下に起因した部品損傷等が懸念される。
そして、外部から冷却対象部位に水を循環させる水冷方式の冷却機構は、熱交換器や配管等の設備が大型化するため、一般に、インホイールモータの冷却機構には、走行によって生じる空気の流れを利用した空冷方式が採用されている。
しかし、このような空冷方式は、走行状態に影響を受けることから、作動開始時期や冷却能力に限界がある。
【0004】
冷却機構の一形態であるヒートパイプは、非フロン系の冷媒を使用することができ、動力を必要としない等の利点を有するため、高発熱体であるインホイールモータの冷却機構に広く採用されている。このヒートパイプの熱輸送能力は、粘性限界、音速限界、毛細管限界、飛散限界、沸騰限界の5つの要素から影響を受ける。
そして、ハロゲン系炭化水素であるハイドロフルオロエーテル(HFE)は、粘性が極めて低く、電気絶縁性及び熱安定性が高い特性を有することから、ヒートパイプの熱輸送能力を向上することが可能な冷媒である。
【0005】
特許文献1の車両用ホイール駆動装置は、ホイールを駆動するロータと、このロータとステータを収容し且つナックル部材に固定されたアウタケースと、第1〜第3冷却装置とを有し、第1冷却装置をステータとアウタケースの開口を閉じるリッドとの間を接続した第1ヒートパイプにより構成し、第2冷却装置をステータとアウタケースとの間を接続した第2ヒートパイプにより構成し、第3冷却装置をアウタケースに接触させた第3ヒートパイプにより構成している。
特許文献2のモータは、ステータと、このステータにオイルを供給する油路と、ヒートパイプとを備え、このヒートパイプが、モータ外周とモータケースとの間に配設され且つステータに接触又は近接した油路内に設けられた受熱部と、油路外に設けられた放熱部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−282158号公報
【特許文献2】特開2008−072881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したHFEを冷媒(作動液)としたヒートパイプの採用により、従来のヒートパイプに比べてインホイールモータの熱信頼性や稼動効率を高くすることが可能である。
しかし、ヒートパイプに用いる作動液の冷媒性能を向上しても、ヒートパイプの熱輸送能力に影響を与える上記5要素のうち毛細管限界等に関連する構造因子の側面から、ヒートパイプ自身が保有する冷却性能を十分に発揮することができない虞がある。
【0008】
特許文献1の車両用ホイール駆動装置は、冷却対象部位であるステータとヒートパイプとを物理的に接触させるため、広い範囲を冷却する場合、ヒートパイプが大型化、或いは複雑化する虞がある。
また、冷媒である作動液がヒートパイプ構成部材(パイプ接続部及びヒートパイプ外壁)を介してステータと接触する形態であることから、熱交換に要する時間が長くなり、ステータと作動液との熱交換が十分に行われず、周囲への熱の拡散が懸念される。
一方、特許文献2のモータは、ステータに供給されるオイルの油路内にヒートパイプの受熱部を配置したため、ステータとヒートパイプとが物理的及び空間的に離隔しており、冷却されたオイルが滴下(移動)してステータに付着することから、特許文献1と同様に、ステータと作動液との熱交換が間接的である。しかも、ヒートパイプの冷却性能は、オイルを循環させるオイルポンプの性能にも左右されることから、ヒートパイプが有する冷却性能を十分に発揮させることは容易ではない。
即ち、何れの技術も、ステータと作動液との直接的な熱交換を行うものではないことから、インホイールモータ駆動装置の冷却性能向上には更なる改善の余地がある。
【0009】
本発明の目的は、インホイールモータとしての三相誘導モータの冷却性能を向上可能なインホイールモータ駆動装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のインホイールモータ駆動装置は、ホイールに連結されたロータとサスペンションのナックル部材に支持されたステータとを有すると共に前記ホイールのリムの内周側空間に収容された三相誘導モータを備えたインホイールモータ駆動装置において、前記ロータとステータとの間を仕切る円筒部と前記円筒部の軸方向両端部において前記三相誘導モータのアウタケースの内壁面に接触して液密状にシールする円環部とを有すると共に前記アウタケースと協働して前記ステータを収容する収容室を形成するシール部材と、前記収容室に充填された作動液を介して前記ステータを冷却可能なヒートパイプ機構とを有し、前記ヒートパイプ機構が、前記アウタケースの外周壁に形成された導出部と前記アウタケースの外周壁に形成された導入部とを連結するように前記三相誘導モータの外部に配索され且つその内部に作動液を流通可能なパイプ状の還流通路と、前記還流通路の途中部に設けられて外気と熱交換可能な熱交換器とを備えたことを特徴としている。
【0011】
このインホイールモータ駆動装置では、前記ロータとステータとの間を仕切る円筒部と前記円筒部の軸方向両端部において前記三相誘導モータのアウタケースの内壁面に接触して液密状にシールする円環部とを有すると共に前記アウタケースと協働して前記ステータを収容する収容室を形成するシール部材と、前記収容室に充填された作動液を介して前記ステータを冷却可能なヒートパイプ機構とを有しているため、ヒートパイプ機構の作動液内にステータを全体的に浸漬することができ、ステータと作動液による直接的な熱交換を行うことができる。
前記ヒートパイプ機構が、前記アウタケースの外周壁に形成された導出部と前記アウタケースの外周壁に形成された導入部とを連結するように前記三相誘導モータの外部に配索され且つその内部に作動液を流通可能なパイプ状の還流通路と、前記還流通路の途中部に設けられて外気と熱交換可能な熱交換器とを備えているため、ロータを収容した大径のアウタケースに導出部と導入部とを離隔配置することができ、還流させた作動液によって収容室内の作動液を攪拌することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記三相誘導モータの給電線が、前記アウタケースの外周壁の前記導出部及び導入部と略同一周上で且つ前記導出部及び導入部から離隔した部位から取り出されていることを特徴としている。
この構成によれば、給電線の取出部とヒートパイプ機構の導出部及び導入部を固定側部材に形成することができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記三相誘導モータの給電線が、前記アウタケースの外周壁の略同一周上で且つ各相毎離隔する部位から夫々取り出されていることを特徴としている。
この構成によれば、給電線を固定側部材から各相毎に取り出すことができる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1〜3の何れか1項の発明において、前記ロータの回転軸が前記ホイール中心と同軸状に配置され、前記熱交換器が前記ホイール中心に対して前後方向一方側に配設されると共に、前記三相誘導モータの給電線が前記ホイール中心に対して前後方向他方側に配索されたことを特徴としている。
この構成によれば、ホイールのリム内から減速機構を省略して、小型軽量化を図ることができ、給電線の取り回しを良好にすることができる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜4の何れか1項の発明において、前記三相誘導モータの給電線が可動給電線を介して車体側給電線に接続され、前記可動給電線は、前記給電線の端部から車幅方向内側且つ上方に配索されていることを特徴としている。
この構成によれば、転舵に伴う給電線の変位軌跡を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のインホイールモータ駆動装置によれば、三相誘導モータの冷却性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1に係るハイブリッド車両のレイアウト図である。
図2】右側前輪を左前方から視た斜視図である。
図3】右側前輪を左後方から視た斜視図である。
図4】右側前輪の左側面図である。
図5】右側前輪の縦断面図である。
図6】インホイールモータを右前方から視た斜視図である。
図7】インホイールモータを左前方から視た斜視図である。
図8】インホイールモータの縦断面図である。
図9】ヒートパイプの説明図である。
図10】ヒートパイプの別の説明図である。
図11】転舵に伴う給電線の変位軌跡の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
以下、本発明の実施例1について図1図11に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施例の車両Vは、インホイールモータ駆動装置Dが搭載されたハイブリッド自動車である。
インホイールモータ駆動装置Dの説明に当り、車両Vの前提構造について説明する。
この車両Vは、車体前部に内燃機関であるエンジン3が搭載され、主駆動輪である左右1対の後輪2を駆動するFR(Front engine Rear drive)車である。
また、主駆動輪の後輪2は、エンジン3の代わりに主駆動モータ4によっても駆動され、副駆動輪である左右1対の前輪1は、副駆動モータであるインホイールモータ(以下、IWMという)5によって所定の運転領域に駆動されている。
エンジン3と主駆動モータ4は、クラッチ(図示略)を介して締結解除可能に接続されている。
【0020】
エンジン3は、フライホイールを省略したフライホイールレスエンジンに構成され、動力伝達機構6を介して後輪2を駆動している。
動力伝達機構6は、プロペラシャフト6aと、クラッチ6bと、後輪2に車軸(図示略)を介して接続された有段変速機としてのトランスミッション6c等を備えている。
主駆動モータ4は、例えば、48Vで駆動される25kWの永久磁石同期モータ(PMモータ)によって構成され、48Vのバッテリ8(例えば、3.5kWhのリチウムイオンバッテリ等)の電流を変換するインバータ7から交流電流が供給されている。
この主駆動モータ4は、エンジン3と直列に接続され、主駆動モータ4が発生した駆動力は、エンジン3の駆動力と同様に、動力伝達機構6を介して後輪2に伝達される。
IWM5は、例えば、120Vで駆動される17kWの三相誘導モータ(SRモータ)によって構成され、キャパシタ10aの電流を変換するインバータ10dから交流電流が供給されている。
【0021】
制御装置9は、エンジン3、主駆動モータ4及びIWM5を制御している。
図1に示すように、キャパシタ10aの近傍には、電圧変換器である高圧DC/DCコンバータ10bと低圧DC/DCコンバータ10cが夫々配設されている。
これらキャパシタ10a、高圧DC/DCコンバータ10b、低圧DC/DCコンバータ10c、インバータ10dはユニット化され、統合ユニット10を構成している。
【0022】
制御装置9は、切替スイッチ(図示略)によってEVモードが選択されたとき、発進時及び低速走行時、主駆動モータ4のみで車両Vを駆動し、高車速領域である加速走行時、IWM5を作動させて主駆動モータ4とIWM5が協働して車両Vを駆動している。
また、減速時、主駆動モータ4とIWM5は、発電機として機能し、運動エネルギーを回生して電力を生成する。主駆動モータ4によって回生された電力は、バッテリ8に蓄積され、IWM5によって回生された電力は、キャパシタ10aに蓄積されている。
キャパシタ10aの電荷が不足する場合、バッテリ8の電圧を昇圧してキャパシタ10aに充電し、キャパシタ10aの端子間電圧が過剰に上昇した場合、キャパシタ10aの電荷を降圧してバッテリ8に充電している。
【0023】
次に、前輪1及びこの前輪1を支持するフロントサスペンション装置について説明する。
このフロントサスペンション装置は、1対の前輪1に夫々対応して形成されたホイールハウス(図示略)の車幅方向外側に収容されている。
図2図3に示すように、本実施例のフロントサスペンション装置は、ダブルウィッシュボーン型であって、上方車体部材(図示略)に上下回動自在に軸支されたアッパアーム11と、サブフレームの前側部材(図示略)に上下回動自在に軸支されたロアアーム12と、アッパアーム11とロアアーム12とに回転自在に取り付けられたナックル部材13と、上下方向に延びる緩衝装置14等を備えている。
尚、前輪1及びこの前輪1を支持するフロントサスペンション装置は左右対称構造であるため、以下、右側の構造について主に説明する。
また、図において、矢印F方向を前方向とし、矢印L方向を左方向とし、矢印U方向を上方向として説明する。
【0024】
図2図5に示すように、ナックル部材13は、前輪1及びブレーキディスク25等を仮想キングピン軸回りに回転自在に支持している。このナックル部材13は、車幅方向内側に開口された略椀状に形成され、その上端部及び下端部がアッパアーム11とロアアーム12とに夫々軸支されている。緩衝装置14は、ダンパ及びコイルスプリングを備え、それらの上端部がサスタワー(図示略)に固定され、ダンパの下端部がロアアーム12に回転自在に取り付けられている。
このフロントサスペンション装置は、車幅方向に延びるステアリングギアユニット(図示略)、及びこのステアリングギアユニットから車幅方向外側に延びてナックル部材13の前側部分に回動自在な連結部を介して取り付けられたタイロッド15を有している。
ステアリングギアユニットに連動連結されたステアリングホイール(図示略)の操作によってタイロッド15が左右に移動し、ナックル部材13を介して前輪1が転舵される。
【0025】
図4図5に示すように、前輪1は、タイヤ21と、このタイヤ21が装着される筒状のリム22と、このリム22の車幅方向外側に配置され且つ略円盤状のホイールディスク23と、このホイールディスク23の中央部分に複数の締結部材を介して固定される円盤状のハブ24等を備えている。これらリム22、ホイールディスク23、ハブ24等によって前輪1のホイールが構成されている。
ハブ24の車幅方向外側には、中空円盤状のブレーキディスク25が固定されている。
ブレーキキャリパ26は、IWM5の後方に配設されている。
このブレーキキャリパ26は、ナックル部材13の後側部分に固定され、ブレーキディスク25の後側部分を制動可能に構成されている。尚、27は、ブレーキディスク25の車幅方向内側に設けられた遮熱用保護カバーである。
以上により、リム22の径方向内側空間には、IWM5、ブレーキディスク25、ブレーキキャリパ26等が収容されている。
【0026】
次に、インホイールモータ駆動装置Dについて説明する。
インホイールモータ駆動装置Dは、各前輪1に設けられたIWM5と、各IWM5に対応して設けられた冷却機構としてのヒートパイプ40(ヒートパイプ機構)等を備えている。
【0027】
IWM5は、リム22の径方向内側空間において、右側部分がナックル部材13に部分的に囲繞された状態でナックル部材13に支持されている。
このIWM5は、右側端部が有底とされた略筒状のアウタケース31と、このアウタケース31の左側端部を閉塞するリッド32と、固定子であるステータ33と、前輪1を回転駆動する回転子としてのロータ34と、シール部材35を主な構成要素としている。
このIWM5は、ステータ33の径方向内側空間に設けられたロータ34が回転するインナロータタイプの誘導電動機である。
【0028】
図6図8に示すように、アウタケース31の外周壁31cの径方向外側には、同一周上において上部位置で且つ仮想キングピン軸に対応した位置に3つの電極端子取出部31u,31v,31wが各々離隔した状態で隣り合うように形成され、前側上下及び後側上下に2対の取付部31dが形成されている。
電極端子取出部31u,31v,31wは、後述するモータ側給電線51が夫々電気的に接続され、2対の取付部31dは、締結部材を介してナックル部材13の左側壁部に夫々締結固定されている。外周壁31cの左端部には、径方向外側に張り出したフランジ部31fが形成され、このフランジ部31fにリッド32が締結固定されている。
【0029】
図8に示すように、アウタケース31の外周壁31cの径方向内側には、ロータ34の周囲を取り囲むようにステータ33が外周壁31cと一体的に形成されている。
ステータ33は、外周壁31cの内周に分布巻により取り付けられたU相コイル、V相コイル及びW相コイルからなるステータコイル33aを有している。
ロータ34は、ロータシャフト34sと、このロータシャフト34sの周囲に分布巻により取り付けられたロータコイル34aを有している。ロータコイル34aとステータコイル33aには、電気絶縁性被覆(例えば、エナメル被覆)が施されている。
ロータコイル34aは、ステータコイル33aが生成する回転磁界により誘導電流が発生するようにステータコイル33aに対向配置されている。
【0030】
ロータシャフト34sは、その軸心延長線上に前輪1の中心が位置するように設けられている。IWM5は、特定の加速走行時に限りアシスト駆動するため、コンパクト化されると共に、減速機構が省略されている。
ロータシャフト34sは、左側部分が左右1対のベアリングb1によってアウタケース31に支持され、右側部分がハブ24に一体形成されたインナレース24aに連結されている。インナレース24aは、ベアリングb2及びアウタレース24bを介してナックル部材13に回転自在に支持されている。
【0031】
図8に示すように、シール部材35は、縦断面略ハット状に形成され、外周壁31cを含むアウタケース31の一部と協働してステータ33を収容するリング状の収容室Rを形成している。具体的には、シール部材35は、ロータ34とステータ33との間を仕切る円筒部35aと、円筒部35aの左端部においてアウタケース31の内壁面に接触して液密状にシールする円環部35bと、円筒部35aの右端部においてアウタケース31の内壁面に接触して液密状にシールする円環部35cとを有している。
このシール部材35は、非磁性体材料(アルミニウム又はカーボン等)で構成され、ステータコイル33aとロータコイル34aとの間を液密状にシールしている。
この収容室Rには、電気絶縁性を有する作動液、例えば、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、がステータコイル33aを全体的に浸漬するために充填されている。
本実施例では、シール部材35が収容室Rの径方向内端壁と左端壁を形成し、アウタケース31が収容室Rの径方向外端壁と右端壁を形成している。
また、シール部材35として、弱磁性体材料であるステンレスを用いることも可能である。
【0032】
次に、冷却機構としてのヒートパイプ40について説明する。
図4図9に示すように、ヒートパイプ40は、パイプ状の上流及び下流通路41,42(還流通路)と、外部への放熱部に相当する熱交換器43と、ステータ33(ステータコイル33a)から受熱する受熱部に相当する収容室R等により構成されている。
このヒートパイプ40では、ステータ33によって加熱された作動液は蒸発潜熱を奪って気化すると共に収容室Rと熱交換器43との間に圧力差が生じるため、気化した作動液は上流通路41を流れて熱交換器43に移動する。熱交換器43では、気化した作動液が凝縮し、等量の凝縮潜熱を放出する。凝縮した作動液は重力により下流通路42を流れて収容室Rに還流される。作動液の加熱及び冷却に応じて蒸発及び凝縮のサイクルが繰り返されている。
【0033】
HFEは、その性質上、粘性が極めて低いため、分布巻により取り付けられた各々のステータコイル33a間に浸入し、浸入した作動液は、ステータコイル33aの表面全域から受熱することにより気化する。HFEの沸点は、約40℃である。
図10に示すように、収容室Rは、ステータコイル33aとの間に微小な隙間が形成されている。ステータコイル33aの左端、右端、及び径方向内側端には、例えば、3mmの隙間が形成され、気化した作動液は、この隙間を通り収容室Rの上端部分に移動している。
【0034】
図4図8図10に示すように、上流通路41は、収容室Rの上端近傍部分に形成された導出部31aから上方に延設され、下流通路42は、収容室Rの下端近傍部分に形成された導入部31bから一旦下側後方に延びた後、上方に延設されている。導入部31bを収容室Rの下端近傍部分に配置することにより、還流された作動液を用いて収容室Rに充填された作動液を攪拌し、冷却機構全体の熱交換効率の向上を図っている。
また、導出部31a及び導入部31bは、電極端子取出部31u,31v,31wと同一周上で且つ電極端子取出部31u,31v,31wと離隔するように配置されている。
上流通路41の通路長は、下流通路42の通路長よりも短く形成されている。
上流通路41が長い場合、気化した作動液が熱交換器43に到達する前に凝縮し、上流通路41を逆流する虞があり、ヒートパイプ40の冷却サイクルを循環方向に正常に機能させるためである。
【0035】
図4図5に示すように、熱交換器43は、リム22の内側空間、具体的には、アウタケース31の外周とリム22の内周との間の空間に配置されている。
この熱交換器43は、前輪1のホイール中心(ロータ34の軸心)に対してブレーキキャリパ26と反対側領域、具体的には、ホイール中心よりも前側且つ上側領域に配設されている。熱交換器43の配置スペースを確保すると共に、ブレーキキャリパ26からの受熱を回避するためである。
【0036】
図4図9に示すように、熱交換器43は、上流通路41の下流端に連通され且つ略水平状に前後に延びる上部容積室43aと、下流通路42の上流端に連通され且つ略水平状に前後に延びる下部容積室43bと、上部容積室43aと下部容積室43bとの間を連通し且つ上下に延びる複数の縦通路43cと、複数の縦通路43cに接続された複数の冷却フィン43fを有している。
上部容積室43aは、上部ブラケット44によってナックル部材13の前側上部に支持され(図11参照)、下部容積室43bは、下部ブラケット45によってリッド32の前側部分に支持されている。
【0037】
次に、給電系について説明する。
図2図4図6図7図11に示すように、給電系は、モータ側給電線51と、車体側給電線52と、モータ側給電線51と車体側給電線52を接続する可動給電線53等を備え、車載電源(図示略)からIWM5に電力を供給可能に構成されている。
モータ側給電線51は、取出部31u,31v,31wに連結されたバスバー36u,36v,36wから外周壁31cに沿って夫々後方に延びると共に、IWM5の後端部近傍位置に配置された第1接続部54(モータ側接続部)において3本の給電線が1本に束ねられ、集合電線を構成している。
【0038】
車体側給電線52は、ホイールハウスの内壁部から延びてアッパアーム11に係止された第2接続部55(車体側接続部)に連結されている。第2接続部55は、アッパアーム11近傍位置以上の高さ位置に揺動可能に形成されている。
本実施例では、図2図3に示すように、第2接続部55は、アッパアーム11の揺動軸と同軸上に形成された揺動軸を有し、車幅方向に対して揺動自在に構成されている。
可動給電線53は、可撓性材料で形成され、第1,第2接続部54,55に接続可能な集合電線に構成されている。この可動給電線53は、第2接続部55から右側且つ下方に延びた後、上側前方に向けて湾曲した略U字状に形成され、第1接続部54に接続されている。
【0039】
取出部31u,31v,31wが、仮想キングピン軸に対応した位置に配置されているため、前輪1が転舵された場合でも、取出部31u,31v,31wの移動軌跡半径を極力小さくしている。第2接続部55が、アッパアーム11の揺動軸と同軸上に配設されているため、車両Vのバウンドやリバウンドに拘らず、第2接続部55の車幅方向の揺動により第1,第2接続部54,55の離隔距離を略一定に維持している。
【0040】
図11(a)に示すように、前輪1が左側に転舵されたとき、平面視にて、第1接続部54(取出部31u,31v,31w)が第2接続部55から最も離隔している。
しかし、図11(b)に示す中立状態のとき、可動給電線53が車幅方向に対して略U字状に形成されているため、下端部が上昇変位されることで可動給電線53の転舵追随性を担保している。
図11(c)に示すように、前輪1が右側に転舵されたとき、平面視にて、第1接続部54が第2接続部55に最も接近している。
しかし、第1接続部54がホイール中心に対してタイロッド15と反対側に配設されているため、可動給電線53とタイロッド15の干渉を生じることなく下端部を下降変位させて可動給電線53の転舵追随性を担保している。
【0041】
次に、上記インホイールモータ駆動装置Dの作用、効果について説明する。
このインホイールモータ駆動装置Dでは、ロータ34とステータ33との間を仕切る円筒部35aと円筒部35aの軸方向両端部においてIWM5のアウタケース31の内壁面に接触して液密状にシールする円環部35b,35cとを有すると共にアウタケース31と協働してステータ33を収容する収容室Rを形成するシール部材35と、収容室Rに充填された作動液を介してステータ33を冷却可能なヒートパイプ40とを有しているため、ヒートパイプ40の作動液内にステータ33を全体的に浸漬することができ、ステータ33と作動液による直接的な熱交換を行うことができる。
ヒートパイプ40が、アウタケース31の外周壁31cに形成された導出部31aとアウタケース31の外周壁31cに形成された導入部31bとを連結するようにIWM5の外部に配索され且つその内部に作動液を流通可能なパイプ状の還流通路41,42と、還流通路41,42の途中部に設けられて外気と熱交換可能な熱交換器43とを備えているため、ロータ34を収容した大径のアウタケース31に導出部31aと導入部31bとを離隔配置することができ、還流させた作動液によって収容室R内の作動液を攪拌することができる。
【0042】
IWM5のモータ側給電線51が、アウタケース31の外周壁31cの導出部31a及び導入部31bと略同一周上で且つ導出部31a及び導入部31bから離隔した部位から取り出されているため、モータ側給電線51の取出部31u,31v,31wとヒートパイプ40の導出部31a及び導入部31bを固定側部材に形成することができる。
【0043】
IWM5のモータ側給電線51が、アウタケース31の外周壁31cの略同一周上で且つ各相毎離隔する部位から夫々取り出されているため、モータ側給電線51を固定側部材から各相毎に取り出すことができる。
【0044】
ロータ34のロータシャフト34sがホイール中心と同軸状に配置され、熱交換器43がホイール中心に対して前側に配設されると共に、IWM5のモータ側給電線51がホイール中心に対して後側に配索されているため、ホイールのリム22内から減速機構を省略して、小型軽量化を図ることができ、モータ側給電線51の取り回しを良好にすることができる。
【0045】
IWM5のモータ側給電線51が可動給電線53を介して車体側給電線52に接続され、可動給電線53は、モータ側給電線51の端部から車幅方向内側且つ上方に配索されているため、転舵に伴う給電線51,52の変位軌跡を小さくすることができる。
【0046】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、FR車の前輪にIWMを装着した例を説明したが、FF車の後輪にIWMを装着しても良い。また、IWMとして、SRモータの例を説明したが、少なくとも、三相誘導モータであれば良く、PMモータを採用しても良い。
【0047】
2〕前記実施例においては、上部容積室、下部容積室、縦部材、及びフィンからなる熱交換器の例を説明したが、少なくとも、外気と熱交換することができれば良く、単一の容積室であっても良い。また、少なくとも、導出用通路と導入用通路が形成できれば良く、容積室の代わりに、通路を延長することで通路と熱交換器を兼用しても良い。
【0048】
3〕前記実施例においては、ヒートパイプがリムの径方向内側空間に完全に収容された例を説明したが、少なくとも、ヒートパイプがリムの径方向内側に配設されれば良く、ヒートパイプの構成部材がリムよりも車幅方向内側に部分的に突出しても良い。
【0049】
4〕前記実施例においては、ダブルウィッシュボーン型サスペンションの例を説明したが、少なくとも、上部支持部材と下部支持部材が存在すれば良く、ストラット型サスペンション等に適用しても良い。
【0050】
5〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0051】
1 前輪
5 IWM
13 ナックル部材
22 リム
31 アウタケース
31a 導出部
31b 導入部
31c 外周壁
33 ステータ
34 ロータ
34s ロータシャフト
35 シール部材
35a 円筒部
35b,35c 円環部
40 ヒートパイプ
41 上流通路
42 下流通路
43 熱交換器
51 モータ側給電線
52 車体側給電線
53 可動給電線
D インホイールモータ駆動装置
R 収容室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11