【課題】ポリイミドの優れた物性はそのまま維持しながら、優れた熱安定性と低い誘電率を示すとともに光透過性に優れたポリイミドの製造方法、並びに該ポリイミド及びこれを含むポリイミドフィルムの提供。
【解決手段】ジアミンと酸二無水物とを重合してポリアミック酸を得、このポリアミック酸をイミド化することを含む、ポリイミドの製造方法。酸二無水物は、下記化学式で表示される化合物を含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特に他の定義がなければ、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発
明の属する技術分野における当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。一般に、
本明細書で使用された命名法は、当該技術分野でよく知られており、通常使われているも
のである。
【0018】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とすると、これは、特に反
対の記載がなければ、他の構成要素を排除するのではなく、他の構成要素をさらに含むこ
とができることを意味する。
【0019】
本発明は、ジアミンと酸二無水物とが重合されたポリアミック酸をイミド化して得られ
るポリイミドにおいて、前記酸二無水物は、下記化学式1で表される化合物を含むことを
特徴とする、ポリイミド及び前記ポリイミドを含むポリイミドフィルムに関する。
【0021】
一般に、脂肪族ポリイミドは、芳香族ポリイミドに比べて分子内の低い密度と双極性及
び分子間または分子内の低電荷移動特性を帯びるので、有機溶媒への溶解性に優れ、高い
透明性と低い誘電率を持っており、これにより光電子工学及び層間絶縁膜物質として多く
の注目を集めている。
【0022】
そのため、本発明では、高い透明性と低い誘電率を持っている脂肪族ポリイミドを製造
するために、窒素を含有するピペラジン−二コハク酸無水物(piperazine−d
isuccinic anhydride:化学式1で表される酸二無水物)を酸二無水
物として使用した。
【0023】
本発明に係る化学式1で表される酸二無水物は、分子内に1つ以上の窒素原子を含有す
ることにより、窒素原子の孤立電子対により分子内または分子間鎖の相互作用が生じるの
であり、これを用いてポリイミド固有の優れた特性を維持しながら、ポリイミドの可溶性
と電気的特性を大幅に改善することができる。
【0024】
本発明に係る酸二無水物は、マイケル付加反応や加水分解反応などの非常に簡単な有機
合成方法で製造することができる。
【0025】
具体的に、本発明に係る酸二無水物の製造方法は、化学式2で表される化合物とピペラ
ジンとを反応させ、化学式3で表される化合物を生成し、生成された化学式3で表される
化合物を塩基触媒の存在下で加水分解させ、化学式4で示される化合物を生成した後、脱
水剤を投入して、下記化学式1で表される酸二無水物を製造する。
【0026】
前述した本発明に係る酸二無水物の製造方法をまとめると、反応式1のとおりである。
【0028】
まず、反応式1に示すように、化学式3で表される化合物は、化学式2で表される化合
物(フマル酸ジメチル)とピペラジンとのマイケル付加反応によって生成される。このと
き、前記マイケル付加反応において、化学式2で表される化合物(フマル酸ジメチル)は
マイケルアクセプター(acceptor)となり、ピペラジンはマイケルドナー(do
nor)となる。
【0029】
前記マイケル付加反応は、反応効率の観点から、20〜140℃で4〜16時間行うこ
とが好ましい。
【0030】
前記化学式3で表される化合物の製造の際に、化学式2で表される化合物とピペラジン
は、1:0.45〜1:0.55のモル比で使用することが収率の観点から好ましい。
この際、前記化学式2で表される化合物は、公知の様々な方法で製造することができ、好
ましくは、メタノールにフマル酸を投入した後、硫酸などの酸触媒を添加して還流させ、
炭酸ナトリウムなどの中和剤で中和させて製造することができる。
【0031】
一方、本発明においては、反応態様として、反応基質自体を溶媒とすることが好ましい
が、他の反応溶媒を使用することも可能である。この時、反応溶媒としては、反応を阻害
しないものであれば特に制限されず、その一例として、1,4−ジオキサン、トルエン、
NMP(N−Methyl−2−pyrrolidone)、DMAc(dimethy
lacetamide)などが挙げられる。
【0032】
このように生成された化学式3で表される化合物は、塩基触媒の存在下に加水分解反応
によって、化学式4で表される化合物を生成する。この際、前記加水分解反応は、40〜
120℃で1〜6時間行うならば、十分な反応が起こって未反応物を減らすことができ、
溶媒及び触媒の蒸発を防止することができ、コスト及び効率の面で好ましい。
【0033】
前記加水分解反応に使用される塩基触媒は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸
化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムよりなる群
から選択される1種以上であることができ、好ましくは、価格及び扱いやすさの面で水酸
化カリウム、水酸化ナトリウムなどでありうる。
【0034】
前記塩基触媒の含有量は、化学式3で表される化合物1モルに対して5〜10モルで使
用することができるが、このような範囲内において、加水分解反応の進行効率と適量の塩
基触媒の使用により、析出する塩酸の量も適正になって、反応効率及び生産性の面で有利
でありうる。
【0035】
このように生成された化学式4で表される化合物は、前記化学式4で表される化合物に
脱水剤(dehydrating agent)が投入されることにより、脱水閉環反応
によって、化学式1で表される脂肪族酸二無水物が製造される。この際、前記脱水閉環反
応は、40〜100℃で4〜28時間行うならば、触媒及び溶媒の蒸発を防止して収率を
向上させ、適正の反応時間を有するうえに、十分な反応を誘導して収率を向上させること
ができるという観点から好ましい。
【0036】
前記脱水剤は、無水酢酸、ピリジン、イソキノリン、及びトリエチルアミンなどの第3
級アミンよりなる群から選択される1種以上であり得、効率の観点から、無水酢酸及び/
またはピリジンを使用することが好ましい。
【0037】
また、前記脱水剤の含有量は、化学式4で表される化合物1モルに対して、2モル以上
、好ましくは2〜10モルで使用することができる。このような使用範囲は、十分な反応
を誘導して収率を向上させ、コストの面で有利である。
【0038】
前述した反応の後、生成された化合物を通常の方法で濾過した後、乾燥させることによ
り、化学式1で表される酸二無水物を製造する。
【0039】
以上説明した本発明の化学式1で表される酸二無水物は、ジアミンとの重縮合反応によ
ってポリアミック酸を製造した後、熱または触媒を用いた脱水閉環反応によってポリイミ
ドに製造することができる。この時、前記ジアミン:酸二無水物の当量比は1:1である
ことが好ましい。
【0040】
前記ジアミンは、特に限定されるものではなく、従来のポリイミドの合成に使用されて
いる各種のジアミンを使用することができる。その具体的な例としては、p−フェニレン
ジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトル
エン、1,3−ビス(4,4’−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノ−1
,5−フェノキシペンタン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,
4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4
,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’
−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン
、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1,4
−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼ
ン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、1,3−ビス(4−アミノフ
ェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2
,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−トリフルオ
ロメチル−4,4’−ジアミノビフェニルなどの芳香族ジアミン;1,4−ジアミノシク
ロヘキサン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4’−ジアミノジシク
ロヘキシルメタン(MCA)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミ
ン)(MMCA)などの脂環式ジアミン;及びエチレンジアミン(EN)、1,3−ジア
ミノプロパン(13DAP)、テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミ
ン(16DAH)、1,12−ジアミノドデカン(112DAD)などの脂肪族ジアミン
などを挙げることができる。また、これらのジアミンは単独でも、或いは2種以上を組み
合わせて使用することもできる。
【0041】
特に、光学特性及び電気的特性の観点から、本発明のジアミンは、1,6−ヘキサメチ
レンジアミン(1,6−diaminohexaneとも呼ばれる、16DAH)、1,
12−ジアミノドデカン(1,12−diaminododecane、112DAD)
、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(4,4’−methylene bis
(cyclohexylamine)とも呼ばれる、MCA)、及び4,4’−メチレン
ビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)(4,4’−methylene bis(2
−methyl cyclohexylamine)、MMCA)よりなる群から選択さ
れる1種以上でありうる。
【0042】
また、本発明は、前記化学式1で表される酸二無水物以外に、ポリイミドの物性を阻害
しない範囲内で、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパ
ン二無水物(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1
,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物(TDA)、ピ
ロメリット酸二無水物(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、PMDA
)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビスカルボキシフェ
ニルジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスル
フィド二無水物(BDSDA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO
2DPA)、シクロ
ブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、イソプロピリデン二フェノキシビスフタ
ル酸無水物(6HBDA)、ビシクロ[2.2.2]−7−オクテン−2,3,5,6−
テトラカルボン酸二無水物(BTA)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CP
DA)、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、及びビシクロヘキサン
テトラカルボン酸二無水物(HBPDA)よりなる群から選択される1種以上の酸二無水
物をさらに含むことができる。
【0043】
特に、本発明は、光学的物性と誘電率を向上させる観点から、好ましくは、自由体積を
増加させることが可能なフッ素の含有された2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニ
ル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、分子内の分極率異方性を下げること
が可能な脂肪族(aliphatic)もしくは脂環式(cycloaliphatic
)の4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラ
ヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物(TDA)、シクロブタンテトラカル
ボン酸二無水物(CBDA)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、
ビシクロ[2.2.2]−7−オクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(
BTA)、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、及びビシクロヘキサ
ンテトラカルボン酸二無水物(HBPDA)などの酸二無水物を含むことができ、上述し
たように、ピロメリット酸二無水物(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水
物、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテ
トラカルボン酸二無水物(BPDA)などの芳香族酸二無水物も、目標とする光学物性を
阻害しない範囲内で添加して使用することができる。
【0044】
この際、さらに含まれる酸二無水物の含有量は、酸二無水物の総モルに対して、80m
ol%以下、好ましくは10〜50mol%で投入することが、光学特性と誘電率を阻害
しない範囲内で耐熱性の向上を期待することができる。
【0045】
本発明のポリアミック酸を得る方法は、特に限定されるものではなく、前記化学式1で
表される酸二無水物とジアミンを公知の製造方法により反応、重合させればよいが、有機
溶媒中で、化学式1で表される酸二無水物とジアミンとを混合し、反応させる方法が簡便
である。
【0046】
このとき、使用される有機溶媒の具体例としては、m−クレゾール、N−メチル−2−
ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルア
セトアミド(DMAc)、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド(DMSO
)、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルホスホルアミド、γ
−ブチロラクトンなどを挙げることができる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく、
2種以上混合して使用してもよい。また、ポリアミック酸を溶解しない溶媒であっても、
均一な溶液が得られる範囲内で、前記溶媒に加えて使用してもよい。
【0047】
溶液重合の反応温度は、−20〜150℃、好ましくは−5〜100℃の任意の温度を
選択することができる。また、ポリアミック酸の分子量は、反応に使用する、化学式1で
表される酸二無水物とジアミンとのモル比を変えることにより制御することができ、通常
の重縮合反応と同様に、このモル比が1に近いほど、生成するポリアミック酸の分子量は
大きくなる。
【0048】
一方、ポリアミック酸からポリイミドを得るためにポリアミック酸を脱水閉環させる方
法は、特に限定されないが、通常のポリアミック酸と同様に、加熱による閉環や公知の脱
水閉環触媒を用いて化学的に閉環させる方法を採用することができる。前記加熱による方
法は、80℃から300℃まで段階的に昇温させることができる。
【0049】
化学的に閉環する方法は、例えば、ピリジンやトリエチルアミンなどの有機塩基と、無
水酢酸などの存在下で行うことができる。このときの温度は−20〜200℃の任意の温
度を選択することができる。この反応では、ポリアミック酸の重合溶液をそのまま、また
は希釈して使用することができる。また、ポリアミック酸の重合溶液からポリアミド酸を
回収し、これを適正の有機溶媒に溶解させた状態で行ってもよい。このときの有機溶媒と
しては、上述したポリアミック酸の重合溶媒を挙げることができる。
【0050】
こうして得られたポリイミド(を含む)溶液は、そのまま使用してもよく、メタノール
、エタノールなどの溶媒を加えてポリマーを沈殿させ、これを単離して粉末として使用し
てもよく、またはその粉末を適正の溶媒に再溶解して使用してもよい。再溶解用溶媒は、
得られたポリマーを溶解させるものであれば特に限定されず、例えば、m−クレゾール、
2−ピロリドン、NMP、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、
DMAc、DMF(dimethylformamide)、γ−ブチロラクトンなどを
挙げることができる。
【0051】
また、本発明のポリイミドフィルムは、ポリアミック酸を支持体にキャストし、上述し
たような方法で脱水閉環させて得ることができる。ここで、ポリアミック酸からポリイミ
ドへの変化率(脱水閉環率)をイミド化率として定義するが、本発明のポリイミドのイミ
ド化率は、100%に限定されるものではなく、必要に応じて1〜100%の任意の値を
選択することができる。
【0052】
本発明では、上述のように脱水閉環されて製膜されたポリイミドフィルムをもう一度熱
処理工程に適用して、フィルム内に残っている熱履歴および残留応力を解消することによ
り、安定した熱安定性を得て、優れた熱膨張係数を持つようにすることができる。熱処理
済みのフィルムの残留揮発分は5%以下、好ましくは3%以下である。
【0053】
こうして製造されたポリイミドフィルムの厚さは、特に限定されないが、10〜250
μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜100μmである。
【0054】
上述したような方法によって、ジアミンと酸二無水物とを反応させて得られるポリアミ
ック酸をイミド化してポリイミド及びポリイミドフィルムを製造することができる。こう
して製造された前記ポリイミドフィルムは、N−メチル−2−ピロリドン(N−meth
yl−2−pyrrolidone、NMP)、ジメチルアセトアミド(dimethy
lacetamide、DMAc)、フタル酸ジメチル(dimethyl phtha
late、DMP)、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide、D
MSO)などの有機溶媒に対する高い溶解性を示しながら、フィルム厚さ10〜100μ
mを基準に550nmでの透過度が80%以上であり、1GHzの誘電定数が3.3以下
である物性を示す。
【0055】
前述したように、本発明に係るポリイミドフィルムは、低い誘電率を示すと同時に無色
透明であって、液晶表示素子または半導体における保護材料、絶縁材料などの電子材料、
光導波路などの光通信用材料としての用途に有用である。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の好適な実施例及び比較例を説明する。ところが、下記の実施例は、本発
明の好適な一実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0057】
<製造例1>
1−1:化学式2で表される化合物の合成
メタノール200mlにフマル酸14.5g(125mmol)を混合し、ここに濃硫
酸5mlを添加した後、100℃で1時間還流させた。前記還流物を冷却槽で冷却し、1
0%の炭酸ナトリウム200gで中和させて、白い沈殿物を生成した。前記の生成された
沈殿物を濾過して水で洗浄した後、真空オーブンによって50℃で12時間乾燥させ、化
学式2で表される化合物16.6gを得た(収率92%)。前記化学式2で表される化合
物の製造方法は、Carr G.などが報告した方法(Carr G., Williams D. E., Diaz-M
arrero A. R., Patrick B. O., Bottriell H., Balgi A. D., Donohue E., Roberge M.,
and Andersen R. J., J. Nat. Prod. 2010, 73, 422)に基づいて行ったのである。
【0058】
前記得られた化学式2で表される化合物の融点(Buchi、M−560)を測定した
結果、融点(Mp)は、102℃であって、Carr G.などが報告した方法によって
製造された化合物の融点と同一であることが分かった。
【0059】
1−2:化学式3で表される化合物の合成
実施例1−1で得られた化学式2で表される化合物14.4g(0.1mol)とピペ
ラジン4.3g(0.05mol)を1,4−ジオキサン100mlに添加した後、16
時間還流させ、前記還流物を冷却して沈殿物を生成した。前記生成された沈殿物を濾過し
、濃縮させる過程を繰り返し行った後、真空オーブンで12時間乾燥させて、無色固体の
、化学式3で表される化合物15.3gを得た(収率82%)。
【0060】
前記のように得られた化学式3で表される化合物に対して、融点(Buchi、M−5
60)を測定し、また、NMR(
1Hと
13C)(JEOL、JNM−LA400)とI
R(AVATAR、360 FT−IR)を用いて分析した。
【0061】
融点:158℃(EtOAc)
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ2.38-2.50 (m, 4H, Het-CH
2CH
2), 2.54-2.70 (m, 6H, β
-CH
2, Het-CH
2CH
2), 2.81 (dd, J= 16.0 and 9.2 Hz, 2H, β-CH
2), 3.64 (s, 6H, 2OCH
3
), 3.68 (dd, 2H, overlapped signals, α-CH), 3.70 (s, 6H, 2OCH
3) (FIG. 4);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): δ171.7 and 170.9 (ester C), 63.4 (α-
CH), 51.8 (O
CH
3), 51.5 (O
CH
3), 49.9 (Het-
CH
2CH
2), 34.0 (β-
CH
2); Anal. Calcd. for C
16H
26N
2O
8;
C: 51.33, H: 7.00, N: 7.48%. Found: C: 51.19, H: 7.09, N: 7.53% ;]
IR (KBr, cm
-1): 1734 for νC=O
1−3:化学式4で表される化合物の合成
実施例1−2で得られた化学式3で表される化合物11.2g(0.03mol)を5
00mlの丸底フラスコに投入した後、2N水酸化カリウム120ml(0.24mol
)とメタノール120mlを混合した。前記混合物を60℃に加熱して溶解した後、同じ
温度で3時間さらに加熱した。前記混合物に濃塩酸を加えてpH3.8に調整した後、3
0分間常温で攪拌して沈殿物を生成し、前記生成された沈殿物を濾過した後、水で洗浄し
た。前記洗浄された沈殿物を24時間、真空オーブンで乾燥させ、1:1の比率で水とメ
タノールが混合された混合物2,000mlに再結晶させた後、化学式4で表される化合
物8.7gを得た(収率92%)。得られた、化学式4で表される化合物は、一般的な有
機溶媒及び水に溶解されないから、NMRサンプルを作成するために、固体水酸化カリウ
ムが溶解している重水(D
2O)に、化学式4で表される化合物を混合してNMR分析に
使用した。
【0062】
前記得られた化学式4で表される化合物に対して、融点(Buchi、M−560)、
NMR(
1Hと
13C)(JEOL、JNM−LA400)及びIR(AVATAR、3
60 FT−IR)を用いて分析した。
【0063】
融点:218〜219℃(H
2O+MeOH)
1H NMR (400 MHz, D
2O/KOH): δ2.46-2.54 (bd, 4H, Het-CH
2CH
2), 2.56-3.40 (bm, 6H
, β-CH
2, Het-CH
2CH
2), 3.44-3.54 (bm, 2H, β-CH
2), 4.80 (dd, 2H, overlapped sign
als, α-CH);
13C NMR (100 MHz, D
2O/KOH): δ178.8 (
COOH), 67.7 (α-
CH), 49.1 (Het-
CH
2CH
2), 3
7.4 (β-
CH
2); Anal. Calcd. for C
12H
18N
2O
8; C: 45.28, H: 5.70, N: 8.80%. Found: C
: 45.16, H: 5.79, N: 8.83%;
IR (KBr, cm
-1): 1723 for νC=O.
1−4:化学式1で表される脂肪族無水物化合物の合成
実施例1−3で得られた化学式4で表される化合物5.4g(17mmol)、ピリジ
ン3.18g(35.7mmol)及び無水酢酸3.6g(35.7mmol)を、凝縮
器と磁石攪拌機(マグネティックスターラー)を備えた50mlのフラスコに投入し、6
0℃で24時間反応を行った。反応の完了後、反応物を冷却し、濾過した。前記濾過され
た濾過物を、無水酢酸200mlと精製されたジエチルエーテル200mlで洗浄し、真
空状態のオーブンにて40℃で乾燥させた後、無水酢酸100mlで再結晶を行い、化学
式1で表される化合物2.9gを得た(収率60%)。
【0064】
前記のように得られた化学式1で表される化合物に対して、融点(Buchi、M−5
60)を測定し、NMR(
1Hと
13C)(JEOL、JNM−LA400)とIR(A
VATAR、360 FT−IR)を用いて分析した。
【0065】
融点:156℃(decompose)
1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ2.39(bd, J=6.8 Hz, 4H, Het-CH
2CH
2), 2.76 (bd, J=6
.8 Hz, 4H, Het-CH
2CH
2), 3.04 (d, J= 8.4 Hz, 4H, β-CH
2), 4.21 (t, J=16.4 Hz, 2H,
α-CH);
13C NMR (100 MHz, d6-DMSO): δ171.6 (COOCO), 170.6 (COOCO), 63.6 (α-CH), 48.9
(Het-CH
2CH
2), 31.9 (β-CH
2); Anal. Calcd. for C
12H
14N
2O
6; C: 51.06, H: 5.00, N:
9.93%. Found: C: 49.93, H: 5.10, N: 9.96%;
IR (KBr, cm
-1): 1860, 1781 (νC=O), 1210, 1127 (C-O-C).
<実施例1〜4>
機械式攪拌機を備えた30mlの3口フラスコ中に、製造例1で得られた酸二無水物(
2.0mmol)とm−クレゾール4mLを投入し、窒素ガスを徐々に流しながら、酸二
無水物が完全に溶けるまで混合物を攪拌した。ここに表1に記載のそれぞれのジアミン(
2.0mmol)とm−クレゾール2mlをさらに投入した後、フラスコを60℃まで加
熱し、2日間撹拌した。ポリアミック酸を含む重縮合溶液の一部をガラス板上にキャスト
し、真空下でガラス板に80℃で3時間、200℃で1時間、250℃で1時間熱を加え
てポリイミドフィルムを得た。硬化の後、柔軟で支持体のないポリイミドフィルムを除去
するために、ガラス板を熱湯に漬けてガラス板からフィルムを除去して、厚さ15μmの
ポリイミドフィルムを製造した。
【0066】
この際、得られたポリイミドフィルムは、FTIR(AVATAR 360 FT−I
R)により、イミドに現れる特徴的な1771〜1775cm
−1の吸収バンドを確認す
ることができた(
図1)。これはカルボニル基の非対称的な伸縮振動によるものであり、
1691〜1697cm
−1のものはカルボニル基の対称的な伸縮振動によるものであり
、芳香族環の不存在により、イミドカルボニル基の非共役構造は脂肪族ポリイミドの吸収
変化の原因となることを確認することができる。
【0067】
【表1】
【0068】
<実施例5〜21>
機械式攪拌機を備えた30mlの3口フラスコ中に、製造例1で得られた第1の酸二無
水物とm−クレゾール4mLを投入し、窒素ガスを徐々に流しながら、第1の酸二無水物
が完全に溶けるまで混合物を攪拌した。ここに表2に記載の第2の酸二無水物を追加投入
し、完全に溶解させた。その後、ジアミンとして4,4’−メチレンビス(シクロヘキシ
ルアミン)(MCA)(100mmol)とm−クレゾール2mlを投入した後、フラス
コを60℃まで加熱し、2日間撹拌した。ポリアミック酸を含む重縮合溶液の一部をガラ
ス板上にキャストし、真空下でガラス板に対して80℃で3時間、200℃で1時間、及
び250℃で1時間、熱を加えてポリイミドフィルムを得た。硬化の後、柔軟で支持体の
ないポリイミドフィルムを除去するために、ガラス板を熱湯に漬けてガラス板からフィル
ムを除去することにより、厚さ15μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0069】
【表2】
【0070】
<比較例1>
実施例1と同様の方法でポリイミドフィルムを製造するが、酸二無水物としてピロメリ
ット酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)を用
いてポリイミドフィルム(厚さ15μm)を製造した。
【0071】
<比較例2>
実施例1と同様の方法でポリイミドフィルムを製造するが、酸二無水物としてのピロメ
リット酸二無水物(pyromellitic dianhydride、PMDA)と
ジアミンとしての4,4’−オキシジアニリン(4,4’−oxydianiline、
ODA)を使用し、溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(N,N−Dimethy
l acetamide)を用いてポリイミドフィルム(厚さ15μm)を製造した。
【0072】
<物性評価>
実施例及び比較例で製造されたポリイミドフィルムを用いて、下記の方法で分子量、光
学特性、電気的特性及び熱的特性を測定し、その結果を表3に示した。
【0073】
(1)分子量及び分子量分布度の測定
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(Waters:Waters707)によっ
てポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めた。測定
する重合体は、4000ppmの濃度となるようにテトラヒドロフランに溶解させて、G
PCに100μlを注入した。GPCの移動相はテトラヒドロフランを使用し、1.0m
L/分の流速で流入させた。分析は35℃で行った。カラムはWaters HR−05
、1、2、4Eの4つを直列に連結した。検出器としてRI and PAD Dete
cterを用いて35℃で測定した。また、分子量分布度(PDI)は、測定された重量
平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で割って算出した。
【0074】
(2)光透過率の測定
UV分光計(Konita Minolta、CM−3700d)を用いて550nm
での透過度を測定した。
【0075】
(3)誘電率の測定
Agilent社製のE4980A precision LCR meter機器を
用いて測定し、2probe方式で上板にゴールドスパッタリングを施した。1Mhz周
波数、Aは2mm×2mmであり、フィルム厚さはポイントごとに異なるため、アルファ
ステップを用いて、各ポイントの厚さを測定して計算した。下板はITOコーティング面
を通じて中央フィルムのキャパシタンス(capacitance)を測定した。測定さ
れた値と静電容量を用いて、下記式1によって誘電率を算出した。
【0076】
K=(C×d)/(A×ε
o) (式1)
式中、Kは誘電定数であり、Cは静電容量であり、dはフィルム厚さであり、Aは試験
片(フィルム)の面積(2×2mm)であり、ε
oは真空状態の誘電定数(8.85×1
0
−12Fm
−1)である。
【0077】
(4)ガラス転移温度(Tg)の測定
Perkin Elmer社製のDSC7装置を用いて、昇温速度10℃/minで5
0〜300℃まで2nd Runを実施し、2番目の値をガラス転移温度(Tg)として
算出した。
【0078】
【表3】
【0079】
表3に示すように、実施例1〜21のフィルムは、比較例1及び2のフィルムに比べて
低い誘電定数と高い透過率を示すことが分かった。
【0080】
一方、実施例5〜21のように製造例1の酸二無水物(第1酸二無水物)に一定のモル
比の酸二無水物(第2酸二無水物)を追加して製造されたフィルムの場合には、実施例1
及び4と比較して同等程度の透過率及び誘電率を維持しながらも、ガラス転移温度が一定
のレベル上昇することが分かった。
【0081】
本発明の単純な変形又は変更はいずれも当該分野における通常の知識を有する者によっ
て容易に実施でき、それらの変形又は変更はいずれも本発明の領域に含まれるものと理解
できる。
前記ジアミンは、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、1,3−ビス(4,4’−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ジアミノ−1,5−フェノキシペンタン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルプロパン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノナフタレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、及びこれらの混合物よりなる群から選択される芳香族ジアミン;1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(MCA)、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)(MMCA)、及びこれらの混合物よりなる群から選択される脂環式ジアミン;及びエチレンジアミン(EN)、1,3−ジアミノプロパン(13DAP)、テトラメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン(16DAH)、1,12−ジアミノドデカン(112DAD)、及びこれらの混合物よりなる群から選択される脂肪族ジアミンの中から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドの製造方法。
前記ジアミンは、1,6−ヘキサメチレンジアミン(16DAH)、1,12−ジアミノドデカン(112DAD)、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン(MCA)、及び4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキシルアミン)(MMCA)よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドの製造方法。
前記酸二無水物は、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物(TDA)、ピロメリット酸二無水物(1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)、スルホニルジフタル酸無水物(SO2DPA)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、イソプロピリデン二フェノキシビスフタル酸無水物(6HBDA)、ビシクロ[2.2.2]−7−オクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BTA)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、及びビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HBPDA)よりなる群から選択される1種以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリイミドの製造方法。