特開2019-194955(P2019-194955A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-194955(P2019-194955A)
(43)【公開日】2019年11月7日
(54)【発明の名称】全固体電池用正極合材
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20191011BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20191011BHJP
【FI】
   H01M4/13
   H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-88732(P2018-88732)
(22)【出願日】2018年5月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】長井 英里香
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA10
5H050DA13
5H050EA15
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】抵抗増加が抑制された、全固体電池用正極合材を提供する。
【解決手段】ここに開示される全固体電池用正極合材は、正極活物質と、固体電解質と、導電助剤とを含有する。前記導電助剤は、LiFのコート層を有する。前記コート層の厚さは、5nm以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質と、固体電解質と、導電助剤とを含有する全固体電池用正極合材であって、
前記導電助剤は、LiFのコート層を有し、
前記コート層の厚さは、5nm以下である、
全固体電池用正極合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池用正極合材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池等の二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
【0003】
二次電池は、その普及に伴い、さらなる高性能化が望まれている。高性能の二次電池として、電解液を固体電解質で置換した全固体電池が注目されている。液系電池の正極合材は、活物質および導電助剤を含有するのに対し、全固体電池の正極合材は、活物質および導電助剤に加えて固体電解質を含有する。全固体電池の正極合材は、導電助剤と固体電解質が反応して高抵抗物質が生成することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】M. Hirayama et. Al., “Bulk-Type All Solid-State Batteries with 5 V Class LiNi0.5Mn1.5O4 Cathode and Li10GeP2S12 Solid Electrolyte” Chem. Mater., 2016, 28 (8), pp 2634-2640
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、全固体電池の正極合材においては、導電助剤と固体電解質との反応により、抵抗が増加するという問題がある。
そこで、本発明の目的は、抵抗増加が抑制された、全固体電池用正極合材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される全固体電池用正極合材は、正極活物質と、固体電解質と、導電助剤とを含有する。前記導電助剤は、LiFのコート層を有する。前記コート層の厚さは、5nm以下である。
このような構成によれば、導電助剤は、トンネル効果により正極活物質に電子を供給する一方で、固体電解質には電子を供給しない。そのため、導電助剤と固体電解質との反応を抑制することができ、高抵抗物質の生成を抑制することができる。したがって、このような構成によれば、抵抗増加が抑制された、全固体電池用正極合材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】従来の全固体電池用正極合材の構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る全固体電池用正極合材の構成を示す模式図である。
図3】実施例における高温下高電位保持後の各評価用全固体電池の反応抵抗の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない全固体電池用正極合材の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0009】
本実施形態に係る全固体電池用正極合材は、正極活物質と、固体電解質と、導電助剤とを含有する。当該導電助剤は、LiFのコート層を有する。当該コート層の厚さは、5nm以下である。
【0010】
正極活物質には、全固体電池の正極活物質として公知の材料を使用することができ、好ましくは、Li/Li基準で3.0V以上でLiイオンを吸蔵および放出可能な材料が用いられる。その例としては、LiCoO、LiNiO、LiNiCoMn(1−x−y)(ここで、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1)等の層状構造の複合酸化物;LiNiMn、LiMn、Li1+aMn2−b(ここで、Mは存在しないか、Al、Mg、Co、Fe、Ni、およびZnからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属元素、0≦a<1、0≦b<2)等のスピネル構造の複合酸化物、LiFePO等のオリビン構造のポリアニオン系化合物などが挙げられる。あるいは、正極活物質として、硫黄、硫化リチウム等を用いてもよい。
正極活物質と固体電解質との反応を抑制するために、正極活物質の表面に、イオン伝導性酸化物を含むコート層を設けてもよい。
正極活物質の形状は、特に限定されないが、例えば、粒子状である。
正極活物質の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、例えば0.5μm〜20μmであり、好ましくは1μm〜10μmである。なお、正極活物質の平均粒子径(D50)は、レーザ回折・散乱法により求めることができる。
本実施形態に係る正極合材中の正極活物質の含有量は、特に限定されないが、例えば30質量%以上、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上90質量%以下である。
【0011】
固体電解質は、正極活物質にイオンを供給する役割を有する。固体電解質には、全固体電池において固体電解質として公知の化合物を使用することができる。その例としては、酸化物系固体電解質、硫化物系固体電解質等が挙げられる。酸化物系固体電解質の例としては、NASICON構造、ガーネット型構造、またはペロブスカイト型構造を有する酸化物等が挙げられる。
酸化物系固体電解質の典型例としては、一般式:LiAO(ここでAは、B、C、Al、Si、P、S、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、またはWであり、mおよびnは正の実数である)で表されるものを挙げることができる。その具体例としては、LiBO、LiBO、LiCO、LiAlO、LiSiO、LiSiO、LiPO、LiSO、LiTiO、LiTi12、LiTi、LiZrO、LiNbO、LiMoO、LiWO等が挙げられる。あるいは、LiO−B−P系、LiO−SiO系、LiO−B系、LiO−B−ZnO系等のガラスまたはガラスセラミックス等も例示される。
【0012】
硫化物系固体電解質の例としては、LiS−SiS系、LiS−P系、LiS−P系、LiS−GeS系、LiS−B系、LiPO−P系、LiSiO−LiS−SiS系等のガラスまたはガラスセラミックスが挙げられる。
【0013】
高いイオン伝導性を有するという観点から、硫化物系固体電解質が好ましい。
より高いイオン伝導性を実現するという観点から、LiSとハロゲン化リチウム(例えばLiCl、LiBr、LiI)とから構成されるLiSベースの固溶体がより好ましい。その好適例として、LiBr−LiS−P、LiI−LiS−P、LiBr−LiI−LiS−P等が挙げられる。
【0014】
固体電解質の形状は、特に限定されないが、例えば、粒子状である。
固体電解質の平均粒子径(D50)は、特に限定されないが、例えば0.5μm〜10μmであり、好ましくは1μm〜5μmである。なお、固体電解質の平均粒子径(D50)は、レーザ回折・散乱法により求めることができる。
【0015】
固体電解質は公知方法に従い、製造することができる。例えば、固体電解質の出発原料に、ボールミル処理等により機械的エネルギーを付与して化学反応させる方法、固体電解質の出発原料を、有機溶媒を用いて液相反応させる方法等が挙げられる。出発原料は特に限定されず、固体電解質の合成の出発原料として公知のものを好適に使用することができる。出発原料は、ハロゲン、Ge、Si、Sn、Al等の元素を含有していてもよい。ボールミル処理は、湿式であっても乾式であってもよい。また、ボールミル以外の機械的エネルギーを付与する手段を採用してもよい。固体電解質の合成後、必要に応じてLiイオン伝導度が良好な結晶相が生成する温度で焼結してもよい。
【0016】
本実施形態に係る正極合材中の正極活物質と固体電解質との配合比には特に制限はない。典型的には、正極活物質(P)と固体電解質(S)との質量比(P:S)が、50:50〜95:5の範囲内にある。
【0017】
導電助剤は、正極活物質に電子を供給する役割を有する。導電助剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等の炭素繊維;活性炭、カーボン、グラファイト、グラフェン、フラーレン等の炭素材料を用いることができる。なかでも、カーボンブラックは、添加量に対する電子伝導度が高いという利点を有するため好ましい。
導電助剤の形状は、特に限定されないが、例えば、粒子状である。
導電助剤の平均一次粒子径は、特に限定されないが、例えば10nm以上200nm以下であり、好ましくは15nm以上100nm以下である。なお、導電助剤の平均一次粒子径は、例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)等の電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて30個以上の一次粒子径を測定し、それらの算術平均として得られる値を採用することができる。
【0018】
本実施形態においては、導電助剤は、LiFのコート層を有し、当該コート層の厚さが5nm以下である。
このような構成によれば、抵抗増加が抑制された、全固体電池用正極合材を提供することができる。その理由は以下の通りである。
図1に、従来の全固体電池用正極合材の構成を模式的に示す。図2に、本実施形態に係る全固体電池用正極合材の構成を模式的に示す。
図1に示すように、従来技術においては、導電助剤130は、正極活物質110に電子を供給する一方で、隣接する固体電解質へ120も電子を供給しようとする。そのため、導電助剤130と固体電解質120とが反応し、固体電解質120の表層部で分解が起こって高抵抗物質が生成する。
そこで、本実施形態においては、図2に示すように導電助剤30を、LiFのコート層32にて被覆する。LiFは誘電体であるため、5nm以下の薄膜である場合には、トンネル効果により隣接する物質に電子を受け渡すことができる。トンネル効果は、電子伝導性の高い物質同士の界面でのみ起こるため、正極活物質10と導電助剤30との界面、導電助剤30と別の導電助剤30との界面、導電助剤30と電極金属との界面でのみ、電子の受け渡しが行われ、導電助剤30と固体電解質20との界面では電子の受け渡しが行われない。したがって、導電助剤30に厚さが5nm以下のLiFのコート層32を形成することにより、選択的に電子パスを形成して固体電解質20への電子の供給を抑制し、これにより固体電解質20の分解を抑制することができる。
【0019】
LiFのコート層の厚さは、好ましくは1nm以上5nm以下であり、より好ましくは2nm以上5nm以下である。
LiFのコート層は、好ましくはLiFのみからなるが、本発明の効果を阻害しない範囲内で、LiF以外の物質を含有していてもよい。
なお、LiFのコート層は、例えば、真空蒸着法により、導電助剤の表面に設けることができる。真空蒸着法によれば、LiFのコート層の厚さの制御も容易である。
【0020】
本実施形態に係る正極合材中の導電助剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、1質量%〜30質量%であり、好ましくは2質量%〜25質量%である。
【0021】
本実施形態に係る正極合材は、正極活物質、導電助剤、および固体電解質以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分の例としては、バインダ等が挙げられる。バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系バインダや、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系バインダを好適に使用することができる。
本実施形態に係る正極合材中のバインダの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5質量%〜15質量%であり、好ましくは1質量%〜12質量%である。
【0022】
本実施形態に係る全固体電池用正極合材は、公知方法に従い、作製し、使用することができる。
例えば、正極活物質、導電助剤、および固体電解質を溶媒の存在下で混合して正極合材ペーストを作製し、当該正極合材ペーストをアルミニウム箔等の正極集電体上に塗布し、乾燥し、必要に応じプレス処理を行う。このようにすれば、正極合材を、正極集電体上に正極合材層が設けられた正極の形態として用いることができる。
あるいは、例えば、正極活物質、導電助剤、および固体電解質を混合し、プレス処理した形態や、正極活物質、導電助剤、および固体電解質の混合物にボールミル処理等により物理的エネルギーを付与することにより、これらを複合化した形態等で用いることができる。
本実施形態に係る正極合材を用いて全固体電池を製造することにより、抵抗増加が抑制された全固体電池を得ることができる。全固体電池の製造は、公知方法に従い行うことができる。
【0023】
本実施形態に係る正極合材を使用した全固体電池の構成の一例について説明する。
全固体電池は、例えば、全固体リチウム電池である。
全固体電池は、正極と、負極と、固体電解質層とを有する。
正極は、正極集電体と、当該正極集電体上に設けられた正極合材層を有する。正極集電体としては、アルミニウム箔が好適に用いられる。正極合材層は、本実施形態に係る正極合材により構成される層である。
【0024】
負極は、負極集電体と、当該負極集電体上に設けられた負極合材層を有する。負極集電体としては、リチウム金属と合金化し難い材料が用いられ、銅箔が好適に用いられる。負極合材層は、負極活物質、および固体電解質を含有する。負極活物質としては、黒鉛等の炭素系負極活物質、ケイ素系負極活物質、スズ系負極活物質等を用いることができる。固体電解質としては、本実施形態に係る正極合材に使用される固体電解質と同様のものを用いることができる。負極合材層は、導電材、バインダ、増粘剤等をさらに含有していてもよい。
なお、負極として、金属リチウム、リチウム合金等から構成される金属負極を用いてもよい。
【0025】
固体電解質層は、正極と負極との間に存在することにより、正極と負極とを離間する。固体電解質層に含有される固体電解質としては、本実施形態に係る正極合材に使用される固体電解質と同様のものを用いることができる。固体電解質層は、固体電解質以外の成分を含有していてもよい。ただし、固体電解質層は、通常、活物質を含有しない。
【0026】
全固体電池においては、複数の正極、複数の負極、および複数の固体電解質層が積層された構成を有していてもよい。
全固体電池は、正極、負極、および固体電解質層を収容するケースを備える。ケースは、ラミネートケース、アルミニウム製等の角型のケースなどであってよい。
また、全固体電池は、正極および負極にそれぞれ接続された正極端子および負極端子を備える。
【0027】
全固体電池は、拘束されていてもよい。このとき、複数の全固体電池が電気的に接続された状態で拘束されたバッテリパックの形態にあってよい。
【0028】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0029】
〔導電助剤の作製〕
アセチレンブラックを準備した。
このアセチレンブラックを粉末蒸着装置にセットした。LiFターゲットを用い、1×10−4Paの真空下0.01nm/secの蒸着速度で、アセチレンブラックにLiFを蒸着した。このようにして、導電助剤として、厚さが5nmのLiFコート層を有するアセチレンブラックおよび厚さが30nmのLiFコート層を有するアセチレンブラックを作製した。
また、一部のアセチレンブラックについては、リファレンス用の導電助剤として、蒸着を行わなかった。
【0030】
〔固体電解質の作製〕
LiS 55.9質量部、P 95.5質量部、およびLiI 44.6質量部を、Ar雰囲気のグローブボックス中で、これらの合計が2.00gとなるように秤量した。これらをメノウ乳鉢に加え、15分間混合した。混合物を45mLのZrOポットに加え、ZrOボール(φ5mm、32g)を投入した後、ポットを密閉した。ポットを遊星型ボールミル機(フリッチュ製P7)に取り付け、550rpmで1時間のミリングおよび5分休止を1セットとする粉砕を40セット(すなわち、計40時間)行うことにより、混合物のメカニカルミリングを行った。その後、試料を解粉し、ペレット化したものを石英管に加え、真空封入した。昇温速度5℃/minで190℃まで昇温し、1時間保持後、自然冷却した。このようして、硫化物固体電解質を得た。
【0031】
〔正極合材の作製〕
層状構造のLiNi1/3Co1/3Mn1/3(日亜化学工業社製)と、上記の固体電解質と、上記の導電助剤とを体積比60:40:5で、分散媒としての脱水ヘプタン中に分散させ、超音波ホモジナイザーを用いて10分間撹拌した。得られた分散液を80℃のホットスラーラー上に置き、蒸発乾固させることにより正極合材を得た。なお、導電助剤として、厚さが5nmのLiFコート層を有するアセチレンブラック、厚さが30nmのLiFコート層を有するアセチレンブラック、および蒸着を行わなかった(即ち、LiFコート層無しの)アセチレンブラックを用いた。
【0032】
〔評価用全固体電池の作製〕
上記の固体電解質130mgをセルに入れ、4tonで1分間プレスした。次いで、正極合材100mgをセルに入れ、3tonで1分間プレスした。固体電解質の、正極合材の配置されている面とは反対側の面にLi−In合金箔を設置した。これを集電体としてのSUSピンで挟み込んだ後、6Nトルクのボルトを用いて拘束した。評価用全固体電池は、厚さが5nmのLiFコート層を有するアセチレンブラックを用いたもの、厚さが30nmのLiFコート層を有するアセチレンブラックを用いたもの、LiFコート層無しのアセチレンブラックを用いたものの3種を作製した。
【0033】
〔活性化処理〕
上記作製した各評価用全固体電池を、3.0Vから4.55Vの電圧範囲で1/10Cのレートでの充放電を3回繰り返すことによって、活性化処理を行った。
【0034】
〔高温高電位保存評価〕
活性化したLiFコート層無しのアセチレンブラックを用いた評価用全固体電池に対し、25℃の温度環境下で交流インピーダンス測定装置Solatron1260(ソーラトロン社製)を用いて、印加電圧10mV、測定周波数域0.01〜1MHzで交流インピーダンス測定を行い、反応抵抗を求めた。
次いで、活性化した各評価用全固体電池を4.55Vまで充電し、60℃で100時間保存した。その後、交流インピーダンス測定を行った。
【0035】
結果を図3に示す。図3では、LiFコート層無しのアセチレンブラックを用いた評価用全固体電池の保存前の反応抵抗を1とした場合の、高温下高電位で保存した後の各評価用全固体電池の反応抵抗の比を示している。
図3に示されるように、LiFコート層無しのアセチレンブラックを用いた評価用全固体電池では、保存後に反応抵抗が大きく増加した。これは、正極活物質と固体電解質との界面および導電助剤と固体電解質との界面に、抵抗物となる固体電解質の分解物が生成したためである。
LiFコート層の厚さが5nmであるアセチレンブラックを用いた評価用全固体電池では、保存後の反応抵抗の増加は、わずかであり、その反応抵抗は、LiFコート層無しのアセチレンブラックを用いた評価用全固体電池の反応抵抗に比べて、0.54倍の値となった。これは、導電助剤と固体電解質との界面で起こる分解反応がLiFコート層により抑制されており、正極活物質と固体電解質との界面でのみ、抵抗物となる固体電解質の分解物が生成したためである。
LiFコート層の厚さが30nmであるアセチレンブラックを用いた評価用全固体電池では、保存後の反応抵抗が大きく増加した。これは、正極活物質と固体電解質との界面に、抵抗物となる固体電解質の分解物が生成し、また、正極活物質と導電助剤との間では、厚過ぎるLiFコート層によって導電パスが遮断されたためである。
【0036】
以上のことから、本実施形態に係る全固体電池用正極合材によれば、抵抗増加が抑制されることがわかる。
【0037】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0038】
10 正極活物質
20 固体電解質
30 導電助剤
32 LiFのコート層
図1
図2
図3