【解決手段】異方性導電フィルムは、樹脂層と、樹脂層に接した複数の導電性粒子3とを備え、樹脂層において導電性粒子3が第1の方向に配列して形成した粒子列5aが第1の方向と異なる第2の方向に複数並列され、第1の方向はフィルム1の長手方向と直交する方向を除く方向であり、粒子列5aは、導電性粒子3が第1の方向に延在する、波形状、矩形波状、ジグザグ状、又は格子状のパターンで配列されている
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が適用された異方性導電フィルム、接続構造体、及び接続構造体の製造方法の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0020】
本発明が適用された異方性導電フィルム1の製造方法の一実施形態では、
図1及び
図2に示すように、(1)同方向に連続した複数の溝が形成されたシート2の上記溝に、導電性粒子3を埋め込み、導電性粒子3を配列し(
図1(a)(b))、(2)上記溝が形成された側のシート2表面に、延伸可能なベースフィルム6上に光又は熱硬化性の樹脂層5が形成された第1の樹脂フィルム4の樹脂層5をラミネートし(
図2(a))、(3)第1の樹脂フィルム4の樹脂層5に導電性粒子3を転着させ(
図2(b))、(4)導電性粒子3が樹脂層5に転着した第1の樹脂フィルム4を、導電性粒子3の配列方向と直交する方向を除く
図2(c)中矢印A方向に1軸延伸し(
図2(c))、(5)更に導電性粒子3が配置された第1の樹脂フィルム4の樹脂層5に、ベースフィルム9上に光又は熱硬化性の樹脂層8が形成された第2の樹脂フィルム7をラミネートする工程を有する(
図2(d))。
【0021】
[シート]
同方向に連続した複数の溝が形成されたシート2は、
図3に示すように、例えば所定の溝10が形成された樹脂シートであり、例えばペレットを溶融させた状態で溝パターンが形成された金型に流し込み、冷やして固めることで所定の溝10を転写させる方法により形成することができる。あるいは、シート2は、溝パターンが形成された金型を樹脂シートの軟化点以上の温度に加熱し、当該金型に樹脂シートを押し付けることで転写する方法により形成することができる。
【0022】
シート2を構成する材料としては、熱溶融し、溝10のパターンが形成された金型の形状を転写できるいずれの材料も使用することができる。また、シート2の材料は、耐溶剤性、耐熱性、離型性を有することが好ましい。このような樹脂シートとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、PET、ナイロン、アイオノマー、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体などの熱可塑性樹脂フィルムが例示できる。あるいは、いわゆる微細な凹凸パターンが形成されたプリズムシートが例示できる。
【0023】
シート2に形成される溝10のパターンは、
図3に示すように、同方向に連続する複数の溝が、当該溝の長手方向と直交する方向に隣接して形成される。溝10は、
図3(a)に示すように、シート2の長手方向に沿って連続させてもよく、
図3(b)に示すように、シート2の長手方向に対して斜行する方向に沿って連続させてもよい。また、溝10は、
図3(c)に示すように、シート2の長手方向に沿って蛇行させてもよく、
図3(d)に示すように、シート2の長手方向に沿って矩形波状に連続させてもよい。その他、溝10は、ジグザグ状、格子状等、あらゆるパターンで形成することができる。
【0024】
また、溝10の形状は、
図4(a)〜(j)に例示するように、種々の形状を採り得る。このとき、溝10は、導電性粒子3の充填しやすさ、及び充填された導電性粒子3の第1の樹脂フィルム4への転着のしやすさを考慮して各寸法が決められる。溝10が導電性粒子3の粒子径に対して大きすぎると、溝10の導電性粒子の保持が困難となって充填不足になり、溝10が導電性粒子3の粒子径に対して小さすぎると導電性粒子3が入らず、充填不足となる他、溝10内に嵌り、第1の樹脂フィルム4へ転写不能となる。したがって、例えば、溝10は、幅Wが、導電性粒子3の粒子径の1倍〜2.5倍未満、且つ深さDが、導電性粒子3の粒子径の0.5〜2倍に形成される。また、溝10は、幅Wが、導電性粒子3の粒子径の1倍〜2倍未満、且つ深さDが、導電性粒子3の粒子径の0.5〜1.5倍とすることが好ましい。
【0025】
[導電性粒子]
導電性粒子3としては、異方性導電フィルムにおいて使用されている公知の何れの導電性粒子を挙げることができる。導電性粒子3としては、例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、或いは、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートしたもの等が挙げられる。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものである場合、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を挙げることができる。
【0026】
このような導電性粒子3は、シート2の溝10に充填されることにより、溝10に沿って配列される。例えば、導電性粒子3は、
図1(a)に示すように、シート2の表面に密接するスキージ12によって溝10内に充填される。シート2は、傾斜面13に配置されるとともに、
図1(a)中矢印Dで示す下方に搬送される。導電性粒子3は、スキージ12よりシート2の搬送方向上流側に供給され、シート2の搬送に伴って溝10内に充填、配列されていく。
【0027】
なお、導電性粒子3は、
図1(b)に示すように、矢印Uで示す傾斜面13の上方に搬送されるシート2のスキージ12より搬送方向上流側に供給され、シート2の搬送に伴って溝10内に充填、配列されるようにしてもよい。また、導電性粒子3は、スキージ12を用いる方法の他にも、シート2の溝10が形成された面に導電性粒子3を振り掛けた後、超音波振動、風力、静電気、シート2の背面側から磁力などの一又は複数の外力を作用させて溝10に充填、配列するようにしてもよい。さらに、導電性粒子3は、溝10への充填、配列をウェット状態で処理をおこなってもよく(湿式)、あるいはドライ状態で処理してもよい(乾式)。
【0028】
[第1の樹脂フィルム/樹脂層/延伸性ベースフィルム]
溝10に導電性粒子3が充填、配列されたシート2にラミネートされる第1の樹脂フィルム4は、延伸可能なベースフィルム6上に光又は熱硬化性の樹脂層5が形成された熱硬化型あるいは紫外線硬化型の接着フィルムである。第1の樹脂フィルム4は、シート2にラミネートされることにより、溝10のパターンに配列された導電性粒子3が転着され、異方性導電フィルム1を構成する。
【0029】
第1の樹脂フィルム4は、例えば膜形成樹脂、熱硬化性樹脂、潜在性硬化剤、シランカップリング剤等を含有する通常のバインダー樹脂(接着剤)がベースフィルム6上に塗布されることにより樹脂層5が形成されるとともに、フィルム状に成型されたものである。
【0030】
延伸可能なベースフィルム6は、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene-1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等にシリコーン等の剥離剤を塗布してなる。
【0031】
樹脂層5を構成する膜形成樹脂としては、平均分子量が10000〜80000程度の樹脂が好ましい。膜形成樹脂としては、エポキシ樹脂、変形エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂等の各種の樹脂が挙げられる。中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂が特に好ましい。
【0032】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、市販のエポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0033】
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0034】
アクリル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じてアクリル化合物、液状アクリレート等を適宜選択することができる。例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エポキシアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、テトラメチレングリコールテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等を挙げることができる。なお、アクリレートをメタクリレートにしたものを用いることもできる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
潜在性硬化剤としては、特に限定されないが、例えば、加熱硬化型、UV硬化型等の各種硬化剤が挙げられる。潜在性硬化剤は、通常では反応せず、熱、光、加圧等の用途に応じて選択される各種のトリガにより活性化し、反応を開始する。熱活性型潜在性硬化剤の活性化方法には、加熱による解離反応などで活性種(カチオンやアニオン、ラジカル)を生成する方法、室温付近ではエポキシ樹脂中に安定に分散しており高温でエポキシ樹脂と相溶・溶解し、硬化反応を開始する方法、モレキュラーシーブ封入タイプの硬化剤を高温で溶出して硬化反応を開始する方法、マイクロカプセルによる溶出・硬化方法等が存在する。熱活性型潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素−アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミン塩、ジシアンジアミド等や、これらの変性物があり、これらは単独でも、2種以上の混合体であってもよい。中でも、マイクロカプセル型イミダゾール系潜在性硬化剤が好適である。
【0036】
シランカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ系、アミノ系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等を挙げることができる。シランカップリング剤を添加することにより、有機材料と無機材料との界面における接着性が向上される。
【0037】
なお、第1の樹脂フィルム4は、取り扱いの容易さ、保存安定性等の見地から、樹脂層5のベースフィルム6が積層された面とは反対の面側にカバーフィルムを設ける構成としてもよい。また、第1の樹脂フィルム4の形状は、特に限定されないが、巻取リールに巻回可能な長尺シート形状とすることにより、所定の長さだけカットして使用することができる。
【0038】
[第2の樹脂フィルム]
また、導電性粒子3が転着された第1の樹脂フィルム4にラミネートされる第2の樹脂フィルム7も、第1の樹脂フィルム4と同様に、ベースフィルム9上に光又は熱硬化性の樹脂層8が形成された熱硬化型あるいは紫外線硬化型の接着フィルムである。第2の樹脂フィルム7の樹脂層8は第1の樹脂フィルム4の樹脂層5と同一のものを用いることができ、ベースフィルム9は第1の樹脂フィルム4のベースフィルム6と同一のものを用いることができる。第2の樹脂フィルム7は、導電性粒子3が転着された第1の樹脂フィルム4にラミネートされることにより、第1の樹脂フィルム4とともに異方性導電フィルム1を構成する。
【0039】
このような異方性導電フィルム1は、ベースフィルム6,9が剥離された後、例えば電子部品のバンプと配線板の電極端子との間にこれを挟み込み、加熱押圧ヘッド(図示せず)により加熱及び加圧することで流動化して導電性粒子3がバンプと電極端子との間で押し潰され、加熱あるいは紫外線照射により、導電性粒子3が押し潰された状態で硬化する。これにより、異方性導電フィルム1は、電子部品と配線板とを電気的、機械的に接続する。
【0040】
[異方性導電フィルムの製造方法]
次いで、異方性導電フィルム1の製造工程について説明する。
【0041】
先ず、溝10が所定のパターンで形成されたシート2の上記溝10に導電性粒子3を充填、配列する(
図1(a)(b)参照)。溝10への導電性粒子3の充填、配列は、スキージを用いた方法や、超音波振動、風力、静電気、シート2の背面側から磁力などの一又は複数の外力を作用させる方法等を用いることができる。
【0042】
次いで、導電性粒子3が配列された側のシート2表面に、第1の樹脂フィルム4の樹脂層5をラミネートする(
図2(a)参照)。ラミネートは、樹脂層5をシート2表面に配置した後、加熱押圧ヘッドによって低圧で押圧するとともに、適宜、バインダー樹脂がタック性を示すが熱硬化を開始しない温度で短時間、熱加圧することによって行う。
【0043】
第1の樹脂フィルム4をラミネートし、冷却した後、シート2と第1の樹脂フィルム4とを剥離することにより、導電性粒子3が第1の樹脂フィルム4へ転着される(
図2(b)参照)。第1の樹脂フィルム4は、樹脂層5の表面に導電性粒子3が溝10のパターンに応じたパターンで配列されている。
【0044】
次いで、第1の樹脂フィルム4を、導電性粒子3の配列方向と直交する方向を除く方向に1軸延伸する(
図2(c)参照)。これにより
図5、
図6に示すように、導電性粒子3が分散される。ここで、延伸方向から導電性粒子3の配列方向と直交する方向を除くのは、当該方向は既に溝10のパターンに応じて配列されることにより導電性粒子3が分離されているからである。そして、第1の樹脂フィルム4は、当該方向を除く方向に1軸延伸されることにより、配列方向に密着していた導電性粒子3を分離させることができる。
【0045】
したがって、
図5では、同図中矢印A方向に延伸させることが好ましく、矢印Z方向へは延伸させない。また、
図6では、同図中矢印Z方向を除く任意の1方向、例えば第1の樹脂フィルム4の長手方向である同図中矢印A方向に延伸させることが好ましい。
【0046】
第1の樹脂フィルム4の延伸は、例えばパンタグラフ方式の延伸機を用いて、130℃のオーブン中で1軸方向に200%引き延ばすことにより行うことができる。また、第1の樹脂フィルム4の長手方向に1軸延伸することにより、精度よく且つ容易に延伸させることができる。
【0047】
次いで、導電性粒子3が配置された第1の樹脂フィルム4の樹脂層5に、第2の樹脂フィルム7の樹脂層8をラミネートする(
図2(d)参照)。第2の樹脂フィルム7のラミネートは、樹脂層8を第1の樹脂フィルム4の樹脂層5表面に配置した後、加熱押圧ヘッドによって低圧で押圧するとともに、適宜、バインダー樹脂がタック性を示すが熱硬化を開始しない温度で、短時間で熱加圧することによって行う。
【0048】
以上により、異方性導電フィルム1が製造される。かかる異方性導電フィルム1によれば、予めシート2の溝10のパターンに応じて導電性粒子3が配列されているため、これを転着した第1の樹脂フィルム4を1軸延伸させることで、導電性粒子3を一様に分散することができる。したがって、異方性導電フィルム1に含有させる導電性粒子3を、フィルム全面に一様に分散させるのに必要最小限の量で足り、過剰に含有させる必要がない。また、異方性導電フィルム1は、余剰の導電性粒子3による端子間ショートを引き起こすおそれもない。また、異方性導電フィルム1は、導電性粒子3が一様に分散されているため、狭ピッチ化された電極端子においても確実に導通を図ることができる。
【0049】
なお、上述したように、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルム1の製造方法では、1軸延伸する際に200%、換言すると、当該第1の樹脂フィルム4の元の長さの150%より長く引き延ばしているが、延伸率は、特に限定されない。すなわち、導電性粒子3が転着された第1の樹脂層5を含む第1の樹脂フィルム4を導電性粒子3の配列方向と直交する方向を除く方向に1軸延伸する際に、150%より長く1軸延伸して、異方性導電フィルム1を製造することも可能である。なお、本実施形態では、後述の実施例に記載のように、第1の樹脂フィルム4を1軸延伸する際に、延伸率が700%までは、適用可能である旨が確認されている。また、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルム1の製造方法は、700%以下に限定されるものではない。
【0050】
このように、第1の樹脂フィルム4の元の長さの150%より長く1軸延伸することによって、異方性導電フィルム1におけるショート発生率の低減を図れる。また、電極端子の間隔がある程度以上の大きさを有する接続構造体等に使用される異方性導電フィルムを製造する際にも、本実施形態に係る異方性導電フィルムの製造方法を適用して、端子間の導通を確実にする異方性導電フィルムを製造できるようになる。すなわち、本実施形態に係る異方性導電フィルムの製造方法は、ファインピッチ対応以外の異方性導電フィルムの製法にも適用できる。
【0051】
[異方性導電フィルム]
次に、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルムの構成について、図面を使用しながら説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルムの部分斜視図であり、
図8(a)は、
図7のP−P断面図であり、
図8(b)は、
図7のQ−Q断面図であり、
図9は、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルムの導電性粒子の配列状態を示す平面図である。
【0052】
本実施形態の異方性導電フィルム1は、
図7に示すように、第1の樹脂フィルム4と第2の樹脂フィルム7とを含む2層以上のフィルム層から構成されている。第1の樹脂フィルム4は、バインダー樹脂(接着剤)がベースフィルム6上に塗布されることによって樹脂層(第1の樹脂層)5が形成されると共に、フィルム状に成型された樹脂フィルムである。第2の樹脂フィルム7は、ベースフィルム9上に光又は熱硬化性の樹脂層(第2の樹脂層)8が形成された熱硬化型あるいは紫外線硬化型の接着フィルムであり、複数の導電性粒子3が転着された第1の樹脂層5を含む第1の樹脂フィルム4にラミネートされた樹脂フィルムである。
【0053】
このように、本実施形態の異方性導電フィルム1は、第1の樹脂フィルム4に第2の樹脂フィルム7をラミネートさせて、第1の樹脂層5と第2の樹脂層8との間に複数の導電性粒子3を保持した構成となっている。なお、本実施形態では、異方性導電フィルム1は、第1の樹脂層5とベースフィルム6からなる第1の樹脂フィルム4と、第2の樹脂層8とベースフィルム9からなる第2の樹脂フィルム7の2層から構成されているが、異方性導電フィルム1は、少なくとも2層構成よりなるものであればよいので、例えば、第3の樹脂層等の別の樹脂層をラミネートさせた構成の異方性導電フィルムにも、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルム1を適用できる。
【0054】
導電性粒子3は、
図7に示すように、第1の樹脂層5において、X方向(第1の方向)に規則的に配列して形成される。また、粒子列3aがX方向と異なるY方向(第2の方向)に規則的に複数並列することによって、これらの導電性粒子3は、分散された状態となる。また、導電性粒子3は、所定の間隔で配列されてもよい。本実施形態では、第1の樹脂層5は、
図7及び
図8(a)に示すように、粒子列5aの各列間がX方向に延在するように尾根状に形成された凸部14となっている。すなわち、第1の樹脂層5では、X方向に延在した凸部14がY方向に所定の間隔ごとに形成されている。
【0055】
そして、
図7に示すように、第1の樹脂層5では、これら凸部14の間にX方向に延在する溝形状の凹部15が形成され、導電性粒子3は、これらの凹部15内に規則的に配置される。なお、このX方向(第1の方向)とY方向(第2の方向)の方向性は、光学的な違いとして現れる場合もある。これは、X方向に第1の樹脂層5が延伸されることで、導電性粒子3の間に溝形状となる空隙が少なからず生じることによる。この空隙が後述するクリアランス16である。このような空隙は、導電性粒子3が直線状に配列した状態で延伸されたことにより生じる。すなわち、延伸時の導電性粒子3近傍の少なくとも1つの略直線状には、第1の樹脂層5が備わらないか、それに近い状態が生じ、このことが導電性粒子3の圧着時の移動性に影響を及ぼす。このことは、後述する凹部15および凸部14とも関連する。
【0056】
なお、当該クリアランス16は、第1の樹脂フィルム4を延伸させた際に生じた空隙であるため、導電性粒子3近傍の延伸方向における第1の樹脂層5の厚みは、急峻な断崖のような状態が生じることになる。前述したように、第1の樹脂フィルム4の延伸方向に当該状態が生じるため、第1の方向における導電性粒子3の間には、
図8(b)に示すように、略直線状に2箇所の同一の断崖部5c、5dが導電性粒子3を保持した状態になる。これにより、接合時に導電性粒子3が移動する場合の方向が依存されることになる。また、本実施形態では、X方向(第1の方向)とは、異方性導電フィルム1の長手方向を示し、Y方向(第2の方向)とは、異方性導電フィルム1の幅方向を示すものとする。
【0057】
上述したように、第1の樹脂層5には、X方向に延在するように、複数の凸部14と凹部15がそれぞれ並列するように形成されている。そして、各凹部15には、複数の導電性粒子3が規則的に配列されているので、当該凹部15において、粒子列3aを構成する導電性粒子3の間は、クリアランス16となり、
図7及び
図8(b)に示すように、当該クリアランス16に第2の樹脂層8が浸入している。このようにして、導電性粒子3が第1の樹脂層5と第2の樹脂層8との間に分散保持されるようになる。なお、本実施形態では、導電性粒子3が第1の樹脂層5と第2の樹脂層8との間に分散保持された構成となっているが、導電性粒子3は、転写した際における外力等によって第1の樹脂層5に埋没され、延伸された場合には、第1の樹脂層5内にのみ存在する。本発明の一実施形態では、導電性粒子3が第1の樹脂層5に埋没されてから延伸された構成も含むものとする。すなわち、本実施形態の異方性導電フィルム1は、導電性粒子3が第1の樹脂層5と第2の樹脂層8のうち、少なくとも第1の樹脂層5のみに接している構成のものも含む。この場合においても、導電性粒子3近傍の第1の樹脂層5は、略直線状に2箇所の同一の断崖部5c、5dがある状態となる。これは上述の理由による。
【0058】
このように、本実施形態では、狭ピッチ化対応の異方性導電フィルム1において、一様に分散させた導電性粒子3の位置制御を確実に行えるので、狭ピッチ化された端子同士における導通を確実に図ることができるようになる。なお、本実施形態では、異方性導電フィルム1の接続信頼性を保持するために、異方性導電フィルム1は、X方向における導電性粒子3の間隔がY方向における導電性粒子3の間隔よりも幾分大きい構成となっており、例えば、導電性粒子3の径の半分程度大きい構成とすることが望ましい。
【0059】
また、本実施形態では、異方性導電フィルム1の製造する過程において、第1の樹脂フィルム4を導電性粒子3の配列方向と直交する方向を除く方向に1軸延伸した際に、
図7に示すように、導電性粒子3を転着した第1の樹脂層5にX方向に延在した溝形状の凹部15が形成される。そして、当該凹部15の形成に伴って、第1の樹脂層5において、X方向に延在した凸部14が形成される。
【0060】
すなわち、
図7に示すように、本実施形態に係る異方性導電フィルム1の第1の樹脂層5は、X方向における導電性粒子3の間の部位5aがY方向における導電性粒子3の間の部位5bよりも薄い構成となっている。この部位5aの位置にクリアランス16がある。そして、凹部15に配列された導電性粒子3の間に設けられるクリアランス16に第2の樹脂層8が浸入している(
図8(b)参照)。なお、第1の樹脂フィルム4を1軸延伸する際に、導電性粒子3が直列連結していた場合には、第1の樹脂フィルム4を元の長さの2倍延伸、つまり200%延伸した場合には、大半の導電性粒子3は、略同一径で直線状に密に並んでいることから、導電性粒子3の1個分のスペースが空くようになる。この導電性粒子3の1個分のスペースの空いた部分が第1の樹脂層5における空隙となるクリアランス16に相当することになる。
【0061】
このように、本実施形態では、異方性導電フィルム1は、導電性粒子3が第1の樹脂層5に転着された第1の樹脂フィルム4を導電性粒子3の配列方向と直交する方向を除く方向に、少なくとも元の長さの150%より長く1軸延伸してから、第2の樹脂層8を含む第2の樹脂フィルム7をラミネートさせて形成される。このため、導電性粒子3は、
図9に示すように、凹部15内で第1の方向(X方向)に延在するように、規則的に略直線状に配置されて、第1の樹脂層5と第2の樹脂層8との間に保持されるようになる。これは所定の間隔で配置されていてもよい。従って、狭ピッチ化対応の異方性導電フィルム1において、一様に分散させた導電性粒子3の位置制御を確実に行え、狭ピッチ化された端子同士における導通を確実に図ることができる。なお、上述の「略直線状に配置」とは、凹部15の幅方向(Y方向)における各導電性粒子3の配列のずれが粒子径の1/3以下の範囲内に収まる状態で配列されることをいう。
【0062】
[接続構造体]
次に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の構成について、図面を使用しながら説明する。
図10は、本発明の一実施形態に係る異方性導電フィルムを適用した接続構造体の構成を示す概略断面図である。本発明の一実施形態に係る接続構造体50は、例えば、
図10に示すように、前述した異方性導電フィルム1を介して、ICチップ等の電子部品52をフレキシブル配線基板や液晶パネル等の基板54上に電気的及び機械的に接続固定したものである。電子部品52には、接続端子としてバンプ56が形成されている。一方、基板54の上面には、バンプ56と対向する位置に電極58が形成されている。
【0063】
そして、電子部品52のバンプ56と基板54上に形成された電極58の間、及び電子部品52と配線基板56の間には、接着剤となる本実施形態に係る異方性導電フィルム1が介在している。バンプ56と電極58との対向する部分では、異方性導電フィルム1に含まれる導電性粒子3が押し潰されて、電気的な導通が図られている。また、それと同時に、異方性導電フィルム1を構成する接着剤成分によって、電子部品52と基板54との機械的な接合も図られている。
【0064】
このように、本発明の一実施形態に係る接続構造体50は、応力を緩和させた状態で、高い接着強度を得る異方性導電フィルム1によって、電極58が形成された基板54と、バンプ56が設けられた電子部品52とを接続して構成されている。すなわち、接続構造体50の電子部品52と基板54の接続に、本発明の一実施形態に係る異方導電性フィルム1が使用されている。
【0065】
前述したように、本発明の一実施形態にかかる異方性導電フィルム1は、第1の樹脂層5に凸部14と凹部15が形成され、当該凹部15に導電性粒子3が規則的に配列されたものを第2の樹脂層8でラミネートして、双方の樹脂層5、8に保持されている。この規則性は所定の間隔で配置されていてもよい。このため、各導電性粒子3が凸部14により確実に
図10における水平方向に移動しにくくなり、分散保持される。このため、接合時における導電性粒子3の移動は、導電性粒子3間における空隙つまりクリアランス16に依存することになり、その形状に支配される要素が大きい。
【0066】
従って、接続構造体50における基板54と電子部品52との良好な接続性を確保でき、長期間にわたり電気的及び機械的に接続の信頼性を高めることができる。すなわち、本実施形態の異方性導電フィルム1を用いることで、導通信頼性の高い接続構造体50を製造することが可能となる。なお、本実施形態に係る接続構造体50の具体例として、半導体装置、液晶表示装置、LED照明装置等が挙げられる。
【実施例】
【0067】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、溝10の形状、寸法の異なる複数のシート2を用意し、各サンプルに導電性粒子3を充填、配列させた後、第1の樹脂フィルム4に導電性粒子3を転写し、1軸延伸後に第2の樹脂フィルム7をラミネートして異方性導電フィルム1のサンプルを製造した。
【0068】
各実施例に係るシート2には、厚さ50μmのポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製:トレファン2500H)を用いた。このシート2に、所定の溝パターンが形成された金型へ180℃、30分の熱プレスを行い、溝10を形成した。シート2の溝10に充填、配列される導電性粒子3は、樹脂コア粒子にAuメッキを施したものである(積水化学株式会社製:AUL703)。この導電性粒子3をシート2の溝10の形成面に振り掛け、テフロン(登録商標)製のスキージで溝10に均一に充填、配列させた。
【0069】
また、導電性粒子3が配列されたシート2にラミネートされる第1の樹脂フィルム4、及び第1の樹脂フィルム4にラミネートされる第2の樹脂フィルム7として、マイクロカプセル型アミン系硬化剤(旭化成イーマテリアルズ株式会社製:ノバキュアHX3941HP)を50部、液状エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製:EP828)を14部、フェノキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製:YP50)を35部、シランカップリング剤(信越化学株式会社製:KBE403)を1部、を混合分散させたバインダー樹脂組成物を形成した。そして、第1の樹脂フィルム4では、当該バインダー樹脂組成物を無延伸ポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製、:トレファンNO3701J)に厚み5μmになるように塗布し、第2の樹脂フィルム7では、当該バインダー樹脂組成物を無延伸ポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製、:トレファンNO3701J)に厚み15μmになるように塗布し、これにより一面に樹脂層5又は8が形成されたシート状の熱硬化性樹脂フィルムを作成した。また、延伸前の転写までの第1の樹脂フィルム4のサイズは、20×30cmとA4サイズ程度のものを使用して、異方性導電フィルム1のサンプルを作成した。
【0070】
そして、溝10に導電性粒子3が充填、配列されたシート2に、第1の樹脂フィルム4を貼り合わせることで、導電性粒子3を第1の樹脂フィルム4の樹脂層5に転着させた。次いで、第1の樹脂フィルム4を、パンタグラフ方式の延伸機を用いて130℃のオーブン中で1軸方向に200%引き延ばすことにより延伸させた。延伸後、第2の樹脂フィルム7を第1の樹脂フィルム4の導電性粒子3が転着された樹脂層5側に貼り合わせて異方性導電フィルム1のサンプルを作成した。なお、各実施例では、粒子密度は、20000個/mm
2を一つの目安として作成しているが、当該粒子密度は、転写型となるシート2の形状や延伸の方向性等の影響を比較し、本発明の効果および特徴を明確にするために設定されたものである。従って、異方性導電フィルム1を使用する対象によって、延伸率の最適値は、異なるものであり、同様に粒子密度の最適値も異なる。
【0071】
そして、各異方性導電フィルム1のサンプルについて、粒子密度、2個連結粒子率、及び粒子密度のバラツキσを測定した。また、各異方性導電フィルム1のサンプルを用いて、ICチップのバンプと配線板の電極端子とを接続した接続構造体サンプルを製造し、隣接する電極端子間におけるショート発生率を測定した。
【0072】
実施例1では、粒子径が3μmの導電性粒子3を用いた。また、シート2に形成される溝10は、シート2の長手方向に連続するパターンを有し(
図3(a)参照)、断面が矩形状であり(
図4(a)参照)、幅Wが3.0μm、深さDが3.0μm、溝の間隔Sが5.0μmである。
【0073】
実施例2では、溝10の幅Wを5.9μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0074】
実施例3では、溝10の幅Wを3.5μm、深さDを1.5μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0075】
実施例4では、溝10の深さDを4.5μmとした他は、実施例3と同条件とした。
【0076】
実施例5では、溝10の幅Wを6.5μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0077】
実施例6では、溝10の深さを6.0μmとした他は、実施例3と同条件とした。
【0078】
実施例7では、粒子径が4.0μmの導電性粒子3(積水化学株式会社製:AUL704)を用いた。また、シート2に形成される溝10は、幅Wを4.0μm、深さDを4.0μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0079】
実施例8では、シート2に形成される溝10は、断面三角形状であり(
図4(j)参照)、幅Wが3.0μm、深さDが3.0μm、溝の間隔Sが5.0μmである。その他、導電性粒子3や溝10のパターンの条件は実施例1と同条件とした。
【0080】
比較例1では、従来の製法によって異方性導電フィルムを作成した。すなわち、上記実施例に係るバインダー樹脂組成物に、樹脂コア粒子にAuメッキを施した粒子径が3μmの導電性粒子3(積水化学株式会社製:AUL703)を5質量部分散させ、これを無延伸ポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製、:トレファンNO3701J)に厚み20μmになるように塗布し、一面に樹脂層が形成されたシート状の熱硬化性樹脂フィルムを作成した。
【0081】
実施例及び比較例に係る異方性導電フィルムを介して接続されるICチップは、寸法が1.4mm×20.0mm、厚さが0.2mm、金バンプサイズが17μm×100μm、バンプ高さが12μm、バンプスペースが11μmである。
【0082】
このICチップが実装される配線板は、ICチップのパターンに対応したアルミ配線パターンが形成されたガラス基板(コーニング社製:1737F)であり、寸法が50mm×30mm、厚さが0.5mmである。
【0083】
実施例及び比較例に係る異方性導電フィルムを介したICチップとガラス基板の接続条件は、170℃、80MPa、10秒である。
【0084】
実施例及び比較例に係る異方性導電フィルムの粒子密度は、顕微鏡を用いて、1mm
2中における導電性粒子3の数を測定した。2個連結粒子率は、顕微鏡を用いて、200μm×200μm=40000μm
2の面積中に2個以上連結している導電性粒子3の数をカウントし、平均の連結数を算出した。更に50μm×50μm=2500μm
2の面積中の粒子密度のバラつきσを算出した。
【0085】
また、接続構造体サンプルにおける隣接する電極端子間におけるショート発生率を測定した。
【0086】
前述した実施例1乃至8、及び比較例における異方性導電フィルムの各測定結果をまとめたものを表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示すように、実施例1〜8によれば、予めシート2に導電性粒子3が所定パターンで配列されているため、これを転着した第1の樹脂フィルム4を1軸延伸させることで、導電性粒子3を確実に分散することができる。したがって、実施例1〜8に係る異方性導電フィルムでは、2個連結粒子率が9%以下となった。また、実施例1〜8に係る異方性導電フィルムでは、導電性粒子3の密度が20000個/mm
2未満であり、粒子密度のバラツキ(σ)も2以下と小さく、これらを用いて製造された接続構造体サンプルの隣接する電極端子間におけるショート発生率は0%であった。
【0089】
なかでも実施例1〜4では、シート2の溝10の幅Wが、導電性粒子3の粒子径の1倍〜2倍未満であり、且つ溝10の深さDが、導電性粒子3の粒子径の0.5〜1.5倍とされているため、粒子密度も低く、2個連結粒子率も5%以下となった。
【0090】
一方、従来の異方性導電フィルムを用いた比較例1では、粒子密度が20000個/mm
2であり、2個連結粒子率も12%と増えた。また、比較例1に係る異方性導電フィルムの粒子密度バラツキ(σ)は10.2と高く、隣接する電極端子間におけるショート発生率は2%となった。
【0091】
また、シート2の溝10の幅Wの影響を見ると、実施例1のように、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の溝10の幅Wが等倍であれば、2個連結粒子が見られなかったが、実施例2及び実施例5のように、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の溝10の幅Wが2倍弱から2倍強になるに従って、2個連結粒子率が増加した。当該2個連結粒子率の増加は、シート2の溝10の幅Wが広くなると、導電性粒子3の充填にかかる応力が分散することに起因すると考えられる。このことから、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の溝10の幅Wが2倍未満であることが好ましいことが分かる。
【0092】
さらに、シート2の溝10の深さDの影響を見ると、実施例3、実施例4、及び実施例6から、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の溝10の深さDが0.5倍、1.5倍、2倍と大きくなるに従って、粒子密度及び2個連結粒子率も増加傾向を示すことが分かる。特に、実施例3、実施例4より、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の溝10の深さDが0.5〜1.5倍の場合に2個連結粒子率が5%以下となることから、異方性導電フィルム1の導通信頼性を維持するために好ましいことが分かる。
【0093】
次に、下記の実施例11乃至19における第1の樹脂フィルム4を1軸延伸する際の延伸率を150%、200%、300%、450%、700%と変化させた場合の粒子密度、2個連結粒子率、粒子密度のバラツキ、及びショート発生率について、前述した実施例1乃至8と同様の条件で測定した。なお、実施例11乃至13では、シート2の溝10の幅Wの影響について検討し、実施例14乃至16では、シート2の溝10の深さDの影響について検討し、実施例17乃至19では、シート2の溝10の間隔、すなわち粒子列間距離Sの影響について検討した。
【0094】
実施例11では、前述の実施例1と同様に、粒子径が3μmの導電性粒子3を用いた。また、シート2に形成される溝10は、シート2の長手方向に連続するパターンを有し(
図3(a)参照)、断面が矩形状であり(
図4(a)参照)、幅Wが3.0μm、深さDが3.0μm、溝の間隔Sが5.0μmである。
【0095】
実施例12では、前述の実施例2と同様に、溝10の幅Wを5.9μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0096】
実施例13では、前述の実施例5と同様に、溝10の幅Wを6.5μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0097】
実施例14では、前述の実施例3と同様に、溝10の幅Wを3.5μm、深さDを1.5μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0098】
実施例15では、前述の実施例4と同様に、溝10の深さDを4.5μmとした他は、実施例3と同条件とした。
【0099】
実施例16では、前述の実施例6と同様に、溝10の深さDを6.0μmとした他は、実施例3と同条件とした。
【0100】
実施例17では、粒子列間距離Sを3.0μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0101】
実施例18では、粒子列間距離Sを6.0μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0102】
実施例19では、粒子列間距離Sを10.5μmとした他は、実施例1と同条件とした。
【0103】
前述した実施例11乃至19における第1の樹脂フィルム4を1軸延伸する際の延伸率を150%、200%、300%、450%、700%と変化させた場合の粒子密度、2個連結粒子率、粒子密度のバラツキ、及びショート発生率の測定結果についてまとめたものを表2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
表2に示すように、実施例11乃至19によれば、粒子密度及び2個連結粒子率は、延伸の度合い(延伸率)に比例して低くなることが確認できた。これは、予めシート2に導電性粒子3が所定パターンで配列されているため、当該導電性粒子3を転着した第1の樹脂フィルム4を1軸延伸させることで、導電性粒子3が確実に分散されることに起因するものと考えられる。一方、実施例11乃至19によれば、粒子密度のバラツキ(σ)は、延伸率によらず2以下と小さい値が得られることが確認できた。
【0106】
また、実施例11乃至19によれば、ショート発生率は、延伸率が150%では、何れの実施例とも若干発生するものの、延伸率が200%以上の場合では、何れの実施例ともショート発生率が0%と発生しないことが確認できた。これは、150%延伸では、十分な導電性粒子間の距離を確保できないことから、導電性粒子3の接触確率が高まることに起因するものと考えられる。このことから、導電性粒子3を転着した第1の樹脂フィルム4を1軸延伸させる際には、少なくとも150%より大きい延伸率、すなわち元の長さの150%より長く延伸することが好ましいことが分かる。
【0107】
さらに、実施例11乃至19によれば、粒子密度は、シート2の溝10の型の形状によらず、延伸率に比例して低くなることが分かる。これらの結果から、導電性粒子3の粒子間の空隙が延伸によって生じ、一方向に依存していることも分かる。
【0108】
また、シート2の溝10の幅Wの影響を見ると、実施例11のように、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の溝10の幅Wが等倍の場合と比べて、実施例12及び実施例13のように、溝10の幅Wが広がると、粒子密度は減少し、2個連結粒子率は増加する。なお、溝10の幅Wが広くなれば、導電性粒子3が第1の樹脂層5に転着し易くなり、導電性粒子3の転写率そのものがよくなるため、粒子密度に関しては、実施例12と実施例13との相対的な差は縮まる。また、溝10の幅Wが広くなれば、導電性粒子3の配列の乱れが大きくなることから、導電性粒子3の連結そのものが増えるため、2個連結粒子率が増加する。
【0109】
さらに、シート2の溝10の深さDの影響を見ると、実施例11のように、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の溝10の深さDが等倍の場合と比べて、実施例12及び実施例13のように、溝10の深さDが大きくなると、溝10の奥まで第1の樹脂層5の樹脂が入り込むことによって、転写率がよくなることから、粒子密度が上がるのが分かる。また、溝10の深さDが大きくなると、粒子密度に比例して、2個連結粒子率が増加することが分かる。さらに、延伸率が150%におけるショート発生率を見ると、実施例14からシート2の溝10が浅いと粒子の連結が強くなることから、ショート発生率が大きくなることが分かる。
【0110】
また、シート2の粒子列間距離Sの影響を見ると、実施例17のように、導電性粒子3の粒子径に対するシート2の粒子列間距離Sが等倍の場合と比べて、実施例18及び実施例19のように、粒子列間距離Sが大きくなると、粒子密度が下がることが分かる。また、実施例17と実施例18からシート2の粒子列間距離Sが大きくなるにつれて、2個連結粒子率が増加するものの、実施例19からシート2の粒子列間距離Sが所定の値以上になると、200%以上の延伸率では、連結粒子が見られなくなることが分かる。