特開2019-196237(P2019-196237A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-196237裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-196237(P2019-196237A)
(43)【公開日】2019年11月14日
(54)【発明の名称】裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア
(51)【国際特許分類】
   B65G 45/18 20060101AFI20191018BHJP
【FI】
   B65G45/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-89719(P2018-89719)
(22)【出願日】2018年5月8日
(71)【出願人】
【識別番号】593213342
【氏名又は名称】株式会社日向製錬所
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】鶴川 和也
(72)【発明者】
【氏名】川野 幸治
(57)【要約】
【課題】粉粒体を移送するベルトコンベアにおいて、裏漏れ回収機構の回収効率を良好に維持したまま、裏漏れ回収機構の製造及び保守にかかる費用を低減することを目的とする。
【解決手段】搬送ベルト41の回送面41Bの直下の略全域に亘って設置される裏漏れ回収用樋2と、裏漏れ回収用樋2の長手方向の両端部の間において裏漏れ回収用樋2の底面21上を牽引されて往復運動することができるように設置されている掻き取り具1と、を備え、掻き取り具1は、棒状の中心軸と、複数の略同一形状のゴムブラシ121が、中心軸11に固定されてなるブラシ部12とを備え、裏漏れ回収用樋2の長手方向に直交する断面における底面21の形状と、ゴムブラシ121の断面における外周の形状と、が略同一形状である、裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア100とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個の回転ドラムの間を循環走行する無端ベルトを搬送ベルトとして備えるベルトコンベア本体と、
前記搬送ベルトの回送面の直下の略全域に亘って設置される裏漏れ回収用樋と、
前記裏漏れ回収用樋の長手方向の両端部の間において該裏漏れ回収用樋の底面上を牽引されて往復運動することができるように設置されている掻き取り具と、を備え、
前記掻き取り具は、棒状の中心軸と、複数の略同一形状のゴムブラシが、前記中心軸に固定されてなるブラシ部とを備え、
前記裏漏れ回収用樋の長手方向に直交する断面における底面の形状と、
前記ゴムブラシの前記断面における外周の形状と、が略同一形状である、
裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア。
【請求項2】
前記裏漏れ回収用樋の前記底面の形状が円弧形状であり、
前記掻き取り具の前記ブラシ部は、複数の略同一形状のリング状のゴムブラシが前記中心軸に嵌合固定されてなり、外縁の全体形状が略円筒形状であって、
前記裏漏れ回収用樋の前記底面の円弧形状と、前記ゴムブラシの外縁の円弧形状と、が同一形状である、
請求項1に記載の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア。
【請求項3】
前記ゴムブラシは、リング状の板状ゴム材の積層体であって、
前記板状ゴム材と、前記無端ベルトと、が同一の樹脂材料からなる、
請求項1又は2に記載の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア。
【請求項4】
請求項1から3に記載の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアの製造方法であって、
前記裏漏れ回収用樋に前記掻き取り具を設置する掻き取り具設置工程と、
前記掻き取り具を作成する掻き取り具作成工程と、を含んでなり、
前記掻き取り具作成工程においては、使用済みのベルトコンベア用ベルトからなるベルト廃材を切断してなるリング状の板状ゴム材を積層して前記ゴムブラシを形成する、裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
2個の回転ドラムの間を循環走行する無端ベルトを搬送ベルトとして備えるベルトコンベアにより、粉粒体等の被搬送物を移送する場合、被搬送物が搬送ベルトの表面に付着して、鉛直方向上向きの搬送ベルトの搬送面終端の折り返し地点では落下せず、折り返し後の搬送ベルトの鉛直方向下向きのベルトの回送面から下方に落下する場合がある。本明細書においては、このようにベルトコンベアの搬送ベルトの回送面から下方に落下した粉粒体等の被搬送物を「ベルトコンベアの裏漏れ」、又は単に「裏漏れ」と称するものとする。この「裏漏れ」は、ベルトコンベアの設置場所周辺の汚染や、装置内での粉粒体の蓄積によるベルトコベアの動作不良の原因となるため、様々なベルトコンベアの裏漏れ回収機構が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、パイプ状のカバーに収納されたベルトコンベアにおいて、パイプ底面に蓄積される裏漏れを、パイプ底面に沿って往復するスクレーパによってシュートにかき落として回収する機構が記載されている。又、特許文献2には、裏漏れを受ける受台と受台上面に沿って往復するスクレーパによって、裏漏れを掻き寄せて排出する裏漏れ回収機構が記載されている。
【0004】
特許文献1又は2に開示されている裏漏れ回収機構においては、使用時間が長くなるにつれて裏漏れを掻き取るスクレーパが摩耗し、掻き取り対象面であるパイプ底面や受台との間に隙間ができて回収が不充分になる。このため一定期間毎のスクレーパの更新が必要となり、保守費用が嵩むこととなる。一方で、スクレーパの摩耗を抑制するために強靭な素材を選択すると、スクレーパの材料費が高騰して製造費用が嵩み、尚且つ、パイプ底面や受台等の掻き取り対象面の摩耗が早まってしまうことが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平07−035412号公報
【特許文献2】特開平11−255323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、粉粒体を移送するベルトコンベアにおいて、裏漏れ回収機構の回収効率を良好に維持したまま、裏漏れ回収機構の製造及び保守にかかる費用を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ベルトコンベアの裏漏れ回収機構を、ベルトコンベアの設置場所において、廃材として存在する使用済みのベルトを利用して作成することが可能な形状及び構造からなる柱状のゴムブラシで、裏漏れ回収用の樋の底面の裏漏れを掻き取る機構とした。そして、尚且つ、この裏漏れ回収機構において、上記のゴムブラシの外縁と上記の樋の底面とを相互に隙間なく係合する形状とすることにより、上記課題を解決できることに想到し、本発明を完成させるに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
(1) 2個の回転ドラムの間を循環走行する無端ベルトを搬送ベルトとして備えるベルトコンベア本体と、前記搬送ベルトの回送面の直下の略全域に亘って設置される裏漏れ回収用樋と、前記裏漏れ回収用樋の長手方向の両端部の間において該裏漏れ回収用樋の底面上を牽引されて往復運動することができるように設置されている掻き取り具と、を備え、前記掻き取り具は、棒状の中心軸と、複数の略同一形状のゴムブラシが、前記中心軸に固定されてなるブラシ部とを備え、前記裏漏れ回収用樋の長手方向に直交する断面における底面の形状と、前記ゴムブラシの前記断面における外周の形状と、が略同一形状である、裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア。
【0009】
(1)の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアは、汎用的なベルトコンベア本体に、本発明特有の裏漏れ回収機構を設置したものである。この、裏漏れ回収機構は、裏漏れを受け止める裏漏れ回収用樋と、当該裏漏れ回収用樋の底面に滞留する裏漏れを掻き取るためのゴムブラシを備える掻き取り具と、により構成される。そして、この裏漏れ回収機構は、裏漏れ回収用樋の底面と掻き取り具のブラシ部の外縁とが、相互に隙間なく係合する形状とされている。これにより、掻き取り面の摩耗を抑制しながら裏漏れを良好な効率で回収することができる。又、上記のブラシ部は、通常、ベルトコンベアの設置場所において、廃材として大量に存在する使用済みのベルト(ベルト廃材)を材料として作成することができる。よって、裏漏れ回収機構の製造及び保守にかかる費用を従来よりも著しく低減させることができる。
【0010】
(2) 前記裏漏れ回収用樋の底面の前記形状が円弧形状であり、前記掻き取り具の前記ブラシ部は、複数の略同一形状のリング状のゴムブラシが、前記中心軸に嵌合固定されてなり、外縁の全体形状が略円筒形状であって、前記裏漏れ回収用樋の前記底面の円弧形状と、前記ゴムブラシの外縁の円弧形状と、が同一形状である、(1)に記載の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア。
【0011】
(2)の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアは、(1)の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアにおいて、裏漏れ回収用樋の底面と、ブラシ部を構成するゴムブラシの外縁、との接触面を同一形状の円弧形状とした。これにより、掻き取り具の交換時に、その中心軸に対する旋回位置を特定する必要がなくなるため、当該交換作業が容易となる。又、(1)のベルトコンベア本体の作動中に、掻き取り具を牽引するワイヤーの捻れ等に起因して掻き取り具が中心軸の回りを旋回したとしても、上記の接触面におけるブラシ部と樋との隙間のない密接は保持されるため、裏漏れ回収機構の裏漏れ掻き取り機能を依然として良好に維持することができる。
【0012】
(3) 前記ゴムブラシは、リング状の板状ゴム材の積層体であって、前記板状ゴム材と、前記無端ベルトと、が同一の樹脂材料からなる、(1)又は(2)に記載の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア。
【0013】
(3)の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアによれば、(1)又は(2)の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアに設置されているベルトコンベアの裏漏れ回収機構においてブラシ部を構成するゴムブラシの材料を、当該ベルトコンベアの無端ベルトと同一の材料で形成するもとした。この場合、ベルトコンベアの設置場所において、極めて低廉且つ容易に入手可能な弾性材料である使用済みのベルト廃材によって、ブラシ部を作成することができる。よって、交換のためのブラシ部の作成も含めて、裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアの製造及び保守にかかる費用を著しく低減することができる。
【0014】
(4) (1)から(3)に記載の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアの製造方法であって、前記裏漏れ回収用樋に前記掻き取り具を設置する掻き取り具設置工程と、前記掻き取り具を作成する掻き取り具作成工程と、を含んでなり、前記掻き取り具作成工程においては、使用済みのベルトコンベア用ベルトからなるベルト廃材を切断してなるリング状の板状ゴム材を積層して前記ゴムブラシを形成する、裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアの製造方法。
【0015】
(4)の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアの製造方法によれば、(1)から(3)に記載の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアの製造において、ブラシ部を構成するゴムブラシの材料を、当該ベルトコンベアの無端ベルトと同一の材料で構成するもとした。この場合、ベルトコンベアの設置場所或いは同一工場内等において、極めて低廉且つ容易に入手可能な弾性材料である使用済みのベルト廃材によって、ブラシ部を作成することができる。よって、交換のためのブラシ部の作成も含めて、裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアの製造及び保守にかかる費用を著しく廉価に低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、粉粒体を移送するベルトコンベアにおいて、裏漏れ回収機構の回収効率を良好に維持したまま、裏漏れ回収機構の製造及び保守にかかる費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のベルトコンベアの裏漏れ回収機構の全体構成を模式的に示す側面図である。
図2】本発明のベルトコンベアの裏漏れ回収機構を構成する掻き取り具の形態を示す側面図である。
図3図2の掻き取り具の内部構造を示す断面図である。
図4】本発明のベルトコンベアの裏漏れ回収機構を構成する裏漏れ回収用樋と掻き取り具との接触面の態様の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のベルトコンベアの裏漏れ回収機構の好ましい実施形態について説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0019】
<裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア>
図1に示す通り、本発明の裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア100は、裏漏れ回収機構10が、ベルトコンベア本体20の下方に設置されてなり、主として粉粒体の搬送に用いられる搬送装置である。裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア100は、例えば、フェロニッケル製錬用の原料であるニッケル酸化鉱石のように粘土状であって湿潤時と乾燥時の流動性や固着性に大きな差があるものをベルトコンベアで移送する場合には、特に有効に適用され、頻発するベルトコンベアの停止不具合を効果的に低減することができる。
【0020】
裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア100に設置される裏漏れ回収機構10は、本発明特有の構造からなる掻き取り具1と裏漏れ回収用樋2とを備える独自の機構であるが、ベルトコンベア本体20については、搬送ベルト41の回送面41Bが鉛直下方に向く構成のベルトコンベアであれば、特定のベルトコンベアに限定されない。よって、本発明は、上記構成のベルトコンベア全般に広く適用することができる技術である。
【0021】
<裏漏れ回収機構>
裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア100に設置される裏漏れ回収機構10は、ベルトコンベア本体20の搬送ベルト41の回送面41Bの直下の略全域に亘って設置される裏漏れ回収用樋2と、裏漏れ回収用樋2の長手方向の両端部の間において裏漏れ回収用樋2の底面21上を牽引されて往復運動することができるように設置されている掻き取り具1と、を備える。
【0022】
裏漏れ回収用樋2の底面21上を往復運動させるために、掻き取り具1を牽引する手段は特に限定はされないが、例えば、掻き取り具1の中心軸11の両端に電動モーター等からなる駆動装置3に接続される牽引ワイヤー31を繋いで移動が必要な方向に引っ張る手段とすることができる。このような牽引手段による場合には、吊り下げ型の重量式リミッター6を備えることがより好ましい。重量式リミッター6の設置により、裏漏れ回収機構10の何等かの不具合により、牽引ワイヤー31の動きに制限が生じた場合に、吊り下げられた錘の重力によるクッション作用で、牽引ワイヤー31の切断や、回収用溝、掻き取り具の破損を防止することができる。
【0023】
尚、裏漏れ回収用樋2の長手方向の一方の端部の下方又は両方の端部の下方には、掻き取り具1により掻き取られて、裏漏れ回収用樋2から落下させられた裏漏れを、受け止めて一時的に収納するホッパー4、5が備えられている。
【0024】
[掻き取り具]
図2及び図3に示す通り、掻き取り具1は、棒状の中心軸11と、中心軸11に固定されているブラシ部12とを備える。掻き取り具1の全体の外形は略柱状とし、図4に示す通り、掻き取り具1のゴムブラシ121の外周の形状と裏漏れ回収用樋2の長手方向に直交する断面における底面の形状と、が略同一形状であって、裏漏れ回収用樋2の底面21に掻き取り具1が隙間なく係合することができる形状であればよい。この限りにおいて、掻き取り具1の全体の外形には特段の限定はないが、但し、中心軸に対する断面形状が円形であること、即ち、全体としての外形が略円柱形状であることが好ましい。掻き取り具1と裏漏れ回収用樋2の底面21との接触面の態様の詳細については、裏漏れ回収用樋2の詳細とともに後述する。
【0025】
中心軸11は、金属等からなる棒状、好ましくは円柱状の部材である。又、中心軸11は、図2及び図3に示すように、その周囲に、複数の略同一形状のゴムブラシ121が嵌合固定されることによりブラシ部12を構成することができるものであり、所定の力による牽引に十分に耐える耐久性を備えるものであればよい。又、中心軸11は、図2及び図3に示すように、その両端部に牽引用の牽引ワイヤー31を連結するための連結用の穴が備えられていることが好ましい。
【0026】
中心軸11の周囲に形成されるブラシ部12は、図2及び図3に示す通り、複数の略同一形状のゴムブラシ121が、スペーサー13を介して離間配置されている構成であることが好ましい。このように配置された複数のゴムブラシ121を裏漏れ回収用樋2の底面21に隙間なく係合させた状態で掻き取り具1を往復運動させることで、裏漏れを高い効率で掻き取ることができる。
【0027】
ブラシ部12を構成するゴムブラシ121は、同一形状、好ましくはリング形状の板状ゴム材を複数枚積層してなる積層体であることが好ましい。又、このような積層体構造のゴムブラシ121を形成するための板状ゴム材としては、裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア100の設置場所やその近傍において、極めて低廉且つ容易に入手可能な弾性材料である使用済みのベルト廃材を用いることができる。よって、裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア100は、ゴムブラシ121とベルトコンベア本体20の無端ベルトとが同一の樹脂材料からなる構成であることが好ましい。板状ゴム材は特定の樹脂からなるものに限定されないが、一例として、ベルトコンベアのベルト材料として一般的なクロロプレンゴム等を挙げることができる。
【0028】
尚、掻き取り具1の中心軸11に、ブラシ部12を設置する方法に特段の限定はないが、図2及び図3に示すように、ブラシ部12を構成する複数のゴムブラシ121を中心軸11に貫通させ、ボビン形状のスペーサー13を間に介して、個々のゴムブラシ121間の適切な間隔を保持する方法が好ましい。ゴムブラシ121を板状ゴム材を複数枚積層して作成する材料として、上記のように、使用済のベルト廃材を用いる場合、このベルト廃材は、必ずしも厚みが一定ではないが、上記のようにボビン形状のスペーサー13をはめ込んで、その後、中心軸の両サイドからネジ締めして押さえつける力を調整することにより、厚みの過不足は微調整することができる。これにより、厚さが不均一な使用済みのベルト廃材であっても、特段の厚みの管理を行うことなく容易に使用することができる。
【0029】
上記の構成及び形態からなる掻き取り具1は、裏漏れ回収用樋2の長手方向の両端部の間において裏漏れ回収用樋2の底面21上を牽引されて往復運動することができるように設置されている。
【0030】
[裏漏れ回収用樋]
裏漏れ回収用樋2は、ベルトコンベア本体20の搬送ベルト41の回送面41Bの直下の略全域に亘って設置される樋状の部材である。裏漏れ回収用樋2は、回送面41Bから落下する粉粒体からなる裏漏れを受け止めてその底面21上に滞留させた状態で、一時的に保持することが可能な溝状の凹部が長手方向の全域に亘って連続して形成されている樋状の部材であればよい。
【0031】
裏漏れ回収用樋2の上記の溝状の凹部の形状、即ち、樋の長手方向に垂直な断面の形状は、図4に示す通り、裏漏れ回収用樋2の長手方向に直交する断面における底面21の形状と、掻き取り具1のブラシ部12の外周の形状とが略同一形状であって、裏漏れ回収用樋2の底面21に掻き取り具1が隙間なく係合することができる形状であればよい。この限りにおいて、裏漏れ回収用樋2の上記の溝状の凹部の形状には特段の限定はない。但し、裏漏れ回収用樋2の底面21の形状は、円弧形状であることがより好ましい。
【0032】
ここで、裏漏れ回収用樋2の底面21と掻き取り具1の接触面の態様の詳細について、図4を参照しながら、その詳細を説明する。裏漏れ回収用樋2の長手方向に直交する断面における底面21の形状と、掻き取り具1のブラシ部12を構成するゴムブラシ121の同断面における外周の形状とが略同一形状であることが、必須であるが、両形状は、同一の円弧形状であることが好ましい。
【0033】
つまり、裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア100に設置される裏漏れ回収機構10においては、図4に示すように、裏漏れ回収用樋2の底面21の断面形状が円弧形状であり、尚且つ、掻き取り具1のブラシ部12の外縁の全体形状が略円筒形状であって、裏漏れ回収用樋2の底面21の円弧形状(R1)と、ブラシ部12を構成するゴムブラシ121の外縁の円弧形状(R2)と、が同一形状(R)であることが、最も好ましい。具体的には、裏漏れ回収用樋2の底面21の円弧形状(R1)が、R200(曲率半径200mm)の円弧であれば、これに対して、掻き取り具1のブラシ部12の外縁の円弧形状(R2)も同様にR200(曲率半径200mm)の円弧とする例を好ましい実施形態の一例として挙げることができる。
【0034】
裏漏れ回収用樋2の材料は、特に限定されないが、ベルトコンベア本体20の搬送物の種類に応じて、適宜選択される。具体的に、裏漏れ回収用樋2は、ベルトコンベア本体20の搬送物由来の裏漏れを表面に安定的保持することができ、又、その際、その底面21への裏漏れの堆積によって破損や劣化が起こりにくい材料からなるものであればよい。例えば、上述のフェロニッケル製錬用の原料であるニッケル酸化鉱石を搬送するベルトコンベア本体20に設置される裏漏れ回収用樋2であれば、炭素鋼製の樋を好ましい一例として挙げることができる。
【0035】
[ベルトコンベア本体]
ベルトコンベア本体20は、搬送面41Aの始端と終端に配置された2個の回転ドラム42A、42Bの間を循環走行する帯状の無端ベルトである搬送ベルト41を備える。搬送ベルト41は、回転ドラム42A、42Bを折り返し点とし、上段側の搬送面41Aと下段側の回送面41Bとからなる循環路をA方向に走行する。搬送ベルト41は、搬送面41Aに、粉状或いは微粒状の被搬送物を載置した状態で所定の方向(例えば図1におけるA方向)に走行することにより、被搬送物を搬送面41Aの終端まで搬送する。本発明は、使用時において表面を鉛直上向きに向けて、被搬送物を搬送する搬送面41Aと、表面を鉛直下向き向けて走行する回送面41Bとを有するベルトコンベア全般に広く適用可能な機構である。
【0036】
[裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアの作用効果]
裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア100は、ベルトコンベア本体20の下方に設置されている裏漏れ回収機構10により、回送面41Bから落下する裏漏れを裏漏れ回収用樋2で受け止め、この底面21に積層或いは付着する裏漏れを掻き取り具1の往復運動によって掻き取る。掻き取り具1は、牽引ワイヤー31の両端部が駆動装置3に接続されていて、モーターの回転力により、裏漏れ回収用樋2の底面21との接触を保持したまま、底面21の両端部の間で往復運動し、掻き取った裏漏れを、裏漏れ回収用樋2の端部から押出して下方に設置されているホッパー内に落下させる。
【0037】
[裏漏れ回収機構付きのベルトコンベアの製造方法]
裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア100は、裏漏れ回収用樋2に掻き取り具1を設置する掻き取り具設置工程と、掻き取り具1を作成する掻き取り具作成工程と、を行うことにより製造することができる。そして、掻き取り具作成工程においては、裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア100を構成するベルトコンベア本体20において使用済みとなった使用済みのベルトコンベア用ベルト等、ベルト廃材を、所定の形状に切断して板状ゴム材とし、これを積層一体化してゴムブラシ121を形成する方法とすることにより、十分な機能を担保しつつ、極めて低廉なコストで裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア100を製造することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 掻き取り具
11 中心軸
12 ブラシ部
121 ゴムブラシ
13 スペーサー
2 裏漏れ回収用樋
21 裏漏れ回収用樋の底面
3 駆動装置
31 牽引ワイヤー
4、5 ホッパー
6 重量式リミッター
10 裏漏れ回収機構
41 搬送ベルト
41A 搬送面
41B 回送面
42A、42B 回転ドラム
20 ベルトコンベア本体
100 裏漏れ回収機構付きのベルトコンベア
図1
図2
図3
図4