=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり;Yは、−O−または−NH−であり;Zは、直接結合または二価の有機基であり;Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。]で表される含フッ素単量体、および(b)ノニル(メタ)アクリレートから誘導された繰り返し単位を含有する含フッ素共重合体を含む、撥水撥油剤。
ハロゲン化オレフィン単量体(e)が、1〜10の塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されている炭素数2〜20のオレフィンである、請求項6または7に記載の撥水撥油剤。
ハロゲン化オレフィン単量体(e)は、塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデンまたはヨウ化ビニリデンである、請求項6〜8のいずれかに記載の撥水撥油剤。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の1つの態様における撥水撥油剤は、
(a)一般式:
CH
2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (1)
[式中、Xは、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、直接結合または二価の有機基であり;
Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。]
で表される含フッ素単量体、および
(b)ノニル(メタ)アクリレート
から誘導された繰り返し単位を含有する含フッ素共重合体(本開示において「第1重合体」とも言う)を含む。
【0024】
本開示を限定するものではないが、撥水撥油剤に含有される含フッ素共重合体において、上記(a)含フッ素単量体から誘導された繰り返し単位は、撥水撥油性(または耐水耐油性)を発現するのに寄与し得、上記(b)ノニル(メタ)アクリレートから誘導された繰り返し単位は、高い加工安定性および高い撥アルコール性の双方を実現するのに寄与し得る。(a)含フッ素単量体と、(b)ノニル(メタ)アクリレートとを組み合わせて使用して含フッ素共重合体を得ることは、従来の撥水撥油剤において開示されておらず、本開示のようなかかる組み合わせにより、驚くべきことに、撥水撥油剤において高い加工安定性および高い撥アルコール性の双方を実現できることが判明した。
なお、本開示において、「加工安定性」とは、撥水撥油剤によって被処理物(例えば基材)を処理する際に、撥水撥油剤に含有される成分が変質すること、特に、処理時に加えられ得る機械的衝撃(またはせん断力)の作用によってポリマーの塊状物が発生する程度を意味する。一般的に、高い「加工安定性」とは、ポリマーの塊状物の発生が少ないことを意味し、低い「加工安定性」とは、ポリマーの塊状物の発生が多いことを意味する。また、「撥アルコール性」は、イソプロピルアルコールと水との混合液に対する撥液性(イソプロピルアルコール/水撥液性)を指標として評価され得、例えばAATCC試験法193に準拠して評価され得る。
【0025】
含フッ素共重合体は、更に、
(c)非フッ素非架橋性単量体(但し、ノニル(メタ)アクリレート(b)を除く)、
(d)非フッ素架橋性単量体、および
(e)ハロゲン化オレフィン単量体
からなる群より選択される少なくとも1つから誘導された繰り返し単位を含有していてよい。
【0026】
本開示を限定するものではないが、撥水撥油剤に含有される含フッ素共重合体において、上記(c)非フッ素非架橋性単量体、上記(d)非フッ素架橋性単量体および/または上記(e)ハロゲン化オレフィン単量体から誘導された繰り返し単位は、撥水撥油性や、撥アルコール性(より詳細にはイソプロピルアルコール/水撥液性(例えばAATCC試験法193に準拠して評価される))、耐水圧(例えばAATCC試験法127に準拠して評価される)、帯電防止性(より詳細には、表面電気抵抗(例えばAATCC試験法76に準拠して評価される))、防汚性およびこれらの性能の耐クリーニング性、耐洗濯性、溶剤への溶解性、硬さ、感触などの種々の性質を必要に応じて改善するのに寄与し得る。
【0027】
(a)含フッ素単量体
含フッ素単量体は、上記一般式(1)で表される含フッ素単量体で示される含フッ素単量体である。
【0028】
含フッ素単量体(a)は、(アクリレートまたはメタクリレートの)α位が水素原子であっても、ハロゲン原子などで置換されていてもよい。したがって、式(1)において、Xが、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX
1X
2基(但し、X
1およびX
2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。
【0029】
上記式(1)において、Zは、直接結合または二価の有機基であってよく、二価の有機基である場合、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜18の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH
2CH
2N(R
1)SO
2−基(但し、R
1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH
2CH(OZ
1)CH
2−基(但し、Z
1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH
2)
m−SO
2−(CH
2)
n−基または-(CH
2)
m−S−(CH
2)
n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10である。)であってよい。
【0030】
上記式(1)において、Rf基が、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は、1〜12、例えば1〜6、特に4〜6、特別には6であってよい。別の観点では、Rf基は、炭素数1〜6の(特に直鎖状または分岐状の)フルオロアルキル基であってよい。Rf基の例は、−CF
3、−CF
2CF
3、−CF
2CF
2CF
3、−CF(CF
3)
2、−CF
2CF
2CF
2CF
3、−CF
2CF(CF
3)
2、−C(CF
3)
3、−(CF
2)
4CF
3、−(CF
2)
2CF(CF
3)
2、−CF
2C(CF
3)
3、−CF(CF
3)CF
2CF
2CF
3、−(CF
2)
5CF
3、−(CF
2)
3CF(CF
3)
2、−(CF
2)
4CF(CF
3)
2、−C
8F
17等である。特に、−(CF
2)
5CF
3が好ましい。
【0031】
含フッ素単量体(a)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−C
6H
4−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
2N(−CH
3)SO
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
2N(−C
2H
5)SO
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−CH
2CH(−OH)CH
2−Rf
【0032】
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−CH
2CH(−OCOCH
3)CH
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−H)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CH
3)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
【0033】
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
【0034】
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
【0035】
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−NH−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH
2)
3−Rf
【0036】
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−CF
2H)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−(CH
2)
2−Rf
【0037】
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−S−(CH
2)
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
3−SO
2−Rf
CH
2=C(−CF
2CF
3)−C(=O)−O−(CH
2)
2−SO
2−(CH
2)
2−Rf
[上記式中、Rfは、炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。]
【0038】
(b)ノニル(メタ)アクリレート
本開示において、用語「ノニル(メタ)アクリレート」は、「ノニルアクリレート」および「ノニルメタクリレート」を包含する概念を意味するものとして使用され、具体的にはこれらの一方または双方であってよい。なお、本開示において「(メタ)」を冠した他の用語もこれと同様に理解されるべきである。
【0039】
ノニル(メタ)アクリレートとしては、イソノニル(メタ)アクリレートが市販で入手し易いため好適に利用され得るが、これに限定されるものではない。
【0040】
(c)非フッ素非架橋性単量体
上記含フッ素共重合体は、非フッ素非架橋性単量体(c)から誘導された繰り返し単位を有していてよい。非フッ素非架橋性単量体(c)は、フッ素原子を含まず、架橋可能でない(または架橋性官能基を有さない)単量体である(但し、ノニル(メタ)アクリレート(b)を除く)。非フッ素非架橋性単量体(c)は、好ましくは、炭素−炭素二重結合を有する非フッ素単量体である。非フッ素非架橋性単量体(c)は、好ましくは、フッ素を含まないビニル単量体である。非フッ素非架橋性単量体(c)は一般には、1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物である。
【0041】
好ましい非フッ素非架橋性単量体(c)は、一般式:
CH
2=CA−T (2)
[式中、Aは、水素原子、メチル基、または、フッ素原子以外のハロゲン原子であり、
Tは、水素原子、炭素数1〜30の鎖状または環状の炭化水素基、またはエステル結合を有する鎖状または環状の炭素数1〜20の有機基である。]
で示される。
【0042】
炭素数1〜30の鎖状または環状の炭化水素基の例は、炭素数1〜30、例えば1〜20の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜30、例えば4〜20の環状脂肪族基、炭素数6〜30、例えば6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数7〜30、例えば7〜20の芳香脂肪族炭化水素基である。一般式(2)において、Tは、炭素数12〜30の長鎖の炭化水素基および飽和の環状炭化水素基であってよい。
【0043】
エステル結合を有する鎖状または環状の炭素数1〜20の有機基の例は、-C(=O)-O-Q および-O-C(=O)-Q(ここで、Qは、炭素数1〜20の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜20の環状脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数7〜20の芳香脂肪族炭化水素基)である。
【0044】
非フッ素非架橋性単量体(c)の好ましい例には、例えば、エチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、およびビニルアルキルエーテルが含まれる。非フッ素非架橋性単量体(c)はこれらの例に限定されない。
【0045】
非フッ素非架橋性単量体(c)は、アルキル基を有する(メタ)アクリレートエステルであってよい。アルキル基の炭素原子の数は1〜30であってよく、例えば、6〜30(例えば、10〜30)であってよい。例えば、非フッ素非架橋性単量体(c)は、一般式:
CH
2=CA
1COOA
2 (3)
[式中、A
1は、水素原子、メチル基、またはフッ素原子以外のハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子)であり、
A
2は、C
nH
2n+1(n=1〜30)によって表されるアルキル基である。]
で示されるアクリレートであってよい。
【0046】
非フッ素非架橋性単量体(c)は、環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体であってよい。環状炭化水素基を有する(メタ)アクリレート単量体(B)は、(好ましくは一価の)環状炭化水素基および一価の(メタ)アクリレート基を有する化合物である。一価の環状炭化水素基と一価の(メタ)アクリレート基は、直接に結合している。環状炭化水素基としては、飽和または不飽和である、単環基、多環基、橋かけ環基などが挙げられる。環状炭化水素基は、飽和であることが好ましい。環状炭化水素基の炭素数は4〜20であることが好ましい。環状炭化水素基としては、炭素数4〜20、特に5〜12の環状脂肪族基、炭素数6〜20の芳香族基、炭素数7〜20の芳香脂肪族基が挙げられる。環状炭化水素基の炭素数は、15以下、例えば10以下であることが特に好ましい。環状炭化水素基の環における炭素原子が、(メタ)アクリレート基におけるエステル基に直接に結合することが好ましい。環状炭化水素基は、飽和の環状脂肪族基であることが好ましい。環状炭化水素基の具体例は、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基である。(メタ)アクリレート基は、アクリレート基またはメタアクリレート基であるが、メタクリレート基が好ましい。環状炭化水素基を有する単量体の具体例としては、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート等が挙げられる。
【0047】
(d)非フッ素架橋性単量体
本開示の含フッ素共重合体は、非フッ素架橋性単量体(d)から誘導された繰り返し単位を有していてよい。非フッ素架橋性単量体(d)は、フッ素原子を含まず、架橋可能な単量体である。非フッ素架橋性単量体(d)は、少なくとも2つの反応性基および/または炭素−炭素二重結合を有し、フッ素を含有しない化合物であってよい。非フッ素架橋性単量体(d)は、少なくとも2つの炭素−炭素二重結合を有する化合物、あるいは少なくとも1つの炭素−炭素二重結合および少なくとも1つの反応性基を有する化合物であってよい。反応性基の例は、ヒドロキシル基、エポキシ基、クロロメチル基、ブロックイソシアネート基、アミノ基、カルボキシル基、などである。非フッ素架橋性単量体(d)は、反応性基を有するモノ(メタ)アクリレート、(メタ)ジアクリレートまたはモノ(メタ)アクリルアミドであってよい。あるいは、非フッ素架橋性単量体(d)は、ジ(メタ)アクリレートであってよい。
【0048】
非フッ素架橋性単量体(d)としては、例えば、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが例示されるが、これらに限定されるものでない。
【0049】
(e)ハロゲン化オレフィン単量体
上記含フッ素共重合体は、後述するハロゲン化オレフィン単量体(e)から誘導された繰り返し単位を含有していても、含有していなくてもよい。
【0050】
上記含フッ素共重合体は、第1単量体原料から形成され得、第1単量体原料は、上記単量体(a)および(b)を含み、場合により(c)、(d)および(e)からなる群より選択される少なくともいずれか1つを含む。含フッ素共重合体に関して、単量体(a)および(b)、ならびに存在する場合には(c)、(d)および(e)(より詳細には、これら単量体から誘導された繰り返し単位、以下同様)のそれぞれは、1種であってよく、あるいは2種以上の混合物であってもよい。
【0051】
含フッ素共重合体における各単量体の質量割合の例としては、単量体(a)〜(e)の合計を100質量%として、
単量体(a)の割合は、0.1〜99.9質量%、例えば20〜90質量%、特に50〜80質量%であり、
単量体(b)の割合は、0.1〜70質量%、例えば0.5〜10質量%、特に1〜3質量%であり、
単量体(c)の割合は、0〜99.8質量%、例えば0.5〜50質量%、特に1〜30質量%であり、
単量体(d)の割合は、0〜99.8質量%、例えば0.5〜50質量%、特に1〜30質量%であり、
単量体(e)の割合は、0〜99.8質量%、例えば0.5〜50質量%、特に1〜30質量%であってよい。
【0052】
なお、これら質量割合は、含フッ素共重合体の原料(第1単量体原料)に用いた単量体の合計における各質量割合に等しいと考えて差し支えない。
【0053】
本開示においては、含フッ素共重合体の分子量に特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求めた質量平均分子量は、例えば3,000以上、好ましくは5,000〜1,500,000の範囲である。
【0054】
本開示のもう1つの態様における撥水撥油剤は、上記含フッ素共重合体(第1重合体)と、
(e)ハロゲン化オレフィン単量体
から誘導された繰り返し単位を含有する他の重合体(本開示において「第2重合体」とも言う)と
を含んで成る含フッ素重合体(本開示において、上記含フッ素共重合体と区別する目的のみで、単に「含フッ素複合重合体」とも言う)を含有していてよい。
【0055】
本開示を限定するものではないが、撥水撥油剤に含有される含フッ素複合重合体において、含フッ素共重合体(第1重合体)に加えて、かかる他の重合体(第2重合体)が存在することは、より一層高い加工安定性を実現するのに寄与し得る。
【0056】
(e)ハロゲン化オレフィン単量体
ハロゲン化オレフィン単量体(e)は、1〜10の塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換されている炭素数2〜20のオレフィンであることが好ましい。ハロゲン化オレフィン単量体(e)は、炭素数2〜20の塩素化オレフィン、特に1〜5の塩素原子を有する炭素数2〜5のオレフィンであることが好ましい。ハロゲン化オレフィン単量体(b)の好ましい具体例は、ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニル、臭化ビニル、ヨウ化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、例えば塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、ヨウ化ビニリデンである。
【0057】
上記他の重合体は、上述した含フッ素共重合体と異なる限り、上記の含フッ素単量体(a)、ノニル(メタ)アクリレート(b)、非フッ素非架橋性単量体(c)、および非フッ素架橋性単量体(d)からなる群より選択される少なくとも1つから誘導された繰り返し単位を含有していても、含有していなくてもよい。
【0058】
上記他の重合体は、第2単量体原料から形成され得、第2単量体原料は、上記単量体(e)を含み、場合により(a)、(b)、(c)および(d)からなる群より選択される少なくともいずれか1つを含む。他の重合体に関して、単量体(e)、ならびに存在する場合には(a)、(b)、(c)および(d)(より詳細には、これら単量体から誘導された繰り返し単位)のそれぞれは、1種であってよく、あるいは2種以上の混合物であってもよい。
【0059】
好ましくは、含フッ素共重合体(第1重合体)が、含フッ素単量体(a)およびノニル(メタ)アクリレート(b)を含む上記第1単量体原料から形成されており、他の重合体(第2重合体)は、含フッ素共重合体の存在下で、ハロゲン化オレフィン単量体(e)を含む第2単量体原料を重合させて形成されており、これにより上記含フッ素複合重合体を得ることができる。
【0060】
この場合、第1重合体と第2重合体は、共重合していてよい。すなわち、第1重合体と第2重合体は、化学的に結合していてもよい。あるいは、第1重合体と第2重合体は、化学結合を形成せず、物理的に結合していてもよい。物理的結合の例は、第1重合体がコアを形成し第2重合体がシェルを形成しているコア/シェル構造である。コア/シェル構造において、第1重合体と第2重合体が化学的に結合していないことがあるが、化学的に結合していてもよい。
【0061】
撥水撥油剤が、含フッ素共重合体(第1重合体)と他の重合体(第2重合体)とを含んで成る含フッ素複合重合体を含有する場合、含フッ素複合重合体における各単量体の質量割合の例としては、単量体(a)〜(e)の合計を100質量%として、
単量体(a)の割合は、0.1〜99.8質量%、例えば20〜90質量%、特に50〜80質量%であり、
単量体(b)の割合は、0.1〜70質量%、例えば0.5〜10質量%、特に1〜3質量%であり、
単量体(c)の割合は、0〜99.7質量%、例えば0.5〜50質量%、特に1〜30質量%であり、
単量体(d)の割合は、0〜99.7質量%、例えば0.5〜50質量%、特に1〜30質量%であり、
単量体(e)の割合は、0.1〜99.8質量%、例えば0.5〜50質量%、特に1〜30質量%であってよい。
【0062】
なお、これら質量割合は、第1重合体および第2重合体の原料(第1単量体原料および第2単量体原料)に用いた単量体の合計における各質量割合に等しいと考えて差し支えない。同様の種類の単量体(例えば、ハロゲン化オレフィン単量体および含フッ素単量体)が第1単量体原料と第2単量体原料の両方に含まれていてよい、第1単量体原料における同種単量体(特に、ハロゲン化オレフィン単量体)と第2単量体原料における同種単量体(特に、ハロゲン化オレフィン単量体)の質量比は、0〜100:100〜0、例えば5〜90:95〜10、特に10〜70:90〜30であってよい。
【0063】
撥水撥油剤が、含フッ素共重合体(第1重合体)と他の重合体(第2重合体)とを含んで成る含フッ素複合重合体を含有する場合、以下の説明が当て嵌まり得る。
第1単量体原料および第2単量体原料のうち、少なくとも第1単量体原料が、含フッ素単量体(a)およびノニル(メタ)アクリレート(b)を含む。第2単量体原料は、含フッ素単量体(a)を含まないことが好ましい。第2単量体原料は、ノニル(メタ)アクリレート(b)を含んでいても、含んでいなくてもよい。
第1単量体原料は、非フッ素非架橋性単量体(c)を含んでいてよい。第2単量体原料が、(ハロゲン化オレフィン単量体(e)以外の)非フッ素非架橋性単量体(c)を含まないことが好ましい。第2単量体原料が非フッ素非架橋性単量体(c)を含まないことによって、撥水撥油剤を用いて基材を処理する際に、ロールへポリマーが付着することによるロール汚れを防止する性能が優れる。
第1単量体原料および第2単量体原料の少なくとも一方が、非フッ素架橋性単量体(d)を含んでいてよい。第2単量体原料が、非フッ素架橋性単量体(d)を含んでいてよい。例えば、第1単量体原料が非フッ素架橋性単量体(d)を含まず、第2単量体原料が非フッ素架橋性単量体(d)を含んでいてよい。あるいは、第1単量体原料が非フッ素架橋性単量体(d)を含み、第2単量体原料が非フッ素架橋性単量体(d)を含まなくてよい。
第2単量体原料はハロゲン化オレフィン単量体(e)を含む。第2単量体原料は、ハロゲン化オレフィン単量体(e)のみからなってもよい。第1単量体原料は、ハロゲン化オレフィン単量体(e)を含んでいても、含んでいなくてもよい。ハロゲン化オレフィン単量体(e)は、第1単量体原料と第2単量体原料の両方に存在してもよい。
【0064】
第1単量体原料と第2単量体原料における単量体の好ましい例としては、表1に示す組み合わせが挙げられる。
【0066】
なかでも、例2が特に好ましい。非フッ素架橋性単量体が第1単量体原料と第2単量体原料の両方に存在する態様も好ましい。すなわち、非フッ素架橋性単量体が第1単量体原料と第2単量体原料の両方に存在する以外は例1〜7と同様の態様も好ましい。
【0067】
撥水撥油剤が、含フッ素共重合体(第1重合体)と他の重合体(第2重合体)とを含んで成る含フッ素複合重合体を含有する場合、含フッ素複合重合体の分子量に特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求めた含フッ素複合重合体の質量平均分子量は、例えば3,000以上、好ましくは5,000〜1,500,000の範囲である。
【0068】
本開示における含フッ素共重合体および含フッ素複合重合体は、通常の重合方法の何れでも製造でき、また重合反応の条件も任意に選択できる。このような重合方法として、溶液重合、懸濁重合、乳化重合が挙げられる。
【0069】
溶液重合では、重合開始剤の存在下で、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、30〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。重合開始剤は単量体100質量部に対して、0.01〜20質量部、例えば0.01〜10質量部の範囲で用いられる。
【0070】
有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、例えば、アセトン、クロロホルム、HCHC225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタンなどが挙げられる。有機溶剤は単量体の合計100質量部に対して、50〜2000質量部、例えば、50〜1000質量部の範囲で用いられる。
【0071】
乳化重合では、重合開始剤および乳化剤の存在下で、単量体を水中に乳化させ、窒素置換後、50〜80℃の範囲で1〜10時間、撹拌して共重合させる方法が採用される。重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルパーベンゾエート、1−ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3−カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン−二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾール−2−イル)プロパン]二塩酸塩などの水溶性のものやアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾール−2−イル)プロパン]などの油溶性のものが用いられる。重合開始剤は単量体100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲で用いられる。
【0072】
放置安定性の優れた重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、油溶性重合開始剤を用いて重合することが望ましい。また、乳化剤としてはアニオン性、カチオン性あるいはノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100質量部に対して、0.5〜20質量部の範囲で用いられる。アニオン性および/またはノニオン性および/またはカチオン性の乳化剤を使用することが好ましい。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0073】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノールなどが挙げられ、水100質量部に対して、1〜50質量部、例えば10〜40質量部の範囲で用いてよい。また、低分子量の単量体としては、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートなどが挙げられ、単量体の総量100質量部に対して、1〜50質量部、例えば10〜40質量部の範囲で用いてよい。
【0074】
本開示の1つの態様における含フッ素共重合体を含む撥水撥油剤の製造方法は、
(I)第1単量体原料を重合して含フッ素共重合体を得ること
を含み、第1単量体原料が、含フッ素単量体(a)およびノニル(メタ)アクリレート(b)を含み、場合により、非フッ素非架橋性単量体(c)、非フッ素架橋性単量体(d)およびハロゲン化オレフィン単量体(e)からなる群より選択される少なくとも1つを更に含む。
【0075】
この態様において、第1単量体原料の仕込みは、一括(一時)で行ってもよいし、あるいは連続的に行ってもよい。第1単量体原料の仕込みは一時に行うことが好ましい。
【0076】
また、本開示のもう1つの態様における含フッ素複合重合体(即ち、含フッ素共重合体および他の重合体を含んで成る含フッ素重合体)を含む撥水撥油剤の製造方法は、
(I)第1単量体原料を重合して含フッ素共重合体を第1重合体として得ること、および
(II)含フッ素共重合体の存在下で、第2単量体原料を重合することによって、他の重合体を第2重合体として得ること
を含み、第1単量体原料が、含フッ素単量体(a)およびノニル(メタ)アクリレート(b)を含み、場合により、非フッ素非架橋性単量体(c)、非フッ素架橋性単量体(d)およびハロゲン化オレフィン単量体(e)からなる群より選択される少なくとも1つを更に含み得、第2単量体原料が、ハロゲン化オレフィン単量体(e)を含み、場合により、含フッ素単量体(a)、ノニル(メタ)アクリレート(b)、非フッ素非架橋性単量体(c)および非フッ素架橋性単量体(d)からなる群より選択される少なくともいずれか1つを含み得る。
【0077】
この態様において、例えば、第1単量体原料を含む液で重合反応を行って第1重合体を形成し、次いで、第1重合体および第2単量体原料を含む液で重合体反応を行って第2重合体を形成し、第1重合体と第2重合体から構成される含フッ素複合重合体を得る。第1重合体の重合中に第2重合体の重合を開始させてもよいし、あるいは第1重合体の重合完了後に第2重合体の重合を開始させてもよい。第1重合体の重合反応(すなわち、第1単量体原料の重合反応)が10%以上(すなわち、10〜100%)、例えば40%以上(すなわち、40〜100%)、特に70%以上(すなわち、70〜100%)終了した後に、第2重合体の重合を開始させてよい。重合反応終了割合%(すなわち、重合反応進行割合%)は、反応済みの単量体(重合した単量体)のモル%を意味する。例えば、重合反応が10%終了している場合に、重合済み単量体が10モル%であり、未反応(未重合)単量体が90モル%である。第1単量体原料が少なくとも2種の単量体の組合せである場合には、第1単量体原料のモル%は、第1単量体原料における少なくとも2種の単量体の合計モルに基づく。
【0078】
第1重合体の重合中とは、第1重合体の重合反応(すなわち、第1単量体原料の重合反応)が完全に終了していないことを意味する。例えば、第1重合体の重合が10%以上〜40%未満、40%以上〜70%未満、または70%以上〜100%未満(特に80%〜99%、特別に85%〜98%)終了した後に、第2重合体の重合を開始させてよい。
第1重合体の重合完了後とは、第1重合体の重合反応(すなわち、第1単量体原料の重合反応)が約100%終了していることを意味する。
【0079】
第1重合体の重合中に第2重合体の重合を開始させる場合には、第2重合体は、第1単量体原料および第2単量体原料から誘導される繰り返し単位を有する。第1重合体の重合完了後に第2重合体の重合を開始させる場合には、第2重合体は、第2単量体原料のみから誘導される繰り返し単位を有する。
【0080】
この態様において、第1単量体原料の仕込みは、一括(一時)で行ってもよいし、あるいは連続的に行ってもよい。第1単量体原料の仕込みは一時に行うことが好ましい。
第2単量体原料の仕込みは、一括で行ってもよいし、あるいは連続的に行ってもよい。第2単量体原料における少なくとも1種の単量体がガス状である場合に、第2単量体原料の連続的な仕込みは、第2単量体原料の重合中で単量体ガスの圧力が一定になるように行うことが好ましい。
本開示の含フッ素複合重合体において、第1重合体は、第2重合体に化学結合しているかまたは化学結合していない。
【0081】
第2単量体原料の重合を開始させる時点において、重合系の中に未反応の非フッ素非架橋性単量体(c)が実質的に存在しないことが好ましい。実質的に存在しないとは、第2単量体原料の重合を開始させる時点において、未反応の非フッ素非架橋性単量体(c)の量が、仕込んだ非フッ素非架橋性単量体(c)に対して、10モル%以下、好ましくは6モル%以下、特に2モル%、特別に1モル%以下であることを意味する。非フッ素非架橋性単量体が実質的に存在しないことによって、含フッ素複合重合体を含む処理剤の加工処理において、ロールへポリマーが付着することによるロール汚れを防止する性能が優れている。
【0082】
本開示における含フッ素共重合体および含フッ素複合重合体は、いずれの場合も、乳化重合により形成することが好ましい。含フッ素複合重合体の場合、第1重合体および第2重合体によって形成される水性分散体の粒子において、第2重合体が第1重合体を包囲していてよく、含フッ素複合重合体は、第2重合体のシェルによって第1重合体のコアが包囲されているコア/シェル構造を有していてよい。
【0083】
本開示における撥水撥油剤は、分散液、溶液、エマルションまたはエアゾールの形態であることが好ましい。撥水撥油剤は、含フッ素共重合体および/または含フッ素複合重合体(撥水撥油剤の活性成分、以下、単に「含フッ素共重合体/含フッ素複合重合体」と表記する)に加えて媒体(特に、液状媒体、例えば、有機溶媒および/または水)を含んでなり得る。撥水撥油剤において、含フッ素共重合体/含フッ素複合重合体の濃度は、例えば、0.01〜50質量%であってよい。
【0084】
本開示の撥水撥油剤は、含フッ素共重合体/含フッ素複合重合体に加えて、水性媒体を更に含むことが好ましい。本明細書において、「水性媒体」とは、水のみからなる媒体、および水に加えて有機溶剤(有機溶剤の量は、水100質量部に対して、80質量部以下、例えば0.1〜50質量部、特に5〜30質量部である。)をも含有する媒体を意味する。含フッ素共重合体/含フッ素複合重合体を含有する撥水撥油剤は、乳化重合によって、含フッ素共重合体/含フッ素複合重合体の分散液を形成することが好ましい。撥水撥油剤は、水性分散液であること、より詳細には、含フッ素共重合体/含フッ素複合重合体の粒子が水性媒体に分散する水性分散液であることが好ましい。分散液において、含フッ素共重合体/含フッ素複合重合体の平均粒子径は、0.01〜200マイクロメートル、例えば0.1〜5マイクロメートル、特に0.05〜0.2マイクロメートルであることが好ましい。平均粒子径は、動的光散乱装置、電子顕微鏡等により測定することができる。
【0085】
本開示における撥水撥油剤は、任意の適切な方法より被処理物に適用すること、例えば撥水撥油剤で基材を処理することができる。換言すれば、撥水撥油剤で処理することからなる、基材を処理する方法が提供される。本開示において「処理」とは、撥水撥油剤またはこれを含む処理剤を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物(基材)に適用することを意味する。処理により、処理剤の活性成分である含フッ素共重合体/含フッ素複合重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。本開示の処理方法は一般に、被処理物を撥水撥油性(あるいは撥水性/疎水性かつ撥油性/疎油性)ならびに撥アルコール性にし得る。
【0086】
代表的には、撥水撥油剤を有機溶剤または水に分散して希釈して処理液とし、これを浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により被処理物に付着させ、乾燥する方法が採られ得る。また、必要ならば、撥水撥油剤を適当な架橋剤と共に使用して被処理物に適用し、キュアリングを行ってもよい。さらに、本開示の撥水撥油剤を、防虫剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、塗料定着剤、防シワ剤などと併用することも可能である。被処理物と接触させる際の処理液における含フッ素共重合体/含フッ素複合重合体の濃度は0.01〜10質量%(特に、浸漬塗布の場合)、例えば0.05〜10質量%であってよい。
【0087】
本開示の撥水撥油剤で処理される被処理物(基材)としては、繊維基材が好ましい。繊維基材を撥水撥油剤で処理することによって繊維製品を得ることができる。これにより得られた繊維製品は、高い加工安定性および高い撥アルコール性を示し得る。かかる繊維製品は、極めて高い撥アルコール性、例えば、繊維基材の材料や処理条件にもよるが、AATCC試験法193に準拠したイソプロピルアルコール/水撥液性の評価にて7級以上、好ましくは8級以上のイソプロピルアルコール/水撥液性を示し得る。
【0088】
被処理物が繊維基材である場合、繊維基材を液体で処理するための任意の適切な方法に従って、本開示における撥水撥油剤を処理液に用いて繊維基材に適用することができる。繊維基材に適用される処理液における含フッ素共重合体/含フッ素複合重合体の濃度は、例えば、0.5質量%〜20質量%、あるいは、1質量%〜5質量%であってよい。処理された繊維基材は、撥水撥油性および撥アルコール性を発現させるために、乾燥され、好ましくは、例えば、100℃〜200℃で加熱される。
【0089】
繊維基材は、後述するように、繊維、糸、布等の任意の形態であり得、典型的には布であり得る。代表的には、撥水撥油剤を水性媒体に分散希釈して調合される処理液に繊維基材を浸漬し、その後、処理液から繊維基材(例えば布)を取り出して、ロール等(例えばロール間)で押圧することにより余分な処理液を除去し、乾燥させて、撥水撥油剤の活性成分を繊維基材に残すことによって、撥水撥油性および撥アルコール性が付与された繊維製品を得ることができる。本開示の撥水撥油剤は、高い加工安定性を有し、かかる処理の際、繊維基材が処理液に入ることにより機械的衝撃(またはせん断力)が処理液に加わっても、エマルション粒子が安定的に維持され得、ポリマー(含フッ素共重合体/含フッ素複合重合体)の塊状物がロール等に付着したり、繊維基材に付着したりすることを効果的に防止できる。かかる効果は、含フッ素共重合体のフルオロアルキル基の炭素数が6以下である場合に特に顕著である。
【0090】
あるいは、撥水撥油剤はクリーニング法によって繊維基材に適用してよく、例えば、洗濯適用またはドライクリーニング法などにおいて繊維基材に適用してよい。
【0091】
繊維基材は、典型的には、布(ファブリック、生地とも呼ばれ得る)の形態であり、これには、織物、編物および不織布(例えば医療用不織布)、衣料品形態の布およびカーペットが含まれる。繊維基材は、他の形態、例えば、繊維、糸または中間繊維製品(例えば、スライバーまたは粗糸など)であってもよい。
【0092】
繊維基材の材料としては種々の例を挙げることができ、天然繊維および化学繊維を含む任意の繊維材料であってよい。天然繊維には、例えば、綿、麻などの植物性繊維、羊毛、絹などの動物性繊維、アスベストなどの鉱物性繊維が含まれ、動植物性天然繊維が好ましく使用され得る。化学繊維には、リヨセルなどの精製繊維、レーヨン(ビスコースレーヨン等を含む)などの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系(ナイロン、アラミド等を含む)、ポリビニルアルコール系、ポリ塩化ビニル系、ポリエステル系、ポリアクリロニトリル系、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン等を含む)、ポリエーテルエステル系、ポリウレタン系などの合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維が含まれ、精製繊維、半合成繊維、合成繊維が好ましく使用される。繊維基材の材料は、これらで例示される繊維材料からなる群より選択される2つまたはそれ以上の材料の混合物(例えば任意の天然繊維と任意の合成繊維との混合物などであってよく、混合繊維、複合繊維、混紡糸、混織糸などの形態であってもよい)であってもよい。
【0093】
本開示の撥水撥油剤は、親水性の繊維材料および疎水性の繊維材料のいずれに対しても、撥水撥油性ならびに撥アルコール性を付与することができる。親水性の繊維材料の例としては、セルロース系(綿またはレーヨンなど)が挙げられる。疎水性の繊維材料の例としては、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン混紡物など)、ポリ塩化ビニル系、ポリアミド系(ナイロンなど)、ポリエステル系、ポリスチレン系が挙げられる。
【0094】
とりわけ、本開示の撥水撥油剤は、高い撥アルコール性が求められる繊維製品、例えば医療用ガウンや手術着などに利用され得る医療用不織布などの不織布製品を製造するために、不織布の繊維基材に適用され得るが、これに限定されない。医療用不織布は、代表的には、上記したような疎水性の繊維材料から構成される不織布であり得、例えばポリプロピレン不織布、ポリプロピレンとポリエチレンとの複合不織布、ポリエチレン不織布などであり得る。
【0095】
あるいは、繊維基材は皮革であってよい。撥水撥油剤を、皮革を疎水性および疎油性にするために、皮革加工の様々な段階で、例えば、皮革の湿潤加工の期間中に、または、皮革の仕上げの期間中に、水溶液または水性乳化物から皮革に適用してよい。
【0096】
あるいは、繊維基材は紙であってもよい。撥水撥油剤を、予め形成した紙に適用してよく、または、製紙の様々な段階で、例えば、紙の乾燥期間中に適用してもよい。
【0097】
以上、実施形態について説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例】
【0098】
本開示の撥水撥油剤およびその製造方法について、以下、実施例を示して具体的に説明するが、これら実施例に限定されるものではない。「部」および「%」は、特記しなければ、「質量部」および「質量%」である。
【0099】
以下において使用した試験方法は次のとおりである。
【0100】
[加工安定性]
水性分散液の形態の撥水撥油剤を水道水で1%に希釈し、得られた希釈液をホモミキサーで3,000rpmにて10分間撹拌(強せん断力を付与)し、その後、この希釈液を黒の綿布にて濾過した。強せん断力の付与によりスカム(エマルションの破壊物)が発生し得、綿布上にスカムが分離され得る。下記の計算式に示すように、このスカムの質量を、ろ過後の黒の綿布乾燥後質量(g)の測定値(ろ過後の黒の綿布の質量はその上に分離されたスカムの質量を含んでいる)から、ろ過前の黒の綿布乾燥後質量(g)の測定値を差し引いて求め、ろ過前の黒の綿布乾燥後質量に対するスカムの質量として、スカム率(%)を算出した。スカム率が低いほうが、特に下記目安に示すように10%未満であるほうが、加工安定性が高い。
スカム率(%)=(M−M
0)/M
0*100
式中、M
0およびMは下記の通り。
M
0=ろ過前の黒の綿布乾燥後質量(g)
M=ろ過後の黒の綿布乾燥後質量(g)
スカム率=0%: スカムが全くない。
スカム率<10%: スカムが少しある。
スカム率≧10%: スカムが多い。
【0101】
[撥アルコール性]
水性分散液の形態の撥水撥油剤を固形分が0.3質量%になるように純水により希釈して、処理液(1000g)を調製した。本試験において、処理すべき布(繊維基材)として、ポリプロピレン不織布(45g/m
2)を使用した。1枚のポリプロピレン不織布(45g/m
2)(510mm x 205mm)をこの処理液に浸し、マングルロール間に通し、120℃で2分間、ピンテンターで処理した。
これにより得られた試験布(処理済み布)について、撥アルコール性を評価した。具体的には、AATCC試験法193−2007に準拠して下記の通り試験して評価した。
処理済み布を温度21℃、湿度50%の恒温恒湿機に4時間以上保管する。試験液(イソプロピルアルコール(IPA)、水、およびその混合液、表2に示す。)も温度21℃で保存したものを使用する。試験は温度21℃、湿度50%の恒温恒湿室で行う。試験液を試験布上にマイクロピペットで一滴50μLの5滴を静かに滴下し、30秒間放置後、4または5滴の液滴が試験布上に残っていれば、その試験液をパスしたものとする。撥アルコール性は、パスした試験液のイソプロピルアルコール(IPA)含量(体積%)の最大なものをその点数とし、撥水性不良なものから良好なレベルまでFail、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10の12級で評価する。級数が大きいほうが、撥アルコール性が高い。
【0102】
【表2】
【0103】
実施例1
500mLオートクレーブにF(CF
2)
6CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2(C6SFMA)61g、イソノニルメタクリレート11g、ラウリルアクリレート(C12Ac)1g、純水160g、トリプロピレングリコール25g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル7.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCl)25gを圧入充填し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.4gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
単量体の仕込組成(質量比)は、表3に示すとおりであり、重合体における単量体組成は、単量体の仕込組成にほぼ一致した(以下の実施例および比較例についても同様に当て嵌まる)。
【0104】
実施例2
イソノニルメタクリレートに代えてイソノニルアクリレートを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、重合体の水性分散液を得た。
【0105】
実施例3
500mLオートクレーブにF(CF
2)
6CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2(C6SFMA)69g、イソノニルメタクリレート2g、ステアリルアクリレート(C18Ac)10g、ダイアセトンアクリルアミド2g、N−イソプロピルアクリルアミド(N-IPAM)1g、グリセロールモノメタクリレート(GLM)3g、純水180g、トリプロピレングリコール25g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル7.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で1時間反応させた(重合反応:第1単量体原料合計モルに対して90%終了)後、塩化ビニル(VCl)25gを圧入充填した。さらに2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.6gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0106】
実施例4
N−イソプロピルアクリルアミド(N-IPAM)の量を3gに変更したこと以外は、実施例3と同様にして、重合体の水性分散液を得た。
【0107】
比較例1
500mLオートクレーブにF(CF
2)
6CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2(C6SFMA)69g、ステアリルアクリレート(C18Ac)10g、N−イソプロピルアクリルアミド(N-IPAM)3g、グリセロールモノメタクリレート(GLM)3g、純水160g、トリプロピレングリコール24g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル7.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCl)25gを圧入充填し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.4gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0108】
比較例2
500mLオートクレーブにF(CF
2)
6CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2(C6SFMA)61g、ステアリルアクリレート(C18Ac)11g、ラウリルアクリレート(C12Ac)1g、純水160g、トリプロピレングリコール24g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル7.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCl)25gを圧入充填し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.4gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0109】
比較例3
500mLオートクレーブにF(CF
2)
6CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2(C6SFMA)61g、ベンジルメタクリレート11g、ラウリルアクリレート(C12Ac)1g、純水160g、トリプロピレングリコール24g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル7.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCl)25gを圧入充填し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.4gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0110】
比較例4
500mLオートクレーブにF(CF
2)
6CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2(C6SFMA)61g、シクロエキシルメタクリレート11g、ラウリルアクリレート(C12Ac)1g、純水160g、トリプロピレングリコール24g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル7.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCl)25gを圧入充填し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.4gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0111】
比較例5
500mLオートクレーブにF(CF
2)
6CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2(C6SFMA)61g、オクチルアクリレート11g、ラウリルアクリレート(C12Ac)1g、純水160g、トリプロピレングリコール24g、ポリオキシエチレンオレイルエーテル7.5g、ポリオキシエチレンイソトリデシルエーテル2.0gを入れ、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCl)25gを圧入充填し、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩0.4gを添加し、60℃で5時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0112】
比較例6
500mLオートクレーブにF(CF
2)
6CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2(C6SFMA)60g、ブチルメタクリレート10g、純水124.4g、ジプロピレングリコール30g、エチレンオキシドプロピオンオキシド重合物(日本油脂製 プロノン204)0.9g、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(日本サーファクタント社製 AM-3130N)0.9g、ポリオキシオレイルエーテル(花王社製 E-430)3g、ジプロピレングリコール(DPG)30g、n−ドデシルメルカプタン1gを入れ、60℃で60分間加温した後、攪拌下に60℃で15分間、超音波で乳化分散させた。フラスコ内を窒素置換後、塩化ビニル(VCl)28gを圧入充填し、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]0.4gを添加し、60℃で10時間反応させ、重合体の水性分散液を得た。
【0113】
上記実施例1〜4および比較例1〜6により得られた各水性分散液について、加工安定性(スカム率)および撥アルコール性を評価した。これらの結果を表3に併せて示す。
【0114】
表中、略号の意味は次のとおりである。
C6SFMA F(CF
2)
6CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2
C18Ac ステアリルアクリレート
C12Ac ラウリルアクリレート
BuMAc ブチルメタクリレート
N-IPAM N−イソプロピルアクリルアミド
GLM グリセロールモノメタクリレート
VCl 塩化ビニル
【0115】
【表3】
【0116】
表3から理解されるように、実施例1〜4では、スカム率10%未満であり、高い加工安定性が得られるとともに、7級以上の高い撥アルコール性が得られた。これに対して、比較例1〜7では、スカム率10%以上の低い加工安定性および6級以下の低い撥アルコール性の少なくともいずれかを示し、高い加工安定性と高い撥アルコール性の双方を実現することができなかった。