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特開2019-19747熱応動アクチュエータおよび熱応動アクチュエータユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-19747(P2019-19747A)
(43)【公開日】2019年2月7日
(54)【発明の名称】熱応動アクチュエータおよび熱応動アクチュエータユニット
(51)【国際特許分類】
   F03G 7/06 20060101AFI20190111BHJP
【FI】
   F03G7/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-138367(P2017-138367)
(22)【出願日】2017年7月14日
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 峻
(72)【発明者】
【氏名】小川 博之
(57)【要約】
【課題】サイズの小型化および軽量化が容易な構成で、熱交換器などの支持板と、発熱体となる可動板とを広い面積で接触させることができる熱応動アクチュエータユニットを提供する。
【解決手段】熱応動アクチュエータユニット1は、第1の部材(可動板17)と、第2の部材(支持板11)と、前記第1の部材と前記第2の部材の間に配置された弾性部材18と、前記第1の部材の前記第2の部材側とは反対側に配置され、熱によって前記第2の部材側に変形する形状記憶合金(形状記憶合金柱状体15)を有する熱変形部材14とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と、
第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材の間に配置された弾性部材と、
前記第1の部材の前記第2の部材側とは反対側に配置され、熱によって前記第2の部材側に変形する形状記憶合金を有する熱変形部材と、
を備える、熱応動アクチュエータユニット。
【請求項2】
前記形状記憶合金が、熱によって前記第2の部材の表面に対して垂直な方向に沿う方向に伸び変形可能であり、
前記第2の部材の表面に対して垂直な方向に延び、一方の端部が前記第2の部材の表面に固定され、他方の端部にフランジ部が設けられている支柱を備え、
前記第1の部材が、前記支柱が通る貫通孔を有し、前記支柱に沿って摺動可能である、請求項1に記載の熱応動アクチュエータユニット。
【請求項3】
前記熱変形部材は、複数個の形状記憶合金の柱状体を含み、前記複数個の柱状体は、それぞれ前記支柱の周方向に沿って配置されている、請求項2に記載の熱応動アクチュエータユニット。
【請求項4】
前記複数個の柱状体は、熱伝導性部材で覆われている、請求項3に記載の熱応動アクチュエータユニット。
【請求項5】
前記支柱は雄ねじを有するボルトであって、前記第2の部材は表面に雌ねじを有し、前記ボルトの前記雄ねじと前記第2の部材の前記雌ねじとを螺合させるときの締め付けトルク調整部を備える、請求項2〜4のいずれか一項に記載の熱応動アクチュエータユニット。
【請求項6】
前記弾性部材が皿ばねであって、前記皿ばねの穴に前記支柱が挿入されている、請求項2〜5のいずれか一項に記載の熱応動アクチュエータユニット。
【請求項7】
前記形状記憶合金が、単結晶形状記憶合金である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱応動アクチュエータユニット。
【請求項8】
前記第1の部材の前記第2の部材側の表面および前記第2の部材の前記第1の部材側の表面の少なくとも一方に、弾性部材収容孔が形成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱応動アクチュエータユニット。
【請求項9】
第1の部材と第2の部材との間に配置される弾性部材と、
前記第1の部材の前記第2の部材側とは反対側に配置される、熱によって前記第2の部材側に変形する形状記憶合金を有する熱変形部材と、
を備える、熱応動アクチュエータ。
【請求項10】
一方の端部が前記第2の部材の表面に固定可能とされていて、他方の端部にフランジ部が設けられている支柱を備え、
前記弾性部材と前記熱変形部材は、前記支柱が通る貫通孔を有し、前記形状記憶合金が、熱によって前記支柱の長手方向に沿う方向に伸び変形可能とされている、請求項9に記載の熱応動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱応動アクチュエータおよび熱応動アクチュエータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器などの発熱体の過度な温度上昇を抑制するために、熱環境の変化によって可動する熱応動アクチュエータを用いて、発熱体と熱交換器とを接触状態あるいは非接触状態のどちらかに切り替えることが行なわれている。例えば、熱環境が大きく変化する宇宙空間で使用される宇宙機では、宇宙機内の過度な高温化を避けるために、電子機器の発熱を外部に放出するための熱交換器を備える一方で、低温環境下では宇宙機内の温度を一定に保持するために宇宙機内をヒータで加温することが必要となる。そこで、宇宙機においては、熱応動アクチュエータを用いて、低温状態では電子機器と熱交換器とを非接触状態とし、高温状態では電子機器と熱交換器とを接触状態とすることによって、ヒータによる電力の使用量を削減することが行なわれている。
【0003】
非特許文献1には、パラフィンの固液相の体積変化を利用した熱応動アクチュエータ(ヒートスイッチ)が開示されている。
特許文献1には、形状記憶合金を用いた熱応動アクチュエータ(熱放散スイッチ)が開示されている。この特許文献1に開示されている熱放散スイッチは、発熱体と熱交換器との間に熱放散スイッチを設けて、形状記憶合金が変形することによって、発熱体と熱交換器との熱流経路を生成または消去するように構成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】デイヴィッド・G・ギルモア(David G. Gilmore)著、「スペースクラフト・サーマル・コントロール・ハンドブック(Spacecraft Thermal Control Handbook Volume I: Fundamental Technologies)」、ジ・エアロスペース・コーポレーション(The Aerospace Corporation)、2002年発行、p.353−371
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−243365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に開示されているパラフィンの固液相の体積変化を利用した熱応動アクチュエータは、パラフィンを封じ込めるために容器が必要となる。このため、サイズが大型で質量が大きくなる傾向がある。
【0007】
また、特許文献1に開示されている形状記憶合金を用いた熱応動アクチュエータでは、形状記憶合金を介して発熱体と熱交換器とを接触させている。このため、発熱体と熱交換器との接触面積を広くするのが難しい。また、形状記憶合金が介在することで熱伝達率が低下する。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、サイズの小型化および軽量化が容易な構成で、熱交換器などの支持板と、発熱体となる可動板とを広い面積で接触させることができる熱応動アクチュエータユニット、およびその熱応動アクチュエータユニットの駆動源として有利に用いることができる熱応動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る熱応動アクチュエータユニットは、第1の部材と、第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材の間に配置された弾性部材と、前記第1の部材の前記第2の部材側とは反対側に配置され、熱によって前記第2の部材側に変形する形状記憶合金を有する熱変形部材と、を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る熱応動アクチュエータユニットにおいて、前記形状記憶合金が、熱によって前記第2の部材の表面に対して垂直な方向に沿う方向に伸び変形可能であり、前記第2の部材の表面に対して垂直な方向に延び、一方の端部が前記第2の部材の表面に固定され、他方の端部にフランジ部が設けられている支柱を備え、前記第1の部材が、前記支柱が通る貫通孔を有し、前記支柱に沿って摺動可能であってもよい。
【0011】
また、本発明に係る熱応動アクチュエータユニットにおいて、前記熱変形部材は、複数個の形状記憶合金の柱状体を含み、前記複数個の柱状体は、それぞれ前記支柱の周方向に沿って配置されていてもよい。
【0012】
また、本発明に係る熱応動アクチュエータユニットにおいて、前記複数個の柱状体は、熱伝導性部材で覆われていてもよい。
【0013】
また、本発明に係る熱応動アクチュエータユニットにおいて、前記支柱は雄ねじを有するボルトであって、前記第2の部材は表面に雌ねじを有し、前記ボルトの前記雄ねじと前記第2の部材の前記雌ねじとを螺合させるときの締め付けトルク調整部を備えていてもよい。
【0014】
また、本発明に係る熱応動アクチュエータユニットにおいて、前記弾性部材が皿ばねであって、前記皿ばねの穴に前記支柱が挿入されていてもよい。
【0015】
また、本発明に係る熱応動アクチュエータユニットにおいて、前記形状記憶合金が、単結晶形状記憶合金であってもよい。
【0016】
また、本発明に係る熱応動アクチュエータユニットにおいて、前記第1の部材の前記第2の部材側の表面および前記第2の部材の前記第1の部材側の表面の少なくとも一方に、弾性部材収容孔が形成されていてもよい。
【0017】
本発明に係る熱応動アクチュエータは、第1の部材と第2の部材との間に配置される弾性部材と、前記第1の部材の前記第2の部材側とは反対側に配置される、熱によって前記第2の部材側に変形する形状記憶合金を有する熱変形部材と、を備えることを特徴としている。
【0018】
本発明に係る熱応動アクチュエータにおいて、一方の端部が前記第2の部材の表面に固定可能とされていて、他方の端部にフランジ部が設けられている支柱を備え、前記弾性部材と前記熱変形部材は、前記支柱が通る貫通孔を有し、前記形状記憶合金が、熱によって前記支柱の長手方向に沿う方向に伸び変形可能とされていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、サイズの小型化および軽量化が容易な構成で、熱交換器などの支持板と、発熱体となる可動板とを広い面積で接触させることができる熱応動アクチュエータユニット、およびその熱応動アクチュエータユニットの駆動源として有利に用いることができる熱応動アクチュエータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットの構成を説明する図であり、(a)は、熱応動アクチュエータユニットの正面図、(b)は、(a)のb−b線断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットの作動状態を説明する図であり、(a)は、作動前の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図、(b)は、作動後の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットの作動状態を説明する図であり、(a)は、作動前の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図、(b)は、作動後の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図である。
図4】本発明の第3の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットの作動状態を説明する図であり、(a)は、作動前の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図、(b)は、作動後の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図である。
図5】本発明の第4の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットの正面断面図である。
図6】本発明の第5の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットを説明する図であり、(a)は、接触抑制部材が作動する前の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図、(b)は、接触抑制部材が作動した後の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図である。
図7】本発明の第6の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットの構成を説明する図であり、(a)は、熱応動アクチュエータユニットの正面図、(b)は、熱応動アクチュエータユニットの平面図である。
図8図7(b)のVIII−VIII線断面図である。
図9】実施例1で作製した熱応動アクチュエータユニットの熱挙動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の熱応動アクチュエータおよび熱応動アクチュエータユニットの実施形態について、添付した図面を参照して説明する。以下の説明においては、熱応動アクチュエータユニットは、第2の部材を支持板とし、第1の部材をその支持板の表面に対して垂直な方向に変位可能な可動板としている。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴を理解し易くするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットの構成を説明する図であり、(a)は、熱応動アクチュエータユニットの正面図、(b)は、(a)のb−b線断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットの作動状態を説明する図であり、(a)は、作動前の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図、(b)は、作動後の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図である。
【0023】
第1の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット1は、支持板11と、支柱12と、熱変形部材14と、可動板17と、弾性部材18とを備える。熱応動アクチュエータ10は、支持板11の表面に対して垂直な方向に可動板17を変位させるための駆動源であり、支柱12と、熱変形部材14と、弾性部材18とを備える。
【0024】
支持板11は、熱応動アクチュエータユニット1の基材となる部分であり、熱応動アクチュエータユニット1の用途によって、材料や構造を適宜選択することができる。支持板11は、例えば、熱交換器とすることができる。熱交換器としては、例えば、ラジエータやヒートシンクを用いることができる。
【0025】
支柱12は、支持板11の表面に対して垂直な方向に延び、一方の端部が支持板11の表面に固定されていて、他方の端部にフランジ部13が設けられている。本実施形態では、支柱12は雄ねじを有するボルトとされていて、支持板11は表面に雌ねじを有しており、そのボルトの雄ねじと支持板11の雌ねじとを螺合させることによって、支柱12を支持板11の表面に固定させている。なお、本実施形態では、支柱12は、支持板11と螺合している部分のみを雄ねじとしているが、支柱12の表面全体を雄ねじとしてもよい。支柱12の材料の例としては、金属、セラミック、樹脂などのボルトの材料として一般に使用されているものを利用することができる。また、支柱12と支持板11との間に、断熱材を介在させてもよい。
【0026】
フランジ部13は、後述する形状記憶合金柱状体15が伸び変形したときに、形状記憶合金柱状体15が可動板17側に伸びるように押さえつける機能がある。フランジ部13は、支柱12と一体とされていてもよいし、支柱12と分離可能とされていてもよい。
【0027】
熱変形部材14は、複数個(図1では8個)の形状記憶合金柱状体15と、形状記憶合金柱状体15を覆う熱伝導性部材16とを含む。形状記憶合金柱状体15は、それぞれ支柱12の周方向に沿って等間隔で配置されている。また、形状記憶合金柱状体15が、それぞれ支柱12の周方向に沿って等間隔で配置されていることによって、熱変形部材14としての形状の変化が均一となる。なお、図1において、形状記憶合金柱状体15は円柱状とされているが、形状記憶合金柱状体15の形状に、特に制限はなく、例えば、角柱状とされていてもよい。
【0028】
形状記憶合金柱状体15は、支持板11の表面に対して垂直な方向(支柱12の長手方向)に沿う方向に伸び変形可能とされている。すなわち、形状記憶合金柱状体15は、形状記憶合金柱状体15の復元力が弾性部材18の回復力以下になる温度で圧縮変形されていて、その温度以上に加熱すると、支持板11の表面に対して垂直な方向(支柱12の長手方向)に沿う方向に伸び変形して元の形状に戻るようにされている。形状記憶合金柱状体15が変形する温度は、特に限定されないが、−270℃以上250℃以下の範囲と広範囲に設定することが可能である。なお、形状記憶合金柱状体15が変形する温度は、形状記憶合金柱状体15を構成する形状記憶合金の組成、形状記憶合金柱状体15を製造する際の熱処理条件、形状記憶合金柱状体15に付与されている圧縮力などにより変化させることができる。
【0029】
形状記憶合金柱状体15を構成する形状記憶合金の例としては、Ni−Ti系合金、Fe−Ti系合金、Mn−Ti系合金、Ti−Ni−Co系合金、Ti−Ni−Cu系合金、Cu−Zn−Al系合金、Fe−Mn−Si系合金、Ti−Mo−Al系合金を挙げることができる。形状記憶合金の結晶構造は、単結晶であってもよいし、多結晶であってもよいが、好ましくは単結晶である。単結晶の形状記憶合金は、多結晶の形状記憶合金と比較して、回復ひずみが大きく、また結晶構造の安定性が高いので、長期間にわたって安定して、形状記憶能力を維持させることが可能となる。
【0030】
熱伝導性部材16は、形状記憶合金柱状体15に対して均一に熱を付与する。すなわち、形状記憶合金柱状体15は、熱伝導性部材16で覆われているので均一に加熱される。
熱伝導性部材16の材料の例としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレスなどの金属を挙げることができる。図1において、熱伝導性部材16は、支柱12が通る貫通孔を有する円柱状とされている。ただし、熱伝導性部材16の形状は、特に制限はなく、例えば、角柱状とされていてもよい。
【0031】
可動板17は、支柱12が通る貫通孔を有し、支柱12に沿って摺動(移動)可能とされている。可動板17が、支柱12に沿って移動することによって、支持板11と可動板17とを接触状態と非接触状態とに切り替えることができる。可動板17の支持板11とは反対側の表面(図1では上側の表面)には、通常、電子機器やヒータなどの発熱体(図示せず)が配置される。可動板17は、熱伝導性であることが好ましい。可動板17の材料の例としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレスなどの金属を挙げることができる。
【0032】
弾性部材18は、可動板17の支持板11側の表面に形成された弾性部材収容孔17aに収容されている。弾性部材収容孔17aは、弾性部材18が加圧されて変形した状態となったときに支持板11と可動板17とが接触し、弾性部材18が復元した状態となったときに支持板11と可動板17とが非接触となる深さで形成されていることが好ましい。
弾性部材18としては、弾性変形可能なものであれば特に制限はないが、例えば、皿ばね、板ばね、圧縮コイルばね、ゴムを用いることができる。本実施形態では、皿ばねを用いている。皿ばねは中央に穴を有しており、この皿ばねの穴が支柱12に挿入されている。また、弾性部材18と支持板11との間に、断熱材を介在させてもよい。
【0033】
次に、本実施形態の熱応動アクチュエータユニット1の作動状態を説明する。
本実施形態の熱応動アクチュエータユニット1において、可動板17の温度が、形状記憶合金柱状体15の復元力が弾性部材18の回復力以下になる温度以下である場合は、熱伝導性部材16の温度もまた形状記憶合金柱状体15の復元力が弾性部材18の回復力以下になる温度以下となる。このため、図2の(a)に示すように、形状記憶合金柱状体15は、圧縮変形した長さL10となる。
【0034】
一方、可動板17に配置された電子機器(図示せず)の発熱によって、可動板17の温度が上昇すると、熱伝導性部材16の温度もまた上昇する。熱伝導性部材16の温度が、形状記憶合金柱状体15の復元力が弾性部材18の回復力以上になる温度以上となると、形状記憶合金柱状体15は復元力により弾性部材18を弾性的に圧縮変形させながら、支持板11の表面に対して垂直な方向(支柱12の長手方向)に沿う方向に伸び変形して、図2の(b)に示すように、長さL11となる。
【0035】
形状記憶合金柱状体15が伸び変形すると、その伸び変形量に対応して、熱伝導性部材16および可動板17と支持板11と、が相対的に接近移動する。熱伝導性部材16および可動板17と、支持板11とが、相対的に接近移動することによって、弾性部材18が圧縮変形する。このように、熱伝導性部材16の温度が、形状記憶合金柱状体15の復元力が弾性部材18の回復力以上になる温度以上となると、形状記憶合金柱状体15の伸び変形と弾性部材18の圧縮変形によって、可動板17と支持板11の位置関係が互いに接するように変化する。
【0036】
次に、可動板17の温度が低下すると、熱伝導性部材16の温度もまた低下する。熱伝導性部材16の温度が、形状記憶合金柱状体15の復元力が弾性部材18の回復力以下になる温度未満となると、形状記憶合金柱状体15は伸び変形する力が弱くなる。そうすると、弾性部材18は回復力によって元の形状に戻ろうとし、熱伝導性部材16および可動板17と、支持板11と、が相対的に離間移動する。熱伝導性部材16および可動板17と、支持板11と、が相対的に離間移動することによって、形状記憶合金柱状体15は圧縮変形して、図2の(a)に示すように、圧縮変形した長さL10となる。このように、熱伝導性部材16の温度が、形状記憶合金柱状体15の復元力が弾性部材18の回復力以下になる温度未満となると、弾性部材18の回復力による変形と、形状記憶合金柱状体15の圧縮変形とによって、可動板17と支持板11の位置関係が互いに離れるように変化する。
【0037】
以上のような構成とされた第1の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット1によれば、支持板11と、支柱12と、熱変形部材14と、可動板17と、弾性部材18とを備える比較的簡単な構成とされているので、サイズの小型化および軽量化が容易となる。
【0038】
また、第1の実施形態において、上記の熱変形部材14は、複数個の形状記憶合金柱状体15を含み、これらの複数個の形状記憶合金柱状体15は、それぞれ支柱12の周方向に沿って配置されている。このため、熱変形部材14を、一定の条件で安定して変形させることができる。したがって、本実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット1によれば、精度よく可動板17と支持板11の位置関係を変化させることができる。
【0039】
さらに、第1の実施形態において、上記の複数個の形状記憶合金柱状体15は、それぞれ等間隔で配置されている。このため、熱変形部材14を、一定の条件で均等に変形させることができる。したがって、本実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット1によれば、より精度よく可動板17を移動させることが可能となる。
【0040】
またさらに、第1の実施形態において、上記の複数個の形状記憶合金柱状体15は、それぞれ熱伝導性部材16で均一に覆われている。このため、複数個の形状記憶合金柱状体15が均一に加熱されるので、熱変形部材14を、一定の条件でより均一で安定に変形させることができる。したがって、本実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット1によれば、さらに精度よく可動板17を移動させることが可能となる。
【0041】
また、第1の実施形態において、形状記憶合金柱状体15を構成する形状記憶合金は、単結晶形状記憶合金であることが好ましい。単結晶形状記憶合金は回復ひずみが大きく、また結晶構造の安定性が高いので、これを用いることによって、長期間にわたって安定して、形状記憶能力を維持させることがより可能となる。したがって、本実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット1によれば、例えば、宇宙空間のような過酷な環境下であっても長期間にわたって精度よく可動板17を移動させることが可能となる。
【0042】
さらに、第1の実施形態においては、可動板17の支持板11側の表面に、弾性部材18を収容する弾性部材収容孔17aを有し、弾性部材18が加圧されて変形した状態となったときに、弾性部材18が弾性部材収容孔17aに収容されるように構成されている。したがって、本実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット1は、例えば、可動板17(発熱体)と熱交換器(熱交換器)とを接触状態(ON)あるいは非接触状態(OFF)のどちらかに切り替えるための装置(ヒートスイッチ)として用いることができる。本実施形態の熱応動アクチュエータユニット1は電気エネルギーを利用せずに作動させることができる。このため、本実施形態の熱応動アクチュエータユニット1を、人工衛星、探査機およびローバなどの宇宙機に用いると、低温環境下では、電気エネルギーを利用せずに発熱体と熱交換器とを非接触状態とすることができる。これによって、発熱体が熱交換機を介して外部に放出されにくくなるので、ヒータによる電力の使用量を削減することができ、バッテリーや発電機などの電気エネルギーの供給源を軽量化することが可能となる。
【0043】
さらにまた、第1の実施形態においては、弾性部材18が穴を有する皿ばねであって、この皿ばねの穴が支柱12に挿入されている。この場合、皿ばねは高い回復力を有するため、熱伝導性部材16の温度が、形状記憶合金柱状体15の復元力が弾性部材18の回復力以下になる温度未満に下降したときは、確実に、熱伝導性部材16および可動板17と、支持板11と、を相対的に離間移動させることができる。したがって、本実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット1は、発熱体と熱交換器とを接触状態あるいは非接触状態のどちらかに切り替えるための装置として安定に作動させることが可能となる。
【0044】
そして、第1の実施形態においては、支柱12は雄ねじを有するボルトであって、支持板11は表面に雌ねじを有し、このボルトの雄ねじと支持板11の雌ねじとを螺合させることによって、支柱12を支持板11の表面に固定させているので、支柱12と支持板11とを確実に固定することができる。したがって、本実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット1は、発熱体と熱交換器とを接触状態あるいは非接触状態のどちらかに切り替えるための装置としてより確実に安定に作動させることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット1は、熱環境による形状記憶合金柱状体15の伸縮と、弾性部材18の弾性的な伸縮とによって、支持板11の表面に対して垂直な方向に可動板17を変位させる。よって、例えば、同一の形状記憶合金柱状体15を用いても、支柱12と支持板11とを螺合させるときの締め付けトルク(形状記憶合金柱状体15および弾性部材18に付与される初期の圧縮力の程度)を調整することによって、熱応動アクチュエータ10が作動する温度条件を変更することができる。
【0046】
さらに、本実施形態の熱応動アクチュエータ10は、支柱12と、熱変形部材14と、弾性部材18を備える簡単な構成とされているので、例えば、電子機器が配置されている基板と熱交換器とをボルトで固定している装置においては、ボルトのワッシャー部に搭載することが可能となる。
【0047】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットの作動状態を説明する図であり、(a)は、作動前の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図、(b)は、作動後の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図である。
なお、この第2の実施形態においては、第1の実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0048】
第2の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット2では、熱変形部材14が、支柱12が通る貫通孔を有する形状記憶合金筒状体21とされている。
形状記憶合金筒状体21を構成する形状記憶合金の材料および結晶構造は、第1の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット1の形状記憶合金柱状体15の場合と同様とすることができる。
【0049】
本実施形態の熱応動アクチュエータユニット2において、可動板17の温度が、形状記憶合金筒状体21の復元力が弾性部材18の回復力以下になる温度以下である場合は、図3の(a)に示すように、形状記憶合金柱状体15は、圧縮変形した長さL20となる。
【0050】
一方、可動板17に配置された電子機器(図示せず)の発熱によって、可動板17の温度が上昇すると、形状記憶合金筒状体21の温度も上昇する。形状記憶合金筒状体21の温度が、その復元力が弾性部材18の回復力以上になる温度以上となると、形状記憶合金筒状体21は復元力により支持板11の表面に対して垂直な方向(支柱12の長手方向)に沿う方向に伸び変形して、図3の(b)に示すように、長さL21となる。
【0051】
形状記憶合金筒状体21が伸び変形すると、その伸び変形量に対応して、可動板17と支持板11とが相対的に接近移動する。可動板17と支持板11とが相対的に接近移動することによって、弾性部材18が圧縮変形する。このように、形状記憶合金筒状体21の温度が、その復元力が弾性部材18の回復力以上になる温度以上となると、形状記憶合金筒状体21の伸び変形と弾性部材18の圧縮変形によって、可動板17と支持板11の位置関係が互いに接するように変化する。
【0052】
次に、可動板17の温度が低下すると、形状記憶合金筒状体21の温度も低下する。形状記憶合金筒状体21の温度が、その復元力が弾性部材の回復力以下になる温度未満となると、形状記憶合金筒状体21は伸び変形する力が弱くなる。そうすると、弾性部材18は、復元力によって元の形状に戻ろうとし、可動板17と支持板11とが相対的に離間移動する。可動板17と支持板11とが相対的に離間移動することによって、形状記憶合金筒状体21は圧縮変形して、図3の(a)に示すように、圧縮変形した長さL20となる。このように、形状記憶合金筒状体21の温度が、その復元力が弾性部材18の回復力以下になる温度未満となると、弾性部材18の回復力による変形と、形状記憶合金筒状体21の圧縮変形とによって、可動板17と支持板11の位置関係が互いに離れるように変化する。
【0053】
以上のような構成とされた第2の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット2によれば、熱変形部材14は支柱12が通る貫通孔を有する形状記憶合金筒状体21とされていて、熱変形部材14の構造が簡略となるので、サイズの小型化および軽量化が容易となる。なお、第2の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットでは、フランジ部13の代わりに支柱12の頭部をフランジとして使用してもよい。
【0054】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットの作動状態を説明する図であり、(a)は、作動前の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図、(b)は、作動後の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図である。
なお、この第3の実施形態においては、第1の実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0055】
第3の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット3では、弾性部材18が、支持板11の可動板17側の表面に弾性部材収容孔11aに収容されている。弾性部材収容孔11aは、弾性部材18が加圧されて変形した状態となったときに支持板11と可動板17とが接触し、弾性部材18が復元した状態となったときに支持板11と可動板17とが非接触となる深さで形成されている。
【0056】
第3の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット3では、弾性部材18が、支持板11の可動板17側の表面に弾性部材収容孔11aに収容されていて、可動板17に弾性部材18を収容させるための孔を形成する必要がない。このため、可動板17の強度を高くすることができる。したがって、本実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット3は、可動板17に比較的質量が大きい電子機器や加工が難しい材料を配置する場合に適している。
【0057】
なお、弾性部材18を収容するための孔は、支持板11と可動板17のそれぞれに形成されていてもよい。この場合、支持板11と可動板17のそれぞれに形成した孔の合計の深さが、弾性部材18が加圧されて変形した状態となったときに支持板11と可動板17とが接触し、弾性部材18が復元した状態となったときに支持板11と可動板17とが非接触となる深さとする。
【0058】
[第4の実施形態]
図5は、本発明の第4の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットの正面断面図である。
なお、この第4の実施形態においては、第1の実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0059】
第4の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット4は、さらに、支柱12(ボルトの雄ねじ)と支持板11(雌ねじ)とを螺合させるときの締め付けトルクを調整する締め付けトルク調整部41を備える。締め付けトルク調整部41は、例えば、無線操作可能なモータを備え、遠隔地から締め付けトルクの値を設定できるようにされている。
【0060】
熱応動アクチュエータ10が作動する温度条件は、支柱12と支持板11とを螺合させるときの締め付けトルク(形状記憶合金柱状体15および弾性部材18に付与される初期の圧縮力の程度)によって変更することができる。したがって、本実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット4は、遠隔地から熱応動アクチュエータ10が作動する温度条件を変えることが可能となる。
【0061】
[第5の実施形態]
図6は、本発明の第5の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットを説明する図であり、(a)は、接触抑制部材が作動する前の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図、(b)は、接触抑制部材が作動した後の熱応動アクチュエータユニットの正面断面図である。
なお、この第5の実施形態においては、第1の実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0062】
第5の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット5は、支持板11の可動板17側の表面に柱状の接触抑制部材51が埋設されている。接触抑制部材51は支持板11の温度が過度に高くなると長手方向に膨張して、支持板11と可動板17とが直接接触するのを防止する機能がある。接触抑制部材51の材料としては、形状記憶合金を用いることができる。
【0063】
支持板11の温度が過度に高くなると、支持板11と可動板17とが接触した際に、支持板11の熱が可動板17に移動し、可動板17に配置した電子機器が熱によって損傷するおそれがある。支持板11に接触抑制部材51を設けることによって、過度に高温となった支持板11と可動板17とが接触することを抑制することができる。
【0064】
[第6の実施形態]
図7および図8は、本発明の第6の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニットの構成を説明する図であり、図7(a)は、熱応動アクチュエータユニットの正面図、図7(b)は、熱応動アクチュエータユニットの平面図である。図8は、図7(b)のVIII−VIII線断面図である。
なお、この第6の実施形態においては、第1の実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0065】
熱応動アクチュエータユニット6は、支柱12と、熱変形部材14と、弾性部材18とを備える熱応動アクチュエータ10を4個有する。これら4個の熱応動アクチュエータ10は、それぞれ熱応動アクチュエータユニット6の四隅の近傍に備えられている。可動板17の支持板11とは反対側の表面には発熱体61が配置されている。
【0066】
以上のような構成とされた第6の実施形態に係る熱応動アクチュエータユニット6によれば、複数個の熱応動アクチュエータ10を用いて可動板を移動させるので、精度よく可動板17を移動させることが可能となる。また、個々の熱応動アクチュエータ10は、支持板11と、支柱12と、熱変形部材14と、可動板17と、弾性部材18とを備える比較的簡単な構成とされているので、サイズの小型化および軽量化が容易となる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の形状や組み合わせは一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0068】
本実施形態においては、熱応動アクチュエータユニットを、支持板と可動板とを接触状態(ON)と非接触状態(OFF)とに切り替えるための装置(ヒートスイッチ)として説明した。ただし、本発明の熱応動アクチュエータユニットは、例えば、可動板17を可動ステージとする位置決め装置として利用することができる。
【0069】
位置決め装置として利用する場合は、熱変形部材14にヒータを配置して、形状記憶合金に熱を付与することが好ましい。この場合、可動板17は熱伝導性でなくてもよい。また、位置決め装置として利用する場合は、支持板と可動板とを接触状態とする必要は特にはない。このため、支持板の可動板17側の表面又は可動板の支持板側の表面に、弾性部材を収容する弾性部材収容孔を設けなくてもよい。
【0070】
また、本実施形態の熱応動アクチュエータユニットでは、支持板の表面に固定された支柱のフランジ部によって、熱変形部材を可動板(第1の部材)の支持板(第2の部材)側とは反対側に固定しているが、熱変形部材の形状記憶合金を可動板側に伸び変形させることができれば、熱変形部材の固定方法には特に制限はない。
【0071】
さらに、本実施形態の熱応動アクチュエータユニットでは、熱変形部材を可動板(第1の部材)にのみに配置しているが、支持板(第2の部材)の可動板側とは反対側にも熱変形部材を配置してもよい。この場合は、熱変形部材の形状記憶合金による伸び変形によって、可動板と支持板の両方が互いに移動するため、非接触状態(OFF)と接触状態(ON)との切り替えをより確実に行うことができる。
【0072】
なお、本実施形態の熱応動アクチュエータユニット及び熱応動アクチュエータは、宇宙用途に限定されるものではなく、地上用途の発熱体や熱交換器などへ適用できることはいうまでもない。
【実施例】
【0073】
[実施例1]
図7に示すように、四隅の近傍に熱応動アクチュエータを備えた熱応動アクチュエータユニット6を作製した。
支持板11および可動板17としては、アルミニウム合金板を用いた。可動板17には発熱体61としてヒータを配置した。
支柱12としては、フランジ付のねじ(M4)を用いた。
熱変形部材14として、6個の単結晶の形状記憶合金柱状体15(サイズ:φ1.3mm、長さ9mm、変態温度:20℃)と、アルミニウム合金製の熱伝導性部材16とを含むものを用いた。6個の形状記憶合金柱状体15はそれぞれ等間隔で配置した。
弾性部材18としては、皿ばね(SSRBN14−A)を用いた。
支柱12は、トルク0.6Nm(25℃)の力で支持板11に固定した。
【0074】
作製した熱応動アクチュエータユニット6を低温恒温槽内に配置した。低温恒温槽内の温度を、60℃→40℃→20℃→0℃→−20℃→−40℃→−20℃→0℃→20℃→40℃→60℃の順に、各温度で120分間維持しながら、支持板11と可動板17の温度を測定する試験を行なった。なお、試験中は、発熱体61(ヒータ)に約10Wの電力を付与した。この試験結果を、図9に示す。
【0075】
図9において、横軸は時間を、縦軸は温度を表す。実線は支持板11の温度であり、破線は可動板17の温度である。また、図9中、Heat inputは、発熱体61に付与した電力である。
実線と波線が重なっているときは、支持板11と可動板17とが接触状態となっていると考えられる。一方、実線と波線が乖離しているときは、支持板11と可動板17とが非接触状態となっていると考えられる。
【0076】
図9の結果から、低温恒温槽内の温度を60℃から順次下降させたときは、温度が0℃となった時点で支持板11と可動板17とが非接触状態となったことが分かる。支持板11と可動板17とが非接触状態となると、支持板11は環境温度の低下に伴って温度が大きく低下する。一方、可動板17はヒータから供給される熱によって、環境温度の低下による温度の低下量が少なくなる。
【0077】
また、図9の結果から、低温恒温槽内の温度を−40℃から順次上昇させたときは、温度が40℃となった時点で支持板11と可動板17とが接触状態となったことが分かる。支持板11と可動板17とが接触状態となると、可動板17に供給されるヒータからの熱が支持板11に拡散するため、支持板11と可動板17の温度が同じとなる。
【0078】
以上の結果から、本実施例の熱応動アクチュエータユニット6を用いることによって、可動板の環境温度に対する熱変化量を低減させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0079】
1、2、3、4、5、6…熱応動アクチュエータユニット、10…熱応動アクチュエータ、11…支持板、11a…弾性部材収容孔、12…支柱、13…フランジ部、14…熱変形部材、15…形状記憶合金柱状体、16…熱伝導性部材、17…可動板、17a…弾性部材収容孔、18…弾性部材、21…形状記憶合金筒状体、41…締め付けトルク調整部、51…接触抑制部材、61…発熱体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9