【解決手段】多波長光源は、反射端面を有する1つのレーザ利得媒質と前記レーザ利得媒質の前記反射端面と反対側の第2端面に光学的に接続される複数の回折格子とを有するレーザ領域と、前記レーザ領域の前記反射端面から出射するレーザ光を一括して増幅する1つの光増幅器と、前記光増幅器の出力光を分波する光分波器と、前記光分波器に接続されて前記レーザ光に含まれる複数の波長の光を出力する出力導波路と、を有する。
前記分割溝は、前記レーザ利得媒質の前記反射端面となる第1の面と、前記光増幅器の入射端面となる第2の面を有し、前記第1の面と前記第2の面は所定の角度をなして斜めに配置されていることを特徴とする請求項2に記載の多波長光源。
前記レーザ利得媒質は第1の基板に形成され、前記光増幅器は前記第1の基板と異なる第2の基板に形成され、前記第1の基板と前記第2の基板は、同一面内で互いに角度をなして配置されていることを特徴とする請求項1に記載の多波長光源。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態では、波長数に応じたLDチップを用いる替わりに、1個のレーザ利得媒質を用いて複数波長の光を出力する多波長光源を提供する。1つのレーザ利得媒質と、波長の数に応じた回折格子またはミラー(以下、単に「回折格子」とする)とで共振器を形成して、多波長レーザを実現する。
【0014】
複数の回折格子(またはミラー)は並列に配置され、光分波器によってレーザ利得媒質と各回折格子が光学的に接続される。レーザ利得媒質と光分波器の間に、複数の回折格子の波長間隔に等しいフリースペクトラルレンジ(FSR)を有する共振器を配置してもよい。この多波長レーザから出力されるレーザ光を、1つの光増幅器で一括して増幅し、光分波器で分波して各波長の光を出力する。
【0015】
光増幅器は、たとえばSOA(Semiconductor Optical Amplifier:半導体光増幅器)である。このSOAは、ブースト用に用いられるので、ブースターSOAと呼んでもよい。SOAでブーストされるレーザ光は、複数の波長を含む連続光(CW)である。
【0016】
レーザ利得媒質とブースターSOAの互いに対向する端面は平行ではなく、一方が他方に対して斜めに配置される。レーザ利得媒質では、光を共振させ発振させるために、利得導波路と直交する面内に端面が形成される。ブースターSOAは、レーザ利得媒質からの出射光に対して斜めに傾いた端面を有する。これにより、SOA端面での反射光がレーザ利得媒質の導波路端面に再入射することを防止する。
【0017】
1つのレーザ利得媒質と、レーザ利得媒質の外部に配置される複数の回折格子(またはミラー)を用いて多波長のレーザ光を生成することで、LDの製造ばらつきの影響を抑制し、かつ消費電力を低減することができる。多波長のレーザ光を1つのブースターSOAで一括して増幅することで、多波長光源の後段に接続される光変調器や光合波器の損失をあらかじめ補償することができる。
【0018】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の多波長光源10Aの概略図である。第1実施形態では、同一のチップまたは基板20に、1つのレーザ利得媒質と1つの光増幅器が形成されている。レーザ利得媒質も光増幅器も光学利得を生成する媒質であるが、以下の実施形態では、レーザ利得媒質を「ゲインチップ」と呼び、光増幅器を「ブースターSOA」と呼ぶ。
【0019】
ゲインチップ21とブースターSOA22が形成された基板20は、別の基板101に実装されており、基板101に形成された光導波路回路と光学的に接続されている。基板101は、たとえばSOI(Silicon on Insulator)基板であり、シリコン細線導波路で光導波路と光素子が形成されているシリコンフォトニクス基板である。
【0020】
図1の例では、ゲインチップ21に接続される光導波路15と、並列に配置される複数の回折格子14−1〜14−N(適宜、「回折格子14」と総称する)と、光導波路15と各回折格子14を接続する光分波器13が基板101に形成されている。
【0021】
基板101にはまた、ブースターSOA22に接続される光導波路19と、光分波器12と、複数の出力導波路18−1〜18−N(適宜、「出力導波路18」と総称する)が形成されている。
【0022】
ゲインチップ21の利得導波路23は、基板101に形成された光導波路15と光学的に結合され、ブースターSOA22の利得導波路24は、基板101に形成された光導波路19と光学的に結合されている。
【0023】
基板20は分割領域Sを有し、ゲインチップ21とブースターSOA22は、分割溝25によって分離されている。分割溝25は、たとえば、所定パターンの利得導波路があらかじめ形成された基板20にエッチングを施して、基板20の表面から所定の深さまでエッチング除去することで形成される。分割溝25の形成により、基板20は、利得導波路23を有するゲインチップ21と、利得導波路24を有するブースターSOA22に分離される。
【0024】
分割溝25は、ゲインチップ21側の端面26と、ブースターSOA22側の端面27を有する。分割溝25がドライエッチングで形成される場合、端面26と端面27はエッチドミラーとして機能し、いずれも反射端面となる。ゲインチップ21の端面26は、利得導波路23の光軸に対して垂直な面である。ブースターSOA22の端面27は、利得導波路23からの入射光に対して斜めに傾いている。
【0025】
分割溝25により、端面26と端面27の間にくさび型の空間が形成されて、空気層となっている。分割溝25で隔てられるゲインチップ21とブースターSOA22には、電流注入用の電極(図示を省略する)が個別に設けられており、注入電流は互いに独立して制御される。
【0026】
1つのゲインチップ21と、複数の回折格子14−1〜14−Nで、DBR(Distributed Bragg Reflector:分布ブラッグ反射器)レーザ領域102が形成される。ゲインチップ21で発生した光は、光分波器13でフィルタリングまたは分波される。光分波器13は、AWG(Arrayed Waveguide Grating:アレイ導波路グレーティング)でもよいし、マッハ・ツェンダ(MZ)干渉計を使ったフィルタ等であってもよい。
【0027】
分波された各光成分は、回折格子14−1〜14−Nの各周期構造によって決まる特定波長の光が回折し強め合って、ゲインチップ21に帰還される。ゲインチップ21の分割溝25側の端面26は反射端面、光導波路15側の端面28は無反射面である。ゲインチップ21の端面26と各回折格子14の間を光が往復し、各々の回折格子14で決まる波長でレーザ発振する。複数の波長を含むレーザ光の一部は端面26から出力され、ブースターSOA22で増幅されて、光分波器12で分波される。
【0028】
図2は、各回折格子14によるブラッグ反射スペクトルと光分波器13の透過スペクトルを示す図である。光分波器13は、破線で示す周期的な透過スペクトルを有する。回折格子14−1〜14−Nのそれぞれは、その周期構造によって決まるブラッグ反射スペクトルを有する。各回折格子14のブラッグ反射スペクトルは、光分波器13の透過スペクトルとオーバーラップして、波長λ
0、λ
1、…、λ
N-1でレーザ発振する。各波長の光を含むレーザ光は、ゲインチップ21の端面26から取り出される。
【0029】
図3は、ゲインチップ21とブースターSOA22を分割する分割領域Sの拡大図である。ゲインチップ21の端面26は、利得導波路23の光軸と直交する面内に位置する。利得導波路23から出射したレーザ光は分割溝25の空気層を直進して、ブースターSOA22の入射側の端面27から利得導波路24に入射する。
【0030】
ブースターSOA22の端面27は、入射光に対して斜めに位置する。斜めの端面27へのレーザ光の入射角をα、空気から利得導波路24への屈折角をβとすると、スネルの法則により、sinα=n×sinβとなる。ここで、nは利得導波路24の空気に対する相対屈折率である。
【0031】
分割領域Sに、
図3の構成の分割溝25を形成することで、ゲインチップ21とブースターSOA22に反射端面(エッチドミラー)を設け、かつ分割領域Sでの共振を防ぐことができる。すなわち、ブースターSOA22の入射側の端面26で反射したレーザ光がゲインチップ21の利得導波路23に再入射することを防止できる。
【0032】
ゲインチップ21とブースターSOA22が形成された基板20は、化合物半導体で形成されている。利得導波路23と利得導波路24は、たとえば使用帯域がC帯の場合は、InGaAsPの多層量子ドットまたは多重量子井戸層で形成される。
【0033】
基板20は、たとえば、シリコンフォトニクスの基板101に形成された溝またはリセスに収容される。基板101の光導波路15、ゲインチップ21の利得導波路23、ブースターSOA22の利得導波路24、及び基板101の光導波路19の高さ方向の位置がすべてそろうように基板20が実装される。ブースターSOA22の出射側の端面29から出射した光は、光導波路19を通って光分波器12に入射し、波長ごとに分波される。各波長の光は出力導波路18−1〜18−Nから出力される。
【0034】
この構成により、単一のレーザ利得媒体と、単一の光増幅器を用いて、多波長のレーザ光を出力することができ、小型かつ低消費電力の多波長光源が実現される。また、LD製造ばらつきによる歩留りの低下を抑制することができる。
【0035】
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態の多波長光源10Bの概略図である。第2実施形態では、ゲインチップ21と光分波器13の間に、所定のフリースペクトラルレンジ(FSR)を有する共振器31を配置する。それ以外の構成は、第1実施形態と同様である。第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0036】
同一の基板20に形成されているゲインチップ21とブースターSOA22は、分割領域Sの分割溝25によって互いに隔てられている。分割溝25を挟んで、斜めに方向で対向するゲインチップ21の端面26とブースターSOA22の端面27は、エッチドミラーとして機能する。ゲインチップ21の端面26と、各回折格子14−1〜14−Nの間に光共振器(またはレーザ領域102)が形成され、各回折格子14の周期構造で決まる波長でレーザ発振する。
【0037】
第2実施形態の特徴として、ゲインチップ21と光分波器13の間の光導波路15に沿って、リング導波路16と、ループミラー17が形成されている。ゲインチップ21の光導波路15側の端面28とループミラー17の間に共振器31が形成される。光導波路15からリング導波路16に結合して周回する光は、直線導波路17aに結合してループミラー17で反射される。反射光は、逆の光路を通って、利得導波路23の端面28で反射され、ループミラー17との間を往復する。
【0038】
共振器31は、この共振器31の共振で決まるフリースペクトラルレンジ(FSR)を有する。共振器31は、そのFSRが回折格子14−1〜14−Nで決まる波長間隔と等しくなるように形成されている。共振器31の共振器長をLとし、光導波路コアを伝搬する光の速度をcとすると、FSRは2L/cで表される。2L/cが、回折格子14−1〜14−Nの波長間隔とほぼ一致するように共振器31は設計される。
【0039】
図5は、各回折格子14のブラッグ反射スペクトルと、共振器31の共振モードを示す図である。共振器31の共振で決まるFSRを、波長多重(WDM)の波長間隔Δλに合わせる。また、回折格子14−1〜14−Nのそれぞれのブラッグ波長がWDMのチャンネル波長と一致するように回折格子14−1〜14−Nを形成してレーザ発振させる。
【0040】
この構成により、多重される各波長の間隔が共振器31のFSRで決まるため、波長間隔が等間隔となる。第1実施形態では、
図2のように光分波器13でフィルタリングされた光のスペクトルに拡がりがあるため、発振波長は対応するグリッド内に入っていても、波長間隔は必ずしも等間隔にはならない。これに対し、第2実施形態では、波長間隔をFSRによって精密に制御することができる。
【0041】
波長間隔の等しい複数の波長を含むレーザ光は、ブースターSOA22で一括して増幅され、光分波器12で分波され、各出力導波路18−1〜18−Nから出力される。複数波長を含むレーザ光を一括して増幅するので、多波長光源10Bの後段の光変調器や光合波器での損失をあらかじめ補償することができる。
【0042】
第2実施形態においても、単一のレーザ利得媒質で多波長のレーザ光を生成し、歩留りの低下を抑制して、小型かつ低消費電力の多波長光源が実現する。
【0043】
<第3実施形態>
図6は、第3実施形態の多波長光源1Cの概略図である。
図6では、第2実施形態の構成を基礎にしているが、第1実施形態の構成を基礎にしてもよい。第1実施形態及び第2実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0044】
第3実施形態では、分割領域Sでの反射光の影響の抑制に加えて、ゲインチップ21の利得導波路23と光導波路15の間の光結合箇所、及び/またはブースターSOA22の利得導波路24と光導波路19の間の光結合箇所でも反射光の影響を低減する。
【0045】
ゲインチップ21の利得導波路23は、基板20の端面28に対して斜めに形成されている。ブースターSOA22の利得導波路24は、基板20の端面29に対して斜めに形成されている。
【0046】
利得導波路23は、分割溝25の端面26に対しては垂直に延びており、エッチドミラーとして機能する端面26で反射されて、光導波路15側に向かう。このとき、光導波路15で反射された戻り光が、利得導波路23に再入射するとレーザ共振が替わり好ましくない。利得導波路23を光導波路15側の端面28に対して斜めにすることで、光導波路15からの反射光が利得導波路23に再入射することを防止できる。
【0047】
ブースターSOA22においても、利得導波路24から出射する光が光導波路19で反射されたときに、反射光が利得導波路24に再入射すると増幅器の内部で好ましくない共振が生じる。利得導波路24を基板20の端面28に対して斜めに形成することで、光導波路19からの反射光が利得導波路24に再入射することを防止する。
【0048】
基板20をシリコンフォトニクスの基板101に実装する場合、光導波路15及び19との結合箇所での反射光の影響を防止し、かつ、できるだけ結合損失の少ない配置とする。光結合箇所での反射光の再入射と、結合損失の双方を抑制する場合、ゲインチップ21とブースターSOA22が形成された基板20は、シリコンフォトニクスの基板101の長軸に対して斜めに配置される場合もある。
【0049】
図6の例では、ゲインチップ21の光導波路15側の端面28は、光導波路15の光軸と直交する面から所定角度傾いる。ブースターSOA22の出力側の端面29は、光導波路19の光軸と直交する面から所定角度傾いている。
【0050】
図6の配置により、光導波路15と利得導波路23の間の光結合箇所で、利得媒質への反射光の再入射を防止し、かつ伝搬光の損失を抑制して、レーザ領域102でのレーザ共振を維持することができる。また、ブースターSOS22の利得導波路24の出射側の端面29と光導波路19の端面を、光導波路19からの反射戻り光がブースターSOS22に再入射しない程度の角度で斜めに配置することで、反射の影響を抑制し、かつ結合損失を抑制する。
【0051】
図6の配置構成は、第1実施形態の構成にも適用することができる。その場合も、光導波路15と利得導波路23が光結合する部分、及び利得導波路24と光導波路19が光結合する部分での反射の影響と、結合損失を抑制することができる。
【0052】
第3実施形態でも、単一のレーザ利得媒質を用いて多波長のレーザ光を精度良く出力することができる。LD製造ばらつきによる歩留り低下を抑制して、小型、低消費電力、かつ高精度の多波長光源が実現される。
【0053】
<第4実施形態>
図7は、第4実施形態の多波長光源10Dの概略図である。第1〜第3実施形態では、同一の基板20にゲインチップ21とブースターSOAを配置し、分割領域Sの分割溝25で2つの光素子を分離していた。
【0054】
第4実施形態では、ゲインチップ21とブースターSOA22は、それぞれ別個の基板20aと20bに形成されて、シリコンフォトニクスの基板101に実装される。ゲインチップ21の出射側の端面36と、ブースターSOA22の入射側の端面36は、互いに角度をなして配置される。端面36は、たとえば劈開を利用して形成されており、反射端面となっている。端面36と回折格子14−1〜14−Nの間に共振器(レーザ領域102)が形成されて、回折格子14−1〜14−Nで決まる波長でレーザ発振する。
【0055】
シリコンフォトニクスの基板101にあらかじめ、ゲインチップ21とブースターSOA22を収容する1つの溝またはリセスを形成しておき、溝内に
図7の配置関係でゲインチップ21とブースターSOA22を収容する。溝内で、ゲインチップ21とブースターSOA22の間に空間35が形成される。ゲインチップ21の利得導波路23とブースターSOA22の利得導波路24の高さ位置、及び基板101の光導波路15及び19の高さ位置は、そろっている。
【0056】
ゲインチップ21の利得導波路23の光出力側の端面36は、利得導波路23の光軸と直交する。一方、ブースターSOA22の利得導波路24の入射側の端面37は、利得導波路23からの出射光の光軸に対して斜めに傾いている。これにより、
図3と同様の光路で、多波長のレーザ光がブースターSOA22に入射する。ブースターSOA22の端面からの反射光がゲインチップ21に再入射することを防止できる。
【0057】
図7の構成は、ドライエッチングで基板20に分割溝25を形成する工程を省略することができ、劈開を利用してゲインチップ21を切り出すことができる。
【0058】
単一のレーザ利得媒質を用いて多波長のレーザ光を出力することができるのは、第1〜第3実施形態と同様である。
図7の構成を、第1実施形態の構成に適用してもよい。
【0059】
<第5実施形態>
図8は、第5実施形態の多波長光源10Eの概略図である。第5実施形態では、
図6(第3実施形態)の構成を、個別の基板20a、20bに形成されたゲインチップ21とブースターSOA22で実現する。第3実施形態と同様に、光を結合する箇所で導波路間を斜めに接続する。
【0060】
ゲインチップ21のレーザ出力側の端面36と、ブースターSOA22の入射側の端面37は、互いに角度をなして配置され、端面36と端面37の間に空間35または空気層が形成される。ゲインチップ21の利得導波路23、ブースターSOA22の利得導波路24、基板101の光導波路15、及び光導波路19の高さ方向の位置は、すべてそろっている。
【0061】
ゲインチップ21の利得導波路23は、出力端面となる端面36に対しては直角に延びるが、反対側の端面28に対して斜めに延びている。利得導波路23と光導波路15の結合箇所で、光導波路15からの反射光が利得導波路23に再入射することを防止し、かつ、知録導波路23と光導波路15との間の結合損失を最小にする。また、レーザ領域102の内部に共振器31を設けることで、多重される波長間隔を共振器31のFSRに固定して、安定な動作を実現する。
【0062】
ブースターSOA22の利得導波路24の入射側の端面37は、利得導波路23からの出力光の光軸に対して斜めに傾いている。これにより、ブースターSOA22からの反射光がゲインチップ21に再入射することを防止する。さらに、ブースターSOA22は、その利得導波路24が光導波路19の光軸に対して斜めに位置するように配置され、光導波路19からの反射光が利得導波路24に戻ることを防止する。
【0063】
この構成により、光が結合する箇所での反射を防止して、多波長光源10の誤動作を防止することができる。なお、
図8の構成を
図1の構成に適用してもよい。
【0064】
第1〜第5のいずれの実施形態においても、1個のゲインチップ21のブースターSOA22側の端面を反射面とし、反対側の端面を、光分波器を介して複数の回折格子と光学的に接続することで、多波長のレーザ光を発生する。歩留り低下を抑制して、小型かつ低消費電力で多波長のレーザ光を発生させるのみなら、ここまでの構造で実現可能である。
【0065】
多波長光源の後段での光損失を補償するという観点からは、多波長を含むレーザ光をあらかじめ増幅して出力することが望ましい。レーザ光を変調して変調光信号をWDM伝送する際に光を分岐または合成する過程で損失を受け、伝送に充分な光強度が得られない場合がある。多波長のレーザ光をブースターSOA22で一括して増幅することで、後段に接続される光変調器や光合波器での損失をあらかじめ補償する。
【0066】
第2実施形態のように、レーザ領域102の内部に、FSRが回折格子14−1〜14−Nの波長間隔に等しい共振器31を設ける場合は、多重される光の波長間隔をFSRによって精密に制御することができる。
【0067】
第3〜第5実施形態のいずれのチップ配置構成も、第1実施形態のシリコンフォトニクス光導波路の構成に適用することができる。その場合も、1個のゲインチップ21と、1個のブースターSOAと、多波長分の共振構造を基板101に集積することで、レーザ発振のためのトータルの電流注入量を低減して、消費電力を低減することができる。また、化合物半導体の利得媒質に回折格子を形成しなくてもよいため、LDの歩留まり問題を解消して、設計された波長の多波長光源を実現することができる。
【0068】
<光モジュールへの適用>
図9は、実施形態の多波長光源10を適用した光モジュール100の概略図である。光モジュール100は、一例として4波長のWDM光送信モジュールである。
【0069】
光モジュール100は、基板103上に、多波長光源10、光変調器109−1〜109−4、光変調器ドライバ108−1〜108−4、及び光合波器111を有する。基板103に、光変調器109−1〜109−4の出力光をモニタするモニタPD110−1〜110−4を配置してもよい。
【0070】
構成を明確化するために、多波長光源10を破線で囲まれた領域として示しているが、多波長光源10に形成されている光導波路(黒の太線で表示)と、光モジュール100の基板103に形成されている光導波路は一度のプロセスで形成されている。
【0071】
図9では、多波長光源10として第2実施形態(
図4)の構成を用いているが、第1〜第5実施形態のいずれの構成を採用してもよい。多波長光源10は、反射端面26(
図4参照)を有する単一のゲインチップ21と4つの回折格子14−1〜14−4により、4つの波長でレーザ発振する。
【0072】
ゲインチップ21と、回折格子14−1〜14−4への光を分波する光分波器13(
図4参照)の間に、ターゲットの波長間隔と同じFSRを有する共振器31を配置する場合は、FSRによって発振波長を等間隔に制御することができる。
【0073】
ゲインチップ21から出力される4波長のレーザ光は、ブースターSOA22で一括して増幅され、分岐されて出力導波路18−1〜18−4から出力される。
【0074】
各波長の光は、対応する光変調器109に入力される。光変調器109において、各波長の光は、光変調器ドライバ108から入力される高速の駆動信号によって変調され、光変調器109から変調光信号が出力される。複数の波長の変調光信号は光合波器111で合波されて、光伝送路に出力される。
【0075】
この光モジュール100の多波長光源10は、実装されるレーザ利得媒質が1個であり、光モジュール100全体を小型化、かつ低消費電力化することができる。また、同一チップに形成されたレーザ利得媒質と光増幅器を用いているので、配置スペースを低減し、かつ後段での光損失をあらかじめ補償することができる。所定のFSRを有する共振器31を配置する場合は、そのFSRによって多重される波長の間隔を等間隔に制御することができ、WDM通信の信頼性を向上することができる。
【0076】
以上の説明に対し、以下の付記を呈示する。
(付記1)
反射端面を有する1つのレーザ利得媒質と、前記レーザ利得媒質の前記反射端面と反対側の第2端面に光学的に接続される複数の回折格子とを有するレーザ領域と、
前記レーザ領域の前記反射端面から出射するレーザ光を一括して増幅する1つの光増幅器と、
前記光増幅器の出力光を分波する光分波器と、
前記光分波器に接続されて前記レーザ光に含まれる複数の波長の光を出力する出力導波路と、
を有する多波長光源。
(付記2)
前記レーザ利得媒質と前記光増幅器は、同一の基板に形成され、分割溝によって互いに分離されていることを特徴とする付記1に記載の多波長光源。
(付記3)
前記分割溝は、前記レーザ利得媒質の前記反射端面となる第1の面と、前記光増幅器の入射端面となる第2の面を有し、前記第1の面と前記第2の面は所定の角度をなして斜めに配置されていることを特徴とする付記2に記載の多波長光源。
(付記4)
前記第1の面と前記第2の面はエッチドミラーであることを特徴とする付記3に記載の多波長光源。
(付記5)
前記分割溝は、平面形状がくさび型をしていることを特徴とする付記2に記載の多波長光源。
(付記6)
前記レーザ利得媒質は第1の基板に形成され、前記光増幅器は前記第1の基板と異なる第2の基板に形成され、前記第1の基板と前記第2の基板は、同一面内で互いに角度をなして配置されていることを特徴とする付記1に記載の多波長光源。
(付記7)
前記第1の基板は前記反射端面を有し、前記第2の基板は前記レーザ光が入射する入射端面を有し、前記第1の基板の前記反射端面と、前記第2の基板の前記入射端面の間に空間が形成されていることを特徴とする付記6に記載の多波長光源。
(付記8)
前記レーザ利得媒質の利得導波路の光軸は、前記反射端面と直交しており、
前記光増幅器の利得導波路の入射端面は、前記レーザ利得媒質からの出射光に対して斜めに傾いていることを特徴とする付記1に記載の多波長光源。
(付記9)
前記レーザ媒質の利得導波路は、前記第2端面に対して斜めに延びていることを特徴とする付記1に記載の多波長光源。
(付記10)
前記光増幅器の利得導波路は、前記光増幅器の出射面に対して斜めに延びていることを特徴とする付記1に記載の多波長光源。
(付記11)
前記レーザ利得媒質と前記複数の回折格子の間に配置され、前記複数の波長の波長間隔に等しいフリースペクトラルレンジを有する共振器、
をさらに有することを特徴とする付記1に記載の多波長光源。
(付記12)
前記共振器は、リング導波路とループミラーを有し、前記レーザ利得媒質の前記第2端面と前記ループミラーの間に前記共振器が形成されることを特徴とする付記11に記載の多波長光源。
(付記13)
前記レーザ利得媒質の前記第2端面に光学的に接続される第1の光導波路と、
前記光増幅器の出射端面に光学的に接続される第2の光導波路と、
を有し、
前記レーザ利得媒質の利得導波路の光軸は、前記第1の光導波路の光軸から傾いて配置され、及び/または
前記光増幅器の利得導波路の光軸は、前記第2の光導波路の光軸から傾いて配置されていることを特徴とする付記1に記載の多波長光源。
(付記14)
前記レーザ利得媒質と前記複数の回折格子の間に配置されて、前記レーザ媒質で生成された光を分波する光分波器、
をさらに有し、前記光分波器の出力は、前記複数の回折格子の各々に接続されることを特徴とする付記1に記載の多波長光源。
(付記15)
前記レーザ利得媒質と前記光分波器の間に配置され、前記複数の波長の波長間隔に等しいフリースペクトラルレンジを有する共振器、
をさらに有することを特徴とする付記14に記載の多波長光源。
(付記16)
前記出力導波路から出力される前記複数の波長の光は、連続レーザ光であることを特徴とする付記1〜15のいずれかに記載の多波長光源。
(付記17)
付記1〜16のいずれかに記載の多波長光源と、
前記レーザ光の前記複数の波長の各々に対応する複数の光変調器と、
前記複数の光変調器から出力される複数の変調光信号を合波する合波器と、
を有する光モジュール。
、レーザ領域102でのレーザ共振を維持することができる。また、ブースターSOS22の利得導波路24の出射側の端面29と光導波路19の端面を、光導波路19からの反射戻り光がブースターSOS22に再入射しない程度の角度で斜めに配置することで、反射の影響を抑
の配置構成は、第1実施形態の構成にも適用することができる。その場合も、光導波路15と利得導波路23が光結合する部分、及び利得導波路24と光導波路19が光結合する部分での反射の影
ゲインチップ21の利得導波路23は、出力端面となる端面36に対しては直角に延びるが、反対側の端面28に対して斜めに延びている。利得導波路23と光導波路15の結合箇所で、光導波路15からの反射光が利得導波路23に再入射することを防