【解決手段】操作部材を回動させると、駆動ギア31が操作部材に同期して回動し、それに伴いラック32が移動し、ラック32の移動に伴い綴じ足ギア33,34が回動する。綴じ足ギア33,34の回動に同期して、第1面がラック32の移動方向と略平行であり、被ファイル部材を綴じ足26,27に対して抜き差し不可能な状態と、第2面がラック32の移動方向と略平行であり、被ファイル部材を綴じ足26,27の長手方向と略直交する方向に抜き差し可能な状態との間で綴じ足26,27が回動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図11は、従来(特許文献1)の綴じ具の実施の形態を示す正面斜視図である。ただし
図11では、綴じ具の上カバーは省略されている。綴じ具100は、対向する上下板を連結する、互いに略平行な2個の綴じ足126を有する。被ファイル部材Pは、例えば紙又はプラスチック製等の平板であり、平板の表裏を貫通する略円形の綴じ穴H1と、綴じ穴H1と被ファイル部材Pの端部とを連通するスリットH2とを有する。綴じ足126が被ファイル部材Pの綴じ穴H1、H1に挿通されることで、被ファイル部材Pが綴じ具100に掛け止められる。
【0006】
綴じ足126は、扁平な棒状体である。綴じ足126は、第1面123及び第2面124を有しており、綴じ足126が円周方向に回転されることにより、第1面123が綴じ具100における正面、すなわち被ファイル部材Pを抜き差しする側に向く態様と、第2面124が綴じ具100の正面側に向く態様とが、切り替え可能に構成されている。
【0007】
第1面123の幅は第2面124の幅より広く、第1面123の幅は、綴じ穴H1の直径と同等以下である。第2面124の幅は、スリットH2の幅と同等以下である。第1面123が綴じ具100の正面側に向いている態様においては、第1面123の全幅がスリットH2の幅に対して十分大きいため、被ファイル部材Pは綴じ具100に掛け止められる。第2面124が綴じ具100の正面側に向いている態様においては、綴じ具100の正面側から、綴じ具100から離れる方向へ被ファイル部材Pを引っ張ることにより、綴じ穴H1に挿通されている綴じ足126が被ファイル部材PのスリットH2を通って、被ファイル部材Pを綴じ具100から抜き出すことができる。
【0008】
2つの態様の切り替えは、平板状の操作手段104を図中手前に向かって引っ張る(
図11の矢印参照)ことにより行う。操作手段104を移動させると、綴じ足変角部121が湾曲した変角案内孔141に沿って移動し、それに伴って綴じ足126が回転する。
【0009】
特許文献1に記載の綴じ具では、操作手段104を直線的に引っ張ったとしても、綴じ足変角部121が湾曲した変角案内孔141に沿って移動するのに伴い、操作手段104も変角案内孔141の湾曲に沿って移動する。したがって、操作手段104の操作性が悪く、操作手段104の操作に大きな力が必要であり、被ファイル部材の抜き差しが面倒であるという問題があった。
【0010】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたもので、小さい力、かつ簡単な動作で綴じ足を回転させることができる綴じ具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る綴じ具は、例えば、孔と、前記孔と端辺とを連結し、前記孔の直径より幅が狭いスリットと、が形成された被ファイル部材を綴じる綴じ具であって、扁平な棒状体であり、長手方向に沿った第1面の幅が前記スリットの幅より広く、前記第1面に隣接する第2面の幅が前記スリットより狭い綴じ足と、前記綴じ足の長手方向と略直交する方向と略平行な平面を有し、前記綴じ足が回動可能に設けられる基部と、前記平面に設けられ、前記平面に沿って回転可能な略板状の操作部材と、前記操作部材と連結され、前記操作部材の回転と同期して回転する駆動ギアと、前記平面と略平行に設けられた略板状のラックであって、前記駆動ギアとかみ合う第1ラックギアと、前記第1ラックギアと異なる位置に形成された第2ラックギアと、を有し、前記駆動ギアの回転に伴って平行移動するラックと、前記第2ラックギアとかみ合い、前記ラックの移動に伴って回動する綴じ足ギアであって、前記綴じ足と連結された綴じ足ギアと、を備え、前記操作部材を回動させると、前記第1面が前記ラックの移動方向と略平行であり、前記被ファイル部材を前記綴じ足に対して抜き差し不可能な状態と、前記第2面が前記ラックの移動方向と略平行であり、前記被ファイル部材を前記綴じ足の長手方向と略直交する方向に抜き差し可能な状態との間で前記綴じ足が回動することを特徴とする。
【0012】
本発明係る綴じ具によれば、操作部材を回動させると、駆動ギアが操作部材に同期して回動し、それに伴いラックが移動し、ラックの移動に伴い綴じ足ギアが回動する。綴じ足ギアの回動に同期して、第1面がラックの移動方向と略平行であり、被ファイル部材を綴じ足に対して抜き差し不可能な状態と、第2面がラックの移動方向と略平行であり、被ファイル部材を綴じ足の長手方向と略直交する方向に抜き差し可能な状態との間で綴じ足が回動する。これにより、小さい力、かつ簡単な動作で綴じ足を回転させることができる。
【0013】
ここで、前記綴じ足ギア及び前記綴じ足をそれぞれ2個備え、2個の前記綴じ足ギアは異なる位置に設けられ、前記ラックは、2個の前記綴じ足ギアがそれぞれ噛み合う2個の前記第2ラックギアを有し、2個の前記第2ラックギアは、前記第1ラックギアの両側に設けられていてもよい。これにより、複数の綴じ穴及びスリットを有する被ファイル部材を収容することができる。
【0014】
ここで、前記駆動ギア及び前記綴じ足ギアは平歯車であり、前記駆動ギア、前記ラック及び前記綴じ足ギアは同一平面上に設けられていてもよい。これにより、綴じ足を回転させるための機構部分を薄くし、綴じ具をコンパクトにすることができる。
【0015】
ここで、前記駆動ギア及び前記第1ラックギアのモジュールは、前記綴じ足ギア及び前記第2ラックギアのモジュールの1/2であってもよい。これにより、ラックが一定距離移動したときの綴じ足ギアの回動量は、駆動ギアの回動量の半分となり、駆動ギアすなわち操作部材を略180度回転させることで、綴じ足ギアすなわち綴じ足を略90度回転させることができる。また、綴じ足ギアトルクが駆動ギアのトルクの略2倍となり、より軽い力で綴じ足を回転させることができる。
【0016】
ここで、前記綴じ足ギアは、幅が前記第2面の幅と略同じである長孔を有し、前記綴じ足は、幅が前記第1面より狭い先端部が、前記第1面と連続して形成され、前記先端部が前記長孔に挿入されていてもよい。これにより、綴じ足と長孔とが面で当接し、綴じ足に大きな回転トルクが発生したとしても、長孔に対して綴じ足が回転しないようにすることができる。
【0017】
ここで、両端が前記綴じ足ギアの外周部と前記基部とにそれぞれ固定された引っ張りばねをさらに備え、前記綴じ足ギアは、外周の一部に歯が形成され、前記綴じ足ギアにおいて、前記綴じ足ギアの中心を挟んで前記歯の略反対側に前記引っ張りばねの一端が設けられていてもよい。これにより、意図しないときに綴じ足が回転しないようにすることができる。
【0018】
また、本発明に係るファイルは、例えば、綴じ具と、前記被ファイル部材が差し込まれている状態において前記被ファイル部材の表裏面をそれぞれ覆う1対の平板と、前記1対の平板の対向する端部を連結する背板と、を備えたことを特徴とする。これにより、小さい力、かつ簡単な動作で綴じ足を回転させることができる。
【0019】
ここで、前記綴じ具は、前記背板に固定されていてもよい。これにより、綴じ具がファイルの平板に固定されている態様に比べて、ファイルの使い勝手を良くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小さい力、かつ簡単な動作で綴じ足を回転させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明にかかる綴じ具について、図面を参照しながら説明する。本発明にかかる綴じ具は、孔と、孔と端辺とを連結し、孔の直径より幅が狭いスリットが形成された被ファイル部材を綴じる綴じ具である。
【0023】
<第1の実施の形態>
以下、本発明にかかる綴じ具の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る綴じ具1を備えたファイルの一例を示す正面斜視図である。ファイル10は、主として、表表紙101と、背表紙102と、裏表紙103と、綴じ具1と、を備える。
【0024】
表表紙101、背表紙102及び裏表紙103は、いずれも略平板である。表表紙101及び裏表紙103は対をなして対向しており、被ファイル部材Pが差し込まれている状態において被ファイル部材Pの表裏面をそれぞれ覆う。背表紙102は、表表紙101及び裏表紙103の端部を連結している。
【0025】
綴じ具1は、主として、筐体2と、機構部3(
図5参照)と、操作部材4と、上カバー11と、綴じ足26と、綴じ足27と、整列突起24と、整列突起25と、を備える。綴じ具1においては、操作部材4を略180度回転させると、綴じ足26、27が略90度回転する。以下、綴じ具1について詳細に説明する。
【0026】
筐体2は、綴じ具1の外形を構成する部材であり、主として上板21、背板22、及び下板23を有する。上カバー11及び上板21は、本発明における基部に相当する。上板21、背板22、及び下板23は、綴じ具1の正面視において(−y方向からみたときに)左右方向(x方向)の長さが互いに等しい平板である。背板22は上板21と下板23とを連結し、背板22と上板21及び背板22と下板23とはそれぞれ略直角に接合される。上板21及び下板23は、略平行であり、互いに対向している。すなわち、筐体2は、側面視においてコの字型、あるいはU字型になっている。
【0027】
綴じ具1の背面、すなわち背板22の外表面は、ファイル10の背表紙102の内側の面の中央部に固定されている。
【0028】
図2は、上板21の概略を示す斜視図である。
図2では、上板21を平面視している(+z側から見ている)。上板21の主面219には、綴じ足26、27の上端がそれぞれ挿通される綴じ足孔211、212が形成されている。綴じ足孔211、212は、綴じ足26、27の幅に対応する円を四分円に分割し、点対称の位置にある2個の四分円のみを連結したような形状である。この形状により、綴じ足26、27は、略90度の範囲で回転可能に保持されている。つまり、上板21には、綴じ足26、27が回動可能に設けられる。
【0029】
綴じ足孔211と212の間には、駆動ギア軸受部213が形成されている。駆動ギア軸受部213には、操作部材4の回転を綴じ足26、27に伝達するための後述する駆動ギア31(後に詳述)が回動自在に設けられている。上板21の、背板22と連結される側の端部近傍には、整列突起24、25が挿通される略二等辺三角形状の整列突起孔214、215がそれぞれ形成されている。綴じ足孔211、212と整列突起24、25は、左右方向(x方向)の位置が略同じである。
【0030】
図1の説明に戻る。整列突起24、25は、背板22に沿って設けられている略三角柱状の部材である。整列突起24、25は背板22の高さ方向に渡って設けられている。整列突起24,25の上端部は、上板21の整列突起孔214、215にそれぞれ挿通され、固定されている。
【0031】
整列突起24、25の側面形状は、被ファイル部材PのV字溝H3と対応する形状である。整列突起24、25は、綴じ足26、27の後方(+y側)に配置されている。被ファイル部材PのV字溝H3が整列突起24、25の側面に突き当てられることで、綴じ具1の前後(y方向)方向における被ファイル部材Pの位置を整列させることができる。
【0032】
整列突起24の上端部には、突き当て突起241、242及び嵌合突起243が形成されている。整列突起25の上端部には、整列突起24と同様に、突き当て突起251、252及び嵌合突起253が形成されている。突き当て突起241、242、251、252及び嵌合突起243,253は、上板21及び上カバー11を貫通し、上カバー11の上面から突出している。
【0033】
突き当て突起241、242、251、252は、平面視において(+z方向からみたときに)略矩形形状の突起である。突き当て突起241、242は、長辺が上カバー11の背面側端部に沿う向きで(x方向に沿って)、互いに間隔を空けて突出している。突き当て突起251、252は、駆動ギア31を挟んで突き当て突起241、242の反対側に設けられ、長辺が上カバー11の背面側端部に沿う向きで(x方向に沿って)、互いに間隔を空けて突出している。
【0034】
嵌合突起243、253は、略円柱状の突起である。嵌合突起243は、左右方向(x方向)において突き当て突起241と242の間に設けられ、嵌合突起243は、左右方向(x方向)において突き当て突起251と252の間に設けられる。また、嵌合突起243、253は、各突き当て突起241、242、251、252よりも綴じ具1の正面寄り(−y側)に設けられている。
【0035】
図3は、綴じ足26、27の概略を示す斜視図である。綴じ足26と綴じ足27は略同一形状である。綴じ足26、27は、扁平な棒状体である。綴じ足26、27は、それぞれ、長手方向に沿って第1面261、271及び第2面262、272を有している。第1面261、271と第2面262、272とは隣接している。また、綴じ足26の第1面261及び第2面262は互いに略直交しており、綴じ足27の第1面271及び第2面272は互いに略直交している。第1面261、271の幅は第2面262、272の幅より広い。第1面261、271の幅は、綴じ穴H1の直径と略同等以下であり、スリットH2(
図1参照)の幅より広い。第2面262、272の幅は、スリットH2の幅より狭い。綴じ足26、27は、それぞれ、幅が第1面261、271より狭い先端部263、273を有し、第1面261、271と先端部263、273とは連続している。
【0036】
図1の説明に戻る。綴じ足26、27は、長手方向がz方向沿って設けられ、上板21及び下板23に両端が連結される。上板21(主面219)と第1面261、第2面262とは略直交し、上板21(主面219)と第1面271、第2面272とは略直交する。
【0037】
綴じ足26、27は、それぞれ軸ax1、ax2を中心に回転されることにより、第1面261、271が綴じ具1における正面側(−y側)、すなわち被ファイル部材Pを抜き差しする側に向く第1態様と、第2面262、272が綴じ具1の正面側に向く第2態様とが、切替可能に構成されている。
【0038】
綴じ足26及び綴じ足27は互いに同期して回動する。綴じ足26の第1面261が正面側に向くときには、綴じ足27の第1面271が正面側を向き、綴じ足26の第2面262が正面側に向くときには、綴じ足27の第2面272が正面側を向く(後に詳述)。
【0039】
図4は、上カバー11の概略を示す斜視図である。上カバー11は、上板21の上面を覆う略箱状の部材であり、平板部111を有する。平板部111には、長孔112、113、115、116及び丸孔114、117が形成される。また、平板部111の裏面(−z側の面)には、綴じ足26、27を軸支する軸受118、119が形成される。
【0040】
長孔112、113には、整列突起24の上端部に形成される突き当て突起241、242(
図1参照)が挿通される。長孔115、116には、整列突起25の上端部に形成される突き当て突起251、252(
図1参照)が挿通される。丸孔114には、整列突起24の上端部に形成される嵌合突起243(
図1参照)が挿通される。丸孔117には、整列突起25の上端部に形成される嵌合突起253(
図1参照)が挿通される。
【0041】
図1の説明に戻る。上カバー11と上板21との間には空間があり、操作部材4の回転を綴じ足26及び27に伝達させるための機構部3が収容されている。
【0042】
図5は、機構部3の概略を示す斜視図である。
図5では、綴じ具1の上カバー11を省略している。機構部3は、主として、駆動ギア31と、ラック32と、第1綴じ足ギア33と、第2綴じ足ギア34と、を備える。機構部3は、操作部材4の回転運動を綴じ足26、27に伝達するための機構である。駆動ギア31、ラック32、第1綴じ足ギア33及び第2綴じ足ギア34は、同一平面上に配置されている。したがって、機構部3が薄くなり、綴じ具1がコンパクトになる。
【0043】
駆動ギア31は操作部材4(
図5では図示省略)と連結され、駆動ギア31と操作部材4とは同期して回動する。第1綴じ足ギア33及び第2綴じ足ギア34は、綴じ足26、27とそれぞれ連結され、第1綴じ足ギア33と綴じ足26とは同期して回動し、第2綴じ足ギア34と綴じ足27とは同期して回動する。第1綴じ足ギア33及び第2綴じ足ギア34は、平面視において(z方向から見て)異なる位置に設けられる。また、第1綴じ足ギア33と綴じ足26とは平面視における位置が重なり、第2綴じ足ギア34と綴じ足27とは平面視における位置が重なる。
【0044】
駆動ギア31は、操作部材4に連結され、操作部材4と連動して回転する平歯車である。駆動ギア31とラック32とは、ラックアンドピニオン機構を構成している。
【0045】
図6は、ラック32の概略を示す斜視図である。ラック32は、駆動ギア31の回転を直線運動に変換する機構部である。ラック32は、略板状の部材であり、上カバーの平板部111及び上板21の主面219と略平行に設けられている。ラック32は、互いにモジュール数の異なる第1ラックギア321及び第2ラックギア322を有する。第2ラックギア322は、左第2ラックギア323及び右第2ラックギア324により構成され、それぞれ第1ラックギア321の両側に配置されている。第1ラックギア321は駆動ギア31と噛み合う。左第2ラックギア323は第1綴じ足ギア33と噛み合う。右第2ラックギア324は第2綴じ足ギア34と噛み合う。したがって、ラック32のx方向の移動に伴って第1綴じ足ギア33及び第2綴じ足ギア34が回動する。すなわち、第1綴じ足ギア33及び第2綴じ足ギア34は、操作部材4の回転と同期して回転されるように構成されている。
【0046】
図7は、第1綴じ足ギア33及び第2綴じ足ギア34の概略を示す平面図である。第1綴じ足ギア33及び第2綴じ足ギア34は、第2ラックギア322と噛み合う歯332、342を外周の一部に持つ平歯車である。本実施形態では、第1綴じ足ギア33及び第2綴じ足ギア34の歯332、342は外周のうち90度をやや超える範囲に設けられている。第1綴じ足ギア33及び第2綴じ足ギア34は、中心に長孔331、341をそれぞれ有する。長孔331、341の幅は綴じ足26、27の厚さ(第2面262、272の幅)と略同じである。
【0047】
図5の説明に戻る。長孔331、341にはそれぞれ綴じ足26、27の先端部263、273が挿入される。これにより、第1綴じ足ギア33と綴じ足26が連結され、第1綴じ足ギア33の回動に同期して綴じ足26が回動する。また、第2綴じ足ギア34と綴じ足27が連結され、第2綴じ足ギア34の回動に同期して綴じ足27が回動する。また、綴じ足26、27と長孔331、341とが面で当接するため、綴じ足26、27に大きな回転トルクが発生したとしても、長孔331、341に対して綴じ足26、27が回転しないようにすることができる。
【0048】
駆動ギア31及び第1ラックギア321のモジュールは、第1綴じ足ギア33、第2綴じ足ギア34の歯332、342及び第2ラックギア322のモジュールの1/2である。つまり、ラック32が一定距離移動したときの第1綴じ足ギア33及び第2綴じ足ギア34の回動量は、駆動ギア31の回動量の半分である。これにより、駆動ギア31、すなわち操作部材4を略180度回転させることで、第1綴じ足ギア33及び第2綴じ足ギア34、すなわち綴じ足26、27を略90度回転させることができる。また、第1綴じ足ギア33及び第2綴じ足ギア34のトルクが駆動ギア31のトルクの略2倍となり、より軽い力で綴じ足26、27を回転させることができる。
【0049】
図8は、操作部材4の概略を示す斜視図である。操作部材4は、略長円形状の平板であり、その外縁に長端部44、45を有する。操作部材4は、一端側の中央部に駆動ギア連結孔41が形成されている。駆動ギア連結孔41は、上カバー11を貫通する図示しない軸棒を介して、上カバー11と上板21の間に収容されている駆動ギア31と連結されている。操作部材4は、軸ax3を中心に回転可能である。
【0050】
操作部材4の上カバー11との対向する面46には、嵌合凹部42、43が形成されている。嵌合凹部42、43の外縁はそれぞれ略円形であり、整列突起24、25の嵌合突起243、253に対応する形状である。嵌合凹部42、43は、長端部44、45にそれぞれ近接して形成されていて、嵌合凹部42、43を成す外縁の一部が長端部44、45にそれぞれ架かるようになっている。言い換えれば、長端部44、45の一部は、嵌合凹部42、43によって切り欠かれている。
【0051】
図1の説明に戻る。操作部材4は、上カバー11の平板部111(
図4参照)に設けられ、平板部111に沿って回転可能である。操作部材4は、操作部材4が上カバー11の長さ方向に沿って第1綴じ足26側にある第1態様(
図1破線参照)と、操作部材4が第1態様から略180度回転し、操作部材4が上カバー11の長さ方向に沿って第2綴じ足27側にある第2態様(
図1実線参照)と、の間で回動する。
【0052】
言い換えれば、第1態様及び第2態様のいずれにおいても、操作部材4は上カバー11に沿って(x方向に沿って)配置される。したがって、被ファイル部材Pが掛け止められている状態において、綴じ具1の外形がコンパクトになる。また、操作部材4が被ファイル部材Pの上方に突出した状態で被ファイル部材Pを抜き差しすることがないため、被ファイル部材Pの抜き差しをスムーズに行うことができる。
【0053】
操作部材4が軸ax3を中心に回転して綴じ具1の正面側(−y側)から嵌合突起243に近づくと、嵌合突起243は長端部45の切欠部分から嵌合凹部43に進入し、嵌合凹部43に嵌合される。また、長端部45は、突き当て突起241、242の側面に当接する。操作部材4が回転して綴じ具1の正面側から嵌合突起253に近づくと、嵌合突起253は長端部44の切欠部分から嵌合凹部42に進入し、嵌合凹部42に嵌合される。長端部44は、突き当て突起251、252の側面に当接する。
【0054】
操作部材4は、突き当て突起241、242、251、252に当接するため、綴じ具1の正面側の範囲(
図1の二点鎖線参照)でのみ回動する。したがって、操作部材4の回動は略180度の範囲に制限される。また、嵌合突起243、253と嵌合凹部42、43とがそれぞれ嵌合することにより、操作部材4及び綴じ足26、27の意図しない回転を防止することができる。
【0055】
また、突き当て突起241、242、251、252及び嵌合突起243、253が整列突起24、25の上端部に形成されているため、操作部材4の回転を抑制する部材を別途設ける必要がない。したがって、部品点数を削減でき、構成を簡素にすることができる。
【0056】
次に、綴じ具1の動作について説明する。
図9(a)は、第1面261、271が正面側を向いている第1態様を示す斜視図であり、(b)は、第2面262、272が正面側を向いている第2態様を示す斜視図である。
【0057】
図9(a)に示す第1態様では、綴じ足26、27の第1面261、271がそれぞれx方向と略平行であり、綴じ具1の正面側を向いている。第1面261、271の幅は被ファイル部材PのスリットH2の幅より大きいため、綴じ穴H1に挿通されている綴じ足26、27はスリットH2を通らない。したがって、被ファイル部材Pは綴じ具1に掛け止められ、被ファイル部材Pの抜き差しは不可能である。
【0058】
操作部材4(
図9では図示省略)が綴じ具1の正面側(−y側)を通って、平面視における(+z方向から見て)半時計回りに回転すると、操作部材4の回転に同期して駆動ギア31が平面視半時計回りに回転する。駆動ギア31の回転に伴って、ラック32は右方(+x方向)に移動する。ラック32の移動に伴って、第2ラックギア322に嵌合されている綴じ足ギア33、34が平面視半時計回りに回転する。操作部材4が略180度回転すると綴じ足ギア33、34は略90度回転し、
図9(b)に示す第2態様のように、第2面262、272がそれぞれx方向と略平行となり、それぞれ綴じ具1の正面側を向く。第2面262、272の幅はスリットH2の幅の同等以下であるため、綴じられている被ファイル部材Pを綴じ具1から離れる方向へ引っ張ることにより、綴じ足26、27を被ファイル部材PのスリットH2を通して、被ファイル部材Pを綴じ具1から抜き出すことができる。また、別の被ファイル部材Pを綴じ具1に挿入し、綴じ穴H1を綴じ足26、27に挿通したりすることができる。つまり、この状態では、被ファイル部材Pを、綴じ足26、27の軸ax1、ax2と略直交する方向に抜き差し可能である。
【0059】
本実施の形態によれば、操作部材4を回転させることで、綴じ足26、27が回転し、被ファイル部材Pが綴じ具1に掛け止められている態様と、被ファイル部材Pを綴じ具1に掛け止めたり外したりすることが可能な態様とを容易に切り替えることができる。また、本実施の形態によれば、第1態様と第2態様とを切りかえるのに操作部材4を回転させるだけでよいため、小さい力で操作可能であり、また、操作が容易である。
【0060】
また、本実施の形態によれば、綴じ具を軽量化することができる。例えば
図11に示す従来の綴じ具100では、平板状の操作手段104を図中手前に向かって直線的に引っ張ることにより、綴じ足変角部121を湾曲した変角案内孔141に沿って移動させるものであったため、綴じ足変角部121及び変角案内孔141に大きな力がかかっていた。そのため、操作手段104、綴じ足変角部121及び変角案内孔141を金属などの硬い部材で構成する必要があった。それに対し、本実施の形態によれば、各部材にかかる力が小さいため、樹脂等の軽量な素材で構成することができる。したがって、綴じ具1の総重量を軽くすることができる。また、総重量の大きい綴じ具100は、ファイルの裏表紙に固定する必要があった。これに対し、本発明に係る綴じ具1によれば、総重量が軽いため、ファイル10の背表紙102に固定することができる。これにより、ファイル10を開く時に背表紙102と一緒に綴じ具1を回転し、ファイルの使い勝手を良くすることができる。
【0061】
なお、ファイル10の背表紙102の厚さは
図1に示す形態に限られないし、綴じ具1の高さも
図1に示す形態に限られない。例えば背表紙102の厚さが
図1に示す形態よりも厚い場合は、背表紙102の厚さと綴じ具1の高さとが略同一となるように綴じ具1の高さも高くする。背板22の厚さ(
図1におけるz方向の幅)を変えることで、さまざまな厚さの綴じ具1を製作可能である。なお、背板22の厚さを変えるのに伴い、整列突起24、25及び綴じ足26、27の長さを変える必要がある。
【0062】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施形態にかかる綴じ具1Aについて、先に説明した実施の形態と異なる部分を中心に説明する。
図10は、綴じ具1Aの概略を示す斜視図である。綴じ具1Aは、両端が駆動ギア31の外周部及び上板21にそれぞれ固定される引っ張りばね5を備える点において、綴じ具1と異なる。なお、以降の説明において、綴じ具1と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0063】
機構部3Aは、操作部材4の回転運動を綴じ足26、27に伝達するための機構であり、主として、駆動ギア31と、ラック32と、第1綴じ足ギア33Aと、第2綴じ足ギア34Aと、引っ張りばね5と、を備える。引っ張りばね5はコイルばねであり、引っ張りばね5の一端は、綴じ足26に連結されている第1綴じ足ギア33Aに固定されている。引っ張りばね5の他端は、上板21に固定されている。
【0064】
第1綴じ足ギア33A及び第2綴じ足ギア34Aには、それぞれ外周の一部に第2ラックギア322と噛み合う歯332、342が形成されている。引っ張りばね5は、第1綴じ足ギア33Aの中心を挟んで第1綴じ足ギア33Aの歯との略反対側に固定されている。したがって、第1綴じ足ギア33Aは、引っ張りばね5により平面視時計回りに回転する力が付勢されている。
【0065】
本実施の形態によれば、意図しないときに綴じ足26、27が回転しないようにすることができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、引っ張りばね5の両端が第1綴じ足ギア33Aと上板21とに固定されていたが、引っ張りばね5の両端が第2綴じ足ギア34Aと上板21とに固定されていてもよい。また、本実施の形態では、第1綴じ足ギア33A、第2綴じ足ギア34Aは、引っ張りばね5により平面視時計回りに回転する力が付勢されているが、引っ張りばね5により平面視反時計回りに回転する力が付勢されていてもよい。
【0067】
なお、第1の実施の形態及び第2の実施の形態においては、1個の駆動ギア31が2個の綴じ足26、27を回動させたが、1個の駆動ギア31が1個又は3個以上の綴じ足を回動させてもよい。
【0068】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0069】
また、本発明において、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、略平行、略直交とは、厳密に平行、直交の場合には限られない。また、例えば、単に平行、直交等と表現する場合においても、厳密に平行、直交等の場合のみでなく、略平行、略直交等の場合を含むものとする。また、本発明において「近傍」とは、例えばAの近傍であるときに、Aの近くであって、Aを含んでも含まなくてもよいことを示す概念である。