【課題】ジグザグ状のショルダ主溝と接地端との間に形成されたショルダ陸部を、スリットによってタイヤ周方向に複数のブロックに分断した空気入りタイヤにおいて、形状の異なるブロックに発生する偏摩耗を抑える。
【解決手段】接地端E1とショルダ主溝12Aとの間に形成されたショルダ陸部14と、ショルダ陸部14をタイヤ周方向CDに複数のブロック23に分断する複数のスリット22とを備え、ショルダ主溝12Aは、内向きの屈曲部12A1と外向きの屈曲部12A2とを交互に繰り返して配置したジグザグ溝からなり、スリット22が内向きの屈曲部12A1と外向きの屈曲部12A2に連結され、ショルダ陸部14は、ショルダ主溝12Aに面した溝壁に面取り部34が設けられ、面取り部34は、外向きの屈曲部12A2側から内向きの屈曲部12A1側に向かうほど面取り部34の表面幅が大きく設定されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
一実施形態に係る空気入りタイヤは、図示は省略するが、左右一対のビード部及びサイドウォール部と、左右のサイドウォール部の径方向外方端部同士を連結するように両サイドウォール部間に設けられたトレッド部とを備えて構成されており、トレッドパターン以外については一般的なタイヤ構造を採用することができる。
【0013】
なお、
図1において、符号Fは、空気入りタイヤを正規リムに装着し、正規内圧を充填した状態で平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えた状態での接地形状を示す。符号E1、E2は同状態における接地端を示し、符号E1はタイヤ幅方向一方側WD1の接地端(以下、第1接地端ということもある)を示し、符号E2はタイヤ幅方向他方側WD2の接地端(以下、第2接地端ということもある)を示す。
【0014】
また、本明細書における各寸法は、空気入りタイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態でのものである。また、タイヤ赤道上の接地長Lcとは、空気入りタイヤを正規リムに装着し、正規内圧を充填した状態で平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えた状態におけるタイヤ赤道面の接地長さであり、接地幅Cwとは、同状態における路面に接地する両側の接地端E1,E2間の幅である。
【0015】
正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"MeasuringRim"である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"である。
【0016】
また、正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY"である。
【0017】
図1に示すように、トレッド部10のトレッドゴム表面には、タイヤ周方向CDに延びる複数の主溝12が設けられており、この例ではタイヤ幅方向WDに間隔をおいて3本形成されている。
【0018】
具体的には、タイヤ赤道面CLよりタイヤ幅方向一方側(
図1における左側)WD1に設けられた第1ショルダ主溝12Aと、タイヤ赤道面CLよりタイヤ幅方向他方側(
図1における右側)WD2に設けられた第2ショルダ主溝12B及びセンタ主溝12Cが、トレッド部10のトレッドゴム表面に設けられている。
【0019】
第1ショルダ主溝12Aは、内向きの屈曲部12A1と外向きの屈曲部12A2とをタイヤ周方向CDに交互に繰り返して配置したジグザグ状の溝である。つまり、第1ショルダ主溝12Aは、タイヤ幅方向WDに振幅を持って屈曲しながらタイヤ周方向CDに一続きにつながっている。
【0020】
第2ショルダ主溝12Bは、タイヤ周方向CDに一続きにつながったストレート状の溝であって、最もタイヤ幅方向他方側WD2に配置されている。
【0021】
センタ主溝12Cは、タイヤ周方向CDに一続きにつながったストレート状の溝であって、第1ショルダ主溝12Aと第2ショルダ主溝12Bとの間に設けられている。
【0022】
トレッド部10には主溝12によって複数の陸部がタイヤ幅方向WDに区画形成されている。詳細には、第1接地端E1と第1ショルダ主溝12Aの間に形成された第1ショルダ陸部14と、第1ショルダ主溝12Aとセンタ主溝12Cの間に挟まれ第1ショルダ主溝12Aのタイヤ幅方向他方側に形成された第1中央陸部16と、センタ主溝12Cと第2ショルダ主溝12Bの間に形成された第2中央陸部18と、第2接地端E2と第2ショルダ主溝12Bの間に形成された第2ショルダ陸部20が、トレッド部10に設けられている。
【0023】
第1ショルダ陸部14には、複数のスリット22と複数の第2傾斜溝26がタイヤ周方向CDに間隔をおいて設けられている。
【0024】
図1及び
図3に示すように、第1ショルダ陸部14に設けられたスリット22は、第1ショルダ陸部14をタイヤ周方向CDに分断し、複数のブロック23を形成している。つまり、第1ショルダ陸部14は、複数のブロック23をタイヤ周方向CDに配置してなるブロック列をなしている。
【0025】
スリット22は、タイヤ幅方向他方側WD2が第1ショルダ主溝12Aの内向きの屈曲部12A1に連結された第1スリット22Aと、外向きの屈曲部12A2に連結された第2スリット22Bとを備える。第1スリット22A及び第2スリット22Bは、第1ショルダ主溝12Aから第1接地端E1を越えてタイヤ幅方向一方側WD1へ延びている。内向きの屈曲部12A1に連結された第1スリット22Aが外向きの屈曲部12A2に連結された第2スリット22Bよりタイヤ幅方向WDの沿った長さが長い。
【0026】
なお、第1スリット22A及び第2スリット22Bは、タイヤ幅方向WDに平行に設けられてもよく、また、タイヤ幅方向一方側WD1に行くほどタイヤ周方向一方側CD1(
図1における下方)に向かうように緩やかに傾斜してもよい。第1スリット22A及び第2スリット22Bがタイヤ幅方向WDに対して傾斜する場合、タイヤ幅方向WDに対する第1スリット22A及び第2スリット22Bの角度θ1A、θ1Bが10度以下とする。
【0027】
言い換えれば、第1スリット22Aは第1ショルダ主溝12Aの内向きの屈曲部12A1のなす角度を略二等分する方向(例えば、第1ショルダ主溝12Aの内向きの屈曲部12A1のなす角度α1を二等分する方向G1から±10度以内の方向)に沿って設けられ、第2スリット22Bは第1ショルダ主溝12Aの外向きの屈曲部12A2のなす角度を略二等分する方向(例えば、第1ショルダ主溝12Aの外向きの屈曲部12A2のなす角度α2を二等分する方向G2から±10度以内の方向)に沿って設けられている。
【0028】
また、第1スリット22A及び第2スリット22Bはタイヤ幅方向WDへ直線状に延びる凹溝であってもよく、また、
図1に示すような緩やかに湾曲する曲線状の凹溝であってもよい。第1スリット22A及び第2スリット22Bが曲線状の凹溝である場合、タイヤ幅方向WDに対する傾斜角度がタイヤ幅方向WDの位置によって変化するが、その場合、タイヤ幅方向WDに対する角度の最大値(
図1では、第1ショルダ主溝12Aとの連結部分における角度)を10度以下とする。
【0029】
第1ショルダ陸部14を構成する複数のブロック23は、第1ブロック23Aと第2ブロック23Bを備える。第1ブロック23Aは、タイヤ周方向一方側CD1が第1スリット22Aによって区画され、タイヤ周方向他方側CD2が第2スリット22Bに区画されている。第2ブロック23Bは、タイヤ周方向一方側CD1が第2スリット22Bによって区画され、タイヤ周方向他方側CD2が第1スリット22Aに区画されている。これらの第1ブロック23A及び第2ブロック23Bは、タイヤ周方向CDに交互に並んで第1ショルダ陸部14を構成する。
【0030】
第1ショルダ陸部14を構成する複数の第1ブロック23Aのぞれぞれには、一端が第1ショルダ主溝12Aに開口する第2傾斜溝26が設けられている。第2傾斜溝26は、第1傾斜溝24の延長上に設けられている。つまり、第2傾斜溝26は、外向きの屈曲部12A2に接続され、タイヤ周方向一方側CD1に行くほどタイヤ幅方向一方側WD1へ向かうように傾斜している。この第2傾斜溝26の溝深さDdは、第1ショルダ主溝12A及びスリット22の溝深さDa、Dcより小さく(
図2参照)、タイヤ幅方向一方側WD1に行くほど(つまり、第1ショルダ主溝12Aから離れるほど)溝幅が徐々に細くなっている。
【0031】
ここで寸法の一例を挙げると、第1ショルダ主溝12Aの溝深さDaを6〜10mm、第1傾斜溝24の溝深さDb1〜Db3を6〜10mm、スリット22の溝深さDcを4〜8mm、第2傾斜溝26の溝深さDdを1〜2mmとすることができる。
【0032】
また、第1ショルダ陸部14を構成する第1ブロック23A及び第2ブロック23Bには、
図3に示すように、第1ショルダ主溝12Aに面した溝壁に第1面取り部34A及び第2面取り部34Bが設けられている。
【0033】
第1ブロック23Aに設けられた第1面取り部34Aは、第1ショルダ主溝12Aの外向きの屈曲部12A2側からタイヤ周方向一方側CD1に行くほど表面幅が漸次大きくなっており、第2ブロック23Bに設けられた第2面取り部34Bは、第1ショルダ主溝12Aの外向きの屈曲部12A2側からタイヤ周方向他方側CD2に行くほど表面幅が漸次大きくなっている。
【0034】
つまり、第1面取り部34A及び第2面取り部34Bは、第1ショルダ主溝12Aの外向きの屈曲部12A2側から内向きの屈曲部12A1に向かうほど表面幅が漸次大きくなっている。その際、第1面取り部34A及び第2面取り部34Bは、第1ショルダ主溝12Aの内向きの屈曲部12A1側の表面幅HA1、HB1が、外向きの屈曲部12A2側の表面幅HA2、HB2の2倍以下であることが好ましい。
【0035】
なお、表面幅とは、第1ショルダ主溝12Aの幅方向における面取り部34A,34Bの斜面に沿った長さである。
【0036】
このように第1ショルダ主溝12Aの内向きの屈曲部12A1側の表面幅HA1、HB1が、外向きの屈曲部12A2の表面幅HA2、HB2の2倍以下であると、第1面取り部34A及び第2面取り部34Bがあっても第1ショルダ主溝12Aのジグザグ形状を保つことができる。そのため、走行時における第1ショルダ主溝12A内を通過する空気の流速を遅くすることができ、気柱管共鳴による騒音を抑えることができる。
【0037】
第1中央陸部16には、複数の第1傾斜溝24と複数のサイプ28がタイヤ周方向CDに間隔をあけて設けられている。第1傾斜溝24は、タイヤ幅方向一方側WD1が第1ショルダ主溝12Aの内向きの屈曲部12A1に開口し、タイヤ幅方向他方側WD2が第1中央陸部内16で終端するタイヤ周方向に対して傾斜する方向に延びる溝である。
【0038】
第1中央陸部16は、第1ショルダ主溝12Aに面する壁面に溝底側から接地面に近づくにしたがって第1ショルダ主溝12Aの溝幅が広がるように傾斜するテーパ面36が設けられている。
【0039】
第1傾斜溝24は、タイヤ周方向CDに沿った長さL1が、タイヤ赤道上の接地長Lcの90%以上180%以下になり、タイヤ幅方向WDに沿った長さL2が接地幅Cwの30%以上となるように、タイヤ幅方向他方側WD2へ向けて第1ショルダ主溝12Aから離れながらタイヤ周方向CDに延びている。
【0040】
このような第1傾斜溝24は、上記のようにタイヤ周方向CDに間隔をあけて複数設けられている。その際、タイヤ周方向CDに隣り合う第1傾斜溝24をタイヤ周方向CDへ投影した投影図が少なくとも一部において互いに重なり合うようにタイヤ周方向CDに並べて設けられている。つまり、第1傾斜溝24の一部がタイヤ周方向CDに隣接する第1傾斜溝24とタイヤ幅方向WDに重なり合うように、第1傾斜溝24がタイヤ周方向CDに間隔をあけて設けられている。
【0041】
なお、第1傾斜溝24は、第1ショルダ主溝12Aからタイヤ幅方向他方側WD2に行くほどタイヤ周方向CDに近づくように(つまり、タイヤ周方向CDに対する角度が小さくなるように)タイヤ周方向CDに対する傾斜角度が変化することが好ましい。また、第1傾斜溝24は、第1ショルダ主溝12Aからタイヤ幅方向他方側WD2に行くほどタイヤ幅方向WDに沿った溝幅が狭くなる先細形状であることが好ましい。
【0042】
また、第1傾斜溝24は、タイヤ幅方向他方側WD2の溝深さDb1に比べて第1ショルダ主溝12A側の溝深さDb3が浅くても良い(
図2参照)。
【0043】
複数のサイプ28は、微小な溝幅(通常は1mm以下)を持つ切れ込みをいい、より正確には、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤが接地し、そこへ正規荷重が負荷された条件下で、接地面への開口部が閉じる溝のことである。
【0044】
サイプ28は、第1スリット22Aのタイヤ幅方向他方側WD2に配置された第1サイプ28Aと、第2スリット22Bのタイヤ幅方向他方側WD2に配置された第2サイプ28Bとを備え、第1サイプ28Aと第2サイプ28Bとがタイヤ周方向CDに交互に配置されている。
【0045】
第1サイプ28A及び第2サイプ28Bは、第1ショルダ主溝12A側からタイヤ幅方向他方側WD2に行くほどタイヤ周方向CDに対する角度が小さくなるように緩やかに湾曲している。
【0046】
第1サイプ28Aは、タイヤ幅方向一方側WD1が第1傾斜溝24に開口し、第1スリット22Aのタイヤ周方向他方側CD2の溝壁をタイヤ幅方向他方側WD2へ滑らかに延長した延長線上に沿って第1サイプ28Aのタイヤ周方向一方側CD1の溝壁が延びている。第1サイプ28Aは、第1傾斜溝24と交差することなくタイヤ幅方向他方側WD2が第1中央陸部16内で終端している。
【0047】
第2サイプ28Bは、タイヤ幅方向一方側WD1が第1中央陸部16内で終端し、第2スリット22Bのタイヤ周方向他方側CD2の溝壁をタイヤ幅方向他方側WD2へ滑らかに延長した延長線上に沿って第2サイプ28Bのタイヤ周方向一方側CD1の溝壁が延びている。第2サイプ28Bは、第1傾斜溝24と交差するように設けられ、タイヤ幅方向他方側WD2がセンタ主溝12Cに開口している。
【0048】
第2中央陸部18には、第1中央陸部16に設けられた第2サイプ28Bを延長した延長線上に沿って延びる第3サイプ30と、横溝32が設けられている。
【0049】
第2ショルダ陸部20には、複数のショルダ横溝38がタイヤ周方向CDに間隔をあけて設けられている。
【0050】
ショルダ横溝38は、タイヤ幅方向他方側WD2に行くほどタイヤ幅方向WDに対する角度が小さくなるように緩やかに湾曲しながらタイヤ幅方向WDへ延びる凹溝からなる。
【0051】
ショルダ横溝38は、タイヤ幅方向一方側WD1が第2ショルダ主溝12Bに開口することなく第2ショルダ陸部20内で終端し、タイヤ幅方向他方側WD2が第2接地端E2を越えて延びている。このようなショルダ横溝38によって、第2ショルダ陸部20は、タイヤ幅方向一方側WD1においてタイヤ周方向CDに繋がったリブ状の陸部をなしている。
【0052】
なお、ショルダ横溝38は、タイヤ幅方向WDに平行に設けられてもよく、また、タイヤ幅方向WDに対して緩やかに傾斜するように設けられてもよい。また、ショルダ横溝38は直線状に延びる凹溝であってもよく、緩やかに湾曲する曲線状の凹溝であってもよい。
【0053】
図4〜
図6に示すように、ショルダ横溝38は、所定の間隔をタイヤ周方向CDにあけて設けられた一対の溝壁40と、溝壁40のタイヤ径方向内方において一対の溝壁40を連結する溝底41と、一対の溝壁40のタイヤ径方向外方(接地面)側に設けられた一対のテーパ面42とで区画形成されている。
【0054】
一対の溝壁40は、溝底41から略タイヤ径方向に沿って立ち上がり、タイヤ幅方向WD全体にわたって一定の間隔を保って互いに平行に設けられている。
【0055】
一対のテーパ面42は、溝底41側から接地面に近づくにしたがって互いに離隔し、ショルダ横溝38の溝幅が漸次広がるように傾斜している。また、一対のテーパ面42は、タイヤ幅方向一方側WD1から他方側WD2へ向かって第2接地端E2に近づくほどショルダ横溝38の溝幅の方向に沿った長さKが漸次長くなっている。つまり、一対のテーパ面42は、タイヤ幅方向一方側WD1から他方側WD2に行くほど幅広になっている。
【0056】
図5及び
図6に示すように、本実施形態では、溝壁40に対するテーパ面42の角度θ2を一定に保ったままで、タイヤ幅方向一方側WD1から他方側WD2に向かって第2接地端E2に近づくほど、テーパ面42と溝壁40との境界部分43が溝底41に近づき、かつ、テーパ面42と接地面との境界部分44がショルダ横溝38の外側へ広がっている。
【0057】
以上よりなる本実施形態に係る空気入りタイヤでは、第1ブロック23A及び第2ブロック23Bに設けられた第1面取り部34A及び第2面取り部34Bが、外向きの屈曲部12A2側から内向きの屈曲部12A1側に向かうほど表面幅が大きく設定されている。そのため、タイヤ幅方向WDに沿ったエッジ長さが長く剛性が高い内向きの屈曲部12A1側における第1ブロック23A及び第2ブロック23Bの剛性を低減させ、第1ブロック23A及び第2ブロック23Bのタイヤ周方向CDにおけるブロック剛性の均一化を図ることができ、その結果、偏摩耗の発生を抑えることができる。
【0058】
また、本実施形態では、第1面取り部34A及び第2面取り部34Bにおける第1ショルダ主溝12Aの内向きの屈曲部12A1側の表面幅HA1、HB1が、外向きの屈曲部12A2の表面幅HA2、HB2の2倍以下に設定することによって、第1ショルダ主溝12A内を通過する空気の流速が速くなりにくく、そのため、気柱管共鳴による走行時の騒音の悪化を抑えつつ偏摩耗の発生を抑えることができる。
【0059】
また、本実施形態では、ショルダ陸部14をタイヤ周方向に分断するスリット22のタイヤ幅方向WDに対する角度が10度以下に設定されており、スリット22と第1ショルダ主溝12Aとで形成されるブロック23の角部の角度が略等しくなるため、スリット22を挟んでタイヤ周方向一方側CD1のブロック23のエッジとタイヤ周方向他方側CD2のブロック23のエッジとの剛性の均一化を図ることができ、偏摩耗の発生を抑えることができる。
【0060】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0062】
実施例1〜3及び比較例1の空気入りタイヤ(タイヤサイズ:225/45R17)を試作した。これらの各テストタイヤは、タイヤ内部構造と基本的なトレッドパターンを同一とし、第1ブロック23Aの面取り部34Aの外向きの屈曲部12A2側における表面幅HA2に対する内向きの屈曲部12A1側における表面幅HA1の比率ρA(=HA1/HA2)を変更して作製した。各テストタイヤの比率ρAは表1に示すとおりである。なお、第2ブロック23Bの面取り部34Bの外向きの屈曲部12A2側における表面幅HB2に対する内向きの屈曲部12B1側における表面幅HB1の比率ρB(=HB1/HB2)は、上記比率ρAと同一に設定した。
【0063】
実施例1〜3及び比較例1の各テストタイヤについて下記評価を行った。
【0064】
(1)耐偏摩耗性
各テストタイヤをリム(17×7.5J)装着し、内圧230kPaを充填して、試験車両(ワゴン車)に装着し、一般路を10,000km走行後のタイヤについて、第1ショルダ陸部14におけるスリット22を挟んで踏み込み側と蹴り出し側の摩耗量について、偏摩耗比=(最大摩耗量/最小摩耗量)を算出した。偏摩耗比が1に近いほどより均等に摩耗している事を示す。
【0065】
(2)パターンノイズ性能
JASO C606に準拠した室内音響ドラム試験機にて、各テストタイヤのパターンノイズレベルを計測し、比較例1を基準(100)とした指数評価を行った。指数が大きいほど、騒音が小さく、ノイズ性能が良好であることを示す。
【0066】
【表1】
【0067】
結果は、表1に示す通りであり、面取り部の表面幅が一定である比較例1に対し、外向きの屈曲部側から内向きの屈曲部側に向かうほど面取り部の表面幅が大きくなる実施例1〜3では、耐偏摩耗性を向上することができた。また、内向きの屈曲部側の面取り部の表面幅を外向きの屈曲部側の2倍以下に抑えた実施例2及び3であるとパターンノイズ性能の悪化を抑えつつ偏摩耗の発生を低減することができた。