【解決手段】スリーブ20と、スプール30と、バネ部材80と、ソレノイド70と、を備え、スリーブ20には、排出ポート24、出力ポート23および入力ポート22が軸方向に沿って配置され、スプール30には、第1の径L1を有し排出ポート24と出力ポート23との間を開閉する第1ランド部31と、第1の径L1よりも小さい第2の径L2を有し出力ポート23と入力ポート22との間を開閉する第2ランド部32と、が軸方向に沿って配置され、第2ランド部32は、出力ポート23側の端面と第2ランド部32の外周面との間に、軸方向に対して傾斜する斜面部を有する、電磁弁。
前記スリーブは、軸方向に沿って前記出力ポート側よりも前記バネ部材側に位置する第1排出ポートと、前記第1排出ポートの前記バネ部材側に位置する第2排出ポートとを有し、
前記第1ランド部は、前記出力ポートと前記第2排出ポートとの間に位置し、
前記第1ランド部は、軸方向の移動に伴って、前記第1排出ポートと前記出力ポートとの間を開閉し、前記第1排出ポートと前記第2排出ポートとの間の遮断状態を維持する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電磁弁。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態の電磁弁を示す断面図である。
図2は、スプールの側面図および断面図である。
図3は、本実施形態の電磁弁における励磁状態を示す断面図である。
【0010】
本実施形態において、中心軸Jは、
図1および
図3における左右方向に延びる。以下の説明においては、中心軸Jの軸方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0011】
本実施形態の電磁弁1は、スプールバルブ10と、スプールバルブ10を駆動するソレノイド70とを有する。電磁弁1は、ソレノイド70のコイルへの通電を遮断しているときに弁が開いた状態となるノーマルオープン型のソレノイドバルブである。
【0012】
スプールバルブ10は、スリーブ20と、スプール30と、固定部50と、バネ部材80と、を有する。スリーブ20は、図示左側の一方の端部においてソレノイド70に接続される。スリーブ20内にスプール30およびバネ部材80が収容される。固定部50は、スリーブ20のソレノイド70とは反対側の端部に固定される。
【0013】
スリーブ20は、中心軸Jを中心として軸方向に延びるスプール穴部21を有する。スプール穴部21は、スリーブ20の軸方向両側に開口する。スプール穴部21の軸方向と直交する断面形状は、円形状である。
【0014】
スリーブ20は、入力ポート22と、出力ポート23と、第1排出ポート24と、第2排出ポート26と、を有する。入力ポート22、出力ポート23、第1排出ポート24、および第2排出ポート26は、スリーブ20の径方向外側面からスプール穴部21の径方向内側面まで貫通する孔であり、スリーブ20の外部とスプール穴部21の内部とを繋ぐ。スリーブ20の周方向において各ポートが開口する位置は、適宜変更可能である。入力ポート22、出力ポート23、第1排出ポート24、および第2排出ポート26は、軸方向において、ソレノイド70側から固定部50側に向かってこの順に配置される。
【0015】
スプール30は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。スプール30は、中心軸Jに沿ってスプール穴部21内に軸方向に移動可能に配置される。スプール30のソレノイド70側の端部は、ソレノイド70のピン71と接する。スプール30の固定部50側の端部は、バネ部材80と接する。スプール30は、固定部50側から順に、第1ランド部31と、グルーブ部30aと、第2ランド部32と、を有する。
【0016】
第1ランド部31は、第1の径L1を有する。第2ランド部32は、第1の径L1よりも小さい第2の径L2を有する。グルーブ部30aは、第1の径L1および第2の径L2よりも小さい径を有する。第1ランド部31および第2ランド部32の外径は、それぞれが収容される位置におけるスプール穴部21の内径とほぼ同じである。
【0017】
スプール穴部21は、第1ランド部31、第2ランド部32および固定部50により軸方向に区画される調圧室21aとスプリング室21bとを有する。調圧室21aは、入力ポート22、出力ポート23および第1排出ポート24に繋がる。スプリング室21bは第2排出ポート26に繋がる。
【0018】
グルーブ部30aは、第1ランド部31と第2ランド部32との間に位置し、調圧室21a内に位置する。グルーブ部30aは、第1ランド部31側の部分において、出力ポート23と第1排出ポート24とを通じさせる。グルーブ部30aは、第2ランド部32側の部分において、入力ポート22と出力ポート23とを通じさせる。
【0019】
第2ランド部32は、
図1および
図2に示すように、グルーブ部30a側の端部に、2つのノッチ35を有する。2つのノッチ35は、第2ランド部32の周方向に180°間隔で配置される。ノッチ35は、第2ランド部32の出力ポート23側の端面32aから第2ランド部32の外周面に達する。ノッチ35は、第2ランド部32の出力ポート23側の角部を部分的に斜めに切り欠いた形状を有する。すなわちノッチ35は、軸方向に対して傾斜する斜面部を含む。
【0020】
2つのノッチ35が周方向に180°隔てて配置されることで、ノッチ35を流体が通る際に、流体から第2ランド部32に作用する力が径方向で釣り合う。これにより、スプール30の傾きが抑制され、スプールバルブ10は円滑に動作可能である。なお、ノッチ35の数は3つ以上であってもよい。複数のノッチ35が軸周りの回転対称位置に配置されることで、スプール30の傾きが抑制される。
【0021】
固定部50は、スリーブ20のソレノイド70と反対側の端部に固定され、スプール穴部21の開口部を閉塞する。
バネ部材80は、本実施形態ではコイルスプリングである。バネ部材80は、スプリング室21bに収容される。バネ部材80は、スプール穴部21内のスプール30と固定部50との間に圧縮された状態で収容され、スプール30をソレノイド70側へ押す。
【0022】
ソレノイド70は、軸方向に移動可能なピン71と、ピン71を駆動する駆動部72と、駆動部72とスリーブ20とを固定するハウジング73と、駆動部72に接続されるコネクタ75と、を有する。
【0023】
ピン71は、非磁性材料からなる円柱状のピンである。ピン71は、中心軸Jに沿って配置され、一部が駆動部72内に挿入される。ピン71の駆動部72から突出する部分は、スリーブ20のスプール穴部21に挿入される。スプール穴部21内において、ピン71とスプール30とが軸方向に接触する。
【0024】
駆動部72は、図示しないプランジャ、コイルおよびコアを有する。プランジャは強磁性材料からなる円柱状の部材であり、円筒状のコアの内側に配置され、駆動部72内で軸方向に移動可能である。プランジャは、ピン71のスプール30と反対側の端部に接触または連結される。コネクタ75は、駆動部72のコイルと電気的に接続される。
【0025】
駆動部72において、コネクタ75を介して供給される電力によりコイルが通電されると、コイルにより発生する磁力により、プランジャが軸方向に沿ってスプール30側へ移動し、ピン71をスプール30側へ押す。ピン71は、バネ部材80のバネ力に対抗してスプール30を固定部50側へ移動させる。
【0026】
スプール30がスリーブ20に対して軸方向に移動することで、入力ポート22、出力ポート23、および第1排出ポート24の連結状態が変化する。
図1に示す状態では、第1ランド部31によって出力ポート23と第1排出ポート24との間が閉塞され、グルーブ部30aによって入力ポート22と出力ポート23とが連結される。入力ポート22から流入した流体が出力ポート23に流出する。
図1に示す状態からスプール30がスリーブ20に対して右側に移動すると、
図3に示すように、第2ランド部32によって入力ポート22と出力ポート23との間が閉塞され、グルーブ部30aによって出力ポート23と第1排出ポート24とが連結される。出力ポート23の流体はグルーブ部30aを介して第1排出ポート24へ流出する。
【0027】
電磁弁1では、
図1に示すオープン状態において、調圧室21a内に、第1ランド部31のソレノイド70側の端面31aと、第2ランド部32のバネ部材80側の端面32aとが、軸方向に対向して配置される。第1ランド部31と第2ランド部32とは外径に差があり、端面31aと端面32aの面積が異なる。そのため、グルーブ部30aを介して出力ポート23に流入する流体が端面31a、32aを押す力の差により、スプール30にフィードバック力が生じる。電磁弁1において、出力ポート23へ流出する流体の圧力は、上記フィードバック力と、バネ部材80によるバネ力、およびソレノイド70の電磁力のバランスで決定される。
【0028】
電磁弁1のフィードバック機構は、入力ポート22から流入する流体の圧力変動に応じてスプール30を移動させ、スプールバルブ10の開度を自動調整する。例えば、入力ポート22から流入する流体の圧力が大きくなった場合、出力ポート23から流出する流体の圧力が上昇する。すると、出力ポート23に繋がる調圧室21a内において、相対的に面積の大きい端面31aに作用する圧力が、端面32aに作用する圧力よりも大きくなり、スプール30がバネ部材80側へ移動する。スプール30がバネ部材80側に移動すると、入力ポート22と出力ポート23とを繋ぐ流路が狭くなり、出力ポート23に流れる流体の圧力が低下する。このようにして、出力ポート23から流出する流体の圧力が一定に維持される。
【0029】
また電磁弁1では、第2ランド部32がノッチ35を有することにより、出力ポート23の流体圧力の脈動が抑制される。以下、具体的に説明する。
電磁弁1は、調圧室21a内にフィードバック機構を有するため、調圧室21a内の流体圧力が変動するとスプール30が敏感に反応して移動する。仮に第2ランド部32がノッチ35を有さない場合、スプールバルブ10がクローズ状態からオーブン状態へ移行する際に、入力ポート22から出力ポート23へ流体が急激に流れ込む。そうすると、フィードバック機構によるスプール30の移動速度が過度に大きくなり、スプール30が停止位置の前後を往復して脈動を生じる。
【0030】
これに対して、第2ランド部32がノッチ35を有する場合には、スプールバルブ10がクローズ状態からオープン状態へ移行する際に、入力ポート22の流体は、最初にノッチ35に流入し、その後に流量が徐々に増加する。これにより、出力ポート23へ流出する流体流量の増加速度が緩やかになる。したがってフィードバック機構によるスプール30の移動速度が抑えられ、出力ポート23の流体圧力の脈動が抑制される。
【0031】
なお、本実施形態では、スプール30が第2ランド部32の角部の一部を切り欠いたノッチ35を有する構成としたが、第2ランド部32の端面32aの周縁にテーパー状の斜面部を有する構成であってもよい。この構成においても、スプールバルブ10がクローズ状態からオープン状態に移行する際に、最初に上記斜面部を介して流体が流れるので、出力ポート23の流体圧力の変動が緩やかになり、脈動が抑制される。
【0032】
以上に説明したように、電磁弁1は、第1ランド部31および第2ランド部32を有するスプール30を用いた構成により、3つのランド部を備えるスプールを用いた電磁弁と同様の機能を実現できる。したがって、電磁弁1は、従来の電磁弁と比較して、スプールバルブ10の全長を短くでき、また軽量化が可能である。
【0033】
また電磁弁1は、ノーマルオープン型の電磁弁であり、ソレノイド70が非励磁状態にあるときに流体圧力とバネ部材80のバネ力が釣り合い、フィードバック機構が作動する。したがって、電磁弁1では、ソレノイド70が励磁状態、非励磁状態のいずれにあってもフィードバック機構が作動する。
【0034】
本実施形態では、調圧室21aとスプリング室21bとの間に、相対的に外径の大きい第1ランド部31が配置される。スプール30の外周面とスプール穴部21の内周面との間には、スプール30の軸方向移動を許容する程度の隙間があり、この隙間を介して流体が隣の部屋へ僅かにリークする。相対的に大きい外径を有する第1ランド部31とスプール穴部21との隙間は、第2ランド部32とスプール穴部21との隙間よりも若干大きくなるため、第1ランド部31を介して調圧室21aと隣り合うスプリング室21bへのリークが僅かに多くなる傾向がある。
【0035】
スプリング室21bにリークした流体は、スプリング室21b内に溜まる。これにより、スプリング室21b内のバネ部材80と流体とが、スプール30を減速させるダンパーとして機能する。その結果、入力ポート22に流入する流体の圧力が急激に変動した場合でも、フィードバック機構によるスプール30の移動を緩やかにすることができ、出力ポート23の流体圧力の脈動を抑制できる。スプリング室21b内の余分の流体は、第2排出ポート26から排出される。
【0036】
また本実施形態では、スプリング室21bに繋がる第2排出ポート26の開口部の径が、第1排出ポート24の開口部の径よりも小さい。この構成により、流体が第2排出ポート26から外部へ流出する際の抵抗が大きくなるので、バネ部材80と流体によるダンピング効果が高まる。その結果、出力ポート23の流体圧力の脈動をさらに抑制できる。
【0037】
(変形例)
図4は、ノーマルクローズ型の変形例の電磁弁を示す断面図である。
図4において、
図1から
図3と共通の部材には、同一の符号が付される。以下では、共通の部材についての説明は適宜省略される。
【0038】
変形例の電磁弁1Aは、スプールバルブ10Aと、スプールバルブ10Aを駆動するソレノイド70とを有する。電磁弁1Aは、ソレノイド70のコイルへの通電を遮断しているときに弁が閉じた状態となるノーマルクローズ型のソレノイドバルブである。
【0039】
スプールバルブ10Aは、スリーブ20Aと、スプール30Aと、固定部50と、バネ部材80と、を有する。
スリーブ20Aは、中心軸Jを中心として軸方向に延びるスプール穴部21Aを有する。スプール穴部21Aの軸方向と直交する断面形状は、円形状である。スリーブ20Aは、入力ポート22と、出力ポート23と、第1排出ポート24と、第2排出ポート26と、を有する。スリーブ20Aにおいて、ソレノイド70側から順に、第1排出ポート24、出力ポート23、入力ポート22、第2排出ポート26が、軸方向に沿って配置される。
【0040】
スプール30Aは、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。スプール30Aは、中心軸Jに沿ってスプール穴部21A内に軸方向に移動可能に配置される。スプール30Aのソレノイド70側の端部は、ソレノイド70のピン71と接する。スプール30Aの固定部50側の端部は、バネ部材80と接する。スプール30Aは、ソレノイド70側から順に、第1ランド部31Aと、グルーブ部30aと、第2ランド部32Aと、を有する。
【0041】
第1ランド部31Aは、第1の径L1Aを有する。第2ランド部32Aは、第1の径L1Aよりも小さい第2の径L2Aを有する。グルーブ部30aは、第1の径L1Aおよび第2の径L2Aよりも小さい径を有する。第1ランド部31Aおよび第2ランド部32Aの外径は、それぞれが収容される位置におけるスプール穴部21Aの内径とほぼ同じである。
【0042】
図4に示す状態では、第2ランド部32Aによって入力ポート22と出力ポート23との間が閉塞され、グルーブ部30aによって出力ポート23と第1排出ポート24とが連結される。出力ポート23の流体はグルーブ部30aを介して第1排出ポート24へ流出する。
ソレノイド70が励磁状態とされ、ピン71によりスプール30Aが固定部50側へ押されると、第1ランド部31Aによって出力ポート23と第1排出ポート24との間が閉塞され、グルーブ部30aによって入力ポート22と出力ポート23とが連結される。入力ポート22から流入した流体が出力ポート23に流出する。
【0043】
上記構成を備えた変形例の電磁弁1Aにおいても、入力ポート22と出力ポート23とが連結されたオープン状態において、フィードバック機構を作動させることができる。したがって、ノーマルクローズ型の電磁弁1Aにおいても、先の実施形態の電磁弁1と同様の作用効果が得られる。