【解決手段】 導電性材料を分散させたエマルジョン組成物を、メカニカルフロス法にて発泡させた後に硬化することにより得られる導電性発泡体であって、前記導電性材料が、少なくとも、ベーサル面を褶曲させた構造を有する球状黒鉛を、含有することを特徴とする導電性発泡体。
導電性材料を分散させたエマルジョン組成物を、メカニカルフロス法にて発泡させた後に硬化することにより得られる導電性発泡体であって、前記導電性材料が、少なくとも、ベーサル面を褶曲させた構造を有する球状黒鉛を、含有することを特徴とする導電性発泡体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の導電性発泡体及びその製造方法について下記項目に従って詳述する。
1.導電性発泡体
1−1.原料
1−1−1.エマルジョン組成物
1−1−2.導電性材料
1−1−2−1.球状黒鉛
1−1−2−2.導電性フィラー
1−1−3.添加剤
1−1−3−1.気泡剤
1−1−3−2.架橋剤
1−1−3−3.その他
1−2.導電性発泡体の製造方法
1−2−1.液体組成物の各成分
1−2−2.液体組成物の調製方法
1−2−3.液体組成物の組成・性質
1−2−4.発泡工程
1−2−5.硬化工程
1−2−6.成形方法
1−3.導電性発泡体の用途
【0011】
1.導電性発泡体
本明細書における「導電性」とは、例えば体積抵抗値が10
8Ω・cm以下の抵抗を有するものをいう。
本発明に係る導電性発泡体は、樹脂、導電性材料及び起泡剤を含有するエマルジョン組成物をメカニカルフロス法にて発泡させた後に硬化することにより得られる導電性発泡体である。前記導電性発泡体の形状は特に限定されないが、好ましくは厚み0.05mm〜2.0mmのシート状である。
【0012】
本発明の導電性発泡体中の気泡の形態については特に制限はないが、放熱性、柔軟性の観点から、連続気泡であることが好ましい。なお、「連続気泡」とは、隣り合う気泡を隔てる樹脂膜に貫通孔があり、隣り合う気泡どうしが3次元的に連通している状態をいう。又、「連続気泡」構造であると、発泡体内部まで外気が通過できる性質がある。本発明では、厳密に全ての孔間が連通していることを要求するものではなく、一部閉じた孔が内部に存在していても、全体として外気が通過できる性質があれば、「連続気泡」構造であるとする。気泡の形態については、電子顕微鏡で観察することで確認できる。
【0013】
本発明に係る導電性発泡体の見かけの密度(JIS K7222に準拠)は、100kg/m
3〜700kg/m
3であると、導電性及び柔軟性の双方に優れるので好ましく、200〜600kg/m
3であると、より好ましい。見かけの密度が前記範囲より低いと、導電性が低くなる。又見かけの密度が前記範囲を超えると、柔軟性が低くなり、硬度が高まる結果、複雑な構造に対する形状追従性が悪くなる。
なお、本明細書で単に「密度」と記載されている場合は、「見かけの密度」を意味するものとする。
【0014】
又前記導電性発泡体は、前記導電性材料が少なくともベーサル面を褶曲させた構造を有する球状黒鉛を含有することを特徴とし、前記球状黒鉛がその導電性能の異方性が極めて低く、導電性発泡体自体の導電性能についても異方性が極めて低いことを特徴とする。即ち、前記導電性発泡体において、導電方向に関係ない導電性能を有し、前記シート状の導電性発泡体においては、特に厚み方向(シートの法線方向)における導電性が、その他の方向における導電性能と差異が少ないことを特徴とする導電性発泡体である。
【0015】
本発明に係る導電性発泡体は、記導電性発泡体の全質量を基準として、前記導電性材料を30質量%〜50質量%含有することができる。前記導電性材料が30質量%よりも小さい場合には、導電性発泡体の導電性能が不十分となるおそれがある。即ち、低印加電圧において高い導電性能を発現させることが困難になる。前記導電性材料が50質量%よりも大きい場合には、導電性発泡体の成形性、柔軟性や材料強度が低下する。
【0016】
なお、本発明に係る導電性発泡体に含有される導電性材料は、各導電性材料が接触していない状態とすることができる。導電性材料同士が接触していない場合においても、ホッピング、又は、Pool Frenkel(プールフレンケル)効果により、導電性を付与することができる。前記Pool Frenkel効果は、導電性材料間の距離に影響し、その距離が長くなると電子を飛ばす距離が長くなるため、より高電圧を印加する必要がある。従って、低電圧下において、導電性を発現させるには導電性材料の量を多くする必要があるが、上述したように導電性発泡体の成形性、柔軟性や材料強度が低下等の問題が発生する。
【0017】
本発明に係る導電性発泡体は、前記ベーサル面を褶曲させた構造を有する球状黒鉛に加え、さらに導電性フィラーを添加することができる。そのようにした場合の前記球状黒鉛と導電性フィラーの配合比は、9:1〜5:5が好適である。前記配合比がこの範囲にあるときには、著しく導電性が向上する。即ち、体積抵抗値が低下する。これは前記球状黒鉛に加え、さらに導電性フィラーを添加することで、前記球状黒鉛間の隙間に導電性フィラーが存在し、導電性材料から導電性材料に電子が飛びやすくすることが可能となるためである。以下、この点に関して詳述する。
【0018】
本発明の電気伝導機構としては、マトリクスをなす絶縁体の樹脂の中で複数のトンネリングを繰り返すホッピング型の電気伝導を利用する。そのためには、導電性材料間に電流を流す必要があり、低い電圧で電極間(導電性材料間)の距離が極めて狭い必要がある。すなわち、
図1に示すように、ミクロンサイズの球状黒鉛に対して、ナノサイズの導電性フィラーが分散している構造により、マトリクス樹脂の限界膜厚、導電性材料間の距離を達成でき、各導電性材料が互いに接触していない領域を導通部とすることができる。具体的には、導電性フィラーがカーボン系の場合、球状黒鉛の比重と導電性フィラーは、比重がほぼ同じなので、その配合比に準じた割合(例えば、9:1〜5:5の割合)で均一にマトリクス空間に分布することになり、より性能に優れた本発明の電気伝導機構が得られる。
【0019】
本発明に係る導電性発泡体は、シート状として基材上に積層させることができる。基材の材質は特に限定されないが、前記導電性発泡体の原料の浸み出しが抑制できればよい。
例えばPETフィルムなどの樹脂フィルム、不織布、織物、紙、粘着テープ、粘着層が凹凸形状になっているエアレステープ等が挙げられる。
又基材の厚さも特に限定されないが、10μm〜100μmの厚さが好適である。基材と積層することで、前記導電性発泡体のダメージからの保護や使用時に基材による支持により取り扱いが容易になる等が可能となる。
【0020】
又、基材は前記導電性発泡体の用途によって、剥離して使用してもよく、又は、剥離せず積層体のまま使用してもよい。剥離して使用する場合には、離型処理した基材を用いることができる。
【0021】
又、前記基材は導電性を有するものを使用することができる。前記導電性を有する基材は特に限定されないが、離型処理したPETフィルム、アルミテープ、導電粘着テープ、含侵などの方法により導電処理した不織布や紙等が挙げられる。このような基材を用いることで、導電性発泡体シートの厚み方向の導電性が要求されるような用途に対して、基材を剥離せずに使用することが可能となる。
【0022】
1−1.原料
本発明に係る導電性発泡体は、原料として、例えば、エマルジョン組成物、導電性材料、起泡剤(アニオン性界面活性剤)、分散媒として水、架橋剤及びその他の添加剤等を使用することができる(なお、発泡工程において用いられる発泡用の気体に関しては、発泡工程にて述べる)。
【0023】
1−1−1.エマルジョン組成物
本発明に係る発泡体を製造する際に使用されるエマルジョン組成物のエマルジョン原料は特に限定されず、公知の方法で発泡体を形成できるエマルジョンであればよい。例えばウレタンエマルジョン、アクリルエマルジョン、スチレンエマルジョン、及びEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)樹脂エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョン、エポキシ系エマルジョン等が挙げられ、1つ、又は、複数のエマルジョンを使用することができる。特にウレタンエマルジョン及びアクリルエマルジョンのうち、少なくとも1つのエマルジョンを用いることが好ましい。さらに、アクリル系エマルジョンを少なくとも用いることがより好ましい。又、ウレタンエマルジョンを用いることで、更に材料強度を付与することができる。又、得られるウレタン樹脂発泡体は柔軟性が優れ、圧縮残留歪みが低くなる。
【0024】
以下、(1)ウレタンエマルジョン、(2)アクリルエマルジョンについて、それぞれ詳述する。
【0025】
(1)ウレタンエマルジョン
本発明において使用可能なウレタンエマルジョン(ウレタン樹脂の水分散体)の製法としては、特に限定されないが、下記方法(I)〜(III)が例示出来る。
(I)活性水素含有化合物、親水性基を有する化合物、及び、ポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基を有するウレタン樹脂の有機溶剤溶液又は有機溶剤分散液に、必要に応じ、中和剤を含む水溶液を混合し、ウレタン樹脂エマルジョンを得る方法。
(II)活性水素含有化合物、親水性基を有する化合物、及び、ポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基を有する末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、中和剤を含む水溶液と混合するか、又は、予めプレポリマー中に中和剤を加えた後水を混合して水に分散させた後、ポリアミンと反応させて、ウレタン樹脂エマルジョンを得る方法。
(III)活性水素含有化合物、親水性基を有する化合物、及び、ポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基を有する末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、中和剤及びポリアミンを含む水溶液と混合するか、又は、予めプレポリマー中に中和剤を加えた後、ポリアミンを含む水溶液を添加混合し、ウレタン樹脂エマルジョンを得る方法。
【0026】
前記ウレタン樹脂の方法において用いるポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が例示できる。又発明の効果を損なわない範囲において、3価以上のポリイソシアネートを併用してもよい。
【0027】
又、前記活性水素含有化合物としては、特に限定されず、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリブタジエン系等のポリオレフィンポリオール等の公知のポリオールが例示できる。これら高分子量化合物は、2種以上を併用してもよい。
【0028】
ここで、本形態に係るウレタンエマルジョンは、ポリエーテル系ウレタンエマルジョン、ポリエステル系ウレタンエマルジョン、ポリエーテルカーボネート系ウレタンエマルジョン及びポリカーボネート系ウレタンエマルジョンからなる群より選択される一種以上であることが好適である。
【0029】
本形態に係るポリエステル系ウレタンエマルジョンとしては、何ら限定されないが、例えば、前記製造方法において、ポリエステルポリオール(例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と多価アルコール等との反応生成物等)を用いることで製造可能である。
【0030】
本形態に係るポリカーボネート系ウレタンエマルジョンとしては、何ら限定されないが、例えば、前記製造方法において、ポリカーボネートポリオール{例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のジオール等と、ジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート)、環式カーボネート(例えば、プロピレンカーボネート)等との反応生成物等}を用いることで製造可能である。
【0031】
本形態に係るポリエーテル系ウレタンエマルジョンとしては、何ら限定されないが、例えば、前記製造方法において、ポリエーテルポリオール{例えば、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等}を用いることで製造可能である。
【0032】
本形態に係るポリエーテルカーボネート系ウレタンエマルジョンとしては、前記ウレタン樹脂がカーボネート基及びエーテル基の両方を含有(…−O−CO−O−[R−O−R’]−O−CO−O−…という骨格を含有)すれば何ら限定されず、例えば、前記製造方法において、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオールを併用することで製造可能である。
【0033】
前記方法(I)〜(III)において、発明の効果を損なわない範囲で、更に乳化剤を使用してもよい。このような乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸塩等のノニオンアニオン系乳化剤、等を例示できる。
【0034】
本発明の導電性発泡体は、その原料としてウレタンエマルジョンを用いる(発泡体がウレタン樹脂を含むものとする)ことにより、導電性材料を配合してなる導電性発泡体において、外観性、成形性、導電性、硬度、導電性材料の脱落の抑制、耐加水分解性等、様々な特性を高い水準で備える発泡体とすることが可能となる。
【0035】
(2)アクリルエマルジョン
本発明において使用可能なアクリル系エマルジョン(アクリル樹脂の水分散体)の製法としては、特に限定されないが、重合開始剤、必要に応じて乳化剤及び分散安定剤の存在下に、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を必須の重合性単量体成分とし、更に必要に応じてこれらの単量体と共重合可能なその他の重合性単量体の混合物を共重合させることにより得ることができる。尚、2種以上のアクリル系エマルジョンを組み合わせて用いてもよい。前記アクリル系エマルジョンのガラス転移温度は、0℃〜80℃の範囲にあるものが好適である。
【0036】
前記アクリル系エマルジョンの調製に使用することができる重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アルリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボキシル基を有する不飽和結合含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート等が例示できる。
【0037】
尚、アクリル系エマルジョンの調製時に乳化剤を使用する場合には、公知の乳化剤等を使用すればよい。
【0038】
なお、これらのエマルジョンは、樹脂分散用の界面活性剤(乳化剤)等を含んでいてもよい。樹脂分散用界面活性剤とは、水分散性樹脂を分散させるための界面活性剤である(アニオン性界面活性剤と異なり、起泡剤としての効果を有さずともよい)。このような界面活性剤は、選択する水分散性樹脂に応じて適宜選択すればよい。
【0039】
・分散媒
本発明において、ポリマーラテックス(又はエマルジョン組成物)の分散媒としては、水を必須成分とするが、水と水溶性溶剤との混合物であってもよい。水溶性溶剤とは、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の極性溶剤等であり、これらの1種又は2種以上の混合物等を使用してもよい。
【0040】
1−1−2.導電性材料
下記に述べる導電性材料は、粉体のまま配合してもよいが、粉体を水に分散させた水分散体として用いることが好適である。水分散体とすることで、エマルジョン組成物に添加する際に、組成物内で均一に分散させることが容易となる。
【0041】
1−1−2−1.球状黒鉛
球状黒鉛は、高い導電性があり、本発明の導電性発泡体の導電性発現に寄与する。本発明に使用可能な黒鉛は球状である。本発明において、「球状」とは、真球状のみを意味するのではなく、真球形状が円盤状様に若干変形した形状、表面が一様ではなく、表面に層が重なったキャベツ様な外観を有する形状等、一般的には、真球形状とは把握されないものも含む趣旨である。但し、天然黒鉛の結晶形は六方晶形であり、一般的には、未処理の黒鉛は鱗片状であるので、これとは区別される。即ち、本発明には、少なくとも球状化処理が施された黒鉛を使用することを要する。球状化処理には、鱗片状の天然黒鉛を粉砕処理する等の簡易な処理方法も含まれるが、好ましくは、黒鉛に対して等方的に圧力が負荷される処理方法の採用である。当該処理は、気体(アルゴン等の不活性ガス)、液体(例えば水)等の加圧媒体を用いて、等方的に黒鉛に圧を負荷する方法等により実施できる。加熱の有無により、熱間等方加圧処理、冷間等方加圧処理として区別される。いずれを利用してもよい。この処理を施すことで、外形が球形であり、しかも内部の空壁(鱗片層間)が軽減された、等方的な高い導電性を有する球状黒鉛が得られる。
【0042】
上記球状化処理された球状黒鉛は、他の側面から、ベーサル面を褶曲させた構造を有する球状黒鉛として特定される。ここで、「ベーサル面」とは、黒鉛結晶(六方晶系)のC軸に直交する面をいう。即ち、本発明の球状黒鉛は、天然黒鉛の結晶系に歪みが生じているものであることが好ましい。この歪みは、X線回折パターンを測定し、天然黒鉛と比較して、ピークのブロード化の有無又は2θ値のシフトの有無を確認することで把握できる。又、導電性発泡体が、球状黒鉛を含有するか否かの確認は、原料黒鉛のX線回折パターンを測定することで確認する他、導電性発泡体の任意の2以上の断面を顕微鏡観察し、黒鉛相当部分の形状が円様であるか否かによって確認することもできる。具体的には、導電性発泡体の互いに直交する面を顕微鏡観察し、いずれの画像にも黒鉛相当部分の形状が、短径/長径の比が1/2未満の円様の形状であれば、当該導電性発泡体は球状黒鉛を含んでいると言える。
【0043】
本発明に使用可能な球状黒鉛の例には、ハイブリダイゼーションシステムを用いた高速気流中衝撃法等によって鱗片状黒鉛などの非球状の黒鉛微粉を球状化処理したもの;及び石油系又は石油系のピッチを結晶化させた球状のカーボン粒子や熱硬化性樹脂を硬化させて粉末を得、該粉末を黒鉛化して得られたもの;などが挙げられる。等方的な導電性の観点から、前者が好ましい。
【0044】
球状黒鉛としては市販品も好適に用いることができ、その具体例としては、日本黒鉛工業社製の球状黒鉛などが挙げられる。本発明に用いる球状黒鉛の平均粒径(メジアン径)は、1〜100μm程度である。好ましくは、5〜80μm、より好ましくは、8〜80μmである。導電性発泡体の導電性確保と、その柔軟性を確保することは、一方を改善すると他方が低下するという傾向があるが、比較的平均粒径の小さい球状黒鉛を用いると、双方の性質をバランスよく改善できるので好ましい。導電性発泡体の最終形状によって、好ましい平均粒径範囲は変動するが、厚さ0.1〜1.0mm程度のシート状の形態では、5〜30μm程度であることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。
【0045】
1−1−2−2.導電性フィラー
本発明の導電性発泡体を製造するに際して使用される球状黒鉛に、さらに加える導電フィラー(ベーサル面を褶曲させた構造を有する球状黒鉛以外の導電性フィラー)としては、発泡体の導電性を向上させる性質を有する限り特に限定されず、一般的な金属系材料や導電性カーボン、イオン導電性材料等を例示可能であるが、導電性カーボンであることが好適である。導電性カーボンとしては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック等)、グラフェン等のナノサイズの導電性カーボンや、グラファイト、炭素繊維、黒鉛(ベーサル面を褶曲させた構造を有する球状黒鉛以外の黒鉛)及び活性炭等が挙げられる。これら導電性カーボンは、同サイズの金属製フィラーと比較して、比重が軽く、添加量を増やしても導電性発泡体の重量が増え難いという点で効果的である。又、前記導電性カーボンは、金属フィラーと比較して、柔軟性に富む、即ち低弾性であるため、導電性発泡体を柔軟に、即ち低硬度とすることが可能となる。さらに価格が安いという点でも優れている。これらの導電性材料は、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
又、前記導電性フィラーの平均長(略球形状の場合は平均径)は、1nm〜100nmが好ましく、5nm〜50nmがより好ましい。このような導電性フィラーを用いることで、前記球状黒鉛間に散在することが可能となり、導電性発泡体の導電性が向上する。
さらに、前記導電性フィラーは、そのアスペクト比が好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。アスペクト比が5を超えると、導電性発泡体の導電性能に異方性が現れるおそれがある。
ここで、「アスペクト比」の値は、導電性フィラーの平均長を平均径で除した値である。「平均長」と「平均径」とは、導電性フィラーをSEM観察し、少なくとも100個の粒子を観察測定し、その平均値から求めた値である。より詳細には「平均径」とは、SEM観察で撮像された粒子の長さ方向中心付近における垂直断面に基づき粒子の断面積を算出し、当該断面積と同一面積を有する円の直径を算出することにより導かれた面積径の平均値である。平均径と平均長は100粒子の測定平均である。
【0047】
1−1−3.添加剤
1−1−3−1.気泡剤
本発明の導電性発泡体を製造するに際して使用可能な起泡剤は、原料混合物に気体を混入させ、気泡を安定化できる物質であり、アニオン性の起泡剤を例示可能である。
【0048】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、特に制限されるものではなく、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム石鹸、ひまし油カリウム石鹸、やし油カリウム石鹸、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、オレイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、やし油アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0049】
ここで、本形態に用いられるアニオン性界面活性剤は、エマルジョン組成物に分散しやすくするため、HLBが、10以上であることが好適であり、20以上であることがより好適であり、30以上であることが特に好適である。
【0050】
・HLB
尚、本発明において、HLB値とは、親水性−疎水性バランス(HLB)値を意味し、小田法により求められる。小田法によるHLBの求め方は、「新・界面活性剤入門」第195〜196頁及び1957年3月20日槙書店発行 小田良平外1名著「界面活性剤の合成と其応用」第492〜502頁に記載されており、HLB=(無機性の数値/有機性の数値)×10で求めることができる。ここで、無機性および有機性の数値は、上記「新・界面活性剤入門」第3・3・11表に示す値から計算される。
【0051】
又、本発明に係る起泡剤として、両性界面活性剤を用いてもよい。特にアニオン系界面活性剤と両性界面活性剤を併用した場合、アニオン系界面活性剤の分子同士の親水基の電荷が反発し、アニオン系界面活性剤の分子同士がある程度の距離を保っている間に、電気的に中性である両面活性剤がアニオン系界面活性剤の分子の間に入り込むことによって、気泡をより安定化し、気泡のサイズを小さくすることができる。このため、層間剥離強度を向上させることができる。よって、アニオン系界面活性剤と両性界面活性剤を併用することが好ましい。
【0052】
両性界面活性剤としては、特に制限されるものではなく、アミノ酸型、ベタイン型、アミンオキシド型等の両性界面活性剤を例示可能であり、ベタイン型の両性界面活性剤は、前述の効果がより高いことから、好適である。
【0053】
アミノ酸型の両性界面活性剤としては、例えば、N−アルキル若しくはアルケニルアミノ酸又はその塩等が挙げられる。N−アルキル若しくはアルケニルアミノ酸は、チッ素原子にアルキル基又はアルケニル基が結合し、更に1つ又は2つの「−R−COOH」(式中、Rは2価の炭化水素基を示し、好ましくはアルキレン基であり、特に炭素数1〜2であることが好ましい。)で表される基が結合した構造を有する。「−R−COOH」が1つ結合した化合物においては、チッ素原子には更に水素原子が結合している。「−R−COOH」が1つのものをモノ体、2つのものをジ体という。本発明に係る両性界面活性剤としては、これらモノ体、ジ体のいずれも用いることができる。N−アルキル若しくはアルケニルアミノ酸において、アルキル基、アルケニル基は直鎖状でも分岐鎖状であってもよい。具体的には、アミノ酸型の両性界面活性剤として、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、トリメチルグリシンナトリウム、ココイルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルメチル−β−アラニン等が挙げられる。
【0054】
ベタイン型の両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン、カルボベタイン、アミドカルボベタイン、アミドベタイン、アルキルアミドベタイン、スルホベタイン、アミドスルホベタイン、ホスホベタイン等がある。具体的には、ベタイン型の両性界面活性剤として、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドエチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドエチルジエチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルジエチルアミノ酢酸ベタイン、イソステアリン酸アミドエチルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルジメチルアミノヒドロキシスルホベタイン、イソステアリン酸アミドエチルジエチルアミノヒドロキシスルホベタイン、イソステアリン酸アミドプロピルジエチルアミノヒドロキシスルホベタイン、N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−プロピルスルホベタイン、N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム−N−(2−ヒドロキシプロピル)スルホベタイン、N−ラウリル−N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシ−1−スルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、ドデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、オクタデシルアミノメチルジメチルスルホプロピルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(2−ラウリル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン2−ステアリル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等)、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルヒドロキシスルタイン等が挙げられる。
【0055】
アミンオキシド型の両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミン−N−オキシド、オレイルジメチルアミン−N−オキシド等が挙げられる。
【0056】
上述した両性界面活性剤のうち、ベタイン型の両性界面活性剤を使用することが好ましく、ベタイン型の中でも、アルキルベタイン、イミダゾリニウムベタイン、カルボベタインが特に好ましい。本発明で使用可能なアルキルベタインとしては、ステアリルベタイン、ラウリルベタイン等が例示され、イミダゾリニウムベタインとしては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が例示される。
【0057】
さらに、本発明に係る起泡剤として、非イオン界面活性剤を用いてもよい。非イオン界面活性剤としては、特に制限されるものではなく、脂肪酸アルカミノールアミド、エーテル、エステル系等の非イオン界面活性剤が例示可能である。
【0058】
1−1−3−2.架橋剤
本発明の導電性発泡体を製造するに際して使用される架橋剤は、特に限定されず、用途等に応じて、必要量添加すればよく、具体的な架橋方法は、水分散性樹脂の種類に応じて選択することができる。架橋剤としては、公知の架橋剤を使用可能であり、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤などを、使用する樹脂配合系が含有する官能基の種類及び、官能基量に応じて適量使用することができる。
【0059】
1−1−3−3.その他
その他、増粘剤、気泡核剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、充填剤、補強剤、難燃剤、帯電防止剤、表面処理剤等の公知の添加成分を使用してもよい。
【0060】
1−2.導電性発泡体の製造方法
本発明は、側鎖に官能基を有する樹脂、起泡剤及び球状黒鉛を含有する液体組成物を機械発泡させる発泡工程と、前記樹脂が有する官能基同士を反応させる、及び/又は多官能性の架橋剤の官能基と反応させることで硬化させる工程とを含み
発泡工程と硬化工程とを同時に実施する、及び/又は発泡工程の後に硬化工程を実施する、導電性発泡体の製造方法にも関する。
この方法によれば、本発明の導電性発泡体を安定的に製造することができる。
【0061】
1−2−1.液体組成物の各成分
本発明の製造方法に用いる液体組成物は、少なくとも、側鎖に官能基を有する樹脂、起泡剤、及び前記球状黒鉛を含む。さらに、前記樹脂の硬化に寄与する多官能性化合物、即ち架橋剤を含んでいてもよい。側鎖に官能基を有する樹脂、起泡剤、前記球状黒鉛、及び架橋剤それぞれの好ましい例等については、上記導電性発泡体について説明した各成分の好ましい例等と同様である。
【0062】
液体組成物として調製するために、さらに溶媒を含んでいるのが好ましい。使用可能な溶媒の例には、水、有機溶媒(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、N−メチルピロリドン等の極性溶剤の1種又は2種以上)が含まれるが、本発明では、水のみを用いるのが好ましい。有機溶媒を用いると、液体組成物の粘度が水を使用した場合と比較して低くなり、気泡が消泡するおそれがある。したがって有機溶媒を含まないのが好ましいが、気泡形成安定性に影響を与えない程度(例えば成形性を害する程度に粘度が低下しない程度)の割合で含んでいてもよい。
【0063】
1−2−2.液体組成物の調製方法
前記液体組成物は、前記樹脂の水系エマルジョン、前記球状黒鉛、さらに導電性フィラーの水系分散液をそれぞれ調製して、これらを混合して調製すると、前記球状黒鉛の凝集等を生じさせずに液体組成物を調製できるので好ましい。前記樹脂の水系エマルジョン中の樹脂の固形分濃度、及び前記球状黒鉛の水系分散液中の前記球状黒鉛の固形分濃度については特に制限はないが、一般的には、50質量%〜90質量%程度である。前記球状黒鉛の水系分散液中にあらかじめ起泡剤となる界面活性剤を混合しておくと、樹脂の水系エマルジョンと混合した際の樹脂中への前記球状黒鉛の分散安定性がより向上するので好ましい。特に、起泡剤として、湿潤性が良好な界面活性剤の少なくとも1種を用いると、前記球状黒鉛の樹脂中への分散安定性がより改善するので好ましい。中でも、気泡形成安定性及び湿潤性が良好な上記アニオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましく、さらに湿潤性が良好な上記ノニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種を用いるのがより好ましい。例えば、前記球状黒鉛の水系分散液は、固形分20〜60質量%程度の界面活性剤(起泡剤)の水溶液ないし水懸濁液に、球状黒鉛を混合することで調製できる。なお、架橋剤、他の熱伝導性材料等、他の添加剤を使用する態様では、前記球状黒鉛の水系分散液中に他の添加剤を添加して、樹脂の水系エマルジョンと混合して、液体組成物を調製するのが好ましい。
【0064】
1−2−3.液体組成物の組成・性質
前記液体組成物の全固形分濃度は、40〜80質量%程度であり、50〜70質量%であることが好ましい。一般的には、液体組成物の全固形分中、樹脂(及び所望により添加される架橋剤)及び前記球状黒鉛(所望により添加される導電性フィラー)の合計質量が95%以上になり、起泡剤(具体的には界面活性剤)等の他の添加剤の合計質量は5%以下になる。但し、用いる材料の種類等に応じて固形分中の各材料の好ましい質量割合も変動する。又、液体組成物の粘度は、以下の発泡工程において安定的に気泡を形成するために、10000〜200000mPa・s程度であることが適切である。
【0065】
1−2−4.発泡工程
発泡工程では、前記液体組成物を攪拌して、気泡を発生させる、機械発泡を実施する。機械発泡(メカニカルフロス)法は、液体組成物を攪拌羽根等で攪拌することにより、大気中の空気等の気体をエマルジョン組成物に混入させて発泡させる方法である。撹拌装置としては、機械発泡法に一般に用いられる撹拌装置を特に制限なく使用可能であるが、例えば、ホモジナイザー、ディゾルバー、メカニカルフロス発泡機等を使用することができる。本発明では、機械発泡法により発泡工程を実施することで、独立気泡の形成を抑制し、連続気泡の形成を支配的にして、硬化後の発泡体の密度が大きくなるのを防止し、柔軟性の高い多孔体を得ている。
【0066】
攪拌条件については特に制限はないが、攪拌時間は、通常は1〜10分、好ましくは2〜6分である。又、上記の混合における攪拌速度は、気泡を細かくするために200rpm以上が好ましく(500rpm以上がより好ましく)、発泡機からの発泡物の吐出をスムーズにするために2000rpm以下が好ましい(800rpm以下がより好ましい)。発泡工程の温度条件についても特に制限はないが、通常は常温である。発泡と同時に後述の硬化工程も実施する場合は、官能基の反応を進行させるために加熱してもよい。
【0067】
1−2−5.硬化工程
硬化工程では、前記樹脂が有する官能基同士を反応させる、及び/又は架橋剤の官能基と反応させることで、樹脂を硬化させる。この工程により、前記液体組成物が、導電性発泡体としての構造体になる。硬化工程は、発泡工程後に実施するのが好ましい。液体組成物中の溶媒(水)を蒸発させるため、及び架橋反応を進行させるために、加熱するのが好ましい。加熱温度及び加熱時間も、原料を架橋(硬化)させることができる温度及び時間であればよく、例えば、80〜150℃(特に、120℃程度が好適)で1時間程度とすればよい。
【0068】
又、硬化工程は、得られる導電性発泡体を所望の形状にするための成形加工の一工程として実施されてもよい。例えば、シート状の導電性発泡体を製造する態様では、硬化工程を、キャスティング法の一工程として実施してもよい。具体的には、「(4)発泡工程」を実施した液体組成物を、基材表面に所望の厚みに流延し、加熱して溶媒(水)を蒸発させつつ、架橋反応を進行させて硬化させ、基材表面にシートを製造することができる。
【0069】
1−2−6.成形方法
本発明の導電性発泡体を所望の形状にするために、従来公知の種々の方法により、成形加工することができる。所望の最終形状に応じて適切な成形加工方法を選択することができる。シート状の導電性発泡体を製造する場合は、キャスティング法を利用することができる。気泡の導入処理(発泡処理)は、成形加工の前に行うのが好ましい。又、エマルジョン組成物が架橋構造を有する態様では、架橋構造の形成、即ち架橋反応の進行は、成形加工と同時に行ってもよい。
【0070】
1−3.導電性発泡体の用途
本発明に係る導電性発泡体によれば、導電性や導電性の保持性(導電性材料の脱落防止性)を有するのみならず、優れたクッション性(柔軟性)を有するため、相手部材への追従性に優れ、導電性発泡体自体の反力(復元力)を小さくすることが可能となる。このため、部材間に挟んで使用する際に、十分な導電性を確保しつつ、相手部材(ICチップや基板の配線、基板の反り等)に対して、故障させたり、配線を断線する等のダメージを与えることなく、使用することができる。特に、近年は、電子機器が薄肉化、軽量化、小型化しており、電子機器内部のスペースがより無くなる傾向にあり、又、内部構造が煩雑化しており、今まで以上に、薄く優れたクッション性(柔軟性)を持つ導電性発泡体への要望が高まっている。部材間に挟み込む以外にも、その適用方法や使用環境を問わずに種々の用途(例えば、電子部品や機器類における、グラウンディング材、シールディング材、緩衝材、保護材、基板の挿間材等)に用いることが可能となる。又、本発明に係る導電性発泡体では、シリコーンを含有せずとも優れた特性を有する導電性発泡体とすることが可能であり、シリコーンを含有しない場合、電子部品や機器類等へのシリコーン汚染を気にすることなく用いることができる。
【実施例】
【0071】
≪製造例≫
<原料>
・アクリルエマルジョン :アクリルニトリル−アクリル酸アルキルエステル−イタコン酸共重合体(固形分60質量%)
・ウレタンエマルジョン :ポリエーテルカーボネート系ウレタンエマルジョン(固形分60%)
・アニオン界面活性剤1 :ステアリン酸アンモニウム(固形分30%)
・アニオン界面活性剤2 :アルキルスルホコハク酸ナトリウム(固形分35%)
・両性界面活性剤1 :ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(固形分30%)
・両性界面活性剤2 :ラウリルベタイン(固形分36%)
・非イオン界面活性剤1 :脂肪酸アルカノールアミド(固形分50%)
・架橋剤1 :疎水系HDIイソシアヌレート(固形分100%)
・黒鉛1 :ベーサル面を褶曲させた構造を有する球状黒鉛(平均粒径20μm)
・黒鉛2 :ベーサル面を褶曲させた構造を有する球状黒鉛(平均粒径10μm)
・黒鉛3 :鱗片状黒鉛(平均粒径20μm)
・導電性フィラー1 :導電性カーボン(三菱化学社製、品番:#3230B、平均粒径20nm、pH6.0)
・導電性フィラー2 :導電性カーボン(三菱化学社製、品番:#3040B、平均粒径50nm、pH6.0)
・基材1 :離型処理されているPETフィルム
【0072】
<導電性発泡体の調製>
(実施例1)
エマルジョンとしてアクリルエマルジョンを主剤とし、エマルジョンの全量を基準(固形分量及び非固形分量の合計を100質量部とする。)として、5質量部のアニオン界面活性剤1、3質量部のアニオン界面活性剤2、2質量部の両性界面活性剤1、1.5質量部の両性界面活性剤2、0.5質量部の非イオン界面活性剤1に、23.5質量部の黒鉛1、2.6質量部の導電性フィラー1、3質量部の架橋剤を混合して発泡体原料とした。原料にエアーを加えて発泡させ成形した後、加熱処理することで、実施例1に係る発泡体を得た。
【0073】
(実施例2〜31、比較例1〜10)
実施例2〜22、比較例1〜10は黒鉛又導電カーボンの種類、添加量を変更した以外は実施例1と同様にして発泡体を得た。実施例23、24は実施例1、実施例2の主剤をアクリルエマルジョンからウレタンエマルジョンに変更したもので、同様に実施例25、26は実施例1、2の主剤をアクリル、ウレタンエマルジョンの50質量部ずつに変更して発泡体を得た。実施例27〜31は実施例1の厚み、密度を調整し作製した発泡体である。
≪発泡体評価方法≫
<厚み>
厚さをシックネスゲージによって測定した。
<密度>
単位体積当たりの重さを計算することによって測定した。
<外観>
目視にて、セルの状態及び発泡体の表面を評価した。セルが均一かつ表面が荒れていない場合を「○」、若干セルが荒れている場合を「△」、セルが非常に粗い、又は、セルが形成されていない、若しくは表面状態が酷い場合を「×」と評価した。
【0074】
<導電性能>
JIS K 6911に準拠し、各発泡体をΦ100mmに打ち抜き、株式会社エーディーシー製直流電圧・電流源(6243)を用いて印加電圧1Vの時の電流値から体積抵抗値と表面抵抗値を算出した。
(体積抵抗値)
体積抵抗値が1.0×10
3Ωcm未満の場合を「○」、体積抵抗値が1.0×10
3Ωcm以上、1.0×10
5Ωcm未満の場合を「△」、体積抵抗値が1.0×10
5Ωcm以上の場合を「×」と評価した。
(異方性評価)
体積抵抗値と表面抵抗値とを常用対数に変換し、表面抵抗値から体積抵抗値を引いた差の絶対値から導電性能の異方性について評価した。
表面抵抗値から体積抵抗値を引いた差の絶対値が1.5未満の場合を「○」、1.5以上、2.00未満の場合を「△」、2.00以上の場合を「×」とした。体積抵抗値評価と異方性評価の結果から、どちらか一方でも「×」がないものを低電圧下で高い導電性・等方性を有する導電発泡体であると評価した。
【0075】
<硬度>
JIS K 6254に準拠して測定した。具体的には、直径50φに打ち抜いたサンプルをオートグラフを用いて1mm/minの速度で厚さの25%を押しつぶした際の反発応力の大きさを測定した(100φの圧縮板でサンプルを全面圧縮し、測定)。25%CLD硬度が100kPa未満の場合を「○」、25%CLD硬度が100kPa以上、200kPa未満の場合を「△」、25%CLD硬度が200kPa以上の場合を「×」と評価した。
【0076】
≪発泡体評価結果≫
実施例及び比較例に係る発泡体の評価結果を、表1〜5に示す。結果から本発明による導電性発泡体は1Vという低い印加電圧で、導電性(体積抵抗値)を発現することが理解でき、導電性の異方性が低いということが理解できる。又、導電性フィラーとして導電性カーボンを、さらに追加した実施例では、著しく導電性が向上していることも理解できる。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】