特開2019-200048(P2019-200048A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-200048(P2019-200048A)
(43)【公開日】2019年11月21日
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20191025BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20191025BHJP
【FI】
   G01N23/04
   G01T7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-92731(P2018-92731)
(22)【出願日】2018年5月14日
(71)【出願人】
【識別番号】302046001
【氏名又は名称】アンリツインフィビス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 健吾
【テーマコード(参考)】
2G001
2G188
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA08
2G001FA01
2G001JA09
2G001KA03
2G188AA27
2G188BB02
2G188CC22
2G188DD04
2G188DD24
2G188DD26
2G188EE25
(57)【要約】
【課題】X線発生器の高さを容易に調整でき、被検査物の底部まで精度よく検査することができるX線検査装置を提供すること。
【解決手段】X線検査装置は、X線発生器の高さ方向の位置を調整する高さ調整機構と、高さ調整機構を制御する制御部と、を備えており、制御部は、X線検出器で検出した検出素子配列方向の検出量の変化を示す波形に基づいて、X線発生器が発生するX線の発生位置の高さがコンベアの上面の延長線上に位置するように高さ調整機構を制御する。また、制御部は、波形において、所定の検出量範囲内で抽出される、X線発生器が発生するX線が載置部材を透過することにより検出量が低下する区間の長さに基づいて、コンベア上面に対するX線発生器の高さ方向の位置を判定する。制御部は、高さ調整機構を制御してX線発生器の移動を開始する際に、区間の長さが短くなる方向にX線発生器を移動させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線発生器(9)と、
X線を検出するX線検出器(10)と、を備え、
前記X線発生器と前記X線検出器とが、被検査物(W)が載置される載置部材(2)の上面に沿う幅方向に対向して配置され、
前記X線検出器の複数の検出素子(10A)が前記載置部材の上面に直交する高さ方向に配列されたX線検査装置であって、
前記X線発生器の前記高さ方向の位置を調整する高さ調整機構(60)と、
前記高さ調整機構を制御する制御部(40)と、を備え、
前記制御部は、前記X線検出器で検出した前記検出素子配列方向の検出量の変化を示す波形に基づいて、前記X線発生器が発生するX線の発生位置の高さが前記載置部材の上面の延長線上に位置するように前記高さ調整機構を制御することを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記波形において、所定の検出量範囲内で抽出される、前記X線発生器が発生するX線が前記載置部材を透過することにより前記検出量が低下する区間の長さに基づいて、前記載置部材の上面に対する前記X線発生器の前記高さ方向の位置を判定することを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記高さ調整機構を制御して前記X線発生器の移動を開始する際に、前記区間の長さが短くなる方向に前記X線発生器を移動させることを特徴とする請求項2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記高さ調整機構を制御して、前記区間の長さが最も短くなる位置で前記X線発生器の移動を停止することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記載置部材に対する前記X線発生器の基準位置を表示する基準位置表示部材(6)が、前記X線発生器と前記載置部材との間に設けられ、
前記制御部は、前記高さ調整機構を制御して前記X線発生器の移動を開始する際に、前記基準位置より低い位置を移動開始位置として、前記X線発生器を上方向に移動させることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項4に記載のX線検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉、魚、加工食品、医薬品等の被検査物に対してX線発生器で発生したX線を照射し、被検査物を透過したX線をX線検出器により検出することで、被検査物の異物の有無や欠陥等について検査するX線検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば食品などの被検査物への異物の混入の有無を検出するために、従来からX線検査装置が用いられている。X線検査装置は、搬送される被検査物にX線を照射し、被検査物を透過したX線の透過量から被検査物中の異物の有無や欠陥等について検査している。
【0003】
従来のこの種のX線検査装置にあっては、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のものは、コンベア上の搬送路を幅方向に跨ぐようにX線発生器およびX線検出器を対向して配置し、X線発生器から被検査物に対してX線を横向きに照射している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−272357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載されているような横照射型のX線検査装置において、被検査物の底部まで精度よく検査をするためには、X線画像上で被検査物の底部にコンベアが重ならないようにすることが望ましい。そのためには、コンベアの上面の延長線上にX線発生器を配置し、X線発生器で発生したX線がコンベアを通過することなくコンベアの上面に沿って進むようにする必要がある。
【0006】
特許文献1に記載の従来のX線検査装置にあっては、ボールねじ等からなる高さ調整機構を装置の脚部等に設けることによって、コンベアに対するX線発生器の上下位置を相対的に調整することは可能になる。しかし、この場合、X線発生器を最適な高さに調整するためにユーザが何度も試行錯誤を行う必要があり、X線発生器の高さを容易に調整することができなかった。また、横照射型のX線検査装置として、コンベアを自機に備えず、生産設備の既設のコンベアに組み込んで用いられる組み込み型のX線検査装置が多くなっており、X線発生器の最適な高さ調整を容易に行うことがより求められている。
【0007】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、X線発生器の高さを容易に調整でき、被検査物の底部まで精度よく検査することができるX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るX線検査装置は、X線を発生するX線発生器と、X線を検出するX線検出器と、を備え、前記X線発生器と前記X線検出器とが、被検査物が載置される載置部材の上面に沿う幅方向に対向して配置され、前記X線検出器の複数の検出素子が前記載置部材の上面に直交する高さ方向に配列されたX線検査装置であって、前記X線発生器の高さ方向の位置を調整する高さ調整機構と、前記高さ調整機構を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記X線検出器で検出した前記検出素子配列方向の検出量の変化を示す波形に基づいて、前記X線発生器が発生するX線の発生位置の高さが前記載置部材の上面の延長線上に位置するように前記高さ調整機構を制御することを特徴とする。
【0009】
この構成により、検出素子配列方向のX線の検出量の変化を示す波形は、X線発生器と載置部材との位置関係ごとに異なるため、この波形に基づいてX線発生器の高さを最適位置に容易に調整することができる。また、X線発生器が最適位置にあるときは、被検査物の底部を通過するX線は載置部材を通過せずにX線検出器に検出されるため、被検査物の底部まで精度よく検査することができる。この結果、X線発生器の高さを容易に調整でき、被検査物の底部まで精度よく検査することができる。
【0010】
本発明に係るX線検査装置において、前記制御部は、前記波形において、所定の検出量範囲内で抽出される、前記X線発生器が発生するX線が前記載置部材を透過することにより前記検出量が低下する区間の長さに基づいて、前記載置部材の上面に対する前記X線発生器の前記高さ方向の位置を判定することを特徴とする。
【0011】
この構成により、検出量が低下する区間の長さは、載置部材の上面に対するX線発生器の高さ方向の位置と相関があるため、その区間の長さに基づいてX線発生器の高さ方向の位置を判定することで、X線発生器を最適位置に調整することができる。
【0012】
本発明に係るX線検査装置において、前記制御部は、前記高さ調整機構を制御して前記X線発生器の移動を開始する際に、前記区間の長さが短くなる方向に前記X線発生器を移動させることを特徴とする。
【0013】
この構成により、検出量が低下する区間の長さは、X線発生器が最適位置に近いほど短くなるため、X線検出器を確実に最適位置に向けて移動させることができる。
【0014】
本発明に係るX線検査装置において、前記制御部は、前記高さ調整機構を制御して、前記区間の長さが最も短くなる位置で前記X線発生器の移動を停止することを特徴とする。
【0015】
この構成により、検出量が低下する区間の長さが最も短くなる位置はX線発生器の最適位置であるため、X線発生器を確実に最適位置に調整することができる。
【0016】
本発明に係るX線検査装置は、前記載置部材に対する前記X線発生器の基準位置を表示する基準位置表示部材が、前記X線発生器と前記載置部材との間に設けられ、前記制御部は、前記高さ調整機構を制御して前記X線発生器の移動を開始する際に、前記基準位置より低い位置を移動開始位置として、前記X線発生器を上方向に移動させることを特徴とする。
【0017】
この構成により、X線発生器の高さ調整前は、基準位置表示部材で表示された基準位置と概ね同じ高さにX線発生器の高さが設定されているため、その基準位置より低い位置を移動開始位置としてX線発生器を上方向に移動させることにより、X線発生器を速やかに最適位置に移動させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、X線発生器の高さを容易に調整でき、被検査物の底部まで精度よく検査することができるX線検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態に係るX線検査装置の側面図である。
図2】(A)は、本発明の一実施の形態に係るX線検査装置のX線発生器が適正位置より高く配置された状態を示す側面図であり、(B)は、本発明の一実施の形態に係るX線検査装置のX線発生器が適正位置に配置された状態を示す側面図であり、(C)は、本発明の一実施の形態に係るX線検査装置のX線発生器が適正位置より低く配置された状態を示す側面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係るX線検査装置において、X線の輝度とX線検出器の画素番号との関係を表わす波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず構成について説明する。
【0021】
図1において、X線検査装置1は筐体4を備えている。筐体4は、被検査物Wを搬送するコンベア2に組み込まれている。コンベア2は、被検査物Wの生産設備の一部であり、X線検査装置1と別体に構成されている。このように、X線検査装置1は、別体のコンベア2に組み込まれる組み込み型のX線検査装置であり、図1で示すようなボトル搬送でよく使用されるトップチェーンコンベアやベルトコンベア等の被検査物Wを水平方向に搬送する既設のコンベアに組み込まれる。トップチェーンコンベアは、無端状のチェーンに複数のプレートを設けたものであり、被検査物Wがプレートの上面に載置されて搬送される。また、ベルトコンベアでは、被検査物Wがベルトの上面に載置されて搬送される。本実施例では、被検査物Wは、飲料容器と液体内容物からなる飲料ボトルである。
【0022】
X線検査装置1は、X線を発生するX線発生器9と、X線を検出するX線検出器10と、制御部40とを備えている。これらのX線発生器9、X線検出器10および制御部40は筐体4の内部に収納されている。
【0023】
X線発生器9およびX線検出器10は、コンベア2上の被検査物Wが搬送される搬送路3を挟むように、コンベア2の幅方向に対向して配置されている。
【0024】
X線発生器9は、その内部に設けられた図示しないX線管の陰極からの電子ビームを陽極のターゲットに照射させてX線を生成し、生成したX線を図示しないスリットによりX線の発生位置から略三角形状のスクリーン状に成形するようになっている。また、X線発生器9は、X線の発生位置からスクリーン状のX線照射野に成形したX線を、コンベア2上の搬送路3を幅方向に横切るようにして、X線検出器10に向けて照射するようになっている。
【0025】
X線検出器10は、複数の検出素子10Aをライン状に整列したX線ラインセンサからなる。X線検出器10の検出素子10Aは、図示しないフォトダイオードと、このフォトダイオード上に設けられた図示しないシンチレータとからなり、X線をシンチレータにより光に変換し、この光をフォトダイオードにより検出している。
【0026】
X線検出器10の複数の検出素子10Aは、コンベア2の上面を通る平面に直交する直線に沿って配置されている。本明細書では、各検出素子10Aおよび各検出素子10Aから得られた画像情報を画素という。図1において、検出素子10Aは、X線検出器10の下端側から1、2、3、・・・の画素番号を付して区別している。
【0027】
このように構成されたX線検出器10は、被検査物WがX線ラインセンサを通過することで被検査物Wを透過するX線の量(検出量)に応じたX線画像を出力する。X線検出器10は、図示しないA/D変換部を備えており、このA/D変換部によりフォトダイオードからの検出量をデジタルデータに変換するようになっている。
【0028】
なお、A/D変換部から出力されるデータは、検出量を示す輝度値により明暗で表されるX線画像(明暗画像)であってもよいし、輝度値を所望の濃度となるように変換した濃度値により濃淡で表されるX線画像(濃淡画像)であってもよい。また、本実施の形態ではX線画像から検出素子配列方向の検出量の変化を示す波形を求めるようにしているが、検出量のアナログデータから波形を求めるようにしてもよい。
【0029】
本実施の形態において、X線検査装置1は、生産ラインへの設置作業持に、X線発生器9のX線照射野がコンベア2の上方となるような高さに予め調整されている。
【0030】
X線検査装置1は、表示部5、設定操作部45および制御部40を備えている。表示部5は、平面ディスプレイ等から構成されており、ユーザに対する表示出力を行うようになっている。表示部5は、制御部40による検査結果等の画像を表示するようになっている。
【0031】
また、表示部5は、被検査物Wの良否判定結果を「OK」や「NG」等の文字または記号で表示するようになっている。また、表示部5は、総検査数、良品数、NG総数等の統計値を表示するようになっている。
【0032】
表示部5の表示内容および表示態様は、既定設定、または設定操作部45からの所定のキー操作による要求に基づいて決定される。
【0033】
設定操作部45は、制御部40への各種パラメータ等の設定入力を行うものである。設定操作部45は、ユーザが操作する複数のキーやスイッチ等で構成され、制御部40への各種パラメータ等の設定入力や動作モードの選択を行うものである。なお、表示部5と設定操作部45とをタッチパネル式表示器として一体化してもよい。X線検査装置1の動作モードとしては、例えば、被検査物Wの検査を行う通常の検査モードと、X線検査装置1の各種の調整や状態確認等を行うメンテナンスモードとがある。
【0034】
制御部40は、X線検出器10から受け取ったX線画像を一時的に記憶し、そのX線画像に対して各種の画像処理アルゴリズム等を適用して画像処理を施すようになっている。ここで、画像処理アルゴリズムは、複数の画像処理フィルタを組み合わせたものからなる。そして、制御部40は、画像処理を施したX線画像に対して、被検査物Wと異物との判別を行って異物の混入の有無を判定し、また、被検査物Wの形状の良否を判定するようになっている。
【0035】
また、制御部40は、X線検査装置1の全体を制御するようになっている。制御部40の制御内容には、被検査物Wの良否判定結果の統計処理に関する制御、表示部5の表示内容および表示形態に関する制御等が含まれる。
【0036】
ここで、図2(B)は、コンベア2に対してX線発生器9の高さ方向の位置を最適位置に設定した場合のX線照射状態を示している。コンベア2とX線発生器9との高さ方向の位置関係は、図2(B)に示すように、X線の発生位置からコンベア2の上面2Aに沿ってX線が進むように設定することが望ましい。このようにすることで、X線の発生位置からのX線が被検査物W(図1参照)とコンベア2の両方を通過してX線検出器10に到達してしまうことがなくなり、被検査物Wの底部まで精度よく検査を行うことができる。
【0037】
一方、図2(A)に示すようにX線発生器9を最適位置より高い位置に設定した場合、又は図2(C)に示すようにX線発生器9を最適位置より低い位置に設定した場合は、X線の発生位置からのX線が被検査物Wの底部とコンベア2の上面との両方を通過してX線検出器10に到達してしまい、被検査物Wの底部まで精度よく検査を行うことができない。
【0038】
本実施例のX線検査装置1は、設置作業持に装置の脚部の長さを作業者が調整すること等によって、コンベア2に対するX線発生器9の高さを設定できるようになっている。コンベア2に対するX線発生器9の高さは、コンベア2へのX線検査装置1の設置作業時に、X線発生器9によるX線照射野がコンベア2の上方となるように、X線検査装置1の高さを調整することで、調整することができる。ただし、この場合、X線発生器を最適な高さに調整するためにユーザが何度も試行錯誤を行う必要がある。
【0039】
このような事情に対し、本実施の形態では、X線検査装置1は、X線発生器9の高さ方向の位置を、図2(B)の最適位置に自動的に調整するようになっている。
【0040】
X線検査装置1は、X線発生器9の高さ方向の位置を調整する高さ調整機構60を備えている。高さ調整機構60は、X線発生器9を支持する図示しないボールねじと、このボールねじを駆動する図示しないモータと、を有している。高さ調整機構60は、モータが制御部40により制御されることにより、ボールねじがX線発生器9の高さ方向の位置を上下に変更するようになっている。
【0041】
ここで、X線検出器10で検出した検出素子配列方向の検出量の変化を示す波形は、コンベア2に対するX線発生器9の高さ方向の位置により異なるものとなる。図3に示すように、この波形は、X線発生器9が最適位置にある場合の波形L(B)と、X線発生器9が最適位置よりも高い位置にある場合の波形L(A)と、X線発生器9が最適位置よりも低い位置にある場合の波形L(C)とで異なる。この波形は、横軸が検出量、縦軸が最下端に位置する検出素子からの距離を表わすことになるが、本実施の形態ではX線画像から波形を求めるため、図3において、横軸は輝度を表わし、縦軸はX線検出器10の検出素子10Aの画素番号を表わしている。
【0042】
また、本実施の形態では複数の検出素子10Aにそれぞれ対応する画素が存在し、載置部材を透過することにより検出量が低下する区間の長さは、これらの画素の数で求めている。この区間の長さ、すなわち、コンベア2がX線画像に映り込む部分の画素の画素数(以下、映り込み部分の画素数という)は、X線発生器9が最適位置にある場合の波形L(B)では、N(B)で最も少なく、X線発生器9が最適位置よりも高い位置にある場合の波形L(A)またはX線発生器9が最適位置よりも低い位置にある場合の波形L(C)では、それぞれN(A)、N(C)となり、N(A)、N(C)はB(B)よりも多い。なお、所定の検出量範囲としての輝度範囲は、輝度がB1以上B2以下の範囲である。B1以上B2以下の輝度範囲は、輝度が高くなるほどコンベア2の映り込み部分の画素番号が大きくなる関係が保たれる輝度範囲となっている。
【0043】
N(A)は、波形L(A)における輝度B1、B2に対応する画素番号P(A)1とP(A)2の差分である。N(B)は、波形L(B)における輝度B1、B2に対応する画素番号P(B)1とP(B)2の差分である。N(C)は、波形L(C)における輝度B1、B2に対応する画素番号P(C)1とP(C)2の差分である。
【0044】
このように、X線発生器9が最適位置にある場合、X線がコンベア2の上面2Aに沿って進むため、映り込み部分の画素数は最も少なくなる。また、X線発生器9が最適位置より高くなるに従い、コンベア2の上面2Aをその上側から下側に斜めに横切るX線の幅が大きくなるため、映り込み部分の画素数は多くなる。同様に、X線発生器9が最適位置より低くなるに従い、コンベア2の上面2Aをその下側から上側に斜めに横切るX線の幅が大きくなるため、映り込み部分の画素数は多くなる。
【0045】
制御部40は、X線検出器10で検出したX線の検出素子配列方向のX線の検出量の変化を示す波形に基づいて、X線発生器9がコンベア2の上面2Aの延長線上に位置するように高さ調整機構60を制御する。
【0046】
詳しくは、制御部40は、X線検出器10で検出したX線の検出素子配列方向のX線の検出量の変化を示す波形における、複数の検出素子10Aにそれぞれ対応する複数の画素のうち、所定の輝度範囲内のコンベア2の映り込み部分の画素の画素数に基づいて、コンベア2の上面に対するX線発生器9の高さ方向の位置を判定する。
【0047】
制御部40は、高さ調整機構を制御してX線発生器9の移動を開始する際に、画素数が少なくなる方向にX線発生器を移動させる。そして、制御部40は、高さ調整機構60を制御してX線発生器9の移動を終了する際に、画素数が最も少なくなる位置でX線発生器9の移動を停止する。
【0048】
また、X線検査装置1は、基準位置表示部材6を備えており、この基準位置表示部材6は、コンベア2に対するX線発生器9の基準位置を表示する。基準位置表示部材6は、筐体4におけるX線発生器9とコンベア2との間に設けられている。本実施例では、筐体4における、コンベア2のX線発生器9側の面に、基準位置表示部材6が配置されている。ここで、基準位置とは、コンベア2へのX線検査装置1の設置作業持に、コンベア2に対するX線検査装置1の高さを設定する際の目安となる位置である。
【0049】
X線検査装置1の設置作業時に、作業者が、基準位置表示部材6により表示される基準位置とコンベア2の位置とが概ね等しい高さとなるように、X線検査装置1の高さを調整しておくことにより、X線発生器9を図2(B)の最適位置に近い位置に配置することができる。これにより、X線発生器9によるX線照射野をコンベア2の上方に容易に設定できる効果、およびX線検査装置1内の搬送路3からのX線の漏洩を防止する効果が得られる。
【0050】
また、制御部40は、高さ調整機構60を制御してX線発生器9の移動を開始する際に、基準位置より低い位置を移動開始位置として、X線発生器9を上方向に移動させる。これにより、高さ調整前のX線発生器9の位置が最適位置より高いのか低いのかを判別する必要をなくすことができ、X線発生器9をより速やかに最適に位置に調整できる。
【0051】
なお、基準位置表示部材6は省略することもできる。制御部40は、基準位置表示部材6が設けられていない場合は、X線発生器9の移動を開始する際に、画素数が少なくなる方向にX線発生器を移動させ、基準位置表示部材6が設けられている場合は、X線発生器9の移動を開始する際に、基準位置より低い位置を移動開始位置として、X線発生器9を上方向に移動させる。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態のX線検査装置1は、X線発生器9の高さ方向の位置を調整する高さ調整機構60と、高さ調整機構60を制御する制御部40と、を備えており、制御部40は、X線検出器10で検出した検出素子配列方向の検出量の変化を示す波形に基づいて、X線発生器9が発生するX線の発生位置の高さがコンベア2の上面の延長線上に位置するように高さ調整機構60を制御する。
【0053】
この構成により、検出素子配列方向のX線の検出量の変化を示す波形は、X線発生器9とコンベア2との位置関係ごとに異なるため、この波形に基づいてX線発生器9の高さを最適位置に容易に調整することができる。また、X線発生器9が最適位置にあるときは、被検査物Wの底部を通過するX線はコンベア2を通過せずにX線検出器10に検出されるため、被検査物Wの底部まで精度よく検査することができる。この結果、X線発生器9の高さを容易に調整でき、被検査物Wの底部まで精度よく検査することができる。
【0054】
本実施の形態のX線検査装置1において、制御部40は、波形において、所定の検出量範囲内で抽出される、X線発生器9が発生するX線がコンベア2を透過することにより検出量が低下する区間の長さに基づいて、コンベア2の上面に対するX線発生器9の高さ方向の位置を判定する。
【0055】
この構成により、検出量が低下する区間の長さは、コンベア2の上面に対するX線発生器9の高さ方向の位置と相関があるため、その区間の長さに基づいてX線発生器9の高さ方向の位置を判定することで、X線発生器9を最適位置に調整することができる。
【0056】
本実施の形態のX線検査装置1において、制御部40は、高さ調整機構を制御してX線発生器9の移動を開始する際に、区間の長さが短くなる方向にX線発生器9を移動させる。
【0057】
この構成により、検出量が低下する区間の長さは、X線発生器9が最適位置に近いほど短くなるため、X線発生器9を確実に最適位置に向けて移動させることができる。
【0058】
本実施の形態のX線検査装置1において、制御部40は、高さ調整機構60を制御して、区間の長さが最も短くなる位置でX線発生器9の移動を停止する。
【0059】
この構成により、検出量が低下する区間の長さが最も短くなる位置はX線発生器9の最適位置であるため、X線発生器9を確実に最適位置に調整することができる。
【0060】
本実施の形態のX線検査装置1において、コンベア2に対するX線発生器9の基準位置を表示する基準位置表示部材6が、X線発生器9とコンベア2との間に設けられている。そして、制御部40は、高さ調整機構60を制御してX線発生器9の移動を開始する際に、基準位置より低い位置を移動開始位置として、X線発生器9を上方向に移動させる。
【0061】
この構成により、X線発生器9の高さ調整前は、基準位置表示部材で表示された基準位置と概ね同じ高さにX線発生器9の高さが設定されているため、その基準位置より低い位置を移動開始位置としてX線発生器9を上方向に移動させることにより、X線発生器9を速やかに最適位置に移動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明に係るX線検査装置は、X線発生器の高さを容易に調整でき、被検査物の底部まで精度よく検査することができるという効果を有し、被検査物の異物の有無や欠陥等について検査するX線検査装置として有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 X線検査装置
2 コンベア(載置部材)
2A 上面
6 基準位置表示部材
9 X線発生器
10 X線検出器
10A 検出素子
40 制御部
60 高さ調整機構
W 被検査物
図1
図2
図3