【解決手段】残材7の上面に置かれた製品6を検出するシート検出方法は、照明工程と、撮影工程と、影検出工程と、シート検出工程と、を含む。照明工程では、残材7の上面より高い位置から製品6の側面に向けて光を照射する。撮影工程では、光が照射されている状態の製品6を、製品6の上方に配置されたカメラ51で撮影する。影検出工程では、撮影工程で得られた画像データから、残材7の上面に生じている影を検出する。重なり検出工程では、影検出工程で検出した影に基づいて、残材7の上面に置かれた製品6を検出する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザ加工システム1の全体的な構成を示す斜視図である。
図2は、レーザ加工システム1の斜視図である。
図3は、レーザ加工装置10の受渡しポート12周辺の構成を示す斜視図である。
【0033】
図1に示すレーザ加工システム(シート加工システム)1は、加工対象物である金属板5に対しレーザ切断加工を行うように構成されている。レーザ加工システム1は、レーザ加工装置10と、貯蔵装置20と、搬送装置30と、重なり検出装置50と、を備える。
【0034】
レーザ加工装置10は、供給された金属板5に対してレーザ光を照射して溶融させることにより、所望の形状に切断する。このレーザ加工により、金属板5から製品6を切り抜いて得ることができる。本明細書で、「製品」には、完全な製品でない半製品の場合も含む。切断の輪郭は任意に設定することができるので、1つの金属板5から1つの製品6を作ることもできるし、2つ以上の製品6を作ることもできる。1つの金属板5から2つ以上の製品6を作る場合、製品同士が同一形状であっても良いし、互いに異なる形状であっても良い。
【0035】
図1の中央部には、レーザ加工装置10によって切断加工が行われた後の金属板5が描かれている。レーザ加工装置10は、製品6と、残りの不要な部分(残材7)と、を繋ぐ小さなジョイント部分を形成するように金属板5に対して切断加工を行うこともできるが、本実施形態では、ジョイント部分を形成しないジョイントレス加工が行われる。金属板5は金属によりシート状に形成されているので、これを切断して得られた製品6及び残材7もシートであるということができる。ジョイントレス加工を行う場合、製品6と残材7とが最初から完全に分離されているため、ジョイント部の切離し工程等を省略して工程を簡素化できる点で有利である。
【0036】
レーザ加工装置10は、筐体11と、受渡しポート12と、を備える。
【0037】
筐体11は中空状に構成されており、この内部で金属板5に対するレーザ加工が行われる。筐体11の内部には、レーザ照射機構が配置されている。レーザ照射機構は、レーザ光を照射するレーザヘッド13と、このレーザヘッド13を水平面に沿って移動可能に支持する図略の移動機構と、を備える。
【0038】
レーザヘッド13は、指定された軌跡を描いて水平に移動しながら下向きにレーザ光を照射することで、下方に位置する金属板5を切断することができる。
【0039】
レーザヘッド13は、加工を補助する適宜のガス(アシストガス)を吹き付ける図略のノズルを備える。レーザ光を照射した箇所に対してノズルからガスを吹き付けることで、溶融した金属を吹き飛ばして除去し、加工効率を上げることができる。
【0040】
図1及び
図2に示すように、受渡しポート12は、筐体11に隣接して配置されている。レーザ加工装置10は、受渡しポート12を介して、加工前又は加工後の金属板5を外部との間で受け渡すことができる。
【0041】
図1及び
図3に示すように、レーザ加工装置10は、金属板5を水平な状態で上に載せることが可能な加工パレット14を備える。加工パレット14は水平な矩形平板状に形成されている。加工パレット14は図示しない移動機構を介して水平方向にスライド移動可能に設けられており、筐体11の内部と、受渡しポート12と、の間で移動することができる。また、加工パレット14は図示しない昇降機構を介して上下方向に移動可能に構成されている。
【0042】
レーザヘッド13による切断加工は、加工パレット14が筐体11の内部の所定の場所に移動した状態で、加工パレット14に載せられた状態の金属板5に対して行われる。即ち、加工パレット14は、切断加工時の金属板5の支持台として機能する。
【0043】
図3に示すように、加工パレット14の上部には、細長い板状に形成された支持プレート15が適宜の間隔をあけて複数配置されている。支持プレート15の上端部は、上向きに尖った尖り部が多数並んだ形状となっている。これにより、加工パレット14が金属板5に下から接触する接触面積を小さくして、レーザ加工時の溶着を抑制することができる。
【0044】
図1等に示す貯蔵装置20は、レーザ加工前の金属板5、レーザ加工後の製品6及び残材7を貯蔵することができる。貯蔵装置20は、上下方向に並べられた複数の棚21を備える。それぞれの棚21には、加工前の金属板5、加工後の製品6、又は残材7を、上下方向に複数重ねた状態で置くことができる。
【0045】
貯蔵装置20において、それぞれの棚21は、水平方向に移動可能に支持されている。
図1には、選択された1つの棚21が水平方向に移動して引き出された状態が二点鎖線で示されている。搬送装置30は、棚21が引き出された状態で、当該棚21に載った金属板5を取り出したり、レーザ加工装置10での切断加工により得られた製品6又は残材7を棚21に載せたりすることができる。
【0046】
搬送装置30は、貯蔵装置20からレーザ加工前の金属板5を取って、受渡しポート12にある加工パレット14まで搬送する。これにより、貯蔵装置20に貯蔵されている金属板5をレーザ加工装置10に供給することができる。一方、搬送装置30は、受渡しポート12にある後述のスライドフォーク42から、レーザ加工後の製品6及び残材7を取って、それぞれ貯蔵装置20まで搬送する。これにより、製品6及び残材7を貯蔵装置20に貯蔵することができる。
【0047】
搬送装置30は、分離された製品6及び残材7を仕分けして、それぞれ貯蔵装置20の所定の棚21まで搬送する。これにより、製品6だけ(残材7だけ)を取りまとめて整理することができ、後工程の簡素化を実現することができる。
【0048】
搬送装置30は、例えば
図1に示すように、水平レール31と、スライダ32と、垂直レール33と、搬送ヘッド34と、を備える。
【0049】
水平レール31は、直線状に細長く形成され、受渡しポート12より高い位置で水平に架設されている。水平レール31は、平面視でその長手方向と垂直な方向に移動可能に支持されている。
【0050】
スライダ32は、水平レール31に支持されている。スライダ32は、水平レール31の長手方向に沿って移動可能となっている。
【0051】
垂直レール33は、直線状に細長く形成され、その長手方向が上下方向となるようにスライダ32に支持されている。垂直レール33は、スライダ32に対して上下方向に移動可能となっている。
【0052】
搬送ヘッド34は、垂直レール33の下端部に固定されている。
図4に示すように、搬送ヘッド34の下面には、保持部材としてのグリッパ35が複数配置されている。それぞれのグリッパ35は、下方に向けられている。このグリッパ35により、搬送対象物(即ち、加工前の金属板5、加工後の製品6又は残材7)を保持することができる。グリッパ35は、例えば真空吸着式やクランプ式とすることができるが、これに限定されない。
【0053】
搬送装置30は図略の複数のモータを備える。このモータを適宜駆動することにより、水平レール31及びスライダ32を水平方向に移動させたり、搬送ヘッド34を垂直方向に移動させたりすることができる。
【0054】
この構成で、搬送装置30は、搬送対象物の直上方までスライダ32を移動させた後、スライダ32に支持される搬送ヘッド34を下降させる。やがて、グリッパ35が搬送対象物の上面に接触するので、その状態でグリッパ35を動作させて搬送対象物を保持する。その後、搬送装置30は、搬送ヘッド34とともに搬送対象物を上昇させ、目的の場所までスライダ32を移動させる。搬送先の直上方までスライダ32が移動した後、搬送装置30は、搬送ヘッド34を適宜の高さまで下降させ、グリッパ35による保持を解除する。以上により、搬送装置30による搬送を実現することができる。
【0055】
搬送装置30は、加工後の製品6又は残材7の搬送を円滑に行うための搬送補助装置41を備える。
【0056】
図3に示すように、搬送補助装置41は、棒状部材43を適宜の間隔をあけて水平に複数並べた構成のスライドフォーク42を備える。それぞれの棒状部材43は何れも、水平に向けられた状態で片持ち支持されている。平面視で、棒状部材43の長手方向は、加工パレット14における支持プレート15の長手方向と平行である。複数の棒状部材43が配置される間隔は、支持プレート15が配置される間隔と実質的に等しくなっている。
【0057】
スライドフォーク42は、図示しない適宜の移動機構を介して、棒状部材43の長手方向と平行な向きで移動可能に支持されている。移動機構は、図略のモータを備える。このモータは、スライドフォーク42を、
図1のようにそれぞれの棒状部材43が受渡しポート12の上方にある位置と、
図3のように棒状部材43が受渡しポート12から退避した位置と、の間で水平に移動させることができる。この移動に伴って、スライドフォーク42の棒状部材43は、支持プレート15の間に差し込まれた位置と、支持プレート15から抜けた位置と、の間で移動する。
【0058】
この構成で、加工パレット14が受渡しポート12と筐体11の内部との間で移動するときは、スライドフォーク42は
図3に示すように受渡しポート12から退避した状態となっている。加工パレット14に載せられた金属板5がレーザ加工装置10によって加工されて、受渡しポート12へ搬送されると、スライドフォーク42が
図3の位置から移動し、加工済みの金属板5(製品6及び残材7)の下に棒状部材43が差し込まれる。この状態で加工パレット14が下降することで、金属板5はスライドフォーク42上に載った状態となり、金属板5と支持プレート15との接触が解除される。こうして、金属板5は加工パレット14からスライドフォーク42に載せ替えられる。これにより、レーザ加工に伴って製品6又は残材7が支持プレート15の上端部と溶着していた場合でも、その溶着を切り離すことができるので、搬送装置30による製品6又は残材7の搬送を円滑に行うことができる。
【0059】
なお、スライドフォーク42は上記した構成に限定されない。例えば、スライドフォーク42が加工パレットの下方に配置されており、棒状部材43が上下動することで、支持プレート15の間に差し込まれた位置と、支持プレート15から抜けた位置と、の間で移動する構成であってもよい。
【0060】
ところで、本実施形態のレーザ加工システム1では、製品6と残材7とを完全に分離するジョイントレス加工が行われる。従って、レーザ加工装置10においてレーザ切断加工がされるときに、金属板5に吹き付けられるアシストガスにより製品6が動いて、残材7の上に載ってしまう可能性がある。また、受渡しポート12において加工パレット14を下降させ、加工パレット14からスライドフォーク42に製品6及び残材7を載せ替える過程で、製品6が動いて残材7の上に載ってしまう可能性がある。製品6が動いて残材7の上に重なってしまうと、搬送装置30による製品6又は残材7の取出しに失敗し、搬送装置30を用いて搬送を自動で行う際の障害となる。
【0061】
そこで、本実施形態のレーザ加工システム1は重なり検出装置50を備える。この重なり検出装置50は、残材7の上面に置かれている製品6を検出できるように構成されている。
【0062】
図4及び
図5を参照して、重なり検出装置50の構成を詳細に説明する。
図4は、重なり検出装置50の構成を示す斜視図である。
図5は、重なり検出装置50の電気的構成を示すブロック図である。
【0063】
図4に示すように、重なり検出装置50は、カメラ(撮影装置)51と、ライトユニット(照明部)52と、制御装置54と、を備える。
【0064】
カメラ51は、CCDやCMOS等の画像センサにレンズを取り付けて構成されており、搬送ヘッド34の下面中央に下向きに取り付けられている。カメラ51は、スライドフォーク42に載った状態の製品6及び残材7を上方から撮影して、静止画の画像を取得することができる。
図5には、残材7の上に重なった製品6がライト57で照明され、カメラ51で撮影される様子が概念的に描かれている。
【0065】
カメラ51は制御装置54と電気的に接続されている。カメラ51は、撮影した画像を、画素がマトリクス状に並んだラスタデータとして制御装置54に出力する。
【0066】
ライトユニット52は、
図4等に示すように、水平な矩形枠状のライトフレーム56に4つのライト57が固定された構成となっている。ライトフレーム56は、搬送ヘッド34に吊下げ状に支持されている。ライトフレーム56は昇降可能に構成されており、図示しないモータによって、
図3のように搬送ヘッド34とほぼ同じ高さまで上昇させたり、
図4のように製品6及び残材7より少しだけ高い位置まで下降させたりすることができる。
【0067】
ライト57は、製品6及び残材7を照明する。ライトユニット52は、ライトフレーム56の矩形の4辺に対応するように、4つのライト57を備える。4つのライト57は、細長い線状の光源として構成されており、その長手方向は、カメラ51による撮影領域を示す矩形の4辺と実質的に平行になっている。更に好ましくは、ライト57の長手方向は、加工パレット14に置かれる金属板5の4辺と平行になっている。
【0068】
ライト57の構成は様々に考えられるが、例えば、多数のLEDを直線状に並べたものを用いることができる。それぞれのライト57は、制御装置54に電気的に接続されている。制御装置54は、4つのライト57の点灯/消灯を個別に制御することができる。
【0069】
それぞれのライト57は、ライトフレーム56の内面に固定されている。4つのライト57の光軸は何れも、ライトフレーム56の内部空間の中央をほぼ向いているが、水平面(言い換えれば、残材7の上面)に対して
図6に示す小さな角度θをなすように斜め下向きとなっている。カメラ51は、対向して配置される2組のライト57の間を通して、製品6及び残材7を撮影することができる。
【0070】
製品6が残材7の上面(平面)に置かれている場合、ライトフレーム56を十分に下降させた状態では、残材7の上面より少し高い位置のライト57から、製品6の側面に光が照射される。ライト57の光軸を水平に近い向きとすることにより、製品6を上方からカメラ51で撮影する場合に、影を明確に形成することができる。
【0071】
図6に示す角度θは任意であり、0°であっても良い。ただし、角度θは、1°以上かつ5°以下であることが好ましい。角度θの下限を1°以上とすることにより、撮影される製品6の上面の明るさをある程度確保して、影とのコントラストを明確にすることができる。また、角度θの上限を5°以下とすることにより、製品6又は残材7の上面で反射した照明光が上方のカメラ51に直接入射しにくくなるので、良好な撮影画像を取得することができる。また、角度θの上限が5°以上であると、金属板において照明に近い側と遠い側とで明暗差が大きくなりすぎて影検出には好ましくないことを、本件発明者らによる実験により確認できている。なお、上記した好ましい角度θの上限は、ライト57の照明光の拡散特性と撮影範囲までの距離によって変動するパラメータである。
【0072】
制御装置54は、小型のコンピュータとして構成されており、搬送ヘッド34の適宜の位置に取り付けられている。制御装置54は、ライト57の制御、カメラ51による撮影画像の取得、及び製品6の重なりの検出を行う。
【0073】
図5に示すように、制御装置54は、照明制御部61と、カメラ制御部62と、画像記憶部63と、エッジ検出部64と、影検出部65と、重なり検出部(シート検出部)66と、を備える。
【0074】
具体的には、制御装置54は公知のコンピュータにより構成されており、CPU、ROM、及びRAMを備える。ROMに記憶されるプログラムには、本実施形態のレーザ加工システム1で行われる製品重なり検出方法(シート検出方法)を制御装置54によって実現するための製品重なり検出プログラム(シート検出プログラム)が含まれている。
【0075】
製品重なり検出方法は、照明工程と、撮影工程と、影検出工程と、重なり検出工程(シート検出工程)と、を含んでいる。従って、製品重なり検出プログラムは、それぞれの工程に対応して、照明ステップと、撮影ステップと、影検出ステップと、重なり検出ステップ(シート検出ステップ)と、を含んでいる。上記のハードウェアとソフトウェアとの協働により、制御装置54を、照明制御部61、カメラ制御部62、画像記憶部63、エッジ検出部64、影検出部65、及び重なり検出部66として動作させることができる。
【0076】
照明制御部61は、カメラ51により撮影が複数回行われる際に、照明条件を撮影ごとに変化させるように、それぞれのライト57の点灯/消灯を制御する。これにより、製品6の側面に光を照射する照明工程が実現される。具体的に説明すると、照明制御部61は、撮影時には4つのライト57のうち選択された1つだけを点灯し、その他の3つのライト57は消灯させる。また、照明制御部61は、1回の撮影ごとに、点灯するライト57の選択をそれぞれ異ならせる。これにより、カメラ51は、同じ場所を4回撮影して、照明光の方向が画像の左から右、上から下、右から左、下から上、となる4通りの画像データを得ることができる。
【0077】
カメラ制御部62は、カメラ51が製品6及び残材7を、同じ場所で4回撮影するように制御する。これにより、光が側面に照射される製品6を撮影する撮影工程が実現される。カメラ制御部62は、撮影によりカメラ51が取得した4つの画像データを入力し、画像記憶部63に記憶する。
【0078】
図7には、カメラ51での4回の撮影時に4つのライト57の何れを点灯/消灯するかの例が示されている。ライトユニット52を構成する4つのライト57は、光を照射する方向が平面視で90°ずつ異なるように配置されている。照明制御部61はライトユニット52を制御し、4回のタイミングに分けて、4つのライト57を1つずつ点灯させる。言い換えれば、ライトユニット52は、平面視で90°ずつ異なる4つの方向から1つずつ選んだ方向で光を照射する。
【0079】
図8(a)には、残材7の上に製品6を重ねた状態で撮影した画像の例が示されている。
図8(a)の画像では、照明光の方向は左から右となっている。
【0080】
図5の画像記憶部63は、カメラ制御部62で取得した画像、及び、後述のエッジ画像等を記憶する。
【0081】
エッジ検出部64は、画像記憶部63に記憶されている4つの画像データに対してフィルタ処理をそれぞれ行うことで、画像の輝度が急激に変化している部分(エッジ)を検出する。
【0082】
平面の上にシート(例えば、金属シートである製品6)が乗っている場合、その周囲に、高さ方向での段差が生じる。この段差に対してほぼ水平方向に光を当てた場合、シートを上方から撮影した画像には、当該段差を境界として画素の輝度が急激に変化する傾向がある。逆に考えれば、画像のうち輝度が急激に変化する画素があれば、その位置に、そのような段差が生じている可能性がある。本実施形態において、エッジ検出部64は公知のソーベルフィルタを利用しているが、用いるフィルタ処理はこれに限定されない。
【0083】
図8(b)は、
図8(a)の撮影画像に対してソーベルフィルタを適用し、計算結果が所定の閾値より大きい画素を、黒い画素で示している。このように、適宜のエッジ検出処理を行うことで、輝度の変化が急激な部分をエッジとして検出することができる。
【0084】
図9の拡大図に示すように、レーザ加工により金属板5を切断した断面においては、製品6の上面に近い部分は溶融により丸くなっているものの、その丸みを帯びた部分6aの面積は比較的小さく、鋭く落ち込む部分6bの面積が比較的大きくなっている。このとき、
図9のようにライト57の光軸が水平に近くなるように設定した場合、当該反射光57rの向きは垂直に近くなるので、カメラ51を製品6から遠ざけることによって、この反射光57rを一定程度捉え易くなる。
【0085】
これに対して、
図6には、カメラ51と製品6との距離を異ならせた2つの場合が示されている。本実施形態の影を利用したエッジ検出方法によれば、カメラ51を、
図6の実線で示すように、被写体である製品6及び残材7との距離が大きくなるように配置してもよいし、
図6の一点鎖線で示すように、被写体である製品6及び残材7との距離が小さくなるように配置しても構わない。即ち、カメラ51を上方に遠ざけ過ぎると、照明の取付けのための機構が大型化するが、本実施形態の影を利用したエッジ検出方法によれば、その必要がない。
【0086】
図8(b)の例では、矩形の製品6において照明が当たっている側の辺(左辺)の輪郭が、反対側の辺(右辺)の輪郭と比較して、エッジとしてあまり明確に検出できていない。しかしながら、カメラ51を製品6から更に上方へ離して撮影すれば、照明が当たっている側の辺の輪郭もより明確にエッジとして検出できるものと期待できる。
【0087】
図5に示す影検出部65は、4つの画像データにおいて検出されたエッジを境界として、点灯しているライト57から遠い側に検出している影を、エッジを挟んで位置する画素の輝度を比較することにより検出する。
【0088】
図10は、
図8(a)の画像の一部を拡大したものであり、当該画像からエッジとして検出された画素のうち注目した画素(後述の注目エッジ画素)が白いハッチングで示されている。影検出部65は、注目画素の左側(点灯しているライト57に近い側)に位置する10画素と、右側(点灯しているライト57から遠い側)に位置する10画素と、の輝度の差を、両者の平均値を比較することにより求める。
【0089】
図10において照明光の方向は左から右であり、左側の10画素と比較して、右側の10画素が暗くなっている。影検出部65は、輝度の差が所定以上であれば、当該部分に影があると判定する。なお、照明光の方向が例えば上から下の場合は、注目画素の上側の10画素と、下側の10画素と、の輝度の平均値を比較することになる。
【0090】
重なり検出部66は、影検出部65の検出結果に基づいて、製品6が残材7に重なっているか否かを検出する。具体的には、影検出部65が影を検出していれば、製品6が重なっていると判定し、検出していなければ、製品6が重なっていないと判定する。
【0091】
次に、
図11及び
図12を参照して、制御装置54のエッジ検出部64、影検出部65、及び重なり検出部66が行う処理を具体的に説明する。
図11及び
図12は、重なり検出装置50において行われる処理を示すフローチャートである。
【0092】
なお、
図11及び
図12に示すフローがスタートする前に照明工程及び撮影工程が完了しており、4つの画像データが画像記憶部63に既に記憶されているものとして説明する。
【0093】
先ず、制御装置54のエッジ検出部64は、4つのライト57を1つずつ点灯させてカメラ51で撮影することにより得られた画像を画像記憶部63から読み込む(ステップS101)。なお、カメラ51により得られた4つの画像に対しては、レンズ歪を修正する公知の補正処理が事前に行われる。それぞれの画像において画素がマトリクス状に並べられる方向は、平面視でそれぞれのライト57が光を照射する方向と、実質的に平行となっている。
【0094】
次に、エッジ検出部64は、4つの画像それぞれについて、ソーベルフィルタを用いたエッジ検出を行う(ステップS102)。これにより、例えば
図8(b)に示すような画像が得られる。
【0095】
次に、エッジ検出部64は、エッジ検出により得られたエッジの画素同士が隣接するグループを検出する(ステップS103)。このグループの検出の方法としては、公知のラベリング処理を用いれば良い。この結果、製品6のエッジ71や平面の傷72がエッジとして認識される。
【0096】
図8(b)のエッジ検出結果において、中央より少し右に位置する縦に細長い形の画素のグループ(エッジ候補71)は、
図8(a)の画像における製品6の輪郭の右辺に相当している。このように、検出するエッジが製品6の輪郭に対応したものである場合、エッジの画素グループが細長く連続する傾向がある。これを利用して、エッジ検出部64は、それぞれのグループにおいて、画素が連続する長さ(連続長さ)を計算し、所定の画素数以上の連続長さを有するグループだけを抽出し、輪郭画素グループとして(製品6の輪郭の候補として)認定する(
図11のステップS104)。これにより、後述の影の有無を判定するステップにおける候補の数を減らすことができる。
【0097】
エッジ検出部64は、輪郭画素グループの検出処理(ステップS102〜S104)を、4つの画像のそれぞれを対象として行う。輪郭画素グループは、1つの画像につき1又は複数得られる場合もあるし、全く得られない場合もある。
【0098】
次に、影検出部65は、エッジ検出部64により得られた全ての輪郭画素グループについて、フローチャートのステップS105〜S111で示す処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0099】
ステップS105で、影検出部65は、輪郭画素グループに属する1つの画素(注目エッジ画素)を選択するとともに、元の画像を調べ、撮影時に点灯していたライト57に近い側で直線状に隣接する10個の画素について、輝度の平均値を計算する。また、注目エッジ画素に対し、撮影時に点灯していたライト57から遠い側で直線状に隣接する10個の画素について、輝度の平均値を計算する。
【0100】
図10は、元の画像において検出された輪郭画素グループに属する注目エッジ画素について、輝度が調べられる左側の10画素と、右側の10画素と、の位置関係を示している。注目エッジ画素の部分で段差が生じているので、ライト57から遠い右側に影が形成され、右側の画素が暗くなっている。
【0101】
次に、影検出部65は、画素の輝度の平均値の差が所定以上であるか否かを判定する(ステップS106)。
【0102】
ステップS106の判断で、平均値の差が所定以上である場合、影検出部65は、画素の輝度が低い側が製品6の内側であるか外側であるかを判定する(ステップS107)。これは、製品6が残材7の上に載っている場合、撮影画像では、製品6の輪郭の内側でなく外側(即ち、残材7の上面)に影が生じるはずだからである。この判定は、例えば、製品6の内側/外側を定義するマスク画像を事前に用意しておくことで、容易に行うことができる。影検出部65は、ステップS107の判断により、製品6の輪郭よりも内側の画素の輝度が低くなっている場合を影の検出対象から除外している。
【0103】
ステップS107の判断で、画素の輝度の低い側が製品6の外側にある場合は、影検出部65は、当該注目エッジ画素を、影に隣接するエッジ画素であると認定する(ステップS108)。以下、影に隣接すると認定されたエッジ画素を影隣接画素と呼ぶことがある。
【0104】
ステップS106の判断で平均値の差が所定未満であった場合、又は、ステップS107の判断で画素の輝度の低い側が製品6の内側にあった場合は、ステップS108の処理は行われない。
【0105】
影検出部65は、ステップS105〜S108の処理を、対象の輪郭画素グループに属する全ての画素について反復する(ステップS109)。
【0106】
対象の輪郭画素グループに属する全ての画素について、影に隣接するか否かの判定が終了すると、影検出部65は、当該輪郭画素グループの全ての画素に対する影隣接画素の割合を計算して、所定の比率以上であるか否かを判定する(
図12のステップS110)。この比率は適宜に定めて良いが、例えば90%とすることができる。影隣接画素が所定の比率以上を占めていた場合、影検出部65は、その輪郭画素グループを、影を伴う輪郭画素グループと認定する(ステップS111)。例えば、
図8の例では、エッジ候補71については影を伴う輪郭画素グループとして認定される一方、エッジ候補72については認定されない。こうして、製品6の輪郭と板材上の傷とを区別することができる。
【0107】
影検出部65は、ステップS105〜S111の処理を、全ての輪郭画素グループについて反復する(ステップS112)。
【0108】
全ての輪郭画素グループについて、影を伴うか否かの判定が終了すると、重なり検出部66は、影を伴う輪郭画素グループが1つ以上存在するか否かを判断する(ステップS113)。影を伴う輪郭画素グループが1つ以上存在した場合、重なり検出部66は、製品6が残材7の上に重なっていると判定する(ステップS114)。影を伴う輪郭画素グループがない場合、重なり検出部66は、製品6が残材7の上に重なっていないと判定する(ステップS115)。何れの場合であっても、処理は終了する。
【0109】
制御装置54は、製品6の重なりを検出した場合、レーザ加工システム1を統括して制御する上位の制御装置に異常信号を送信する。レーザ加工システム1の制御装置は、搬送装置30による製品6又は残材7の取り出しを中止し、製品6に重なりが生じている旨を周囲に報知する。これにより、オペレータは、異常に早期に気付いて適切な対応をとることができる。
【0110】
重なり検出装置50の検出対象である製品6は、シート状の金属板5を切断することにより形成される。従って、製品6の上面(又は、残材7の上面)は平坦な金属面となっており、光が反射し易い。照明光が製品6の上面等で反射してカメラ51に入ると、撮影画像に白飛びが生じ、影の検出に悪影響が生じるおそれがある。この点、本実施形態では、ライトユニット52が、製品6の側面に向けて光を照射するように構成されている。従って、カメラ51の撮影画像の品質低下を防止でき、製品6の重なりを安定して検出することができる。
【0111】
以上に説明したように、本実施形態では、照明工程と、撮影工程と、影検出工程と、重なり検出工程と、を含む方法によって、残材7の上面に置かれた製品6を検出する。照明工程では、残材7の上面より高い位置から製品6の側面に向けて光を照射する。撮影工程では、光が照射されている状態の製品6を、製品6の上方に配置されたカメラ51で撮影する。影検出工程では、撮影工程で得られた画像データから、残材7の上面に生じている影を検出する。重なり検出工程では、影検出工程で検出した影に基づいて、残材7の上面に置かれた製品6を検出する。
【0112】
また、本実施形態の重なり検出装置50は、残材7の上面に置かれた製品6を検出する。重なり検出装置50は、ライトユニット52と、カメラ51と、影検出部65と、重なり検出部66と、を備える。ライトユニット52は、残材7の上面より高い位置から製品6の側面に向けて光を照射する。カメラ51は、光が照射されている状態の製品6を、製品6の上方から撮影する。影検出部65は、カメラ51が出力する画像データから、残材7の上面に生じている影を検出する。重なり検出部66は、影検出部65で検出した影から、残材7の上面に置かれた製品6を検出する。
【0113】
これにより、製品6の側面に光を照射するように照明することで、製品6の上面に反射した照明光がカメラ51に入りにくくなり、影を利用したコンピュータによる画像処理アルゴリズムにより製品6を検出するために適した良好な画像データを取得することができる。この結果、製品6の重なりを精度良く検出することができる。
【0114】
また、本実施形態において、照明工程では、平面視で方向が異なる4つの方向で光を照射する。照明工程では、ある方向で光を照射した後のタイミングで、それとは異なる方向で光を照射する。
【0115】
これにより、製品6が影を形成する方向を異ならせた複数の画像データを順次取得できるので、製品6が残材7の上面に載った状態を精度良く検出することができる。
【0116】
また、本実施形態において、照明工程では、複数のタイミングに分けて、平面視で90°ずつ異なる4つの方向全てで光を照射する。
【0117】
これにより、製品6が多様な方向に影を形成した画像データを取得することができる。
【0118】
また、本実施形態において、照明工程では、4回のタイミングに分けて、平面視で90°ずつ異なる4つの方向から1つずつ選んだ方向で光を照射する。
【0119】
これにより、製品6が4方向のそれぞれに影を形成した画像データを取得することができる。また、各回で得られる画像データにおける影が濃くなるので、製品6の検出を確実に行うことができる。
【0120】
また、本実施形態において、ライト57の光軸と、残材7の上面と、がなす角度θが1°以上かつ5°以下である。
【0121】
これにより、製品6の上面の明るさをある程度確保して、影とのコントラストを明確にすることができる。また、製品6又は残材7の上面で反射した照明光がカメラ51に直接入射しにくくすることができる。
【0122】
また、本実施形態においては、金属からなるシート状の製品6を検出するように構成されている。
【0123】
即ち、本実施形態の検出方法は、照明光が上面で反射し易い金属製のシートを検出するのに特に好適である。
【0124】
また、本実施形態においては、残材7の上に重なっている製品6を検出するように構成されている。
【0125】
これにより、シート状の物同士の重なりを良好に検出することができる。
【0126】
また、本実施形態においては、金属板5に対してジョイントレス加工を行う加工工程後に、残材7の上に重なっている製品6を検出している。
【0127】
即ち、本実施形態の検出方法は、ジョイントレス加工により製品6と残材7とが完全に分離し、製品6が残材7の上に重なり易くなっている状況において特に好適である。
【0128】
次に、上記実施形態の2つの変形例を説明する。なお、これらの変形例の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0129】
図13に示す第1変形例は、4つのライト57の点灯及び消灯の組合せが、上述の実施形態(
図7(b))と異なっている。
図13に示すように、平面視で90°ずつ異なる4つの照明方向のうち、最初のタイミングで、互いに90°異なる2つの方向で同時に照明しながらカメラ51で撮影し、次のタイミングで、残りの2つの方向で同時に照明しながらカメラ51で撮影することもできる。この場合、画像データの数を4つから2つに減らすことができ、処理を簡単にすることができる。また、撮影回数も減らすことができるので、処理を高速化できる。
【0130】
以上に説明したように、本変形例において、照明工程では、互いに90°異なる2つの方向で同時に光を照射した後のタイミングで、残りの2つの方向で同時に光を照射する。
【0131】
これにより、製品6が2方向に同時に影を形成した画像データを2つ取得することができる。
【0132】
図14に示す第2変形例は、エッジを検出する前に、照明の方向が異なる複数の画像を予め合成する点で、上述の実施形態と異なる。
【0133】
図14には、
図7(b)に従った撮影で得られた4つの画像データを合成して、1つの合成画像データを得る様子が示されている。合成手法は様々に考えられるが、例えば、4つの画像データの対応する画素の輝度のうち最も低い輝度を、合成画像における当該画素の輝度とすることが考えられる。こうして得られた1枚の合成画像データでは、合成された影が、製品6の輪郭の外側を取り囲むように現れる。このような合成画像データに対して上述のエッジ検出及び影の検出等を行うことによっても、製品6が残材7の上に重なっている状態を検出することができる。また、合成した画像に対してテンプレートマッチングや幾何形状マッチングを施すことで、製品6の板材上の位置や姿勢を検出することもできる。
【0134】
以上に説明したように、本変形例において、影検出工程では、平面視で方向が異なる4つの方向で光を照射して撮影された複数の画像データを合成した合成画像データに基づいて、残材7の上面に生じる影を検出する。
【0135】
これにより、製品6の輪郭全体にわたって周囲に影が生じている合成画像を得ることができる。従って、製品6が残材7に重なっている状態を検出するための処理を簡素化することができる。
【0136】
以上に本発明の好適な実施の形態及び変形例を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0137】
上述の実施形態で、影検出部65は、注目エッジ画素の左右から10画素ずつ取り出して輝度の平均値を計算している。しかしながら、何画素分の輝度を調べるかについては、画像の解像度、製品の厚み等を考慮して適宜変更することが好ましい。
【0138】
ライトユニット52のライト57が点灯する順番は、
図7(b)に示す順番に限定されず、適宜入れ替えても良い。
【0139】
上述の第2変形例で説明した画像の合成を、第1変形例に適用することもできる。
【0140】
重なり検出装置50は、製品6と残材7の重なり以外にも、製品6に対する製品6の重なり、又は、製品6に対するシート状の異物の重なりを検出するために用いることもできる。
【0141】
重なり検出装置50を構成するカメラ51、ライトユニット52及び制御装置54等は、搬送装置30に取り付けなくても良い。例えば、ライトユニット52を、レーザ加工装置10の受渡しポート12に配置することが考えられる。
【0142】
金属板5に対し、レーザ加工装置10でなく、例えばパンチ加工装置による切断加工により、製品6と残材7とに分離することもできる。
【0143】
重なり検出装置50は、金属以外のシートを検出するために用いることもできる。また、重なり検出装置50は、切断加工により分離されたシート以外のシートを検出するために用いることもできる。
【0144】
重なり検出装置50を、シート同士の重なりの検出だけでなく、平面(例えば、ベルトコンベアの搬送面、又は、テーブル等の厚みのある載置台の上面)に置かれたシートの検出のために用いることもできる。