【解決手段】レンズ18と、撮像素子14と、前記レンズ18の表面18Aに設けられ、紫外線の照射に伴って、有機物を分解し、かつ親水性を発現する光触媒層20と、前記光触媒層20に紫外線を照射する紫外線LED36と、を有した車載カメラ装置1を制御するカメラ制御装置50であって、前記紫外線LED36による前記光触媒層20への紫外線照射量、及び、紫外線LED36のレンズ18に対する位置を、所定条件に応じて制御する紫外線照射制御部77を備える構成とした。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る車載カメラ装置1が搭載された車両2の模式図である。
車載カメラ装置1は、車両2の周囲を撮像するものであり、当該車両2の外側に露出して設置される。車載カメラ装置1の設置台数は任意であるが、本実施形態では、車両2の前方、後方、左側方、及び右側方のそれぞれに配置されており、各車載カメラ装置1が所定の画角α(
図3)で各方向を撮像することで、これらの車載カメラ装置1の撮像に基づいて車両2の全方位の撮像が得られるようになっている。全方位の撮像は、車両2における自動運転制御や物体(他車両や障害物、人物、駐車場など)検知といった各種の用途に用いられる。
車両2には、車載カメラ制御システム4が搭載されており、この車載カメラ制御システム4が各車載カメラ装置1を制御する。
【0020】
図2は車載カメラ装置1の構成を模式的に示す図であり、
図2(A)は上面図、
図2(B)は正面図である。
図2(A)、及び
図2(B)に示すように、車載カメラ装置1は、大別すると、カメラユニット10と、可動式照射ユニット12と、を備える。
カメラユニット10は、撮像素子14と、当該撮像素子14を収めた略箱型のケース16と、を備える。ケース16は、耐紫外線性を有した素材から形成されており、正面16Aには観測窓17が開口し、当該観測窓17にはレンズ18が取り付けられている。
撮像素子14は、観測窓17からレンズ18を通じて観測される範囲(より正確にはレンズ18の画角αの範囲)の像を撮像するものであり、撮像素子14には、CCD(Charge Coupled Device)型固体撮像素子またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型固体撮像素子が用いられる。
【0021】
レンズ18は、ケース16の観測窓17から正面側に突出した凸レンズである。このレンズ18は、いわゆるセルフクリーニングレンズとも称され、その表面18Aを自己洗浄する自己洗浄機能を備える。
具体的には、レンズ18の表面18Aは、
図2(A)に示すように、光触媒を所定の厚みで堆積させて成る光触媒層20で覆われている。この光触媒には、紫外線照射により、有機物を酸化分解し、なおかつ親水性を発現する材料が用いられており、本実施形態では、親水性として超親水性を発現する酸化チタン(TiO
2)が光触媒に用いられている。
かかる光触媒層20は、紫外線照射により、有機物の汚れを酸化分解し、さらに、空気中の湿気や雨水などのH
2Oと反応することで自身の表面に親水性の水酸基(−OH)を生じさせ、自身の表面と、そこに付着した汚れとの間に薄い水の膜を形成し、汚れを浮かび上がらせ流れ落とす。
さらに、光触媒層20は、紫外線照射後、一定の期間に亘って親水性を維持する。したがって、この間は、雨水や洗浄水に曝された場合でも、光触媒層20の表面に上記の水の膜が形成されることで、汚れが流れ落ち易くなることは勿論のこと、水滴の付着も防止される。なお、光触媒層20が親水性を維持する期間は、光触媒の材料によって決まる。
【0022】
可動式照射ユニット12は、レンズ18に紫外線を照射する光源部30を備え、レンズ18に対する光源部30の位置を可変にするユニットである。本実施形態では、可動式照射ユニット12は、レンズ18に正対した位置(レンズ18の中央部に対面する位置)と、正面視でレンズ18から外れた位置との間を、光源部30が移動するように構成されている。
具体的には、可動式照射ユニット12は、光源部30を支持する支持アーム32と、回転軸34Aを有したアクチュエータ34と、を備え、支持アーム32が回転軸34Aに連結されている。
【0023】
光源部30は、紫外線を放射する紫外線光源の一例である紫外線LED36と、レンズ18の略全域に紫外線を拡げて照射するレンズ部38と、を備える。
支持アーム32は、ケース16の一側面から延びて先端部32Aで光源部30を支持するL字状の部材であり、その先端部32Aがレンズ18の正面に位置し、当該先端部32Aに光源部30が取り付けられている。支持アーム32の一端部32Bは上記アクチュエータ34の回転軸34Aに連結され、回転軸34Aの回転に伴って支持アーム32が回転する。
【0024】
図3は、光源部30の移動を模式的に示す図である。
アクチュエータ34の回転軸34Aと一体となって支持アーム32が回転することで、当該支持アーム32に支持された光源部30が、
図3に示すように、レンズ18の正対位置P0からケース16の側面の退避領域Cに移動する。退避領域Cは、レンズ18の画角αを外れた領域であり、この退避領域Cまで光源部30が移動することで、撮像への光源部30の映り込みが防止される。
【0025】
本実施形態では、退避領域Cのうち、レンズ18に紫外線が照射可能な位置が第1退避位置P1に設定されている。また、退避領域Cのうち、光源部30がレンズ18に影をつくらない位置(すなわち、ケース16の側面に正対する位置)が第2退避位置P2に設定されている。
そして、光源部30が正対位置P0から退避領域Cに移動する場合には、車両2の状況に応じて、第1退避位置P1、及び第2退避位置P2のいずれかに移動する。
【0026】
図4は、車載カメラ制御システム4の構成を示す図である。
車載カメラ制御システム4は、カメラ制御装置50と、駆動部52と、信号処理部54とを備える。
カメラ制御装置50は、車載カメラ装置1の各々を制御するものであり、例えばECU(Electronic Control Unit)を備える。ECUは、CPUやMPUなどのプロセッサと、ROMやRAMなどのメモリデバイスと、HDDやSSDなどのストレージ装置と、各種の車両側機器56や車載ネットワーク(例えばCAN)などを接続するためのインターフェース回路と、を備えるハードウェアデバイスである。車両側機器56については後述する。
【0027】
駆動部52は、車載カメラ装置1ごとに設けられ、カメラ制御装置50の制御にしたがって、当該車載カメラ装置1を制御する。すなわち、駆動部52は、車載カメラ装置1の撮像動作を制御するカメラ制御回路52Aと、紫外線LED36の点灯を制御するLED制御回路52Bと、アクチュエータ34の回転駆動を制御するアクチュエータ34の回転駆動するアクチュエータ制御回路52Cと、を備える。
またLED制御回路52Bは、カメラ制御装置50の指示に基づいて、紫外線LED36の光出力(すなわち紫外線照射量)を制御する。光出力の制御には、紫外線LED36の駆動電流制御や、PWM点灯制御などの任意の手法が用いられる。
【0028】
信号処理部54は、各車載カメラ装置1の撮像素子14が出力する撮像信号を処理するものであり、A/D変換回路54Aと、メモリ54Bと、画像処理プロセッサ54Cとを備え、例えばECUやコンピュータによって構成されている。
A/D変換回路54Aは、車載カメラ装置1ごとに設けられており(図示略)、撮像素子14の出力信号をアナログ−デジタル変換して撮像データを生成し、メモリ54Bに出力する。メモリ54Bは、各車載カメラ装置1の撮像データを保存する。
画像処理プロセッサ54Cは、撮像データに対して各種の画像処理を実行する機能を実現するものであり、機能部として、画像濃度算出部60と、差分画像生成部62と、を備える。なお、これらの機能部は、画像処理プロセッサ54Cがメモリ54Bに格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0029】
画像濃度算出部60は、各車載カメラ装置1の露光時間制御に供される画像濃度を、各車載カメラ装置1の撮像データに基づいて算出し、カメラ制御装置50に出力する。画像濃度は、車載カメラ装置1の撮像素子14の信号出力レベルを示す値であり、当該画像濃度が高いほど信号出力レベルが高く、撮像対象が明るい(高輝度)ことを示す。したがって、この画像濃度が一定になるように車載カメラ装置1の露光が制御されることで、撮像対象が一定に明るさ(輝度)で撮像されるようになる。
【0030】
差分画像生成部62は、各車載カメラ装置1のレンズ18の汚れを検出するために、車載カメラ装置1ごとに、2枚の撮影画像の差分を示す差分画像を2つの撮像データの差分に基づいて生成し、カメラ制御装置50に出力する。これら2枚の撮影画像は、紫外線LED36の紫外線をレンズ18に照射した状態で撮像した画像(以下、「紫外線照射画像」という)と、紫外線LED36を消灯した状態で撮像した画像(以下、「紫外線非照射画像」という)である。
詳述すると、たんぱく質などの有機分子は、紫外線を吸収するため、このような汚れ成分がレンズに付着している状態では、紫外線照射画像と、紫外線非照射画像との間に差が生じ、その差が差分画像に現れることになる。
【0031】
カメラ制御装置50は、信号処理部54の信号処理結果、及び車両側機器56から得られる情報に基づいて、レンズ18への紫外線LED36による紫外線照射を制御するものであり、エンジン状態判定部70と、日射量判定部71と、カメラ使用状態判定部73と、汚れ判定部75と、紫外線照射制御部77と、を備える。
【0032】
エンジン状態判定部70は、エンジンECU等の車両側機器56からの情報に基づいて、車両2のエンジンがオン状態(非停止状態)か否かを判定する。なお、車両2がエンジンではなくモータを動力源とする場合、エンジン状態判定部70は、当該モータの動作状態を判定する。
【0033】
日射量判定部71は、レンズ18の光触媒層20が光触媒作用(酸化分解作用、及び親水性の発現)を発揮するのに十分な日射量が得られているか否かを判定するものであり、本実施形態では、日射量判定部71は、日没判定部78と、露光判定部79とを備える。
日没判定部78は、例えばGPS等の車両側機器56からの情報に基づいて現在時刻を判定し、当該現在時刻に基づいて日没後(もしくは日射が弱くなる時刻以降)か否かを判定する。
露光判定部79は、各車載カメラ装置1の撮像データの画像濃度算出部60に基づいて、各車載カメラ装置1の露光の過不足を判定する。
そして、日射量判定部71は、日没後、又は、露光が不足している場合に、十分な日射量が得られていないと判定する。
【0034】
なお、カメラ制御装置50は、露光判定部79の判定結果に基づいて、各車載カメラ装置1の露光時間制御も行っている。すなわち、カメラ制御装置50は、露光の過不足に基づいて、画像濃度を一定に維持する露光時間を算出し、当該露光時間で撮像が行われるように各カメラ制御回路52Aを制御する。
【0035】
カメラ使用状態判定部73は、例えば車載モニタ装置やナビゲーション装置、自動運転制御装置、運転支援装置といった車両側機器56からの情報に基づいて、他の機器である車両側機器56が各車載カメラ装置1の撮像データを使用中であるか否かを判定する。
【0036】
汚れ判定部75は、差分画像生成部62の差分画像に基づいて、各車載カメラ装置1のレンズ18の汚れの付着を判定する。具体的には、汚れ判定部75は、差分画像における汚れの領域の大きさに基づいて、一定量以上の汚れが付着しているか否か(いわゆる、汚れの程度)を判定する。
【0037】
紫外線照射制御部77は、エンジンの動作状態や、日射量、車載カメラ装置1の使用状態、レンズ18の汚れなどの所定条件に応じて、紫外線LED36の照射を制御するものであり、かかる紫外線制御動作について、以下に詳述する。
【0038】
図5は、カメラ制御装置50による紫外線照射制御を示すフローチャートである。
カメラ制御装置50では、先ず、エンジンがオン状態(非停止状態)であるか否かをエンジン状態判定部70が判定し(ステップS1)、エンジンがオン状態でない場合(ステップS1:NO)、紫外線照射によるバッテリの消費を防止するために、紫外線照射を行わず、エンジンがオン状態になるまで待機する。また、この間、カメラ制御装置50は、レンズ18に射し込む太陽光を光源部30が遮蔽しないように、当該光源部30を上述の第2退避位置P2に配置する。これにより、屋外駐車場などに長期間に亘り車両2がエンジン停止状態で置かれた場合でも、太陽光がレンズ18に当たるようになり、当該太陽光の紫外線によって光触媒層20の親水性を維持し、また汚れを分解できるようになる。
【0039】
エンジンがオン状態(非停止状態)になった場合(ステップS1:YES)、カメラ制御装置50は、各車載カメラ装置1を起動した後、日射量が少ない場合にだけ紫外線LED36の紫外線をレンズ18に照射することで、紫外線LED36による無駄な紫外線照射を抑制するために次の処理を実行する。
すなわち、日没判定部78は、現在時刻が日没後か否かを判定し(ステップS2)、日没前である場合(ステップS2:NO)には、露光判定部79が露光の過不足を判定する(ステップS3)。例えば、天候が悪かったり、ビルの影やトンネル内、屋内駐車場内に位置する等して日射量が少ない場合には、露光が不足していると判断される(ステップS3:YES)。
【0040】
日没前であり、かつ露光が十分である場合(ステップS2:NO、及びステップS3:NO)、紫外線照射制御部77は、その時点で点灯中の紫外線LED36が存在するときは、当該紫外線LED36を消灯し、光源部30を第2退避位置P2に移動する(ステップS3−1)。
【0041】
一方、日没後、又は露光不足である場合(ステップS2:YES、及びステップS3:YES)、レンズ18に太陽光が十分には当たっていないため、紫外線照射制御部77は、可動式照射ユニット12を制御して、レンズ18の光触媒層20に紫外線を照射する。
【0042】
具体的には、先ず、車両側機器56が車載カメラ装置1の撮像データを使用中か否かをカメラ使用状態判定部73が判定する(ステップS4)。撮像データが使用中でない場合(ステップS4:NO)、紫外線照射制御部77は、撮像において特に重要な中央部を含むレンズ18の全体に亘って隈無く紫外線を照射すべく、光源部30を正対位置P0に移動する(ステップS5)。一方、撮影データが使用中である場合(ステップS4:YES)、紫外線照射制御部77は、撮像画像への光源部30の映り込みを防止すべく、光源部30を第1退避位置P1に移動する(ステップS6)。
【0043】
次いで、汚れ判定部75は、レンズ18に汚れが一定量以上付着しているか否か(すなわち多いか否か)を判定する(ステップS7)。具体的には、カメラ制御装置50は、紫外線LED36を点滅させ、上述した紫外線照射画像と紫外線非照射画像との差分画像を信号処理部54から取得する。そして、当該差分画像に基づいて汚れ判定部75が汚れの付着を判定する。
【0044】
汚れが一定量以上付着している場合(ステップS7:YES)、紫外線照射制御部77は、定格最大の光出力(すなわち最大紫外線照射量)で紫外線LED36を点灯させ、紫外線照射を開始する(ステップS8)。これにより、最大光量の紫外線が光触媒層20に照射される。
一方、汚れの付着が一定量未満である場合(ステップS7:NO)、紫外線照射制御部77は、定格最大よりも低い光出力で紫外線LED36を点灯させ、紫外線照射を開始する(ステップS9)。これにより、汚れが多くない場合には、それに見合った低い光量の紫外線が光触媒層20に照射される。
したがって、汚れの程度に応じて適切な紫外線照射量の紫外線が光触媒層20に照射され、レンズ18の汚れが効率良く除去される。
【0045】
このようにして紫外線照射が開始されると、汚れ判定部75は、汚れが分解されたか否かを判定する(ステップS10)。すなわち、このステップS10においても、ステップS7と同様に、上記差分画像が信号処理部54によって生成され、汚れ判定部75は、当該差分画像に基づいて(例えば、差分が一定値以下など)、汚れが分解されて除去されたか否かを判定する。
汚れが分解されていない場合(ステップS10:NO)、カメラ制御装置50は、エンジンがオフ状態になったときには(ステップS11:YES)、紫外線照射制御部77は、バッテリの消費を抑えるべく、速やかに紫外線LED36を消灯し、光源部30を第2退避位置P2に移動する(ステップS12)。
【0046】
一方、エンジンがオフ状態でなければ(ステップS11:NO)、カメラ制御装置50は、処理手順をステップS2に戻す。これにより、日射量が少ない間は(ステップS2:YES、及びステップS3:YES)、紫外線LED36の紫外線が継続して照射され、汚れが分解されたときに(ステップS10:YES)、紫外線照射制御部77は、紫外線LED36を消灯し、光源部30を第2退避位置P2に移動する(ステップS13)。
また、紫外線LED36が点灯中であり、汚れが分解されていない場合でも(ステップS10:NO)、日射量が多くなったときは(ステップS2:NO、又はステップS3:NO)、紫外線照射制御部77は、紫外線LED36の点灯を終了し、光源部30を第2退避位置P2に移動する(ステップS3−1)。
【0047】
カメラ制御装置50は、エンジンがオン状態の場合(ステップS1:YES)、紫外線LED36を消灯し、光源部30を第2退避位置P2に移動した後(ステップS3−1、ステップS13)、処理手順をステップS1に戻し、一定時間おきに、本処理を繰り返し実行する。これにより、レンズ18に汚れが付着し易い環境下を車両2が走行中であっても、汚れを速やかに落とすことができる。
【0048】
本実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0049】
本実施形態では、紫外線LED36による光触媒層20への紫外線照射量、及び、紫外線LED36のレンズ18に対する位置をカメラ制御装置50が制御するので、より適切に光触媒層20に紫外線を照射することができる。
【0050】
本実施形態では、レンズ18の表面の汚れに応じて紫外線照射量が制御されるので、汚れの程度に応じて適切な照射線照射量の紫外線が光触媒層20に照射され、レンズ18の汚れが効率良く除去される。
【0051】
本実施形態では、日射量が少ない場合(より正確には、光触媒層20が光触媒作用を発揮するのに十分な紫外線が当たらない環境である場合)、光触媒層20への紫外線LED36による紫外線照射を開始する。これにより、紫外線LED36による無駄な紫外線照射を防止できる。
【0052】
本実施形態では、現在時刻に基づいて日射量を判定するので、日射量の過不足を簡単に判定できる。
本実施形態では、車載カメラ装置1の露光に基づいて日射量を判定するので、車載カメラ装置1から得られる情報だけで日射量の過不足を判定できる。
そして、現在時刻、及び、露光の両方に基づいて日射量が判定されるので、日射量が多い日中であっても、車両2が屋外駐車場やトンネル内を走行していたり、また天気が悪い等して日射量が不足するようなときに、確実に、紫外線を照射できる。特に、梅雨の時期や台風が多い季節においても、日射量が不足するときには確実に紫外線を照射し、光触媒層20の親水性を維持することができる。
【0053】
本実施形態では、紫外線LED36の紫外線を光触媒層20に照射する場合、他の機器が撮像データを使用中であるときには、レンズ18の画角αを外れた第1退避位置P1に紫外線LED36を配置し、他の機器が撮像データを使用中でないときには、レンズ18に正対する正対位置P0に紫外線LED36を配置する。
これにより、他の機器が撮像データを使用中であるときには、撮像画像への光源部30の映り込みを抑えた状態で紫外線を照射できる。また他の機器が撮像データを使用中でないときには、レンズ18の中央部から全体に亘る全範囲に隈無く紫外線を照射できる。
【0054】
本実施形態では、紫外線LED36の紫外線を光触媒層20に照射しない場合、ケース16の側方(第2退避位置P2)に光源部30を配置するので、光源部30がレンズ18に影をつくることが抑えられる。
これにより、屋外駐車場などに長期間に亘り車両2が置かれた場合でも、太陽光がレンズ18に当たるようになり、当該太陽光の紫外線によって光触媒層20の親水性を維持し、また汚れを分解できるようになる。
【0055】
本実施形態では、車両2のエンジンがオフ状態の間(停止中)は、紫外線LED36による紫外線の照射を停止するので、紫外線照射によって車両2のバッテリが消費されてしまうことを防止できる。
【0056】
本実施形態では、レンズ18に正対する正対位置P0と、レンズ18の画角αを外れた退避領域Cとの間を移動可能に、紫外線LED36(光源部30)を支持する支持アーム32を車載カメラ装置1が備える。
この構成によれば、紫外線光源を備えたカバーでレンズ18を覆う従来の構成に比べ、レンズ18が光源部30によって覆い隠されることがないので、雨天時には雨によってレンズ18の表面に付着した汚れを洗い流すことができる。
【0057】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意に変形、及び応用が可能である。
【0058】
上述した紫外線照射制御では、カメラ制御装置50は、光触媒層20の光触媒作用が得られる程度の日射量が無い場合に、紫外線LED36による紫外線照射を開始したが、これに限らず、汚れの程度に応じて、紫外線照射を開始してもよい。
すなわち、カメラ制御装置50は、エンジンがオン状態である場合(
図5:ステップS1:YES)、日射量の判定に先立って、レンズ18の表面への汚れの付着を判定する。そして、汚れが付着している場合には、紫外線LED36による紫外線照射を開始する。この場合において、汚れの程度、及び日射量に応じた紫外線照射量が照射され、また、他の機器によって撮像データが使用されている間は、第1退避位置P1から紫外線が照射される。
これにより、汚れが付着しているときだけ確実に紫外線LED36を点灯させ、汚れを落とすことができる。
【0059】
上述した実施形態において、車両2のエンジンがオフ状態であっても、当該エンジンがオフ状態である期間が一定時間を越えたときには、光触媒層20の親水性を維持するために、紫外線LED36の紫外線を光触媒層20に照射してもよい。
【0060】
上述した実施形態において、光源部30には複数の紫外線LED36を設けてもよい。この場合において、紫外線LED36の点灯数を可変することで、紫外線照射量を制御してもよい。
【0061】
上述した実施形態において、日没判定部78は、当日の日の出時刻、及び日の入時刻を、車両側機器56や外部のサーバコンピュータから取得し、これら日の出時刻、及び日の入時刻に基づいて、日没後か否かを正確に判定してもよい。
【0062】
上述した実施形態において、周囲の明るさを検出する照度センサを車載カメラ制御システム4が備え、カメラ制御装置50の日射量判定部71は、当該照度センサの検出結果に基づいて、日射量が不足しているか否かを判定してもよい。
【0063】
上述した実施形態において、汚れ判定部75は、紫外線照射画像と、紫外線非照射画像との差分画像に基づいて汚れを判定するのではなく、次のようにして汚れを判定してもよい。すなわち、汚れ判定部75は、各車載カメラ装置1において、車両2の走行中に順次に撮像された撮像画像に、一定時間以上に亘って異物が同じ箇所に写っている場合に、当該異物を汚れと判定してもよい。
【0064】
上述した実施形態において、光触媒層20がレンズ18の表面18Aにコーティングされた車載カメラ装置1を例示したが、これに限らない。
すなわち、
図6に示すように、この車載カメラ装置100のカメラユニット110は、ケース16の内部にレンズ18を収め、ケース16の観測窓17に透明なカバーガラス119をカバー部材として嵌め込み、当該カバーガラス119がレンズ18を覆う構成となっている。この構成においては、カバーガラス119の表面119Aに、光触媒層20が設けられる。
【0065】
上述した実施形態において、車載カメラ装置1は、光源部30の位置を可変にする可動式照射ユニット12を備えたが、これに限らない。すなわち、
図7(A)の上面図、及び
図7(A)の正面図に示すように、紫外線を照射する複数の光源部30をレンズ18の周囲に配置した車載カメラ装置200を構成してもよい。この構成において、各光源部30は、レンズ18の画角αを外れた箇所に配置されることが望ましい。またカメラ制御装置50は、個々の光源部30の光出力を制御することで、紫外線照射量を制御してもよいし、点灯させる光源部30の数を可変することで、紫外線照射量を制御してもよい。
【0066】
上述した実施形態において、紫外線照射制御部77は、光源部30の紫外線照射時に、紫外線照射量と、光源部30の位置との両方を制御したが、いずれか一方のみを制御する構成でもよい。
【0067】
上述した実施形態において、レンズ18に洗浄液(ウォッシャー液や水等)を供給する洗浄システムを車両2に設け、当該洗浄液の供給をカメラ制御装置50が制御してもよい。具体的には、カメラ制御装置50は、光触媒作用では分解できない汚れ(泥や融雪剤などの無機物)が付着した場合に、洗浄液を噴射し、その汚れを洗い流す。このとき、レンズ18の表面は、紫外線照射により十分に親水化しているため、洗浄液が供給されても、レンズ18の表面で水滴を形成せずに薄い水膜となり、撮像画像に影響を与えることがない。
【0068】
上述した実施形態において、レンズ18に空気を噴射し、レンズ18に付着した水分等を除去する空気噴射システムを車両2に設け、当該空気の噴射をカメラ制御装置50が制御してもよい。具体的には、例えば洗車後の水道水や雨水がレンズ18に付着したとき、カメラ制御装置50は、これを空気の噴射によって除去する。これにより、水分に含まれている不純物が乾燥によってレンズ18の表面に残存することを防止できる。この結果、レンズ18の表面への汚れの付着量が減少し、少ない紫外線照射量でも親水性を維持することができる。
なお、この空気噴射システムと、上記洗浄システムとの両方を車両2に設けてもよい。
【0069】
上述した実施形態において、光源部30における紫外線出射面に光触媒層20を設けてもよい。紫外線出射面は、例えばレンズ部38の表面などである。これにより、光源部30における紫外線出射面への汚れの付着を防ぎ、紫外線照射量の低下を防止できる。
【0070】
上述した実施形態において、
図4に示す機能ブロックは、本願発明を理解容易にするために、車載カメラ制御システム4の構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、これらの構成要素は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【0071】
また、
図4に示すカメラ制御装置50の各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアにより実行されてもよい。また、各構成要素の処理は、1つのプログラムで実現されてもよいし、複数のプログラムで実現されてもよい。
【0072】
また
図5のフローチャートの処理単位は、紫外線照射制御処理を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理単位の分割の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。また、1つの処理単位がさらに多くの処理を含むように分割することもできる。
【0073】
また本発明は、車載カメラ装置1に限らず、屋外で使用される任意のカメラ装置の制御に適用できる。