(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-200760(P2019-200760A)
(43)【公開日】2019年11月21日
(54)【発明の名称】点群からの自動作図方法、点群処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 17/20 20060101AFI20191025BHJP
G06T 7/521 20170101ALI20191025BHJP
G06T 7/11 20170101ALI20191025BHJP
G06T 7/13 20170101ALI20191025BHJP
【FI】
G06T17/20
G06T7/521
G06T7/11
G06T7/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-106489(P2018-106489)
(22)【出願日】2018年5月16日
(71)【出願人】
【識別番号】502172766
【氏名又は名称】アイコンヤマト株式会社
(72)【発明者】
【氏名】植田 拓也
【テーマコード(参考)】
5B080
5L096
【Fターム(参考)】
5B080AA19
5B080DA06
5B080FA02
5L096AA09
5L096DA02
5L096EA18
5L096FA06
5L096FA19
5L096GA34
(57)【要約】
【課題】3次元座標の点群から図面作成に供する情報を自動取得または自動認識する方法を提供する。
【解決手段】3次元計測装置にて取得された建物等の立体構造物表面の3次元座標を示す点群、ならびに自然物表面の3次元座標を示す点群から平面、または、斜面、または、エッジを自動抽出する方法、ならびに、平面、または、斜面、または、エッジ領域を抽出する領域決定方法、点群内のすべての各点の高さ情報へ3次元空間フィルタを適用し求めた特徴量を各点における特徴量とする各点特徴量決定工程と、上記特徴量に対して正規化することで得られる平面、または、斜面、または、エッジ特徴量決定工程と、上記特徴量を閾値処理にて領域分割とラベリング処理を実施する区画抽出工程を具備する方法である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点群からの自動作図方法であって、3次元計測装置にて取得された建物等の立体構造物表面または自然物表面の3次元座標を示す点群から平面、または、斜面、または、エッジを自動抽出することを特徴とする点群からの自動作図方法。
【請求項2】
前記点群より、平面、または、斜面、または、エッジ特徴量を求める特徴量抽出工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の自動作図方法。
【請求項3】
前記特徴量にもとづき、平面、または、斜面、または、エッジ領域を抽出する領域決定工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の自動作図方法。
【請求項4】
請求項2の特徴量を表示する平面、または、斜面、または、エッジ特徴量表示方法。
【請求項5】
請求項3の領域決定結果を表示する領域決定表示方法。
【請求項6】
請求項1、または、請求項2、または、請求項3、または、請求項4、または、請求項5を備えた点群処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点群取得手段により得られた3次元座標の点群から図面作成に供する情報を自動取得または自動認識に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物などの立体構造物ならびに自然物を3次元計測装置により測定する場合、たとえば、ドローン、レーザースキャナが用いられており、3次元計測データを取得することができる。3次元計測データより特徴抽出する技術が開示されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5480914号公報
【特許文献2】特開2017−49737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成によると、3次元点群より2次元画像としてエッジ等を抽出し、オクルージョン(手前の物体に遮られて奥の物体が見えなくなっている状態)を非面領域として抽出対象外としている。また、中間処理として2次元画像として扱う段階があるため、3次元空間を多面的な視点でみることが困難であると考える。
【0005】
特許文献2の構成によると、3次元点群に対して法線ベクトルを求めた結果に基づき2つの平面を記述する連立方程式を生成し、その連立方程式の解を求めることでエッジを抽出している。しかし、本発明で対象にしている自然物は、必ずしも平面で近似できるとは限らず適用は困難である。
【0006】
本発明は、3次元座標の点群から平面、または、斜面、または、エッジの自動抽出方法およびこの自動抽出方法により平面、または、斜面、または、エッジの領域決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の点群からの自動作図方法は、3次元計測装置にて取得された建物等の立体構造物表面の3次元座標を示す点群、ならびに自然物表面の3次元座標を示す点群から平面、または、斜面、または、エッジを自動抽出する方法、ならびに、平面、または、斜面、または、エッジ領域を抽出する領域決定方法であって、
点群内のすべての各点の高さ情報へ3次元空間フィルタを適用し求めた特徴量を各点における特徴量とする各点特徴量決定工程と、
上記特徴量に対して正規化することで得られる平面、または、斜面、または、エッジ特徴量決定工程と、
上記特徴量を閾値処理にて領域分割とラベリング処理を実施する区画抽出工程である。
【発明の効果】
本発明によれば、請求項ごとに以下のような効果を奏する。
【0008】
請求項1記載の本発明によれば、3次元計測装置によって取得された建物等の立体構造物の3次元座標を示す点群、ならびに自然物表面の3次元座標を示す点群から、平面、または、斜面、または、エッジを自動抽出することで点群を基にした作図作業を容易にすることができる。従来、作図作業においては、人手により点群を平面ディスプレイ上にて目視により、物体の種類、エッジを探し出し作図を行っているが、3次元点群を平面ディスプレイに写像するため、奥行きを認識することが物理的に困難になりがちであり、作図に対する労力・時間を増加させる一因となっている。本発明により、平面、または、斜面、または、エッジを自動抽出することにより、上記課題を解決することができる。
【0009】
請求項2記載の本発明によれば、3次元点群より、平面、または、斜面、または、エッジを示す特徴量を得ることができる。
【0010】
請求項3記載の本発明によれば、前記特徴量に基づき平面、または、斜面、または、エッジを区別することができる。
【0011】
請求項4記載の本発明によれば、請求項2の発明で得られた特徴量を表示することができる。
【0012】
請求項5記載の本発明によれば、請求項3の発明で得られた領域決定結果を表示することができる。
【0013】
請求項6記載の本発明によれば、請求項1、または、請求項2、または、請求項3、または、請求項4、または、請求項5を備えた点群処理プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【
図1】点群処理プログラムのフローチャートである。
【
図3】3次元空間フィルタの重みを示す説明図である。
【
図4】点群データの色分け結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施の形態を説明する。
【0014】
実施形態に係る点群処理プログラムは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算処理手段、および、ROM(Read Only Memory)および、RAM(Random Access Memory)などの記憶手段を備えるハードウェアである計算手段と、計算手段上に実現するソフトウェアである点群処理プログラムとが協働する具体的手段を具備して構成される。
【0015】
プロセッサとは、専用または汎用のCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(ASIC(Application Specific Integrated Circuit))、プログラマブル論理デバイス(SPLD(Simple Programmable Logic Device))、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD(Complex Programmable Logic Device))、および、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA(Field Programmable Gate Array))等のプログラムを実行可能な演算処理手段である。プロセッサは、記憶手段に保存されるプログラムを読み出して実行することにより、各種機能を実現する。
【0016】
記憶回路にプログラムを保存して実行するかわりに、プロセッサを構成する回路としてプログラムを直接組み込むように構成してもよい。
【0017】
あるいは、複数の独立したプロセッサを組み合わせてプログラムを実行可能な演算処理回路を構成してもよい。プログラムを記憶する記憶回路はプロセッサごとに個別に設けてもよいし、複数のプロセッサの機能に対応するプログラムを集約して設けてもよい。
【0018】
点群処理プログラムを点群情報取得手段によって得られる点群情報処理に組み込んでもよい。たとえば、ドローン測量、または、地上レーザースキャナ、または、ハンドスキャナー等の点群情報取得手段にて点群情報を取得し、その分析に用いてもよい。
【0019】
図1は、点群処理プログラムのフローチャートである。S101は、点群を入力する工程であり、フラッシュメモリなど外部記憶手段、または、ハードディスクなどの磁気記憶手段、または、LAN(Local Area Network)または、WAN(Wide Area Network)などに接続する接続手段である。
【0020】
S102は、S101で入力された点群にもとづいて特徴量を抽出し、平面、または、斜面、または、エッジを示す点群の特徴を取得する工程である。
【0021】
S103は、S102で得た点群特徴量に対して正規化(−1〜1)を施す工程である。正規化を施すことで平面、または、斜面、または、エッジを選択的に取り扱えるようにできる。
【0022】
S104は、S103で得られた特徴量に基づき、あらかじめ定義したデータ区間で切り分け点群を分類し、ラベリングを行う工程である。
【0023】
S105はS104で得られた分類結果を外部記憶手段、磁気記憶手段、LANなどの接続手段に出力する工程、または、S103で得られた特徴量正規化結果に基づき、液晶ディスプレイなどの表示手段でデータ表示する工程である。たとえば、平面に近い点群分布(評価値が−1に近いほど)であれば寒色系の青色等で表示、斜面が急なほど(評価値が1に近いほど)暖色系の赤色で表現し、液晶ディスプレイなどの表示手段で表示することで、平面、または、斜面、または、エッジを視覚的に分かりやすくできる。
【0024】
以下、
図1のS102の構成について詳細に説明する。S102は、点群各点において3次元空間フィルタを適用し、特徴量を算出する。数1は、3次元空間フィルタの重み関数である。
図2に3次元空間フィルタのイメージ図を示す。
図3に適用した重みを示す。ここで重み関数は、x軸、y軸、z軸それぞれ定義しており、入力パラメータのx、y、zは点群各点の座標を示している。
【0025】
数2は、点群の高さを示す関数である。高さとは、たとえば、標高値など高さ値であり、種類は問わない。数3は、各軸(x軸、y軸、z軸)においてそれぞれの注目点とその近傍点群の高さ分布を評価値として算出する。数4は、各軸の高さ変化の評価値(3次元ベクトル)を評価値(スカラー)へ変換する。
【0026】
ここまでの処理を点群各点に対して実施し、各点における評価値を求める。すなわち、高さ変化が相対的に少ない(斜面と比較した場合の平面等)点群は評価値が相対的に低くなり、高さ変化が相対的に大きい(平面と比較した場合の斜面等)点群は評価値が相対的に高くなる。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0027】
以下、
図1のS103の構成について詳細に説明する。前段のS102で算出した評価値は、外れ値(点群のノイズ等で生じる)に対して相対的に高い評価値を算出する。また、最大値はS101で入力された点群の分布状況に依存するため、評価値全体の分布が正規分布であると仮定し、数5に基づく正規化を適用することで評価値を−1〜1の間に写像して平面、または、斜面、または、エッジ部分をそれぞれ抽出可能にする。
【数5】
【0028】
以下、
図1のS104の構成について詳細に説明する。前段処理S103により算出した正規化済み評価値において、数6に示すように全点の評価値の集合より特定の範囲内の評価値となる点のみを抽出することで、平面、または、斜面、または、エッジそれぞれを抽出することができる。
【数6】
【0029】
以下、
図1のS105の構成について詳細に説明する。前段のS104での抽出結果を外部記憶手段、磁気記憶手段、LANなどの接続手段に出力、または、液晶ディスプレイ等の表示手段に出力することができる。データ出力、または、データ表示を同時に実施してもよいし、または、ユーザーの選択を受け付けて選択的に実行するのもよいし、または、何らかのトリガー手段によって選択するのもよい。S101で入力される点群はx座標、y座標、z座標の3次元座標であり、色情報(RGB)、輝度情報を持たない場合もある。入力した点群に対して、S103で算出した正規化済み特徴量に基づき、色情報を付加することができる。たとえば、平面に近い点群分布(評価値が−1に近いほど)であれば寒色系の青色等で表示、斜面が急なほど(評価値が1に近いほど)暖色系の赤色で表示することで視覚的に点群の分布状況を分かりやすく表現できる。表示は液晶ディスプレイ等の表示手段で実施できる。実施例を
図4に示す。
【符号の説明】
【0030】
S101 点群入力
S102 平面・斜面・エッジ特徴量算出
S103 特徴量正規化
S104 分類・グルーピング
S105 データ出力