【解決手段】一実施の形態によれば、固体撮像素子は、半導体基板100と、半導体基板100のPウェル101上に形成され、Pウェル101とともにPN接合型のフォトダイオードPPDを構成するN型拡散領域103と、平面視上、フォトダイオードPPDを囲むようにして半導体基板100に形成された素子分離領域102と、素子分離領域102とN型拡散領域103との間にN型拡散領域103と分離するようにして形成され、接地電圧又は接地電圧より高い電圧が印加されたN型のガードリング領域108aと、を備える。
前記第1ガードリング領域と前記N型拡散領域との間に、前記N型拡散領域及び前記第1ガードリング領域と分離するようにして形成され、接地電圧が印加されたP型の第2ガードリング領域をさらに備えた、
請求項1〜4の何れか一項に記載の固体撮像素子。
前記N型拡散領域よりも高濃度のN型不純物をドーピングすることにより、前記第1ガードリング領域を、前記半導体基板上のNチャネルMOSトランジスタのドレイン及びソースとして用いられる拡散領域とともに形成する、
請求項11に記載の固体撮像素子の形成方法。
P型の第2ガードリング領域を、前記第1ガードリング領域と前記N型拡散領域との間に、前記N型拡散領域及び前記第1ガードリング領域と分離するようにしてさらに形成する、
請求項11又は12に記載の固体撮像素子の形成方法。
P型不純物をドーピングすることにより、前記第2ガードリング領域を、前記半導体基板上のPチャネルMOSトランジスタのドレイン及びソースとして用いられる拡散領域とともに形成する、
請求項13に記載の固体撮像素子の形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0014】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1にかかるCMOSイメージセンサ(固体撮像素子)に用いられる画素部1の基本的な回路構成を示す図である。
図1に示すCMOSイメージセンサの画素部1は、所謂、APS(Active Pixel Sensor)とも呼ばれる典型的な4トランジスタ型CMOSイメージセンサの画素部である。
【0015】
図1に示すように、画素部1は、4つのNチャネルMOSトランジスタMTG,MR,MDR,MSELと、フォトダイオードPPDと、を備える。以下、4つのNチャネルMOSトランジスタMTG,MR,MDR,MSELを、それぞれ、トランスファトランジスタMTG、リセットトランジスタMR、増幅トランジスタMDR、及び、行選択トランジスタMSELとも称す。
【0016】
フォトダイオードPPDのアノードは、接地電圧線GNDに接続され、フォトダイオードPPDのカソードは、トランスファトランジスタMTGのソース(MTG_S)に接続されている。トランスファトランジスタMTGでは、ドレイン(MTG_D)がノードN1に接続され、ゲート(MTG_G)が、転送ゲート駆動信号φTGの伝搬する転送ゲート駆動ライン4に接続されている。
【0017】
リセットトランジスタMRでは、ソース(MR_S)がノードN1に接続され、ドレイン(MR_D)が電源電圧線VDDに接続され、ゲート(MR_G)が、リセット信号φRの伝搬するリセット信号線5に接続されている。
【0018】
増幅トランジスタMDRでは、ソース(MDR_S)がノードN2に接続され、ドレイン(MDR_D)が電源電圧線VDDに接続され、ゲート(MDR_G)がノードN1に接続されている。つまり、トランスファトランジスタMTGのドレイン、リセットトランジスタMRのソース、及び、増幅トランジスタMDRのゲートは、ノードN1において互いに接続されている。また、ノードN1には、信号電荷を信号電圧に変換する役割を担う浮遊拡散容量FDが形成されている。
【0019】
行選択トランジスタMSELでは、ソース(MSEL_S)が、列方向に設けられた他の複数の画素とともに出力信号線VOUTに接続され、ドレインがノードN2に接続され、ゲート(MSEL_G)が、行選択信号φSELの伝搬する行選択信号線6に接続されている。
【0020】
フォトダイオードPPDは、受光した光信号を電気信号に変換する。トランスファトランジスタMTGは、転送ゲート駆動信号φTGがアクティブになった場合にオンし、フォトダイオードPPDによって光信号から変換された電気信号をノードN1に転送する。それにより、ノードN1に形成された浮遊拡散容量FDには、フォトダイオードPPDからの電気信号に応じた電荷が蓄積される。増幅トランジスタMDRは、ノードN1の電圧をドライブしてノードN2に出力する。行選択トランジスタMSELは、行選択信号φSELがアクティブになった場合にオンし、ノードN2の電圧(即ち、フォトダイオードPPDによって光信号から変換された電気信号)を、出力信号線VOUTに出力する。
【0021】
(発明者らによる事前検討)
実施の形態1にかかるCMOSイメージセンサに用いられる画素部1の詳細な構造について説明する前に、発明者らが事前検討した内容について説明する。
【0022】
(事前検討段階における画素部50の説明)
図2は、
図1に示す画素部1の第1比較例である画素部50の平面レイアウト図である。
図3は、
図2に示す平面レイアウト図のA−A’部分の断面模式図である。なお、画素部50の回路構成については、画素部1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0023】
図2に示すように、平面視上、画素部50の大部分を占める領域には、一辺に凹部を有する矩形状のフォトダイオードPPDが形成されている。また、フォトダイオードPPDの表面上には、当該フォトダイオードPPDを覆うようにしてP型のピニング層(P
+領域)104が形成されている。
【0024】
また、平面視上、矩形状のフォトダイオードPPDの凹部領域に形成されているPウェル101の表面には、フォトダイオードPPDの構成要素の一つであるN型拡散領域(N
−領域)103と分離して、N型拡散領域103よりもN型不純物濃度の高いN型拡散領域(N
++領域)108が形成されている。また、N型拡散領域103とN型拡散領域108との間に形成されているPウェル101上には、ポリシリコン109が形成されている。ここで、N型拡散領域103をソースMTG_S、N型拡散領域108をドレインMTG_D、ポリシリコン109をゲートMTG_Gとすることによって、トランスファトランジスタMTGが構成されている。
【0025】
さらに、平面視上、矩形状のフォトダイオードPPDの凹部を有する一辺側の周辺領域(
図2の紙面の下部)には、トランスファトランジスタMTG以外の残りのトランジスタMR,MDR,MSELも形成されている。
【0026】
図3の断面模式図に示すように、半導体基板100に形成されたPウェル101の表面から内側にかけて、N型拡散領域103が形成されている。このN型拡散領域103は、Pウェル101の表面に低濃度のN型不純物をドーピングすることにより形成されている。ここで、Pウェル101とN型拡散領域103とによってPN接合型のフォトダイオードPPDが構成されている。
【0027】
また、Pウェル101の表面から内側にかけて、N型拡散領域103と間隔を空けるようにして、素子分離領域102が形成されている。本例では、素子分離領域102として、STI(Shallow Trench Isolation)が用いられている場合について説明するが、これに限られず、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)が用いられても良い。N型拡散領域103の表面を含む、素子分離領域102によって囲まれた基板表面(活性領域の表面)には、P型のピニング層(P
+領域)104が形成されている。このピニング層104は、素子分離領域102によって囲まれた基板表面にP型不純物をドーピングすることにより形成されている。
【0028】
なお、フォトダイオードPPDの外周辺(換言すると、N型拡散領域103の外周辺)は、
図2において一点鎖線11で示されている。また、素子分離領域102とそれに囲まれた活性領域との境界線は、
図2において実線10で示されている。ただし、素子分離領域102とそれに囲まれた領域との境界線のうち、配線層に隠れている境界線については、破線10で示されている。
【0029】
さらに、半導体基板100の表面上(即ち、ピニング層104及び素子分離領域102の表面上)には、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、SiO
2等の透明の絶縁膜であるPMD(PMD;Pre Metal Dielectric)105が形成されている。
【0030】
固体撮像素子に用いられるフォトダイオードでは、通常、光信号によって励起された信号電子に加えて、熱励起による暗電流電子が生成される。この暗電流電子の出力は0に近いほどよく、暗電流の増大は、画質の劣化を生じさせる。
【0031】
例えば、ピニング層104を持たないフォトダイオードの場合、フォトダイオードの構成要素の一つであるN型拡散領域103と、PMD105と、の界面にダングリングボンドや結晶欠陥が多数存在するため、バンド構造の禁制帯領域に欠陥準位が生じてしまう。その結果、熱励起によって生成される暗電流電子が増加して、暗電流が増大してしまう。それに対し、ピニング層104を持つ埋め込みフォトダイオードPPDの場合、熱励起によって生成された暗電流電子は、P型のピニング層104及びPウェル101を伝搬してグランドに掃引される。それにより、暗電流の増大が抑制されるため、画像の品質劣化は抑制される。
【0032】
続いて、
図4を用いて、画素部50のフォトダイオードPPDが宇宙空間、原子力施設、放射線施設内等で用いられた場合の課題について説明する。
図4には、
図2に示す平面レイアウト図のA−A’部分の断面が受ける放射線の影響が示されている。なお、
図4では、
図3において既に説明された符号の一部が省略されている。
【0033】
図4に示すように、ガンマ線等の放射線がフォトダイオードPPDに照射された場合、放射線の照射によって発生するトータルドーズ効果の電離作用により、PMD105や素子分離領域102等の絶縁体中に電荷が生成される。この電荷のうち、負電荷である電子は、移動度が高いため、比較的短い時間で電極側に掃引され、電極において消滅する。それに対し、正電荷である正孔は、負電荷よりも移動度が低いため、絶縁体中に取り残されてしまう。この正電荷は、徐々に絶縁体外に掃引されるが、その過程において、絶縁体とシリコン基板との界面近傍に存在する欠陥にトラップされ、固定正電荷となる。
【0034】
ここで、絶縁体の一つであるPMD105と、それに隣接するピニング層104と、の界面近傍に固定正電荷が発生した場合でも、P型不純物濃度の高いP型のピニング層104は、固定正電荷の影響を受けにくく、N型に反転する可能性は低い。したがって、ピニング層104による暗電流抑制の効果は維持される。
【0035】
それに対し、もう一つの絶縁体である素子分離領域102と、それに隣接するPウェル101と、の界面近傍に固定正電荷が発生した場合、素子分離領域102近傍のP型不純物濃度の低いPウェル101は、固定正電荷の影響を受けてN型に反転し、N型反転領域106を形成する。
【0036】
このとき、N型反転領域106と、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103と、の間には、P型不純物濃度が低くかつ薄いPウェル101が存在するに過ぎず、N型反転領域106とN型拡散領域103とが空間電荷領域を介してつながった状態となりやすい。あるいは、N型反転領域106と、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103と、が直接的につながった状態となる可能性もある。それにより、素子分離領域102とN型反転領域106との界面において熱励起によって発生した暗電流電子のうち、Pウェル101からグランドに掃引されずに残った暗電流電子が、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103に流れ込むため、フォトダイオードPPDに暗電流が蓄積され、その結果、画質が劣化してしまう。
【0037】
このような問題を解決するため、発明者らは次に画素部60を検討した。
【0038】
(事前検討段階における画素部60の説明)
図5は、
図1に示す画素部1の第2比較例である画素部60の平面レイアウト図である。
図6は、
図5に示す平面レイアウト図のB−B’部分の断面模式図である。なお、画素部60の回路構成については、画素部1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0039】
図5及び
図6に示すように、画素部60には、画素部50の場合と比較して、素子分離領域102とフォトダイオードPPD(より詳細にはN型拡散領域103)との間の基板表面から内側にかけて、ピニング層104よりもP型不純物濃度の高いP型のガードリング領域(P
++領域)107がさらに形成されている。より具体的には、P型のガードリング領域107は、素子分離領域102とフォトダイオードPPDとの間の基板表面から内側にかけて、N型拡散領域103と分離するように、かつ、好ましくは素子分離領域102と隣接するように形成されている。
【0040】
ここで、P型のガードリング領域107は、平面視上、素子分離領域102に囲まれた基板表面のうち、素子分離領域102の内周辺に沿って形成された基板表面に対して高濃度のP型不純物をドーピングすることにより形成される。また、P型のガードリング領域107は、接地電圧が供給される接地電圧線GNDに接続されている。画素部60のその他の構造については、画素部50の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0041】
なお、P型のガードリング領域107は、例えば同じ半導体基板上に形成されるPチャネルMOSトランジスタのソース及びドレインとして用いられるP型拡散領域などと同じ製造工程で形成されることができる。また、ピニング層104は、P型のガードリング領域107を含む、素子分離領域102に囲まれた基板表面の全体にP型不純物をドーピングすることにより形成されることができる。
【0042】
このように、画素部60は、素子分離領域102とフォトダイオードPPDとの間の基板表面にP型不純物濃度の高いP型のガードリング領域107を設けることにより、素子分離領域102とそれに隣接するPウェル101との界面近傍に発生した固定正電荷の影響で素子分離領域102近傍のPウェル101がN型に反転してしまうのを抑制している。それにより、素子分離領域102とN型反転領域106との界面において発生する暗電流電子が抑制されるため、素子分離領域102とN型反転領域106との界面からフォトダイオードPPDのN型拡散領域103への暗電流電子の流れ込みが抑制される。
【0043】
しかしながら、画素部60でも、依然として、素子分離領域102とN型反転領域106との界面において発生した暗電流電子の抑制が十分ではないため、素子分離領域102とN型反転領域106との界面からフォトダイオードPPDのN型拡散領域103への暗電流電子の流れ込みを十分に抑制することができなかった。
【0044】
以下、
図7を用いて、画素部60のフォトダイオードPPDが宇宙空間、原子力施設、放射線施設内等で用いられた場合の課題について説明する。
図7には、
図5に示す平面レイアウト図のB−B’部分の断面が受ける放射線の影響が示されている。なお、
図7では、
図6において既に説明された符号の一部が省略されている。
【0045】
まず、P型不純物濃度の高いP型のガードリング領域107は、PチャネルMOSトランジスタのソース及びドレインとして用いられるP型拡散領域などと同じ製造工程で形成されることが考えられる。その場合、
図7に示すように、ガードリング領域107は、素子分離領域102とピニング層104との間の基板表面から基板内部の浅い領域にのみ形成される。そのため、素子分離領域102とそれに隣接するPウェル101との界面は、依然として、基板内部の大部分(素子分離領域102の側面の大部分及び底面)において存在することになる。
【0046】
そのため、基板内部に存在する素子分離領域102とそれに隣接するPウェル101との界面近傍に固定正電荷が発生した場合、素子分離領域102近傍のP型不純物濃度の低いPウェル101は、固定正電荷の影響を受けてN型に反転し、N型反転領域106を形成する。それにより、素子分離領域102とN型反転領域106との界面において熱励起によって発生した暗電流電子のうち、Pウェル101からグランドに掃引されずに残った暗電流電子が、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103に流れ込むため、フォトダイオードPPDに暗電流が蓄積され、その結果、画質が劣化してしまう。
【0047】
そこで、発明者らは、素子分離領域102とPウェル101との界面において発生した暗電流電子がフォトダイオードPPDに流れ込むのを防ぐことによって、放射線の照射に起因して生じる画質の劣化を防ぐことが可能な、実施の形態1にかかるCMOSイメージセンサ(固体撮像素子)を見いだした。
【0048】
(実施の形態1に係る画素部1の説明)
図8は、
図1に示す画素部1の平面レイアウト図である。なお、
図8では、第1配線層のメタル以下が示されており、第2層以上のメタルは省略されている。
図9は、
図8に示す平面レイアウト図のC−C’部分の断面模式図である。
図10は、
図8に示す平面レイアウト図のD−D’部分の断面模式図である。
【0049】
図8〜
図10に示すように、画素部1には、画素部50の場合と比較して、素子分離領域102とフォトダイオードPPD(より詳細にはN型拡散領域103)との間の基板表面から内側にかけて、N型拡散領域103よりもN型不純物濃度の高いN型のガードリング領域(N
++領域)108aがさらに形成されている。より具体的には、N型のガードリング領域108aは、素子分離領域102とフォトダイオードPPDとの間の基板表面から内側にかけて、N型拡散領域103と分離するように、かつ、好ましくは素子分離領域102と隣接するように形成されている。
【0050】
ここで、N型のガードリング領域108aは、平面視上、素子分離領域102に囲まれた基板表面のうち、素子分離領域102の内周辺に沿って形成された基板表面に対して高濃度のN型不純物をドーピングすることにより形成される。また、N型のガードリング領域108aは、接地電圧GND又はそれより高い電圧が供給される電圧線Vgrに接続されている。
【0051】
なお、N型のガードリング領域108aは、例えば同じ半導体基板上に形成されるNチャネルMOSトランジスタのソース及びドレインとして用いられるN型拡散領域などと同じ製造工程で形成されることができる。
【0052】
また、ピニング層104は、N型のガードリング領域107を含む、素子分離領域102に囲まれた基板表面の全体にP型不純物をドーピングすることによって形成されることができる。即ち、N型のガードリング領域108aは、高濃度のN型不純物をドーピングすることによって形成されているため、ピニング層104形成用の低濃度のP型不純物がドーピングされたとしてもN型不純物濃度の高い状態に維持される。
【0053】
さらに、画素部1には、画素部50の場合と比較して、N型のガードリング領域108aとフォトダイオードPPD(より詳細にはN型拡散領域103)との間の基板表面から内側にかけて、ピニング層104よりもP型不純物濃度が高く、かつ、N型のガードリング領域108aと同程度の不純物濃度のP型のガードリング領域(P
++領域)107がさらに形成されている。より具体的には、P型のガードリング領域107は、N型のガードリング領域108aとフォトダイオードPPDとの間の基板表面から内側にかけて、N型のガードリング領域108a及びN型拡散領域103と分離するように形成されている。
【0054】
ここで、P型のガードリング領域107は、平面視上、素子分離領域102に囲まれた基板表面のうち、N型のガードリング領域108a及びフォトダイオードPPD間の基板表面に対して高濃度のP型不純物をドーピングすることにより形成される。また、P型のガードリング領域107は、接地電圧が供給される接地電圧線GNDに接続されている。
【0055】
なお、P型のガードリング領域107は、同じ半導体基板上に形成されるPチャネルMOSトランジスタのソース及びドレインとして用いられるP型拡散領域などと同じ製造工程で形成されることができる。
【0056】
また、ピニング層104は、N型のガードリング領域108aだけでなくP型のガードリング領域107を含む、素子分離領域102に囲まれた基板表面の全体にP型不純物をドーピングすることによって形成されることができる。
【0057】
本実施の形態では、ピニング層104は、ガードリング領域107,108aの形成前又は形成後に、素子分離領域102に囲まれた基板表面の全体にP型不純物をドーピングすることによって形成されている。それにより、ピニング層104は、フォトダイオードPPDの表面のみならず、フォトダイオードPPDとP型ガードリング領域107との間の基板表面、及び、P型ガードリング領域107とN型ガードリング領域108aとの間の基板表面に形成される。なお、ピニング層104を形成する際に、フォトダイオードPPDとP型ガードリング領域107との間の基板表面、及び、P型ガードリング領域107とN型ガードリング領域108aとの間の基板表面、に形成されたP型拡散領域は、P型のガードリング領域107より低濃度のP不純物濃度のP型のガードリング領域104としての役割を果たす。
【0058】
なお、
図10には、トランスファトランジスタMTGのドレイン(MTG_D)として用いられるN型拡散領域108、及び、ゲート(MTG_G)として用いられるポリシリコン109が示されている。ここで、浮遊拡散容量FDが形成されるN型拡散領域108と、素子分離領域102と、の間の基板表面から内側にかけての断面構造は、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103と、素子分離領域102と、の間の基板表面から内側にかけての断面構造と同様となっている。
【0059】
続いて、
図11及び
図12を用いて、画素部1のフォトダイオードPPDが宇宙空間、原子力施設、放射線施設等で用いられた場合の影響について説明する。
図11には、
図8に示す断面が受ける放射線の影響及び本発明の効果が示されている。
図12には、
図8に示す断面が受ける放射線の影響及び本発明の効果が示されている。なお、
図11,12では、それぞれ
図9,10において既に説明された符号の一部が省略されている。
【0060】
図11,
図12に示すように、ガンマ線等の放射線がフォトダイオードPPDに照射された場合、放射線の照射によって発生するトータルドーズ効果の電離作用により、PMD105や素子分離領域102等の絶縁体中に電荷が生成される。この電荷のうち、負電荷である電子は、移動度が高いため、比較的短い時間で電極側に掃引され、電極において消滅する。それに対し、正電荷である正孔は、負電荷よりも移動度が低いため、絶縁体中に取り残されてしまう。この正電荷は、徐々に絶縁体外に掃引されるが、その過程において、絶縁体とシリコン基板との界面近傍に存在する欠陥にトラップされ、固定正電荷となる。
【0061】
ここで、絶縁体の一つであるPMD105と、それに隣接するピニング層104と、の界面近傍に固定正電荷が発生した場合でも、P型不純物濃度の高いP型のピニング層104は、固定正電荷の影響を受けにくく、N型に反転する可能性は低い。したがって、ピニング層104による暗電流抑制の効果は維持される。
【0062】
それに対し、もう一つの絶縁体である素子分離領域102と、それに隣接するPウェル101と、の界面近傍に固定正電荷が発生した場合、素子分離領域102近傍のP型不純物濃度の低いPウェル101は、固定正電荷の影響を受けてN型に反転し、N型反転領域106を形成する。
【0063】
そこで、本実施の形態では、素子分離領域102とフォトダイオードPPDと間において、素子分離領域102近傍の基板表面から内側にかけて、接地電圧又は接地電圧より高い電圧が印加されたN型のガードリング領域108aを設けている。このN型のガードリング領域108aと、素子分離領域102とPウェル101との界面近傍に形成されたN型反転領域106とは、互いに低抵抗で接続された状態となる。それにより、素子分離領域102とN型反転領域106との界面において熱励起によって発生した暗電流電子は、N型のガードリング領域108aを介してグランドに掃引される。そのため、素子分離領域102とN型反転領域106との界面からフォトダイオードPPDのN型拡散領域103への暗電流電子の流れ込みが抑制される。その結果、放射線の照射に起因して生じる画質の劣化が抑制される。
【0064】
また、本実施の形態では、素子分離領域102と、浮遊拡散容量FDが形成されるN型拡散領域108と、の間においても、素子分離領域102近傍の基板表面から内側にかけて、接地電圧又は接地電圧より高い電圧が印加されたN型のガードリング領域108aを設けている。それにより、素子分離領域102とN型反転領域106との界面から、浮遊拡散容量FDが形成されるN型拡散領域108への暗電流電子の流れ込みが抑制される。これは、例えばグローバルシャッター動作させる場合など、浮遊拡散容量FDに信号電荷を保持し続ける必要がある場合に特に有効である。
【0065】
ここで、ピニング層104は、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103とPMD105との界面において発生した暗電流電子を掃引させるため、例えばPウェル101を介してグランドに接続されている必要がある。しかしながら、N型のガードリング領域108aが形成されることにより、ピニング層104とPウェル101との間の接続が絶たれてしまう可能性がある。その場合、ピニング層104は、フローティング状態となるため暗電流電子を掃引させることができなくなってしまう。
【0066】
そこで、本実施の形態では、N型のガードリング領域108aとフォトダイオードPPDとの間の基板表面から内側にかけて、接地電圧が印加されたP型のガードリング領域107をさらに設けている。それにより、ピニング層104は、P型のガードリング層104,107を介してグランドに接続されるため、暗電流電子を正常に掃引させることができる。
【0067】
ここで、N型のガードリング領域108aは、接地電圧よりも高い電圧にバイアスされることによって、負電荷である暗電流電子をより容易に引き込むことができる。しかしながら、その場合、不純物濃度の高いN型のガードリング領域108a及びP型のガードリング領域107からなるPN接合ダイオードによってリーク暗電流が生じてしまう可能性がある。そのため、仮に、P型のガードリング領域107が、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103や、浮遊拡散容量FDが形成されるN型拡散領域108に接触している場合、リーク暗電流がN型拡散領域103やN型拡散領域108に流れ込んでしまうため、画質の劣化が生じてしまう可能性がある。
【0068】
そこで、本実施の形態では、P型のガードリング領域107が、N型のガードリング領域108a、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103、及び、浮遊拡散容量FDが形成されるN型拡散領域108と分離するようにして設けられ、かつ、それらの間には、ガードリング領域107よりもP型不純物濃度の低いP型のガードリング領域104が形成されている。それにより、意図しないPN接合ダイオードの形成を防ぐことができるとともに、意図せず形成されたPN接合ダイオードとN型拡散領域103,108との接触を防ぐことができるため、リーク暗電流による画質の劣化が抑制される。
【0069】
さらに、本実施の形態では、ガードリング領域107,108aが、MOSトランジスタのソース及びドレインとして用いられる拡散領域などと同じ製造工程で形成されることができる。つまり、ガードリング領域107,108aを形成するための製造工程を別途追加する必要がない。そのため、プロセス設計の工数及び費用の増大が抑制される。
【0070】
(実施の形態1に係るCMOSイメージセンサに用いられる画素部1の変形例)
一般的なCMOSプロセスでは、トランジスタのソース、ドレイン及びポリシリコンゲートのそれぞれの抵抗率を低下させるため技術として金属シリサイド技術が採用されることが多い。しかしながら、CMOSイメージセンサに用いられるフォトダイオードPPDは、シリサイド形成時における表面の金属汚染、及び、シリサイド化による結晶欠陥の発生等による暗電流増加を避けるため、例えばシリサイドブロック膜(絶縁膜)でマスクされることでシリサイド化されないようにしている。
【0071】
それに対し、ガードリング領域107,108aは、フォトダイオードPPDと分離して設けられているため、シリサイド化されてもフォトダイオードPPDに悪影響を与えることはない。したがって、ガードリング領域107,108aは、シリサイドブロック膜などの絶縁膜でマスクされずにシリサイド化される。これにより、ガードリング領域107,108aのそれぞれの抵抗率を低下させることができるため、ガードリング領域107,108aによるガードリング能力を強化させることができる。
【0072】
なお、N型のガードリング領域108aが接地電圧にバイアスされている場合、金属シリサイドは、例えばガードリング領域107,108aのそれぞれの表面上に形成される。他方、N型のガードリング領域108aが接地電圧よりも高い電圧にバイアスされている場合、異電位間の短絡を防ぐため、金属シリサイドは、N型のガードリング領域107上の表面上にのみ、P型のガードリング領域108aの表面上にのみ、又は、ガードリング領域107,108aのそれぞれの表面上に電気的に分離して形成される。
【0073】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。例えば、各MOSトランジスタの導電型は、P型からN型、N型からP型にそれぞれ置き換えられてもよい。