【解決手段】一実施の形態によれば、半導体素子は、半導体基板100と、半導体基板100のPウェル101上に形成され、Pウェル101とともにPN接合型のフォトダイオードPPDを構成するN型拡散領域103と、平面視上、フォトダイオードPPDを囲むようにして半導体基板100に形成された素子分離領域102と、素子分離領域102とPウェル101との境界線から離れて素子分離領域102上に設けられ、Pウェル101の電位よりも低い所定電圧が印加されたポリシリコン電極109aと、を備える。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0012】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0013】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1にかかるCMOSイメージセンサ(固体撮像素子;半導体素子)に用いられる画素部1の基本的な回路構成を示す図である。
図1に示すCMOSイメージセンサの画素部1は、所謂、APS(Active Pixel Sensor)とも呼ばれる典型的な4トランジスタ型CMOSイメージセンサの画素部である。
【0014】
図1に示すように、画素部1は、4つのNチャネルMOSトランジスタMTG,MR,MDR,MSELと、フォトダイオードPPDと、を備える。以下、4つのNチャネルMOSトランジスタMTG,MR,MDR,MSELを、それぞれ、トランスファトランジスタMTG、リセットトランジスタMR、増幅トランジスタMDR、及び、行選択トランジスタMSELとも称す。
【0015】
フォトダイオードPPDのアノードは、接地電圧線GNDに接続され、フォトダイオードPPDのカソードは、トランスファトランジスタMTGのソース(MTG_S)に接続されている。トランスファトランジスタMTGでは、ドレイン(MTG_D)がノードN1に接続され、ゲート(MTG_G)が、転送ゲート駆動信号φTGの伝搬する転送ゲート駆動ライン4に接続されている。
【0016】
リセットトランジスタMRでは、ソース(MR_S)がノードN1に接続され、ドレイン(MR_D)が電源電圧線VDDに接続され、ゲート(MR_G)が、リセット信号φRの伝搬するリセット信号線5に接続されている。
【0017】
増幅トランジスタMDRでは、ソース(MDR_S)がノードN2に接続され、ドレイン(MDR_D)が電源電圧線VDDに接続され、ゲート(MDR_G)がノードN1に接続されている。つまり、トランスファトランジスタMTGのドレイン、リセットトランジスタMRのソース、及び、増幅トランジスタMDRのゲートは、ノードN1において互いに接続されている。また、ノードN1には、信号電荷を信号電圧に変換する役割を担う浮遊拡散容量FDが形成されている。
【0018】
行選択トランジスタMSELでは、ソース(MSEL_S)が、列方向に設けられた他の複数の画素とともに出力信号線VOUTに接続され、ドレインがノードN2に接続され、ゲート(MSEL_G)が、行選択信号φSELの伝搬する行選択信号線6に接続されている。
【0019】
フォトダイオードPPDは、受光した光信号を電気信号に変換する。トランスファトランジスタMTGは、転送ゲート駆動信号φTGがアクティブになった場合にオンし、フォトダイオードPPDによって光信号から変換された電気信号をノードN1に転送する。それにより、ノードN1に形成された浮遊拡散容量FDには、フォトダイオードPPDからの電気信号に応じた電荷が蓄積される。増幅トランジスタMDRは、ノードN1の電圧をドライブしてノードN2に出力する。行選択トランジスタMSELは、行選択信号φSELがアクティブになった場合にオンし、ノードN2の電圧(即ち、フォトダイオードPPDによって光信号から変換された電気信号)を、出力信号線VOUTに出力する。
【0020】
(発明者らによる事前検討)
実施の形態1にかかるCMOSイメージセンサに用いられる画素部1の詳細な構造について説明する前に、発明者らが事前検討した内容について説明する。
【0021】
(事前検討段階における画素部50の説明)
図2は、
図1に示す画素部1の第1比較例である画素部50の平面レイアウト図である。
図3は、
図2に示す平面レイアウト図のA−A’部分の断面模式図である。なお、画素部50の回路構成については、画素部1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0022】
図2に示すように、平面視上、画素部50の大部分を占める領域には、一辺に凹部を有する矩形状のフォトダイオードPPDが形成されている。また、フォトダイオードPPDの表面上には、当該フォトダイオードPPDを覆うようにしてP型のピニング層(P
+領域)104が形成されている。
【0023】
また、平面視上、矩形状のフォトダイオードPPDの凹部領域に形成されているPウェル101の表面には、フォトダイオードPPDの構成要素の一つであるN型拡散領域(N
−領域)103と分離して、N型拡散領域103よりもN型不純物濃度の高いN型拡散領域(N
++領域)108が形成されている。また、N型拡散領域103とN型拡散領域108との間に形成されているPウェル101上には、ポリシリコン109が形成されている。ここで、N型拡散領域103をソースMTG_S、N型拡散領域108をドレインMTG_D、ポリシリコン109をゲートMTG_Gとすることによって、トランスファトランジスタMTGが構成されている。
【0024】
さらに、平面視上、矩形状のフォトダイオードPPDの凹部を有する一辺側の周辺領域(
図2の紙面の下部)には、トランスファトランジスタMTG以外の残りのトランジスタMR,MDR,MSELも形成されている。
【0025】
図3の断面模式図に示すように、半導体基板100に形成されたPウェル101の表面から内側にかけて、N型拡散領域103が形成されている。このN型拡散領域103は、Pウェル101の表面に低濃度のN型不純物をドーピングすることにより形成されている。ここで、Pウェル101とN型拡散領域103とによってPN接合型のフォトダイオードPPDが構成されている。
【0026】
また、Pウェル101の表面から内側にかけて、N型拡散領域103と間隔を空けるようにして、素子分離領域102が形成されている。本例では、素子分離領域102として、STI(Shallow Trench Isolation)が用いられている場合について説明するが、これに限られず、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)が用いられても良い。N型拡散領域103の表面を含む、素子分離領域102によって囲まれた基板表面(活性領域の表面)には、P型のピニング層(P
+領域)104が形成されている。このピニング層104は、素子分離領域102によって囲まれた基板表面にP型不純物をドーピングすることにより形成されている。
【0027】
なお、フォトダイオードPPDの外周辺(換言すると、N型拡散領域103の外周辺)は、
図2において一点鎖線11で示されている。また、素子分離領域102とそれに囲まれた活性領域との境界線は、
図2において実線10で示されている。ただし、素子分離領域102とそれに囲まれた領域との境界線のうち、配線層に隠れている境界線については、破線10で示されている。
【0028】
さらに、半導体基板100の表面上(即ち、ピニング層104及び素子分離領域102の表面上)には、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、SiO
2等の透明の絶縁膜であるPMD(PMD;Pre Metal Dielectric)105が形成されている。
【0029】
固体撮像素子に用いられるフォトダイオードでは、通常、光信号によって励起された信号電子に加えて、熱励起による暗電流電子が生成される。この暗電流電子の出力は0に近いほどよく、暗電流の増大は、画質の劣化を生じさせる。
【0030】
例えば、ピニング層104を持たないフォトダイオードの場合、フォトダイオードの構成要素の一つであるN型拡散領域103と、PMD105と、の界面にダングリングボンドや結晶欠陥が多数存在するため、バンド構造の禁制帯領域に欠陥準位が生じてしまう。その結果、熱励起によって生成される暗電流電子が増加して、暗電流が増大してしまう。それに対し、ピニング層104を持つ埋め込みフォトダイオードPPDの場合、熱励起によって生成された暗電流電子は、P型のピニング層104及びPウェル101を伝搬してグランドに掃引される。それにより、暗電流の増大が抑制されるため、画像の品質劣化は抑制される。
【0031】
続いて、
図4を用いて、画素部50のフォトダイオードPPDが宇宙空間、原子力施設、放射線施設内等で用いられた場合の課題について説明する。
図4には、
図2に示す平面レイアウト図のA−A’部分の断面が受ける放射線の影響が示されている。なお、
図4では、
図3において既に説明された符号の一部が省略されている。
【0032】
図4に示すように、ガンマ線等の放射線がフォトダイオードPPDに照射された場合、放射線の照射によって発生するトータルドーズ効果の電離作用により、PMD105や素子分離領域102等の絶縁体中に電荷が生成される。この電荷のうち、負電荷である電子は、移動度が高いため、比較的短い時間で電極側に掃引され、電極において消滅する。それに対し、正電荷である正孔は、負電荷よりも移動度が低いため、絶縁体中に取り残されてしまう。この正電荷は、徐々に絶縁体外に掃引されるが、その過程において、絶縁体とシリコン基板との界面近傍に存在する欠陥にトラップされ、固定正電荷となる。
【0033】
ここで、絶縁体の一つであるPMD105と、それに隣接するピニング層104と、の界面近傍に固定正電荷が発生した場合でも、P型不純物濃度の高いP型のピニング層104は、固定正電荷の影響を受けにくく、N型に反転する可能性は低い。したがって、ピニング層104による暗電流抑制の効果は維持される。
【0034】
それに対し、もう一つの絶縁体である素子分離領域102と、それに隣接するPウェル101と、の界面近傍に固定正電荷が発生した場合、素子分離領域102近傍のP型不純物濃度の低いPウェル101は、固定正電荷の影響を受けてN型に反転し、N型反転領域106を形成する。
【0035】
このとき、N型反転領域106と、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103と、の間には、P型不純物濃度が低くかつ薄いPウェル101が存在するに過ぎず、N型反転領域106とN型拡散領域103とが空間電荷領域を介してつながった状態となりやすい。あるいは、N型反転領域106と、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103と、が直接的につながった状態となる可能性もある。それにより、素子分離領域102とN型反転領域106との界面において熱励起によって発生した暗電流電子のうち、Pウェル101からグランドに掃引されずに残った暗電流電子が、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103に流れ込むため、フォトダイオードPPDに暗電流が蓄積され、その結果、画質が劣化してしまう。
【0036】
このような問題を解決するため、発明者らは次に画素部60を検討した。
【0037】
(事前検討段階における画素部60の説明)
図5は、
図1に示す画素部1の第2比較例である画素部60の平面レイアウト図である。
図6は、
図5に示す平面レイアウト図のB−B’部分の断面模式図である。なお、画素部60の回路構成については、画素部1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0038】
図5及び
図6に示すように、画素部60には、画素部50の場合と比較して、素子分離領域102とフォトダイオードPPD(より詳細にはN型拡散領域103)との間の基板表面から内側にかけて、ピニング層104よりもP型不純物濃度の高いP型のガードリング領域(P
++領域)107がさらに形成されている。より具体的には、P型のガードリング領域107は、素子分離領域102とフォトダイオードPPDとの間の基板表面から内側にかけて、N型拡散領域103と分離するように、かつ、好ましくは素子分離領域102と隣接するように形成されている。
【0039】
ここで、P型のガードリング領域107は、平面視上、素子分離領域102に囲まれた基板表面のうち、素子分離領域102の内周辺に沿って形成された基板表面に対して高濃度のP型不純物をドーピングすることにより形成される。また、P型のガードリング領域107は、接地電圧が供給される接地電圧線GNDに接続されている。画素部60のその他の構造については、画素部50の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0040】
なお、P型のガードリング領域107は、例えば同じ半導体基板上に形成されるPチャネルMOSトランジスタのソース及びドレインとして用いられるP型拡散領域などと同じ製造工程で形成されることができる。また、ピニング層104は、P型のガードリング領域107を含む、素子分離領域102に囲まれた基板表面の全体にP型不純物をドーピングすることにより形成されることができる。
【0041】
このように、画素部60は、素子分離領域102とフォトダイオードPPDとの間の基板表面にP型不純物濃度の高いP型のガードリング領域107を設けることにより、素子分離領域102とそれに隣接するPウェル101との界面近傍に発生した固定正電荷の影響で素子分離領域102近傍のPウェル101がN型に反転してしまうのを抑制している。それにより、素子分離領域102とN型反転領域106との界面において発生する暗電流電子が抑制されるため、素子分離領域102とN型反転領域106との界面からフォトダイオードPPDのN型拡散領域103への暗電流電子の流れ込みが抑制される。
【0042】
しかしながら、画素部60でも、依然として、素子分離領域102とN型反転領域106との界面において発生した暗電流電子の抑制が十分ではないため、素子分離領域102とN型反転領域106との界面からフォトダイオードPPDのN型拡散領域103への暗電流電子の流れ込みを十分に抑制することができなかった。
【0043】
以下、
図7を用いて、画素部60のフォトダイオードPPDが宇宙空間、原子力施設、放射線施設内等で用いられた場合の課題について説明する。
図7には、
図5に示す平面レイアウト図のB−B’部分の断面が受ける放射線の影響が示されている。なお、
図7では、
図6において既に説明された符号の一部が省略されている。
【0044】
まず、P型不純物濃度の高いP型のガードリング領域107は、PチャネルMOSトランジスタのソース及びドレインとして用いられるP型拡散領域などと同じ製造工程で形成されることが考えられる。その場合、
図7に示すように、ガードリング領域107は、素子分離領域102とピニング層104との間の基板表面から基板内部の浅い領域にのみ形成される。そのため、素子分離領域102とそれに隣接するPウェル101との界面は、依然として、基板内部の大部分(素子分離領域102の側面の大部分及び底面)において存在することになる。
【0045】
そのため、基板内部に存在する素子分離領域102とそれに隣接するPウェル101との界面近傍に固定正電荷が発生した場合、素子分離領域102近傍のP型不純物濃度の低いPウェル101は、固定正電荷の影響を受けてN型に反転し、N型反転領域106を形成する。それにより、素子分離領域102とN型反転領域106との界面において熱励起によって発生した暗電流電子のうち、Pウェル101からグランドに掃引されずに残った暗電流電子が、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103に流れ込むため、フォトダイオードPPDに暗電流が蓄積され、その結果、画質が劣化してしまう。
【0046】
そこで、発明者らは、素子分離領域102とPウェル101との界面において発生した暗電流電子がフォトダイオードPPDに流れ込むのを防ぐことによって、放射線の照射に起因して生じる画質の劣化を防ぐことが可能な、実施の形態1にかかるCMOSイメージセンサ(固体撮像素子)を見いだした。
【0047】
(実施の形態1に係る画素部1の説明)
図8は、
図1に示す画素部1の平面レイアウト図である。なお、
図8では、第1配線層のメタル以下が示されており、第2層以上のメタルは省略されている。
図9は、
図8に示す平面レイアウト図のE−E’部分の断面模式図である。また、
図10は、
図8に示す画素部1が行列状に配置されたCMOSイメージセンサ20の平面レイアウト図である。
【0048】
図8及び
図9に示すように、画素部1には、画素部50の場合と比較して、素子分離領域102上に、素子分離領域102とPウェル101との境界線10及びその他のポリシリコン電極(例えばMOSトランジスタのゲート電極)から十分に離れて、電極109aが設けられている。換言すると、電極109aは、素子分離領域102上に、素子分離領域102とPウェル101との境界線10及びその他のポリシリコン電極と接しないように配置されている。例えば、電極109aは、電極109aと境界線10との距離が、素子分離領域102の基板表面からの深さ(z軸方向の長さ)以上となるように配置されている。また、この電極109aには、少なくともPウェル101の電位よりも低い電圧Vnegが印加されている。より好ましくは、この電極109aには、フォトダイオードPPDの素子耐圧や、CMOS素子の素子耐圧(例えば、トランジスタMN1のゲート耐圧及びドレイン−ソース耐圧を含む)を超えるような絶対値の負の電圧Vnegが印加されている。
【0049】
なお、本実施の形態では、電極109aが、ポリシリコンによって形成されている場合について説明するが、これに限られない。電極109aは、ポリシリコンと同等の機能を実現可能な他の材料によって形成されていても良い。以下、電極109aをポリシリコン電極109aと称す。
【0050】
具体的には、ポリシリコン電極109aは、平面視上、フォトダイオードPPDと、トランジスタMR,MDR,MSELと、の間の境界領域に設けられた素子分離領域102上の中央部分に線状に配置されている。つまり、ポリシリコン電極109aは、素子分離領域102とフォトダイオードPPDを含む活性領域との境界線、及び、素子分離領域102とトランジスタMR,MDR,MSELを含む活性領域との境界線、のそれぞれからできるだけ離れて(それぞれに接しないように)素子分離領域102上に配置されている。
【0051】
また、
図10を参照すると、ポリシリコン電極109aは、平面視上、画素部1のフォトダイオードPPDと、画素部1に隣接する別の画素部1のフォトダイオードPPDと、の間の境界領域に設けられた素子分離領域102上に、境界領域に沿って線状に配置されている。ここで、ポリシリコン電極109aは、素子分離領域102と一方のフォトダイオードPPDを含む活性領域との境界線、及び、素子分離領域102と他方のフォトダイオードPPDを含む活性領域との境界線、のそれぞれからできるだけ離れて(それぞれに接しないように)素子分離領域102上に配置されている。
【0052】
続いて、
図11を用いて、画素部1のフォトダイオードPPDが宇宙空間、原子力施設、放射線施設等で用いられた場合の影響について説明する。
図11には、
図9に示す断面が受ける放射線の影響及び本発明の効果が示されている。
【0053】
図11に示すように、ガンマ線等の放射線がフォトダイオードPPDに照射された場合、放射線の照射によって発生するトータルドーズ効果の電離作用により、PMD105や素子分離領域102等の絶縁体中に電荷が生成される。この電荷のうち、負電荷である電子は、移動度が高いため、比較的短い時間で電極側に掃引され、電極において消滅する。それに対し、正電荷である正孔は、負電荷よりも移動度が低いため、絶縁体中に取り残されてしまう。この正電荷は、徐々に絶縁体外に掃引されるが、その過程において、絶縁体とシリコン基板との界面近傍に存在する欠陥にトラップされ、固定正電荷となる。
【0054】
ここで、絶縁体の一つであるPMD105と、それに隣接するピニング層104と、の界面近傍に固定正電荷が発生した場合でも、P型不純物濃度の高いP型のピニング層104は、固定正電荷の影響を受けにくく、N型に反転する可能性は低い。したがって、ピニング層104による暗電流抑制の効果は維持される。
【0055】
それに対し、もう一つの絶縁体である素子分離領域102と、それに隣接するPウェル101と、の界面近傍に固定正電荷が発生した場合、素子分離領域102近傍のP型不純物濃度の低いPウェル101は、固定正電荷の影響を受けてN型に反転しやすい状態となっている。
【0056】
そこで、本実施の形態では、負電圧Vnegが印可されたポリシリコン電極109aを、素子分離領域102とPウェル101との境界線10から十分に離して、素子分離領域102上に配置している。それにより、ポリシリコン電極109aからの電界が固定正電荷による電界の影響を打ち消すため、素子分離領域102近傍のPウェル101は、N型に反転しにくくなってP型を維持する。それにより、素子分離領域102とN型反転領域との界面での暗電流電子の生成が抑制されるため、フォトダイオードPPDのN型拡散領域103への暗電流電子の流れ込みが抑制される。その結果、放射線の照射に起因して生じる画質の劣化が抑制される。つまり、画素部1の耐放射線性が向上する。
【0057】
なお、ポリシリコン電極109aに負電圧Vnegが印加された状態で放射線が照射された場合、放射線の電離作用によって発生した電荷のうち、負電荷である電子は、相対的にプラス電位となる基板界面側に移動しやすくなるため、素子分離領域102とシリコン基板との界面近傍に存在する欠陥にトラップされた正孔(正電荷)と再結合しやすくなる。そのため、素子分離領域102とシリコン基板との界面近傍に形成される固定正電荷は減少する。それにより、素子分離領域102近傍のPウェル101は、よりN型に反転しにくくなるため、より確実にP型を維持することができる。
【0058】
また、本実施の形態では、ポリシリコン電極109aが、MOSトランジスタのゲートとして用いられるポリシリコンなどと同じ製造工程で形成されることができる。つまり、ポリシリコン電極109aを形成するための製造工程を別途追加する必要がない。そのため、プロセス設計の工数及び費用の増大が抑制される。
【0059】
ここで、ポリシリコン電極109aに、フォトダイオードPPDの素子耐圧や、CMOS素子の素子耐圧を超えるような絶対値の負電圧Vnegが印加される場合、当該負電圧Vnegは、CMOSイメージセンサで採用されるような通常の低電圧CMOSプロセスでのゲート絶縁膜耐圧やソース−ドレイン間耐圧などによって規定される電圧耐圧を超えてしまう。そのため、仮に、負電圧Vnegが直接フォトダイオードPPDやCMOS素子に印加された場合、絶縁破壊や素子破壊が起こってしまう可能性がある。
【0060】
しかしながら、本実施の形態では、ポリシリコン電極109aは、十分な耐圧を有する素子分離領域102上にのみ配置されており、例えばMOSトランジスタのゲート絶縁膜上である活性領域上には配置されていない。また、ポリシリコン電極109aは、素子分離領域102上のうち、素子分離領域102とそれに囲まれる活性領域との境界線10及びその他のポリシリコン電極から十分に離れて(接しないように)配置されている。そのため、ポリシリコン電極109aからの負電圧VnegによってMOSトランジスタのゲート絶縁膜が破壊されることはない。同様にして、ポリシリコン電極109aからの負電圧VnegによってフォトダイオードPPDやCMOS素子などの素子が破壊されることはない。また、その他のポリシリコン電極、及び、シリコン基板に対しても絶縁耐圧が確保される。
【0061】
さらに、ポリシリコン電極109aと上層のメタル層との間には、素子分離領域102と同程度の十分な耐圧を有する層間絶縁膜(PMD)が設けられている。そのため、ポリシリコン電極109aからの負電圧Vnegによってメタル配線が破壊されることもない。
【0062】
したがって、フォトダイオードPPDやCMOS素子などの絶縁耐圧が確保される範囲内であれば、負電圧Vnegの絶対値を大きくするほど、画素部1の耐放射線性を向上させることができる。
【0063】
なお、ポリシリコン電極109aを、素子分離領域102とそれに囲まれる活性領域との境界線10から十分に離して配置することにより、素子分離領域102と活性領域(Pウェル101)の接触面全体に均一に電界をかけることができる。それにより、素子分離領域102近傍に存在するPウェル101に対して均一にN型に反転することを抑制することができる。それにより、暗電流電子のフォトダイオードPPDへの流れ込みが抑制されるとともに、フォトダイオードPPDと他の素子との間にN型反転領域を介して流れるリーク電流が抑制される。
【0064】
本実施の形態では、ポリシリコン電極109aが、素子分離領域102上に設けられた場合について説明したが、これに限られない。ポリシリコン電極109aは、素子分離領域102上に設けられた層間絶縁膜(PMD)上に設けられていてもよい。
【0065】
<実施の形態2>
実施の形態2では、フォトダイオードPPDを囲むようにして設けられた素子分離領域に対して負電圧を印加することによってフォトダイオードPPDの耐放射線性を向上させる場合について説明した。それに対し、実施の形態3では、CMOS素子(半導体素子)を囲むようにして設けられた素子分離領域に対して負電圧を印加することによって当該CMOS素子の耐放射線性を向上させている。以下、具体的に説明する。
【0066】
図12は、実施の形態2に係るCMOS素子を備えたバッファ2の回路構成を示す図である。
図12に示すように、バッファ2は、2つのCMOSインバータを直列接続することによって構成されている。第1のCMOSインバータは、PチャネルMOSトランジスタMP1と、NチャネルMOSトランジスタMN1と、を有する。また、第2のCMOSインバータは、PチャネルMOSトランジスタMP2と、NチャネルMOSトランジスタMN2と、を有する。
【0067】
トランジスタMP1では、ソース(MP1_S)が電源電圧線VDDに接続され、ドレイン(MP1_D)がノードN12に接続され、ゲート(MP1_G)がノードN11(入力端子)に接続されている。トランジスタMN1では、ソース(MN1_S)が接地電圧線GNDに接続され、ドレイン(MN1_D)がノードN12に接続され、ゲート(MN1_G)がノードN11(入力端子)に接続されている。
【0068】
トランジスタMP2では、ソース(MP2_S)が電源電圧線VDDに接続され、ドレイン(MP2_D)がノードN13(出力端子)に接続され、ゲート(MP2_G)がノードN12に接続されている。トランジスタMN2では、ソース(MN2_S)が接地電圧線GNDに接続され、ドレイン(MN2_D)がノードN13(出力端子)に接続され、ゲート(MN2_G)がノードN12に接続されている。
【0069】
図13は、
図12に示すバッファ2を示す平面レイアウト図である。
図13に示すように、トランジスタMP1,MP2,MN1,MN2は、何れも2段のくし型構造を有している。
【0070】
まず、平面視上、半導体基板100のPウェル101には、トランジスタMN1のソースとして用いられるN型拡散領域(MN1_S)と、トランジスタMN1のドレインとして用いられるN型拡散領域(MN1_D)と、が形成されている。また、これらN型拡散領域間に形成されたPウェル101上には、トランジスタMN1のゲートとして用いられるポリシリコン(MN1_G)が形成されている。N型拡散領域MN1_Sは、接地電圧線GNDに接続され、N型拡散領域MN1_Dは、ノードN12のメタル配線に接続され、ポリシリコンMN1_Gは、ノードN11のメタル配線に接続されている。
【0071】
同様に、平面視上、半導体基板100のPウェル101には、トランジスタMN2のソースとして用いられるN型拡散領域(MN2_S)と、トランジスタMN2のドレインとして用いられるN型拡散領域(MN2_D)と、が形成されている。また、これらN型拡散領域間に形成されたPウェル101上には、トランジスタMN2のゲートとして用いられるポリシリコン(MN2_G)が形成されている。N型拡散領域MN2_Sは、接地電圧線GNDに接続され、N型拡散領域MN2_Dは、ノードN13のメタル配線に接続され、ポリシリコンMN2_Gは、ノードN12のメタル配線に接続されている。
【0072】
また、平面視上、トランジスタMN1の形成領域(Pウェル101)を囲むように、かつ、トランジスタMN2の形成領域(Pウェル101)を囲むようにして、素子分離領域102(
図13において不図示)が形成されている。なお、
図13では、素子分離領域102とそれに囲まれるトランジスタMN1,MN2の形成領域との境界線は、実線10で示されている。ただし、ポリシリコンやメタル配線に隠れている境界線については、破線10で示されている。
【0073】
さらに、トランジスタMN1,MN2を囲む素子分離領域102上には、素子分離領域102とそれに囲まれる活性領域との境界線10から十分に離れて、ポリシリコン電極109bが設けられている。換言すると、電極109bは、素子分離領域102上に、素子分離領域102とそれに囲まれる活性領域との境界線10及びその他のポリシリコン電極(例えばMOSトランジスタのゲート電極)と接しないように配置されている。例えば、電極109bは、電極109bと境界線10との距離が、素子分離領域102の基板表面からの深さ(z軸方向の長さ)以上となるように配置されている。また、このポリシリコン電極109bには、少なくともPウェル101の電位よりも低い電圧Vneg1が印加されている。より好ましくは、このポリシリコン電極109bには、CMOS素子の素子耐圧(例えば、トランジスタMN1のゲート耐圧及びドレイン−ソース耐圧を含む)を超えるような絶対値の負の電圧Vneg1が印加されている。
【0074】
より具体的には、ポリシリコン電極109bは、トランジスタMN1とトランジスタMN2との間の境界領域に設けられた素子分離領域102上に、境界領域に沿って線状に配置されている。ここで、ポリシリコン電極109bは、素子分離領域102とトランジスタMN1の形成領域との境界線、及び、素子分離領域102とトランジスタMN2の形成領域との境界線、のそれぞれからできるだけ離れて(それぞれに接しないように)素子分離領域102上に配置されている。
【0075】
次に、平面視上、半導体基板100のNウェル110には、トランジスタMP1のソースとして用いられるP型拡散領域(MP1_S)と、トランジスタMP1のドレインとして用いられるP型拡散領域(MP1_D)と、が形成されている。また、これらP型拡散領域間に形成されたNウェル110上には、トランジスタMP1のゲートとして用いられるポリシリコン(MP1_G)が形成されている。P型拡散領域MP1_Sは、電源電圧線VDDに接続され、P型拡散領域MP1_Dは、ノードN12のメタル配線に接続され、ポリシリコンMP1_Gは、ノードN11のメタル配線に接続されている。
【0076】
同様に、平面視上、半導体基板100のNウェル110には、トランジスタMP2のソースとして用いられるP型拡散領域(MP2_S)と、トランジスタMP2のドレインとして用いられるP型拡散領域(MP2_D)と、が形成されている。また、これらP型拡散領域間に形成されたNウェル110上には、トランジスタMP2のゲートとして用いられるポリシリコン(MP2_G)が形成されている。P型拡散領域MP2_Sは、電源電圧線VDDに接続され、P型拡散領域MP2_Dは、ノードN13のメタル配線に接続され、ポリシリコンMP2_Gは、ノードN12のメタル配線に接続されている。
【0077】
また、トランジスタMP1の形成領域(Nウェル110)を囲むように、かつ、トランジスタMP2の形成領域(Nウェル110)を囲むようにして、素子分離領域102(
図13において不図示)が形成されている。なお、
図13では、素子分離領域102とそれに囲まれるトランジスタMP1,MP2の形成領域との境界線は、実線10で示されている。ただし、ポリシリコンやメタル配線に隠れている境界線については、破線10で示されている。
【0078】
さらに、トランジスタMP1,MP2を囲む素子分離領域102上には、素子分離領域102とそれに囲まれる活性領域との境界線10から十分に離れて、ポリシリコン電極109cが設けられている。換言すると、電極109cは、素子分離領域102上に、素子分離領域102とそれに囲まれる活性領域との境界線10及びその他のポリシリコン電極(例えばMOSトランジスタのゲート電極)と接しないように配置されている。例えば、電極109cは、電極109cと境界線10との距離が、素子分離領域102の基板表面からの深さ(z軸方向の長さ)以上となるように配置されている。また、ポリシリコン電極109b,109cは、互いに電気的に分離するようにして配置されている。このポリシリコン電極109cには、少なくともNウェル110の電位よりも低い電圧Vneg2が印加されている。より好ましくは、このポリシリコン電極109cには、Nウェル110の電位よりも、CMOS素子の素子耐圧(例えば、トランジスタMP1のゲート耐圧及びドレイン−ソース耐圧を含む)を超える電圧分低い電圧Vneg2が印加されている。
【0079】
より具体的には、例えば、ポリシリコン電極109cは、トランジスタMP1とトランジスタMP2との間の境界領域に設けられた素子分離領域102上に、境界領域に沿って線状に配置されている。ここで、ポリシリコン電極109cは、素子分離領域102とトランジスタMP1の形成領域との境界線、及び、素子分離領域102とトランジスタMP2の形成領域との境界線、のそれぞれからできるだけ離れて(それぞれに接しないように)素子分離領域102上に配置されている。
【0080】
続いて、CMOS素子を備えたバッファ2が宇宙空間、原子力施設、放射線施設等で用いられた場合の影響について説明する。
【0081】
例えば、ガンマ線等の放射線がCMOS素子に照射された場合、放射線の照射によって発生するトータルドーズ効果の電離作用により、素子分離領域102等の絶縁体中に電荷が生成される。この電荷のうち、負電荷である電子は、移動度が高いため、比較的短い時間で電極側に掃引され、電極において消滅する。それに対し、正電荷である正孔は、負電荷よりも移動度が低いため、絶縁体中に取り残されてしまう。この正電荷は、徐々に絶縁体外に掃引されるが、その過程において、絶縁体とシリコン基板との界面近傍に存在する欠陥にトラップされ、固定正電荷となる。
【0082】
ここで、素子分離領域102と、それに隣接するPウェル101と、の界面近傍に固定正電荷が発生した場合、素子分離領域102近傍のP型不純物濃度の低いPウェル101は、固定正電荷の影響を受けてN型に反転しやすい状態となっている。それにより、トランジスタMN1,MN2のNチャネルが素子分離領域102近傍のN型反転領域にまで誘起されてしまう可能性がある。この場合、トランジスタMN1,MN2では、リーク電流が増大したり、閾値電圧(絶対値)が期待値よりも低くなってしまったりする可能性がある。
【0083】
また、素子分離領域102と、それに隣接するNウェル110と、の界面近傍に固定正電荷が発生した場合、固定正電荷の影響で、トランジスタMP1,MP2において形成されるPチャネルの狭チャネル化が進む可能性がある。この場合、トランジスタMP1,MP2の閾値電圧(絶対値)が期待値よりも高くなってしまう可能性がある。
【0084】
そこで、本実施の形態では、負電圧Vneg1が印加されたポリシリコン電極109bを、素子分離領域102とPウェル101との境界線10から十分に離して、素子分離領域102上に配置している。それにより、ポリシリコン電極109bからの電界が固定正電荷による電界の影響を打ち消すため、素子分離領域102近傍のPウェル101は、N型に反転しにくくなってP型を維持する。それにより、トランジスタMN1,MN2において形成されるNチャネルが素子分離領域102近傍のN型反転領域にまで誘起されるのを防ぐことができるため、トランジスタMN1,MN2のリーク電流の増大や閾値電圧の低下が抑制される。つまり、トランジスタMN1,MN2の耐放射線性が向上する。
【0085】
また、本実施の形態では、低電圧Vneg2が印可されたポリシリコン電極109cを、素子分離領域102とNウェル110との境界線10から十分に離して、素子分離領域102上に配置している。それにより、ポリシリコン電極109cからの電界が固定正電荷による電界の影響を打ち消すため、トランジスタMP1,MP2において形成されるPチャネルの狭チャネル化を防ぐことができる。それにより、トランジスタMP1,MP2の閾値電圧(絶対値)の増大が抑制される。つまり、トランジスタMP1,MP2の耐放射線性が向上する。
【0086】
さらに、本実施の形態では、ポリシリコン電極109b,109cが、MOSトランジスタのゲートとして用いられるポリシリコンなどと同じ製造工程で形成されることができる。つまり、ポリシリコン電極109b,109cを形成するための製造工程を別途追加する必要がない。そのため、プロセス設計の工数及び費用の増大が抑制される。
【0087】
なお、特許文献1に開示されたMOSトランジスタでは、チャネルの形状などが変則的であるため、回路設計やレイアウト設計を行う場合、一般的なモデルパラメータを用いた回路シミュレーションによる設計や、レイアウト検証ツールなどによるトランジスタのサイズ(例えばゲート幅、ゲート長)の認識が困難である。それに対し、本実施の形態に係るトランジスタMN1,MN2,MP1,MP2では、ポリシリコン電極109b,109c以外の形状が一般的なMOSトランジスタの場合と同じであるため、回路設計やレイアウト設計を行う場合、一般的なモデルパラメータ及び検証ツールの環境を用いることができる。
【0088】
本実施の形態では、本発明がCMOS素子に適用された場合について説明したが、これに限られない。当然ながら、本発明は、NチャネルMOSトランジスタのみに適用されてもよいし、PチャネルMOSトランジスタのみに適用されてもよい。
【0089】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。例えば、各MOSトランジスタの導電型は、P型からN型、N型からP型にそれぞれ置き換えられてもよい。