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特開2019-201262撮像装置及び撮像装置の基板支持方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-201262(P2019-201262A)
(43)【公開日】2019年11月21日
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像装置の基板支持方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/225 20060101AFI20191025BHJP
   G03B 17/02 20060101ALI20191025BHJP
   G02B 7/02 20060101ALI20191025BHJP
【FI】
   H04N5/225 100
   G03B17/02
   G02B7/02 Z
   G02B7/02 F
   H04N5/225 430
   H04N5/225 700
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-93570(P2018-93570)
(22)【出願日】2018年5月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】クラリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門脇 慶介
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
5C122
【Fターム(参考)】
2H044AH01
2H044AJ01
2H044AJ06
2H100AA33
2H100BB06
2H100BB11
2H100CC07
2H100EE00
5C122EA04
5C122EA12
5C122GE06
5C122GE11
5C122GE18
(57)【要約】
【課題】撮影される画像を劣化しにくくして、より鮮明な画像を得ることが可能な撮像装置及び撮像装置の基板支持方法を提供する。
【解決手段】レンズアッシー12は、カメラケース11に固定されている。基板14は、レンズ25で集光された像を電気信号に変換する撮像素子13を搭載するとともにカメラケース11の内部を撮像素子13の受光面13aに対して垂直に移動可能である。複数のばねシリンダー27は、撮像素子13が搭載される基板14の搭載面としての前面14aを押圧する。複数のエアシリンダー28は、基板14の背面14bを押圧するとともに温度変化に応じて押圧力が変化する。基板14は、複数のばねシリンダー27と複数のエアシリンダー28とのそれぞれの押圧力F1,F2が釣り合う位置で支持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラケースに固定されたレンズ部と、前記レンズ部で集光された像を電気信号に変換する撮像素子を搭載するとともに前記カメラケースの内部を前記撮像素子の受光面に対して垂直に移動可能な基板と、前記撮像素子が搭載される前記基板の搭載面を押圧する第一の押圧部材と、前記基板の前記搭載面の裏面を押圧するとともに温度変化に応じて押圧力が変化する第二の押圧部材とを備え、
前記第一の押圧部材と前記第二の押圧部材とのそれぞれの押圧力が釣り合う位置で前記基板が支持されることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第一の押圧部材は、ばねシリンダーからなることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第二の押圧部材は、エアシリンダーからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第一の押圧部材は、押圧量を制限するストッパー部を備え、前記ストッパー部によって前記基板の移動範囲を制限することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
カメラケースにレンズ部が固定され、前記レンズ部で集光された像を電気信号に変換する撮像素子を搭載するとともに前記カメラケースの内部を前記撮像素子の受光面に対して垂直に移動可能な基板を支持する撮像装置の基板支持方法であって、
前記撮像素子が搭載される前記基板の搭載面を第一の押圧部材で押圧し、前記基板の前記搭載面の裏面を温度変化に応じて押圧力が変化する第二の押圧部材で押圧し、
前記第一の押圧部材と前記第二の押圧部材とのそれぞれの押圧力が釣り合う位置で前記基板を支持することを特徴とする撮像装置の基板支持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像装置の基板支持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ装置として、撮像素子が、撮像チップと、撮像チップを封印するパッケージとを備え、レンズ保持部材の一端に固定された回路基板に焦点距離保持部材を介して撮像素子が取付けられ、環境の温度変化に伴う焦点距離保持部材等の膨張・収縮によって、撮像レンズと撮像チップとの位置関係を保つものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、カメラ装置として、プリント基板と、リードを有する撮像素子との間に、プリント基板側から順に弾性体、基板ベースを配置して、環境の温度変化に伴うリードの膨張・収縮によるレンズと撮像素子との相対位置変動を抑制するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5250575号公報
【特許文献2】特許第5017168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2では、環境の温度変化に伴い、レンズと撮像素子との距離を調整してより鮮明な画像が得られる構造としているが、撮像素子が回路基板(又はプリント基板)から離れて配置される。このため、撮像素子と回路基板(又はプリント基板)との距離を精度良く設定するのが難しく、また、回路基板(又はプリント基板)に対して撮像素子が傾くこともあり、これらの要因によって、レンズと撮像素子との距離を適正距離に調整しにくくなるため、撮影される画像が劣化しやすい。
本発明の目的は、撮影される画像を劣化しにくくして、より鮮明な画像を得ることが可能な撮像装置及び撮像装置の基板支持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の撮像装置は、カメラケースに固定されたレンズ部と、前記レンズ部で集光された像を電気信号に変換する撮像素子を搭載するとともに前記カメラケースの内部を前記撮像素子の受光面に対して垂直に移動可能な基板と、前記撮像素子が搭載される前記基板の搭載面を押圧する第一の押圧部材と、前記基板の前記搭載面の裏面を押圧するとともに温度変化に応じて押圧力が変化する第二の押圧部材とを備え、前記第一の押圧部材と前記第二の押圧部材とのそれぞれの押圧力が釣り合う位置で前記基板が支持されることを特徴とする。
この構成によれば、温度変化により第二の押圧部材の押圧力を変化させて、カメラケースの膨張・収縮に伴うレンズ部、撮像素子間の距離の変化を補正できる。これにより、撮影される画像の劣化を抑制でき、より鮮明な画像を得ることができる。
【0006】
上記構成において、前記第一の押圧部材は、ばねシリンダーからなるようにしても良い。
この構成によれば、第二の押圧部材の押圧力を一定のばね定数を有するばねで受けることができ、レンズ、撮像素子間の距離の変化を精度良く補正できる。
また、上記構成において、前記第二の押圧部材は、エアシリンダーからなるようにしても良い。
この構成によれば、空気圧の温度変化を利用して押圧力を変更できる簡単な構造であるため、コストを抑えることができる。
【0007】
また、上記構成において、前記第一の押圧部材は、押圧量を制限するストッパー部を備え、前記ストッパー部によって前記基板の移動範囲を制限するようにしても良い。
この構成によれば、レンズ、撮像素子間の距離が大きく変化するのを抑制でき、撮影される画像の劣化を抑制できる。
【0008】
本発明の撮像装置の基板支持方法は、カメラケースにレンズ部が固定され、前記レンズ部で集光された像を電気信号に変換する撮像素子を搭載するとともに前記カメラケースの内部を前記撮像素子の受光面に対して垂直に移動可能な基板を支持する撮像装置の基板支持方法であって、前記撮像素子が搭載される前記基板の搭載面を第一の押圧部材で押圧し、前記基板の前記搭載面の裏面を温度変化に応じて押圧力が変化する第二の押圧部材で押圧し、前記第一の押圧部材と前記第二の押圧部材とのそれぞれの押圧力が釣り合う位置で前記基板を支持することを特徴とする。
この構成によれば、温度変化により第二の押圧部材の押圧力を変化させることができ、温度変化によるカメラケースの膨張・収縮を補正してレンズ部、撮像素子間の距離の変化を抑制できる。これにより、撮影される画像の劣化を抑制でき、より鮮明な画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、カメラケースに固定されたレンズ部と、レンズ部で集光された像を電気信号に変換する撮像素子を搭載するとともにカメラケースの内部を撮像素子の受光面に対して垂直に移動可能な基板と、撮像素子が搭載される基板の搭載面を押圧する第一の押圧部材と、基板の搭載面の裏面を押圧するとともに温度変化に応じて押圧力が変化する第二の押圧部材とを備え、第一の押圧部材と第二の押圧部材とのそれぞれの押圧力が釣り合う位置で基板が支持されるので、温度変化により第二の押圧部材の押圧力を変化させて、カメラケースの膨張・収縮に伴うレンズ部、撮像素子間の距離の変化を補正できる。これにより、撮影される画像の劣化を抑制でき、より鮮明な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る撮像装置を示す断面図である。
図2】ばねシリンダーを示す断面図である。
図3】エアシリンダーを示す断面図である。
図4】撮像装置の作用を説明する作用図である。
図5】撮像装置の使用温度範囲でのレンズ、撮像素子間の距離の変化量を示すグラフである。
図6】撮像装置の使用温度範囲での解像度低下割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置10を示す断面図である。
撮像装置10は、カメラケース11と、カメラケース11に取付けられたレンズアッシー12と、カメラケース11内に配置された撮像素子13及び基板14と、カメラケース11内で基板14を支持する基板支持機構16とを備える。
カメラケース11は、樹脂製又は金属製(例えば、アルミニウム合金製)であり、前側に設けられたフロントケース21と、フロントケース21の後側に取付けられたリアケース22とから構成される。
【0012】
フロントケース21は、レンズアッシー12が固定された前壁21aと、前壁21aから後方に延びる4つの側壁21b(3つの側壁21bのみ図示)とを備え、4つの側壁21bのそれぞれの後縁部で後部開口21cが形成される。
リアケース22は、後壁22aを備え、フロントケース21の後部開口21cを塞ぐように、4つの側壁21bに取付けられている。
【0013】
レンズアッシー12は、レンズ25と、レンズ25を支持するとともにフロントケース21の前壁21aに取付けられた鏡筒26とから構成される。
撮像素子13は、基板14(詳しくは、基板14の前面14a)に取付けられ、レンズ25で集光されて出来た像を電気信号に変換する。ここで、レンズ25と撮像素子13との距離(詳しくは、レンズ25のレンズ面25bと撮像素子13の受光面13aとの距離()をfとする。撮像装置10では、レンズ25の焦点距離は固定されているため、上記の距離fは一定に設定される。
【0014】
基板14には、撮像素子13の他に、撮像素子13を制御する撮像素子制御部(不図示)、撮像素子13から出力された信号を撮像素子制御部から出力された制御信号により映像信号に変換する映像信号処理部(不図示)等が設けられている。
基板14は、フロントケース21の前壁21aの背面21dに取付けられた複数のばねシリンダー27と、リアケース22の後壁22aの前面22dに取付けられた複数のエアシリンダー28とで支持されている。
上記の複数のばねシリンダー27及び複数のエアシリンダー28は、基板支持機構16を構成する。
【0015】
ばねシリンダー27は、シリンダー31内に設けられた圧縮コイルばね(不図示)によって可動シャフト33が付勢され、基板14をエアシリンダー28側へ押し付ける押付力を発生させる。
シリンダー31の一端部は、フロントケース21の前壁21aの背面21dに取付けられ、可動シャフト33の先端部は、基板14の前面14aに取付けられている。
【0016】
エアシリンダー28は、シリンダー41内の圧縮エアによって可動シャフト42が付勢され、基板14をばねシリンダー17側へ押し付ける押付力を発生させる。
シリンダー41の一端部は、リアケース22の後壁22aの前面22dに取付けられ、可動シャフト42の先端部は、基板14の背面14bに取付けられている。
シリンダー41内の圧縮エアは、例えば、カメラケース11やばねシリンダー27に比べて、環境の温度変化による膨張量及び収縮量が大きい。
【0017】
ばねシリンダー27とエアシリンダー28とは、基板14の両側に配置され、ばねシリンダー27及びエアシリンダー28のそれぞれの軸線(詳しくは、シリンダー31及びシリンダー41のそれぞれの軸線)27a,28aは、同軸に配置されている。
軸線27a,28aは、レンズ25の中心を通ってレンズ面に垂直な光軸25aに平行である。
上記したように、軸線27a,28aを同軸に配置することで、基板14をばねシリンダー27とエアシリンダー28とで効果的に押し合うことができる。
【0018】
上記したように、基板14は、複数のばねシリンダー27と、複数のエアシリンダー28とによってフローティング支持されている。基板14に対して、複数のばねシリンダー27はレンズ25側に配置され、複数のエアシリンダー28は、レンズ25とは反対側に配置される。即ち、複数のばねシリンダー27は、撮像素子13及び基板14をレンズ25から遠ざける方向に付勢し、複数のエアシリンダー28は、撮像素子13及び基板14をレンズ25に近づける方向に付勢している。
複数のばねシリンダー27の押圧力の方向Aと、複数のエアシリンダー28の押圧力の方向Bとは、逆方向で、基板14を押圧する複数のばねシリンダー27の押圧力と、基板14を押圧する複数のエアシリンダー28の押圧力とは釣り合っている。
【0019】
図2は、ばねシリンダー27を示す断面図である。
ばねシリンダー27は、シリンダー31、ガイドロッド32、可動シャフト33、圧縮コイルばね34を備える。
シリンダー31は、有底筒状のシリンダー本体36と、シリンダー本体36の一端に形成された開口36aを塞ぐキャップ37とから構成される。
シリンダー本体36は、周壁36bの一端に一体に底壁36cが形成され、周壁36bの内周面36dに、底壁36c側に形成された小径穴36eと、小径穴36eに隣接する大径穴36fとが形成されている。
【0020】
周壁36bの小径穴36eと大径穴36fとの間には段部36gが形成されている。大径穴36fの開口36a側の端部にはめねじ36hが形成されている。
キャップ37は、シリンダー本体36のめねじ36hにねじ結合される筒状のねじ部37aと、ねじ部37aの端部に一体に設けられるとともにシリンダー本体36の開口36aを覆う蓋部37bとから構成される。
ねじ部37aの外周面には、シリンダー本体36のめねじ36hにねじ結合されるおねじ37cが形成されている。蓋部37bには、可動シャフト33が通されるシャフト挿通穴37dが開けられ、シャフト挿通穴37dの内周面には、通気のための複数の通気溝37eが形成されている。
【0021】
ガイドロッド32は、一端がシリンダー本体36の底壁36cに固定され、他端がシリンダー本体36の開口36aまで真直に延びている。
可動シャフト33は、シリンダー本体36の大径穴36f内に軸方向移動可能に挿入されるとともにガイドロッド32に案内され、大径穴36fに嵌合する大径部33aと、大径部33aからばねシリンダー27の外部まで延びる小径部33bとから構成される。
大径部33aの外周面には通気のための複数の通気溝33cが形成されている。可動シャフト33には、大径部33a及び小径部33bを貫通する貫通穴33dが形成され、貫通穴33dがガイドロッド32に摺動可能に嵌合している。
【0022】
上記したキャップ37の複数の通気溝37eは、シリンダー31に対して可動シャフト33を移動させる際に、大径穴36f内とばねシリンダー27の外部との空気の流通を可能にする。
また、可動シャフト33の複数の通気溝33cは、シリンダー31に対して可動シャフト33を移動させる際に、シリンダー31内における可動シャフト33の大径部33aの両側の空間で空気の流通を可能にする。
圧縮コイルばね34は、所定のばね定数を有し、変位に比例した押圧力(荷重)を発生させて、可動シャフト33をシリンダー31から外部に突出させる方向に付勢する。
上記ばね定数は、エアシリンダー28(図1参照)の押圧力と釣り合う押圧力が発生するように設定される。
【0023】
シリンダー本体36の段部36gと、キャップ37のねじ部37aの端部37fとは、大径部33aの移動、即ち可動シャフト33の移動を規制するストッパー部38を形成している。即ち、可動シャフト33は、ストッパー部38によりばねシリンダー27の軸線27aが延びる方向での移動が規制される。
なお、上記ばねシリンダー27では、圧縮コイルばね34をガイドするガイドロッド32を設けたが、これに限らず、ガイドロッド32を設けなくても良い。この場合、圧縮コイルばね34をシリンダー31の内周面36d(小径穴36e)でガイドしても良い。
【0024】
図3は、エアシリンダー28を示す断面図である。
エアシリンダー28は、シリンダー41と、シリンダー41内に移動可能に挿入された可動シャフト42とを備える。
シリンダー41は、有底筒状のシリンダー本体44と、シリンダー本体44の一端部に設けられた開口44aを塞ぐキャップ45とを備える。
シリンダー本体44は、周壁44bと、周壁44bの端部に一体に設けられた底壁44cとから構成される。周壁44bの底壁44c側の端部には、周壁44bの内外に貫通する通気穴44dが開けられ、通気穴44dがボルト46で塞がれている。
周壁44bの外周面に形成された平坦面44eとボルト46の頭部46aとの間には、ドーナツ状のシール部材47と、シール部材47を押えるワッシャ48とが挟持されている。
【0025】
周壁44bの内周面の開口44a側の端部にはめねじ44fが形成されている。
キャップ45は、シリンダー本体44のめねじ44fにねじ結合されるおねじ45aが形成されたねじ部45bと、ねじ部45bの端部にシリンダー本体44の開口44aを覆うように形成された蓋部45cとから構成される。蓋部45cは、可動シャフト42が嵌合する貫通穴45dを備え、貫通穴45dの内周面に複数の通気溝45eが形成されている。複数の通気溝45eは、シリンダー41に対して可動シャフト42が移動する際に、空気が、シリンダー41内とシリンダー41外との間で流通する部分である。
【0026】
可動シャフト42は、シリンダー本体44の周壁44bの内周面に軸方向移動可能に嵌合する大径部42aと、大径部42aからエアシリンダー28の外部まで延びる小径部42bとから構成される。
大径部42aは、外周面に環状溝42cが形成され、環状溝42cに、シリンダー本体44の周壁44bと大径部42aとの間をシールするOリング51が嵌められている。
シリンダー本体44の周壁44b及び底壁44cと、可動シャフト42の大径部42aとは、空気室53を形成している。
【0027】
空気室53内の空気は、可動シャフト42によって圧縮されることで押圧力が発生する。また、空気室53内の空気は、温度変化により膨張・収縮し、このときの空気室53内の圧力変化によって、可動シャフト42が、軸線28aに沿って移動する。
ここで、空気室53を形成する部分の寸法、即ち周壁44bの内径をD、底壁44cから可動シャフト42(詳しくは、大径部42a)までの軸線28aに沿う長さをL2とする。なお、距離L2は、常温(例えば、20°C)での距離である。
上記したシリンダー本体44に可動シャフト42を組付けるとき、又は空気室53内の容積を調整するときには、ボルト46を弛めて、空気室53とエアシリンダー28の外部との間で空気を流通可能とする。また、組付や調整が終了した後は、ボルト46を締め込んで通気穴44dを閉じる。
【0028】
以上に述べた撮像装置10の作用を次に説明する。
図4は、撮像装置10の作用を説明する作用図である。
図4(A)は撮像装置10が置かれている環境の温度が常温の場合の状態を示す図、図4(B)は環境の温度の常温からの上昇に伴ってカメラケース11のみが膨張した状態を示す図、図4(C)は環境の温度の常温からの上昇に伴ってカメラケース11と共にエアシリンダー28が伸長した状態を示す図である。
図4(A)に示すように、環境の温度が常温(絶対温度T(以下、同じ))では、ばねシリンダー27の押圧力F1とエアシリンダー28の押圧力F2とが釣り合い(F1=F2)、レンズ25と撮像素子13との距離はfとなっている。ここで、フロントケース21の背面21dからリアケース22の前面22dまでの距離L1を、カメラケース11の長さL1とする。
【0029】
図4(B),(C)では、環境の温度がΔtだけ上昇して温度がT+Δtになったときの状態を示している。このように温度が上昇すると、本来ならば、図4(A)の状態からカメラケース11が膨張すると同時に、エアシリンダー28の空気室53(図3参照)内の空気が膨張してエアシリンダー28が伸長する。ここでは、撮像装置10の作用の理解を容易にするために、便宜上、第1段階としてカメラケース11が膨張し、第2段階としてエアシリンダー28が伸長する、という説明を行う。
【0030】
図4(B)において、第1段階として、カメラケース11のみがαだけ膨張してカメラケースの長さがL1+αになったとする。
この結果、レンズ25と撮像素子13との距離は、f(図4(A)参照)から(f+β)になり、ばねシリンダー27の押圧力は、F1(図4(A)参照)からF3に減少し、エアシリンダー28の押圧力は、F2(図4(A)参照)からF4に減少する。
【0031】
図4(C)において、第2段階として、図4(B)の状態から、レンズ25、撮像素子13間の距離(f+β)が、エアシリンダー28の空気室53(図3参照)の膨張によるエアシリンダー28の押圧力の増加によって、距離fになったとする。
この結果、ばねシリンダー27の取付長が、図4(A)のときと同じになり、ばねシリンダー27の押圧力はF1となる。
一方、エアシリンダー28は、カメラケース11の膨張量αと同じαだけ伸長する。
このときの状態を、以下、数1〜数4の数式を用いて説明する。
【0032】
Pをエアシリンダー28の空気室53内の圧力、Vを絶対温度Tにおける空気室53の体積、Rを定数とすると、圧力P、体積V、絶対温度T及び定数Rの関係は、以下(1)式のようになる。
PV=RT・・・(1)
また、エアシリンダー28の空気室53の断面積をA、エアシリンダー28の押圧力をF2とすると、押圧力F2、圧力P及び断面積Aの関係は、以下(2)式のようになる。
F2=PA・・・(2)
上記(1)式及び(2)式から、常温(T)では、数1の(3)式が導かれ、また、Δvを絶対温度(T+Δt)における空気室53の体積増加量とすると、高温(T+Δt)では、数1の(4)式が導かれる。
【0033】
【数1】
【0034】
常温と高温とでは、押圧力F2は等しいから、上記(3)式及び(4)式より、数2の各式が導かれ、最終的に(5)式が求められる。
【0035】
【数2】
【0036】
ここで、図3に示した内径D及び長さL2から、数3の各式が導かれる。
【0037】
【数3】
【0038】
これらの数3の各式を上記(5)式に代入することで、数4の各式が求められる。
【0039】
【数4】
【0040】
上記(6)式から、常温(T)にて押圧力F1を発生させるばねシリンダー27を設定したときに、エアシリンダー28でレンズ25と撮像素子13との距離fを一定にするには、エアシリンダー28に関して、常温(T)にて押圧力F2(=F1)を発生させるとともに、空気室53の長さL2を、T/Δt*αにすれば良い。
なお、環境の温度が常温(T)からΔtだけ下降して低温(T−Δt)になったときにも、空気室53の長さL2が上記したのと同じように求められる。
【0041】
図5は、撮像装置10の使用温度範囲でのレンズ25、撮像素子13間の距離fの変化量を示すグラフである。縦軸は距離fの変化量(変化量0(ゼロ)より上側は増加、下側は減少)、横軸は使用温度(単位はK)を表している。
図6は、撮像装置10の使用温度範囲での解像度低下割合を示すグラフである。縦軸は常温(T)で撮像された画像の解像度を100%とした場合の各温度で撮像された画像の解像度低下割合(単位は%)、横軸は使用温度(単位はK)を表している。なお、解像度低下割合は、一般に行われている方法により求められたものである。
図5及び図6において、実線は本実施形態の実施例、破線は比較例を示している。比較例の撮像装置は、本実施形態の実施例の撮像装置10に対して、基板がカメラケースに直に取付けられている。
【0042】
図5に示すように、比較例では、常温(T)より高い温度では、カメラケースの膨張に伴って距離fが大きく増加し、常温(T)より低い温度では、カメラケースの収縮に伴って距離fが大きく減少する。距離fの変化量は、使用温度範囲の最低温度TLでは−f1、使用温度範囲の最高温度THではf4となる。
実施例では、環境の温度変化に応じてエアシリンダー28(図3参照)が膨張・収縮することで、常温(T)より高い温度での距離fの増加及び常温(T)より低い温度での距離fの減少が小さく抑えられる。この結果、使用温度範囲の最低温度TLでの変化量−f2は上記変化量−f1に対して絶対値が小さくなり、使用温度範囲の最高温度THでの変化量f3は、上記変化量f4より小さくなる。
【0043】
比較例では、図5において、常温(T)からの温度上昇、あるいは常温(T)からの温度下降に伴い、距離fが大きく変化する。このため、図6において、常温(T)から最高温度TH及び最低温度TLまでは、距離fが大きく低下し、最高温度TH及び最低温度TLでは、解像度はr1%となる。
実施例では、図5において、環境の温度変化に対して距離fの変化が抑えられる。このため、図6において、常温(T)から最高温度TH及び最低温度TLまでは、解像度低下が抑えられ、最高温度TH及び最低温度TLでの解像度低下割合r2%は、上記r1%よりも大幅に小さくなっている。
即ち、実施例では、最低温度TLから最高温度THまでの使用温度範囲では、良好な解像度を得ることができる。
【0044】
以上の図1に示したように、撮像装置10は、レンズ部としてのレンズアッシー12、撮像素子13、基板14、第一の押圧部材としての複数のばねシリンダー27、第二の押圧部材としての複数のエアシリンダー28を備える。
レンズアッシー12は、カメラケース11に固定されている。基板14は、レンズアッシー12(詳しくは、レンズ25)で集光された像を電気信号に変換する撮像素子13を搭載するとともにカメラケース11の内部を撮像素子13の受光面13aに対して垂直に移動可能である。
【0045】
複数のばねシリンダー27は、撮像素子13が搭載される基板14の搭載面としての前面14aを押圧する。複数のエアシリンダー28は、基板14の前面14aの裏面としての背面14bを押圧するとともに温度変化に応じて押圧力が変化する。
基板14は、複数のばねシリンダー27と複数のエアシリンダー28とのそれぞれの押圧力F1,F2が釣り合う位置で支持される。
【0046】
この構成によれば、温度変化により複数のエアシリンダー28の押圧力を変化させて、カメラケース11の膨張・収縮に伴うレンズアッシー12(詳しくは、レンズ25)、撮像素子13間の距離fの変化を補正できる。これにより、撮影される画像の劣化を抑制でき、より鮮明な画像を得ることができる。
また、撮像装置10では、撮像素子13が直に基板14に搭載されているため、レンズ25、撮像素子13間の距離fを精度良く設定でき、また、基板14に対する撮像素子13の受光面13aの温度変化による変位が非常に小さい。また、基板14に対して撮像素子13の受光面13aが傾きにくい。従って、このことからも、撮影される画像の劣化が抑えられ、より鮮明な画像を得ることが可能になる。
【0047】
また、第一の押圧部材は、ばねシリンダー27からなるので、エアシリンダー28の押圧力を一定のばね定数を有するばねとしての圧縮コイルばね34で受けることができ、レンズ25、撮像素子13間の距離fの変化を精度良く補正できる。
また、第二の押圧部材は、エアシリンダー28からなるので、空気圧の温度変化を利用して押圧力を変更できる簡単な構造であるため、撮像装置10のコストを抑えることができる。
【0048】
また、図2に示したように、ばねシリンダー27は、押圧量を制限するストッパー部38を備え、ストッパー部38によって基板14の移動範囲を制限する。これにより、レンズ25、撮像素子13間の距離fが大きく変化するのを抑制でき、撮影される画像の劣化(解像度低下)を抑制できる。
【0049】
また、図1及び図4に示したように、撮像装置10の基板支持方法では、カメラケース11にレンズアッシー12が固定され、レンズアッシー12(詳しくは、レンズ25)で集光された像を電気信号に変換する撮像素子13を搭載するとともにカメラケース11の内部を撮像素子13の受光面13aに対して垂直に移動可能な基板14を支持する。
また、撮像素子13が搭載される基板14の前面14aを複数のばねシリンダー27で押圧し、基板14の背面14bを温度変化に応じて押圧力が変化する複数のエアシリンダー28で押圧する。そして、複数のばねシリンダー27と複数のエアシリンダー28とのそれぞれの押圧力F1,F2が釣り合う位置で基板14を支持する。
【0050】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施形態において、図1に示したように、基板支持機構16を、複数のばねシリンダー27と複数のエアシリンダー28とで構成したが、これに限らない。例えば、ばねシリンダー27に変えて他の弾性部材、エアシリンダー28に変えて、温度によって押圧力が変化するワックスや形状記憶部材(形状記憶合金等)で構成しても良い。
【0051】
また、図1に示したように、ばねシリンダー27とエアシリンダー28とのそれぞれの軸線27a,28aを一致させ、可動シャフト33の先端と可動シャフト42の先端とを対向させるようにしたが、これに限らない。例えば、軸線27a,28aを軸線27a,28aに対して直交する方向にオフセットさせて、可動シャフト33の先端と可動シャフト42の先端とを軸線27a,28aに対して直交する方向にずらしても良い。この場合、可動シャフト33,42のそれぞれ先端部を基板14にボルトやビス等の締結部材で固定しても良い。
【符号の説明】
【0052】
10 撮像装置
11 カメラケース
12 レンズアッシー(レンズ部)
13 撮像素子
14 基板
27 ばねシリンダー(第一の押圧部材)
28 エアシリンダー(第二の押圧部材)
38 ストッパー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6