特開2019-201588(P2019-201588A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-201588(P2019-201588A)
(43)【公開日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】粉末チョコレート飲料用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/32 20060101AFI20191101BHJP
   A23G 1/40 20060101ALI20191101BHJP
【FI】
   A23G1/32
   A23G1/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-99066(P2018-99066)
(22)【出願日】2018年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100096943
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】塙 克実
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴美子
(72)【発明者】
【氏名】石関 誠人
(72)【発明者】
【氏名】真砂 佳広
(72)【発明者】
【氏名】田坂 遥
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB05
4B014GG06
4B014GG07
4B014GK03
4B014GK05
4B014GK08
4B014GL02
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP01
4B014GP14
4B014GP27
(57)【要約】
【課題】チョコレート飲料としての濃厚な味わいを与える作業性に優れた粉末チョコレート飲料用組成物を提供する。
【解決手段】カカオマスと、多孔質マルトースを含む粉末チョコレート飲料用組成物であって、前記カカオマスと、前記多孔質マルトースの配合比が、重量比で1:1〜1:1.05であることを特徴とする、粉末チョコレート飲料用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオマスと、多孔質マルトースを含む粉末チョコレート飲料用組成物であって、
前記カカオマスと、前記多孔質マルトースの配合比が、重量比で1:1〜1:1.05であることを特徴とする、粉末チョコレート飲料用組成物。
【請求項2】
前記多孔質マルトースの配合量が、15重量%以上20重量%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の粉末チョコレート飲料用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粉末チョコレート飲料用組成物を含有することを特徴とする、飲料。
【請求項4】
粉末チョコレート飲料用組成物の製造方法であって、
多孔質マルトースに、溶解したカカオマスを加えて分散体を得る分散化ステップを有する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、良好な風味を呈する粉末チョコレート飲料用組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用ココア飲料を好む消費者は多く、市場には嗜好品のみならず機能性も付与した家庭用ココア飲料も存在している。その背景には手軽さと美味しさがあると考えられる。一方で、チョコレートドリンクは一部の専門店での提供されるもの、および家庭用としてはペースト状の物や既存の板チョコを、温めた牛乳に溶かしたものなどが存在するが、市場に浸透しているとは言い難い。その理由は手軽さと美味しさの両立ができていないためである。
このような粉末チョコレート飲料に関しては、種々の検討がされている(特許文献1〜4)。特許文献1は、カカオマスまたはカカオニブの抽出液にココア粉を溶解分散させることにより、チョコレートの風味を有し、しかもコクがあるがサラッとした口当たりの飲み易いチョコレート飲料の製造法を開示している。特許文献2は、油分25〜35%のチョコレート生地にHLBの高い界面活性剤を0.1〜1.0%添加、混合し、さらに水分11〜25重量%になる様に加水して乳化物とした後、品温90℃以下で乾燥、ついで粉砕し、比重0.35〜0.55、粒径5mm以下とすることを特徴とする可溶性粉末チョコレートの製法を開示している。特許文献3は、低温下でデキストリン粉末を転動させながら、融解したチョコレート原料の噴霧粒子に被覆して成る粉末チョコレートを開示している。特許文献4は、(A)カカオ固形分、(B)二糖類および/または単糖類、および(C)全粉乳,乳化剤,液体油から選ばれる二種以上を含有する含水チョコレートが、冷水や炭酸水等と混合した時に分散性を非常に良好にすることができ、濃厚なチョコレート感のあるチョコレート飲料を調製できることを開示している。
しかしながら、特許文献1〜4に記載のチョコレート飲料においても、手軽さと美味しさが両立された製品を提供するに至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−79749号公報
【特許文献2】特開平8−205773号公報
【特許文献3】特開2003−47407号公報
【特許文献4】特開2014−176327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明は、多孔質マルトースとカカオマスを混合し液体を粉末化させる技術を用いて、カカオマスを配合した、手軽さと美味しさが両立された粉末チョコレートドリンク製品を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、カカオマスと、多孔質マルトースを含む粉末チョコレート飲料用組成物であって前記カカオマスと、前記多孔質マルトースの配合比が、重量比で1:1〜1:1.05であることを特徴とする、粉末チョコレート飲料用組成物が提供される。
さらに、本発明の他の態様によれば、前記多孔質マルトースの配合量が、15重量%以上20重量%以下であることを特徴とする、上記に記載の粉末チョコレート飲料用組成物が提供される。
さらにまた、本発明の他の態様によれば、上記に記載の粉末チョコレート飲料用組成物を含有することを特徴とする飲料が提供される。
さらに、本発明の他の態様によれば、多孔質マルトースに、溶解したカカオマスを加えて分散体を得る分散化ステップを有する粉末チョコレート飲料用組成物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
多孔質マルトースとカカオマスを1:1〜1:1.05で配合し、多孔質マルトースの表面にカカオマスの油脂を吸着させることで、チョコレートドリンクの濃厚な味わいを与える作業性に優れた可溶性の粉末チョコレート飲用用組成物を実現できた。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、カカオマスと、多孔質マルトースを含む粉末チョコレート飲料用組成物に関する。
【0008】
<材料>
本発明の粉末チョコレート飲料用組成物に含まれるカカオマス、多孔質マルトース、ココアパウダー、およびスクロースは、いずれも以下に特に記載のない限り、一般に市販されているものを用いることができる。
【0009】
本発明に用いる多孔質マルトースは、水分含有量が7%以下であることが好ましい。また、嵩比重が0.55以下のマルトースであることが好ましく、0.45以下であるとより好ましい。多孔質マルトースは、その表面の多孔質部分にカカオマスに含まれる脂肪分(カカオバター)を吸着するために用いられる。そのため、本発明の粉末チョコレート飲料用組成物中のカカオマスと多孔質マルトースとの配合比は、カカオバターが多孔質マルトースに十分に吸着される限り、どのような配合比であってもよいが、好ましくは重量比で1:1〜1:1.05、より好ましくは1:1である。
このような配合比とすることで、製造時においては、本発明の粉末チョコレート飲料用組成物を粉末状にすることができ、使用時においては、本発明の粉末チョコレート飲料用組成物を水または牛乳等に均一に溶かすことができる。
【0010】
また、カカオバターが多孔質マルトースに効率よく吸着されるためには、多孔質マルトースは粉末状であることが好ましい。粉末状の多孔質マルトースの粒度は、カカオバターを効率よく吸着できる粒度であれば、いずれの粒度であってもかまわないが、配合する多孔質マルトースの70重量%以上が150μm以下の粒度であることが好ましい。
【0011】
本発明の粉末チョコレート飲料用組成物中の多孔質マルトースの配合量は、15重量%以上20重量%以下であることが好ましく、17重量%以上18重量%以下であるとより好ましい。上記に記載のように、本発明の粉末チョコレート飲料用組成物中の多孔質マルトースの配合量によりカカオマスの配合量も決まる。そのため、多孔質マルトースの配合量がこの範囲である本発明の粉末チョコレート飲料用組成物を水または牛乳に溶解することにより、甘味およびカカオ感のバランスがとれた飲料となる。
【0012】
本発明の粉末チョコレート飲料用組成物は、ココアパウダーを含むことにより、チョコレート飲料のカカオ感を向上させることができる。本発明の粉末チョコレート飲料用組成物中において、ココアパウダーの配合量は、30%重量以上40重量%以下であることが好ましい。ココアパウダーの配合量が30重量%未満であると、チョコレート飲料のカカオ感が不足し、ココアパウダーの配合量が40重量%より多いと、チョコレート飲料の苦味が強くなる。
また、カカオ感を向上させるために、カカオエキスやカカオレジノイドといった香料を、本発明の粉末チョコレート飲料用組成物に加えてもよい。
【0013】
本発明の粉末チョコレート飲料用組成物は、スクロースを含むことにより、チョコレート飲料の甘味およびコクを向上させることができる。本発明の粉末チョコレート飲料用組成物中のスクロースの配合量は、チョコレート飲料の目的とする甘味およびコクにより適宜調整することができるが、多孔質マルトースの配合量より多いことが好ましい。この場合、チョコレート飲料の甘味やコクがより深い味わいとなる。
【0014】
本発明の粉末チョコレート飲料用組成物中のスクロースは、使用時に水または牛乳に均一に溶解させるために、多孔質マルトースの粒度と同等の粒度であることが好ましい。すなわち、配合するスクロースの70重量%以上が150μm以下の粒度であることが好ましい。
【0015】
本発明の粉末チョコレート飲料用組成物は、上記成分の他にも、チョコレート飲料の粘度を調製するための増粘剤や、甘味を調製するための高甘味度甘味料、香料等を配合してもよい。
【0016】
増粘剤としては、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム、タマリンドガム、カラギーナン等を用いることができる。本発明の粉末チョコレート飲料用組成物において、増粘剤の配合量は4重量%以下であることが好ましい。増粘剤を多く配合すると、本発明の粉末チョコレート飲料用組成物を水または牛乳に均一に溶解させる際に、増粘剤がゼリー状になるという問題が生じる場合がある。
【0017】
高甘味度甘味料としては、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム等を用いることができる。本発明の粉末チョコレート飲料用組成物において、高甘味度甘味料の配合量は0.1重量%以下であることが好ましい。
【0018】
香料としては、ミルク香料、バニラ香料等を用いることができる。
【0019】
<製造方法>
以下に、本発明の粉末チョコレート飲料用組成物の製造方法の一態様を示す。
【0020】
(粉末化ステップ)
本発明の粉末チョコレート飲料用組成物の製造方法において、まず、多孔質マルトースおよびスクロースを粉末化する。粉末化は、粉砕混合機を用いて行うことができ、例えば、フードプロセッサー(パナソニック(株)社製)を用いて行うことができる。得られた多孔質マルトースおよびスクロースの粒度は、ふるい分け試験法通則(JIS Z8815)にしたがい測定することができる。
【0021】
多孔質マルトースおよびスクロースの粉末化は、同時に行ってもよく、または一方を粉末化した後に他方を加えて段階的に行ってもよい。また、所望の粒度を有する市販の多孔質マルトースまたはスクロースを用いてもよい。例えば、70重量%以上が150μm以下の粒度の多孔質マルトースとしては、サンマルト(商標)ミドリ((株)林原製)を用いることができる。
【0022】
(分散化ステップ)
上記粉末化ステップで得た多孔質マルトースおよびスクロースの混合物に溶解したカカオマスを加え、混合することにより、カカオマスが混合物中に均一に分散した分散体を得ることができる。カカオマスを溶解する温度としては、カカオマスの融点以上であれば、いかなる温度でもよいが、50℃〜80℃が好ましい。
【0023】
なお、増粘剤、高甘味度甘味料、香料等は、分散化ステップにおいてカカオマスを加える前に多孔質マルトースおよびスクロースの混合物に加えることが好ましい。一方、カカオエキスやカカオレジノイドは、カカオマスと同時に加えることが好ましい。
【0024】
(撹拌ステップ)
上記分散化ステップで得た分散体にココアパウダーを加え均一になるまで撹拌する。撹拌後、得られた組成物を篩別し、本発明の粉末チョコレート飲料用組成物とする。篩別は、本発明の粉末チョコレート飲料用組成物が、水または牛乳に容易に溶解するサイズであればいかなるサイズでもよいが、10メッシュを通過するサイズであることが好ましい。
【0025】
<チョコレート飲料>
本発明の粉末チョコレート飲料用組成物を水または牛乳に溶解することで、チョコレート飲料とすることができる。溶解する際の温度は、本発明の粉末チョコレート飲料用組成物が溶解できれば、いかなる温度でもよいが、30℃〜100℃が好ましい。また、チョコレート飲料中の本発明の粉末チョコレート飲料用組成物の量としては、粉末チョコレート飲料用組成物の32gを、水または牛乳50〜200mlに溶解したものが好ましい。
また、本発明の粉末チョコレート飲料用組成物を溶解するものは、水または牛乳に限られず、アルコール飲料等に溶解することもできる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例および比較例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
カカオマスと多孔質粉末マルトースの最適な配合比率を導出するため、カカオマスに対する多孔質粉末マルトースの配合比率を変化させた場合に関する、両素材の混合物についての評価を行った。なお、使用した多孔質粉末マルトースは、サンマルト(商標)ミドリ((株)林原製)を使用した。評価項目は「粉末化適性」と「カカオ感」とし、チョコレートに精通した専門パネラーにより、非常に良好、良好、不良の3段階にて評価を行った。
【0028】
【表1】
【0029】
その結果、表1に示すように、配合例1で製造したカカオマスと多孔質粉末マルトースの混合物は、カカオ感は非常に良好であったものの、混合した際にカカオマス由来の脂肪分(カカオバター)を充分に吸着させることができず、非常にべとべとした団子状となってしまい、粉末の状態に製造することが不可能となった。一方、配合例2並びに配合例3で製造した混合物は、良好なカカオ感を示すと共に、混合した際にカカオバターを充分に吸着させることができ、さらさらした粉末の状態に製造することができた。配合例4で製造した混合物は、非常にさらさらした粉末の状態に製造することができたものの、カカオ感が不良なものとなってしまった。これらの結果から、カカオマスと多孔質粉末マルトースの最適な配合比率は、重量比で1:1〜1:1.05であることが判明した。
【0030】
(実施例2)
下記表2に記載の配合の原料を用いて、粉末チョコレート飲料用組成物を以下の方法で製造した。なお、使用した多孔質粉末マルトースは、サンマルト(商標)ミドリ((株)林原製)を使用した。
予め、グラニュー糖(スクロース)を、フードプロセッサー(パナソニック(株)社製)で粉砕して、粉糖にした。
フードプロセッサーに、多孔質粉末マルトース、上記粉砕した粉糖を投入し、メインブレード約200rpm以上、クロススクリュー約1500rpm以上の回転で混合物を攪拌した。
次いで、上記攪拌混合物に、香料、甘味料、増粘剤を投入した。
上記攪拌混合物に、70℃以上に加温溶解したカカオマスに液体香料を分散させたものを投入した。
その後、上記攪拌混合物に、ココアパウダーを投入した。
上記全ての原料を混合させた後に、10メッシュパスの篩にかけ、目的とする粉末チョコレート飲料用組成物を得た。
【0031】
【表2】
【0032】
(実施例3)
下記表3に記載の原料および配合量で、実施例2と同様にして、粉末チョコレート飲料用組成物を得た。
【0033】
【表3】
【0034】
(実施例4)
下記表4に記載の原料および配合量で、実施例2と同様にして、粉末チョコレート飲料用組成物を得た。
【0035】
【表4】
【0036】
(実施例5)
下記表5に記載の原料および配合量で、実施例2と同様にして、粉末チョコレート飲料用組成物を得た。
【0037】
【表5】
【0038】
(実施例6)
下記表6に記載の原料および配合量で、実施例2と同様にして、粉末チョコレート飲料用組成物を得た。
【0039】
【表6】
【0040】
(実施例7)
実施例2〜6で製造した粉末チョコレート飲料用組成物32gを70℃以上に温めた牛乳(100ml)に溶解させたチョコレート飲料の、カカオ感、ミルク感、甘さ、および粘度(とろみ感)を、チョコレートに精通した専門パネラーにより、非常に良好、良好、不良の3段階で評価を行った。
その結果、実施例2〜6で製造した粉末チョコレート飲料用組成物は、良好に牛乳に溶解した。得られたチョコレート飲料は、表7に示すように、全ての項目において、良好以上の結果が得られた。特に実施例6で製造した粉末チョコレート飲料用組成物を用いたチョコレート飲料は、カカオ感、ミルク感、甘さ、および粘度の全ての評価において非常に良好な結果を示し、実施例6に示した粉末チョコレート飲料用組成物が最適な配合例であることが判明した。
【0041】
【表7】
【0042】
(比較例1)
下記表8に記載の原料および配合量で、実施例2と同様にして、粉末チョコレート飲料用組成物を得た。なお、本比較例では、香料としてのカカオレジノイドを使用せず、また増粘剤としてはキサンタンガムを使用した。
【0043】
【表8】
【0044】
本比較例で製造した粉末チョコレート飲料用組成物32gを70℃以上に温めた牛乳(100ml)に溶解させたときの、カカオ感、ミルク感、甘さ、および粘度を評価した。その結果、比較例1で製造した粉末チョコレート飲料用組成物は、良好に牛乳に溶解した。しかし、得られたチョコレート飲料は、カカオ感は良好であったが、ミルク感、甘さ、および粘度に関しては全て不良であった。