特開2019-201888(P2019-201888A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 倉敷紡績株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000003
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000004
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000005
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000006
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000007
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000008
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000009
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000010
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000011
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000012
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000013
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000014
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000015
  • 特開2019201888-体調評価システム 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-201888(P2019-201888A)
(43)【公開日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】体調評価システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20191101BHJP
【FI】
   A61B5/00 102B
   A61B5/00 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-98981(P2018-98981)
(22)【出願日】2018年5月23日
(71)【出願人】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大月 昌也
(72)【発明者】
【氏名】横山 剛房
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XA05
4C117XB02
4C117XC15
4C117XE06
4C117XE13
4C117XE23
4C117XE26
4C117XE54
4C117XG06
4C117XG12
4C117XG19
4C117XG33
4C117XG35
4C117XG43
4C117XJ38
4C117XP06
4C117XP10
4C117XP11
4C117XR01
(57)【要約】
【課題】被評価者の生体情報を有効に活用して体調評価を行い、さらに、体調評価結果を被評価者にわかりやすく伝達することができる体調評価システムを提供すること。
【解決手段】被評価者10の心拍データと加速度データとを取得する生体情報取得部11と、前記心拍データと前記加速度データとに基づいて前記被評価者の基準心拍値と心拍応答値とを算出するデータ処理部22と、前記基準心拍値と前記心拍応答値とに基づく体調評価結果を表示画面に表示する表示部17とを備えた。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被評価者の心拍データと加速度データとを取得する生体情報取得部と、
前記心拍データと前記加速度データとに基づいて前記被評価者の基準心拍値と心拍応答値とを算出するデータ処理部と、
前記基準心拍値と前記心拍応答値とに基づく体調評価結果を表示画面に表示する表示部とを備えたことを特徴とする、体調評価システム。
【請求項2】
前記表示部が、前記基準心拍値と前記心拍応答値とをそれぞれ軸とする2次元マップを表示し、前記2次元マップ上に前記体調評価結果を表示する、請求項1に記載の体調評価システム。
【請求項3】
前記表示部が、前記2次元マップ上に、前記基準心拍値および前記心拍応答値の標準値を表示する、請求項2に記載の体調評価システム。
【請求項4】
前記表示部が、前記2次元マップに、前記基準心拍値および前記心拍応答値の標準値からの差を段階的に表現した背景画像を表示する、請求項2に記載の体調評価システム。
【請求項5】
前記表示部が、前記基準心拍値および前記心拍応答値の標準値からの差をそれぞれ表示する、請求項1に記載の体調評価システム。
【請求項6】
前記表示部が、前記標準値からの差をランク分けして表示する、請求項5に記載の体調評価システム。
【請求項7】
前記データ処理部が、前記基準心拍値と前記心拍応答値とに基づいて前記被評価者の体調評価値を算出し、
前記表示部が前記体調評価値を表示する、請求項1に記載の体調評価システム。
【請求項8】
前記表示部が、前記体調評価結果の標準値からの差をランク分けして表示する、請求項7に記載の体調評価システム。
【請求項9】
前記生体情報取得部は、前記被評価者が着用するシャツに設けられた、前記心拍データを検出する電極部と前記加速度データを検出する3次元加速度センサとを備える、請求項1〜8のいずれかに記載の体調評価システム。
【請求項10】
前記被評価者が所持する携帯端末に前記表示部が搭載されている、請求項1〜9のいずれかに記載の体調評価システム。
【請求項11】
複数の前記被評価者を管理するための管理者情報端末が、複数の前記被評価者それぞれの前記体調評価結果を一括して表示する表示部を備える、請求項1〜9のいずれかに記載の体調評価システム。
【請求項12】
前記データ処理部は、前記生体情報取得部で検出された前記被評価者の心拍データと加速度データとの相関を示すグラフから回帰直線を求め、前記回帰直線の切片から前記基準心拍値を、前記回帰直線の傾きから前記心拍応答値を、それぞれ算出する、請求項1〜11のいずれかに記載の体調評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、被評価者が装着する生体情報取得部で測定された、被評価者の心拍データと加速度データとに基づいて被評価者の体調を評価する体調評価システムに関し、被評価者または被評価者を管理する管理者に対して被評価者の体調評価結果をわかりやすく伝えることができる体調評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LANなどインターネットへの接続環境が整備されるとともに、ブルートゥース(登録商標)などの近距離での情報伝達を可能とする手段の発達、さらに、スマートフォンなどの高性能のモバイル機器や、体温や心拍数、発汗量などの身体データを測定可能な小型センサ機器の普及により、身体データを取得するセンサとモバイル機器とを被管理者に所持させて、モバイル機器を通じて被管理者の身体情報を管理者側の情報機器で把握して被管理者の健康状態を監視し、必要に応じて被管理者に警告を発して休息を指示することで、体調不良に起因する事故などの不測の事態を防止する体調管理システムが実用化されている。
【0003】
このような体調管理システムの例として、地球温暖化に伴って発症リスクの高まりが社会問題化されている熱中症の発症を管理して予防するシステムが知られている。例えば、原子力発電所の建屋である作業エリア内における対象者の熱中症の発症を管理する熱中症検知システムとして、対象者が所持する身体情報を取得するセンサを備えた異常検出装置と作業エリア外に配置された管理装置とを無線通信で結び、対象者の身体情報から熱中症となる危険性を把握して、危険な状態になると対象者に警報を発するシステムが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の熱中症検知システムでは、対象者が所有する異常検出装置が、センサで取得した対象者の身体情報と管理装置から送信された危険度を判定する基準となる閾値情報とに基づいて対象者の熱中症発症の危険性を判断し、危険な状態であると判断した場合に対象者に異常を警告する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012− 27893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の熱中症検知システムでは、センサが対象者の生体情報を取得して対象者が所持する異常検出装置から管理者の管理装置に送信することで、対象者の熱中症発症リスクをオンタイムで評価することができ、必要に応じて、対象者に対して自身の熱中症発症リスクが高まっていることを警告して、熱中症の発症を未然に防ぐことができる。
【0006】
しかし、上記従来の熱中症検知システムでは、センサから得られた対象者の生体情報を熱中症発症リスクの管理に使用するに留まり、得られた生体情報の十分有効な活用がされているとは言えなかった。
【0007】
本願は、上記従来技術の有する課題に鑑みて、被評価者の生体情報を有効に活用して体調評価を行い、さらに、体調評価結果を被評価者にわかりやすく伝達することができる体調評価システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本願で開示する体調評価システムは、被評価者の心拍データと加速度データとを取得する生体情報取得部と、前記心拍データと前記加速度データとに基づいて前記被評価者の基準心拍値と心拍応答値とを算出するデータ処理部と、前記基準心拍値と前記心拍応答値とに基づく体調評価結果を表示画面に表示する表示部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成により、本願で開示する体調評価システムでは、被評価者の心拍データと加速度データとに基づいて算出された基準心拍値と心拍応答値に基づいて被評価者の体調を評価し、被評価者が自身の、または、被評価者を管理する管理者が被評価者の、体調評価結果を容易に把握することができる。このため、被評価者、または、管理者は、被評価者の体調変化に応じた適切な対応を速やかに採ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態として説明する体調評価システムを搭載した熱中症発症リスク管理システムの全体構成を説明するイメージ図である。
図2図2は、実施形態として説明する体調評価システムを搭載した熱中症発症リスク管理システムの各部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、被評価者の生体情報を取得する生体情報取得部が装着されたアンダーシャツの構成を説明する図である。図3(a)がアンダーシャツの表面を、図3(b)がアンダーシャツの裏面を示す。
図4図4は、基準心拍値と心拍応答値とを求める課程を説明するための、心拍データと加速度データとの相関を示すグラフである。
図5図5は、本実施形態にかかる体調評価システムにおいて、被評価者が所持するスマートフォンの表示画面の例を示す図である。
図6図6は、被評価者が所持するスマートフォンに表示される、体調評価結果を示す2次元マップの表示例である。
図7図7は、被評価者が所持するスマートフォンに表示される、体調評価結果を示す2次元マップの第2の表示例である。
図8図8は、被評価者が所持するスマートフォンに表示される、体調評価結果を示す2次元マップの第3の表示例である。
図9図9は、被評価者が所持するスマートフォンに表示される、体調評価結果を示す2次元マップの第4の表示例である。
図10図10は、被評価者が所持するスマートフォンに表示される、体調評価結果を示す第5の表示例を示す図である。
図11図11は、被評価者が所持するスマートフォンに表示される、体調評価結果を示す第6の表示例を示す図である。
図12図12は、被評価者が所持するスマートフォンに表示される、体調評価結果を示す第7の表示例を示す図である。
図13図13は、被評価者が所持するスマートフォンに表示される、体調評価結果を示す第8の表示例を示す図である。
図14図14は、管理者表示画面における、管理対象である複数の被評価者の体調評価結果の一覧表示例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の体調評価システムは、被評価者の心拍データと加速度データとを取得する生体情報取得部と、前記心拍データと前記加速度データとに基づいて前記被評価者の基準心拍値と心拍応答値とを算出するデータ処理部と、前記基準心拍値と前記心拍応答値とに基づく体調評価結果を表示画面に表示する表示部とを備える。
【0012】
上記の構成を備えることにより、本願で開示する体調評価システムは、被評価者の心拍データと加速度データとに基づいて、被評価者の体調を評価する基準心拍値と心拍応答値とを求め、得られた基準心拍値と心拍応答値とに基づいて被評価者の体調を正確に評価することができる。さらに、このようにして評価された被評価者の体調を表示画面に表示できるため、被評価者は自己の体調評価結果を容易に把握することができる。また、複数の被評価者を管理する管理者が、被評価者それぞれの体調評価結果を把握することができる。このため、被評価者自身、または、管理者が体調評価結果に応じて、適宜体を休めるなどの対策を採ることができる。
【0013】
本開示の体調評価システムにおいて、前記表示部が、前記基準心拍値と前記心拍応答値とをそれぞれ軸とする2次元マップを表示し、前記2次元マップ上に前記体調評価結果を表示することが好ましい。このようにすることで、体調を評価する基準心拍値と心拍応答値それぞれの状態を視覚的に容易に把握することができる。
【0014】
この場合において、前記表示部が、前記2次元マップ上に、前記基準心拍値および前記心拍応答値の標準値を表示することが好ましい。また、前記表示部が、前記2次元マップに、前記基準心拍値および前記心拍応答値の標準値からの差を段階的に表現した背景画像を表示することが好ましい。このようにすることで、基準心拍値と心拍応答値それぞれの状態を視覚的により容易に把握することができる。
【0015】
本開示の体調評価システムにおいて、前記表示部が、前記基準心拍値および前記心拍応答値の標準値からの差をそれぞれ表示することが好ましい。このようにすることで、体調評価に用いられた基準心拍値と心拍応答値それぞれについて、標準値に対してどのような差が生じているかを詳細に把握することができる。
【0016】
この場合において、前記表示部が、前記標準値からの差をランク分けして表示することが好ましい。このようにすることで、基準心拍値と心拍応答値それぞれの状態を視覚的により容易に把握することができる。
【0017】
本開示の体調評価システムにおいて、前記データ処理部が、前記基準心拍値と前記心拍応答値とに基づいて前記被評価者の体調評価値を算出し、前記表示部が前記体調評価値を表示することが好ましい。このようにすることで、一つの指標で被評価者の体調を表示することができる。
【0018】
また、前記表示部が、前記体調評価結果の標準値からの差をランク分けして表示することが好ましい。このようにすることで、被評価者は自己の体調評価結果について、直感的にその善し悪しを判断することができる。
【0019】
さらに、前記生体情報取得部は、前記被評価者が着用するシャツに設けられた、前記心拍データを検出する電極部と前記加速度データを検出する3次元加速度センサとを備えることが好ましい。このようにすることで、被評価者の心拍データと加速度データとをより正確に検出することができる。
【0020】
また、前記被評価者が所持する携帯端末に前記表示部が搭載されていることが好ましい。このようにすることで、被評価者は自己の体調評価結果をオンタイムで把握することができる。
【0021】
さらに、複数の前記被評価者を管理するための管理者情報端末が、複数の前記被評価者それぞれの前記体調評価結果を一括して表示する表示部を備えることが好ましい。このようにすることで管理者が複数の被評価者の体調を容易に管理することができる。
【0022】
また、前記データ処理部は、前記生体情報取得部で検出された前記被評価者の心拍データと加速度データとの相関を示すグラフから回帰直線を求め、前記回帰直線の切片から前記基準心拍値を、前記回帰直線の傾きから前記心拍応答値を、それぞれ算出することが好ましい。
【0023】
以下、本願で開示する体調評価システムの具体的な実施形態について、図面を用いて説明する。
【0024】
(実施の形態)
本実施形態では、本願で開示する体調評価システムの一例について、管理者が、被管理者に対する熱中症発症リスクの判定結果に基づいて、熱中症を発症するリスクが高く危険な状態になりつつある被管理者に警告し、熱中症の発症を回避することができる熱中症リスク管理システムに併せて搭載された形態を示して説明する。
【0025】
本願で開示する体調評価システムは、被評価者の心拍数を示す心拍データと、体の動きを示す加速度データとを検出して、その検出結果に基づいて体調を評価するものであり、被管理者の心拍数と作業負担(肉体的負荷)、さらには、熱的負荷の状況を検知して熱中症の発症リスクを管理する熱中症リスク管理システムで利用されるデータと共通するデータに基づいて体調評価を行うものだからである。この場合、熱中症発症リスク管理システムにおける被管理者が、体調評価システムにおける被評価者となる。
【0026】
しかし、以下実施形態として説明する、体調評価システムが熱中症発症リスク評価システムに併せて搭載された形態はあくまでも例示に過ぎず、本願で開示する体調評価システムを、熱中症の発症リスクの管理を行うシステムに搭載された形態ではなく、被評価者の体調評価のみを行うシステムとして実施できることは言うまでもない。このような体調評価システムとしては、例えば、建築現場や工場における作業者の体調管理、トレーニング中のスポーツ選手の体調管理、ジムなどのスポーツ施設や高齢者施設における利用者の健康状態管理など、各種の用途のものが考えられる。
【0027】
[システムの概要]
図1は、本実施形態で説明する体調評価システムが搭載された熱中症リスク管理システムの概略構成を説明するためのイメージ図である。
【0028】
また、図2は、本実施形態にかかる体調評価システムが搭載された熱中症リスク管理システムの各部の構成例を示すブロック図である。
【0029】
図1に示すように、建築現場で作業する被管理者である作業者10(被評価者)は、体温(体表温度)、心拍数、発汗量などの生体情報を取得する生体情報取得部としてのデータチップ11を胸部に装着するとともに、データチップ11で得られた生体情報を外部に送信する生体情報送信部13として機能する携帯端末としてのスマートフォン12を所持している。
【0030】
本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムでは、作業者10の生体情報を取得するデータチップ11は、作業者10が着用するアンダーシャツの胸部に装着されている。
【0031】
図3は、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムで作業者が着用するアンダーシャツの構成例を示す図である。図3(a)が、生体情報取得部が装着されたアンダーシャツの表面を示し、図3(b)がアンダーシャツの裏面を示している。
【0032】
図3に示すように、本実施形態にかかる熱中症リスク管理システムで作業者10が着用するアンダーシャツ18の胸部には、データチップ11が配置されている。より具体的には、データチップ11は、アンダーシャツ18の表面18aの胸部中央部分に配置された、データ取得送信ユニット11aと、このデータ取得送信ユニット11aに接続され、アンダーシャツ18の裏面18b、つまり、皮膚に接する側の部分に左右方向に延在して配置された電極部11bとから構成されている。
【0033】
本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムにおいて、作業者10の生体情報を胸部に配置したデータチップ11で取得する方法としては、図3に示したアンダーシャツ18にデータチップ11を固着する方法には限られない。たとえば、データチップ11を接着性の高いシート状の装着カバー内に入れてこれを胸部に直接貼り付ける方法、データチップ11を体に密着保持することができる伸縮性のある装着ベルトを用いて作業者の胸部に配置する方法などを採用することができる。しかし、装着カバーや装着ベルトを用いる方法では、作業者10がデータチップ11を装着することによって感じる違和感を解消できず、また、長時間装着する場合に、汗などによって、データチップ11が作業者の体表面から外れたり装着位置がずれたりする恐れがある。
【0034】
これに対して、図3に示したようにデータチップ11を作業者10が着用するアンダーシャツ18に固着する方法によれば、作業者10に、データチップ11を装着していることに対する特別な意識をさせることなく生体情報を取得することができる。また、仮に作業者10の発汗や作業中の体のひねりなどが生じた場合でも、アンダーシャツ18に固着されたデータチップ11が、作業者10の体表面から完全に外れてしまうことはなく、仮に一時的に電極部11bが作業者10の胸部表面から離れた場合でも、すぐに元の状態に戻って、装着位置が実質的に変化しない状態を維持することができる。
【0035】
また、作業者10の生体情報を取得するデータチップ11に、2方向または3方向の加速度を検知するセンサを配置することで、作業者10の体の動きを示す加速度データを3次元で検出する3次元加速度センサとして用いることができる。この結果、作業者10が行っている作業動作の激しさを加速度データとして取得することができる。また、作業者10が転倒した場合など作業者10の姿勢が急激に変化した場合には、データチップ11によってその体の動きを検出することができる。
【0036】
作業者10の生体情報を取得する生体情報取得部としてデータチップ11を用いる場合に、データチップ11の配置場所としては、上記した作業者の胸部以外にも、作業者の腰部、背中、上腕部、手首や脚部などに配置される形態を採用することができる。これらの場合においても、データチップ11を作業者の体表面に密着固定する方法としては、アンダーウェアの内表面にデータチップを配置する方法のほか、装着カバーや装着ベルトを用いてデータチップを固定する方法が採用できる。ただし、生体情報として心拍データを検出する必要があること、さらに、作業者10の体の動きとして体全体の動きを正確に検出する上では、作業者の体幹部に近く、かつ、上体の加速度データを取得することが好ましいため、作業者10の胸部にデータチップ11を配置することが好ましく、図3に示したようなアンダーシャツ18を用いることが最も好ましいと考えられる。
【0037】
データチップ11と作業者11が所持するスマートフォン12とは、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの短距離間通信によって常時接続されていて、データチップ11が取得する作業者10の生体情報は、随時スマートフォン12に送られている。また、作業者10に違和感を与えない太さの信号線で接続可能な場合には、データチップ11とスマートフォン12とを有線で接続できる場合もある。
【0038】
スマートフォン12は、自身が備えるデータ受信部15、データ送信部16によって、無線LANや携帯電話の情報キャリアを用いて常時ネットワーク環境としてのインターネット20に接続されている。そして、スマートフォン12は、インターネット20上に設置されたデータ処理部22を備えたサーバであるクラウドサーバ21に作業者10の生体情報を伝送する。また、スマートフォン12は、体調評価システムによって評価された被評価者10の体調評価結果を表示する表示部としての画像表示部17を備えている。
【0039】
クラウドサーバ21は、内部にデータ受信部23とデータ送信部26を備えていて、インターネット20を介した情報の授受を行うことができるとともに、データ処理部22を備えていて、複数の作業者の生体情報を受信して、それぞれの作業者についての熱中症発症リスクを判定し、熱中症の発症リスクが高まっている場合にはその旨を当該作業者に警告する警告情報を作成する。また、クラウドサーバ21は、データ記録部24を備えていて、複数人いる作業者それぞれの生体情報、警告情報の作成履歴などを時系列に記録することができる。
【0040】
さらに、クラウドサーバ21は、気象情報取得部25を有していて、インターネット20を介して気象情報を提供する情報サイトから気象情報(25)を取得して、作業者10が作業している地域での気温や湿度、日照量などの現在時刻での気象条件や、今後数時間内における変化を見込んだ気象予報を取得することができる。
【0041】
また、クラウドサーバ21は、インターネット20を介して、熱中症発症リスクの判定対象の作業者10の作業を建築現場で監督する管理者である現場監督30が使用する管理者情報端末としてのパソコン31と接続されている。このため、作業者10の作業現場にいる現場監督30は、パソコン31のデータ受信部33によって、クラウドサーバ21から随時送信される作業者10の生体情報や、警告情報が生成されたか否かを把握することができる。
【0042】
クラウドサーバ21のデータ処理部22は、生体情報の変化に基づいて作業者10が熱中症を発症するリスクを判断するリスク判定部として機能する。判断の一例として、データ処理部22は、作業者10の安静時の生体情報である安静時データを基に、熱中症発症リスクが高まったかどうかを判定するための閾値を生成し、作業中の生体情報である作業時データと当該閾値を比較することで作業者10の熱中症の発症リスクを判断することができる。
【0043】
さらに、本実施形態にかかる熱中症発症リスク管理システムでは、クラウドサーバ21のデータ処理部22が体調評価システムで評価に用いられる指標を算出する機能を果たす。このため、データ処理部22は、データチップ11で取得された被評価者の心拍データと加速度データとを携帯端末12の生体情報送信部13を介して取得して、体調評価システムにおいて体調を評価する基準となる基準心拍値と心拍応答値とを算出する。なお、後述のように、被評価者の体調を評価する指標として体調評価値を用いる場合には、データ処理部22は、基準心拍値と心拍応答値とに基づいて、体調評価値の算出を行う。
【0044】
また、クラウドサーバ21は、データ記録部24に記録された判定対象の作業者10の過去の履歴情報や、気象情報取得部25で取得した作業地域の気象情報、さらには、判定対象の作業者と同じ現場で働いている、判定対象の作業者以外の作業者の生体情報の変化などの環境情報に基づいて、作業者10の熱中症発症リスクの判断結果を補正して、より現実に即したものとすることができる。さらに、体調評価システムにおいても、データ記録部24に記録された被評価者の過去の評価結果に基づいて、指標算出部として機能するデータ処理部22が、より正確に被評価者の基準心拍値と心拍応答値とを算出することができる。
【0045】
なお、本実施形態で説明する体調評価システムを搭載した熱中症発症リスク管理システムにおいて、データ処理部22を備えるのはクラウドサーバ21に限られない。例えば、管理者情報端末31や事業所の管理コンピュータ41上に、データ処理部22を含めたクラウドサーバ21の各種機能を実装してもよく、その機能が実現できるのであれば実装される場所や機器は問わない。
【0046】
管理者情報端末としての現場監督30(管理者)のパソコン31は、作業者10を含めた当該現場監督30が監督する作業現場に所属する作業者についての生体情報や警告情報が生成されたか否かを管理する情報管理部32を備えている。情報管理部32は、クラウドサーバ21から送信された情報に基づいて、それぞれの作業者の生体情報や警告情報が生成されたか否かの熱中症発症リスク情報を常に最新情報として把握している。また、情報管理部32は、取得した各作業者の熱中症発症リスク情報やその他の環境情報を表示画像処理部35へと出力し、表示画像処理部35で液晶モニタなどの表示デバイス36上に表示される画面内容が調整される。このようにして、現場監督30は、自分が監督する作業現場で働く作業者10の生体情報や熱中症発症リスクなどを、全体として一元的に、または、作業者個々の詳細情報として見やすい画面で把握することができる。
【0047】
さらに、情報管理部は32、データ処理部22で算出された各作業者10の体調評価結果を、基準心拍値および心拍応答値、および/または、体調評価値として把握して、表示画像処理部35を介して体調評価結果を表示部である表示デバイス36上に表示させることができる。
【0048】
なお、図1に示したように、現場監督が使用するパソコンがデスクトップタイプである場合は、表示デバイス36はパソコン本体とは別体のものとなる。このように、情報管理部32などを有する管理者情報端末31と管理者用の画面表示を行う表示デバイス36とは、物理的に一体のものには限られない。また、例えば、複数人でデータを確認する場合などには、専用の大型画像表示装置を用いたり、プロジェクターによって表示画像をスクリーンや壁面などに拡大投影したりすることも考えられる。
【0049】
さらに、現場監督30のパソコン31では、警告情報を通知した後の作業者10の生体情報や、作業者10からの警告情報の受領確認を受け取ることで、作業者10が熱中症の発症を予防するための対策を行ったか否かを確認することができ、作業者10が熱中症の発症を予防するための対応をとっていない場合には、対象の作業者10に繰り返して警告情報を伝達するなど、作業者10の注意喚起を行うことができる。
【0050】
なお、上記説明では、作業者10に熱中症を発症するリスクが高くなっていることを報知する警告情報を、クラウドサーバ21のデータ処理部22で生成する例を説明したが、警告情報を、現場監督30のパソコン31に設置された情報管理部32で生成することができる。また、データ処理部22と、情報管理部32の双方で警告情報を生成するように設定することもできる。このようにすることで、作業現場を実際に監督している現場監督30のパソコン31から、データ処理部22での判定結果に先んじて警告情報を生成して対称となる作業者10に伝達することで、作業現場の実情に応じて熱中症の発症リスクをより低減することができる場合がある。
【0051】
クラウドサーバ21のデータ処理部22、または、現場監督30のパソコン31で生成された警告情報は、現場監督30のパソコン31のデータ送信部34から、無線LANなどのローカルネットワークや携帯電話の情報キャリアを含めたネットワークを介して作業者10が装備するスマートフォン12に送信される。警告情報を受け取ったスマートフォン12の警告報知部14は、音声、画面表示、ランプの点灯または点滅、振動などの各種の情報伝達手段を用いて、作業者10に対して、自身が熱中症を発症するリスクが高まっていることを報知する。警告情報を確認した作業者10は、スマートフォン12のタッチパネルまたは操作ボタンなどを通じて警告情報を受け取った旨を報告するとともに、作業を中断して休息をとるなどの対策を実行する。
【0052】
作業者10のスマートフォン12は、作業者10が警告情報を確認して作業を中断したことを監督者30のパソコン31に送信し、監督者30は、作業者10が対策をとったことを確認できる。
【0053】
さらに、本実施形態で説明する熱中症リスク管理システムでは、現場監督30が把握している作業現場での熱中症発症リスクデータを、作業者10のスマートフォン12に送信して、作業者10が、自分が働いている作業現場での熱中症発症リスクの現状を確認することができる。例えば、自分以外の作業者の熱中症発症リスクが高くなっていることが確認できれば、各作業者自身が熱中症への対応を採ることが可能となる。また、他に熱中症発症リスクの警告情報を受け取って作業を中断した作業者がいることがわかれば、現場監督30から警告情報を伝達された作業者10が、より素直に警告情報に応じることが期待できる。
【0054】
さらに、作業者10が所有するスマートフォン12で、当該作業者10の現在までの熱中症発症リスクの変化や、データチップ11で取得された自身の生体情報数値、生体情報から計算された消費カロリーなどの関連情報を画面に表示して、作業者10自身が参照することができる。
【0055】
また、本実施形態の熱中症発症リスク管理システムでは、作業者10が所有するスマートフォン12の画像表示部17に、体調評価システムによって評価された被評価者の体調に関する情報が表示される。このため、画像表示部17は、スマートフォン12の保持者である被評価者としての作業者10の体調評価結果を表示する表示画面と、体調評価結果を作業者10にわかりやすい形で表示するための画像データ作成部とを備えている。なお、作業者10が所持するスマートフォン12の表示画面に表示される体調評価結果については、後に詳細に説明する。
【0056】
クラウドサーバ21は、インターネット20を通じて作業者10が所属する会社や事業所40内の管理コンピュータ41にも接続されていて、現場監督30のパソコン31に送信された作業者10の生体情報や、クラウドサーバ21が熱中症の発症リスクを判断するために用いた各種の情報、さらには、データ処理部22で算出された作業者10の基準心拍値や心拍応答値の数値を、リアルタイムで、事業所40の管理コンピュータ41に対して送信する。事業所40の管理コンピュータ41は、自身のデータ受信部42とデータ送信部43とを備えているため、インターネットを介して現場監督30のパソコン31とも接続されていて、現場監督30から作業者10に対して警告情報が正しく伝達されたか、作業者10が熱中症の予防対策をとったか、などの情報を確認し、必要に応じて所定の指示を行うことができる。このようにすることで、作業者10が所属する事業所40においても、作業者10の状況や作業現場での対応を確認することができ、作業者10の熱中症発症リスクの回避をバックアップすることができる。
【0057】
また、図1では明示していないが、クラウドサーバ21、現場監督30のパソコン31、および、事業所40の管理コンピュータ40は、インターネット20で接続されているため、パソコン31や管理コンピュータ40の側からクラウドサーバ21にアクセスすることができ、クラウドサーバ21でのデータ処理内容を制御したり、データ処理部22でのデータ処理用プログラムを更新したり、クラウドサーバ21から熱中症リスク管理に必要な情報を適宜取り出したりすることができる。さらに、併せて搭載されている体調評価システムによって評価された、被評価者である作業者10の体調評価結果を、現場監督30のパソコン31や事業所40の管理コンピュータ40の画面上に表示して、各作業者の体調評価結果を把握できるようにすることができる。
【0058】
なお、上記説明においては、作業者が装備する携帯端末としてスマートフォンを例示したが、作業者の携帯端末はスマートフォンには限られず、携帯電話機やタブレット機器、さらには、熱中症リスク管理システムに特化した、情報の送受信と体調評価結果を表示可能な専用の小型端末機器を用いることができる。
【0059】
また、現場監督が操作する管理者情報端末としては、例示したパソコン、特に図1で図示したデスクトップパソコン以外にも、ノートパソコン、タブレット型パソコン、小型サーバ機器などの、ネットワークを通じた情報の送受信とデータ表示、データ記録などが可能な各種の情報機器を採用することができる。
【0060】
さらに、上記説明では、現場監督の管理者情報端末から作業者の携帯端末に警告情報を送信する形態を説明したが、警告情報がクラウドサーバのリスク判定部で生成される場合には、クラウドサーバから直接作業者の携帯端末に警告情報を送信するようにシステムを構成することもできる。
【0061】
なお、本実施形態で例示した熱中症発症リスク管理システムによって建設現場での作業者の熱中症の発症リスクを管理する場合は、管理対象となる作業者の位置が建設現場内に限定される。また、作業期間も一定以上の日数にわたるため、当該建築現場で無線LANを構築することも可能となる。このように、被管理者が一定の範囲内にのみ存在する場合には、独自の無線LANを構築し、それぞれの作業者の生体情報の現場監督の管理者情報端末への送信を、インターネットを介さずにLAN内で行うことができる。この場合には、管理者情報端末から、または、LAN内に設置されたサーバユニットや別のパソコンなどの情報機器からインターネットに接続することで、クラウドサーバ内のリスク判定部で熱中症発症のリスク判定をしたり、気象情報取得部で取得した気象情報を利用したりすることができる。また、熱中症の発症リスクを判定するリスク判定部を建築現場のLANに接続されているサーバユニットやパソコンに設けることができる。
【0062】
[体調評価方法]
次に、本実施形態を用いて説明する体調評価システムにおける体調評価方法について説明する。
【0063】
本実施形態で説明する体調評価方法では、データチップ11により取得された被評価者の心拍データと加速度データとの相関を示すグラフを作成して、グラフ上のプロット点に対する回帰直線を求め、その回帰直線の心拍側の切片の値を基準心拍値と、回帰直線の傾きを正規化した数値を心拍応答値として、この基準心拍値と心拍応答値の値を用いて被評価者の体調を評価する。
【0064】
図4は、被評価者の心拍データと加速度データとの相関から基準心拍値と心拍応答値とを求めるグラフを示す図である。
【0065】
図4において、縦軸は被評価者の心拍を示し、単位は(bpm)である。また、横軸は、被測定者の体の動きの激しさを表す加速度を示し、単位は(G:重力加速度)である。
【0066】
本実施形態にかかる体調評価システムにおいて、被評価者10の心拍は、被評価者10が着用するアンダーシャツ18の裏面18bに配置された電極部11bにより、被評価者10の心拍のタイミングで検出される電極部11bでの電圧の変化である心拍波形として検知される。この心拍波形の1分間あたりのピーク数が被評価者10の心拍数(bpm)となる。なお、心拍数は、1分間の心拍波形のピーク数をそのままカウントする方法に限られない。例えば、15秒間、20秒間、30秒間などの1分間よりも短い期間、または、2分間、3分間などの1分間よりも長い期間のピーク数をカウントして、1分間あたりの心拍数に換算する方法を採用等、種々の方法を用いて単位時間(1分間)あたりの心拍数(bpm)として求めることができる。
【0067】
また、特に、被評価者10の動作が激しい場合には、所定の測定期間内のすべての心拍波形をデータチップ11の電極部11bで検知できるとは限らないため、1つの心拍波形とその次に検知された心拍波形とのピーク間の時間差から1分間あたりの心拍数を算出する方法を採用することもできる。このように心拍波形のピーク間隔から心拍数を求める場合には、連続する心拍に応じた心拍波形が検出されないと算出される心拍数が極端に小さな値となる。このため、数値として70〜110程度、さらに、数秒以内に数値が2〜3割以上も変化するような極端に大きな数値変化は生じない、という人体の脈拍の特性に基づいて、電極部11bで得られた心拍波形の間隔から求められた心拍数の確からしさを判定して、不正確なデータである場合には当該データは作用しないなどのふるいにかける処理を行うことが好ましい。
【0068】
また、例えば1分間などの所定の期間において、上記ふるいにかけた結果、不正確なデータであると判定されたケース数の割合が、一例として50%として定められた閾値を上回る場合には、データチップ11の取り付け異常が生じていると判断して、被評価者にデータチップ11が正しく胸部に接触している状態であるかを確認するとともに、アンダーシャツ18の着用状態を直させたり、データチップ11のバッテリ切れなどの異常事態が生じていないかを確認させたりすることができる。
【0069】
このようなデータチップの装着異常やバッテリ切れなどが生じている場合には、熱中症発症リスク管理システムも正しく動作しなくなってしまうため、作業者10に直接、または、現場監督30を介して作業者10にその旨を報知して、正しく生体情報が取得できる状態にするよう指示することが好ましい。
【0070】
なお、所定期間における実際の脈拍信号をカウントして心拍データを検出する場合、連続する2つの脈拍信号の間隔から脈拍数を算出する方法のいずれにおいても、脈拍の測定を連続して常に行う必要はなく、特に、被測定者の体の動きが小さい場合には、心拍数と後述の加速度データの取得を間欠的に行うことができる。
【0071】
加速度データは、被評価者が装着するデータチップ11の例えばデータ取得送信ユニット11aに搭載された3次元加速度センサによる測定値として、重力加速度Gを単位として検出される。
【0072】
本実施形態にかかる体調評価システムでは、被評価者10の体動を三次元加速度センサで検出するため、x軸方向、y軸方向、z軸方向3方向の加速度データが出力される。これらのデータについて、例えば指数移動平均法などの統計学的手法を用いて全体的なノイズ成分を除外した後に、所定期間の各軸方向の加速度の大きさを求める。その後、3軸方向の加速度の値についての2乗和を求めて、データ数で割って加速度の2乗平均値を求め、さらにその平方根から、被評価者の加速度データを算出する。
【0073】
なお、上記心拍データと加速度データの統計的処理方法は一例に過ぎず、例えば、被評価者の体の動きの激しさなども勘案して、随時データチップから得られる心拍データと加速度データとから、被評価者の心拍数と体の動きを示す加速度を正確に把握することができる各種の方法を採用することができる。
【0074】
このようにして得られた、被評価者の心拍数を示す心拍データと、その心拍データが得られた時点での体の動きを示す加速度データとの相関についての回帰直線を用いて、基準心拍値と心拍応答値とを算出する。
【0075】
図4は、本実施形態にかかる体調評価システムにおいて、被評価者から取得された心拍データと加速度データとの相関を示すグラフである。
【0076】
図4に示すように、被評価者から同じタイミングで得られた心拍数(bpm)と加速度(G)とをグラフにプロットして、プロット点に基づいて、データの回帰直線51を求める。回帰直線の求め方としては、各種の統計的処理方法が利用でき、例えば、加速度の数値に応じてグラフの領域を区分して、各区分の心拍と加速度との値の中央値を求め、得られた中央値の座標に対して回帰直線当てはめる手法が利用できる。
【0077】
このようにして得られた、回帰直線のy軸切片、すなわち、心拍側の切片52が、当該被評価者の基準心拍値を表す。この基準心拍値は、加速度が0の時、すなわち安静状態における評価者の心拍数を推定している。このため、基準心拍値を、安静時心拍数、または、心拍指数などと称することができる。
【0078】
また、回帰直線51の傾きは、体の動きの強度に対する被評価者の心拍数の上昇度合いを示すものである。本実施形態の体調評価システムでは、この回帰直線の傾きの数値の個人差を解消するため、下記式(1)のように、被測定者の評価時点での回帰直線の傾きαiを、基準となるデータの回帰直線の傾きα0で除した数値αを被評価者の心拍応答値としている。
【0079】
心拍応答値α = αi/α0 (1)
ここで、基準となるデータであるα0は、ビッグデータと称される多数人のデータに基づいて算出された回帰直線の傾きの値を使用することができる。また、被評価者の通常の体調に対する体調変化を評価する場合には、基準となるデータであるα0として、当該被評価者の過去の測定データ全体または一部から求められた、回帰直線の傾きの値を用いることができる。例えば、被評価者の前日の取得データからα0を求めてもよい。このように、心拍応答値αは、被評価者の評価時点での回帰直線の傾きαiが、基準となる値(α0)と同じレベルの場合に1となるよう正規化されたデータであることが好ましい。
【0080】
このようにして求められた心拍応答値は、測定時点での被評価者の体の動きによる心拍数の上昇度合いを標準化されたデータで正規化した値であり、心拍応答値が1.0より大きい場合は、体の動作に対する心拍数の上昇度合いが標準よりも大きいことを示している。このため、心拍応答値は、心能力評価値、または、体力指数などと称することができる。
【0081】
本実施形態にかかる体調評価システムでは、このようにして得られた基準心拍値と、心拍応答値とを用いて、被評価者の測定時点での体調を示すものである。
【0082】
なお、上述のように、基準心拍値と心拍応答値を算出する上では、心拍データと加速度データとの複数個の組み合わせが必要となる。このため、本実施形態にかかる体調評価システムでは、一定期間での測定結果に基づいて被評価者の体調評価が行われる。この一定期間としては、数十分〜数時間程度のデータが必要であると考えられるため、測定結果をオンタイムで表示する場合には、例えば、その表示時点から2時間毎に測定結果を更新してもよい。また、測定期間である一定期間を半日、もしくは、1日単位とすることで、被評価者の全体的な体調の傾向を評価することができる。また、測定期間を短く、例えば30分単位とすることで、被評価者の体調変化を細かくチェックすることができる。
【0083】
[体調評価結果の表示]
図5は、本実施形態にかかる体調評価システムにおいて、被評価者が所持する携帯端末であるスマートフォンの表示画面の例を示す図である。
【0084】
図5に示すように、例として示す表示画面60は、一般情報を示す第1の表示領域61と、所持する作業者の体調評価結果を表示する第2の表示領域62と、付加的な情報を表示する第3の表示領域63との3つの表示領域で構成されている。
【0085】
第1の表示領域81の最上部には、現在時刻、バッテリ残量表示、動作モード表示、その他常駐アプリケーションソフトの動作表示など、スマートフォンの一般的な情報が表示される帯状部分がある。
【0086】
この帯状部分の下には、本実施形態で説明する体調評価システムでの基本情報を表示する表示部分があり、図5に示す例では、被評価者である作業者の所属会社名、作業者が働く工事現場名などの被評価者に関連する固有の情報に加えて、天気予報などの関連情報の表示や、過去のアラート履歴を表示するためのボタンや表示画面の設定変更ボタン、強制的にデータを更新するボタンなどの各種の操作ボタンが配置されている。なお、図示は省略するが、本実施形態にかかる体調評価システムは熱中症発症リスク管理システムに搭載されているため、熱中症発症リスク管理システムでの情報、例えば、被評価者の熱中症発症リスク数値を表示する画面に表示内容を切り替える操作ボタンを配することができる。
【0087】
作業者が携帯するスマートフォンの表示画面60の中央部分には、第2の表示領域62として、体調評価システムによる当該作業者の体調評価結果2次元マップ70が表示されている。第2の領域の評価内容については、図6を用いて後に詳述する。
【0088】
また、作業者が携帯するスマートフォンの表示画面60の下側部分には、第3の表示領域63として、体調評価システムの動作に関する各種の情報、さらには、被評価者が作業開始前に自身の所属するグループを登録したり、体調評価システムや熱中症発症リスク管理システムにおいて、自身の情報を示す表示から自身が所属するグループ全体の状況を表示する画面へと変更したりする際の操作ボタン、作業開始時、または、作業開始時に操作してシステムでの管理のON/OFFを切り替えるボタンなどが配置されている。
【0089】
なお、図5に示す、被評価者である作業者10が所持する携帯端末であるスマートフォン12の表示例はあくまでも例であり、特に、第1の表示領域61と第3の表示領域63の表示内容は、作業者10に対して必要な情報をよりわかりやすく表示することができるように適宜変更される。また、作業者10が、自身の消費カロリーや工事の進行状況などの関連情報を選択して適宜表示されるようにすることができる。また、図5に示した第1の表示領域61の上部の帯状部分の領域以外の各領域の表示内容は、その上下方向における表示順を適宜変更することができることは言うまでもない。
【0090】
図6に、作業者が所持する携帯端末の表示画面の第2の領域の表示内容を拡大して示す。
【0091】
図6に示すように、本実施形態の体調評価システムでは、被評価者の現在の体調を示す2次元マップ70が表示される。
【0092】
この2次元マップ70は、縦軸が基準心拍値、横軸が心拍応答値を示していて、一例として、マップの中心が基準心拍値(=100)と心拍応答値(=1.0)それぞれの一般的な標準値となっている。なお、ここで一般的な標準値とは、例えば、日本人の40代男性の全体、などの、年齢、性別などの大きな区分で区切られた多人数のデータの平均値を示す。なお、この多人数のデータの平均値は、いわゆるビッグデータと呼ばれるような、本実施形態で示す体調評価システムの実際の利用者全体の実績値に基づいた実測値として得ることができる。また、従来の体調や健康指標に関する各種の方法により取得されたデータについて、本実施形態で示す体調評価システムを用いた場合の評価値に換算して得られた計算値として得ることもできる。
【0093】
また、図6に示すように、本実施形態にかかる体調評価システムで被評価者の携帯端末に表示される2次元マップは、基準心拍値と心拍応答値の標準値からの差を段階的に表現した背景画像を表示している。具体的には、「平常」状態と判断される領域71と、「やや注意」状態と判断される領域72と、領域72の外側の「注意」状態にあると判断される領域73に区分されている。なおかつ、被評価者の現在の体調評価結果として、直近(例えば過去2時間)の基準心拍値および心拍応答値に基づいてその位置を示すプロット74が表示されている。なお、2次元マップの背景画像の各領域の色を変化させることで、被評価者に対して標準値との差を視覚的に訴えることができる。この場合には、例えば、「平常」の領域を青色または緑色の色で着色し、「やや注意」を黄色またはオレンジ色、「注意」を赤系統の色で着色することで、被評価者に対して標準値との差をわかりやすく表示することができる。
【0094】
このように、本実施形態にかかる体調評価システムでは、標準値との差を段階的に表現した背景画像71〜73を表示した2次元マップ70上に自身の体調評価結果74が示されるため、被評価者は、現在の体調が、「平常」「やや注意」「注意」のいずれの状態にあるかを容易に確認することができる。また、図6に示す場合では、基準心拍値、心拍応答値、いずれも標準値より高くなっていることが一目で把握できるので、自身の体調が「やや注意」から「注意」状態の境界部分にあると評価された理由を、一目で把握することができる。
【0095】
なお、図6に示す例では、2次元マップに重ねて表示される体調評価結果のランクを示す背景画像が、標準値(1.0,100)を中心としたものとしているが、本実施形態にかかる体調評価システムにおいて、2次元マップに重ねて表示される背景画像は、現在の体調を評価する上でより適切な基準に基づいてその中心位置を変更することができる。例えば、被評価者の過去の体調評価結果の平均値を標準値とすることができ、この場合の標準値が、基準心拍数が105、心拍応答値が0.9であったとすると、背景画像として表示される「平常」の領域と「やや注意」の領域の中心を、座標(0.9,105)とすることで、各領域の中心がマップの中心からずれて表示される。これにより、当該被評価者は、自身の体調評価に関する指標(基準心拍値および心拍応答値)の個人的な特性を、2次元マップを見ることで把握することができる。
【0096】
図6に示す例では、背景画像の「平常」と「やや注意」の領域を、いずれも標準値を中心とする略正方形で表示しているが、背景画像として表示される領域はこれには限られない。「平常」と「やや注意」の少なくともいずれか一方の領域を示す形状として、マップ上の基準心拍値と心拍応答値との表示幅を異ならせた、縦長、もしくは、横長の矩形状とすることができる。また、2つの領域の中心を異ならせることも可能である。
【0097】
また、各状態(平常、やや注意、注意)を区分する閾値によって決まる各領域の大きさは、予め定めた所定の値を用いてもよいし、被評価者の過去データをフィードバックして決定してもよい。例えば、被評価者の過去データから得られた基準心拍数と心拍応答値の変動を領域の大きさに反映してもよい。
【0098】
本実施形態にかかる体調評価システムでは、標準値は、上述のとおり当該被評価者の過去の平均値を用いる他、例えば当該被評価者の過去データの蓄積がない場合は、予め定めた所定の値を用いてもよいし、ビッグデータとして蓄積された、より大きな集団に対する体調評価結果に基づいて得られた数値を標準値とすることもできる。また、被評価者と同じ環境で働く作業者を対象として得られた評価結果の平均値を標準値とすることも可能である。このように、本実施形態にかかる体調評価システムでは、より正確な体調評価を行うことができるように、より好ましい標準値を選択することができる。
【0099】
なお、図6に示す2次元マップの縦軸、横軸の指標の数値範囲は、本実施形態にかかる体調評価システムにおいて算出される可能性のある基準心拍値と心拍応答値との上限と下限の間に設定することができる。また、各軸のより外側の領域は「注意」の領域であるため、少なくとも、標準値からの差に基づいて規定された「注意」の状態の範囲が表示されるように各軸の数値範囲が決められていればよい。
【0100】
図7は、本実施形態にかかる体調評価システムにおける、作業者が所持するスマートフォンの表示画面の第2の表示領域に表示される2次元マップの第2の表示例である。
【0101】
図7に示すように、変形例の2次元マップ80は、2次元マップの縦軸、横軸の指標、数値範囲、2次元マップに表示される体調評価結果のランク分けの標準値と領域範囲はすべて図6に示した2次元マップ70と同じであるが、2次元マップ80上に表示される背景画像の「平常」の状態を示す領域81と「やや注意」の状態を示す領域82とが、図6に示した2次元マップ70のような矩形状ではなく、円形または長円形となっている点が異なる。
【0102】
このようにすることで、体調評価の指標である基準心拍値と心拍応答値との両方が標準値からの差が次のランクとなる境界部分に近い状態である場合に、全体としてより厳しいランクにあるものとして表示させることができるので、被評価者に対して自身の体調に気をつけるように促すことができ、より安全サイドにたった体調評価が行えることになる。なお、図7に例示した、円形の領域を示す背景画像においても、「平常」と「やや注意」との2つの領域の形状、中心位置などが異なっていてもかまわない点は、図6に示した矩形上の領域を示す背景画像と同様である。
【0103】
以上説明したように、本実施形態にかかる体調評価システムでは、被評価者の体調を評価する指標である基準心拍値と心拍応答値とをそれぞれ軸とする2次元マップを作成し、この2次元マップ上を所定の標準値からの差に応じてランク分けした背景画像を表示し、被評価者の評価値がプロットされる。このため、被評価者は、自身の体調評価結果について、2つの指標それぞれにおける評価度合いと、総合的な体調評価結果とを一目で把握することができ、必要に応じて休憩を取るなどの対応を行って自身の体調管理をすることができる。
【0104】
なお、本実施形態にかかる体調評価システムにおいて、被評価者である作業者10が所持する携帯端末に表示される体調評価結果を表す表示は、図6図7に示した体調評価結果のランクに基づいて領域が分けられた2次元マップには限られない。以下、本実施形態にかかる体調評価システムにおける、被評価者の体調評価結果を示す表示例について説明する。
【0105】
図8は、体調評価結果を示す2次元マップの第3の表示例を示す図である。
【0106】
図8では、図6図7と同様に、基準心拍値と心拍応答値とが2つの軸に表された2次元マップ上に被評価者の体調評価結果を示すものであるが、2次元マップ90の背景画像が体調評価結果を表すランクに区分されていない点が異なる。図8では、体調評価結果をランク分けする領域の代わりに、中心部91から周辺部にかけて徐々に濃度、または、色彩が変化する円形のグラデーション図形が示されていて、このグラデーション図形の上に被評価者の評価結果がプロット92として表示されている。
【0107】
このように、体調評価について、基準値となる中心91から徐々に変化するグラディエーション上に自身の評価結果がプロット92として示されることで、被評価者は、自身の体調評価結果について、評価結果をランク分けされた領域が示された図6図7の2次元マップと同様に、標準値からの差の大きさと乖離方向とを視覚的に理解することができる。このように、標準値との差を段階的に表現する方法にはこのようなグラデーションによる表示も含まれる。
【0108】
なお、図8では、グラデーションの形状を円形としたが、長円形、楕円形、矩形、多角形など、他の図形で表すこともできる。また、図8では、2次元マップ90の中心91である標準値部分が最も濃く、周辺が薄くなるようなグラデーションとして示したが、中心部分が薄く周辺部分が濃いグラデーションとしても同様に表示できることは言うまでもない。
【0109】
図9は、体調評価結果を示す2次元マップの第4の表示例を示す図である。
【0110】
図9は、図6図8と同様に、基準心拍値と心拍応答値とが2つの軸に表された2次元マップ上に被測定者の体調評価結果を示すものであるが、2次元マップ100に、体調評価結果の標準値を示すマーク(星形:101)と、自身の評価結果を示すドット(ドット:102)のみが表示されている。
【0111】
このようにしても、被評価者は体調評価の基準となる標準値に対する自己の体調評価結果数値との、差と乖離の方向とを2点のプロットの位置関係から視覚的に把握することができるで、評価結果をランク分けされた領域が示された図6図8の2次元マップと同様に、自身の体調評価結果を視覚的に理解することができる。
【0112】
なお、被評価者の理解を助けるために、標準値を示すマーク101近傍に「標準値」、自身の評価結果を示すドット102近傍に「測定値」または「あなた」など、2次元マップの表示内容が確実に理解できるようにすることがより好ましい。
【0113】
さらに、本実施形態にかかる体調評価システムにおいて、被評価者の体調評価結果を示すマップは、図6図9に示したような、基準心拍値と心拍応答値を2軸として評価結果を表す2次元マップに限られるものではない。
【0114】
図10は、本実施形態にかかる体調評価システムにおける、被評価者の体調評価結果を示す第5の表示例を示す図である。
【0115】
図10に示す第5の表示例では、体調評価結果を、一端に「正常」他端に「注意」という文字が表された横バー111上に、被評価者の評価結果を所定の図形(●:112)で示している。
【0116】
図10では、2次元マップの軸として表されていた基準心拍値と心拍応答値という2つの指標ではなく、これら2つの指標を勘案してデータ処理部22で求められた総合的な指標である体調評価値に応じて、横バー111上の図形112の位置が定められる。
【0117】
このようにすることで、被評価者である作業員10は、自身の体調評価結果について、普段と変わらない「正常」に近い状態なのか、それとも普段の体調と比べて体調に変化を来している「注意」に近い状態なのかを視覚的に把握して、適宜休憩を取るなどして体調の回復に努めるなどの対応をとることができる。
【0118】
なお、データ処理部22は、2次元マップ上における、被評価者から取得した基準心拍値および心拍応答値を示す座標と、標準値を示す座標とのユークリッド距離を体調評価値としても算出よい。例えば、図9の2次元マップ上において、自身の評価結果を示すドット102の座標を(Mx,My)、標準値を示すマーク101の座標を(Sx,Sy)とした場合、以下の式(2)を用いて体調評価値Pを算出できる。
【0119】
P=√{(Sx−Mx)2+(Sy−My)2} (2)
もちろん、体調評価値の算出方法は上記式に限られず、基準心拍値と心拍応答値とを所定の係数を掛けて足し合わせた線形和として、体調評価値を求めることもできる。
【0120】
図11は、本実施形態にかかる体調評価システムにおける、被評価者の体調評価結果を示す第6の表示例を示す図である。
【0121】
図11では、被評価者の体調を評価する2つの指標それぞれについて、「正常」、「やや注意」、「注意」との3つの領域に区分されたバー121、122上に、いずれも「正常」の領域側から「注意」の領域に向かって伸びる棒グラフ123、124で示している。
【0122】
図11に示すマップは、図6図9に示すような2次元のマップではないが、被評価者の体調を評価する指標それぞれについて、自身の評価結果が標準値に対しての乖離具合からどのように評価されるものであるかを、棒グラフ123、124の先端の位置から把握することができる。なお、図11に示した例では、基準心拍値と心拍応答値についての評価結果のみを示したが、図10を用いて説明した、総合的な体調評価指標である体調評価値を併せて表示することで、被評価者に自身の体調の全体的な評価結果を把握させることができる。
【0123】
図12は、本実施形態にかかる体調評価システムにおける、被評価者の体調評価結果を示す第7の表示例を示す図である。
【0124】
図12に示すマップは、図11に示すマップと同様に被評価者の体調を評価する2つの指標それぞれについて表すものであり、基準心拍値を示す横バー131と、心拍応答値を示す横バー132に、それぞれの指標の標準値が中央に示されて、被評価者の評価結果が●でプロット133、134されている。図12に示すマップによって、被評価者は、自身の評価結果数値が、標準値に対して低いか(図中左側)高いか(図中右側)と、その度合いである標準値との差の大きさを視覚的に把握することができる。
【0125】
なお、図10では、体調評価結果を領域に区別しない状態で表示する例を示し、図11では、体調評価結果を標準値からの乖離度合いによって定められた領域を用いて表示する例を示した。また、図12では、1次元のマップである横バー上に標準値を明確に示して、標準値との差の方向とその大きさがわかるように表示する例を示した。このように、本実施形態にかかる体調評価システムにおける被評価者が所持するスマートフォンの表示画面の表示は、体調評価結果が視覚的に容易に把握できる様々な形態を採用することができる。
【0126】
また、被評価者の評価結果を、図10図12ではドットで、図11では棒グラフの先端部の位置で示したが、どちらの表示形態を用いても被評価者の体調評価結果を視覚的に示せることは言うまでもなく、それぞれ例示した方法とは異なる方法で表示できることは言うまでもない。
【0127】
なお、図10図11図12に示した、被評価者の体調表示結果を1次元のマップ(横バー)上に示す例では、図10に示した評価結果の位置をドットで示す方法、図11に示した評価結果の位置をグラフの先端で示す方法以外にも、複数のセグメントを用いてその先端で示す方法、矢印などの図形を用いて評価結果の位置を示す方法など、所定の数値の全体に占める相対的な位置を表示する方法として従来知られている各種の方法を用いることができる。
【0128】
また、体調評価結果を1次元のマップに示す手法としても、図10図12で用いた横バー上に示す方法には限られず、横方向に示された円筒などの図形に示された着色領域の大きさで示す方法、縦方向のバー上に示す方法、さらには、体調の善し悪しを象徴する図形、例えば、エネルギー量を示す燃料タンクや炎などの図形に占める着色領域の大きさを変化させて表示することもできる。
【0129】
また、本実施形態における体調評価システムにおける体調評価結果の表示方法としては、図6図12を示して説明した2次元または1次元のマップを用いて表示する指標の他に、評価結果数値をそのまま表示する方法、評価結果のランク(「平常」、「やや注意」、「注意」)を文字で表示する方法などを採用することができる。これら図形を用いずに体調評価結果を表示する場合において、評価結果のランクに基づいて、数値や文字自体の色彩、または、数値や文字が表示される領域を囲む図形を着色することで、特に、体調評価結果に注意が必要な状態を示す場合に、より強く被評価者の視覚に訴えることができるようにすることが好ましい。
【0130】
図13は、本実施形態にかかる体調評価システムにおける、被評価者の体調評価結果を示す第8の表示例を示す図である。
【0131】
図13では、被評価者の体調評価値の時間経過に伴う推移を示す例である。より具体的には、被評価者の体調評価値の評価当日の作業開始時からの推移141を示していて、図13に示す例では、図中左側に示される午前中の体調評価値は平均して高く、特に昼前は「注意」の状態とランクされる数値に近くなっているが、午後には体調評価値141が「平常」に近い値となって現在時点を示すドット142まで継続している。
【0132】
このように、被評価者の体調評価結果を示す数値の推移を表示することで、被評価者は、自身の体調変化を把握することができる。図13に示すように、体調評価結果が「平常」としてランク分けされる状態に近づいている場合は問題ないが、反対に評価結果が「注意」としてランク分けされる領域に近づいている場合には、被評価者は自身の体調変化により留意することが必要となる。
【0133】
なお、図13では、被評価者の体調評価の全体的な指標である体調評価値の推移を示す例を図示しているが、体調評価の基準となる基準心拍値と心拍応答値の推移を合わせて表示することもでき、また、体調評価値の推移は表示せずに、基準心拍値と心拍応答値との推移のみを表示するようにすることもできる。
【0134】
また、体調評価結果の推移の表示として、評価当日の時間による推移を示す以外に、例えば、直近1週間程度の評価日毎の体調評価結果の推移を示すなど、推移を示す期間については適宜好ましいものに設定することができる。
【0135】
図14は、本実施形態にかかる体調評価システムにおける、被評価者の体調評価結果を示す第9の表示例を示す図である。
【0136】
図14は、本実施形態の体調評価システムが搭載された熱中症発症リスク管理システムにおける、管理者である現場監督30が利用する管理者情報端末31での表示画像例を示している。図14に示すように、管理者情報端末31での表示デバイス36に、当該現場監督が管理する複数の作業員10の体調評価結果を一覧表として表示することで、現場監督30は、各人の体調を容易に把握することができる。
【0137】
なお、図14では、体調評価結果として、所定の標準値からの差によって区分されたランクによって、「平常」「やや注意」「注意」と示された状態を例示しているが、各作業員の体調について、体調評価値を数値として表すことができ、また、基準心拍値と心拍応答値とを体調評価値に加えて、または、体調評価値は表示せずに、表示することもできる。この場合において、表示される文字や数値の色、または、表示される表の該当する枠または欄全体の色を評価結果によって異ならせて、特に、「注意」の状態であると評価された作業者が目立つようにすることがより好ましい。
【0138】
なお、図14に示す、管理対象となる被評価者の体調評価結果一覧については、現場監督30の管理者情報端末31以外にも、事業所40における管理コンピュータ41上にも表示可能として、事業所40の担当者が現場監督による作業員10の体調管理のサポートを行うことができるようにすることが好ましい。
【0139】
また、必要に応じて、各作業者10が所持するスマートフォン11の表示画面に、作業員10が所属するグループの構成員の体調評価結果を一覧として表示することもできる。
【0140】
なお、図13では、現場監督30の管理者情報端末31に表示される作業員10の体調評価結果の一覧を一覧表として示す例について説明した。しかし、管理対象の作業者全体の体調評価結果の一覧を表示する方法としては一覧表の形式になったものには限られず、例えば、図6に示した2次元の評価マップに、複数の被評価者の体調評価結果をドットで表示することができ、このようにすることで、管理者である現場監督は、管理対象の作業者の体調評価結果の全体傾向を把握することができる。また、各被評価者の評価結果を示すドットの近傍に、当該作業者を識別可能なように名前や管理IDを表示することも可能である。
【0141】
以上説明したように、本実施形態にかかる体調評価システムでは、被評価者が装着した生体情報取得部により取得された心拍データと加速度データとに基づいて、当該被評価者の基準心拍値と心拍応答値とを算出して、その体調を評価することができる。そして、基準心拍値と心拍応答値とに基づく体調評価結果を表示画面に表示することで、被評価者が自己の体調評価結果を視覚的に把握することができ、体調変化に注意が必要と評価されている場合には体を休めるなどの対応をとることで、体調管理を行うことができる。
【0142】
なお、上記実施形態において、体調評価結果を所定の標準値からの差に応じてランク分けを行う際に、「平常」、「やや注意」「注意」との3つのランクに分けることを説明した。しかし、このランク分けはあくまでも例示に過ぎず、3つのランクではなく、2つ、または、4つ以上のランクに分けることが可能であり、また、各ランクの名称も上気したものに限られないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本願で開示する体調評価システムは、建築現場や運送業など、肉体的負荷と熱的負荷とが大きな状態で作業する作業者の熱中症発症リスクを管理者が管理するシステムとともに搭載して、様々な状況下での被管理者の体調評価を行うことができる。また、本願で開示する体調評価システム単独として、建築現場や工場における作業者の体調管理、スポーツジムや高齢者施設の入居者の体調管理、トレーニング中のスポーツ選手の体調管理など、幅広い用途に用いることができ、被評価者が自己の体調評価結果を視覚的に理解することができる体調管理システムとして有用である。
【符号の説明】
【0144】
10 作業者(被管理者)
11 データチップ(生体情報取得部)
12 スマートフォン(携帯端末)
13 生体情報送信部
17 画像表示部(表示部)
22 データ処理部
36 表示デバイス(表示部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14