(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-202273(P2019-202273A)
(43)【公開日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】汚染された風化岩質地盤の浄化方法
(51)【国際特許分類】
B09C 1/00 20060101AFI20191101BHJP
C09K 17/00 20060101ALI20191101BHJP
E02D 3/08 20060101ALI20191101BHJP
E02D 3/10 20060101ALI20191101BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20191101BHJP
【FI】
B09C1/00
C09K17/00 H
E02D3/08
E02D3/10 104
E02D3/12 101
E02D3/10 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-99304(P2018-99304)
(22)【出願日】2018年5月24日
(71)【出願人】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩野 芳章
(72)【発明者】
【氏名】山口 博久
(72)【発明者】
【氏名】高田 将文
【テーマコード(参考)】
2D040
2D043
4D004
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AB01
2D040AC01
2D040BB01
2D040BD05
2D040CA09
2D040CA10
2D040CB01
2D043CA02
2D043DA05
2D043DA07
4D004AA14
4D004AA41
4D004CA34
4H026AA01
4H026AB04
(57)【要約】
【課題】風化した岩質地盤中の汚染物質を浄化する方法を提供すること。
【解決手段】汚染された風化岩質地盤を浄化する方法であって、該風化岩質地盤に粒状材料杭を形成するI工程と、粒状材料又は該粒状材料杭に浄化剤を含ませるII工程と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染された風化岩質地盤を浄化する方法であって、
該風化岩質地盤に粒状材料杭を形成するI工程と、
粒状材料又は該粒状材料杭に浄化剤を含ませるか、又は該粒状材料杭に水を注入するII工程と、を有することを特徴とする風化岩質地盤の浄化方法。
【請求項2】
該粒状材料は、砂、砕石、ガラスビーズ及び樹脂ビーズから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の風化岩質地盤の浄化方法。
【請求項3】
該I工程において、風化岩質地盤に中空管を振動又は回転により貫入、引き抜きし、該中空管内の粒状材料により粒状材料杭を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の風化岩質地盤の浄化方法。
【請求項4】
該I工程において、風化岩質地盤を削孔し、次いで該削孔に流動化した粒状材料を圧入により注入し、該削孔内において、粒状材料杭を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の風化岩質地盤の浄化方法。
【請求項5】
該II工程は、該粒状材料杭に注入井を設置し、該注入井から浄化剤を投入するか、又は該注入井から水を注入することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の風化岩質地盤の浄化方法。
【請求項6】
該水は、該風化岩質地盤に形成された揚水井からの循環水であることを特徴とする請求項5に記載の風化岩質地盤の浄化方法。
【請求項7】
該II工程は、該粒状材料杭の上部に浄化剤を入れた浸透升を設置し、該浸透升から該粒状材料杭に浄化剤を浸透させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の風化岩質地盤の浄化方法。
【請求項8】
該II工程は、粒状材料に浄化剤を含ませる工程であり、先に該II工程を行い、次いで、該浄化剤を含有した粒状材料を杭材料として該I工程を実施し、浄化剤を含む粒状材料杭を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の風化岩質地盤の浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染された風化岩質地盤の浄化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、汚染物質で汚染された地盤や地下水の浄化方法としては、多くの浄化方法が提案されている。特開平11-207375号公報には、微生物用栄養組成物を含む注入水を注入井戸より汚染地下水帯に注水し、微生物により汚染物質を分解する地下水汚染の修復方法において、前記注入水にオゾンを溶存させて注水するか、又は前記注入水と溶存オゾン水とを注水することを特徴とする地下水汚染の修復方法が開示されている。この方法によれば、注入井戸から距離的に離れるに従って溶存酸素濃度及び栄養組成物濃度が急速に低下することを防止でき、これらの地下での遠距離到達性を大きく改善することができる。その結果、より広い地下範囲において、微生物を利用して汚染物質を分解除去するバイオレメディエーションの適用が可能となる。
【0003】
特許第4160728号公報には、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物を浄化する装置であって、25℃における標準水素電極に対する標準電極電位が300mV〜−2400mVである還元剤を保持する還元剤槽と、従属栄養型嫌気性微生物の栄養源を保持する栄養源槽と、吸水部と、排水部と、が設けられている井戸と、を具備し、前記吸水部から吸水した水に、前記還元剤槽からの還元剤及び前記栄養源槽からの栄養源を接触させ、前記排水部から排水し、再び前記吸水部から吸水して、水を循環させる、浄化装置が開示されている。この発明によれば、ハロゲン化有機化合物を含む汚染物、特に土壌及び地下水を原位置で効率的に且つ簡易に浄化できる。
【0004】
特開2014-79670号公報には、汚染地下水の下流域の地中に、該汚染地下水の流れ方向に対して交差するように汚染物質を浄化する浄化剤を含有した透過性の壁本体を鉛直方向に配設して成る透過性地下水浄化壁において、種類の異なる前記浄化剤を別々に含有した前記透過性の壁本体を複数列に併設したことを特徴とする透過性地下水浄化壁が開示されている。この発明によれば、汚染地下水の下流域の地中に、複数の粒状物杭により複数列の壁本体をそれぞれ形成し、この複数列のうちの少なくとも1列を締め固め形成したことで、複数列の透過性の壁本体を短時間かつ低コストで構築することができる。
【0005】
特開2015-217361号公報には、不飽和層内であって、且つ不飽和層に存在する汚染土壌領域と地下水の間に、水平状または傾斜状に設置させることを特徴とする透過性柱状地中浄化体が開示されている。この発明によれば、不飽和層に形成された浄化体は、不飽和層に存在する汚染物質が降雨の浸透または通過により、汚染水が深部に拡散し、地下水に到達することを事前に防止することができる。
【0006】
一方、例えば産業廃棄物処理場のような汚染地盤には、地盤構成が砂層や砂礫層の下部に、岩質地盤が存在するものがある。これを跡地利用するには、汚染された汚染地盤の浄化が必要となるが、岩質地盤には、汚染物質は浸透しないため、浄化対象地盤は、砂層や砂礫層となる。しかし、例えば花崗岩のような岩質地盤には、節理と呼ばれる縦や横の亀裂が発達している。この亀裂に沿って水や空気が進入して、花崗岩を風化させる。このような風化した岩質地盤の場合、亀裂などの水みちに沿って高濃度の汚染物質が浸透しており、亀裂内の汚染物質の浄化が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11-207375号公報
【特許文献2】特許第4160728号公報
【特許文献3】特開2014-79670号公報
【特許文献4】特開2015-217361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一般的には、岩質地盤の亀裂中の汚染物質の浄化は困難とされている。そして、従来、風化した岩質地盤中の汚染物質を浄化する方法について開示されたものはない。
【0009】
従って、本発明の目的は、風化した岩質地盤中の汚染物質を浄化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、汚染された風化岩質地盤を浄化する方法であって、該風化岩質地盤に粒状材料杭を形成するI工程と、粒状材料又は該粒状材料杭に浄化剤を含ませるか、又は該粒状材料杭に水を注入するII工程と、を有することを特徴とする風化岩質地盤の浄化方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、該粒状材料は、砂、砕石、ガラスビーズ及び樹脂ビーズから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする前記風化岩質地盤の浄化方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、該I工程において、風化岩質地盤に中空管を振動又は回転により貫入、引き抜きし、該中空管内の粒状材料により粒状材料杭を形成することを特徴とする前記風化岩質地盤の浄化方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、該I工程において、風化岩質地盤を削孔し、次いで該削孔に流動化した粒状材料を圧入により注入し、該削孔内において粒状材料杭を形成することを特徴とする前記風化岩質地盤の浄化方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、該II工程は、該粒状材料杭に注入井を設置し、該注入井から浄化剤を投入するか、又は該注入井から水を注入することを特徴とする前記風化岩質地盤の浄化方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、該水は、該風化岩質地盤に形成された揚水井からの循環水であることを特徴とする前記風化岩質地盤の浄化方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、該II工程は、該粒状材料杭の上部に浄化剤を入れた浸透升を設置し、該浸透升から該粒状材料杭に浄化剤を浸透させることを特徴とする前記風化岩質地盤の浄化方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、該II工程は、粒状材料に浄化剤を含ませる工程であり、先に該II工程を行い、次いで、該浄化剤を含有した粒状材料を杭材料として該I工程を実施し、浄化剤を含む粒状材料杭を形成することを特徴とする前記風化岩質地盤の浄化方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、風化した岩質地盤中の汚染物質を効率的に浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の浄化方法における風化岩質地盤の縦断面の模式図である。
【
図2】
図1の風化岩質地盤の横断面の模式図である。
【
図3】
図1の風化岩質地盤に粒状材料杭を打設した図である。
【
図5】
図3の粒状材料杭に注入井を形成した図である。
【
図7】
図3の粒状材料杭の上部に浸透升を設置した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において、岩質地盤とは、地盤工学会基準のJGS3811-2011(岩盤の工学的分類方法)に規定される岩盤である。すなわち、岩盤とは岩石で構成される自然地盤であって、岩石とは、様々な程度に固結又は結合した鉱物の集合体で、不連続面を含まない岩盤部分の地盤材料である。一般に、このような岩質地盤の内部には、不連続面が分布すると共に、様々な程度の風化/変質を伴っている。
【0021】
本発明において、風化岩質地盤とは、前記JGS3811-2011で規定される「大分類、中分類、小分類及び細分類」における「細分類」の「風化度」がw
3〜w
6、「岩盤の風化度の区分」における「風化/変質の状態」がw
3〜w
6のものである。具体的には、ボーリングコア鑑定において、岩盤の乾燥状態の一軸圧縮強度が400kgf/cm
2以下、節理密度(平均コア長)が30cm以下、節理の開口性標準区分が「若干間隙が生じる」又は「かみ合わない」と判断される「風化している」又は「極めて風化している」ものである。
【0022】
本発明において、汚染物質としては、特に制限されず、廃棄物処理場や不法投棄廃棄物から流れ出た有害物質や工場廃液などであり、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、フェノール、クレゾール、芳香族アミン、1,4-ジオキサン、ダイオキシン、PCB、PCP(ペンタクロロフェノール)等の環式有機化合物、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロエチレン等の鎖式有機化合物が挙げられる。本発明においては、風化岩質地盤の亀裂中に、汚染物質が浸透している。汚染された風化岩質地盤は、事前のボーリングコア試験により知ることができる。
【0023】
本発明において、I工程は、風化岩質地盤に粒状材料杭を形成する工程である。粒状材料杭としては、杭形状が連続した壁体も含まれる。粒状材料としては、砂、砕石、ガラスビーズ及び樹脂ビーズが挙げられる。これらの粒状材料は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。砂、砕石を使用して従来の砂杭造成工法を適用すれば、風化岩質地盤に砂杭や砂壁を形成することができる。ガラスビーズ及び樹脂ビーズは、砂や砕石に代えて、あるいは砂や砕石と混合して使用し従来の流動化砂圧入工法を適用すれば、風化岩質地盤に粒状材料杭を形成することができる。粒状材料杭は、透水性であればよい。これにより、粒状材料杭中に浄化剤を浸透させることができる。また、多数の粒状材料杭において、隣接する粒状材料杭間の距離としては、1m〜3mの間で適宜決定される。風化岩質地盤に多数の粒状材料杭が形成されることで、複合地盤の透水係数は岩質地盤の透水係数10
−6〜10
−4cm/秒から10
−3cm/秒へと大幅に改善する。また、地盤の水理学的状態を被圧状態から不圧状態に変化させ、地盤の貯留性(比産出率)を増加させることができる。これにより、粒状材料杭に注入された浄化剤は、亀裂内に浸透し、更に、隣接する粒状材料杭までの距離が短いため、浄化効率は一層、向上する。なお、II工程をI工程より先に実施し、予め粒状材料に浄化剤を含ませる場合、I工程における粒状材料は、浄化剤を含むものとなる。
【0024】
I工程において、風化岩質地盤に粒状材料杭を形成する工法としては、従来の砂杭造成工法や流動化物圧入工法が挙げられる。砂杭造成工法は、風化岩質地盤に中空管を振動又は回転により打ち込みつつ、中空管内の粒状材料により粒状材料杭を造成する工法である。砂杭造成工法の一例としては、例えば、中空管を所定の深度まで貫入した後、中空管を適宜の長さ引き抜き、該引き抜き跡に中空管内の粒状材料杭材料を排出する引き抜き工程と、中空管を再貫入する工程とを順次、地表に至るまで繰り返して、風化岩質地盤中に締固め砂杭を造成する締固め砂杭造成工法が挙げられる。この際、中空管の貫入により風化岩質地盤を押し広げること、再貫入により杭を拡径するため風化岩質地盤に圧力がかかること、中空管の貫入及び再貫入時に風化岩質地盤に振動が加わることなどの理由により、亀裂が助長され、浄化剤の浸透効率を向上させることができる。
【0025】
流動化物圧入工法としては、粒状材料、流動化剤及び水を含有する流動化物を、流動状態を保持したまま風化岩質地盤中に圧入し、地盤中で塑性化させる公知の粒状材料杭造成工法が挙げられる。流動化物圧入工法において、事前に、風化岩質地盤を削孔し、削孔に流動化物を圧入してもよい。圧入された流動化物は塑性化させる必要はない。流動化物圧入工法においては、削孔によりあるいは流動化物圧入により、風化岩質地盤に圧力が加わり、亀裂が助長され、浄化剤の浸透効率を向上させることができる。
【0026】
本発明において、II工程は、粒状材料又は粒状材料杭に浄化剤を含有させるか、又は、該粒状材料杭に水を注入する工程である。粒状材料杭に浄化剤を含有させる方法としては、I工程で得られた粒状材料杭に注入井戸を設置し、該注入井から浄化剤を注入する方法及びI工程で得られた粒状材料杭の上部に浸透升を設置し、該浸透升から該粒状材料杭に浄化剤を浸透させる方法が挙げられる。また、粒状材料に浄化剤を含有させる方法は、先に該II工程を行い、予め粒状材料に浄化剤を含有させておき、次いで、該浄化剤を含有した粒状材料を杭材料として該I工程を実施し、浄化剤を含む粒状材料杭を形成する方法において適用される。予め粒状材料に浄化剤を含有させる方法としては、粒状材料に液状の浄化剤を浸透させる方法及び粒状材料と粒状又は粉体の浄化剤の混合物を得る方法が挙げられる。予め粒状材料に浄化剤を含有させる方法は、先にII工程を行い、次いでI工程を行うものである。
【0027】
注入井から浄化剤を投入する方法としては、注入井からポンプにより浄化剤を含む液状体を圧送する公知の方法が挙げられる。これにより、粒状材料杭に浄化剤が注入され、亀裂に浸透し、亀裂内の汚染物質を浄化できる。注入井から浄化剤を投入する方法においては、風化岩質地盤に揚水井を付設し、循環方式とする方法を用いることができる。すなわち、風化岩質地盤中において、注入井が形成された粒状材料杭と揚水井は、亀裂により繋がっており、揚水井から汲み上げられた浄化剤を含む揚水は、例えば、地上の浄化剤濃度調整槽にて、浄化剤濃度が調整され、注入井に再注入されるものである。これにより、揚水井、浄化剤濃度調整槽、注入井、粒状材料杭、亀裂及び揚水井が繋がり、循環系が形成されるため、浄化期間の短縮を図ることができる。
【0028】
該粒状材料杭に水を注入する方法としては、I工程で得られた粒状材料杭に注入井戸を設置し、該注入井から水を注入(加水)する方法が挙げられる。注入井から水を注入する方法としては、該風化岩質地盤に形成された揚水井からの循環水を循環注入する方法が挙げられる。すなわち、風化岩質地盤中において、注入井が形成された粒状材料杭と揚水井は、亀裂により繋がっており、揚水井から汲み上げられた揚水が、注入井に注入されるものである。これにより、揚水井、注入井、粒状材料杭、亀裂及び揚水井が繋がり、循環系が形成されるため、浄化期間の短縮を図ることができる。
【0029】
浸透升から粒状材料杭に浄化剤を浸透させる方法において、浸透升は、粒状材料杭と連通する共に、浄化剤を含む液状体を貯留するものであり、粒状材料杭の上端に載せるだけで、浄化剤を含む液状体を自然の重力落下により、粒状材料杭に浸透させるものである。浸透升の大きさは適宜決定され、また、多数の粒状材料杭の一部又は全部に設置することができる。
【0030】
本発明において、浄化剤としては、公知の粒状体又は液状物が使用でき、例えば、鉄粉、活性炭、窒素源やリン源となる無機化合物含む塩類、過硫酸ソーダやフェントン試薬などの化学酸化剤が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用することができる。本発明において、水は、注入水又は揚水井からの循環水が挙げられる。
【0031】
次に、本発明の第1の実施の形態における風化岩質地盤の浄化方法を、
図1〜
図6を参照して説明する。本例の浄化方法の対象地盤である風化岩質地盤12は、地表の砂又は砂礫層11の下部に存在する。風化岩質地盤12は、花崗岩などの岩質地盤が風化したものであり、岩質地盤中には、亀裂13が存在し、この亀裂中に汚染物質が存在している(
図1及び
図2)。汚染の範囲については、事前のボーリング試験により把握しておく。先ず、この風化岩質地盤12に対し、公知の拡径砂杭造成方法により、例えば平面視におけるピッチ2m間隔で、砂杭2を多数造成する。砂杭2の本数や先端深さは、汚染の範囲をカバーする範囲で適宜決定すればよい。
【0032】
具体的には、中空管を所定の深度まで貫入した後、中空管を適宜の長さ引き抜き、引き抜き跡に中空管内の砂杭材料を排出する引き抜き工程と、中空管を再貫入する工程とを順次、地表に至るまで繰り返して、風化岩質地盤中に締固め砂杭12を造成する。この際、中空管の貫入により風化岩質地盤を押し広げること、再貫入により杭を拡径するため風化岩質地盤に圧力がかかること、中空管の貫入及び再貫入時に風化岩質地盤に振動が加わることなどの理由により、亀裂13が助長され、新たな亀裂14を生じさせ、浄化剤の浸透効率を向上させる。また、多数の砂杭2は、亀裂13、14により接続されて水みちが形成されており、浄化剤の拡散が容易となる(
図3参照)。
【0033】
次に、砂杭2内に注入井3を形成する。注入井3は、砂杭2中に浄化剤を注入するための井戸である。注入井3は、全ての砂杭又は一部の砂杭中に、貫入又は回転により、建て込まれる。これにより注入井3には、一端が浄化剤貯留槽に接続する浄化剤注入管(不図示)が接続される。これにより、浄化剤注入管から注入井に、浄化剤を圧送により注入することができる(
図5及び
図6)。注入井は、筒状体の周面に多数の貫通孔を形成したものが、全長に亘り浄化剤を供給できる点で好ましい。
【0034】
注入井3に注入された浄化剤は、砂杭2内に浸透し、砂杭2に連通する亀裂13、14にも浸透する。また、注入井3が一部の砂杭2に形成される場合、注入井3が形成されていない砂杭2は、亀裂により注入井3が形成されている砂杭2に連通しており、この場合においても、全ての砂杭2に浄化剤は浸透し、これに繋がる亀裂13、14に浸透する。これにより、亀裂13、14内の汚染物質は浄化される。
【0035】
また、第1の実施の形態における風化岩質地盤の浄化方法の変形例として、風化岩質地盤に揚水井を付設し、揚水井と注入井を繋げる循環方式としてもよい。すなわち、風化岩質地盤中において、注入井が形成された砂杭と揚水井は、亀裂により繋がっており、揚水井から汲み上げられた浄化剤を含む揚水は、例えば、地上の浄化剤濃度調整槽にて、浄化剤濃度が調整され、注入井に注入される。これにより、浄化期間の短縮を図ることができる。なお、揚水井と注入井を繋げる循環系において、浄化剤濃度調整槽の設置は省略できる。
【0036】
次に、本発明の第2の実施の形態における風化岩質地盤の浄化方法を、
図7を参照して説明する。
図7において、
図1〜
図6と同一構成要素には同一符号を付して、その説明を省略し、異なる点について、主に説明する。すなわち、第2の実施の形態における風化岩質地盤の浄化方法において、第1の実施の形態における風化岩質地盤の浄化方法と異なる点は、注入井3に代えて、浸透升4を設置した点である。
【0037】
すなわち、風化岩質地盤中に形成された砂杭2の上部に浸透升4を設置する。浸透升43は、砂杭2中に浄化剤を浸透させるものである。浸透升4は、例えば砂杭2の直径と略同じの底板と天板が無い筒状の枠体であり、砂杭2の上部に単に載せるだけのものである。浸透升4には、浄化剤が入っており、自然の重力落下により、浄化剤は、砂杭2に浸透する。なお、砂杭2に連通する浸透升4の部位(例えば、底部)には、浄化剤の浸透速度を制限するフィルターを設置してもよい。
【0038】
砂杭2内に浸透した浄化剤は、砂杭2内の砂粒子間の間隙に貯留される。これにより、水頭を一定に保つことができ、重力で浄化剤を浸透させることができる。そして、砂杭2に浸透した浄化剤は、砂杭2に連通する亀裂13、14にも浸透する。これにより、亀裂13、14内の汚染物質は浄化される。また、浸透升4が一部の砂杭2に設置される場合、浸透升4が形成されていない砂杭2は、亀裂により浸透升4が形成されている砂杭2に連通しており、この場合においても、全ての砂杭2に浄化剤は浸透し、これに繋がる亀裂13、14に浸透する。第2の実施の形態における風化岩質地盤の浄化方法は、第1の実施の形態における風化岩質地盤の浄化方法と同様の効果を奏する。
【0039】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変形例を採ることができる。砂杭の造成方法としては、
図4及び
図5のような平面視が碁盤目の交点に形成されるものの他、三角目の交点、不定形状目の交点などであってもよい。また、注入井の深さは、特に制限されず、砂杭長さの半分以下であってもよい。注入井の長さが短くても、浸透により、砂杭全長に亘り、浄化剤を供給することができる。浸透升は、浄化剤が入った状態で、砂杭上に設置してもよく、砂杭上に設置した状態において、浄化剤を投入してもよい。
【0040】
また、風化した岩質地盤に、粒状材料杭を形成する方法としては、上記実施の形態例の他、ボーリングマシンで削孔した後、削孔に粒状材料を投入する方法、風化した岩質地盤中に、ケーシングを打設し、ケーシング内の岩質分を除去し、ケーシング内に粒状材料を投入する方法なども使用できる。
【0041】
本発明において、I工程で構築された粒状材料杭、注入井が形成された粒状材料杭及びII工程で設置された浸透升は、その上面が雨ざらしなど地表に繋がるよう形成することが、降雨を積極的に風化岩質地盤に浸透させることができ、希釈しながら水洗浄により浄化を促進することができる点で好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、汚染された風化岩質地盤を効率的に浄化できるため、従来は困難であった跡地利用が可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 地表面
2 砂杭(粒状体杭)
3 注入井
4 浸透升
11 砂、砂礫層
12 風化岩質地盤
13 亀裂
14 新たな亀裂