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特開2019-202299結晶性多孔質チタノシリケート触媒及びその製造方法、並びに該触媒を用いたp−ベンゾキノン類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-202299(P2019-202299A)
(43)【公開日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】結晶性多孔質チタノシリケート触媒及びその製造方法、並びに該触媒を用いたp−ベンゾキノン類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/89 20060101AFI20191101BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20191101BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20191101BHJP
   C07C 50/04 20060101ALI20191101BHJP
   C07C 46/06 20060101ALI20191101BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20191101BHJP
【FI】
   B01J29/89 Z
   B01J37/10
   B01J37/08
   C07C50/04
   C07C46/06
   C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-100734(P2018-100734)
(22)【出願日】2018年5月25日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 邦章
(72)【発明者】
【氏名】岡部 晃博
(72)【発明者】
【氏名】堀内 伸彦
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA09
4G169AA11
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA21C
4G169BA27C
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BE06C
4G169BE07C
4G169BE17C
4G169BE32C
4G169CB07
4G169CB72
4G169DA06
4G169DA08
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169EC12Y
4G169FA01
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC03
4G169FC06
4G169FC07
4G169FC08
4G169ZA11A
4G169ZA37A
4G169ZA37B
4G169ZB03
4G169ZB08
4G169ZB09
4G169ZD03
4H006AA02
4H006AC44
4H006BA10
4H006BA33
4H006BA81
4H006BE32
4H039CA62
4H039CC20
(57)【要約】
【課題】フェノール類と過酸化水素との反応によりp−ベンゾキノン類を高選択的に製造する、結晶性多孔質チタノシリケート触媒を提供する。
【解決手段】フェノール類を過酸化水素と反応させてp−ベンゾキノン類を製造するための結晶性多孔質チタノシリケート触媒であって、シリカ源、チタン源、構造規定剤および水を含む混合物を150℃〜200℃で1時間〜10時間水熱処理し、焼成処理を行うことによって得られ、かつ四面体型TO4(T=SiまたはTiを示し、Oは酸素原子を示す。)ユニット10個からなる10員環を有する、結晶性多孔質チタノシリケート触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール類を過酸化水素と反応させてp−ベンゾキノン類を製造するための結晶性多孔質チタノシリケート触媒であって、シリカ源、チタン源、構造規定剤および水を含む混合物を150℃〜200℃で1時間〜10時間水熱処理し、焼成処理を行うことによって得られ、かつ四面体型TO4(T=SiまたはTiを示し、Oは酸素原子を示す。)ユニット10個からなる10員環を有する、結晶性多孔質チタノシリケート触媒。
【請求項2】
前記結晶性多孔質チタノシリケート触媒が、MFI型構造またはMSE型構造を有する、請求項1に記載の結晶性多孔質チタノシリケート触媒。
【請求項3】
前記結晶性多孔質チタノシリケート触媒に含まれるSiとTiのモル比(Si/Ti)が、10〜50である、請求項1または2に記載の結晶性多孔質チタノシリケート触媒。
【請求項4】
下記式(1)で表される値Xが0.1〜0.5である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の結晶性多孔質チタノシリケート触媒。
X=構造規定剤のモル量/(シリカ源のモル量+チタン源のモル量)・・・(1)
【請求項5】
前記シリカ源がアルコキシシランであり、前記チタン源がアルコキシチタンであり、前記構造規定剤が第四級アンモニウム塩である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の結晶性多孔質チタノシリケート触媒。
【請求項6】
シリカ源、チタン源、構造規定剤及び水を含む混合物を150℃〜200℃で1時間〜10時間水熱処理し、焼成処理を行う、請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶性多孔質チタノシリケート触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の結晶性多孔質チタノシリケート触媒の存在下、フェノール類を過酸化水素と反応させてp−ベンゾキノン類を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性多孔質チタノシリケート触媒及びその製造方法、並びに該触媒を用いたp−ベンゾキノン類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ジヒドロキシ化合物は、種々の有機合成中間体または原料物質として重要であり、還元剤、ゴム薬、染料、医薬、農薬、重合禁止剤、酸化抑制剤等の分野に利用される。
フェノール類を過酸化水素と反応させて得られる芳香族ジヒドロキシ化合物は、例えばハイドロキノン、カテコール、p−ベンゾキノンなどであり、製造方法によりハイドロキノン、カテコール、p−ベンゾキノンの生成比が異なる。p−ベンゾキノンは、近年、医薬品や色素などの中間体および重合禁止剤などとして使用され、高選択的に製造する方法が切望されている。
【0003】
特許文献1は、硝酸銅を触媒に用いてフェノールを酸化し、p−ベンゾキノンを調製する方法を開示している。また、特許文献2は、塩化銅または臭化銅を触媒に用いてフェノール類を酸化し、p−ベンゾキノン誘導体を調製する方法を開示している。
【0004】
また、非特許文献1は、マイクロメートルサイズやナノメートルサイズのチタノシリケート触媒を用いたフェノールの酸化反応の方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58−128335号公報
【特許文献2】特開昭60−013734号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Catal.Today,vol.148(2009),p174〜178
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2におけるp−ベンゾキノンやその誘導体を調製する方法では、反応の制御が未だ不十分であり、p−ベンゾキノンの選択率や収率に改善の余地があった。また、非特許文献1においては、フェノールの酸化によって生じるのは主にカテコールやハイドロキノンであり、p−ベンゾキノンは僅かに副生成物として生成するに過ぎず、p−ベンゾキノンを選択的に製造する方法とは言えない。
【0008】
本発明は、フェノール類と過酸化水素との反応によりp−ベンゾキノン類を高選択的に製造できる、結晶性多孔質チタノシリケート触媒およびその製造方法、並びに該触媒を用いてフェノール類と過酸化水素との反応によりp−ベンゾキノン類の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題に対し検討を行った結果、シリカ源、チタン源、構造規定剤および水を含む混合物を特定の温度で特定の時間水熱処理し、焼成処理を行うことによって、特定の構造を有し、かつp−ベンゾキノン類を高選択に製造できる結晶性多孔質チタノシリケート触媒を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の[1]〜[7]に記載の事項を含む。
[1]フェノール類を過酸化水素と反応させてp−ベンゾキノン類を製造するための結晶性多孔質チタノシリケート触媒であって、シリカ源、チタン源、構造規定剤および水を含む混合物を150℃〜200℃で1時間〜10時間水熱処理し、焼成処理を行うことによって得られ、かつ四面体型TO4(T=SiまたはTiを示し、Oは酸素原子を示す。)ユニット10個からなる10員環を有する、結晶性多孔質チタノシリケート触媒。
[2]前記結晶性多孔質チタノシリケート触媒が、MFI型構造またはMSE型構造を有する[1]に記載の結晶性多孔質チタノシリケート触媒。
[3]前記結晶性多孔質チタノシリケート触媒に含まれるSiとTiのモル比(Si/Ti)が、10〜50である、[1]または[2]に記載の結晶性多孔質チタノシリケート触媒。
[4]下記式(1)で表される値Xが0.1〜0.5である、[1]〜[3]のいずれかに記載の結晶性多孔質チタノシリケート触媒。
X=構造規定剤のモル量/(シリカ源のモル量+チタン源のモル量)・・・(1)
[5]前記シリカ源がアルコキシシランであり、前記チタン源がアルコキシチタンであり、前記構造規定剤が第四級アンモニウム塩である、[1]〜[4]のいずれかに記載の結晶性多孔質チタノシリケート触媒。
[6]シリカ源、チタン源、構造規定剤及び水を含む混合物を150℃〜200℃で1時間〜10時間水熱処理し、焼成処理を行う、[1]〜[5]のいずれかに記載の結晶性多孔質チタノシリケート触媒の製造方法。
[7][1]〜[5]のいずれかに記載の結晶性多孔質チタノシリケート触媒の存在下、フェノール類を過酸化水素と反応させてp−ベンゾキノン類を製造する方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の結晶性多孔質チタノシリケート触媒によれば、フェノール類を過酸化水素と反応させて高選択的にp−ベンゾキノン類を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。
(結晶性多孔質チタノシリケート触媒)
以下、本発明の結晶性多孔質チタノシリケート触媒について説明する。
【0013】
本発明の結晶性多孔質チタノシリケート触媒は、ケイ素を中心に4つの頂点に酸素が配置したSiO4の四面体ユニットと、中心のケイ素の代わりにチタンが配置したTiO4の四面体ユニットとが規則的に三次元結合した部分を有する多孔質の結晶体であり、典型的にはゼオライトの一種である。また、任意の割合で前記各四面体ユニット10個から形成される10員環を有する。
【0014】
前記10員環による構造(以下、「10員環構造」という)により1次元、2次元、3次元のいずれかの細孔が形成される。10員環構造の有無についてはX線結晶構造解析や電子顕微鏡等によって確認することができる。
【0015】
本発明の結晶性多孔質チタノシリケート触媒は、前記10員環を有すれば特に制限されないが、例えば、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association:IZA)の構造コードにおいて、AEL、AFO、AHT、BOF、BOG、BOZ、CGF、CGS、CON、CSV、DAC、DFO、EUO、EWS、FER、HEU、IFW、IMF、ITG、ITH、ITR、ITT、IWR、IWW、JRY、JST,LAU、LIT、MEL、MFI、MFS、MSE、MTT、MVY、MWW、NES、OBW、OKO、PAR、PCR、PON、PSI、PUN、RON、RRO、SEW、SFF、SFG、SFS、STF、STI、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、UOV、USI、UWY、WEI、WENのいずれかの構造を有することが好ましく、IMF、TUN、UWY、MFI、MSEの構造を有することが10員環による3次元細孔を有する点でより好ましく、MFI、MSEが短径と長径の大きさがベンゼン環の大きさに近似し、かつ少し大きい10員環による3次元細孔を有する点で特に好ましい。
【0016】
MFI型構造を有するゼオライトは、例えば、5.1Å(短径)×5.5Å(長径)の10員環構造、及び5.3Å(短径)×5.6Å(長径)の10員環構造による3次元の細孔を有する。該ゼオライトは様々な製法によって製造可能であるが、例えば構造規定剤を用いて製造する方法が挙げられる。構造規定剤としては、特定の第四級アンモニウム塩、例えば、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、ビス−1,6−(トリプロピルアンモニウム)ヘキサメチレンジイオダイド等が挙げられる。
【0017】
MSE型構造を有するゼオライトは、例えば、5.2Å(短径)×5.8Å(長径)の10員環構造、及び5.2Å(短径)×5.2Å(長径)の10員環構造による3次元の細孔を有する。該ゼオライトは様々な製法によって製造可能であるが、例えば構造規定剤を用いて製造する方法が挙げられる。構造規定剤としては、特定の第四級アンモニウム塩、例えば、ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド、N,N,N',N'−テトラエチルビシクロ[2,2,2] オクタ−7−エン−2,3:5,6−ジピロリジニウム ジイオダイド等を用いて製造することができる。
【0018】
なお、IZAの構造コードは、ゼオライトの骨格の幾何構造のみを指定するものであり、組成や格子定数が異なっても幾何構造が等しければ同じ構造コードに含まれる。
本発明の結晶性多孔質チタノシリケート触媒中のSi/Tiのモル比は10〜50が好ましく、20〜40がより好ましい。また、結晶性多孔質チタノシリケート触媒中の、シリカ源のモル量とチタン源のモル量の和に対する構造規定剤のモル量の比であるX値は、0.1〜0.5が好ましく、0.1〜0.3がより好ましい。
【0019】
シリカ源としては、本発明の結晶性多孔質チタノシリケート触媒を製造することができれば特に制限されないが、アルコキシシランを用いることが加水分解により生成する中間体シリケート種の縮合反応制御の点で好ましい。アルコキシシランとしては、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン及びデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシリカ源は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
チタン源としては、本発明の結晶性多孔質チタノシリケート触媒を製造することができれば特に制限されないが、アルコキシチタンを用いることが加水分解により生成する中間体チタネート種の縮合反応制御の点で好ましい。アルコキシチタンとしては、例えば、チタニウムテトラブトキシド、チタニウムテトライソブトキシド、チタニウムテトラプロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラペントキシド等が挙げられる。これらのチタン源は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
構造規定剤としては、本発明の結晶性多孔質チタノシリケート触媒を製造することができれば特に制限されないが、前記IZAの10員環を有する構造の触媒を製造する際に使用されるものが好ましく、第四級アンモニウム塩を用いることがより好ましい。
【0022】
例えば、MFI型結晶性多孔質チタノシリケート触媒を製造する場合は、例えば、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、ビス−1,6−(トリプロピルアンモニウム)ヘキサメチレンジイオダイド等を用いることができ、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドを用いることがより好ましい。
【0023】
また、MSE型結晶性多孔質チタノシリケート触媒を製造する場合は、例えば、ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド、N,N,N',N'−テトラエチルビシクロ[2,2,2] オクタ−7−エン−2,3:5,6−ジピロリジニウム ジイオダイド等を用いることができ、ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシドを用いることがより好ましい。
【0024】
(結晶性多孔質チタノシリケート触媒の製造方法)
以下、本発明の結晶性多孔質チタノシリケート触媒の製造方法を説明する。まず、シリカ源、チタン源、構造規定剤と水を撹拌混合し混合液を調製する。このとき、製造された結晶性多孔質チタノシリケート触媒中のSi/Tiのモル比が10〜50、好ましくは20〜40になるように配合する。また、結晶性多孔質チタノシリケート触媒中の、シリカ源のモル量とチタン源のモル量の和に対する構造規定剤のモル量の比であるX値が0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.3になるように配合する。
【0025】
各原料を添加する順番に特に制限はないが、シリカ源、構造規定剤及び水を混合したあとにチタン源を添加して混合することが好ましい。また、混合を容易にするために界面活性剤や有機溶媒を用いてもよい。
【0026】
次に、得られた混合液の水熱処理を行う。水熱処理は混合液を密閉耐圧容器に入れ、これを加熱することで行うことができる。処理温度は150℃〜200℃が好ましく、170℃〜190℃がより好ましい。また、処理時間は1時間〜10時間が好ましく、2時間〜7時間がよりに好ましく、3時間〜6時間が特に好ましい。前記水熱処理温度及び時間によって、結晶性多孔質チタノシリケート触媒において活性点であるチタンの結合状態や表面状態が、従来の触媒とは異なる状態になると推測される。これにより、フェノール類と過酸化水素との反応において高選択的にp−ベンゾキノン類が生成すると推定される。
【0027】
続いて、水熱処理によって得られた生成物の焼成処理を行い、本発明の結晶性多孔質チタノシリケート触媒を得ることができる。焼成する方法としては、特に制限はなく、例えば、電気炉、ガス炉等を使用して焼成する方法が挙げられる。焼成条件としては、大気雰囲気下で、1時間〜10時間加熱することが好ましい。焼成温度は400℃〜800℃が好ましく、500℃〜700℃がより好ましい。
【0028】
前記焼成する前に、ヌッチェ等を用いて処理物を濾過し、濾過物を水洗して乾燥させることが好ましい。乾燥の方法としては、特に制限されないが、均一かつ迅速に乾燥することが好ましく、例えば、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式や、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式を用いることができる。
【0029】
(p−ベンゾキノン類の製造方法)
以下、前記で得られた結晶性多孔質チタノシリケート触媒の存在下、フェノール類と過酸化水素とを反応させてp−ベンゾキノン類を製造する方法について説明する。
本発明で使用するフェノール類とは、無置換のフェノール及び置換フェノールを意味する。ここで、置換フェノールとしては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の炭素数1から6の直鎖または分岐アルキル基、あるいはシクロアルキル基で置換されたアルキルフェノールなどが挙げられる。
【0030】
フェノール類として、例えば、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2−ブチルフェノール、2−シクロヘキシルフェノールなどが挙げられ、中でも、フェノールが好ましい。
【0031】
本発明で得られる結晶性多孔質チタノシリケート触媒は、p−ベンゾキノン類を製造する際の触媒として使用する。触媒の充填方式としては、固定床、流動床、懸濁床、棚段固定床等種々の方式が採用され、いずれの方式で実施しても差し支えない。また、前記触媒はそのまま使用してもよいが、触媒の充填方式に合わせて成型して使用してもよい。触媒の成型方法としては、押し出し成型、打錠成型、転動造粒、噴霧造粒などが一般的である。固定床の方式で触媒を使用する場合は、押し出し成型や打錠成型が好ましい。懸濁床の方式の場合は、噴霧造粒が好ましい。噴霧造粒後に乾燥や焼成を行ってもよい。噴霧造粒した触媒の平均粒径は、好ましくは0.1μm〜1000μm、より好ましくは5μm〜100μmの範囲である。0.1μm以上であると、触媒の濾過などのハンドリングがしやすいため好ましく、1000μm以下であると触媒の性能が良く強度が強いため好ましい。
【0032】
前記触媒の使用量は、反応液の総質量(反応系内の液状成分の総質量であって、触媒等の固定成分の質量は含まない)に対して、外率で好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.4〜20質量%の範囲である。0.1%質量%以上であると、反応が短時間で完結し、生産性が向上するため好ましい。30質量%以下であると、触媒の分離回収量が少ない点で好ましい。
【0033】
また、過酸化水素は、フェノール類に対して、モル比で0.01以上1以下にすることが好ましい。また、用いる過酸化水素の濃度は特に限定しないが、通常の30%濃度の水溶液を用いてもよいし、さらに高濃度の過酸化水素水をそのまま、あるいは反応系において不活性な溶媒で希釈して用いてもよい。希釈に用いる溶媒としては、アルコール類、水などが挙げられる。過酸化水素は一度に加えてもよいし、時間をかけて徐々に加えてもよい。
【0034】
反応温度は、好ましくは30℃〜130℃の範囲、より好ましくは40℃〜100℃の範囲である。この範囲以外の温度でも反応は進行するが、生産性の向上の観点から前記範囲が好ましい。反応圧力は特に制限されない。
【0035】
前記反応の方式は特に制限はなく、回分式、半回分式、連続式のいずれの方式で反応を行ってもよい。連続式で行う場合は、懸濁床式の均一混合槽で行ってもよく、固定床流通式のプラグフロー形式で反応を行ってもよいし、また複数の反応器を直列及び/または並列に接続してもよい。反応器数は1〜4器とするのが機器費の観点から好ましい。また複数の反応器を使用する場合は、それらに過酸化水素を分割して加えてもよい。
【0036】
反応液からp−ベンゾキノン類を得るため、反応液または前記触媒を分離した後のp−ベンゾキノン類を含む分離液に対し、未反応成分や副生成物を除去するなどの精製処理を行ってもよい。精製処理は、触媒を分離した後のp−ベンゾキノン類を含むこの分離液に対して行うことが好適である。
【0037】
精製処理の方法については、特に制限は無く、具体的には油水分離、抽出、蒸留、晶析、およびこれらの組み合わせ等の方法が挙げられる。精製処理の方法、手順等は特に限定しないが、例えば、以下のような方法により、反応液及び前記触媒を分離した後のp−ベンゾキノン類を含む分離液の精製が可能である。
【0038】
反応液が油相と水相の2相に分離する場合、油水分離が可能である。油水分離により、p−ベンゾキノン類含有量が低い水相を除去して、油相を回収する。この場合、分離した水相は抽出や蒸留により、p−ベンゾキノン類を回収してもよいし、一部または全部を再度反応に用いてもよい。また分離した水相に前記本発明の触媒分離工程で分離した触媒や、乾燥処理した触媒を分散し、反応器に供給することもできる。一方、油相はさらに抽出、蒸留および晶析等により精製処理を行うことが望ましい。
【0039】
抽出には、例えば、1−ブタノール、トルエン、イソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトンなどの溶媒が使用される。抽出と油水分離とを組み合わせると、前記油水分離を効率よく実施できる。抽出溶媒は蒸留塔により分離回収しリサイクルして使用することが好ましい。
【0040】
蒸留は、触媒分離直後の反応液に対して実施してもよいし、前記油水分離後の油相および水相に実施してもよい。さらに抽出液を蒸留してもよい。
触媒の分離直後の反応液を蒸留する場合、まず水やアルコール類などの軽沸成分を分離するのが好ましい。水とアルコール類は別々の蒸留塔で分離してもよいし、1つの蒸留塔で分離してもよい。
【0041】
前記した油水分離、抽出、蒸留操作等により、水やアルコール類を分離した後、次の蒸留操作でフェノール類を回収し、再度反応に用いてもよい。回収したフェノール類に分離しきれなかった水が含まれる場合は、イソプロピルエーテルまたはトルエンを加え共沸蒸留により除去できる。
【0042】
この共沸蒸留は、フェノール類回収前の水やアルコール類分離後の液に対して行うこともできる。分離した水は、再度反応に用いてもよいし、廃水としてもよい。回収したフェノール類に水以外の反応副生物などの不純物が含まれる場合は、さらに蒸留操作で分離することもできる。不純物が反応副生物のハイドロキノン類、カテコール類の場合、フェノール類と共に再度反応器に供給することができる。
【0043】
フェノール類の分離の後、p−ベンゾキノン類よりも高沸の成分を蒸留によって除去し、次の蒸留操作によってp−ベンゾキノン類を分離できる。また高沸成分とp−ベンゾキノン類は、p−ベンゾキノン類を蒸留塔の中段から抜き出すことにより、1つの蒸留操作で分離することもできる。
得られたp−ベンゾキノン類は、必要に応じて、蒸留や晶析により不純物を除去し純度を高めることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
(結晶性多孔質チタノシリケート触媒の製造)
(実施例1)
24.0gの蒸留水、2.0gのTween20(東京化成工業(株)製)、27.0gの25%テトラn−プロピルアンモニウムヒドロキシド水溶液(東京化成工業(株)製)、36.0gのテトラエトキシシラン(和光純薬工業(株)製)をフラスコ内で混合し、室温で60分間撹拌して混合液を得た。
【0045】
この混合液に、1.8gのチタニウムテトラブトキシド(関東化学(株)製)と15.6gのイソプロピルアルコール(和光純薬工業(株)製)との混合液を滴下し、更に室温で60分間撹拌した。得られた混合液をテフロン製オートクレーブ用容器に充填し、175℃で6時間加熱撹拌して水熱処理を施した後、得られたスラリーを濾過し濾物として固形物を得た。得られた固形物を蒸留水で洗浄したあと風乾し、大気圧下500℃で5時間焼成することにより、10.1gの実施例1の結晶性多孔質チタノシリケート触媒を得た。
【0046】
(実施例2)
水熱処理時の温度を190℃とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、10.5gの実施例2の結晶性多孔質チタノシリケート触媒を得た。
【0047】
(実施例3)
水熱処理時の温度を190℃、水熱処理時間を3時間とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、10.7gの実施例3の結晶性多孔質チタノシリケート触媒を得た。
【0048】
(実施例4)
水熱処理時の温度を175℃、水熱処理時間を3時間とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、4.6gの実施例4の結晶性多孔質チタノシリケート触媒を得た。
【0049】
(比較例1)
水熱処理時の温度を175℃、水熱処理時間を18時間とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、10.1gの比較例1の結晶性多孔質チタノシリケート触媒を得た。
【0050】
(比較例2)
水熱処理時の温度を175℃、水熱処理時間を12時間とした以外は、実施例1と同様の条件で製造し、11.3gの比較例2の結晶性多孔質チタノシリケート触媒を得た。
【0051】
前記実施例1〜4並びに比較例1及び2で製造した結晶性多孔質チタノシリケート触媒は、X線結晶構造解析によって、いずれも10員環構造を有していた。X線結晶構造解析はリガク社製の粉末X線回折装置(MultiFlex)を用い、2θ=5〜50°の範囲で測定した。
【0052】
(各触媒の性能評価)
前記実施例1〜4並びに比較例1及び2で得られた各触媒の存在下、並びに触媒を添加しない条件下で、フェノールと過酸化水素とを反応させて生成したカテコール(CL)、ハイドロキノン(HQ)、及びp−ベンゾキノン(p−BQ)の各モル数を後述する測定方法で測定した。得られた結果から、下記式よりカテコール収率(%)、ハイドロキノン収率(%)、及びp−ベンゾキノン収率(%)を算出した。結果を表1に示す。
カテコール収率(%)=(生成したカテコールのモル数)/(加えた過酸化水素のモル数)×100
ハイドロキノン収率(%)=(生成したハイドロキノンのモル数)/(加えた過酸化水素のモル数)×100
p−ベンゾキノン収率(%)=(生成したp−ベンゾキノンのモル数)/(加えた過酸化水素のモル数)×100
【0053】
【表1】
(表中、X値=構造規定剤のモル量/(シリカ源のモル量+チタン源のモル量)を示す)
【0054】
(測定方法)
冷却器、温度計、フィードポンプ、およびマグネチックススターラーを備えた内容積50mlのフラスコに、実施例1〜4並びに比較例1及び2で得た0.20gの各結晶性多孔質チタノシリケート触媒、3.0gのt−ブチルアルコール(和光純薬工業(株)製)、6.0gの蒸留水、4.2gのフェノール(関東化学(株)製)を装入し、スターラーで撹拌しながら油浴中で70℃に加熱した。
【0055】
この混合液を撹拌しながら、0.46gの30%過酸化水素水(和光純薬工業(株)製)を60分間かけて滴下し、そのまま90分間保持して反応を進行させた。反応液を冷却後、該触媒を濾別し、反応液の一部を取り、残存過酸化水素をヨードメトリーで、生成物をガスクロマトグラフィーで定量した。
【0056】
ガスクロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
検出器;水素炎イオン検出器
カラム;DB−5(Agilent J&W)、内径0.25mm、長さ60m、膜厚0.25μm
カラム温度;80℃10分間保持、昇温温度4℃/分、280℃まで昇温
注入口;280℃
検出器温度;280℃
キャリア−ガス;ヘリウム
流速;80ml/分