【解決手段】CHAフレームワーク、45から85のシリカとアルミナのモル比(SAR)、及び少なくとも1.25原子による銅とアルミニウムの比を有するゼオライトを含む組成物を製造するためのワンポット合成法であって、シリカ供給源、アルミナ供給源、遷移金属−アミンの形態の第1のCHAフレームワーク有機鋳型剤、第2の別個の有機CHA鋳型剤、及び種結晶を含むワンポット合成混合物から調製される。
CHAフレームワークを有し、シリカとアルミナのモル比(SAR)が少なくとも40であり、原子による銅とアルミニウムの比が少なくとも1.25であるゼオライトを含む、触媒組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般に、銅−CHAゼオライトは、シリカ供給源、アルミナ供給源、遷移金属−アミンの形をした第1のCHAフレームワーク有機鋳型剤、第2の有機CHA鋳型剤、及び種結晶を含むワンポット合成混合物から調製される。遷移金属−アミンを使用して、銅などの遷移金属のイオン種を結晶化時にゼオライトのチャンネル及び/又はキャビティに取り込む。ゼオライトの合成時にゼオライトに取り込まれた非フレームワーク遷移金属は本明細書でin−situ金属と呼ばれる。いくつかの実施態様において、シリカ、アルミナ、鋳型剤、及び種結晶を混合して、反応混合物、例えばゲルを形成し、次いで加熱して、結晶化を促進する。金属含有ゼオライト結晶は反応混合物から沈殿する。これらの結晶を回収し、洗浄し、乾燥する。
【0014】
本明細書では「CHA」という用語は、国際ゼオライト学会(IZA)の構造委員会(Structure Commission)に認知されているCHA型フレームワークを指し、「CHAゼオライト」という用語は、主要な結晶相がCHAであるアルミノケイ酸塩を意味する。
【0015】
本出願人らは、本明細書に記載されている新規合成方法は、高相純度、すなわち、相純度が(例えば、リートフェルト(XRD)分析で決定して)95%−99%超であるCHAゼオライトを生成できることを発見した。本明細書では、ゼオライトに関して相純度という用語は、ゼオライト物質中のすべての相(結晶質及び非晶質)の全重量に対するゼオライトの単一結晶相の(例えば、重量に基づいた)量を意味する。したがって、他の結晶相がCHAゼオライト中に存在しているが、存在するゼオライトは、主要な結晶相として少なくとも約95重量パーセントのCHA、好ましくは少なくとも約98重量パーセントのCHA、さらにより好ましくは少なくとも約99重量パーセント又は少なくとも約99.9重量パーセントのCHAを含み、ここでCHAの重量パーセントは、組成物中に存在しているゼオライト結晶相の全重量に対して規定される。Cu含有CHA材料を合成する既存の手順では、不純物が典型的には少なくとも10重量パーセント含まれ、20重量パーセント含まれることもある。
【0016】
本出願人らはまた、これらの銅−CHAゼオライトは他の銅含有CHAゼオライトに比べて格子体積が小さいことも見出した。例えば、存在するゼオライトは、単位格子体積が約2380Å
3である他の銅ゼオライト又は単位格子体積が約2391.6Å
3であるアルミノケイ酸塩CHAに比べて、単位格子体積が約2355−約2375Å
3、例えば約2360−約2370Å
3、約2363−約2365Å
3、又は約2363.5−約2364.5Å
3である。これらの単位格子体積は、存在する銅−CHAゼオライトについて本明細書に記載されているSAR範囲及び遷移金属濃度範囲のそれぞれに適用できる。その特性が材料の触媒性能及び/又は熱耐久性を改善したと考えられる。
【0017】
好ましくは、CHAゼオライトは他の結晶相を実質的に含んでおらず、2つ以上のフレームワーク型の連晶でない。他の結晶相に関して「実質的に含まない」とは、存在するゼオライトが少なくとも99重量パーセントのCHAを含むことを意味する。
【0018】
本明細書では「ゼオライト」という用語は、アルミナ及びシリカ(すなわち、SiO
4及びAlO
4四面体の繰り返し単位)で構成されたフレームワークを有し、好ましくはシリカとアルミナのモル比(SAR)が少なくとも25、例えば約25−約150である合成アルミノケイ酸塩モレキュラーシーブを意味する。この高SARは、合成後脱アルミニウム又はフレームワーク欠陥修復プロセスを必要とすることなく達成される。したがって、いくつかの実施態様において、本明細書に記載されている触媒には、酸処理(例えば、酢酸)、キレート剤を用いた浸出、又は蒸気処理(例えば、400−650℃の水蒸気で8−170時間)など特に合成後の脱アルミニウム及びフレームワーク欠陥修復処理がいらない。
【0019】
本発明のゼオライトはシリカ−アルミノリン酸塩(SAPO)でなく、したがってそれらのフレームワーク中には認識できる量のリンは含まれない。すなわち、ゼオライトフレームワークは、規則的な繰返し単位としてリンを含まず、かつ/又は材料の基本的物理的及び/又は化学的特性、特に材料が幅広い温度範囲にわたってNO
xを選択的に還元する能力に関して影響を及ぼすことになる量のリンを含まない。いくつかの実施態様において、フレームワークのリンの量はゼオライトの全重量に対して0.1重量パーセント未満、好ましくは0.01未満又は0.001重量パーセント未満である。
【0020】
本明細書では、ゼオライトは、アルミニウム以外のフレームワーク金属を含まない又は実質的に含まない。したがって、「ゼオライト」は「金属置換ゼオライト」(「同形置換ゼオライト」と呼ぶこともある)とは異なり、後者は、ゼオライトのフレームワーク中に置換されている1つ又は複数の非アルミニウム金属が含まれているフレームワークを含む。
【0021】
好適なシリカ供給源としては、制限無く、ヒュームドシリカ、シリケート、沈降シリカ、コロイダルシリカ、シリカゲル、脱アルミニウムゼオライトYなどの脱アルミニウムゼオライト、並びに水酸化ケイ素及びケイ素アルコキシドが挙げられる。高い相対的収量をもたらすシリカ供給源が好ましい。典型的なアルミナ供給源も一般的に公知であり、アルミネート、アルミナ、他のゼオライト、アルミニウムコロイド、ベーマイト、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムやアルミナ塩化物などのアルミニウム塩、水酸化アルミニウム及びアルミニウムアルコキシド、アルミナゲルが挙げられる。
【0022】
第1のCHA SDAとして、銅−アミン錯体が利用される。銅−アミン錯体に適したアミン成分としては、CHAフレームワーク形成を指示することができる有機アミン及びポリアミンが挙げられる。好ましいアミン成分はテトラエチレンペンタミン(TEPA)である。金属−アミン錯体(すなわち、Cu−TEPA)は前もって形成してもよく、又は個々の金属成分及びアミン成分からの合成混合物中でin−situで形成してもよい。
【0023】
上記の銅−アミン錯体以外の第2のCHAフレームワーク鋳型剤は、CHA合成を指示するために選択される。好適な第2の有機鋳型剤としては、一般式:
[R
1R
2R
3N−R
4]
+Q
−
を有するものが挙げられ、式中、R
1及びR
2は独立して、1−3個の炭素原子を有するヒドロカルビルアルキル基及びヒドロキシ置換ヒドロカルビル基から選択される、ただし、R
1及びR
2は連結して、窒素含有ヘテロ環式構造を形成してもよいことを条件とし、R
3は2−4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
4はそれぞれ1−3個の炭素原子を有する1−3つのアルキル基で置換されていてもよい4−8員シクロアルキル基、及び1−3個のヘテロ原子を有する4−8員ヘテロ環基から選択され、前記ヘテロ環基はそれぞれ1−3個の炭素原子を有する1−3つのアルキル基で置換されていてもよく、前記ヘテロ環基中のその若しくはそれぞれのヘテロ原子はO、N、及びSからなる群より選択され、又はR
3及びR
4は1−3個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、連結して、窒素含有ヘテロ環式構造を形成し、Q
−はアニオンである。好適な構造指向剤としては、N,N,N−ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウム(DMECHA)、N,N,N−メチルジエチルシクロヘキシルアンモニウム、及びN,N,N−トリエチルシクロヘキシルアンモニウムカチオンが挙げられる。他の好適なSDAとしては、ベンジルトリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム及び1−アダマンチルトリメチルアンモニウム(TMAda)、及びN,N,N−トリエチルシクロヘキシルアンモニウムカチオンが挙げられる。いくつかの実施態様において、第2のSDAはDMECHAである。
【0024】
第2の有機鋳型はカチオンの形をとり、好ましくはゼオライトの形成に有害でないアニオンと結合している。代表的なアニオンとしては、ハロゲン、例えばフルオリド、クロリド、ブロミド、及びヨージド、ヒドロキシド、アセテート、スルフェート、テトラフルオロボレート、カルボキシレートなどが挙げられる。ヒドロキシドは特にDMECHAに関して最も好ましいイオンである。いくつかの実施態様において、反応混合物及びその後のゼオライトはフッ素を含まない又は実質的に含まない。
【0025】
ワンポット合成は、所定の相対量のシリカ供給源、アルミニウム供給源、遷移金属−アミン錯体、第2の有機鋳型剤、及び任意選択的にNaOHなどのヒドロキシドイオンの供給源、並びにCHAゼオライトなどの種結晶を当業者に容易に明らかである様々な混合及び加熱レジメン下で組み合わせることによって実施される。銅−CHAゼオライトは、表1に示す組成物(重量比として示す)を有する反応混合物から調製することができる。反応混合物は溶液、ゲル、又はペーストの形をとることができ、ゲルが好ましい。ケイ素含有及びアルミニウム含有反応物質はそれぞれ、SiO
2及びAl
2O
3として表される。
【0026】
通常のCHA合成技法に適している反応温度、混合時間及び速度、並びに他のプロセスパラメータも、一般に本発明に適している。制限無く、以下の合成工程に従って、本発明による銅−CHAゼオライトを合成することができる。アルミニウム供給源(例えば、Al(OEt)
3)を、水中の有機鋳型剤(例えば、DMECHA)と組み合わせて、数(例えば、約5−30)分間かき混ぜ又は撹拌することによって混合する。シリカ供給源(例えば、SiO
2)を添加し、均質な混合物になるまで数分間(例えば、約30−120分間)混合する。次いで、種結晶(例えば、チャバザイト)、銅供給源(例えば、硫酸銅)及びTEPAを混合物に添加し、数分間(例えば、約15−60分間)かき混ぜ又は撹拌することによって混合する。水熱結晶化は通常、自生圧力下、約100−200℃の温度で数日間、例えば約1−20日、好ましくは約1−3日間実施される。
【0027】
好ましい合成方法では、CHA種結晶が反応混合物に添加される。本出願人らは予想外なことに、少量の種結晶、例えば反応混合物中のシリカの全重量に対して約0.01−約1、約0.05−約0.5、又は約0.01−約0.1重量パーセントなど約1重量パーセント未満が添加されることを見出した。
【0028】
結晶化期間の終わりに、得られた固形物を、残留する反応液から、真空濾過などの標準機械的分離技法により分離する。次いで、回収された固形物を脱イオン水ですすぎ、高温(例えば、75−150℃)で数時間(例えば、約4−24時間)乾燥する。乾燥工程は、真空下又は大気圧で行うことができる。
【0029】
乾燥したゼオライト結晶を好ましくはか焼するが、か焼することなく使用することもできる。
【0030】
前述の工程の順序、並びに上記の時間及び温度値はそれぞれ、例示にすぎず、変えてもよいことを理解されたい。
【0031】
いくつかの実施態様において、ナトリウムなどのアルカリ金属の供給源は合成混合物に添加されない。本明細書では「アルカリを実質的に含まない」又は「アルカリを含まない」という語句は、アルカリ金属は合成混合物に意図的な材料として添加されないことを意味する。本明細書で言及される「アルカリを実質的に含まない」又は「アルカリを含まない」触媒とは、一般に触媒材料にはアルカリ金属が所期の触媒活性に関して取るに足りないレベルで含まれていることを意味する。いくつかの実施態様において、存在するゼオライトには、ナトリウム又はカリウムなどのアルカリ金属が約0.1重量パーセント未満、好ましくは約0.01重量パーセント未満含まれている。
【0032】
本出願人らは、前述のワンポット合成手順により、出発合成混合物の組成物に基づいて結晶の銅含有量を調整することが可能になることも発見した。例えば、所定の相対量のCu供給源を合成混合物中に用意することによって、材料への銅充填量を増加又は低減するための合成後含浸又は交換を必要とすることなく、所望のCu含有量を指示することができる。いくつかの実施態様において、合成されたゼオライトには、銅が約0.01−約5重量パーセント、例えば約0.1重量%−約5重量%、約0.1−約3重量%、約0.5−約1.5重量%、約0.1重量%−約1重量%、及び約1重量%−約3重量%含まれている。例えば、Cu充填量を例えば0.3−5重量%、0.5−1.5重量%又は0.5−1.0重量%に制御することを、追加の合成後プロセシングを行うことなく達成することができる。いくつかの実施態様において、ゼオライトは、銅を含め、合成後交換された金属を含まない。
【0033】
遷移金属は触媒活性であり、CHAフレームワーク内に実質的に均一に分散されている。ここで、実質的に均一に分散されている遷移金属とは、ゼオライト物質が、本明細書で遊離遷移金属酸化物又は可溶性遷移金属酸化物とも呼ばれる遷移金属酸化物(例えば、CuO)の形をした遷移金属を、ゼオライト中のその遷移金属の全量に対して約5重量パーセント以下含むことを意味する。例えば、存在するゼオライトは、ゼオライト材料中の銅の全重量に対して約5重量パーセント以下、約3重量パーセント以下、約1重量パーセント以下、及び約0.1重量パーセント以下、例えば約0.01−約5重量パーセント、約0.01−約1.5重量パーセント、又は約0.1−1重量パーセントのCuOを含む。遷移金属は、反応混合物中に金属酸化物として導入されず、合成されたゼオライト結晶中に金属酸化物として存在しないことが好ましい。本出願人らは、CuOの濃度を最小限にすると、触媒の水熱耐久性及び排ガス処理性能が改善されることを見出した。
【0034】
好ましくは、銅−CHAゼオライトは、遊離遷移金属酸化物に比べてin−situ遷移金属を大部分含む。いくつかの実施態様において、触媒は、遊離遷移金属酸化物(例えば、CuO)とin−situ遷移金属(例えば、イオン性Cu)を重量比で約1未満、約0.5未満、約0.1未満、又は約0.01未満、例えば約1−約0.001、約0.5−約0.001、約0.1−約0.001、又は約0.01−約0.001含む。
【0035】
好ましくは、存在するゼオライトは認識できる量のフレームワーク遷移金属を含まない。代わりに、銅は、ゼオライトフレームワークの内部チャンネル及びキャビティ内にイオン種として存在する。したがって、銅含有CHAゼオライトは、金属置換ゼオライト(例えば、金属をそのフレームワーク構造中に置換させたゼオライト)ではなく、必ずしも金属交換ゼオライト(例えば、合成後イオン交換を受けたゼオライト)でもない。いくつかの実施態様において、ゼオライトは銅及びアルミニウム以外の金属を含まない若しくは実質的に含まない。例えば、いくつかの実施態様において、ゼオライトは、ニッケル、亜鉛、スズ、タングステン、モリブデン、コバルト、ビスマス、チタン、ジルコニウム、アンチモン、マンガン、マグネシウム、クロム、バナジウム、ニオブ、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、金、銀、インジウム、白金、イリジウム、及び/又はレニウムを含まない又は実質的に含まない。いくつかの実施態様において、ゼオライトは、鉄を含まない又は実質的に含まない。いくつかの実施態様において、ゼオライトは、カルシウムを含まない又は実質的に含まない。いくつかの実施態様において、ゼオライトは、セリウムを含まない又は実質的に含まない。
【0036】
ゼオライトはいくつかの用途で触媒として有用である。触媒は、好ましくは合成後金属交換することなく使用することができる。しかし、いくつかの実施態様において、触媒は合成後金属交換を受けることができる。したがって、いくつかの実施態様において、in−situ銅に加えて、ゼオライト合成後にゼオライトのチャンネル及び/又はキャビティ中に交換された1つ又は複数の触媒金属を含むCHAゼオライトを含む触媒が提供される。ゼオライト合成後交換又は含浸することができる金属の例としては、遷移金属、例えば銅、ニッケル、亜鉛、鉄、タングステン、モリブデン、コバルト、チタン、ジルコニウム、マンガン、クロム、バナジウム、ニオブ、並びにスズ、ビスマス、及びアンチモン;貴金属(noble metal)、例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、インジウム、白金などの白金族金属(PGM)、及び金や銀などの貴金属(precious metal);ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、及びバリウムなどのアルカリ土類金属;並びにランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、ユウロピウム、テルビウム、エルビウム、イッテルビウム、及びイットリウムなどの希土類金属が挙げられる。合成後交換に好ましい遷移金属は卑金属であり、好ましい卑金属としては、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、及びそれらの混合物からなる群より選択されたものが挙げられる。合成後に取り込まれる金属は、イオン交換、含浸、同形置換など任意の公知技法によりモレキュラーシーブに添加することができる。合成後交換された金属の量は、ゼオライトの全重量に対して約0.1−約3重量パーセント、例えば約0.1−約1重量パーセントとすることができる。
【0037】
いくつかの実施態様において、金属含有ゼオライトには、合成後交換されたアルカリ土類金属、特にカルシウム及び/又はマグネシウムがゼオライトフレームワークのチャンネル及び/又はキャビティ内に配置されて含まれる。したがって、本発明の金属含有ゼオライトは、合成時にゼオライトのチャンネル及び/又はキャビティに取り込まれた銅などの遷移金属(T
M)を有することができ、カルシウム又はカリウムなど合成後に取り込まれた交換アルカリ土類金属(A
M)を1つ又は複数有することができる。アルカリ土類金属は、存在している遷移金属に対する量で存在することができる。例えば、いくつかの実施態様において、T
M及びA
Mは特にT
Mが銅であり、A
Mがカルシウムである場合に、それぞれ約15:1−約1:1、例えば約10:1−約2:1、約10:1−約3:1、又は約6:1−約4:1のモル比で存在している。いくつかの実施態様において、相対累積量の遷移金属(T
M)並びにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属(A
M)は、ゼオライト中のアルミニウム、すなわちフレームワークのアルミニウムの量に対する量でゼオライト材料中に存在している。本明細書では、(T
M+A
M):Al比は、対応するゼオライトにおける1モル当たりのフレームワークAlに対するT
M+A
Mの相対モル量に基づく。いくつかの実施態様において、触媒材料は(T
M+A
M):Al比が約0.6以下である。いくつかの実施態様において、(T
M+A
M):Al比は0.5以下、例えば約0.05−約0.5、約0.1−約0.4、又は約0.1−約0.2である。
【0038】
いくつかの実施態様において、Ceは、例えば硝酸Ceを通常のインシピエントウェットネス技法により銅促進ゼオライトに添加することによって、触媒中に合成後含浸される。好ましくは、触媒材料中のセリウム濃度は、ゼオライトの全重量に対して少なくとも約1重量パーセントの濃度で存在する。好ましい濃度の例としては、ゼオライトの全重量に対して少なくとも約2.5重量パーセント、少なくとも約5重量パーセント、少なくとも約8重量パーセント、少なくとも約10重量パーセント、約1.35−約13.5重量パーセント、約2.7−約13.5重量パーセント、約2.7−約8.1重量パーセント、約2−約4重量パーセント、約2−約9.5重量パーセント、及び約5−約9.5重量パーセントが挙げられる。いくつかの実施態様において、触媒材料中のセリウム濃度は約50−約550g/フィート
3である。他のCe範囲としては、100g/フィート
3超、200g/フィート
3超、300g/フィート
3超、400g/フィート
3超、500g/フィート
3超、約75−約350g/フィート
3、約100−約300g/フィート
3、及び約100−約250g/フィート
3が挙げられる。
【0039】
触媒がウォッシュコート組成物の一部分である実施態様では、ウォッシュコートは、Ce又はセリアを含有する結合剤をさらに含んでもよい。そのような実施態様では、結合剤中のCe含有粒子は触媒中のCe含有粒子より著しく大きい。
【0040】
本出願人らは、前述のワンポット合成手順により、出発合成混合物の組成物に基づいて触媒のSARを調整することが可能になることをさらに発見した。例えば、40−250、40−150、40−100、40−80、及び40−50のSARは、出発合成混合物の組成物に基づいて、かつ/又は他のプロセス変量を調整して選択的に達成することができる。ゼオライトのSARは通常の分析で決定することができる。この比は、できるだけ厳密にゼオライト結晶の強固な原子骨格における比を表し、チャンネル内の結合剤中の、又はカチオン若しくは他の形をしたケイ素又はアルミニウムを除外することになっている。結合剤材料と組み合わせた後ゼオライトのSARを直接測定するのは極めて困難であり得ることを理解されたい。したがって、本明細書では以上に、SARを、親ゼオライト、すなわち触媒を調製するのに使用されたゼオライトのSARに関して、このゼオライトと他の触媒成分を組み合わせる前に測定して表してきた。
【0041】
前述のワンポット合成手順は、均一な大きさ及び形状を有し、凝集が比較的低量であるゼオライト結晶をもたらすことができる。さらに、合成手順は、結晶の大きさの平均が約0.1−約10μm、例えば約0.5−約5μm、約0.1−約1μm、約1−約5μm、約3−約7μmなどであるゼオライト結晶をもたらすことができる。いくつかの実施態様において、大きい結晶を、ジェットミル又は他の粒子対粒子粉砕技法を使用して平均の大きさが約1.0−約1.5ミクロンになるまで粉砕して、触媒を含有するスラリーをフロースルーモノリスなどの基材にウォッシュコーティングするのを促進する。
【0042】
結晶の大きさは結晶のある面の一辺の長さである。結晶の大きさの直接測定は、SEMやTEMなどの顕微鏡法を用いて行うことができる。レーザー回折及び散乱など、平均粒径を決定する他の技法も用いることができる。結晶の大きさの平均に加えて、触媒組成物は、好ましくは結晶の大きさの大部分が約0.1μm超、好ましくは約0.5−約5μm、約0.7−約5μm、約1−約5μm、約1.5−約5.0μm、約1.5−約4.0μm、約2−約5μm、又は約1μm−約10μmなど約0.5−約5μmの間である。
【0043】
本発明の触媒は、特に不均一系触媒反応系(すなわち、ガス反応物質と接触している固体触媒)に適用可能である。接触表面積、機械的安定性、及び/又は流体流動特性を改善するために、触媒を基材、好ましくは多孔質基材の上及び/又は内に配置することができる。いくつかの実施態様において、触媒を含有するウォッシュコートを波形金属板又はコージェライト質ハニカムレンガなどの不活性基材に塗布する。あるいは、触媒をフィラー、結合剤、及び補強剤などの他の成分と共に捏和して、押出可能なペーストとし、次いでダイに通して押し出して、ハニカムレンガを形成する。したがって、いくつかの実施態様において、基材上にコーティングされ、かつ/又は基材に取り込まれた本明細書に記載されている銅−CHAゼオライト触媒を含む触媒物品が提供される。
【0044】
本発明のいくつかの態様は、触媒ウォッシュコートを提供する。本明細書に記載されている銅−CHAゼオライト触媒を含むウォッシュコートは溶液、懸濁液、又はスラリーが好ましい。好適なコーティング剤としては、表面コーティング剤、基材の一部分に貫入するコーティング剤、基材に浸透するコーティング剤、又はそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0045】
ウォッシュコートは、アルミナ、シリカ、非ゼオライト系シリカアルミナ、チタニア、ジルコニア、セリアの1つ又は複数を含め、フィラー、結合剤、安定剤、レオロジー改質剤、及び他の添加剤などの非触媒成分も含むことができる。いくつかの実施態様において、触媒組成物は、グラファイト、セルロース、デンプン、ポリアクリレート、及びポリエチレンなどの造孔剤を含んでもよい。これら追加の成分は、必ずしも所望の反応を触媒するわけではないが、その代わりに、例えばその使用温度範囲の増大、触媒の接触表面積の増大、触媒の基材への接着性の増大などによって、触媒材料の有効性を改善する。好ましい実施態様において、ウォッシュコート充填量は、>1.2g/インチ
3、>1.5g/インチ
3、>1.7g/インチ
3又は>2.00g/インチ
3などの>0.3g/インチ
3、好ましくは<2.5g/インチ
3などの<3.5g/インチ
3である。いくつかの実施態様において、ウォッシュコートを基材に約0.8−1.0g/インチ
3、1.0−1.5g/インチ
3、又は1.5−2.5g/インチ
3の充填量で塗布する。
【0046】
最もよくみられる基材設計の2つは板及びハニカムである。特に自動車用途に好ましい基材としては、隣接した複数の平行チャンネルを含む、いわゆるハニカム幾何形状を有するフロースルーモノリスが挙げられる。それらの平行チャンネルは両端が開いており、一般に基材の入口面から出口面に伸び、表面積対体積比を高くする。いくつかの用途では、ハニカムフロースルーモノリスはセル密度が高く、例えば1平方インチ当たり約600−800セルであり、かつ/又は平均内壁厚が約0.18−0.35mm、好ましくは約0.20−0.25mmであることが好ましい。他のいくつかの用途では、ハニカムフロースルーモノリスは1平方インチ当たり約150−600セルの低セル密度であることが好ましく、1平方インチ当たり約200−400セルであることがより好ましい。ハニカムモノリスは多孔質であることが好ましい。コージェライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、セラミック、及び金属以外に、基材に使用することができる他の材料としては、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、チタン酸アルミニウム、α−アルミナ、ムライト、例えば針状ムライト、ポルサイト、Al
2OsZFe、Al
2O
3/Ni若しくはB
4CZFeなどのサーメット、又はそれらのいずれか2つ以上を有するセグメントを含む複合体が挙げられる。好ましい材料としては、コージェライト、炭化ケイ素、及びチタン酸アルミナが挙げられる。
【0047】
板タイプの触媒はハニカムタイプより圧力低下が低く、詰まり及び汚れの影響を受けにくいので、効率の高い定置用途において有利であるが、板構造体ははるかに大型で、高価になり得る。ハニカム構造体は板タイプより典型的には小型であり、自動車用途において有利であるが、圧力低下が大きくなり、詰まりやくなる。いくつかの実施態様において、板基材は金属、好ましくは波形金属で構築される。
【0048】
いくつかの実施態様において、本発明は、本明細書に記載されている方法で作製された触媒物品である。特定の実施態様において、触媒物品は、触媒組成物を好ましくはウォッシュコートとして基材に、排気ガスを処理するための別の組成物の追加の少なくとも1層を基材に塗布する前又は後に層として塗布する工程を含む方法で生成される。存在する触媒層を含め、基材上の1つ又は複数の触媒層は、連続層として配置されている。本明細書では基材上の触媒層に関して「連続」という用語は、各層がその隣接層(1層又は複数層)と接触していること、触媒層全体が基材上で一層が別の層の上に配置されていることを意味する。
【0049】
いくつかの実施態様において、存在する触媒は基材上に第1の層として配置され、酸化触媒、還元触媒、捕捉成分、又はNO
x貯蔵成分など別の組成物は基材上に第2の層として配置されている。他の実施態様において、存在する触媒は基材上に第2の層として配置され、酸化触媒、還元触媒、捕捉成分、又はNO
x貯蔵成分など別の組成物は基材上に第1の層として配置されている。本明細書では「第1の層」及び「第2の層」という用語は、触媒物品の中を、側を、かつ/又はそれを超えて通過する排ガスの法線方向に関して、触媒物品中の触媒層の相対位置を記述するのに用いる。通常の排ガス流動条件下で、排ガスは第1層と接触した後、第2の層と接触する。いくつかの実施態様において、第2の層は不活性基材に底層として塗布され、第1層は連続した一連の下層である第2の層全体にわたって塗布された最上層である。そのような実施態様において、排ガスは第2の層と接触する前に第1層に貫入し(したがって接触し)、引き続いて第1層を通って戻り、触媒成分から出ていく。他の実施態様において、第1層は基材の上流部分に設置された第1の区域であり、第2の層は基材上に第2の区域として配置され、第2の区域は第1の区域の下流に位置する。
【0050】
別の実施態様において、触媒物品は、存在する触媒組成物を好ましくはウォッシュコートとして基材に第1の区域として塗布する工程と、排ガスを処理するための少なくとも1つの追加の組成物を基材に第2の区域として引き続いて塗布する工程とを含み、第1の区域の少なくとも一部分は第2の区域の下流に位置する方法で生成される。あるいは、存在する触媒組成物を基材に追加の組成物を含む第1の区域の下流に位置する第2の区域で塗布することができる。追加の組成物の例としては、酸化触媒、還元触媒、捕捉成分(例えば、硫黄、水などについて)、又はNO
x貯蔵成分が挙げられる。
【0051】
排気システムに必要とされる空間の量を低減するために、いくつかの実施態様における個々の排気成分は1つを超える機能を果たすように設計されている。例えば、SCR触媒をフロースルー基材の代わりにウォールフローフィルター基材に塗布すると、1つの基材が2つの機能を果たすことが可能になり、すなわち排気ガス中のNO
x濃度を触媒作用により下げ、すすを排気ガスから機械的に除去することによって、排気処理システムの全体の大きさを低減するように機能する。したがって、いくつかの実施態様において、基材はハニカムウォールフローフィルター又はパーシャルフィルターである。ウォールフローフィルターは、隣接する複数の平行チャンネルを含むという点でフロースルーハニカム基材と類似している。しかし、フロースルーハニカム基材のチャンネルは両端が開いており、ウォールフロー基材のチャンネルは一端がキャッピングされている。キャッピングは隣接するチャンネルの反対の端部に交互パターンで存在する。チャンネルの交互の端部をキャッピングすることによって、基材の入口面に入るガスがチャンネルを通ってまっすぐ流れ、出ていくことができなくなる。そうではなく、排気ガスは基材の正面に入り、チャンネルの約半分まで進入し、そこでチャンネル壁を通って押し出された後、チャンネルの後半に入り、基材の背面から出る。
【0052】
基材壁面は、ガス透過性ではあるが、ガスが壁面を通過するときガスからすすなどの微粒子状物質の大部分を捕捉する空隙率及び孔径を有する。好ましいウォールフロー基材は高効率フィルターである。本発明で使用するためのウォールフローフィルターは、効率が少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90%であることが好ましい。いくつかの実施態様において、効率は約75−約99%、約75−約90%、約80−約90%、又は約85−約95%である。ここで、効率は、すす及び他の同様な大きさの粒子と関係があり、また通常のディーゼル排気ガスで典型的にみられる微粒子の濃度と関係がある。例えば、ディーゼル排気中の微粒子は大きさが0.05ミクロン−2.5ミクロンに及ぶことがある。したがって、効率はこの範囲又は0.1−0.25ミクロン、0.25−1.25ミクロン、若しくは1.25−2.5ミクロンなどの部分範囲に基づくことがある。
【0053】
空隙率は多孔質基材中の空隙空間の百分率という尺度であり、排気システムの背圧と関係付けられる。一般には、空隙率が低いほど、背圧が高くなる。多孔質基材は空隙率が約30−約80%、例えば約40−約75%、約40−約65%、又は約50−約60%であることが好ましい。
【0054】
基材の全空隙容量の百分率として測定された細孔相互連結性は、細孔、空隙、及び/又はチャンネルが連結されて、多孔質基材を通り抜ける、すなわち入口面から出口面への連続経路が形成される程度である。孤立細孔容積と基材の表面の1つのみへの通り道を有する細孔の容積との合計は、細孔相互連結性と対照をなす。多孔質基材は細孔相互連結性容積が少なくとも約30%であることが好ましく、少なくとも約40%であることがより好ましい。
【0055】
多孔質基材の平均孔径も濾過にとって重要である。平均孔径は、水銀圧入法を含めて許容できる手段であればいずれによっても決定することができる。多孔質基材の平均孔径は、基材自体によって、基材の表面上のすすケーキ層の促進によって、又は両方の組合せによって十分な効率をもたらしながら、低背圧を促進するのに十分に高い値とするべきである。好ましい多孔質基材は平均孔径が約10−約40μm、例えば約20−約30μm、約10−約25μm、約10−約20μm、約20−約25μm、約10−約15μm、及び約15−約20μmである。
【0056】
一般に、銅−CHAゼオライト触媒を含む押出固体の生成は、触媒、結合剤、任意選択の粘度増強有機化合物をブレンドして、均質なペーストにし、次いでそれを結合剤/マトリックス成分又はその前駆体、並びに任意選択的に安定化セリア及び無機繊維の1つ又は複数に添加するものである。ブレンドを混合若しくは捏和装置又は押出機で圧縮する。混合物は、濡れを向上させ、したがって均一なバッチを生成するためのプロセシング助剤として、結合剤、造孔剤、可塑剤、界面活性剤、潤滑剤、分散剤などの有機添加物を有する。次いで、得られたプラスチック材料を、特に押出ダイを含め、押出プレス又は押出機を用いて成形し、得られた成形品を乾燥し、か焼する。有機添加物は、押出固体のか焼時に「焼き尽くされる」。銅−CHAゼオライト触媒を押出固体に、表面上に存在する又は押出固体に完全若しくは部分貫入する1層又は複数層の下層としてウォッシュコーティング又はその他の方法で塗布してもよい。
【0057】
本発明による触媒を含む押出固体は一般に、その第1の端部から第2の端部に及ぶ、均一な大きさで平行なチャンネルを有するハニカムの形をしたユニタリー構造を含む。チャンネルを画定するチャンネル壁は多孔質である。典型的には、外部「スキン」が押出固体の複数のチャンネルを取り囲む。押出固体は、円形、正方形又は楕円形など任意所望の断面から形成することができる。複数のチャンネルにおける個々のチャンネルは正方形、三角形、六角形、円形などとすることができる。第1の上流端部におけるチャンネルを例えば好適なセラミックセメントでブロックすることができ、第1の上流端部においてブロックされていないチャンネルも第2の下流端部においてブロックして、ウォールフローフィルターを形成することができる。典型的には、第1の上流端部におけるブロックされたチャンネルの配置は、ブロックされた及び開いている下流チャンネル端部が同様な配置をしているチェッカー盤に似ている。
【0058】
結合剤/マトリックス成分は、好ましくはコージェライト、窒化物、炭化物、ホウ化物、金属間化合物、アルミノケイ酸リチウム、スピネル、任意選択的にドープされたアルミナ、シリカ供給源、チタニア、ジルコニア、チタニア−ジルコニア、ジルコン及びそれらの任意の2つ以上の混合物からなる群より選択される。ペーストは、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、ホウ素繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維及びセラミック繊維からなる群より選択された強化用無機繊維を任意選択的に含有することができる。
【0059】
アルミナ結合剤/マトリックス成分は好ましくはγ−アルミナであるが、他の任意の遷移アルミナ、すなわちα−アルミナ、β−アルミナ、χ−アルミナ、η−アルミナ、ρ−アルミナ、κーアルミナ、θ−アルミナ、δ−アルミナ、ランタンβ−アルミナ及びそのような遷移アルミナのいずれか2つ以上の混合物とすることができる。アルミナを少なくとも1つの非アルミニウム元素でドープして、アルミナの熱安定性を高めることが好ましい。好適なアルミナドーパントとしては、ケイ素、ジルコニウム、バリウム、ランタニド及びそれらのいずれか2つ以上の混合物が挙げられる。好適なランタニドドーパントとしては、La、Ce、Nd、Pr、Gd及びそれらのいずれか2つ以上の混合物が挙げられる。
【0060】
シリカの供給源としては、シリカゾル、石英、石英ガラス又は非晶質シリカ、ケイ酸ナトリウム、非晶質アルミノケイ酸塩、アルコキシシラン、メチルフェニルシリコーン樹脂などのシリコーン樹脂結合剤、粘土、タルク又はそれらのいずれか2つ以上の混合物を挙げることができる。このリストのうち、シリカは、SiO
2それ自体、長石、ムライト、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ジルコニア、シリカ−トリア、シリカ−ベリリア、シリカ−チタニア、三元シリカ−アルミナ−ジルコニア、三元シリカ−アルミナ−マグネシア、三元シリカ−マグネシア−ジルコニア、三元シリカ−アルミナ−トリア及びそれらのいずれか2つ以上の混合物とすることができる。
【0061】
好ましくは、銅−CHAゼオライト触媒を押出触媒体全体にくまなく分散し、好ましくは均等にくまなく分散する。
【0062】
上記の押出固体のいずれかをウォールフローフィルターにする場合、ウォールフローフィルターの空隙率は40−70%などの30−80%とすることができる。空隙率及び細孔容積及び細孔半径は、例えば水銀圧入ポロシメトリーを使用して測定することができる。
【0063】
本明細書に記載されている触媒は、還元体、好ましくはアンモニアと、酸化窒素の反応を促進して、元素状窒素(N
2)及び水(H
2O)を選択的に形成することができる。したがって、一実施態様において、還元体を用いた酸化窒素の還元に好都合となるように、触媒を調製することができる(すなわち、SCR触媒)。そのような還元体の例としては、炭化水素(例えば、C3−C6炭化水素)、及びアンモニアやアンモニアヒドラジンなどの含窒素還元体、又は尿素((NH
2)
2CO)、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム若しくはギ酸アンモニウムなどの好適な任意のアンモニア前駆体が挙げられる。
【0064】
本明細書に記載されている銅−CHAゼオライト触媒はアンモニアの酸化も促進することができる。したがって、別の実施態様において、アンモニア、特にSCR触媒の下流で典型的に遭遇する様々な濃度のアンモニアの酸素による酸化に好都合となるように触媒を調製することができる(例えば、アンモニアスリップ触媒(ASC)などのアンモニア酸化(AMOX)触媒)。いくつかの実施態様において、存在する触媒は酸化的下層の上に最上層として配置され、下層には白金族金属(PGM)触媒又は非PGM触媒が含まれている。下層中の触媒成分は高表面積支持体上に配置されていることが好ましい。高表面積支持体としては、アルミナが挙げられるが、これに限定されない。
【0065】
さらに別の実施態様において、SCR及びAMOX操作は連続して行われ、両プロセスでは、本明細書に記載されている銅−CHAゼオライト触媒を含む触媒が利用され、SCRプロセスはAMOXプロセスの上流で行われる。例えば、触媒のSCR調製物はフィルターの入口側に配置することができ、触媒のAMOX調製物はフィルターの出口側に配置することができる。
【0066】
したがって、ガス中のNO
x化合物の還元方法又はNH
3の酸化方法であって、ガスを本明細書に記載されているNO
x化合物の接触還元用の触媒組成物と、ガス中のNO
x化合物及び/又はNH
3のレベルを低減するのに十分な時間接触させることを含む方法が提供される。いくつかの実施態様において、アンモニアスリップ触媒を選択的触媒的還元(SCR)触媒の下流に配置した触媒物品が提供される。そのような実施態様において、アンモニアスリップ触媒は、選択的触媒的還元プロセスで消費されない含窒素還元体があればその少なくとも一部分を酸化する。例えば、いくつかの実施態様において、アンモニアスリップ触媒はウォールフローフィルターの出口側に配置され、SCR触媒はフィルターの上流側に配置される。いくつかの他の実施態様において、アンモニアスリップ触媒はフロースルー基材の下流端部に配置され、SCR触媒はフロースルー基材の上流端部に配置される。他の実施態様において、アンモニアスリップ触媒及びSCR触媒は排気システム内の別個のレンガ上に配置される。これらの別個のレンガは互いに隣接していることがあり、また互いに接触していることがあり、又は特定の距離によって隔てられていることがある。ただし、これらが互いに流体連通していることを条件とし、かつSCR触媒レンガがアンモニアスリップ触媒レンガの上流に配置されていることを条件とする。
【0067】
いくつかの実施態様において、SCR及び/又はAMOXプロセスは少なくとも100℃の温度で行われる。別の実施態様において、プロセス(一又は複数)は約150℃−約750℃の温度で行われる。特定の一実施態様において、温度範囲は約175−約550℃である。別の実施態様において、温度範囲は175−400℃である。さらに別の実施態様において、温度範囲は450−900℃、好ましくは500−750℃、500−650℃、450−550℃、又は650−850℃である。450℃を超える温度を利用する実施態様は、例えば炭化水素をフィルターの上流に位置する排気システムに注入することによって能動的に再生される(任意選択的に触媒付きの)ディーゼル微粒子フィルターを備えた排気システムを装備している高負荷型及び低負荷型ディーゼル機関からの排ガスを処理するのに特に有用であり、本発明において使用するためのゼオライト触媒はフィルターの下流に位置する。
【0068】
本発明の別の態様によれば、ガス中のNO
X化合物の還元方法及び/又はNH
3の酸化方法であって、ガスを本明細書に記載されている触媒と、ガス中のNOx化合物のレベルを低減するのに十分な時間接触させることを含む方法が提供される。本発明の方法は以下の工程の1つ又は複数含んでもよい。(a)触媒フィルターの入口と接触しているすすを蓄積しかつ/又は燃焼する工程と、(b)好ましくは、NO
x及び還元体の処理を伴う触媒工程を介在させることなく、含窒素還元剤を排ガス流に導入した後、触媒フィルターと接触させる工程と、(c)NO
x吸着触媒又はリーンNO
xトラップ上でNH
3を発生させ、好ましくはそのようなNH
3を下流のSCR反応において還元体として使用する工程と、(d)排ガス流をDOCと接触させて、炭化水素系可溶性有機成分(SOF)及び/若しくは一酸化炭素をCO
2に酸化し、かつ/又はNOをNO
2に酸化し、それを使用して、微粒子フィルター中の微粒子状物質を酸化し、かつ/又は排ガス中の微粒子状物質(PM)を低減してもよい工程と、(e)排ガスを還元剤の存在下で1つ又は複数のフロースルーSCR触媒装置(一又は複数)と接触させて、排ガス中のNOx濃度を低減する工程と、(f)排ガスを好ましくはSCR触媒の下流に位置するアンモニアスリップ触媒と接触させて、アンモニアの全部ではないにしても大部分を酸化した後、排ガスを雰囲気中に排出し、又は排ガスを再循環ループに通した後、排ガスが機関に入る/再び入る工程。
【0069】
別の実施態様において、SCRプロセスにおいて消費するための窒素系還元体、特にNH
3の全部又は少なくとも一部分は、SCR触媒、例えばウォールフローフィルター上に配置された本発明のSCR触媒の上流に配置されたNO
X吸着触媒(NAC)、リーンNO
Xトラップ(LNT)、又はNO
X貯蔵/還元触媒(NSRC)から供給することができる。本発明において有用なNAC成分としては、塩基性材料(アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物を含む、アルカリ金属、アルカリ土類金属又は希土類金属、及びそれらの組合せなど)と、貴金属(白金など)と、任意選択的にロジウムなどの還元触媒成分との触媒組合せが挙げられる。NACにおいて有用である特定のタイプの塩基性材料としては、酸化セシウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、及びそれらの組合せが挙げられる。貴金属は、20−60g/フィート
3などの約10−約200g/フィート
3で存在することが好ましい。あるいは、触媒の貴金属は平均濃度によって特徴付けられ、約40−約100グラム/フィート
3とすることができる。
【0070】
いくつかの条件下で、周期的リッチ再生事象時に、NH
3がNO
x吸着触媒上で発生することがある。NO
x吸着触媒の下流に位置するSCR触媒は、系全体のNO
x還元効率を改善することができる。組み合わせた系において、SCR触媒はリッチ再生事象時にNAC触媒から放出されたNH
3を貯蔵することができ、貯蔵されたNH
3を利用して、普通のリーン操作条件時にNAC触媒をすり抜けるNO
xの一部分又は全部を選択的に還元する。
【0071】
本明細書に記載されたように排ガスを処理する方法は、(移動式であれ定置式であれ)内燃機関、ガスタービン、及び石炭又は石油火力発電所などの燃焼プロセスに由来する排ガスについて行うことができる。方法は、精製などの産業プロセス、精製所ヒーター及びボイラー、窯炉、化学処理産業、コークス炉、一般廃棄物プラント及び焼却炉などからのガスを処理するのに使用してもよい。特定の実施態様において、方法は、ディーゼル機関、リーンバーンガソリン機関、又は液化石油ガス若しくは天然ガスによって動く機関など、車両用のリーンバーン内燃機関からの排ガスを処理するために使用される。
【0072】
いくつかの態様において、本発明は、(移動式であれ定置式であれ)内燃機関、ガスタービン、石炭又は石油火力発電所などから、燃焼プロセスによって発生した排ガスを処理するためのシステムである。そのようなシステムは、本明細書に記載されている触媒及び排ガスを処理するための少なくとも1つの追加の成分を含む触媒物品を含み、触媒物品及び少なくとも1つの追加の成分は、コヒーレント単位として機能するように設計されている。
【0073】
いくつかの実施態様において、システムは、本明細書に記載されている触媒を含む触媒物品、流動する排ガスを導くための導管、触媒物品の上流に配置された含窒素還元体の供給源を含む。システムは、ゼオライト触媒が100℃超、150℃超又は175℃超でなど所望の効率以上でNO
x還元を触媒することができることが決定される場合のみ、含窒素還元体を流動する排ガスに計り入れるための制御装置を含むことができる。含窒素還元体の計量は、1:1 NH
3/NO及び4:3 NH
3/NO
2で計算して、理論的アンモニアの60%−200%がSCR触媒に入り込む排ガス中に存在するように取り決めることができる。
【0074】
別の実施態様において、システムは、排ガス中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するための酸化触媒(例えば、ディーゼル酸化触媒(DOC))を含み、これは含窒素還元体を排ガスに計り入れる点の上流に位置することができる。一実施態様において、酸化触媒は、例えば酸化触媒入口における排ガス温度250℃−450℃においてNOとNO
2の体積比が約4:1−約1:3であるSCRゼオライト触媒に入り込むガス流をもたらすように構成されている。酸化触媒は、フロースルーモノリス基材上にコーティングされた白金、パラジウム、又はロジウムなどの少なくとも1つの白金族金属(又はこれらの何らかの組合せ)を含むことができる。一実施態様において、少なくとも1つの白金族金属は白金、パラジウム又は白金とパラジウム両方の組合せである。白金族金属は、アルミナなどの大表面積ウォッシュコート成分、アルミノケイ酸塩ゼオライトなどのゼオライト、シリカ、非ゼオライトシリカアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニア、又はセリアとジルコニア両方を含む混合若しくは複合酸化物に担持させることができる。
【0075】
さらなる実施態様において、好適なフィルター基材は酸化触媒とSCR触媒との間に位置する。フィルター基材は、上記のもののいずれか、例えばウォールフローフィルターから選択することができる。フィルターが例えば上記の種類の酸化触媒で触媒されている場合、含窒素還元体を計量する点はフィルターとゼオライト触媒との間に位置することが好ましい。あるいは、フィルターが触媒されていない場合、含窒素還元体を計量する手段は酸化触媒とフィルターとの間に位置することができる。