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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-202362(P2019-202362A)
(43)【公開日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】供回り防止具
(51)【国際特許分類】
   B25B 13/00 20060101AFI20191101BHJP
   B25B 23/10 20060101ALI20191101BHJP
【FI】
   B25B13/00 C
   B25B23/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-97469(P2018-97469)
(22)【出願日】2018年5月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】寺田 亮太
(72)【発明者】
【氏名】脇山 秀則
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 純
(72)【発明者】
【氏名】東山 泰輔
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA04
(57)【要約】
【課題】ボルトおよびナットを締めたり緩めたりする作業にかかる作業性の向上を図ること。
【解決手段】所定距離を空けて対向配置されて連結部材113を介して連結された一対の板状部材111、112のうちの一方の板状部材111に設けられた凹部114にボルトの頭部を嵌め込み、当該一方の板状部材111を、他方の板状部材112を板厚方向に沿って貫通するネジ孔に螺合された固定部材120により位置固定するようにした供回り防止具100を構成した。これにより、ボルトの頭部を押さえる作業者を要することなく、作業者1人でナットを操作することができ、ボルトおよびナットを締めたり緩めたりする作業にかかる作業性の向上を図り、作業にかかるコストを抑えることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が連結部材に連結され、所定距離を空けて板厚方向に沿って対向配置された一対の板状部材を備えた保持部と、
前記一対の板状部材のうちの一方の板状部材に設けられ、当該一方の板状部材の他端から前記連結部材側に凹む凹部と、
前記一対の板状部材のうちの他方の板状部材を当該他方の板状部材を前記板厚方向に沿って貫通し、当該他方の板状部材と前記一方の板状部材との対向方向に沿って移動可能な固定部材と、
を備えたことを特徴とする供回り防止具。
【請求項2】
前記一対の板状部材は、前記連結部材からの長さが異なり、
前記一方の板状部材は、前記他方の板状部材よりも前記連結部材からの長さが長く、
前記固定部材は、前記一対の板状部材の対向方向において前記凹部と重複しない位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の供回り防止具。
【請求項3】
前記固定部材は、前記他方の板状部材を当該他方の板状部材を前記板厚方向に沿って貫通するネジ孔に螺合されるネジであることを特徴とする請求項1または2に記載の供回り防止具。
【請求項4】
前記他方の板状部材を前記板厚方向に沿って貫通し、当該他方の板状部材の板面に沿って前記凹部の深さ方向に交差する方向を長手方向とする長孔と、
前記長孔の長手方向に沿って移動可能であって、当該長孔に取り外し可能に取り付けられる環状部材と、
を備え、
前記固定部材は、前記環状部材を前記板厚方向に沿って貫通するネジ孔に螺合されるネジであることを特徴とする請求項1または2に記載の供回り防止具。
【請求項5】
前記固定部材は、前記一対の板状部材のうちの一方の板状部材とは反対側の端部に把持部を備えた手回しネジであることを特徴とする請求項3または4に記載の供回り防止具。
【請求項6】
前記固定部材は、蝶ネジであることを特徴とする請求項5に記載の供回り防止具。
【請求項7】
前記固定部材は、前記一方の板状部材側の端部に設けられ、前記一方の板状部材の板面に平行であって前記固定部材の軸心に直交する断面積より大きい当接面を有する当接部材を備えたことを特徴とする請求項3〜6のいずれか一つに記載の供回り防止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボルトおよびナットを締めたり緩めたりする作業に用いる供回り防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
送電用などの鉄塔は、山形鋼などの鉄塔部材を、ボルトおよびナットを用いて固定することによって組み立てられている。高さが数十メートルを超える鉄塔においては、多数のボルトおよびナットが使用されている。近年、既設の鉄塔においては、費用抑制のため防錆塗装によって延命化を図ることが多くある。
【0003】
防錆塗装が施された鉄塔においては、ボルトやナットにも塗膜が付着しているため、当該鉄塔を構成する鉄塔部材の取り替えや解体作業に際しては、ナットを緩める際に当該ナットに付着した塗膜に引っ張られてナットとともにボルトも一緒に回ってしまう、いわゆる「供回り」が発生することがあった。
【0004】
このような供回りは、新設の鉄塔においても発生することがあった。具体的には、通常、新設の鉄塔を組み立てる際は、トルクレンチを用いて締め付けトルクが規定値に達するまでナットを締め付ける。鉄塔部材においては表面のメッキ厚にバラつきがあることがあり、たとえば、このようなバラつきに起因して、締め付けトルクが規定値に達する前にボルトの供回りが発生することがあった。
【0005】
供回りが発生している状態で、締め付けトルクが規定値に達するまで無理に締付けようとすると、鉄塔部材の表面のメッキが削られてしまうおそれがあり、メッキが削られてしまうと鉄塔の強度低下や耐久性の低下など品質面における低下を招いてしまう。
【0006】
供回りが発生した場合、作業者の手の力だけでボルトを押さえてナットを締付けたり緩めたりすることは困難である。このため、従来、供回りが発生した場合、ナットを回す工具とボルトを押さえるための工具との2つの工具を鉄塔上部で保持しながら作業をおこなう必要があった。このような作業は、作業者の体勢によっては大きな力を発揮しづらいことがあり、1人での作業が困難な場合は、ナットを回す作業者とボルトを押さえる作業者との2人で作業をおこなわなければならず煩わしい。
【0007】
このような不具合の解消を目的として、従来、具体的には、たとえば、ボルトの頭部に嵌まる嵌合孔を備えた口部の周囲の一側から、嵌合孔の半径方向外方へ延設されて自由端を近接する鉄塔部材やボルト頭部に当接させるアーム部を備えた共回り(供回り)防止治具に関する技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0008】
また、このような不具合の解消を目的として、従来、具体的には、たとえば、ボルトの頭部に嵌まる有底の穴部を備えたソケット部と、ソケット部の周面から穴部半径方向外方へ延設され磁石を備えたアーム部と、を備えたボルト/ナットの供回り防止具に関する技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−115949号公報
【特許文献2】特開2009−34733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したように、供回りを防止するために、ナットを回す工具とボルトを押さえるための工具との2つの工具を保持して作業をおこなう従来の技術は、作業性に劣り、作業時間がかかるという問題があった。
【0011】
また、上述したように、ナットを回す作業者とボルトを押さえる作業者との2人で作業をおこなう従来の技術は、確実に供回りを防止することができるものの、本来1人でおこなうことが可能な作業を2人の作業者がおこなわなくてはならず、作業人役が2倍になり、作業全体としてのコストアップにつながるという問題があった。
【0012】
また、複数の部材が接続されている箇所においては,ボルトを押さえる工具が他の部材と干渉し、ボルトを押さえることができないという状況があった。
【0013】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、ボルトおよびナットを締めたり緩めたりする作業にかかる作業性の向上を図ることができる供回り防止具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる供回り防止具は、一端が連結部材に連結され、所定距離を空けて板厚方向に沿って対向配置された一対の板状部材を備えた保持部と、前記一対の板状部材のうちの一方の板状部材に設けられ、当該一方の板状部材の他端から前記連結部材側に凹む凹部と、前記一対の板状部材のうちの他方の板状部材を当該他方の板状部材を前記板厚方向に沿って貫通し、当該他方の板状部材と前記一方の板状部材との対向方向に沿って移動可能な固定部材と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる供回り防止具は、上記の発明において、前記一対の板状部材が、前記連結部材からの長さが異なり、前記一方の板状部材が、前記他方の板状部材よりも前記連結部材からの長さが長く、前記固定部材が、前記一対の板状部材の対向方向において前記凹部と重複しない位置に設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる供回り防止具は、上記の発明において、前記固定部材が、前記他方の板状部材を当該他方の板状部材を前記板厚方向に沿って貫通するネジ孔に螺合されるネジであることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる供回り防止具は、上記の発明において、前記他方の板状部材を前記板厚方向に沿って貫通し、当該他方の板状部材の板面に沿って前記凹部の深さ方向に交差する方向を長手方向とする長孔と、前記長孔の長手方向に沿って移動可能であって、当該長孔に取り外し可能に取り付けられる環状部材と、を備え、前記固定部材が、前記環状部材を前記板厚方向に沿って貫通するネジ孔に螺合されるネジであることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる供回り防止具は、上記の発明において、前記固定部材が、前記一対の板状部材のうちの一方の板状部材とは反対側の端部に把持部を備えた手回しネジであることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる供回り防止具は、上記の発明において、前記固定部材が、蝶ネジであることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる供回り防止具は、上記の発明において、前記固定部材が、前記一方の板状部材側の端部に設けられ、前記一方の板状部材の板面に平行であって前記固定部材の軸心に直交する断面積より大きい当接面を有する当接部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明にかかる供回り防止具によれば、ボルトおよびナットを締めたり緩めたりする作業にかかる作業性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具の構成を示す説明図(その1)である。
図2】この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具の構成を示す説明図(その2)である。
図3】この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具の構成を示す説明図(その3)である。
図4】この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具の構成を示す説明図(その4)である。
図5】この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具を用いた作業の一例を示す説明図(その1)である。
図6】この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具を用いた作業の一例を示す説明図(その2)である。
図7】この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具を用いた作業の一例を示す説明図(その3)である。
図8】この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具を用いた作業の一例を示す説明図(その4)である。
図9】この発明にかかる実施の形態2の供回り防止具の構成を示す説明図(その1)である。
図10】この発明にかかる実施の形態2の供回り防止具の構成を示す説明図(その2)である。
図11】この発明にかかる実施の形態2の供回り防止具の構成を示す説明図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる供回り防止具の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
<実施の形態1>
(供回り防止具の構成)
まず、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具の構成について説明する。図1図4は、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具の構成を示す説明図である。図1においては、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具の斜視状態を示している。図2においては図1におけるA矢視図、図3においては図1におけるB矢視図、図4においては図1におけるC矢視図を示している。
【0025】
図1図4に示すように、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100は、保持部110と、固定部材120と、を備えている。保持部110は、一対の板状部材111、112を備えている。一対の板状部材111、112は、それぞれ、略長方形状の平板形状をなす。一対の板状部材111、112は、一端において、連結部材113に連結されている。
【0026】
保持部110は、たとえば、板状の部材を「コ」の字形状に加工することによって形成することができる。このように、一対の板状部材111、112と連結部材113とを一体に形成することにより、保持部110を容易に形成することができ、また、保持部110の強度を確保することができる。
【0027】
一対の板状部材111、112は、連結部材113からの長さが異なっている。具体的に、一対の板状部材111、112のうちの一方の板状部材111は、一対の板状部材111、112のうちの他方の板状部材112よりも、連結部材113からの長さが長い。
【0028】
一方の板状部材111には、凹部114が設けられている。凹部114は、一方の板状部材111の他端から連結部材113側に凹んでいる。凹部114は、対向する辺301、302が平行な矩形状をなしている。対向する辺301、302の間の寸法、すなわち、凹部114の幅寸法は、供回り防止具100を用いた作業対象とするボルトの頭部の対辺寸法と同等あるいは当該対辺寸法より若干大きい(たとえば、図6を参照)。
【0029】
他方の板状部材112には、固定部材120が設けられている。固定部材120は、たとえば、他方の板状部材112を板厚方向に沿って貫通するネジ孔に螺合されたネジによって実現することができる。固定部材120は、ネジ孔に対する螺合位置を調整することにより、一方の板状部材111と他方の板状部材112との対向方向に沿って移動可能であって、移動した位置において固定することができる。
【0030】
具体的には、固定部材120は、たとえば、蝶ネジ(蝶ボルト)などの手回しネジ(ツマミネジ)によって実現することが好ましい。あるいは、固定部材120は、たとえば、ローレットネジ(ローレットボルト)やノブネジ(ノブボルト)などの手回しネジによって実現してもよい。
【0031】
蝶ネジは、軸部121の一端に設けられる頭部122に蝶の羽状のウイング123を備えている。ウイング123は、円弧形状、矩形状など種々の形状が存在し、いずれも、軸部121から離反し軸心から離反する方向へ突出している。手回しネジによって固定部材120を実現することにより、工具を用いることなく容易に固定部材120の位置を調整することができる。
【0032】
固定部材120は、一対の板状部材111、112の対向方向において、凹部114と重複しない位置に設けられている。また、固定部材120は、軸部121における一方の板状部材111側の端部に、当接部材125を備えている。当接部材125は、一方の板状部材111に対向し、一方の板状部材111の板面に平行な当接面を備えている。当接面の面積は、固定部材120の軸を軸心方向に直交する面で切断した断面の面積よりも大きい。
【0033】
当接部材125は、具体的には、たとえば、内周面に軸部121のネジ山と螺合するネジ山が形成されたキャップ状の部材を、頭部122とは反対側から螺合させることによって軸部121に取り付けることができる。これにより、他方の板状部材112に設けられたネジ孔の内径よりも大きい外径の当接部材125を、固定部材120を他方の板状部材112に取り付けた後に取り付けることができる。
【0034】
当接部材125は、たとえば、金属材料を用いて形成することができる。あるいは、当接部材125は、たとえば、硬質ゴム、硬質ウレタンなどの合成樹脂を用いて形成してもよい。また、当接部材125は、金属材料を用いて形成されたキャップ状の部材と、当該キャップ状の部材における一方の板状部材111側の面に、ゴム、シリコン、ウレタンなどを用いて形成されたシート状部材を貼り付けることによって形成されていてもよい。
【0035】
他方の板状部材112は、他方の板状部材112を板厚方向に沿って貫通する貫通孔112aが設けられている。貫通孔112aは、たとえば、落下防止用の紐を通すことができる。これにより、供回り防止具100の構造を複雑化することなく、供回り防止具100の落下防止を図ることができる。
【0036】
(供回り防止具100を用いた作業の一例)
つぎに、供回り防止具100を用いた作業の一例について説明する。図5図8は、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100を用いた作業の一例を示す説明図である。供回り防止具100を用いた作業として、図5図8を用いて説明するように、たとえば、設置後に防錆塗装が施された鉄塔を構成する鉄塔部材501どうしを連結するボルト502およびナット701を緩める作業について説明する。
【0037】
このような作業に際しては、まず、固定部材120を緩める方向に回転させ、固定部材120の先端と一方の板状部材111との間隔を、供回り防止具100の取付対象とする鉄塔部材501の厚さよりも広くする。そして、図5および図6に示すように、一対の板状部材111、112の間に鉄塔部材501を挟み込み、かつ、凹部114の内側に緩める対象とするボルト502の頭部が位置するように、供回り防止具100を鉄塔部材501に装着する。
【0038】
供回り防止具100は、緩める対象とするボルト502の対辺寸法と同等の幅寸法の凹部114を備えたものを用いる。そして、供回り防止具100を鉄塔部材501に装着する際には、凹部114の底(突き当たりの壁)にボルト502の頭部が当接するまで、供回り防止具100をボルト502の頭部側に嵌め込む。これにより、ボルト502の頭部と供回り防止具100とのがたつきを抑え、ボルト502の破損などの不具合を防止することができる。
【0039】
つぎに、図7において矢印700で示すように、固定部材120を締め込む方向に回転させる。固定部材120は、先端の当接部材125が鉄塔部材501に当接し、締め込む方向に回転させる。これにより、当接部材125と一方の板状部材111とによって鉄塔部材501を挟み込み、作業者が手を離しても供回り防止具100が鉄塔部材501から脱落しなくなる。
【0040】
鉄塔などの電気設備にかかる作業に際しては、作業者は、作業者を感電から保護するための防護手袋を着用している。固定部材120を、手で操作することができる蝶ネジなどの手回しネジによって実現することにより、工具を用いることなく、防護手袋を着用したまま、供回り防止具100を鉄塔部材501に取り付けることができる。
【0041】
つぎに、図8において矢印800で示すように、ナット701にレンチやスパナなどの工具801を掛けて、当該工具801を操作して、ナット701を緩める方向に回転させる。供回り防止具100を用いることにより、1人の作業者が両手を使用して工具801を操作することができる。
【0042】
ナット701を緩めはじめる際に、ボルト502とナット701とに供回りが発生すると、ボルト502の頭部に凹部114を嵌め込んだ供回り防止具100がボルト502と一緒に回転する。この供回り防止具100の回転は、連結部材113が鉄塔部材501に当接することによって、それ以上回転することが規制される。これにより、ボルト502の供回りを確実に防止して、ナット701を緩めることができる。
【0043】
また、ナット701を締める作業に際しては、まず、ナット701を緩める作業と同様にして、固定部材120の先端と一方の板状部材111との間隔を、供回り防止具100の取付対象とする鉄塔部材501の厚さよりも広くする。そして、一対の板状部材111、112の間に鉄塔部材501を挟み込み、かつ、凹部114の内側に締める対象とするボルト502の頭部を位置させた状態で、固定部材120を締め込む方向に回転させる。
【0044】
つぎに、ナット701にレンチやスパナなどの工具801を掛けて、当該工具801を操作して、ナット701を締める方向に回転させる。供回り防止具100を用いることにより、1人の作業者が両手を使用して工具801を操作することができる。ナット701を締め込む際に、ボルト502とナット701とに供回りが発生すると、ボルト502の頭部に凹部114を嵌め込んだ供回り防止具100がボルト502と一緒に回転する。この供回り防止具100の回転は、連結部材113が鉄塔部材501に当接することによって、それ以上回転することが規制される。これにより、ボルト502の供回りを確実に防止して、ナット701を締めることができる。
【0045】
鉄塔においては、複数の鉄塔部材501が集中している部分が存在する。鉄塔は、複数の鉄塔部材501を立体的に連結して構成されており、各鉄塔部材501の延伸方向は、一様ではない。このような部分においては、鉄塔部材501どうしを連結する複数のボルト502およびナット701も、集中している。
【0046】
そして、このような部分においては、ナット701を回す工具801とボルト502を押さえるための工具801との2つの工具801を、作業対象とするボルト502やナット701に掛けることが難しいことがあった。特に既設の鉄塔において、一部の鉄塔部材501を交換する場合などは、ナット701を回す工具801とボルト502を押さえるための工具801との2つの工具801を掛けるための十分なスペースを確保することが難しい場合があった。
【0047】
これに対し、供回り防止具100によれば、簡易な構成であるため薄型化・小型化を図ることができ、複数の鉄塔部材501が入り組んだ箇所においても供回りを確実に防止することができる。
【0048】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100は、一端が連結部材113に連結され、所定距離を空けて板厚方向に沿って対向配置された一対の板状部材111、112を備えた保持部110と、一対の板状部材111、112のうちの一方の板状部材111に設けられ、当該一方の板状部材111の他端から連結部材113側に凹む凹部114と、一対の板状部材111、112のうちの他方の板状部材112を当該他方の板状部材112を板厚方向に沿って貫通し、当該他方の板状部材112と一方の板状部材111との対向方向に沿って移動可能な固定部材120と、を備えたことを特徴としている。
【0049】
この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100によれば、緩める対象とするボルト502およびナット701におけるボルト502の頭部を、供回り防止具100における凹部114に嵌め込むようにして、当該ボルト502およびナット701によって固定された部材を一対の板状部材111、112の間に挟み込んだ状態でナット701を操作することができる。
【0050】
これにより、ボルト502の頭部を押さえる作業者を要することなく、作業者1人でナット701を操作することができる。そして、これによって、ボルト502およびナット701を締めたり緩めたりする作業にかかる作業性の向上を図り、作業にかかるコストを抑えることができる。
【0051】
また、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100によれば、ボルト502の頭部を押さえるための工具801や、当該工具801を支える作業者の手を差し込むスペースが確保できない状況においても、供回り防止具100を差し込むスペースがあれば、ボルト502の頭部を押さえる作業者を要することなく、作業者1人でナット701を操作することができる。
【0052】
これにより、複数のボルト502およびナット701が集中した箇所においても、所望のボルト502の頭部を固定してナット701を操作することができるので、ボルト502およびナット701を締めたり緩めたりする作業にかかる作業性の向上を図り、作業にかかるコストを抑えることができる。
【0053】
このように、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100によれば、ボルト502およびナット701を締めたり緩めたりする作業にかかる作業性の向上を図り、作業にかかるコストを抑えることができる。
【0054】
また、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100は、一対の板状部材111、112が、連結部材113からの長さが異なり、一方の板状部材111が、他方の板状部材112よりも連結部材113からの長さが長く、固定部材120が、一対の板状部材111、112の対向方向において凹部114と重複しない位置に設けられていることを特徴としている。
【0055】
この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100によれば、簡易な構成によって、頭部が凹部114に嵌め込まれたボルト502に螺合されたナット701を操作する工具801が、固定部材120に干渉することを回避することができる。これによって、ボルト502およびナット701を締めたり緩めたりする作業性の向上を図り、作業にかかるコストを抑えることができる。
【0056】
また、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100は、固定部材120が、他方の板状部材112を当該他方の板状部材112を板厚方向に沿って貫通するネジ孔に螺合されるネジであることを特徴としている。
【0057】
この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100によれば、固定部材120をネジによって実現することにより、簡易な構成によってボルト502およびナット701を締めたり緩めたりする作業性の向上を図り、作業にかかるコストを抑えることができる。
【0058】
また、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100は、固定部材120が、一対の板状部材111、112のうちの一方の板状部材111とは反対側の端部に把持部を備えた手回しネジであることを特徴としている。手回しネジは、たとえば、ローレットネジ(ローレットボルト)やノブネジ(ノブボルト)などによって実現することができる。
【0059】
この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100によれば、工具801を用いることなく、作業者が固定部材120を手で操作することができる。これにより、ボルト502およびナット701を締めたり緩めたりする作業性の向上を図り、作業にかかるコストを抑えることができる。
【0060】
また、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100は、固定部材120が、蝶ネジであることを特徴としている。
【0061】
この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100によれば、掴みやすいウイング123を備えた蝶ネジを用いることにより、作業者は、防護手袋などをしている状態でも、工具801を用いることなく容易に操作することができる。これにより、ボルト502およびナット701を締めたり緩めたりする作業性の向上を図り、作業にかかるコストを抑えることができる。
【0062】
また、この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100は、固定部材120が、一方の板状部材111側の端部に設けられ、一方の板状部材111の板面に平行であって固定部材120の軸心に直交する断面積より大きい当接面を有する当接部材125を備えたことを特徴としている。
【0063】
この発明にかかる実施の形態1の供回り防止具100によれば、鉄塔部材501などのような、供回り防止具100の取り付け対象とする部材に、固定部材120の先端を押しつけて供回り防止具100を固定する場合と比較して、当該部材に対する接触面積を大きくして、当該部材に対して供回り防止具100を確実に固定することができる。
【0064】
これにより、ボルト502およびナット701を締めたり緩めたりしている途中で供回り防止具100が落下してしまうなどの不具合を防止し、ボルト502およびナット701を締めたり緩めたりする作業性の向上を図り、作業にかかるコストを抑えることができる。
【0065】
また、硬質ゴム、硬質ウレタンなどの合成樹脂などを用いて当接部材125を形成したり、ゴム、シリコン、ウレタンなどによって形成した当接部材125を固定部材120の先端に取り付けることにより、締める方向に螺合されて鉄塔部材501に当接した固定部材120を、当該鉄塔部材501の表面形状に応じて変形させることができる。これにより、固定部材120による固定を確実におこない、ボルト502およびナット701を締めたり緩めたりする作業性の向上を図ることができる。
【0066】
<実施の形態2>
(供回り防止具の構成)
まず、この発明にかかる実施の形態2の供回り防止具の構成について説明する。上述した実施の形態1と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。図9図11は、この発明にかかる実施の形態2の供回り防止具の構成を示す説明図である。
【0067】
図9においては、この発明にかかる実施の形態2の供回り防止具を分解した斜視状態を示している。図10においてはこの発明にかかる実施の形態2の供回り防止具の側面図、図11においてはこの発明にかかる実施の形態2の供回り防止具の使用時における一態様を示している。
【0068】
図9図11に示すように、この発明にかかる実施の形態2の供回り防止具900は、連結部材113を介して連結された一対の板状部材111、112を備えている。一対の板状部材111、112のうちの一方の板状部材111は、一対の板状部材111、112のうちの他方の板状部材112よりも、連結部材113からの長さが長い。
【0069】
他方の板状部材112には、当該他方の板状部材112の幅方向を長手方向とし、他方の板状部材112を板厚方向に貫通する長孔901が設けられている。長孔901の長手方向は、凹部114の深さ方向に交差している。具体的に、長孔901の長手方向は、凹部114の深さ方向に直交している。
【0070】
長孔901は、他方の板状部材112における一方の板状部材111側の方が、固定部材120を実現する蝶ネジのウイング123側よりも幅寸法が狭くなるようなテーパー形状であってもよい。この場合、テーパーは、作業者などが目視によって容易に認識できる程度に大きく傾斜しているものに限らない。長孔901の周縁には、他方の板状部材112の板厚方向に貫通する溝902が設けられている。
【0071】
長孔901には、軸心方向に沿って貫通する貫通孔903aを備えた環状部材903を、取り外し可能に取り付けることができる。環状部材903の内周面には、固定部材120における軸部121のネジ山と螺合するネジ山が形成されている。すなわち、環状部材903の内周面および当該内周面に設けられたネジ山によって、環状部材903を板厚方向に沿って貫通するネジ孔を実現することができる。環状部材903は、プラスチックなどと称される合成樹脂を用いて形成することができる。
【0072】
環状部材903の外形寸法は、長孔901の幅寸法と同等とされている。長孔901が、深さ方向において傾斜するテーパー形状である場合、長孔901に対して環状部材903を嵌め込むことにより、合成樹脂などを用いて形成された環状部材903が長孔901の内壁面と環状部材903の外表面との当接力によって環状部材903を弾性変形させ、他方の板状部材112に対する環状部材903の位置を固定することができる。
【0073】
あるいは、長孔901がテーパー形状でない場合にも、環状部材903の外形寸法を孔の幅寸法よりも若干大きくすることにより、長孔901に対して環状部材903を嵌め込むことによって、合成樹脂などを用いて形成された環状部材903が長孔901の内壁面と環状部材903の外表面との当接力によって環状部材903を弾性変形させ、他方の板状部材112に対する環状部材903の位置を固定することができる。いずれの場合も、環状部材903は、作業者などが目視によって容易に認識できる程度に大きく変形するものに限らない。
【0074】
環状部材903は、外周面に、外方に向けて突出する突起903bを備えている。環状部材903は、長孔901の周縁に設けられた複数の溝902のうちのいずれかの溝902に、突起903bを嵌め込んだ状態で、長孔901に嵌め込む。これにより、長孔901の周縁に設けられた複数の溝902のうちのいずれかの溝902に、突起903bを嵌め込むことにより、長孔901内の長手方向における環状部材903の位置を固定することができる。また、これにより、環状部材903に対して固定部材120を回転させ、螺合量を調整した場合に、回転部材が長孔901内において供に回転してしまうことを防止できる。
【0075】
また、固定部材120は、上述した実施の形態1と同様に当接部材125を備えている。当接部材125を設けることにより、鉄塔部材501に対して固定部材120を確実に当接させ、供回り防止具900を鉄塔部材501に確実に取り付けることができる。
【0076】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態2の供回り防止具900は、他方の板状部材112を板厚方向に沿って貫通し、当該他方の板状部材112の板面に沿って凹部114の深さ方向に交差する方向を長手方向とする長孔901と、長孔901の長手方向に沿って移動可能であって、当該長孔901に取り外し可能に取り付けられる環状部材903と、を備え、固定部材120が、環状部材903を板厚方向に沿って貫通するネジ孔に螺合されるネジであることを特徴としている。
【0077】
この発明にかかる実施の形態2の供回り防止具900によれば、環状部材903を長孔901の長手方向に沿って移動させることにより、固定部材120による締め付け位置を、他方の板状部材112の幅方向において調整することができる。これにより、押さえる対象とするボルト502の頭部の位置や当該ボルト502の頭部の周辺に位置する部材など周辺の状況に応じて固定部材120による締め付け位置を調整することができるので、ボルト502およびナット701を締めたり緩めたりする作業性の向上を図り、作業にかかるコストを抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上のように、この発明にかかる供回り防止具は、ボルトおよびナットを締めたり緩めたりする作業に用いる供回り防止具に有用であり、特に、塗装がなされた部材を締め付け対象としてボルトおよびナットを締めたり緩めたりする作業に用いる供回り防止具に適している。
【符号の説明】
【0079】
100、900 供回り防止具
110 保持部
111、112 板状部材
113 連結部材
114 凹部
120 固定部材
121 軸部
122 頭部
123 ウイング
125 当接部材
501 鉄塔部材
701 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11