【解決手段】 z方向を向く主面11を有する基板10と、主面11に積層されたグレーズ層30と、グレーズ層30の上に配置された電極40と、主走査方向に配列され、かつ電極40に導通する複数の発熱部を含む抵抗体50と、を備え、主面11とグレーズ層30との間に介在し、かつ熱伝導率がグレーズ層30の熱伝導率よりも大である中間層20をさらに備え、z方向から視て、複数の前記発熱部が前記中間層20に重なる。
前記突条の前記副走査方向の中央において、複数の前記発熱部が接する位置から前記中間層の表面までに至る前記被覆部の厚さは、前記一般部の厚さよりも小である、請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は先述の事情に鑑み、放熱性を向上させることが可能なサーマルプリントヘッドを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、厚さ方向を向く主面を有する基板と、前記主面に積層されたグレーズ層と、前記グレーズ層の上に配置された電極と、主走査方向に配列され、かつ前記電極に導通する複数の発熱部を含む抵抗体と、を備え、前記主面と前記グレーズ層との間に介在し、かつ熱伝導率が前記グレーズ層の熱伝導率よりも大である中間層をさらに備え、前記厚さ方向から視て、複数の発熱部が前記中間層に重なることを特徴とするサーマルプリントヘッドが提供される。
【0007】
本発明の実施において好ましくは、前記中間層は、前記主面に接している。
【0008】
本発明の実施において好ましくは、前記グレーズ層は、前記中間層に接する被覆部と、前記主面に接し、かつ前記被覆部の副走査方向の両端につながる一般部と、を有し、前記被覆部は、前記一般部の表面から前記厚さ方向に向けて突出し、かつ前記主走査方向に延びる突条を有する。
【0009】
本発明の実施において好ましくは、複数の前記発熱部は、前記突条に接している。
【0010】
本発明の実施において好ましくは、前記突条の前記副走査方向の中央において、複数の前記発熱部が接する位置から前記中間層の表面までに至る前記被覆部の厚さは、前記一般部の厚さよりも小である。
【0011】
本発明の実施において好ましくは、前記グレーズ層に接し、かつ前記電極の一部および前記抵抗体を覆う保護層をさらに備える。
【0012】
本発明の実施において好ましくは、前記中間層は、前記副走査方向において互いに離間した一対の第1中間部と、一対の前記第1中間部の間の隙間を埋める第2中間部と、を有し、前記第2中間部は、前記主面に向けて凹状である。
【0013】
本発明の実施において好ましくは、前記突条は、前記副走査方向において隣り合う一対の凸部を含む。
【0014】
本発明の実施において好ましくは、複数の前記発熱部は、一対の前記凸部の双方に接している。
【0015】
本発明の実施において好ましくは、前記グレーズ層は、前記主面および前記中間層を覆う第1層と、前記第1層を覆う第2層と、を含み、前記突条は、前記第2層に形成されている。
【0016】
本発明の実施において好ましくは、前記一般部は、前記中間層に接していない前記主面の部分全体に接している。
【0017】
本発明の実施において好ましくは、前記中間層は、銀を含む。
【0018】
本発明の実施において好ましくは、共通電極および複数の個別電極を含み、前記共通電極は、前記抵抗体とは前記副走査方向に離間し、かつ前記主走査方向に延びる連結部と、前記連結部から前記抵抗体に向けて延びる複数の第1帯状部と、を有し、複数の前記個別電極の各々は、前記副走査方向において前記抵抗体に対して前記連結部とは反対側から前記抵抗体に向けて延びる第2帯状部を有し、前記第2帯状部は、前記主走査方向において隣り合う2つの前記第1帯状部の間に位置する。
【0019】
本発明の実施において好ましくは、前記抵抗体は、複数の前記第1帯状部および複数の前記第2帯状部の双方に交差している。
【0020】
本発明の実施において好ましくは、複数の前記第1帯状部および複数の前記第2帯状部は、前記グレーズ層と前記抵抗体との間に挟まれた区間を有する。
【0021】
本発明の実施において好ましくは、前記共通電極は、前記連結部の上に配置され、かつ前記主走査方向に延びる金属薄層をさらに有する。
【0022】
本発明の実施において好ましくは、前記一般部の上に搭載され、かつ複数の前記個別電極に導通する駆動ICをさらに備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかるサーマルプリントヘッドによれば、放熱性を向上させることが可能となる。
【0024】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面に基づき以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について、添付図面に基づいて説明する。
【0027】
〔第1実施形態〕
図1〜
図9に基づき、本発明の第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA10について説明する。サーマルプリントヘッドA10は、基板10、グレーズ層30、電極40および抵抗体50を備える。これらに加え、サーマルプリントヘッドA10は、中間層20、保護層60、駆動IC71、封止樹脂72、コネクタ73およびヒートシンク74をさらに備える。なお、これらの図のうち、
図4および
図5は、理解の便宜上、保護層60を透過している。
図5に示す複数点によるハッチングの領域は、中間層20を示している。
【0028】
これらの図に示すサーマルプリントヘッドA10は、抵抗体50に含まれる複数の発熱部51(詳細は後述)を選択的に発熱させることによって、
図3に示すように、感熱紙などの記録媒体81に印字を施す電子デバイスである。サーマルプリントヘッドA10の構造は平面型であるため、印字に用いられる記録媒体81は、ロール紙など予め巻き取りされたものに限定される。サーマルプリントヘッドA10は、印刷および焼成により抵抗体50が形成された、いわゆる厚膜型である。
【0029】
ここで、説明の便宜上、サーマルプリントヘッドA10の主走査方向を「x方向」と呼び、サーマルプリントヘッドA10の副走査方向を「y方向」と呼ぶ。基板10の厚さ方向を「z方向」と呼ぶ。z方向は、x方向およびy方向の双方に対して直交している。なお、以下の説明において、「z方向から視て」とは、平面視を指す。「y方向の一方側」とは、抵抗体50に対して共通電極41(電極40)の第1連結部412(詳細は後述)が位置する側を指す。「y方向の他方側」とは、抵抗体50に対して駆動IC71が位置する側を指す。
【0030】
基板10は、
図1および
図2に示すように、x方向に延びる帯状とされている。基板10は、たとえばアルミナ(Al
2O
3)を主成分とするセラミックスである。基板10の構成材料は、アルミナおよび合成樹脂バインダなどである。なお、基板10の構成材料は、これらに加えて遮光材料を含めてもよい。当該遮光材料は、たとえば炭素(C)である。
図3に示すように、基板10は、z方向において互いに反対側を向く主面11および裏面12を有する。
【0031】
中間層20は、
図6〜
図8に示すように、基板10の主面11と、グレーズ層30との間に介在している。中間層20は、x方向に延びる帯状である。中間層20は、主面11に接している。中間層20の表面20A(主面11に接する部分を除く。)は、全体にわたってグレーズ層30に覆われている。中間層20の熱伝導率は、グレーズ層30の熱伝導率よりも大とされている。中間層20の構成材料は、金属粒子にガラスフリットが含有された金属ペーストである。当該金属粒子として、銀(Ag)、銀とパラジウム(Pd)との混合粒子、およびルテニウム(Ru)などを用いることができる。
【0032】
グレーズ層30は、
図6〜
図8に示すように、基板10の主面11に積層されている。グレーズ層30は、主面11および中間層20を覆う第1層301と、第1層301を覆う第2層302とを含む多層構成となっている。グレーズ層30の構成材料は、第1層301および第2層302ともに非晶質ガラスである。これにより、グレーズ層30は、透明または白色を呈する。当該非晶質ガラスは、たとえばSiO
2−BaO−Al
2O
3−SnO−ZnO系ガラスである。
【0033】
図5〜
図8に示すように、グレーズ層30は、被覆部31および一般部32を有する。被覆部31は、中間層20の表面20Aに接している。一般部32は、主面11に接し、かつ被覆部31のy方向の両端につながっている。これにより、一般部32は、y方向において被覆部31により2つの領域に分断されている。一般部32は、中間層20に接していない主面11の部分全体に接している。一般部32は、z方向において基板10の主面11が向く側を向く表面30Aを有する。表面30Aは、滑らかである。
【0034】
図6および
図7に示すように、被覆部31は、突条33を有する。突条33は、一般部32の表面30Aからz方向に向けて突出している。
図5に示すように、突条33は、x方向に延びている。
図8に示すように、突条33には、抵抗体50の複数の発熱部51が接している。突条33のy方向の中央において複数の発熱部51が接する位置Bから中間層20の表面20Aまでに至る被覆部31の厚さt1は、一般部32の厚さt2よりも小である。
【0035】
電極40は、
図6および
図7に示すように、グレーズ層30の上にあたる表面30Aおよび突条33に配置されている。電極40は、抵抗体50に通電するための導電経路を構成している。電極40は、共通電極41および複数の個別電極42を含む。サーマルプリントヘッドA10においては、電流は、複数の個別電極42から抵抗体50を経由して共通電極41に向けて流れる。このため、共通電極41が負極であり、複数の個別電極42が正極である。電極40の構成材料の一例として、金を主成分とするレジネートペーストが挙げられる。電極40の厚さは、0.6μm以上1.2μm以下である。
【0036】
図4および
図5に示すように、共通電極41は、第1連結部412および複数の第1帯状部411を有する。第1連結部412は、抵抗体50とはy方向に離間し、かつx方向に延びる帯状である。第1連結部412が、本発明にかかる特許請求の範囲に記載の「連結部」に相当する。第1連結部412は、基板10のy方向の一方側に配置されている。第1連結部412は、電極40に流れる電流の下流端にあたる。
【0037】
図4および
図5に示すように、複数の第1帯状部411は、抵抗体50に向けて延びる帯状である。複数の第1帯状部411は、x方向において等間隔に配列されている。複数の第1帯状部411の各々は、基部411Aおよび延出部411Bを有する。基部411Aは、矩形状であり、かつy方向の一方側において第1連結部412につながっている。延出部411Bは、基部411Aから抵抗体50に向けて延びている。延出部411Bの幅(x方向における寸法)は、基部411Aの幅(x方向における寸法)よりも小である。延出部411Bの幅は、25μm以下とされている。基部411Aは、y方向において第1連結部412と延出部411Bとに挟まれている。
【0038】
図5〜
図7に示すように、第1連結部412の上には、金属薄層401が配置されている。金属薄層401は、x方向に延びている。金属薄層401の構成材料は、銀粒子にガラスフリットが含有された導電性ペーストである。金属薄層401の電気抵抗率は、電極40の電気抵抗率よりも低い。
【0039】
図4および
図5に示すように、複数の個別電極42は、y方向の他方側から抵抗体50に向けて延びている。複数の個別電極42は、グレーズ層30の上において、個々の駆動IC71に対応した束となって配置されている。複数の個別電極42は、個別に選択された抵抗体50の部分に電圧を印加する。複数の個別電極42は、x方向に配列されている。複数の個別電極42の各々は、第2帯状部421、第2連結部422および接続部423を有する。
【0040】
図4および
図5に示すように、第2帯状部421は、y方向において抵抗体50に対して第1連結部412とは反対側(y方向の他方側)から抵抗体50に向けて延びる帯状である。第2帯状部421は、x方向において隣り合う2つの第1帯状部411の間に位置する。第2帯状部421は、基部421Aおよび延出部421Bを有する。基部421Aは、矩形状であり、かつy方向の他方側において第2連結部422につながっている。延出部421Bは、基部421Aから抵抗体50に向けて延びている。延出部421Bの幅(x方向における寸法)は、基部421Aの幅(x方向における寸法)よりも小である。延出部421Bの幅は、25μm以下とされている。基部421Aは、y方向において第2連結部422と延出部421Bとに挟まれている。
【0041】
図4および
図5に示すように、第2連結部422は、第2帯状部421からy方向の他方側に延びる帯状である。第2連結部422は、第2帯状部421と接続部423とを連結している。第2連結部422は、平行部422Aおよび斜行部422Bを有する。平行部422Aは、y方向の他方側において接続部423につながり、かつy方向に沿っている。平行部422Aの幅(x方向における寸法)は、20μm以下とされている。斜行部422Bは、y方向に対して傾斜している。斜行部422Bは、y方向の一方側において第2帯状部421の基部421Aにつながり、かつy方向の他方側において平行部422Aにつながっている。また、
図4に示すように、個々の駆動IC71に対応した束となって配置された複数の個別電極42において、平行部422Aと斜行部422Bとの境界位置は、x方向の両端で対比するとy方向のずれΔLが生じている。
【0042】
図4に示すように、接続部423は、第2連結部422に対してy方向の反対側に位置する。接続部423は、第2連結部422の平行部422Aにつながっている。接続部423は、第1接続部423Aおよび第2接続部423Bを含む。第2接続部423Bは、第1接続部423Aよりもy方向の他方側に位置する。これにより、複数の第1接続部423Aおよび複数の第2接続部423Bは、x方向において千鳥配置されている。第2接続部423Bにつながり、かつ隣り合う2つの第1接続部423Aの間に位置する平行部422Aの幅(x方向における寸法)は、10μm以下とされている。複数の接続部423には、複数のワイヤ49が接続されている。複数のワイヤ49の構成材料は、たとえば金である。
【0043】
抵抗体50は、
図1および
図4に示すように、x方向に延びる帯状である。抵抗体50は、グレーズ層30(第2層302)の突条33に接している。抵抗体50は、複数の第1帯状部411と、複数の第2帯状部421(ともに電極40)との双方に対して交差している。
図5に示すように、複数の第1帯状部411および複数の第2帯状部421は、突条33と抵抗体50との間に挟まれた区間を有する。このため、抵抗体50は、複数の第1帯状部411および複数の第2帯状部421のそれぞれ一部ずつを覆っている。抵抗体50のうち、第1帯状部411を覆う部分と、当該第1帯状部411の隣に位置し、かつ第2連結部422を覆う部分とにより挟まれた領域が、発熱部51とされている。これにより、抵抗体50は、x方向に配列され、かつ電極40に導通する複数の発熱部51を含む構成をとる。電極40により選択的に通電されることにより、複数の発熱部51は、選択的に発熱する。これにより、
図3に示す記録媒体81にドット印字が施される。抵抗体50の構成材料は、電極40よりも電気抵抗率が大である材料が選択される。抵抗体50の構成材料は、たとえば酸化ルテニウム(RuO
2)粒子にガラスフリットが含有された導電性ペーストである。抵抗体50の最大厚さは、6μm以上10μm以下である。
【0044】
図5に示すように、z方向から視て、複数の発熱部51は、中間層20に重なっている。また、
図8に示すように、複数の発熱部51は、突条33に接している。
【0045】
保護層60は、
図6〜
図8に示すように、グレーズ層30の表面30Aおよび突条33に接している。保護層60は、電極40の一部および抵抗体50を覆っている。なお、複数の接続部423を含む複数の個別電極42の一部の領域は、保護層60に覆われていない。保護層60の構成材料は、グレーズ層30と同じく非晶質ガラスである。保護層60は、表面60Aおよび突出部61を有する。表面60Aは、z方向において基板10の主面11が向く側を向く。突出部61は、表面60Aからz方向に向けて突出している。突出部61は、突条33に接し、かつ抵抗体50を覆っている。このため、突出部61は、x方向に延びている。突出部61は、表面60Aから突出部61の頂点Cまでに至るz方向の寸法である高さh1を有する。
【0046】
駆動IC71は、
図1および
図3に示すように、抵抗体50に対してy方向の他方側に位置する。駆動IC71は、グレーズ層30の一般部32の上(表面30A)に搭載されている。駆動IC71の上面には、複数のパッド(図示略)が設けられている。複数のパッドのいくつかには、駆動IC71に対応する複数の個別電極42の接続部423に接続された複数のワイヤ49が接続されている。これにより、駆動IC71は、これに対応する複数の個別電極42に導通している。また、他の複数の当該パッドには、基板10の主面11に配置された配線に接続された複数のワイヤ49が接続されている。駆動IC71は、複数のワイヤ49を介して複数の個別電極42を選択的に通電させる。これにより、抵抗体50に含まれる複数の発熱部51が選択的に発熱する。なお、サーマルプリントヘッドA10が示す例以外に、駆動IC71は、y方向において基板10とは分離され、かつヒートシンク74に支持された配線基板に搭載される構成でもよい。当該配線基板は、たとえばガラスエポキシ樹脂を構成材料とする基材の上に、銅などの金属からなる配線が配置されたものである。
【0047】
封止樹脂72は、
図3に示すように、駆動IC71および複数のワイヤ49を覆っている。これらに加え、封止樹脂72は、保護層60に覆われていない複数の個別電極42の一部の領域(複数の接続部423など)をさらに覆っている。封止樹脂72の構成材料は、たとえばアンダーフィルに用いられる黒色かつ軟質の合成樹脂である。
【0048】
コネクタ73は、
図1〜
図3に示すように、駆動IC71に対してy方向の他方側に位置する基板10の端部に配置されている。コネクタ73は、サーマルプリントヘッドA10をサーマルプリンタに接続するために用いられる。コネクタ73は、基板10の主面11に配置された配線に接続されている。これにより、コネクタ73は、当該配線、駆動IC71および複数のワイヤ49を介して複数の個別電極42に導通している。また、コネクタ73は、当該配線を介して共通電極41の第1連結部412に導通している。
【0049】
ヒートシンク74は、
図2および
図3に示すように、接合材(図示略)を介して基板10の裏面12に接合されている。当該接合材は、たとえば熱伝導率が比較的高い両面テープである。ヒートシンク74の構成材料は、たとえばアルミニウム(Al)である。
【0050】
次に、サーマルプリントヘッドA10の作動について説明する。
【0051】
図3に示すように、サーマルプリントヘッドA10の複数の発熱部51は、サーマルプリンタに組み込まれたプラテンローラ82に保護層60を介して対向している。複数の発熱部51を覆う保護層60の領域と、プラテンローラ82との間に、記録媒体81が挟み込まれている。サーマルプリンタの作動時は、プラテンローラ82が回転することにより、記録媒体81が一定速度で送られる。その際、複数の発熱部51が選択的に発熱すると、熱が保護層60を介して記録媒体81に伝わることにより、記録媒体81に印字が施される。同時に、複数の発熱部51から発生した熱は、グレーズ層30にも伝わる。当該熱の一部は、グレーズ層30に蓄えられる。当該熱の残りは、基板10およびヒートシンク74を介してサーマルプリントヘッドA10の外部に放出される。
【0052】
次に、
図9〜
図15に基づき、サーマルプリントヘッドA10の製造方法の一例について説明する。
【0053】
まず、
図9に示すように、基板10を用意する。基板10は、アルミナを主成分とするセラミックスである。
【0054】
次いで、
図10に示すように、基板10に接する中間層20を形成する。中間層20の形成にあたっては、まず、銀などの金属粒子にガラスフリットが含有された金属ペーストを、所定幅(y方向における寸法)となるようにx方向に延びる帯状に厚膜印刷する。その後、これを焼成することにより中間層20が形成される。
【0055】
次いで、
図11および
図12に示すように、基板10の主面11に積層されるグレーズ層30を形成する。グレーズ層30の形成にあたっては、
図11に示すように、主面11および中間層20を覆う第1層301を形成した後、
図12に示すように、第1層301を覆う第2層302を形成する。第1層301および第2層302の形成は、非晶質ガラスのペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより行う。
図12に示すように、第2層302を形成したとき、第2層302の被覆部31には、第2層302の一般部32の表面30Aからz方向に向けて突出し、かつx方向に延びる突条33が形成される。
【0056】
次いで、
図13に示すように、グレーズ層30の上(表面30Aおよび突条33)に配置される電極40を形成する。電極40の形成にあたっては、まず、金を主成分とするレジネートペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより導電体層を形成する。その後、導電体層にエッチングによるパターニングを施すことにより、電極40が形成される。電極40を形成した後、電極40の領域の一部(共通電極41の第1連結部412)に積層される金属薄層401を形成する。金属薄層401の形成は、銀粒子にガラスフリットが含有された導電性ペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより行う。
【0057】
次いで、
図14に示すように、電極40に導通する抵抗体50を形成する。抵抗体50の形成にあたっては、まず、酸化ルテニウム粒子にガラスフリットが含有された電気抵抗率が比較的高い導電性ペーストを、z方向から視て中間層20に重なり、かつ電極40に接するように、グレーズ層30の突条33においてx方向に延びる帯状に厚膜印刷する。その後、これを焼成する。最後に、焼成物に対して抵抗値を調整するためのトリミングを適宜行うことにより、抵抗体50が形成される。
【0058】
次いで、
図15に示すように、グレーズ層30の表面30Aおよび突条33に接し、かつ電極40の一部および抵抗体50を覆う保護層60を形成する。保護層60の形成は、非晶質ガラスのペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより行う。
【0059】
保護層60を形成した後、グレーズ層30(一般部32)の表面30Aに駆動IC71をダイボンディングにより搭載する。次いで、複数のワイヤ49をワイヤボンディングにより形成し、その後、封止樹脂72を形成する。次いで、y方向に沿って基板10を切断する。最後に、基板10にコネクタ73およびヒートシンク74を取り付けることによって、サーマルプリントヘッドA10が得られる。
【0060】
次に、サーマルプリントヘッドA10の作用効果について説明する。
【0061】
サーマルプリントヘッドA10では、基板10の主面11とグレーズ層30との間に介在し、かつ熱伝導率がグレーズ層30の熱伝導率よりも大である中間層20を備える。z方向から視て、抵抗体50の複数の発熱部51が中間層20に重なっている。これにより、サーマルプリントヘッドA10の使用の際、複数の発熱部51から発せられ、かつグレーズ層30に伝わった熱が、中間層20を介して基板10に伝わりやすくなる。したがって、サーマルプリントヘッドA10によれば、放熱性を向上させることが可能となる。
【0062】
中間層20は、基板10の主面11に接している。これにより、複数の発熱部51から発せられた熱が、中間層20を介して基板10に、より伝わりやすくなる。
【0063】
サーマルプリントヘッドA10の放熱性を向上させることにより、記録媒体81への印字品質、並びに抵抗体50の耐久性を向上させることができる。また、複数の発熱部51の温度分布の偏りが抑制され、記録媒体81の発色がより均一されたものとなる。
【0064】
グレーズ層30は、中間層20に接する被覆部31と、被覆部31のy方向の両端につながる一般部32を有する。被覆部31は、一般部32の表面30Aからz方向に向けて突出し、かつx方向に延びる突条33を有する。複数の発熱部51は、突条33に接している。これにより、突条33および複数の発熱部51を覆う保護層60には、表面60Aからz方向に突出する突出部61が形成される。よって、サーマルプリントヘッドA10の使用の際、記録媒体81が突出部61に接触することにより、保護層60に対する記録媒体81の接触面積が抑えられるため、記録媒体81に施される印字品質が良好なものとなる。
【0065】
突条33のy方向の中央において、複数の発熱部51が接する位置Bから中間層20の表面20Aまでに至る被覆部31の厚さは、一般部32の厚さよりも小である。これにより、複数の発熱部51から発せられた熱を、被覆部31を介して、より速やかに中間層20に伝えることができる。
【0066】
一般部32は、中間層20に接していない基板10の主面11の部分全体に接している。これにより、グレーズ層30が持つ蓄熱性が極度に低下することを回避できる。また、グレーズ層30とは異なる保護媒体を主面11に設けずに、駆動IC71を一般部32の上に搭載することができる。
【0067】
電極40の共通電極41は、第1連結部412の上に配置され、x方向に延びる金属薄層401を有する。これにより、第1連結部412の流れる電流の一部が金属薄層401に流れるため、共通電極41において電流を、より速やかに流すことができる。したがって、複数の発熱部51から過度に熱が発生し続けることを回避できる。
【0068】
〔第2実施形態〕
図16〜
図19に基づき、本発明の第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA20について説明する。これらの図において、先述したサーマルプリントヘッドA10と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。なお、これらの図のうち、
図16は、理解の便宜上、保護層60を透過している。
図16に示す複数点によるハッチングの領域は、中間層20を示している。
【0069】
サーマルプリントヘッドA20においては、中間層20、グレーズ層30、抵抗体50および保護層60の構成が、先述したサーマルプリントヘッドA10に対して異なる。
【0070】
図17〜
図19に示すように、中間層20は、一対の第1中間部21、および第2中間部22を有する。一対の第1中間部21は、y方向において互いに離間している。第1中間部21のy方向における寸法は、0.5mm以上1.5mm以下である。第2中間部22は、一対の第1中間部21の間の隙間Gpを埋めている。隙間Gpのy方向における寸法は、0.2mm以上0.4mm以下である。第2中間部22のy方向における最大寸法は、0.4mm以上0.6mm以下である。第2中間部22は、基板10の主面11に向けて凹状である。
【0071】
図19に示すように、一対の第1中間部21の各々は、頂点D1を有する。第2中間部22は、一対の頂点D2、および底点D3を有する。基板10の主面11から頂点D1までに至る、一対の第1中間部21のz方向における最大寸法を厚さz1とする。主面11から頂点D2までに至る、第2中間部22のz方向における寸法を厚さz2とする。主面11から底点D3までに至る、第2中間部22のz方向における寸法を厚さz3とする。厚さz1,z2,z3の大小関係は、厚さz1>厚さz2>厚さz3である。
【0072】
図16〜
図19に示すように、グレーズ層30(第2層302)の突条33は、一対の凸部331を含む。一対の凸部331は、y方向において互いに隣り合っている。サーマルプリントヘッドA20においては、一対の凸部331は、y方向において隣接しているが、これ以外に、一対の凸部331がy方向において互いに離間していてもよい。一対の凸部331は、x方向に延びている。z方向から視て、一対の凸部331のy方向における境界は、中間層20の第2中間部22に重なっている。
【0073】
図20に示すように、抵抗体50の複数の発熱部51は、一対の凸部331の双方に接している。なお、サーマルプリントヘッドA20においても、突条33のy方向の中央において複数の発熱部51が接する位置Bから中間層20の表面20A(底点D3)までに至る被覆部31の厚さt1は、一般部32の厚さt2よりも小である。
【0074】
図20に示すように、保護層60の突出部61は、表面60Aから突出部61の頂点Cまでに至るz方向の寸法である高さh2を有する。高さh2は、
図8に示すサーマルプリントヘッドA10の突出部61の高さh1よりも小である。
【0075】
次に、
図20〜
図22に基づき、サーマルプリントヘッドA20の製造方法の一例について説明する。
【0076】
基板10(
図9参照)を用意した後、
図20に示すように、中間層20のうち、一対の第1中間部21を形成する。一対の第1中間部21の形成にあたっては、まず、銀などの金属粒子にガラスフリットが含有された金属ペーストを、所定幅(y方向における寸法)となるようにx方向に延びる帯状に厚膜印刷する。このとき、一対の第1中間部21の間に所定長の隙間Gpを設けるようにする。その後、これを焼成することにより一対の第1中間部21が形成される。
【0077】
次いで、
図21に示すように、中間層20のうち、第2中間部22を形成する。第2中間部22の形成にあたっては、一対の第1中間部21の形成の際に用いた金属ペーストを、隙間Gpを埋めるようにx方向に延びる帯状に厚膜印刷する。その後、これを焼成することにより第2中間部22が形成される。形成された第2中間部22は、基板10の主面11に向けて凹状となる。
【0078】
次いで、
図22に示すように、基板10の主面11に積層されるグレーズ層30を形成する。グレーズ層30の形成にあたっては、主面11および中間層20を覆う第1層301を形成した後、第1層301を覆う第2層302を形成する。第1層301および第2層302の形成は、非晶質ガラスのペーストを厚膜印刷した後に、これを焼成することにより行う。第2層302を形成したとき、第2層302の被覆部31には、第2層302の一般部32の表面30Aからz方向に向けて突出し、かつx方向に延びる突条33が形成される。突条33は、y方向において隣り合う一対の凸部331を含むものとなる。
【0079】
<第2実施形態の変形例>
図23に基づき、サーマルプリントヘッドA20の変形例にかかるサーマルプリントヘッドA21について説明する。なお、
図23の断面位置は、
図19の断面位置と同一である。
【0080】
図23に示すサーマルプリントヘッドA21は、中間層20およびグレーズ層30の形状が、より実製品に近いものとなっている。サーマルプリントヘッドA21においては、先述した厚さz1,z2,z3の大小関係は、厚さz2>厚さz1>厚さz3である。このため、第2中間部22の一対の頂点D2の方が、一対の第1中間部21の頂点D1よりも基板10の主面11からz方向においてより遠くに位置する。
【0081】
次に、サーマルプリントヘッドA20の作用効果について説明する。
【0082】
サーマルプリントヘッドA20では、基板10の主面11とグレーズ層30との間に介在し、かつ熱伝導率がグレーズ層30の熱伝導率よりも大である中間層20を備える。z方向から視て、抵抗体50の複数の発熱部51が中間層20に重なっている。したがって、サーマルプリントヘッドA20によっても、放熱性を向上させることが可能となる。
【0083】
中間層20は、y方向において互いに離間した一対の第1中間部21と、一対の第1中間部21の隙間Gpを埋める第2中間部22とを有する。第2中間部22は、基板10の主面11に向けて凹状である。これにより、グレーズ層30の被覆部31に形成される突条33は、y方向において隣り合う一対の凸部331を含む構成となる。
【0084】
突条33が一対の突条33を含む構成をとることにより、突条33および複数の発熱部51を覆う保護層60に形成される突出部61の高さh2は、サーマルプリントヘッドA10の突出部61の高さh1よりも小となる。これにより、サーマルプリントヘッドA20の使用の際、記録媒体81が突出部61に接触することにより、先述のとおり記録媒体81に施される印字品質が良好なものとなる。また、突出部61の高さh2が、サーマルプリントヘッドA10の突出部61の高さh1よりも小であることにより、突出部61の付け根に記録媒体81の紙かすが付着することを抑制できる。したがって、サーマルプリントヘッドA20の信頼性を、サーマルプリントヘッドA10よりも向上させることができる。
【0085】
本発明は、先述した実施形態に限定されるものではない。本発明の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。