【解決手段】吐出データ生成部42は、ノズルから吐出する1画素あたりのインクのドロップ数を調整可能なインクジェットヘッド21を備えるインクジェット印刷装置1における各画素に対するインクのドロップ数を示す吐出データを、印刷画像データに基づき生成する。吐出データ生成部42は、1画素あたりのインクの最小ドロップ数をインクの表面張力に応じて設定した吐出データを生成する。
インクを吐出するノズルを有し、前記ノズルから吐出する1画素あたりのインクの吐出量を複数段階で調整可能なインクジェットヘッドを備えるインクジェット印刷装置における各画素に対するインクの吐出量を示す吐出データを、印刷画像データに基づき生成する吐出データ生成部を備え、
前記吐出データ生成部は、1画素あたりのインクの最小吐出量をインクの表面張力に応じて設定した吐出データを生成することを特徴とする画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。
【0015】
以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示すブロック図である。
図2は、
図1に示すインクジェット印刷装置の搬送部および印刷部の概略構成図である。なお、以下の説明において、
図2における紙面の上下左右を上下左右方向とする。また、
図2の紙面に直交する方向を前後方向とする。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態に係るインクジェット印刷装置1は、搬送部2と、印刷部3と、制御部4とを備える。
【0018】
搬送部2は、図示しない給紙部から給紙された印刷媒体である用紙Pを搬送する。
図2の左から右に向かう方向が、用紙Pの搬送方向である。搬送部2は、搬送ベルト11と、駆動ローラ12と、従動ローラ13〜15と、搬送モータ16と、ファン17とを備える。
【0019】
搬送ベルト11は、用紙Pを吸着保持して搬送する。搬送ベルト11は、駆動ローラ12および従動ローラ13〜15に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト11には、用紙Pを吸着保持するための貫通穴である複数のベルト穴(図示せず)が形成されている。搬送ベルト11は、ファン17によるエア吸引によりベルト穴に発生する吸着力により、搬送面(上面)11a上に用紙Pを吸着保持する。搬送ベルト11は、
図2における時計回り方向に回転することで、吸着保持した用紙Pを右方向に搬送する。
【0020】
駆動ローラ12は、搬送ベルト11を
図2における時計回り方向に回転させる。
【0021】
従動ローラ13〜15は、駆動ローラ12とともに搬送ベルト11を支持する。従動ローラ13〜15は、搬送ベルト11を介して駆動ローラ12に従動回転する。従動ローラ13は、駆動ローラ12と同じ高さで、駆動ローラ12の左方に配置されている。従動ローラ14,15は、駆動ローラ12および従動ローラ13より下方において、互いに左右方向に離間して、同じ高さに配置されている。
【0022】
搬送モータ16は、駆動ローラ12を回転駆動させる。
【0023】
ファン17は、下方向への気流を生じさせる。これにより、ファン17は、搬送ベルト11のベルト穴を介して空気を吸引してベルト穴に負圧を発生させ、用紙Pを搬送ベルト11の搬送面11a上に吸着させる。ファン17は、搬送ベルト11に囲まれた領域に配置されている。
【0024】
印刷部3は、搬送部2により搬送される用紙Pに画像を印刷する。印刷部3は、搬送部2の上方に配置されている。印刷部3は、インクジェットヘッド21K,21C,21M,21Yと、ヘッドホルダ22と、ヘッドギャップ調整部23とを備える。なお、以下において、インクジェットヘッド21K,21C,21M,21Yの符号におけるアルファベットの添え字を省略して総括的に表記することがある。
【0025】
インクジェットヘッド21は、搬送ベルト11により搬送される用紙Pにインクを吐出する。インクジェットヘッド21は、ノズル列(図示せず)を有する。ノズル列は、主走査方向(前後方向)に沿って配置された複数のノズル(図示せず)からなる。ノズルは、インクジェットヘッド21の下面であるノズル面21aに開口し、インクを吐出する。インクジェットヘッド21は、1つのノズルから1つの画素に対して複数のインク滴を吐出可能なマルチドロップ方式のものであり、インク滴の数であるドロップ数(吐出量)により濃度を表現する階調印刷を行う。
【0026】
インクジェットヘッド21K,21C,21M,21Yは、用紙Pの搬送方向である副走査方向(左右方向)に沿って並列して配置されている。インクジェットヘッド21K,21C,21M,21Yは、それぞれブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクをノズルから吐出する。
【0027】
インクジェットヘッド21が吐出するインクは、印刷物によるクリアファイルの変形を抑制できる溶剤が採用された油性インクである。すなわち、インクジェットヘッド21が吐出するインクは、ポリプロピレンの膨潤を抑制しつつ、インクジェット方式に適した低粘度、低極性の溶剤を含む油性インクである。例えば、インクジェットヘッド21が吐出するインクは、非水系溶剤としてシリコーンオイルを含む油性インクである。
【0028】
また、インクジェットヘッド21K,21C,21M,21Yがそれぞれノズルから吐出する各色のインクは、それぞれのインクの印刷時の明度に応じた表面張力を有するものである。具体的には、
図3に示すように、印刷時の明度が高いインクほど、表面張力が小さくなっている。ここで、
図3に示す印刷時の明度は、100%ベタ印刷による印刷画像の、Lab表色系におけるL値である。100%ベタ印刷は、印刷領域の各画素に対して1画素あたりの最大ドロップ数で印刷することである。
【0029】
インクの表面張力は、インクが含む各種の溶剤の比率により変化する。印刷物によるクリアファイルの変形を抑制できる溶剤を含む本実施の形態の油性インクでは、当該溶剤の比率の調整により、クリアファイルの変形を抑制する性能(クリアファイル変形抑制性能)を高くするほど、表面張力は小さくなる。すなわち、インクジェット印刷装置1では、印刷時の明度が高いインクほど、クリアファイル変形抑制性能が高いインクになっている。各色のインクの表面張力は、実験等に基づき、クリアファイル変形抑制性能、およびインク吐出時のサテライトの発生度合いに応じて調整された、インクにおけるクリアファイルの変形を抑制できる溶剤の比率に応じたものになっている。
【0030】
なお、各色のインクのうちの一部のインクが、印刷物によるクリアファイルの変形を抑制するための溶剤を含まない油性インクであってもよい。
【0031】
ヘッドホルダ22は、インクジェットヘッド21K,21C,21M,21Yを保持する。ヘッドホルダ22は、中空状の直方体形状に形成されている。ヘッドホルダ22は、インクジェット印刷装置1の筐体(図示せず)内の所定位置に固定されている。
【0032】
ヘッドギャップ調整部23は、ヘッドギャップHgを調整する。ヘッドギャップHgは、搬送ベルト11の搬送面11aとインクジェットヘッド21のノズル面21aとの間の距離である。ヘッドギャップHgは、インクジェットヘッド21への用紙Pの接触(ヘッドアタック)を防止するために、印刷に使用される用紙種類(用紙Pの厚さ等)に応じて調整される。ヘッドギャップ調整部23は、昇降機構部26と、昇降モータ27と、調整部材28とを備える。
【0033】
昇降機構部26は、搬送部2を昇降させる。昇降機構部26は、ワイヤ、プーリ等を有し、ワイヤにより搬送部2を吊り下げ支持している。昇降機構部26は、昇降モータ27の駆動力で回転するプーリによりワイヤの巻き取りおよび繰り出しを行うことで、搬送部2を昇降させる。
【0034】
昇降モータ27は、昇降機構部26にワイヤの巻き取りおよび繰り出しを行うための駆動力を供給する。
【0035】
調整部材28は、ヘッドギャップHgを調整するための部材である。調整部材28は、ヘッドホルダ22の底面の四隅にそれぞれ立設されている。搬送部2が調整部材28の下端に突き当てられることで、搬送部2が位置決めされる。調整部材28は、設定するヘッドギャップHgに応じて上下方向の長さを複数段階に調整可能に構成されている。
【0036】
制御部4は、インクジェット印刷装置1全体の動作を制御する。制御部4は、メカ制御部31と、画像処理部(画像処理装置に相当)32と、ヘッド制御部33とを備える。制御部4の各部は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等によってソフトウェア的またはハードウェア的に実現できる。
【0037】
メカ制御部31は、搬送部2を制御して用紙Pを搬送させる。また、メカ制御部31は、ヘッドギャップ調整部23を制御してヘッドギャップHgを調整させる。
【0038】
画像処理部32は、パーソナルコンピュータ等の外部装置から送信されたPDL形式の印刷ジョブデータを処理して、インクジェットヘッド21K,21C,21M,21Yが吐出する各インク色に対応する各色(K,C,M,Y)の吐出データを生成する。各色の吐出データは、各画素に対して吐出する各色のインクのドロップ数を示すデータ(ドロップデータ)である。
【0039】
画像処理部32は、RIP(Raster Image Processor)処理部41と、吐出データ生成部42とを備える。
【0040】
RIP処理部41は、印刷ジョブデータをRIP処理して、R,G,Bの画像データ(印刷画像データに相当)を生成する。このR,G,Bの画像データは、例えば、各色8ビットの256階調のデータである。
【0041】
吐出データ生成部42は、R,G,Bの画像データに基づき、インクジェットヘッド21K,21C,21M,21Yにそれぞれ対応する各インク色(K,C,M,Y)の吐出データを生成する。吐出データ生成部42は、色変換部46と、ハーフトーン処理部47とを備える。
【0042】
色変換部46は、RIP処理部41で生成されたR,G,Bの画像データをC,M,Y,Kの画像データに変換する色変換処理を行う。このC,M,Y,Kの画像データは、例えば、各色8ビットの256階調のデータである。
【0043】
ハーフトーン処理部47は、色変換部46で生成されたC,M,Y,Kの画像データをハーフトーン処理して、各インク色の吐出データを生成する。ハーフトーン処理部47は、例えば、ディザ法によるハーフトーン処理により、吐出データを生成する。ここで、ハーフトーン処理部47は、1画素あたりのインクの最小ドロップ数(最小吐出量に相当)をインクの表面張力に応じて設定した吐出データを生成する。
【0044】
具体的には、ハーフトーン処理部47は、インクの表面張力が小さいインクほど、最小ドロップ数が大きくなるように、各色の吐出データを生成する。すなわち、最小ドロップ数はイエローが最も大きく、以下、マゼンタ、シアン、ブラックの順となる。ハーフトーン処理部47は、インクの表面張力に応じて予め設定された各色のインクの最小ドロップ数を記憶している。各色のインクの最小ドロップ数は、実験等に基づき、インク吐出時のサテライトの発生度合い、および印刷画像における粒状性の悪化度合いに応じて設定される。
【0045】
ヘッド制御部33は、吐出データ生成部42で生成された各色の吐出データに基づき、インクジェットヘッド21K,21C,21M,21Yを駆動させてインクを吐出させる。
【0046】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
【0047】
外部装置から送信された印刷ジョブデータを受信すると、インクジェット印刷装置1は、画像処理部32において、印刷ジョブデータに基づき吐出データを生成する動作を行う。この画像処理部32の動作について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0048】
図4のステップS1において、画像処理部32のRIP処理部41は、印刷ジョブデータをRIP処理して、R,G,Bの画像データを生成する。
【0049】
次いで、ステップS2において、色変換部46は、R,G,Bの画像データをC,M,Y,Kの画像データに変換する色変換処理を行う。
【0050】
次いで、ステップS3において、ハーフトーン処理部47は、C,M,Y,Kの画像データをハーフトーン処理して、各インク色の吐出データを生成する。この際、ハーフトーン処理部47は、1画素あたりの最小ドロップ数をインクの表面張力に応じて設定したハーフトーン処理により、各インク色の吐出データを生成する。
【0051】
ここで、ハーフトーン処理部47は、インクの表面張力が小さいインクほど、最小ドロップ数が大きくなるように、各色のインクの最小ドロップ数を設定する。例えば、各インク色の表面張力が
図3のように設定されているのに対して、ハーフトーン処理部47は、K,C,M,Yの各色のインクの最小ドロップ数の値を、それぞれ1,2,3,4に設定する。そして、ハーフトーン処理部47は、最小ドロップ数を各インク色に対応する値に設定したハーフトーン処理により、各インク色の吐出データを生成する。
【0052】
これにより、ブラックについては、
図5に示すように、ブラックの画像データから、最小ドロップ数を1とする吐出データが生成される。シアンについては、
図6に示すように、シアンの画像データから、最小ドロップ数を2とする吐出データが生成される。マゼンタについては、
図7に示すように、マゼンタの画像データから、最小ドロップ数を3とする吐出データが生成される。イエローについては、
図8に示すように、イエローの画像データから、最小ドロップ数を4とする吐出データが生成される。
【0053】
ここで、
図5〜
図8において、マス目が画素を示している。
図5〜
図8における各インク色の画像データは、8ビットの256階調のデータであり、マス目の中の数字は画素値を示している。また、
図5〜
図8における各色の吐出データは、1画素あたりのインクの最大ドロップ数が7の場合のデータであり、マス目の中の数字は各画素に対するドロップ数を示している。
【0054】
ハーフトーン処理部47のハーフトーン処理による吐出データの生成が終了すると、画像処理部32の一連の動作が終了となる。
【0055】
各色の吐出データが生成された後、ヘッド制御部33は、吐出データに基づき、インクジェットヘッド21K,21C,21M,21Yを駆動させて、搬送部2により搬送される用紙Pにインクを吐出させる。
【0056】
ここで、用紙搬送の開始に先立ち、メカ制御部31は、ヘッドギャップ調整部23によるヘッドギャップHgの調整を行っている。メカ制御部31は、RIP処理部41がRIP処理により取得する用紙種類情報をRIP処理部41から取得し、ヘッドギャップHgをその用紙種類に応じた大きさに調整するようヘッドギャップ調整部23を制御する。
【0057】
ヘッドギャップHgの調整が終了した後、メカ制御部31は、搬送部2の駆動を開始させる。具体的には、メカ制御部31は、駆動ローラ12およびファン17の駆動を開始させる。
【0058】
この後、図示しない給紙部から用紙Pが搬送部2へ給紙されると、搬送面11a上に用紙Pが吸着保持されつつ搬送される。この搬送される用紙Pに対し、インクジェットヘッド21K,21C,21M,21Yからインクが吐出されて画像が印刷される。ここで、上述のように生成された吐出データに基づいてインク吐出が行われるので、1画素あたりの最小ドロップ数を、上述のようにインク色ごとに設定された最小ドロップ数とした印刷が行われる。
【0059】
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、印刷時の明度が高いインクほど、クリアファイル変形抑制性能が高いインクになっている。このため、印刷時の明度が高いインクほど、表面張力が小さくなっている。また、インクジェット印刷装置1では、吐出データ生成部42は、インクの表面張力が小さいインクほど、最小ドロップ数が大きくなるように各色の吐出データを生成する。
【0060】
ここで、表面張力が小さいインクほど、ノズルからのインク吐出時にサテライトが発生しやすい。また、
図5〜
図8の吐出データから分かるように、設定された最小ドロップ数が大きいほど、インク吐出を行う画素数が少なくなる。
【0061】
ところで、
図9(a),(b)に示すように、1画素あたりのドロップ数に関わらず、発生するサテライトの大きさや数は同程度である。このため、インク吐出を行う画素数が少なくなると、発生するサテライトも少なくなる。ここで、
図9(a),(b)は、それぞれ1画素あたりのドロップ数が6,1である場合のサテライトの発生状況を示している。
【0062】
また、設定された最小ドロップ数が大きいほど、1ドロップ等の少ないドロップ数の吐出が行われる画素が少なくなる。
【0063】
ここで、マルチドロップ方式では、1つの画素に複数のインク滴が吐出された場合、それらのインク滴は吐出後に合体して1つのインク滴(主滴)となって飛翔する。すなわち、飛翔する主滴の大きさは、1つの画素に対して吐出されるインクのドロップ数に比例する。そして、飛翔する主滴が小さいほど、主滴自体が用紙Pの搬送気流等に流されて飛散してサテライト化するおそれが大きい。
【0064】
これに対し、設定された最小ドロップ数が大きいほど、少ないドロップ数の吐出が行われる画素が少なくなることで、主滴がサテライト化することが少なくなる。この点からも、設定された最小ドロップ数が大きいほど、サテライトは少なくなる。
【0065】
したがって、インクの表面張力が小さいインクほど、最小ドロップ数を大きく設定することで、サテライトの増加を抑制できる。
【0066】
一方、最小ドロップ数が大きいほど、インク吐出を行う画素数が少なくなることで、印刷画像におけるハイライト部分の粒状性が悪化し、それにより印刷画質が低下するおそれがある。ただし、明度が高いインク色ほど、ドットの視認性が低いため、印刷画像における粒状性の悪化が目立ちにくい。
【0067】
そこで、印刷時の明度が高いインクほど、表面張力が小さく、最小ドロップ数が大きくなるよう設定することで、サテライトの増加を抑制しつつ、印刷画質の低下を軽減できる。
【0068】
また、インクジェット印刷装置1では、印刷時の明度の低いインクほどクリアファイル変形抑制性能を低く抑え、表面張力の低下を抑えているので、表面張力が小さいことによるサテライトの増加を抑制できる。
【0069】
クリアファイル変形抑制性能については、低明度のインクほどクリアファイル変形抑制性能が相対的に低く抑えられる一方、高明度のインクほどクリアファイル変形抑制性能が相対的に高くなるので、装置全体として良好なクリアファイル変形抑制性能を実現できる。
【0070】
したがって、インクジェット印刷装置1によれば、クリアファイル変形抑制性能を有するインクを用いてクリアファイルの変形を抑制する場合でも、サテライトの増加を抑制しつつ、印刷画質の低下を軽減できる。
【0071】
なお、インクの印刷時の明度と表面張力とは無関係としてもよい。このようにしても、インクの表面張力に応じて最小ドロップ数を設定することで、サテライトの増加を抑制できる。
【0072】
また、上述した実施の形態では、インクジェット印刷装置1が複数のインクジェットヘッド21を備える構成について説明したが、インクジェットヘッド21が1つの構成であってもよい。この場合でも、インクの表面張力に応じて最小ドロップ数を設定すればよい。これにより、サテライトの増加を抑制することが可能になる。また、この場合において、インクが印刷時の明度に応じた表面張力を有するように構成してもよい。これにより、印刷時の明度に応じた最小ドロップ数が設定されるので、サテライトの増加を抑制しつつ、粒状性の悪化による印刷画質の低下を軽減することが可能になる。
【0073】
また、上述した実施の形態では、インクジェット印刷装置1が用いるインクが油性インクである場合について説明したが、水性インクであってもよい。
【0074】
水性インクの場合、印刷物がクリアファイルを変形させる不都合は生じないが、印刷物が変形(カール)する現象が生じる。そして、印刷物の変形を抑制するために、水性インクに主溶媒として含まれる水の比率を調整することで、インクの表面張力が低くなり、サテライトが発生しやすくなることがある。
【0075】
そこで、水性インクの場合でも、インクの表面張力に応じて最小ドロップ数を設定することで、サテライトの増加を抑制することが可能になる。また、インクが印刷時の明度に応じた表面張力を有するように構成することで、サテライトの増加を抑制しつつ、粒状性の悪化による印刷画質の低下を軽減することが可能になる。
【0076】
また、印刷条件に応じて、最小ドロップ数を調整するようにしてもよい。例えば、印刷条件としてのヘッド用紙間距離Hpに応じて、各色のインクの最小ドロップ数を調整するようにしてもよい。具体的には、ヘッド用紙間距離Hpが大きいほど、最小ドロップ数を大きくするようにしてもよい。
【0077】
ここで、ヘッド用紙間距離Hpは、
図2に示すように、ノズル面21aと用紙Pとの間の距離である。すなわち、ヘッド用紙間距離Hpは、ヘッドギャップHgから用紙Pの厚さを差し引いたものである。前述のように、ヘッドギャップHgは、ヘッドアタックを防止するために、用紙種類(用紙Pの厚さ等)に応じて調整される。ヘッドギャップHgは、調整部材28の長さ調整により複数段階に調整可能であるが、必ずしもすべての用紙種類に個別の値を設定することはできない。このため、例えば、厚さが近い用紙種類に対して同じ値のヘッドギャップHgが割り当てられることがある。このことから、ヘッド用紙間距離Hpは、用紙種類に応じて異なる。
【0078】
ヘッド用紙間距離Hpが大きいほど、インク滴の飛翔時間が長くなるため、インク滴が気流の影響を受けやすくなる。したがって、ヘッド用紙間距離Hpが大きいほど、インク滴(主滴)の着弾ずれやサテライト化が生じやすい。また、インク滴が小さいほど、気流の影響によるインク滴の着弾ずれやサテライト化が生じやすい。そこで、ヘッド用紙間距離Hpが大きいほど最小ドロップ数を大きくすることで、インク滴の着弾ずれによる印刷画質の低下を軽減できるとともに、サテライトの増加を抑制できる。
【0079】
また、印刷条件として、搬送部2による用紙搬送速度に応じて、各色のインクの最小ドロップ数を調整するようにしてもよい。具体的には、用紙搬送速度が速いほど、最小ドロップ数を大きくするようにしてもよい。
【0080】
ここで、用紙搬送速度は、印刷解像度等に応じて設定されるものである。用紙搬送速度が速いほど、用紙搬送による気流が強くなり、インク滴の着弾ずれやサテライト化が発生しやすい。そこで、用紙搬送速度が速いほど最小ドロップ数を大きくすることで、インク滴の着弾ずれによる印刷画質の低下を軽減できるとともに、サテライトの増加を抑制できる。
【0081】
また、ユーザの指示に基づき、最小ドロップ数を調整するようにしてもよい。これにより、例えば、ユーザがサテライトの抑制を重視したい場合に、最小ドロップ数を大きくするように調整できる。ここで、ユーザによる指示は、例えば、図示しない操作パネルから行えるようにすることができる。
【0082】
また、各色のインクの表面張力と、各色のインクの1画素あたりの最小ドロップ数(最小吐出量)とを関連付けたテーブルを記憶しておき、インクジェット印刷装置1において各インクジェットヘッド21のインクの表面張力を検出し、テーブルを参照して各色のインクの1画素あたりの最小ドロップ数を取得するようにしてもよい。
【0083】
また、上述した実施の形態では、インクジェットヘッド21がマルチドロップ方式である場合で説明したが、これに限らない。インクジェットヘッドは、ノズルから吐出する1画素あたりのインクの吐出量を複数段階で調整可能なものであればよい。例えば、1画素あたりのインクの吐出量を、1回の吐出動作でノズルが吐出するインク滴の大きさにより複数段階で調整可能なものであってもよい。
【0084】
また、上述した実施の形態では、インクジェット印刷装置1において、印刷画像データ(R,G,Bの画像データ)から吐出データを生成したが、パーソナルコンピュータ等の外部装置において、印刷画像データから吐出データを生成する処理を行ってもよい。
【0085】
本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0086】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0087】
(付記1)
インクを吐出するノズルを有し、前記ノズルから吐出する1画素あたりのインクの吐出量を複数段階で調整可能なインクジェットヘッドを備えるインクジェット印刷装置における各画素に対するインクの吐出量を示す吐出データを、印刷画像データに基づき生成する吐出データ生成部を備え、
前記吐出データ生成部は、1画素あたりのインクの最小吐出量をインクの表面張力に応じて設定した吐出データを生成することを特徴とする画像処理装置。
【0088】
(付記2)
付記1に記載の画像処理装置と、
前記インクジェットヘッドとを備え、
前記インクジェットヘッドが前記ノズルから吐出するインクは、印刷時の明度に応じた表面張力を有することを特徴とするインクジェット印刷装置。