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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-202721(P2019-202721A)
(43)【公開日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】回生協調システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20191101BHJP
   B60T 13/122 20060101ALI20191101BHJP
   B60L 7/24 20060101ALI20191101BHJP
【FI】
   B60T8/17 C
   B60T13/122 D
   B60L7/24 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-100474(P2018-100474)
(22)【出願日】2018年5月25日
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 直人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 泰浩
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
5H125
【Fターム(参考)】
3D048BB27
3D048BB57
3D048HH15
3D048HH26
3D048HH53
3D048HH66
3D048HH68
3D048RR01
3D048RR06
3D048RR17
3D048RR35
3D246BA02
3D246DA01
3D246EA05
3D246GA05
3D246GB39
3D246HA03A
3D246HA43A
3D246HA64A
3D246JB03
3D246JB06
3D246JB32
3D246JB35
3D246LA04Z
3D246LA33Z
3D246LA52Z
5H125AA01
5H125AC12
5H125CB02
5H125CB07
5H125CB08
5H125EE44
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】ブレーキフィーリングの悪化を抑制しつつ、すり替え制御における回生効率を向上させることができる回生協調システムを提供する。
【解決手段】本発明は、ブレーキペダル11に連結されたマスタピストン13c、13dと、液圧制動力を増大させるに際してマスタ室13a、13b内のブレーキ液を吸引するアクチュエータ5と、制動中に車両の車速が所定の開始車速になった場合に、車輪Wに付与する制動力を回生制動力から液圧制動力にすり替えるすり替え制御を開始する制御部61と、すり替え制御の開始車速を、操作判定部62によりブレーキペダル11が操作状態であると判定されている場合、通常開始車速に設定し、操作判定部62によりブレーキペダル11が非操作状態であると判定されている場合、通常開始車速より小さい補正開始車速に設定する補正部63と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルに連結されたマスタピストンと、前記ブレーキペダルの操作により前記マスタピストンが駆動することでマスタ室にマスタ圧が発生するマスタシリンダと、液圧制動力を増大させるに際して前記マスタ室内のブレーキ液を吸引し、吸引した前記ブレーキ液をホイールシリンダに供給するアクチュエータと、を備え、車両の車輪に前記液圧制動力及び回生制動力の少なくとも一方を付与する回生協調システムにおいて、
制動中に前記車両の車速が所定の開始車速になった場合に、前記車輪に付与する制動力を前記回生制動力から前記液圧制動力にすり替えるすり替え制御を開始する制御部と、
前記ブレーキペダルの操作状態を判定する操作判定部と、
前記操作判定部により前記ブレーキペダルが操作状態であると判定されている場合、前記すり替え制御の開始車速を通常開始車速に設定し、前記操作判定部により前記ブレーキペダルが非操作状態であると判定されている場合、前記すり替え制御の開始車速を前記通常開始車速より小さい補正開始車速に設定する補正部と、
を備える回生協調システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記開始車速が前記補正開始車速に設定された制動状況で、前記車両の車速が前記通常開始車速未満であり且つ前記補正開始車速より大きい場合であっても、前記操作判定部により前記ブレーキペダルが操作状態であると判定された場合、前記開始車速にかかわらず前記操作判定部の判定に連動して前記すり替え制御を開始する請求項1に記載の回生協調システム。
【請求項3】
前記マスタ室に接続され、前記ブレーキ液を貯留するリザーバを備え、
前記マスタピストンは、前記ブレーキペダルのストロークが所定値以上である場合に前記マスタ室と前記リザーバとの間を遮断するように構成され、
前記制御部は、前記開始車速にかかわらず前記操作判定部の判定に連動して前記すり替え制御を開始するに際して、前記マスタ室と前記リザーバとの間が遮断されていると判定していない場合、前記マスタ室と前記リザーバとの間が遮断されていると判定している場合よりも、前記すり替え制御の開始から所定期間における前記回生制動力の低下勾配を大きくする請求項2に記載の回生協調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回生協調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回生協調システムは、ブレーキ操作や車速に応じて、回生制動力を極力利用しつつ液圧制動力と回生制動力の合計が目標の制動力となるように協調制御を実行するシステムである。液圧制動力の調整は、例えばアクチュエータによってホイールシリンダ内の液圧(ホイール圧)が調整されることで行われる。アクチュエータは、マスタシリンダのマスタ室内のブレーキ液を吸引し、吸引したブレーキ液をホイールシリンダに供給することで、ホイール圧を加圧する。ここで、例えば特開2014−61794号公報に記載の車両用制動装置のように、マスタピストンの移動とブレーキペダルの移動とが機械的に連動する構成では、マスタ室内のブレーキ液の吸引により、ブレーキペダルの吸い込み(ストローク増大)が発生する。回生協調制御では、制動力を回生制動力から液圧制動力にすり替えるすり替え制御を実行する際、運転者がブレーキペダルの吸い込みを感じにくくなるように、回生制動力の低下勾配(すり替え勾配)を所定勾配以下に制御している。これにより、ブレーキフィーリングの悪化が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−61794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記車両用制動装置では、ブレーキペダルの吸い込みを考慮する分、すり替え制御における回生効率が低下する。つまり、上記車両用制動装置には、すり替え制御における回生効率の面で改良の余地がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、ブレーキフィーリングの悪化を抑制しつつ、すり替え制御における回生効率を向上させることができる回生協調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の回生協調システムは、ブレーキペダルに連結されたマスタピストンと、前記ブレーキペダルの操作により前記マスタピストンが駆動することでマスタ室にマスタ圧が発生するマスタシリンダと、液圧制動力を増大させるに際して前記マスタ室内のブレーキ液を吸引し、吸引した前記ブレーキ液をホイールシリンダに供給するアクチュエータと、を備え、車両の車輪に前記液圧制動力及び回生制動力の少なくとも一方を付与する回生協調システムにおいて、制動中に前記車両の車速が所定の開始車速になった場合に、前記車輪に付与する制動力を前記回生制動力から前記液圧制動力にすり替えるすり替え制御を開始する制御部と、前記ブレーキペダルの操作状態を判定する操作判定部と、前記操作判定部により前記ブレーキペダルが操作状態であると判定されている場合、前記すり替え制御の開始車速を通常開始車速に設定し、前記操作判定部により前記ブレーキペダルが非操作状態であると判定されている場合、前記すり替え制御の開始車速を前記通常開始車速より小さい補正開始車速に設定する補正部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブレーキペダルの操作によらない制動状況では、すり替え制御の実行タイミングが、ブレーキペダルの操作による制動状況よりも遅くなり、すり替え制御における回生制動力の低下勾配及び液圧制動力の増大勾配は大きくなる。つまり、アクチュエータの性能(増圧能力)を極力活かして、最大回生制動力の発生期間を長くすることができ、回生効率を向上させることができる。また、ドライバがブレーキペダルを操作していないため、液圧制動力の増大勾配の変更によってもブレーキフィーリングに影響が出ることはない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態の車両用制動装置の構成図である。
図2】本実施形態のすり替え制御の流れを示すタイムチャートである。
図3】本実施形態のすり替え制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない。本実施形態の回生協調システム1は、図1に示すように、ワンペダル10と、ブレーキペダル11と、倍力装置12と、マスタシリンダ13と、リザーバ14、ブレーキスイッチ15と、ストロークセンサ16と、アクチュエータ5と、ブレーキECU6と、ホイールシリンダ541〜544と、回生制動装置8と、を備えている。
【0010】
ワンペダル10は、ブレーキペダル11とは別個のペダルであって、1つのペダルでアクセルペダルとブレーキペダルの機能を有するものである。ワンペダル10は、ドライバの自身への操作状況をブレーキECU6に送信する。ワンペダル10は、例えば、ペダルを踏むと車両が加速し、ペダルを戻すと(例えばストロークが所定ストローク以下となるように戻すと)車両が減速し、ペダルを初期位置に戻すと設定された最大限の制動が実行されるように構成されている。ブレーキペダル11は、ドライバがブレーキ操作可能な操作部材である。ブレーキスイッチ15は、ブレーキペダル11の踏み込みの有無(操作の有無)を検出するセンサである。ブレーキスイッチ15は、ブレーキストップスイッチとも呼ばれる。ブレーキスイッチ15は、検出信号をブレーキECU6に出力する。
【0011】
倍力装置12は、エンジンの吸気負圧を利用してブレーキ操作力を助勢するバキュームブースタである。マスタシリンダ13は、運転者によるブレーキペダル11の操作力をマスタ圧に変換し、そのマスタ圧を、アクチュエータ5を介してホイールシリンダ541〜544に供給する装置である。マスタシリンダ13は、ブレーキペダル11の操作に応じたマスタ圧を発生させる第1マスタ室13aおよび第2マスタ室13bを備えている。マスタシリンダ13は、第1マスタ室13aと第2マスタ室13bとに同一の液圧が形成されるように構成されている。すなわち、第1マスタ室13aは、第1マスタピストン13cと第2マスタピストン13dとの間に形成され、第2マスタ室13bは、第2マスタピストン13dとマスタシリンダ13の底部との間に形成されている。第1マスタピストン13cと第2マスタピストン13dとの間には、第1スプリング13eが介装され、第2マスタピストン13dとマスタシリンダ13の底部との間には、第2スプリング13fが介装されている。
【0012】
リザーバ14は、ブレーキ液を貯蔵してマスタシリンダ13にそのブレーキ液を補給するための部材である。換言すると、ブレーキ液を貯留する部材であって、マスタ室13a、13bに接続されている。マスタ室13a、13bとリザーバ14とは、初期状態で連通し、マスタピストン13c、13dのストロークが所定値以上となることにより遮断される。つまり、マスタピストン13c、13dは、ブレーキペダル11のストロークが所定値以上である場合にマスタ室13a、13bとリザーバ14との間を遮断するように構成されている。
【0013】
マスタピストン13c、13dは、倍力装置12を介して、ブレーキペダル11と機械的に連結されている。マスタピストン13c、13dの移動とブレーキペダル11の移動とは、機械的に連動している。マスタ圧の変動によりマスタピストン13c、13dが移動すると、何の電子制御もなく、構造的にブレーキペダル11も移動する。つまり、本構成は、バイワイヤ構成ではない。例えばマスタ圧が低下しマスタピストン13c、13dが前進するとブレーキペダル11も前進する。ストロークセンサ16は、ブレーキペダル11の操作量(ストローク)を検出するセンサである。ストロークセンサ16は、検出信号をブレーキECU6に出力する。
【0014】
アクチュエータ5は、マスタ圧が発生する第1マスタ室13a及び第2マスタ室13bと、ホイールシリンダ541〜544の間に配置されている。アクチュエータ5と第1マスタ室13aとは管路31により接続され、アクチュエータ5と第2マスタ室13bは管路32により接続されている。アクチュエータ5は、ブレーキECU6の指示に応じて、ホイールシリンダ541〜544の液圧(ホイール圧)を調整する装置である。アクチュエータ5は、ブレーキECU6の指令に応じて、ブレーキ液をマスタ圧からさらに加圧する加圧制御、ホイール圧を減圧する減圧制御、及びホイール圧を保持する保持制御を実行する。また、アクチュエータ5は、マスタ圧をそのままホイールシリンダ541〜544に供給する増圧制御も実行可能である。アクチュエータ5は、ブレーキECU6の指令に基づき、アンチスキッド制御(ABS制御)、横滑り防止制御(ESC制御)、又はブレーキアシスト制御(BA制御)等を実行する。
【0015】
具体的に、アクチュエータ5は、油圧回路5Aと、電気モータ90と、を備えている。油圧回路5Aは、第1配管系統50aと、第2配管系統50bと、を備えている。第1配管系統50aは、後輪Wrl、Wrrに加えられる液圧(ホイール圧)を制御する系統である。第2配管系統50bは、前輪Wfl、Wfrに加えられる液圧(ホイール圧)を制御する系統である。また、各車輪W(車輪の符号をまとめて「W」とする)に対して、車輪速度センサ73が設置されている。本実施形態では前後配管が採用されている。なお、配管構成はX配管であっても良い。
【0016】
第1配管系統50aは、主管路(「油路」に相当する)Aと、差圧制御弁51と、保持弁52、53と、減圧管路Bと、減圧弁54、55と、調圧リザーバ56と、還流管路Cと、ポンプ57と、補助管路Dと、オリフィス部58と、ダンパ部59と、圧力センサ71と、を備えている。説明において、「管路」の用語は、例えば液圧路、流路、油路、通路、又は配管等に置換可能である。
【0017】
主管路Aは、管路32とホイールシリンダ541、542とを接続する管路である。つまり、主管路A(及び管路32)は、マスタシリンダ13(第2マスタ室13b)とホイールシリンダ541、542とを接続している。差圧制御弁51は、主管路Aに設けられ、主管路Aを開状態(指示圧=0)と差圧状態(指示圧>0)に制御する電磁弁である。差圧状態は、絞り状態ともいえる。差圧制御弁51は、ブレーキECU6からの指示圧(制御電流)に応じて、自身よりもマスタシリンダ13側の液圧と自身よりもホイールシリンダ541、542側の液圧との差圧を制御する。つまり、差圧制御弁51は、マスタシリンダ13とホイールシリンダ541〜544との液圧の差を調整可能な電磁弁である。差圧制御弁51は、自身よりホイールシリンダ541〜544側の液圧を自身よりマスタ室13a、13b側の液圧よりも指示圧分だけ高く制御可能な弁である。
【0018】
差圧制御弁51には、マスタシリンダ13側(上流側)からホイールシリンダ541〜544側(下流側)への流通を許可し、その反対の流通は禁止する逆止弁51aが設置されている。また、主管路Aは、ホイールシリンダ541、542に対応するように、差圧制御弁51の下流側の分岐点Xで2つの管路A1、A2に分岐している。
【0019】
保持弁52、53は、ブレーキECU6の指示により開閉する電磁弁であって、非通電状態で開状態(連通状態)となるノーマルオープンタイプの電磁弁である。保持弁52は管路A1に配置され、保持弁53は管路A2に配置されている。保持弁52、53は、増圧制御時に非通電状態で開状態となってホイールシリンダ541、542と分岐点Xと連通させ、保持制御及び減圧制御時に通電されて閉状態となりホイールシリンダ541、542と分岐点Xとを遮断する。保持弁52、53は、オンオフ弁(2値制御弁)であっても、分岐点X側をホイールシリンダ541、542側より指示圧分だけ高く制御可能なリニア弁であっても良い。
【0020】
減圧管路Bは、管路A1における保持弁52とホイールシリンダ541との間と調圧リザーバ56とを接続し、管路A2における保持弁53とホイールシリンダ542との間と調圧リザーバ56とを接続する管路である。減圧弁54、55は、ブレーキECU6の指示により開閉する電磁弁であって、非通電状態で閉状態(遮断状態)となるノーマルクローズタイプの電磁弁である。減圧弁54は、ホイールシリンダ541側の減圧管路Bに配置されている。減圧弁55は、ホイールシリンダ542側の減圧管路Bに配置されている。減圧弁54、55は、主に減圧制御時に通電されて開状態となり、減圧管路Bを介してホイールシリンダ541、542と調圧リザーバ56とを連通させる。調圧リザーバ56は、シリンダ、ピストン、及び付勢部材を有するリザーバである。
【0021】
還流管路Cは、減圧管路B(又は調圧リザーバ56)と、主管路Aにおける差圧制御弁51と保持弁52、53の間(ここでは分岐点X)とを接続する管路である。ポンプ57は、吐出ポートが分岐点X側で吸入ポートが調圧リザーバ56側に配置されるように、還流管路Cに設けられている。ポンプ57は、電気モータ90によって駆動される電動ポンプである。ポンプ57は、還流管路Cを介して、ブレーキ液を主管路Aのうち差圧制御弁51よりもホイールシリンダ541、542側の部分(本実施形態では分岐点X)に吐出する。また、ポンプ57は、例えばアンチスキッド制御の際、開状態の減圧弁54、55を介して、ホイールシリンダ541、542内のブレーキ液をマスタシリンダ13に汲み戻す。このように、ポンプ57は、マスタシリンダ13とホイールシリンダ541、542との間に配置され、ホイールシリンダ541、542内のブレーキ液をホイールシリンダ541、542外に吐出することができる。オリフィス部58及びダンパ部59は、脈動を低減する脈動低減機構である。
【0022】
補助管路Dは、調圧リザーバ56の調圧孔56aと、主管路Aにおける差圧制御弁51よりも上流側(又はマスタシリンダ13)とを接続する管路である。調圧リザーバ56は、ストローク増加による調圧孔56aへのブレーキ液の流入量増加に伴い、弁孔56bが閉塞されるように構成されている。弁孔56bの管路B、C側にはリザーバ室56cが形成される。
【0023】
ポンプ57の駆動により、調圧リザーバ56又はマスタシリンダ13内のブレーキ液が、還流管路Cを介して主管路Aにおける差圧制御弁51と保持弁52、53の間の部分(分岐点X)に吐出される。そして、差圧制御弁51及び保持弁52、53の制御状態に応じて、ホイール圧が加圧される。このようにアクチュエータ5では、ポンプ57の駆動と各種弁の制御により加圧制御が実行される。圧力センサ71は、マスタ圧を検出するセンサである。圧力センサ71は、ブレーキECU6に検出結果を送信する。
【0024】
第2配管系統50bは、第1配管系統50aと同様の構成であって、前輪Wfl、Wfrのホイールシリンダ543、544の液圧を調整する系統である。第2配管系統50bは、主管路Aに相当し管路31とホイールシリンダ543、544とを接続する主管路Abと、差圧制御弁51に相当する差圧制御弁91と、保持弁52、53に相当する保持弁92、93と、減圧管路Bに相当する減圧管路Bbと、減圧弁54、55に相当する減圧弁94、95と、調圧リザーバ56に相当する調圧リザーバ96と、還流管路Cに相当する還流管路Cbと、ポンプ57に相当するポンプ97と、補助管路Dに相当する補助管路Dbと、オリフィス部58に相当するオリフィス部58aと、ダンパ部59に相当するダンパ部59aと、を備えている。第2配管系統50bの詳細構成については、第1配管系統50aの説明を参照できるため、説明を省略する。
【0025】
ここで、ホイールシリンダ541に対する制御を例にブレーキECU6による各制御状態について簡単に説明すると、制御のない状態では、差圧制御弁51及び保持弁52が開状態となり、減圧弁54が閉状態となって、マスタ圧がホイールシリンダ541に供給される。減圧制御では、保持弁52が閉状態となり、減圧弁54が開状態となる。保持制御では、保持弁52及び減圧弁54が閉状態となる。また、保持制御は、保持弁52を閉じず、減圧弁54を閉じ、差圧制御弁51を絞ることでも実行できる。加圧制御では、差圧制御弁51が差圧状態(絞り状態)となり、保持弁52が開状態となり、減圧弁54が閉状態となり、ポンプ57が駆動する。
【0026】
このように、回生協調システム1は、ブレーキペダル11に対して機械的に連結されたマスタピストン13c、13dと、ブレーキペダル11の操作によりマスタピストン13c、13dが駆動することでマスタ室13a、13bにマスタ圧が発生するマスタシリンダ13と、液圧制動力を増大させるに際してマスタ室13a、13b内のブレーキ液を吸引し、吸引したブレーキ液をホイールシリンダ541〜544に供給するアクチュエータ5と、を備え、車両の車輪Wに液圧制動力及び回生制動力の少なくとも一方を付与するシステム(インライン回生システム)である。
【0027】
ブレーキECU6は、CPUやメモリ等を備える電子制御ユニットである。ブレーキECU6には、通信線(図示略)により、ブレーキスイッチ15、ストロークセンサ16、圧力センサ71及び車輪速度センサ73等の各種センサが接続されている。ブレーキECU6は、これら各種センサの検出結果に基づき、アクチュエータ5の作動が必要か否かを判定する。ブレーキECU6は、アクチュエータ5の作動が必要であると判定した場合、各ホイールシリンダ541〜544に対してホイール圧の目標値である目標ホイール圧を演算し、アクチュエータ5を制御する。目標ホイール圧は、目標液圧制動力に対応する。ブレーキECU6は、圧力センサ71の検出値と差圧制御弁51の制御状態に基づいてマスタ圧(上流の液圧)を演算することができ、また圧力センサ71の検出値と保持弁52、53及び減圧弁54、55の制御状態に基づいてホイール圧(下流の液圧)を演算することができる。
【0028】
回生制動装置8は、車輪Wに回生制動力を発生させる装置であって、図示しない発電機、インバータ、モータ、及びハイブリッドECU等により構成されている。ブレーキECU6は、回生制動装置8との間で回生協調制御を実行する。回生制動装置8は、前輪又は後輪に対して回生制動力を付与するように構成されている。回生協調制御では、回生効率が考慮された中、回生制動力と液圧制動力との合計が目標制動力となるように、目標回生制動力と目標液圧制動力が設定される。目標回生制動力及び目標液圧制動力の変化勾配は、結果として回生制動力及び液圧制動力の変化勾配に反映される。
【0029】
<すり替え制御>
ブレーキECU6は、機能として、制御部61と、操作判定部62と、補正部63と、を備えている。制御部61は、制動中に前記車両の車速が所定の開始車速になった場合に、車輪Wに付与する制動力を回生制動力から液圧制動力にすり替えるすり替え制御を開始するように構成されている。操作判定部62は、ブレーキスイッチ15、ストロークセンサ16、及び/又は圧力センサ71の検出結果に基づいて、ブレーキペダル11の操作状況を判定するように構成されている。補正部63は、操作判定部62によりブレーキペダル11が非操作状態であると判定されている場合、操作判定部62によりブレーキペダル11が操作状態であると判定されている場合よりも、すり替え制御の開始車速を小さくするように構成されている。つまり、補正部63は、ブレーキペダル11が操作されていない状態で車両が制動されている場合、すり替え制御の開始車速が小さくなるように、ブレーキペダル11が操作されている際に用いられる予め設定された開始車速(通常開始車速)を補正する。
【0030】
より詳細に、補正部63は、操作判定部62によりブレーキペダル11が操作状態であると判定されている場合、すり替え制御の開始車速を「通常開始車速」に設定し、操作判定部62によりブレーキペダル11が非操作状態であると判定されている場合、すり替え制御の開始車速を通常開始車速より小さい「補正開始車速」に設定する。換言すると、補正部63は、ブレーキペダル11の操作により回生制動力が発生している状態では開始車速を通常開始車速に設定し、ブレーキペダル11の操作が為されておらず且つ回生制動力が発生している状態では開始車速を補正開始車速に設定する(通常開始車速>補正開始車速)。例えばワンペダル10の操作により制動力が発生している状況では、すり替え制御の開始車速として補正開始車速が設定される。
【0031】
このように、本実施形態によれば、ブレーキペダル11の操作により制動が開始され回生制動力が発生している状況、より詳細には通常開始車速より大きい車速で車両が走行している際にブレーキペダル11が操作された状況(以下「通常制動状況」という)では、すり替え制御の開始車速が通常開始車速に設定される。また、ブレーキペダル11の操作によらず制動が開始され回生制動力が発生している状況、より詳細には通常開始車速より大きい車速で車両が走行している際にブレーキペダル11が操作されておらず且つ回生制動力が発生している状況(以下「非操作制動状況」という)では、すり替え制御の開始車速が補正開始車速に設定される。
【0032】
図2に実線で示す「第1制動状況」のように、非操作制動状況では、すり替え制御の実行タイミング(t3)が、通常制動状況(破線参照)での実行タイミング(t2)よりも遅くなり、すり替え制御における目標回生制動力の低下勾配及び目標液圧制動力の増大勾配は大きくなる(t4〜t5)。つまり、アクチュエータ5の性能(増圧能力)を極力活かして、最大回生制動力の発生期間(例えば回生制動力のみで目標制動力を達成する期間)を長くすることができ、回生効率を向上させることができる。また、目標液圧制動力の増大勾配が大きくなることにより、ブレーキペダル11の吸い込みが発生するが、運転者がブレーキペダル11を操作していないため、ブレーキフィーリングに影響が出ることはない。第1制動状況のt2〜t4においてブレーキペダル11が操作された場合、後述する第2制動状況又は第3制動状況でのすり替え制御が実行され、第1制動状況のt3〜t5においてブレーキペダル11が操作された場合、すり替え制御に変更はない。
【0033】
図2に一点鎖線で示す「第2制動状況」のように、制御部61は、開始車速が補正開始車速に設定された制動状況で、車速が通常開始車速未満であり且つ補正開始車速より大きい際(t2〜t4)に、操作判定部62によりブレーキペダル11が操作状態であると判定された場合、設定された開始車速にかかわらず、操作判定部62の判定に連動してすり替え制御を開始する(t3)。つまり、制御部61は、車速が通常開始車速未満であり且つ補正開始車速より大きい場合であっても、操作判定部62の判定に応じてすり替え制御を開始する。これによれば、目標回生制動力の低下勾配及び目標液圧制動力の増大勾配は、開始車速が通常開始車速である場合よりも大きくなるが、開始車速が補正開始車速である場合よりも小さくなる。つまり、急遽ブレーキペダル11が操作された場合でも、ブレーキペダル11の吸い込みの発生を極力抑制することができる。
【0034】
さらに詳細には、第2制動状況におけるt2〜t4の期間において、操作判定部62によりブレーキペダル11が操作状態であると判定された場合、制御部61は、マスタ室13a、13bとリザーバ14との間が遮断されているか否か(遮断状態であるか否か)を判定する。制御部61は、例えば、ストロークセンサ16の検知結果に基づいて、操作状態と判定された際のストロークの増大勾配が、所定勾配以上である場合に遮断状態と判定し、所定勾配未満である場合に連通状態と判定する。また、制御部61は、判定不能の場合には遮断状態と判定する。制御部61は、遮断状態と判定した場合、上記第2制動状況でのすり替え制御を実行する。
【0035】
一方、制御部61は、図2に二点鎖線で示す「第3制動状況」のように、マスタ室13a、13bとリザーバ14との間が遮断されていると判定していない場合(すなわち連通状態と判定している場合)、マスタ室13a、13bとリザーバ14との間が遮断されていると判定している場合よりも、すり替え制御の開始から所定期間における回生制動力の低下勾配を大きくする(t3)。制御部61は、第3制動状況では、通常制動状況のすり替え制御に近づけるために、t3において回生制動力(目標回生制動力)を通常制動状況におけるt3での回生制動力にまで高勾配で低下させ、その後、低下勾配を通常制動状況と同じにする。制御部61は、回生制動力を高勾配で低下させるにあたり、目標液圧制動力を高勾配で増大させる。すり替え勾配が高勾配となる期間、すなわち所定期間は、通常制動状況に合わせる制御であるか否か又はアクチュエータ5の増圧性能によって決めることができる。
【0036】
第3制動状況でのすり替え制御では、t3においてマスタ室13a、13bとリザーバ14との間が連通しており、アクチュエータ5によりマスタ室13a、13bからブレーキ液が吸収されても、リザーバ14からマスタ室13a、13bにブレーキ液が供給されるため、ブレーキペダル11の吸い込みは生じない。したがって、この連通状態において、通常制動状況より遅れて開始されたすり替え制御を、通常制動状況と同じようなブレーキフィーリングへの影響が小さいすり替え制御に切り替えることができる。
【0037】
ここで、本実施形態のブレーキECU6によるすり替え制御の流れの一例について、図3を参照して説明する。制動が開始されると、当該制動がブレーキペダル11の操作以外によるものか否かが判定される(S101)。制動がブレーキペダル11の操作によるものと判定された場合(S101:No)、通常制動状況でのすり替え制御が実行される(S102)。一方、制動がブレーキペダル11の操作以外によるもの(例えばワンペダル10の操作によるもの)と判定された場合(S101:Yes)、すり替え制御の開始車速が通常開始車速から補正開始車速に変更される(S103)。
【0038】
その後、ブレーキペダル11の操作が検出されると(S104:Yes)、検出時の車速が通常開始車速未満で(S105:Yes)且つ補正開始車速以上である場合(S106:Yes)、マスタ室13a、13bとリザーバ14との間が遮断されているか否かが判定される(S107)。両者間が遮断状態であると判定された場合(S107:Yes)、第2制動状況でのすり替え制御が実行される(S108)。
【0039】
一方、ブレーキペダル11の操作検出時の車速が通常開始車速以上である場合(S105:No)、通常制動状況でのすり替え制御が実行される(S109)。また、ブレーキペダル11の操作検出時の車速が補正開始車速未満である場合(S106:No)、何も変更なく、現在のすり替え制御が継続される(S110)。また、マスタ室13a、13bとリザーバ14との間が連通状態である場合(S107:No)、第3制動状況でのすり替え制御が実行される(S111)。このように、本実施形態によれば、ブレーキフィーリングへの影響を抑えつつ、回生効率を向上させることができる。
【0040】
<その他>
本発明は、上記実施形態に限られない。例えば、ブレーキペダル11の操作によらず回生制動力が発生している状態は、ワンペダル10の操作以外に、例えば自動ブレーキ制御時などに生じる。ブレーキECU6は、ワンペダル10の操作の有無に加え、自動ブレーキ制御の実行の有無も把握することができる。また、倍力装置12はなくても良い。
【符号の説明】
【0041】
1…回生協調システム、10…ワンペダル、11…ブレーキペダル、13…マスタシリンダ、13a、13b…マスタ室、13c、13d…マスタピストン、5…アクチュエータ、541〜544…ホイールシリンダ、6…ブレーキECU、61…制御部、62…操作判定部、63…補正部。
図1
図2
図3