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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-202981(P2019-202981A)
(43)【公開日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】レボセチリジン固形製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/495 20060101AFI20191101BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20191101BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20191101BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20191101BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20191101BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20191101BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20191101BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20191101BHJP
   C07D 295/088 20060101ALN20191101BHJP
【FI】
   A61K31/495
   A61K47/36
   A61K47/40
   A61K9/16
   A61P37/08
   A61P11/02
   A61P17/04
   A61K47/02
   C07D295/088
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-108138(P2018-108138)
(22)【出願日】2018年5月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000169880
【氏名又は名称】高田製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石黒 紘規
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智裕
(72)【発明者】
【氏名】澤井 宏和
(72)【発明者】
【氏名】本江 彩
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076BB01
4C076CC10
4C076CC18
4C076DD30Q
4C076DD30T
4C076DD43
4C076DD55T
4C076EE30Q
4C076EE30T
4C076EE39Q
4C076EE39T
4C076FF36
4C076FF52
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA03
4C086NA09
4C086ZA59
4C086ZA89
4C086ZB13
(57)【要約】
【課題】本発明は、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する固形製剤の提供、特に、保存時の安定性に優れた固形製剤の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の固形製剤は、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、粉末還元麦芽糖水アメと、アルカリ金属水酸化物とを含む。レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩をレボセチリジンとして0.05〜5質量%含み、粉末還元麦芽糖水アメを45〜97質量%、アルカリ金属水酸化物を0.05〜2質量%含むことが好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、粉末還元麦芽糖水アメと、アルカリ金属水酸化物とを含む、レボセチリジン固形製剤。
【請求項2】
レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩をレボセチリジンとして0.05〜5質量%含み、粉末還元麦芽糖水アメを45〜97質量%含み、アルカリ金属水酸化物を0.05〜2質量%含む、請求項1に記載のレボセチリジン固形製剤。
【請求項3】
さらにシクロデキストリンを含有する、請求項1または2に記載のレボセチリジン固形製剤。
【請求項4】
顆粒製剤である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のレボセチリジン固形製剤。
【請求項5】
ドライシロップ剤である、請求項4に記載のレボセチリジン固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分としてレボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩を含有する固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー性鼻炎、蕁麻疹等に対する治療薬として、レボセチリジン塩酸塩(Levocetirizine hydrochloride)が知られている。レボセチリジン塩酸塩を含む製剤としては、現在、錠剤およびシロップ剤が販売されているが、小児や高齢者であっても服用しやすい口腔内速崩壊錠や、ドライシロップ剤等の開発も望まれる。
一般に、口腔内速崩壊錠やドライシロップ剤は、服用時に原薬の味を感じやすいため、苦味等の不快な味を有する原薬の口腔内速崩壊錠やドライシロップ剤には、苦味を抑制する成分が配合されることが多い。そのような成分としては、清涼感や適度な甘みを有するD−マンニトールが広く使用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−125001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、レボセチリジン塩酸塩の製剤にD−マンニトールを配合した場合には、保存時の安定性が低下する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、保存時の安定性に優れたレボセチリジン固形製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩を含有するレボセチリジン固形製剤(以下、単に固形製剤という場合がある。)において、粉末還元麦芽糖水アメを用い、さらに、アルカリ金属水酸化物を配合することにより、甘味が付与され味の良い固形製剤となるとともに、これらの成分が製剤保存時における未知の類縁物質(構造が未知の不純物)の生成を抑制する抑制剤として作用し、安定性に優れる固形製剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は以下の態様を有する。
〔1〕レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、粉末還元麦芽糖水アメと、アルカリ金属水酸化物とを含む、レボセチリジン固形製剤。
〔2〕レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩をレボセチリジンとして0.05〜5質量%含み、粉末還元麦芽糖水アメを45〜97質量%含み、アルカリ金属水酸化物を0.05〜2質量%含む、〔1〕に記載のレボセチリジン固形製剤。
〔3〕さらにシクロデキストリンを含有する、〔1〕または〔2〕に記載のレボセチリジン固形製剤。
〔4〕顆粒製剤である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のレボセチリジン固形製剤。
〔5〕ドライシロップ剤である、〔4〕に記載のレボセチリジン固形製剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保存時の安定性に優れたレボセチリジン固形製剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のレボセチリジン固形製剤は、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、粉末還元麦芽糖水アメと、アルカリ金属水酸化物とを含む。
【0010】
レボセチリジンの薬学的に許容される塩としては、塩酸塩等が挙げられ、なかでもレボセチリジン二塩酸塩が好ましい。
固形製剤100質量%中のレボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩の含有量は、特に制限はなく、固形製剤の剤形等に応じて適宜設定できるが、レボセチリジンとして、0.05〜5質量%が好ましい。固形製剤がたとえば顆粒製剤の場合には、なかでも0.05〜2質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましく、0.2〜0.7質量%がさらに好ましい。
【0011】
粉末還元麦芽糖水アメは、医薬品用の市販品を使用できる。粉末還元麦芽糖水アメの含有量は、固形製剤100質量%中、45〜97質量%が好ましく、後述するその他の添加剤の使用割合や剤形等に応じて、適宜設定できる。顆粒製剤の場合には70〜97質量%が好ましい。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましい。固形製剤100質量%中の水酸化ナトリウムの含有量は、特に制限はないが、0.05〜2質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましく、0.05〜0.2質量%がさらに好ましい。
粉末還元麦芽糖水アメおよびアルカリ金属水酸化物の含有量が上記範囲内であれば、経時的な類縁物質の増加を抑制し、保存時の安定性により優れた固形製剤とすることができる。また、十分な甘みが付与され、固形製剤の味が良くなる。
【0012】
本発明の固形製剤は、粉末還元麦芽糖水アメおよびアルカリ金属水酸化物以外の1種以上の添加剤を含有してもよい。添加剤は、固形製剤の剤形等に応じて、適宜選択できる。
【0013】
添加剤としては、白糖、トレハロース、フルクトース、キシロース、マルトース、乳糖水和物、無水乳糖、ブドウ糖、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール等の糖または糖アルコール;β−シクロデキストリン、アスコルビン酸、アスパルテーム、エリスリトール、キシリトール、クエン酸水和物、グリチルリチン酸モノアンモニウム、スクラロース、l−メントール等の矯味剤;結晶セルロース、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、リン酸水素カルシウム等の賦形剤;セルロース系崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、カルメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等。)、クロスポビドン、デンプン系崩壊剤(トウモロコシデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ等。)等の崩壊剤;クエン酸塩、リンゴ酸塩、リン酸塩等の安定化剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、フマル酸ステアリルナトリウム等の滑沢剤;ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ステアリルアルコール、アンモニオメタクリレート・コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等の結合剤;黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、カラメル等の着色剤、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80等の界面活性剤;等が挙げられる。また、酸化チタン、カルナウバロウ等の添加剤や香料等も挙げられる。
【0014】
添加剤のうち、矯味剤の含有量は、固形製剤100質量%中、1〜20質量%が好ましく、10〜18質量%がより好ましい。矯味剤としては、β−シクロデキストリンを用いると、固形製剤の安定性がより向上する傾向がある点で好ましい。
一方、上記添加剤のうちマンニトールは、固形製剤の保存時の安定性の点からは、使用しないことが好ましい。
【0015】
本発明のレボセチリジン固形製剤としては、普通錠、口腔内速崩壊錠、顆粒製剤、散剤、チュアブル錠等が挙げられる。これらのいずれの剤形においても、粉末還元麦芽糖水アメとアルカリ金属水酸化物を配合することにより、安定性に優れた固形製剤とすることができる。また、顆粒製剤の場合、そのまま服用してもよいが、水へ懸濁して服用する形態、すなわち、ドライシロップ剤とすることも好適である。本発明の顆粒製剤は、そのまま服用しても、水に懸濁して服用しても、良好な味を呈する。
【0016】
本発明の固形製剤の製造方法は、レボセチリジンまたはその薬学的に許容される塩と、粉末還元麦芽糖水アメとアルカリ金属水酸化物とを含む固形製剤を製造できる方法であれば特に制限はなく、剤形に応じた公知の製法により製造できる。
たとえば顆粒製剤の場合には、乾式造粒法、湿式造粒法等の公知の造粒工程を用いた製法が挙げられ、使用する添加剤の種類等に応じて適宜選択できる。
また、普通錠、口腔内速崩壊錠等の錠剤の場合には、上記に記載したような造粒工程を経て得られた造粒物を圧縮工程により圧縮し、得られた錠剤にコーティングを施すコーティング工程を必要に応じて行う方法等により、製造できる。また、錠剤は、造粒工程を経ない直接打錠法により製造してもよい。
【実施例】
【0017】
[試験例1、2]
次のようにして表1の処方のレボセチリジン固形製剤(顆粒製剤(ドライシロップ剤))を製造し、粉末還元麦芽糖水アメを使用した製剤(試験例1)とD−マンニトールを使用した製剤(試験例2)について、保存時の安定性を比較した。
まず、レボセチリジン二塩酸塩と、粉末還元麦芽糖水アメと、β−シクロデキストリンとをそれぞれ秤量して混合した。得られた混合物に水を加え、造粒、乾燥、整粒を行い、試験例1の顆粒製剤(ドライシロップ剤)を得た。
粉末還元麦芽糖水アメの代わりにD−マンニトールを用いた以外は上記と同じ方法で、試験例2の顆粒製剤(ドライシロップ剤)を得た。
【0018】
試験例1および試験例2で得られた顆粒製剤について、60℃、開放の条件で1週間保存し、保存前後の類縁物質量を測定した。その結果、表1に示すとおり、D−マンニトールを用いた試験例2の製剤においては、保存後に未知の類縁物質量が顕著に増加したが、粉末還元麦芽糖水アメを用いた試験例1の製剤においては、未知の類縁物質量は増加したものの、その増加量は低減されていた。
【0019】
なお、類縁物質量の測定は、高速液体クロマトグラフィーを用いた自動分析法にて行った。未知の類縁物質量の数値は、レボセチリジン二塩酸塩由来のピーク面積に対する、未知の類縁物質によるピーク面積の割合を百分率で示したものである。
【0020】
【表1】
【0021】
[例1、例2]
試験例1および試験例2の結果から、レボセチリジン固形製剤において粉末還元麦芽糖水アメを用いた場合、未知の類縁物質量の経時的な増加を低減できることが明らかとなった。
そこで、粉末還元麦芽糖水アメを用いてさらに検討を行い、表2に示す処方のレボセチリジン固形製剤(顆粒製剤(ドライシロップ剤))を製造した。
例1では、粉末還元麦芽糖水アメと、β−シクロデキストリンとをそれぞれ秤量して混合した混合物に対し、レボセチリジン二塩酸塩と、クエン酸ナトリウム水和物と、水酸化ナトリウムとを精製水に加えて溶解させた混合液を加え、造粒、乾燥、整粒を行い、その後、アセスルファムカリウムおよび香料を加えて混合し、顆粒製剤を得た。
例2では、水酸化ナトリウムを加えず、その分、粉末還元麦芽糖水アメの割合を増やした以外は、例1と同様にして、顆粒製剤を得た。
【0022】
例1および例2で得られた顆粒製剤について、40℃、75%RHの条件で2週間保存し、保存前後の類縁物質量を測定した。その結果、表2に示すとおり、水酸化ナトリウムを配合しない例2の顆粒製剤は、40℃、75%RHの条件で2週間保存した場合、保存により未知の類縁物質が生成したが、水酸化ナトリウムを配合した例1の顆粒製剤では、同条件で保存しても、未知の類縁物質が検出されなかった。
以上のとおり、粉末還元麦芽糖水アメを用いたレボセチリジン固形製剤において、水酸化ナトリウムを配合することによって、保存による未知の類縁物質の生成を抑え、保存時の安定性に優れた製剤を製造できることが明らかとなった。
【0023】
【表2】