【課題】ハウジング(30)の外周壁(37)とオルダムリング(70)との間の環状空間(45)の潤滑油が、可動スクロール(60)が偏心回転するときのオルダムリング(70)の動作の抵抗になるのを抑制し、スクロール圧縮機(1)の運転効率が低下するのを抑える。
【解決手段】ハウジング(30)に、オルダムリング(70)とその外周に位置する外周壁(37)との間の環状空間(45)から、固定スクロール(50)とハウジング(30)のオルダムリング支持面(36)との間の排油空間(46)に油を排出する空間連通部(40)を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
可動スクロールが偏心回転するときは、上記のようにオルダムリングがハウジングに対して往復動作をする。したがって、可動スクロールの偏心回転に伴って、オルダムリングと外周壁との間の環状空間が拡大と縮小を繰り返す。この環状空間には、圧縮機構を潤滑した潤滑油が溜まっている。したがって、この環状空間が縮小すると、潤滑油がオルダムリングの動作の抵抗となり、圧縮機の効率が低下してしまう。
【0008】
本開示の目的は、ハウジングの外周壁とオルダムリングとの間の環状空間の潤滑油が、可動スクロールが偏心回転するときのオルダムリングの動作の抵抗になるのを抑制し、圧縮機の効率が低下するのを抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、スクロール圧縮機であって、
ケーシング(10)と、
上記ケーシング(10)内に設けられるハウジング(30)と、
上記ハウジング(30)に固定される固定スクロール(50)と、
上記ハウジング(30)と上記固定スクロール(50)との間に配置され、該固定スクロール(50)に噛み合わされて該固定スクロール(50)に対して偏心回転運動を行う可動スクロール(60)と、
上記ハウジング(30)と上記可動スクロール(60)との間に配置され、該可動スクロール(60)の自転を規制するオルダムリング(70)と、を備え、
上記ハウジング(30)は、上記オルダムリング(70)を支持するオルダムリング支持面(36)と、上記オルダムリング(70)の外周に位置して該オルダムリング(70)との間に環状空間(45)を区画する外周壁(37)と、上記オルダムリング(70)の固定側キー(72)が摺動可能に嵌合する固定側キー溝(35)と、第1端部(41a)が上記固定側キー溝(35)の外周側端部に連通するとともに第2端部(41b)が上記固定スクロール(50)と上記オルダムリング支持面(36)との間の排油空間(46)に連通する空間連通部(40)と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
第1の態様では、可動スクロール(60)の偏心回転時にオルダムリング(70)が上記固定側キー溝(35)に沿って動作することにより上記環状空間(45)の容積の一部が小さくなると、その環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油が、空間連通部(40)を通って排油空間(46)へ排出される。したがって、潤滑油に圧縮力が作用するのが抑制され、圧縮機の効率低下が抑制される。
【0011】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、
上記空間連通部(40)は、上記ハウジング(30)の固定側キー溝(35)の外周側端部から周方向へのびる第1連通部(41)と、該第1連通部(41)に連通し且つ上記オルダムリング支持面(36)に開口する第2連通部(42)とを備えている
ことを特徴とする。
【0012】
第2の態様では、可動スクロール(60)の偏心回転時に上記環状空間(45)の一部が小さくなると、潤滑油は、空間連通部(40)の第1連通部(41)と第2連通部(42)を通って、その環状空間(45)(及び固定側キー溝(35))から排油空間(46)へ排出される。したがって、ハウジング(30)に第1連通部(41)と第2連通部(42)を形成するだけの簡単な構成で圧縮機の効率低下を抑制できる。
【0013】
本開示の第3の態様は、第2の態様において、
上記ハウジング(30)は、上記外周壁(37)を有する第1フレーム(31)と、該外周壁(37)の内周面(43)に嵌合する外周面(44)と上記オルダムリング支持面(36)とを有する第2フレーム(32)と、を有し、
上記第1連通部(41)は、上記第1フレーム(31)の内周面(43)または第2フレーム(32)の外周面(44)に形成された周方向溝(47)を含んでいることを特徴とする。
【0014】
第3の態様では、ハウジング(30)に第1フレーム(31)と第2フレーム(32)とを設け、第1連通部(41)として、第1フレーム(31)の内周面(43)または第2フレーム(32)の外周面(44)に形成された周方向溝(47)を用いているので、可動スクロール(60)の偏心回転時にオルダムリング(70)が潤滑油の抵抗になるのを抑制する構成を容易に実用化することが可能になる。
【0015】
本開示の第4の態様は、第3の態様において、
上記第2フレーム(32)には、該第2フレーム(32)に形成される固定側キー溝(35)を含む部分が径方向外方へ突出する凸部(38)が形成され、上記第1フレーム(31)には、該凸部(38)を受容する凹部(39)が形成され、
上記凸部(38)の外周面に、上記周方向溝(47)が形成されている
ことを特徴とする。
【0016】
第4の態様では、第2フレーム(32)に凸部(38)が形成され、第1フレーム(31)に凹部(39)が形成される構成において、凸部(38)に形成された周方向溝(47)が第1連通部(41)となり、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の潤滑油が排油空間(46)へ排出される。
【0017】
本開示の第5の態様は、第4の態様において、
上記凸部(38)と上記凹部(39)との間に空隙(48)が形成され、
上記第2連通部(42)が上記空隙(48)を含んでいる
ことを特徴とする。
【0018】
第5の態様では、凸部(38)に第1連通部(41)として形成された周方向溝(47)から、第2連通部(42)として形成された凸部(38)と凹部(39)との間の空隙(48)を通って、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の潤滑油が排油空間(46)へ排出される。
【0019】
本開示の第6の態様は、第3から第5の態様の何れか1つにおいて、
上記第1連通部(41)は、上記第2フレーム(32)に形成されている
ことを特徴とする。
【0020】
本開示の第7の態様は、第3から第5の態様の何れか1つにおいて、
上記第1連通部(41)は、上記第1フレーム(31)に形成されている
ことを特徴とする。
【0021】
第6,第7の態様では、第2フレーム(32)または第1フレーム(31)に形成された第1連通部(41)から、さらにオルダムリング支持面(36)において開口する上記第2連通部(42)を通って、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の潤滑油が排油空間(46)へ排出される。
【0022】
本開示の第8の態様は、第2から第7の態様の何れか1つにおいて、
上記第2連通部(42)は、上記固定側キー溝(35)を挟んだ両側に形成されてオルダムリング支持面(36)に開口する軸方向孔(32c)により形成され、
上記第1連通部(41)は、上記固定側キー溝(35)から上記軸方向孔(32c)まで上記ハウジング(30)の周方向へ形成されている
ことを特徴とする。
【0023】
第8の態様では、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の潤滑油が、第1連通部(41)から、第2連通部(42)である軸方向孔(32c)を通って、排油空間(46)へ排出される。軸方向孔(32c)は、ボルト孔のようなハウジング(30)に既に設けられている孔を用いることにより、構成を簡素化できる。
【0024】
本開示の第9の態様は、第2から第7の態様の何れか1つにおいて、
上記固定側キー溝(35)は、上記ハウジング(30)に、上記可動スクロール(60)の偏心回転運動の軸心を挟んで配置された一対のキー溝であり、
上記第1連通部(41)は、上記一対のキー溝の一方から他方に連通する通路により構成され、
上記第2連通部(42)は、上記一対のキー溝の他方により構成されている
ことを特徴とする。
【0025】
第9の態様では、固定側キー溝(35)の他方を第2連通部(42)に利用しているので、構成を簡素化できる点で高い効果を得ることが可能となる。
【0026】
本開示の第10の態様は、第1の態様において、
上記ハウジング(30)は、上記外周壁(37)を有する第1フレーム(31)と、該外周壁(37)の内周面(43)に嵌合する外周面(44)と上記オルダムリング支持面(36)とを有する第2フレーム(32)と、を有し、
上記第1フレーム(31)の外周壁(37)の内面には、上記第2フレーム(32)に形成される固定側キー溝(35)の外周端と上記排油空間(46)とを、該第1フレーム(31)の軸方向に沿って連通する第3連通部(49)が上記空間連通部(40)として形成されている
ことを特徴とする。
【0027】
第10の態様では、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の潤滑油が、第3連通部(49)を通って、排油空間(46)へ排出される。したがって、潤滑油に圧縮力が作用するのが抑制され、圧縮機の効率低下が抑制される。
【0028】
本開示の第11の態様は、第10の態様において、
上記第1フレーム(31)の外周壁(37)は、厚肉部(37a)と、該厚肉部(37a)の上方に位置する薄肉部(37b)とを有し、
上記厚肉部(37a)が上記第2フレーム(32)の外周面と嵌合する一方、上記薄肉部(37b)と上記第2フレーム(32)との間に上記第3連通部(49)が形成される
ことを特徴とする。
【0029】
第11の態様では、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の潤滑油が、薄肉部(37b)と第2フレーム(32)との間に形成される第3連通部(49)を通って、排油空間(46)へ排出される。したがって、簡単な構成により、潤滑油に圧縮力が作用するのが抑制され、圧縮機の効率低下が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。なお、本明細書において、「軸方向」は駆動軸(22)の中心軸の方向を表し、「周方向」は駆動軸(22)を中心とする円または円弧の周方向を表すものとする。
【0032】
図1は、実施形態1に係るスクロール圧縮機(1)の縦断面図である。スクロール圧縮機(1)は、例えば、蒸気圧縮式の冷媒回路(図示を省略)に設けられ、冷媒などの作動流体を圧縮するものである。例えば、冷媒回路において、スクロール圧縮機(1)で圧縮された冷媒は、凝縮器で凝縮してから減圧機構で減圧され、その後、蒸発器で蒸発してスクロール圧縮機(1)に吸入され、以上を1サイクルとして繰り返し循環する。スクロール圧縮機(1)は、ケーシング(10)と、圧縮機構(20)と、電動機(21)と、駆動軸(22)とを備えている。
【0033】
〔ケーシング〕
ケーシング(10)は、両端が閉塞された縦長の円筒状に形成されている。ケーシング(10)内には、上側から順に圧縮機構(20)と電動機(21)とが収容されている。そして、ケーシング(10)内を軸方向(上下方向)に延びる駆動軸(22)によって圧縮機構(20)と電動機(21)とが連結されている。
【0034】
ケーシング(10)には、吸入管(11)と、吐出管(12)とが設けられている。吸入管(11)は、ケーシング(10)の上部を軸方向に貫通して圧縮機構(20)に接続され、圧縮機構(20)に低圧の流体(例えばガス冷媒)を導入する。吐出管(12)は、ケーシング(10)の胴部を径方向に貫通してケーシング(10)の内部空間と連通し、ケーシング(10)内の高圧の流体をケーシング(10)の外へ導出する。
【0035】
ケーシング(10)の底部には、潤滑油が貯留される油溜まり部(13)が設けられている。ケーシング(10)内において電動機(21)の下方には、軸受部材(14)が設けられている。軸受部材(14)は、その中央部に貫通孔が形成され、その貫通孔に駆動軸(22)が挿通されている。このような構成により、軸受部材(14)は、駆動軸(22)を回転可能に支持している。
【0036】
〔圧縮機構〕
圧縮機構(20)は、ケーシング(10)内に収容されている。圧縮機構(20)は、吸入管(11)を経由して導入された流体を圧縮してケーシング(10)内に吐出するように構成されている。圧縮機構(20)の具体的な構成は後述する。
【0037】
〔電動機〕
電動機(21)は、ケーシング(10)内に収容され、圧縮機構(20)の下方に配置されている。電動機(21)は、固定子(21a)と回転子(21b)とを有している。固定子(21a)は、円筒状に形成されてケーシング(10)に固定されている。また、固定子(21a)の外周面には、固定子(21a)を軸方向に貫通するコアカットが設けられている。コアカットは、固定子(21a)の外周面の数箇所を平面状に形成した部分であり、その平面によってケーシング(10)との間にできる隙間を通って流体が固定子(21a)の上下の空間を移動して固定子(21a)を冷却するように形成されている。回転子(21b)は、円筒状に形成され、固定子(21a)の内周に回転可能に挿通されている。また、回転子(21b)の内周には、駆動軸(22)が挿通されて固定されている。
【0038】
〔駆動軸〕
駆動軸(22)は、主軸部(22a)と、偏心軸部(22b)と、カウンタウェイト部(22c)とを有している。主軸部(22a)は、ケーシング(10)の軸方向(上下方向)に延びている。偏心軸部(22b)は、主軸部(22a)の上端に設けられている。また、偏心軸部(22b)は、その外径が主軸部(22a)の外径よりも小径に形成され、その軸心が主軸部(22a)の軸心に対して所定距離だけ偏心している。カウンタウェイト部(22c)は、主軸部(22a)から径方向外方に突出し、回転時の動的バランスをとるように構成されている。
【0039】
また、駆動軸(22)の内部には、給油通路(22d)が形成されている。給油通路(22d)は、ケーシング(10)の底部(油溜まり部(13))に貯留された潤滑油を圧縮機構(20)やジャーナル軸受部(例えば駆動軸(22)と軸受部材(14)との摺接部分など)に供給するための通路である。また、駆動軸(22)の下端部には、吸入ノズル(22e)が設けられている。吸入ノズル(22e)は、油溜まり部(13)から潤滑油を吸い上げるための部材であり、容量式のポンプを構成している。吸入ノズル(22e)の吸入口(
図1における下端開口)は、油溜まり部(13)に浸漬され、吸入ノズル(22e)の吐出口(
図1における上端開口)は、給油通路(22d)の流入端(
図1における下端)と連通している。
【0040】
〔圧縮機構の構成〕
次に、
図2〜
図6を参照して、圧縮機構(20)の構成について説明する。圧縮機構(20)は、ハウジング(30)と、固定スクロール(50)と、可動スクロール(60)と、オルダムリング(70)とを備えている。ハウジング(30)は、ケーシング(10)内に設けられている。固定スクロール(50)は、ハウジング(30)の上面に固定されている。可動スクロール(60)は、ハウジング(30)と固定スクロール(50)との間に配置され、固定スクロール(50)に噛み合わされて固定スクロール(50)に対して偏心回転運動を行うように構成されている。オルダムリング(70)は、ハウジング(30)と可動スクロール(60)との間に配置され、可動スクロール(60)の自転を規制するように構成されている。
【0041】
〈ハウジング〉
ハウジング(30)は、ケーシング(10)内に固定され、ケーシング(10)の内部空間を軸方向に2つの空間に区画している。ハウジング(30)の上側の空間が第1空間(S1)を構成し、ハウジング(30)の下側の空間が第2空間(S2)を構成している。一方、ハウジング(30)及び固定スクロール(50)には、ハウジング(30)の上側の第1空間(S1)と、ハウジング(30)の下側の第2空間(S2)とを連通するように、外周の一部にケーシング(10)との間に後述の連絡通路(75)が形成されている。
【0042】
ハウジング(30)は、第1フレーム(31)と、オルダムリング(70)と第1フレーム(31)との間に配置される第2フレーム(32)とを有している。また、第1フレーム(31)と第2フレーム(32)との間には、駆動軸(22)のカウンタウェイト部(22c)が収容される収容空間(S30)が形成されている。
【0043】
《第1フレーム》
図2および
図3に示すように、第1フレーム(31)は、厚肉の円板状に形成され、その外周面がケーシング(10)の内周面に固定されている。第1フレーム(31)の外周縁部には、固定スクロール(50)の外周縁部(外周壁部(53))が固定されている。第1フレーム(31)には、第1凹部(31a)と、第2凹部(31b)と、膨出部(31c)とが設けられている。
【0044】
第1凹部(31a)は、固定スクロール(50)と対向する面(
図2では上面)の中央部で固定スクロール(50)から軸方向(
図2では下方)に凹陥している。第1凹部(31a)は、平面視が円形状に形成されている。すなわち、第1凹部(31a)は、第1フレーム(31)の上面に開口するほぼ円形断面の窪みである。
【0045】
第2凹部(31b)は、第1凹部(31a)の底面の中央部から軸方向(
図2では下方)に凹陥している。第2凹部(31b)は、平面視において円形状に形成されている。すなわち、第2凹部(31b)は、第1凹部(31a)の底面に開口するほぼ円形断面の窪みである。第2凹部(31b)は、平面視が第1凹部(31a)の形状よりも小さい円形状に形成されている。
【0046】
膨出部(31c)は、固定スクロール(50)から遠ざかる方向(
図2では下方)へ向けて第1フレーム(31)の上側の部分から膨出している。膨出部(31c)の中央部には、膨出部(31c)を軸方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔には、軸受メタル(31d)が装着されている。そして、軸受メタル(31d)には、駆動軸(22)の主軸部(22a)の上端部の大径部分が挿通されている。このような構成により、膨出部(31c)は、駆動軸(22)の主軸部(22a)の上端部(大径部分)を回転可能に支持している。
【0047】
《第2フレーム》
図2および
図4A,
図4Bに示すように、第2フレーム(32)は、円環板状に形成されている。第2フレーム(32)の外形は、第1フレーム(31)の第1凹部(31a)に対応した形状(第1凹部(31a)と嵌合する形状)となっている。第2フレーム(32)は、第1フレーム(31)の第1凹部(31a)に嵌め込まれ、且つ周方向の6箇所に形成された座ぐり部(32c)において六角孔付きボルト(図示せず)により第1フレーム(31)に固定されている。このような構成により、第1フレーム(31)の第2凹部(31b)と第2フレーム(32)とに囲まれた空間が収容空間(S30)を構成している。
【0048】
第2フレーム(32)の内周縁部には、環状凸部(32a)が設けられている。環状凸部(32a)の突端面には、その周方向に沿うリング状の凹溝(32d)が設けられ、その凹溝(32d)にシールリング(32b)が嵌め込まれている。シールリング(32b)は、後述の可動側鏡板(61)の背面(
図2では下面)と摺接し、第2フレーム(32)と可動側鏡板(61)との間の隙間をシールする。このような構成により、シールリング(32b)は、可動側鏡板(61)の背面に面する空間(すなわち第2フレーム(32)と可動スクロール(60)との間の空間)を、径方向内側と外側の2つの空間(シールリング(32b)の内周側の空間とシールリング(32b)の外周側の空間)に区画している。
【0049】
《シールリング》
第1フレーム(31)と第2フレーム(32)との間には、第2のシールリング(33)が設けられている。第2のシールリング(33)は、第1フレーム(31)と第2フレーム(32)との間の軸方向の隙間をシールする。第1フレーム(31)の第1凹部(31a)の底面(円環状の底面)に第1凹部(31a)の底面の内周縁部に沿うリング状の凹溝が設けられ、その凹溝に第2のシールリング(33)が嵌め込まれている。
【0050】
〈固定スクロール〉
図2に示すように、固定スクロール(50)は、ハウジング(30)の軸方向における一方側(
図2では上側)に配置されている。固定スクロール(50)は、固定側鏡板(51)と、固定側ラップ(52)と、外周壁部(53)とを有している。
【0051】
固定側鏡板(51)は、概ね円形の板状に形成されている。固定側ラップ(52)は、インボリュート曲線を描く渦巻き壁状に形成され、固定側鏡板(51)の前面(
図2では下面)に立設されて固定側鏡板(51)から突出している。外周壁部(53)は、固定側ラップ(52)の外周側を囲むように形成され、固定側鏡板(51)の前面から下方に突出している。固定側ラップ(52)の先端面(
図2では下面)と外周壁部(53)の先端面とはほぼ同一の面になっている。
【0052】
固定スクロール(50)の外周壁部(53)には、吸入ポート(図示を省略)が形成されている。吸入ポートには、吸入管(11)の下流端が接続される。固定スクロール(50)の固定側鏡板(51)の中央部には、固定側鏡板(51)を貫通する吐出口(54)が形成されている。なお、固定側鏡板(51)の上面には、図示していないリリーフポートを開閉するためのリリーフ弁(55)が設けられている。
【0053】
〈可動スクロール〉
図2および
図5に示すように、可動スクロール(60)は、可動側鏡板(61)と、可動側ラップ(62)と、ボス部(63)とを有している。
【0054】
可動側鏡板(61)は、概ね円形の板状に形成されている。可動側ラップ(62)は、インボリュート曲線を描く渦巻き壁状に形成され、可動側鏡板(61)の前面(
図2では上面)に立設されて可動側鏡板(61)から突出している。ボス部(63)は、円筒状に形成され、可動側鏡板(61)の背面(
図2では下面)の中央部に配置されている。可動スクロール(60)の可動側ラップ(62)は、固定スクロール(50)の固定側ラップ(52)と噛み合わされている。
【0055】
固定スクロール(50)と可動スクロール(60)との間には、圧縮室(S20)が形成されている。圧縮室(S20)は、流体を圧縮するための空間であり、吸入管(11)から吸入ポート(図示を省略)を通じて吸入した流体を圧縮し、圧縮した流体を、吐出口(54)を通じて吐出するように構成されている。
【0056】
〈連絡通路〉
図1〜
図3に示すように、圧縮機構(20)には、連絡通路(75)が設けられている。連絡通路(75)は、第1空間(S1)に吐出された流体を第2空間(S2)(すなわち圧縮機構(20)と電動機(21)との間及びそれより下方の空間)に流出させるための通路である。連絡通路(75)は、スクロール側通路(76)とハウジング側通路(77)とによって構成されている。スクロール側通路(76)は、固定スクロール(50)の外周壁部(53)の外周縁部を軸方向に上端から下端までのびる溝で構成されている。ハウジング側通路(77)は、第1フレーム(31)の外周縁部を軸方向に上端から下端までのびる溝で構成されている。
【0057】
〈油戻し通路〉
図2に示すように、圧縮機構(20)には、油戻し通路(80)が設けられている。油戻し通路(80)は、圧縮機構(20)の潤滑油を第2空間(S2)に排出して油溜まり部(13)へ戻すための通路である。油戻し通路(80)は、接続通路(81)と油戻し部材(82)とによって構成されている。接続通路(81)は、第1フレーム(31)の第2凹部(31b)から径方向外方へ向かって延びている。油戻し部材(82)は、その流入端が接続通路(81)の流出端に接続されるとともにその流出端が下方を向くように設けられ、接続通路(81)に流入した潤滑油を第2空間(S2)に流出するように構成されている。
【0058】
〈オルダムリング〉
図2,
図6に示すように、オルダムリング(70)は、断面が矩形のリング状に形成されたリング状本体部(73)を有している。オルダムリング(70)のリング状本体部(73)の厚みは、オルダムリング(70)の全周に亘って一定となっている。オルダムリング(70)には、2つの可動側キー(71)と2つの固定側キー(72)とがリング状本体部(73)と一体に設けられている。なお、
図2は、中心より左側を、可動側キー(71)を通る平面で切断し、中心より右側を、固定側キー(72)を通る平面で切断した断面図である。
【0059】
オルダムリング(70)には、それぞれがオルダムリング(70)の径方向外方へ向けて突出する4つの突出部分が等間隔(90°間隔)で周方向に設けられている。そして、オルダムリング(70)の4つの突出部分のうち互いに対向する2つの突出部分に、軸方向の一方へ突出する2つ(一対)の可動側キー(71)がそれぞれ形成され、残りの2つの突出部分に、軸方向の他方へ突出する2つ(一対)の固定側キー(72)がそれぞれ形成されている。
【0060】
《可動側キー》
可動側キー(71)は、オルダムリング(70)の可動スクロール(60)側(
図2では上側)に突出している。具体的には、可動側キー(71)は、概ね直方体状に形成された突起であり、オルダムリング(70)の可動スクロール(60)と対向する面(
図2では上面)に設けられている。2つの可動側キー(71)は、オルダムリング(70)の中心軸を挟んで互いに対向している。すなわち、一方の可動側キー(71)は、オルダムリング(70)の中心軸を挟んで他方の可動側キー(71)の反対側に配置されている。なお、オルダムリング(70)の可動側キー(71)が形成された面は、
図2において可動側鏡板(61)の背面(下面)と摺接する面であり、平坦面となっている。
【0061】
《固定側キー》
固定側キー(72)は、オルダムリング(70)の第2フレーム(32)側(
図2では下側)に突出している。具体的には、固定側キー(72)は、概ね直方体状に形成された突起であり、オルダムリング(70)の第2フレーム(32)と対向する面(
図2では下面)に設けられている。2つの固定側キー(72)は、オルダムリング(70)の中心軸を挟んで互いに対向している。すなわち、一方の固定側キー(72)は、オルダムリング(70)の中心軸を挟んで他方の固定側キー(72)の反対側に配置されている。なお、2つの固定側キー(72)の対向方向は、2つの可動側キー(71)の対向方向と直交する方向となっている。また、オルダムリング(70)の固定側キー(72)が形成された面は、
図2において第2フレーム(32)の上面と摺接する面であり、平坦面となっている。
【0062】
〈可動側キー溝〉
図2,
図5に示すように、可動スクロール(60)の可動側鏡板(61)には、
図2においてオルダムリング(70)と対向する面(下面)に、2つ(一対)の可動側キー溝(64)が設けられている。2つの可動側キー溝(64)には、オルダムリング(70)の2つの可動側キー(71)がそれぞれ摺動可能に嵌め込まれている。なお、可動側鏡板(61)がオルダムリング(70)と対向する面は、
図2においてオルダムリング(70)の上面と摺接する面であり、平坦面となっている。
【0063】
可動側鏡板(61)の可動側キー溝(64)は、可動側鏡板(61)を径方向に延びて可動側鏡板(61)の外周に開口している。可動側鏡板(61)の2つの可動側キー溝(64)は、可動スクロール(60)の中心軸を挟んで互いに対向している。すなわち、一方の可動側キー溝(64)は、可動スクロール(60)の中心軸を挟んで他方の可動側キー溝(64)の反対側に配置されている。
【0064】
〈固定側キー溝〉
図2,
図4に示すように、第2フレーム(32)には、
図2においてオルダムリング(70)と対向する面(上面)に、2つ(一対)の固定側キー溝(35)が設けられている。2つの固定側キー溝(35)には、オルダムリング(70)の2つの固定側キー(72)がそれぞれ摺動可能に嵌め込まれている。なお、第2フレーム(32)がオルダムリング(70)と対向する面は、
図2においてオルダムリング(70)の下面と摺接する面であり、平坦面となっている。
【0065】
第2フレーム(32)の固定側キー溝(35)は、第2フレーム(32)を径方向に延びて第2フレーム(32)の外周に開口し、固定側キー溝(35)の径方向内側の端部は閉塞されている。第2フレーム(32)の2つの固定側キー溝(35)は、第2フレーム(32)の中心軸を挟んで互いに対向する位置に(可動スクロール(60)の偏心回転運動の軸心を挟んで)配置されている。なお、2つの固定側キー溝(35)の対向方向は、2つの可動側キー溝(64)の対向方向と直交する方向となっている。
【0066】
〈オルダムリング作動空間の油を排出する構造〉
上記ハウジング(30)の第2フレーム(32)は、オルダムリング(70)を支持するオルダムリング支持面(36)を有し、このオルダムリング支持面(36)はオルダムリング(70)の下面と摺接する面により構成されている。
【0067】
ハウジング(30)の第1フレーム(31)は、上記オルダムリング(70)の外周に位置して該オルダムリング(70)との間に環状空間(45)を区画する外周壁(37)を有している。
【0068】
上記ハウジング(30)の第2フレーム(32)には、上記環状空間(45)と、上記固定スクロール(50)と上記オルダムリング支持面(36)との間の排油空間(46)とに連通する空間連通部(40)が形成されている。この空間連通部(40)は、上記ハウジング(30)の固定側キー溝(35)の外周側端部から周方向へのびる第1連通部(41)と、該第1連通部(41)に連通し且つ上記オルダムリング支持面(36)に開口する第2連通部(42)(軸方向孔(32c))とを備え、環状空間(45)の油を上記排油空間(46)へ排出するように構成されている。
【0069】
上記第2フレーム(32)には、上述したように、該第2フレーム(32)を六角孔付きボルトで上記第1フレームに固定するための座ぐり部(32c)が形成されている。上記第1連通部(41)は、第2フレーム(32)の外周面(44)に、固定側キー溝(35)の両隣に形成された座ぐり部(32c)同士に連通するように形成された円弧状の周方向溝(47)で構成されている。第2連通部(42)は、第2フレーム(32)の上方に向かって開口した固定側キー溝(35)の両隣の座ぐり部(32c)により、つまり、上記固定スクロール(50)と上記オルダムリング支持面(36)との間の排油空間(46)に対して開口した、固定側キー溝(35)の両隣の座ぐり部(32c)で構成されている。第1連通部(41)は、第1端部(41a)が上記固定側キー溝(35)の外周側端部(開口側端部)に連通し、第2端部(41b)は第2連通部(42)を介して上記排油空間(46)に連通している。
【0070】
上記周方向溝(47)により形成された第1連通部(41)は、上記第1フレーム(31)の外周壁(37)の内周面(43)と第2フレーム(32)の外周面(44)とが嵌合する部分に形成されている。
【0071】
〔スクロール圧縮機の運転動作〕
次に、スクロール圧縮機(1)の運転動作について説明する。
【0072】
電動機(21)が作動すると、圧縮機構(20)の可動スクロール(60)が駆動軸(22)によって回転駆動される。可動スクロール(60)は、オルダムリング(70)によって自転を規制されつつ、駆動軸(22)の主軸部(22a)の軸心を中心として偏心軸部(22b)の偏心量を半径とする旋回軌道上を公転する。可動スクロール(60)が公転(偏心回転運動)を行うと、吸入管(11)から圧縮機構(20)の吸入ポート(図示を省略)を通じて流体(例えば低圧ガス冷媒)が圧縮室(S20)に吸入されて圧縮される。圧縮室(S20)において圧縮された流体(例えば高圧ガス冷媒)は、固定スクロール(50)の吐出口(54)を通じて第1空間(S1)へ吐出される。第1空間(S1)に吐出された高圧の流体は、固定スクロール(50)およびハウジング(30)に設けられた連絡通路(75)を通じて第2空間(S2)に流入する。第2空間(S2)に流入した高圧の流体は、吐出管(12)を通じてケーシング(10)の外部へ吐出される。
【0073】
〔運転動作における潤滑油の流れ〕
次に、スクロール圧縮機(1)の運転動作における潤滑油の流れについて説明する。
【0074】
電動機(21)が作動して駆動軸(22)が回転すると、油溜まり部(13)の潤滑油は、吸入ノズル(22e)の容量ポンプ作用(潤滑油を汲み上げる作用)によって給油通路(22d)に吸い込まれ、駆動軸(22)と圧縮機構(20)や軸受部材(14))とが摺動する摺接部分に供給される。具体的には、給油通路(22d)を流れる潤滑油は、給油通路(22d)から径方向に延びる分岐通路(図示を省略)を通じて、駆動軸(22)と軸受部材(14)との間の摺接部分と、駆動軸(22)の主軸部(22a)と第1フレーム(31)の膨出部(31c)(軸受メタル(31d))との間の摺接部分と、駆動軸(22)の偏心軸部(22b)と可動スクロール(60)のボス部(63)との間の摺接部分など、複数の摺動部分に供給される。なお、給油通路(22d)の上端から流出した潤滑油は、別の給油通路(図示を省略)を通じて固定スクロール(50)の外周壁部(53)と可動スクロール(60)の可動側鏡板(61)との摺接部分に供給される。
【0075】
可動スクロール(60)のボス部(63)と駆動軸(22)の偏心軸部(22b)との間の摺動部分に供給された潤滑油は、第2フレーム(32)の内周空間(シールリング(32b)の内周側の空間)と収容空間(S30)とにより構成される油溜め空間に流入して貯留される。油溜め空間に貯留された潤滑油は、油戻し通路(80)を通じて第2空間(S2)に流入し、電動機(21)の固定子(21a)に設けられたコアカットを通じて油溜まり部(13)に戻る。
【0076】
また、油溜め空間に貯留された潤滑油の一部は、可動スクロール(60)とオルダムリング(70)とが摺接する部分(
図2では可動側鏡板(61)の下面とオルダムリング(70)の上面との間)と、第2フレーム(32)とオルダムリング(70)とが摺接する部分(
図2ではオルダムリング(70)の下面と第2フレーム(32)の上面との間)に供給される。例えば、油溜め空間に溜まり込んだ潤滑油の一部は、可動側キー溝(64)および固定側キー溝(35)を通じて可動スクロール(60)とオルダムリング(70)との間の摺接部分および第2フレーム(32)とオルダムリング(70)との間の摺接部分にそれぞれ供給される。そして、可動スクロール(60)とオルダムリング(70)との間の摺接部分および第2フレーム(32)とオルダムリング(70)との間の摺接部分の潤滑に利用された潤滑油は、シールリング(32b)の外周側の空間に流入する。この潤滑油は、オルダムリング(70)の外周の環状空間(45)に溜まる。
【0077】
〔環状空間からの油の排出〕
次に、環状空間(45)に溜まる油が排出される流れについて説明する。まず、
図7を参照して、圧縮機構(20)の動作中の可動スクロール(60)とオルダムリング(70)の挙動を説明する。なお、
図7では、オルダムリング(70)の挙動を理解しやすくするために、オルダムリング(70)にドットを付している。また、
図7の例では、可動スクロール(60)が反時計回り方向に公転するものとし、
図7において可動スクロール(60)が最も右側に位置しているときの駆動軸(22)の回転角を基準角度(0°)としている。
【0078】
駆動軸(22)が基準角度から反時計回り方向へ90°回転すると、
図7においてオルダムリング(70)が第2フレーム(32)に対して固定側キー溝(35)に沿って上方へ可動範囲の上端まで移動し、可動スクロール(60)はオルダムリング(70)に対して可動側キー溝(64)に沿って左方向へ可動範囲の中央(可動範囲の1/2の位置)まで移動する。このとき、可動スクロール(60)は、第2フレーム(32)に対するオルダムリング(70)の相対的な動作とオルダムリング(70)に対する可動スクロール(60)の相対的な動作の2つの動作が合成されて、自転をせずに反時計回り方向へ90°公転する(
図7の90°の位置)。
【0079】
駆動軸(22)がさらに反時計回り方向へ90°回転すると、
図7においてオルダムリング(70)は可動範囲の上端から中央まで移動し、可動スクロール(60)は可動範囲の中央から左側端まで移動する。このとき、可動スクロール(60)は、2つの動作が合成されて、自転をせずに反時計回り方向へさらに90°公転する(
図7の180°の位置)。
【0080】
駆動軸(22)がさらに反時計回り方向へ90°回転すると、
図7においてオルダムリング(70)は可動範囲の中央から下端まで移動し、可動スクロール(60)は可動範囲の左側端から中央まで移動する。このとき、可動スクロール(60)は、2つの動作が合成されて、自転をせずに反時計回り方向へさらに90°公転する(
図7の270°の位置)。
【0081】
駆動軸(22)がさらに反時計回り方向へ90°回転すると、
図7においてオルダムリング(70)は可動範囲の下端から中央まで移動し、可動スクロール(60)は可動範囲の中央から右側端まで移動する。このとき、可動スクロール(60)は、2つの動作が合成されて、自転をせずに反時計回り方向へさらに90°回転する(
図7の0°の位置)。
【0082】
以上のように、駆動軸(22)が回転して可動スクロール(60)が公転するときに、オルダムリング(70)は、
図7において、固定側キー溝(35)に沿って可動範囲の上端と下端の間を往復する動作を繰り返す。オルダムリング(70)が
図7において可動範囲の上端へ移動するとき、オルダムリング(70)の周囲に形成されている環状空間(45)は、該オルダムリング(70)の上方の部分において小さくなって行く。特に、
図7の上側の固定側キー溝(35)では、その中を図の上方へ移動する固定側キー(72)によって内部の容積が小さくなるため、環状空間(45)に溜まっている潤滑油が、固定側キー溝(35)の中で圧縮されるような力を受ける。
【0083】
これに対して、本実施形態では、固定側キー溝(35)に連通する空間連通部(40)を第2フレーム(32)に形成しているので、圧縮される力を受けた潤滑油は、容積が小さくなった環状空間(45)や固定側キー溝(35)から第1連通部(41)及び第2連通部(42)(座ぐり部(32c))を通って排油空間(46)へ抜けて行く。このため、環状空間(45)や固定側キー溝(35)内の潤滑油がオルダムリング(70)の動作の抵抗になるのが抑制される。
【0084】
このことは、オルダムリング(70)が
図7において可動範囲の下端へ移動するときも同様であり、オルダムリング(70)の周囲に形成されている環状空間(45)が、該オルダムリング(70)の下方の部分において小さくなり、
図7の下側の固定側キー溝(35)の内部の容積が小さくなっても、潤滑油は、環状空間(45)や固定側キー溝(35)から第1連通部(41)及び第2連通部(42)(座ぐり部(32c))を通って排油空間(46)へ抜けて行く。したがって、環状空間(45)や固定側キー溝(35)内の潤滑油がオルダムリング(70)の動作の抵抗になるのが抑制される。
【0085】
−実施形態1の効果−
以上説明したように、この実施形態1のスクロール圧縮機は、上記ハウジング(30)が、上記オルダムリング(70)を支持するオルダムリング支持面(36)と、上記オルダムリング(70)の外周に位置して該オルダムリング(70)との間に環状空間(45)を区画する外周壁(37)と、上記オルダムリング(70)の固定側キー(72)が摺動可能に嵌合する固定側キー溝(35)と、第1端部(41a)が上記固定側キー溝(35)の外周側端部に連通するとともに第2端部(41b)が上記固定スクロール(50)と上記オルダムリング支持面(36)との間の排油空間(46)に連通する空間連通部(40)とを備えている。
【0086】
そして、この実施形態1では、可動スクロール(60)の偏心回転時にオルダムリング(70)が上記固定側キー溝(35)に沿って動作することにより、
図7で説明したように上記環状空間(45)が小さくなると、この環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油は、固定側キー溝(35)の外周側端部に第1端部(41a)が連通して第2端部(42b)が排油空間(46)に連通する空間連通部(40)を通って、排油空間(46)へ排出される。このように、本実施形態によれば、圧縮機構(20)が動作するときに、固定側キー溝(35)の中の潤滑油が排油空間(46)へ排出されるため、潤滑油に圧縮される力が作用するのが抑制される。したがって、圧縮機構(20)が動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなるから、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる。
【0087】
また、この実施形態1では、上記空間連通部(40)が、上記ハウジング(30)の固定側キー溝(35)の外周側端部から周方向へのびる第1連通部(41)と、該第1連通部(41)に連通し且つ上記オルダムリング支持面(36)に開口する第2連通部(42)とを備えている。そして、第2連通部(42)として、第2フレーム(32)を第1フレーム(31)に固定するための六角孔付きボルトを取り付ける座ぐり部(軸方向孔)(32c)を利用している。
【0088】
したがって、ハウジング(30)に第1連通部(41)と第2連通部(42)を形成する簡単な構成で圧縮機の構成低下を抑制でき、しかも第2連通部(42)に座ぐり部(32c)を利用することにより、構成を簡素化できる効果を得ることが可能となる。
【0089】
また、この実施形態1では、上記ハウジング(30)を、上記外周壁(37)を有する第1フレーム(31)と、該外周壁(37)の内周面(43)に嵌合する外周面(44)と上記オルダムリング支持面(36)とを有する第2フレーム(32)とを用いて構成し、上記第1連通部(41)を、上記第2フレーム(32)の外周面(44)に形成された周方向溝(47)を含んだ構成にしている。
【0090】
このように、この実施形態1ではハウジング(30)を2つの部材に分けて、第1連通部(41)を、第2フレーム(32)の外周面に形成した周方向溝(47)を用いて簡単に形成することができるから、可動スクロール(60)の偏心回転時にオルダムリング(70)が潤滑油の抵抗になるのを抑制する構成を容易に実用化できる。
【0091】
《実施形態2》
図8に示した実施形態2について説明する。
【0092】
この実施形態2は、空間連通部(40)の構成が実施形態1とは異なるように構成したものである。
【0093】
実施形態2の空間連通部(40)は、第1連通部(41)が、一対の固定側キー溝(35)の一方から他方まで連通する円弧状の周方向溝(47)により構成されている。この実施形態2の周方向溝(47)は、実施形態1の周方向溝(47)が固定側キー溝(35)とその隣の座ぐり部(32c)の間に形成された周長が短い溝であるのに対して、固定側キー溝(35)の一方から他方まで連通する周長が長い溝である。
【0094】
第2連通部(42)は、実施形態1では固定側キー溝(35)の隣の座ぐり部(32c)により構成しているのに対して、この実施形態2では、一対の固定側キー溝(35)の一方から他方まで連通する円弧状の周方向溝(47)を第1連通部(41)として設ける構成において、固定側キー溝(35)の他方により構成されている。つまり、
図8において上側に位置する固定側キー溝(35)の中の潤滑油を排出する場合は、同図の下側の固定側キー溝(35)が第2連通部になり、逆に
図8において下側に位置する固定側キー溝(35)の中の潤滑油を排出する場合は、同図の上側の固定側キー溝(35)が第2連通部になる。
【0095】
その他の構成は実施形態1と同じであるため、具体的な説明は省略する。
【0096】
この実施形態2においても、駆動軸(22)が回転して可動スクロール(60)が公転するとき、オルダムリング(70)は、既に動作を説明した
図7において、固定側キー溝(35)に沿って可動範囲の上端と下端の間を往復する動作を繰り返す。オルダムリング(70)が
図7において可動範囲の上端へ移動するとき、オルダムリング(70)の周囲に形成されている環状空間(45)は、該オルダムリング(70)の上方の部分において小さくなって行く。特に、
図7の上側の固定側キー溝(35)では、その中を図の上方へ移動する固定側キー(72)によって内部の容積が小さくなるため、環状空間(45)に溜まっている潤滑油が、固定側キー溝(35)の中で圧縮されるような力を受ける。
【0097】
この実施形態2では、固定側キー溝(35)に連通する空間連通部(40)を第2フレーム(32)に形成し、上側の固定側キー溝(35)で潤滑油が圧縮される力を受ける場合は下側の固定側キー溝(35)が第2連通部になるようにしているので、潤滑油は、容積が小さくなった環状空間(45)や固定側キー溝(35)から第1連通部(41)及び第2連通部(42)(下側の固定側キー溝(35))を通って排油空間(46)へ抜けて行く。このため、環状空間(45)や上側の固定側キー溝(35)の中の潤滑油がオルダムリング(70)の動作の抵抗になるのが抑制される。
【0098】
このことは、オルダムリング(70)が
図7において可動範囲の下端へ移動するときも同様であり、オルダムリング(70)の周囲に形成されている環状空間(45)が、該オルダムリング(70)の下方の部分において小さくなり、
図7の下側の固定側キー溝(35)の内部の容積が小さくなっても、潤滑油は、環状空間(45)や下側の固定側キー溝(35)から第1連通部(41)及び第2連通部(42)(上側の固定側キー溝(35))を通って排油空間(46)へ抜けて行く。したがって、環状空間(45)や下側の固定側キー溝(35)の中の潤滑油がオルダムリング(70)の動作の抵抗になるのが抑制される。
【0099】
−実施形態2の効果−
この実施形態2では、可動スクロール(60)の偏心回転時にオルダムリング(70)が上記固定側キー溝(35)に沿って動作することにより、
図7で説明したように上記環状空間(45)が小さくなると、この環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油は、固定側キー溝(35)の一方から、第1連通部(41)である周方向溝(47)と第2連通部(42)である固定側キー溝(35)の他方を通って、排油空間(46)へ排出される。このように、実施形態2においても、圧縮機構(20)が動作するときに、固定側キー溝(35)の中の潤滑油が排油空間(46)へ排出されるため、潤滑油に圧縮される力が作用するのが抑制される。したがって、この実施形態2の構成を採用した場合でも、圧縮機構(20)が動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなるから、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる。
【0100】
また、この実施形態2では、上記第1連通部(41)を、上記一対の固定側キー溝(35)の一方から他方に連通する通路により構成し、上記第2連通部(42)を、上記一対の固定側キー溝(35)の他方により構成している。このように、実施形態2では、一対の固定側キー溝(35)の他方を第2連通部(42)に利用しているので、構成を簡素化できる点で高い効果を得ることが可能となる。
【0101】
《実施形態3》
図9に示した実施形態3について説明する。
図9は、実施形態3に係るスクロール圧縮機の第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)の構成を示す平面図である。
【0102】
この実施形態3では、第2フレーム(32)には、該第2フレーム(32)に形成される固定側キー溝(35)を含む部分が径方向外方へ突出する凸部(38)が形成されている。第1フレーム(31)には、該凸部(38)を受容する凹部(39)が形成されている。
【0103】
上記凸部(38)の外周面に、第1連通部(41)を構成する第1周方向溝(47a)が形成されている。第2フレーム(32)には、凸部上記(38)を平面から見て左右両側に、第2周方向溝(47b)が形成されている。第1周方向溝(47a)及び第2周方向溝(47b)は、
図4Bの周方向溝(47)と同様に、第2フレーム(32)において固定側キー溝(35)を通過する(横切る)高さに形成されている。
【0104】
上記凸部(38)と凹部(39)は、ぞれぞれ、固定側キー溝(35)が形成されている2箇所の位置に形成されている。凸部(38)の周方向の長さは、凹部(39)の周方向の長さよりも短く、嵌まり合った凸部(38)と凹部(39)の間に、空隙(48)が形成されている。空隙(48)は、各凸部(38)の周方向の左右両側に形成されている。
【0105】
この実施形態3では、実施形態1と同様に、固定側キー溝(35)を挟んだ両側に形成されてオルダムリング支持面(36)に開口する軸方向孔である座ぐり部(32c)が第2連通部(42)を構成している。上記第1連通部(41)の一部である第2周方向溝(47b)は、固定側キー溝(35)から第1周方向溝(47a)及び空隙(48)を介して第2連通部(42)まで、上記ハウジング(30)の周方向へのびるように形成されている。
【0106】
この実施形態3では、上記空隙(48)は、その上端が排油空間(46)に連通している。したがって、空隙(48)は、第1連通部(41)の一部を構成するだけでなく、第2連通部(42)の一部も構成している。
【0107】
なお、上記凸部(38)と凹部(39)のそれぞれの周方向長さは、第1周方向溝(47a)と第2周方向溝(47b)が連通する限り、適宜変更してもよい。つまり、各空隙(48)の周方向幅が小さくても第1周方向溝(47a)と第2周方向溝(47b)とが連通していればよく、例えば第1周方向溝(47a)と第2周方向溝(47b)とを直接に連通させて、空隙(48)が実質的に存在しない構成にしてもよい。この場合、空隙(48)は第2連通部(42)の一部を構成しなくなる。
【0108】
その他の構成は、実施形態1と同様であるため、具体的な説明は省略する。
【0109】
この実施形態3においても、第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)からなるハウジング(30)に第1連通部(41)と第2連通部(42)とを形成しているので、圧縮機構(20)が動作するときに、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油が、空間連通部(40)である第1連通部(41)と第2連通部(42)を通って、排油空間(46)へ排出される。したがって、圧縮機構(20)の動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなり、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる構成を容易に実現できる。
【0110】
−実施形態3の変形例−
〈変形例1〉
図10は、実施形態3の変形例1に係るスクロール圧縮機の第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)の構成を示す平面図である。
【0111】
この変形例1において、第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)の基本的な形状は、
図9の実施形態3と同じである。一方、第1連通部(41)は、
図8の実施形態2と同様に、
一対の固定側キー溝(35)の一方から他方に連通する通路により構成されている。具体的には、第1連通部(41)は、対向する固定側キー溝(35)の間で連続して配置された第1周方向溝(47a),第2周方向溝(47b),第3周方向溝(47c),及び第2周方向溝(47b)を有している。
【0112】
第2連通溝(42)は、各座ぐり部(32c)と各空隙(48)とにより構成されている。そのため、この変形例1の第2連通溝(42)の流路断面積は、
図9の第2連通溝(42)の流路断面積より大きい。
【0113】
その他の構成は、
図9の実施形態3と同じである。
【0114】
この変形例1においても、第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)からなるハウジング(30)に第1連通部(41)と第2連通部(42)とを形成しているので、圧縮機構(20)が動作するときに、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油が、空間連通部(40)である第1連通部(41)と第2連通部(42)を通って、排油空間(46)へ排出される。したがって、圧縮機構(20)の動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなり、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる構成を容易に実現できる。また、第2連通溝(42)の流路断面積が
図9の実施形態3よりも大きいため、潤滑油が排油空間(46)に排出されやすくなる。
【0115】
〈変形例2〉
図11は、実施形態3の変形例2に係るスクロール圧縮機の第1フレーム及び第2フレームの構成を示す平面図である。
【0116】
この変形例2は、第1連通部(41)を第1フレーム(31)と第2フレーム(32)の両方にまたがって形成した例である。具体的には、第1連通部(41)は、
図10の変形例1と同じく第2フレーム(32)の凸部(38)に形成された第1周方向溝(47a)と、
図10の変形例1とは異なり第1フレーム(31)の外周壁(37)の内周面に形成された第4周方向溝(47d)とで構成されている。
【0117】
その他の構成は、
図9の実施形態3と同じである。
【0118】
この変形例2においても、第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)からなるハウジング(30)に第1連通部(41)と第2連通部(42)とを形成しているので、圧縮機構(20)が動作するときに、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油が、空間連通部(40)である第1連通部(41)と第2連通部(42)を通って、排油空間(46)へ排出される。したがって、圧縮機構(20)の動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなり、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる構成を容易に実現できる。また、第2連通溝(42)の流路断面積が
図9の実施形態3よりも大きいため、潤滑油が排油空間(46)に排出されやすくなる。
【0119】
〈変形例3〉
図12は、実施形態3の変形例3に係るスクロール圧縮機の第1フレーム及び第2フレームの構成を示す平面図である。
【0120】
この変形例3は、
図9の実施形態3において、第2周方向溝(47b)を形成せず、第1連通部(41)を第1周方向溝(47a)のみで構成した例である。この構成では、第2連通部(42)は空隙(48)により構成される。
【0121】
その他の構成は、
図9の実施形態3と同じである。
【0122】
この変形例3においても、第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)からなるハウジング(30)に第1連通部(41)と第2連通部(42)とを形成しているので、圧縮機構(20)が動作するときに、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油が、空間連通部(40)である第1連通部(41)と第2連通部(42)を通って、排油空間(46)へ排出される。したがって、圧縮機構(20)の動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなり、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる構成を容易に実現できる。
【0123】
《実施形態4》
図13に示した実施形態4について説明する。
図13は、実施形態4に係るスクロール圧縮機の要部を示す断面図である。
【0124】
この実施形態4では、周方向溝(47)からなる第1連通部(41)と座ぐり部(32c)からなる第2連通部(42)を空間連通部(40)として用いず、その代わりに、第1フレーム(31)の外周壁(37)の内面に、第2フレーム(32)に形成される固定側キー溝(35)の外周端と上記排油空間(46)とを、第1フレーム(31)の軸方向に沿って連通する第3連通部(49)を形成し、この第3連通部(49)を空間連通部(40)として用いている。
【0125】
第1フレーム(31)の外周壁(37)は、厚肉部(37a)と薄肉部(37b)とを有している。厚肉部(37a)は、図における外周壁(37)の下側部分に形成され、薄肉部(37b)は、厚肉部(37a)の上方に形成されている。厚肉部(37a)は、第2フレーム(32)が嵌合する内径の上記第1凹部(31a)の外側に形成されている。薄肉部(37b)は、第1凹部(31a)の内径よりも大きな内径で形成された円形凹部か、もしくは一対の固定側キー溝(35)の部分のみが第2フレーム(32)の外周面と空間を隔てる形状の縦溝により構成されている。
【0126】
上述したように、上記厚肉部(37a)は上記第2フレーム(32)の外周面と嵌合している。一方、上記薄肉部(37b)と上記第2フレーム(32)との間には、上記円形凹部又は縦溝により空間が形成されていて、この空間が上記第3連通部(49)を構成している。
【0127】
この実施形態4において、第3連通部(49)の下端は、固定側キー溝(35)の底面より高く、固定側キー溝(35)の上端(オルダムリング支持面(36))より低い位置に設定されている。第3連通部(49)の下端は、オルダムリング支持面(36)と同じ高さ、またはそれより低い高さで固定側キー溝(35)と連通し、且つその下方に厚肉部(37a)が形成されるようになっていればよい。
【0128】
その他の構成は、上記各実施形態と同様であるため、具体的な説明は省略する。
【0129】
この実施形態4においても、第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)からなるハウジング(30)に第3連通部(49)を形成しているので、圧縮機構(20)が動作するときに、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油が、空間連通部(40)である第3連通部(49)を通って排油空間(46)へ排出される。したがって、圧縮機構(20)の動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなり、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる構成を容易に実現できる。また、第1フレーム(31)と第2フレーム(32)の形状を簡素化でき、第1フレーム(31)と第2フレーム(32)が一体のハウジング(30)を構成することも容易である。
【0130】
−実施形態4の変形例−
図13の実施形態4は、第1連通部(41)である周方向溝(47)と第2連通部(42)である軸方向孔(32c)を空間連通部(40)として用いずに、第3連通部(49)のみを空間連通部(40)として用いる例であるが、第1連通部(41)及び第2連通部(42)と第3連通部(49)を併用してもよい。
【0131】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0132】
例えば、上記各実施形態1〜3においては、基本的に第1連通部(41)を第2フレーム(32)の外周面(44)に形成しているが、第1連通部(41)は、
図11に示した実施形態3の変形例例2のように、第1フレーム(31)の外周壁(37)の内周面(43)に形成してもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、ハウジング(30)を第1フレーム(31)と第2フレーム(32)とに分割し、環状空間(45)から排油空間(46)へ潤滑油を逃がす空間連通部(40)を、第1フレーム(31)の内周面(43)と第2フレーム(32)の外周面(44)が嵌合する部分に形成した第1連通部(41)を用いた構成にしているが、空間連通部(40)は、潤滑油が圧縮される作用を受ける環状空間(45)や固定側キー溝(35)から排油空間(46)へ排油できる構成になっていればよく、上記各実施形態の構成に限らず適宜変更してもよい。例えば、潤滑油を環状空間(45)や固定側キー溝(35)から排油空間(46)へ排油する構成になっているのであれば、実施形態4において説明したように、ハウジング(30)を第1フレーム(31)と第2フレーム(32)とが一体になった構造にしてもよい。
【0134】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能である。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
可動スクロールが偏心回転するときは、上記のようにオルダムリングがハウジングに対して往復動作をする。したがって、可動スクロールの偏心回転に伴って、オルダムリングと外周壁との間の環状空間が拡大と縮小を繰り返す。この環状空間には、圧縮機構を潤滑した潤滑油が溜まっている。したがって、この環状空間が縮小すると、潤滑油がオルダムリングの動作の抵抗となり、圧縮機の効率が低下してしまう。
【0008】
本開示の目的は、ハウジングの外周壁とオルダムリングとの間の環状空間の潤滑油が、可動スクロールが偏心回転するときのオルダムリングの動作の抵抗になるのを抑制し、圧縮機の効率が低下するのを抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様は、スクロール圧縮機であって、
ケーシング(10)と、
上記ケーシング(10)内に設けられるハウジング(30)と、
上記ハウジング(30)に固定される固定スクロール(50)と、
上記ハウジング(30)と上記固定スクロール(50)との間に配置され、該固定スクロール(50)に噛み合わされて該固定スクロール(50)に対して偏心回転運動を行う可動スクロール(60)と、
上記ハウジング(30)と上記可動スクロール(60)との間に配置され、該可動スクロール(60)の自転を規制するオルダムリング(70)と、を備え、
上記ハウジング(30)は、上記オルダムリング(70)を支持するオルダムリング支持面(36)と、上記オルダムリング(70)の外周に位置して該オルダムリング(70)との間に環状空間(45)を区画する外周壁(37)と、上記オルダムリング(70)の固定側キー(72)が摺動可能に嵌合する固定側キー溝(35)と、第1端部(41a)が上記固定側キー溝(35)の外周側端部に連通するとともに第2端部(41b)が上記固定スクロール(50)と上記オルダムリング支持面(36)との間の排油空間(46)に連通する空間連通部(40)と、を備えて
いる。
【0010】
第1の態様では、可動スクロール(60)の偏心回転時にオルダムリング(70)が上記固定側キー溝(35)に沿って動作することにより上記環状空間(45)の容積の一部が小さくなると、その環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油が、空間連通部(40)を通って排油空間(46)へ排出される。したがって、潤滑油に圧縮力が作用するのが抑制され、圧縮機の効率低下が抑制される。
【0011】
本開示の
第1の態様は、
上記空間連通部(40)は、上記ハウジング(30)の固定側キー溝(35)の外周側端部から周方向へのびる第1連通部(41)と、該第1連通部(41)に連通し且つ上記オルダムリング支持面(36)に開口する第2連通部(42)とを備えて
いる。
【0012】
第1の態様では、可動スクロール(60)の偏心回転時に上記環状空間(45)の一部が小さくなると、潤滑油は、空間連通部(40)の第1連通部(41)と第2連通部(42)を通って、その環状空間(45)(及び固定側キー溝(35))から排油空間(46)へ排出される。したがって、ハウジング(30)に第1連通部(41)と第2連通部(42)を形成するだけの簡単な構成で圧縮機の効率低下を抑制できる。
【0013】
本開示の
第1の態様は、
上記ハウジング(30)は、上記外周壁(37)を有する第1フレーム(31)と、該外周壁(37)の内周面(43)に嵌合する外周面(44)と上記オルダムリング支持面(36)とを有する第2フレーム(32)と、を有し、
上記第1連通部(41)は、上記第1フレーム(31)の内周面(43)または第2フレーム(32)の外周面(44)に形成された周方向溝(47)を含んでいることを特徴とする。
【0014】
第1の態様では、ハウジング(30)に第1フレーム(31)と第2フレーム(32)とを設け、第1連通部(41)として、第1フレーム(31)の内周面(43)または第2フレーム(32)の外周面(44)に形成された周方向溝(47)を用いているので、可動スクロール(60)の偏心回転時にオルダムリング(70)が潤滑油の抵抗になるのを抑制する構成を容易に実用化することが可能になる。
【0015】
本開示の
第2の態様は、
第1の態様において、
上記第2フレーム(32)には、該第2フレーム(32)に形成される固定側キー溝(35)を含む部分が径方向外方へ突出する凸部(38)が形成され、上記第1フレーム(31)には、該凸部(38)を受容する凹部(39)が形成され、
上記凸部(38)の外周面に、上記周方向溝(47)が形成されている
ことを特徴とする。
【0016】
第2の態様では、第2フレーム(32)に凸部(38)が形成され、第1フレーム(31)に凹部(39)が形成される構成において、凸部(38)に形成された周方向溝(47)が第1連通部(41)となり、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の潤滑油が排油空間(46)へ排出される。
【0017】
本開示の
第3の態様は、
第2の態様において、
上記凸部(38)と上記凹部(39)との間に空隙(48)が形成され、
上記第2連通部(42)が上記空隙(48)を含んでいる
ことを特徴とする。
【0018】
第3の態様では、凸部(38)に第1連通部(41)として形成された周方向溝(47)から、第2連通部(42)として形成された凸部(38)と凹部(39)との間の空隙(48)を通って、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の潤滑油が排油空間(46)へ排出される。
【0019】
本開示の
第4の態様は、
第1から第3の態様の何れか1つにおいて、
上記第1連通部(41)は、上記第2フレーム(32)に形成されている
ことを特徴とする。
【0020】
本開示の
第5の態様は、
第1から第3の態様の何れか1つにおいて、
上記第1連通部(41)は、上記第1フレーム(31)に形成されている
ことを特徴とする。
【0021】
第4,第5の態様では、第2フレーム(32)または第1フレーム(31)に形成された第1連通部(41)から、さらにオルダムリング支持面(36)において開口する上記第2連通部(42)を通って、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の潤滑油が排油空間(46)へ排出される。
【0022】
本開示の
第6の態様は、
第1から第5の態様の何れか1つにおいて、
上記第2連通部(42)は、上記固定側キー溝(35)を挟んだ両側に形成されてオルダムリング支持面(36)に開口する軸方向孔(32c)により形成され、
上記第1連通部(41)は、上記固定側キー溝(35)から上記軸方向孔(32c)まで上記ハウジング(30)の周方向へ形成されている
ことを特徴とする。
【0023】
第6の態様では、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の潤滑油が、第1連通部(41)から、第2連通部(42)である軸方向孔(32c)を通って、排油空間(46)へ排出される。軸方向孔(32c)は、ボルト孔のようなハウジング(30)に既に設けられている孔を用いることにより、構成を簡素化できる。
【0024】
本開示の
第7の態様は、
第1から第5の態様の何れか1つにおいて、
上記固定側キー溝(35)は、上記ハウジング(30)に、上記可動スクロール(60)の偏心回転運動の軸心を挟んで配置された一対のキー溝であり、
上記第1連通部(41)は、上記一対のキー溝の一方から他方に連通する通路により構成され、
上記第2連通部(42)は、上記一対のキー溝の他方により構成されている
ことを特徴とする。
【0025】
第7の態様では、固定側キー溝(35)の他方を第2連通部(42)に利用しているので、構成を簡素化できる点で高い効果を得ることが可能となる。
【0026】
本開示の
第8の態様は、第1の態様において、
上記ハウジング(30)は、上記外周壁(37)を有する第1フレーム(31)と、該外周壁(37)の内周面(43)に嵌合する外周面(44)と上記オルダムリング支持面(36)とを有する第2フレーム(32)と、を有し、
上記第1フレーム(31)の外周壁(37)の内面には、上記第2フレーム(32)に形成される固定側キー溝(35)の外周端と上記排油空間(46)とを、該第1フレーム(31)の軸方向に沿って連通する第3連通部(49)が上記空間連通部(40)として形成されている
ことを特徴とする。
【0027】
第8の態様では、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の潤滑油が、第3連通部(49)を通って、排油空間(46)へ排出される。したがって、潤滑油に圧縮力が作用するのが抑制され、圧縮機の効率低下が抑制される。
【0028】
本開示の
第9の態様は、
第8の態様において、
上記第1フレーム(31)の外周壁(37)は、厚肉部(37a)と、該厚肉部(37a)の上方に位置する薄肉部(37b)とを有し、
上記厚肉部(37a)が上記第2フレーム(32)の外周面と嵌合する一方、上記薄肉部(37b)と上記第2フレーム(32)との間に上記第3連通部(49)が形成される
ことを特徴とする。
【0029】
第9の態様では、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の潤滑油が、薄肉部(37b)と第2フレーム(32)との間に形成される第3連通部(49)を通って、排油空間(46)へ排出される。したがって、簡単な構成により、潤滑油に圧縮力が作用するのが抑制され、圧縮機の効率低下が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0031】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。なお、本明細書において、「軸方向」は駆動軸(22)の中心軸の方向を表し、「周方向」は駆動軸(22)を中心とする円または円弧の周方向を表すものとする。
【0032】
図1は、実施形態1に係るスクロール圧縮機(1)の縦断面図である。スクロール圧縮機(1)は、例えば、蒸気圧縮式の冷媒回路(図示を省略)に設けられ、冷媒などの作動流体を圧縮するものである。例えば、冷媒回路において、スクロール圧縮機(1)で圧縮された冷媒は、凝縮器で凝縮してから減圧機構で減圧され、その後、蒸発器で蒸発してスクロール圧縮機(1)に吸入され、以上を1サイクルとして繰り返し循環する。スクロール圧縮機(1)は、ケーシング(10)と、圧縮機構(20)と、電動機(21)と、駆動軸(22)とを備えている。
【0033】
〔ケーシング〕
ケーシング(10)は、両端が閉塞された縦長の円筒状に形成されている。ケーシング(10)内には、上側から順に圧縮機構(20)と電動機(21)とが収容されている。そして、ケーシング(10)内を軸方向(上下方向)に延びる駆動軸(22)によって圧縮機構(20)と電動機(21)とが連結されている。
【0034】
ケーシング(10)には、吸入管(11)と、吐出管(12)とが設けられている。吸入管(11)は、ケーシング(10)の上部を軸方向に貫通して圧縮機構(20)に接続され、圧縮機構(20)に低圧の流体(例えばガス冷媒)を導入する。吐出管(12)は、ケーシング(10)の胴部を径方向に貫通してケーシング(10)の内部空間と連通し、ケーシング(10)内の高圧の流体をケーシング(10)の外へ導出する。
【0035】
ケーシング(10)の底部には、潤滑油が貯留される油溜まり部(13)が設けられている。ケーシング(10)内において電動機(21)の下方には、軸受部材(14)が設けられている。軸受部材(14)は、その中央部に貫通孔が形成され、その貫通孔に駆動軸(22)が挿通されている。このような構成により、軸受部材(14)は、駆動軸(22)を回転可能に支持している。
【0036】
〔圧縮機構〕
圧縮機構(20)は、ケーシング(10)内に収容されている。圧縮機構(20)は、吸入管(11)を経由して導入された流体を圧縮してケーシング(10)内に吐出するように構成されている。圧縮機構(20)の具体的な構成は後述する。
【0037】
〔電動機〕
電動機(21)は、ケーシング(10)内に収容され、圧縮機構(20)の下方に配置されている。電動機(21)は、固定子(21a)と回転子(21b)とを有している。固定子(21a)は、円筒状に形成されてケーシング(10)に固定されている。また、固定子(21a)の外周面には、固定子(21a)を軸方向に貫通するコアカットが設けられている。コアカットは、固定子(21a)の外周面の数箇所を平面状に形成した部分であり、その平面によってケーシング(10)との間にできる隙間を通って流体が固定子(21a)の上下の空間を移動して固定子(21a)を冷却するように形成されている。回転子(21b)は、円筒状に形成され、固定子(21a)の内周に回転可能に挿通されている。また、回転子(21b)の内周には、駆動軸(22)が挿通されて固定されている。
【0038】
〔駆動軸〕
駆動軸(22)は、主軸部(22a)と、偏心軸部(22b)と、カウンタウェイト部(22c)とを有している。主軸部(22a)は、ケーシング(10)の軸方向(上下方向)に延びている。偏心軸部(22b)は、主軸部(22a)の上端に設けられている。また、偏心軸部(22b)は、その外径が主軸部(22a)の外径よりも小径に形成され、その軸心が主軸部(22a)の軸心に対して所定距離だけ偏心している。カウンタウェイト部(22c)は、主軸部(22a)から径方向外方に突出し、回転時の動的バランスをとるように構成されている。
【0039】
また、駆動軸(22)の内部には、給油通路(22d)が形成されている。給油通路(22d)は、ケーシング(10)の底部(油溜まり部(13))に貯留された潤滑油を圧縮機構(20)やジャーナル軸受部(例えば駆動軸(22)と軸受部材(14)との摺接部分など)に供給するための通路である。また、駆動軸(22)の下端部には、吸入ノズル(22e)が設けられている。吸入ノズル(22e)は、油溜まり部(13)から潤滑油を吸い上げるための部材であり、容量式のポンプを構成している。吸入ノズル(22e)の吸入口(
図1における下端開口)は、油溜まり部(13)に浸漬され、吸入ノズル(22e)の吐出口(
図1における上端開口)は、給油通路(22d)の流入端(
図1における下端)と連通している。
【0040】
〔圧縮機構の構成〕
次に、
図2〜
図6を参照して、圧縮機構(20)の構成について説明する。圧縮機構(20)は、ハウジング(30)と、固定スクロール(50)と、可動スクロール(60)と、オルダムリング(70)とを備えている。ハウジング(30)は、ケーシング(10)内に設けられている。固定スクロール(50)は、ハウジング(30)の上面に固定されている。可動スクロール(60)は、ハウジング(30)と固定スクロール(50)との間に配置され、固定スクロール(50)に噛み合わされて固定スクロール(50)に対して偏心回転運動を行うように構成されている。オルダムリング(70)は、ハウジング(30)と可動スクロール(60)との間に配置され、可動スクロール(60)の自転を規制するように構成されている。
【0041】
〈ハウジング〉
ハウジング(30)は、ケーシング(10)内に固定され、ケーシング(10)の内部空間を軸方向に2つの空間に区画している。ハウジング(30)の上側の空間が第1空間(S1)を構成し、ハウジング(30)の下側の空間が第2空間(S2)を構成している。一方、ハウジング(30)及び固定スクロール(50)には、ハウジング(30)の上側の第1空間(S1)と、ハウジング(30)の下側の第2空間(S2)とを連通するように、外周の一部にケーシング(10)との間に後述の連絡通路(75)が形成されている。
【0042】
ハウジング(30)は、第1フレーム(31)と、オルダムリング(70)と第1フレーム(31)との間に配置される第2フレーム(32)とを有している。また、第1フレーム(31)と第2フレーム(32)との間には、駆動軸(22)のカウンタウェイト部(22c)が収容される収容空間(S30)が形成されている。
【0043】
《第1フレーム》
図2および
図3に示すように、第1フレーム(31)は、厚肉の円板状に形成され、その外周面がケーシング(10)の内周面に固定されている。第1フレーム(31)の外周縁部には、固定スクロール(50)の外周縁部(外周壁部(53))が固定されている。第1フレーム(31)には、第1凹部(31a)と、第2凹部(31b)と、膨出部(31c)とが設けられている。
【0044】
第1凹部(31a)は、固定スクロール(50)と対向する面(
図2では上面)の中央部で固定スクロール(50)から軸方向(
図2では下方)に凹陥している。第1凹部(31a)は、平面視が円形状に形成されている。すなわち、第1凹部(31a)は、第1フレーム(31)の上面に開口するほぼ円形断面の窪みである。
【0045】
第2凹部(31b)は、第1凹部(31a)の底面の中央部から軸方向(
図2では下方)に凹陥している。第2凹部(31b)は、平面視において円形状に形成されている。すなわち、第2凹部(31b)は、第1凹部(31a)の底面に開口するほぼ円形断面の窪みである。第2凹部(31b)は、平面視が第1凹部(31a)の形状よりも小さい円形状に形成されている。
【0046】
膨出部(31c)は、固定スクロール(50)から遠ざかる方向(
図2では下方)へ向けて第1フレーム(31)の上側の部分から膨出している。膨出部(31c)の中央部には、膨出部(31c)を軸方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔には、軸受メタル(31d)が装着されている。そして、軸受メタル(31d)には、駆動軸(22)の主軸部(22a)の上端部の大径部分が挿通されている。このような構成により、膨出部(31c)は、駆動軸(22)の主軸部(22a)の上端部(大径部分)を回転可能に支持している。
【0047】
《第2フレーム》
図2および
図4A,
図4Bに示すように、第2フレーム(32)は、円環板状に形成されている。第2フレーム(32)の外形は、第1フレーム(31)の第1凹部(31a)に対応した形状(第1凹部(31a)と嵌合する形状)となっている。第2フレーム(32)は、第1フレーム(31)の第1凹部(31a)に嵌め込まれ、且つ周方向の6箇所に形成された座ぐり部(32c)において六角孔付きボルト(図示せず)により第1フレーム(31)に固定されている。このような構成により、第1フレーム(31)の第2凹部(31b)と第2フレーム(32)とに囲まれた空間が収容空間(S30)を構成している。
【0048】
第2フレーム(32)の内周縁部には、環状凸部(32a)が設けられている。環状凸部(32a)の突端面には、その周方向に沿うリング状の凹溝(32d)が設けられ、その凹溝(32d)にシールリング(32b)が嵌め込まれている。シールリング(32b)は、後述の可動側鏡板(61)の背面(
図2では下面)と摺接し、第2フレーム(32)と可動側鏡板(61)との間の隙間をシールする。このような構成により、シールリング(32b)は、可動側鏡板(61)の背面に面する空間(すなわち第2フレーム(32)と可動スクロール(60)との間の空間)を、径方向内側と外側の2つの空間(シールリング(32b)の内周側の空間とシールリング(32b)の外周側の空間)に区画している。
【0049】
《シールリング》
第1フレーム(31)と第2フレーム(32)との間には、第2のシールリング(33)が設けられている。第2のシールリング(33)は、第1フレーム(31)と第2フレーム(32)との間の軸方向の隙間をシールする。第1フレーム(31)の第1凹部(31a)の底面(円環状の底面)に第1凹部(31a)の底面の内周縁部に沿うリング状の凹溝が設けられ、その凹溝に第2のシールリング(33)が嵌め込まれている。
【0050】
〈固定スクロール〉
図2に示すように、固定スクロール(50)は、ハウジング(30)の軸方向における一方側(
図2では上側)に配置されている。固定スクロール(50)は、固定側鏡板(51)と、固定側ラップ(52)と、外周壁部(53)とを有している。
【0051】
固定側鏡板(51)は、概ね円形の板状に形成されている。固定側ラップ(52)は、インボリュート曲線を描く渦巻き壁状に形成され、固定側鏡板(51)の前面(
図2では下面)に立設されて固定側鏡板(51)から突出している。外周壁部(53)は、固定側ラップ(52)の外周側を囲むように形成され、固定側鏡板(51)の前面から下方に突出している。固定側ラップ(52)の先端面(
図2では下面)と外周壁部(53)の先端面とはほぼ同一の面になっている。
【0052】
固定スクロール(50)の外周壁部(53)には、吸入ポート(図示を省略)が形成されている。吸入ポートには、吸入管(11)の下流端が接続される。固定スクロール(50)の固定側鏡板(51)の中央部には、固定側鏡板(51)を貫通する吐出口(54)が形成されている。なお、固定側鏡板(51)の上面には、図示していないリリーフポートを開閉するためのリリーフ弁(55)が設けられている。
【0053】
〈可動スクロール〉
図2および
図5に示すように、可動スクロール(60)は、可動側鏡板(61)と、可動側ラップ(62)と、ボス部(63)とを有している。
【0054】
可動側鏡板(61)は、概ね円形の板状に形成されている。可動側ラップ(62)は、インボリュート曲線を描く渦巻き壁状に形成され、可動側鏡板(61)の前面(
図2では上面)に立設されて可動側鏡板(61)から突出している。ボス部(63)は、円筒状に形成され、可動側鏡板(61)の背面(
図2では下面)の中央部に配置されている。可動スクロール(60)の可動側ラップ(62)は、固定スクロール(50)の固定側ラップ(52)と噛み合わされている。
【0055】
固定スクロール(50)と可動スクロール(60)との間には、圧縮室(S20)が形成されている。圧縮室(S20)は、流体を圧縮するための空間であり、吸入管(11)から吸入ポート(図示を省略)を通じて吸入した流体を圧縮し、圧縮した流体を、吐出口(54)を通じて吐出するように構成されている。
【0056】
〈連絡通路〉
図1〜
図3に示すように、圧縮機構(20)には、連絡通路(75)が設けられている。連絡通路(75)は、第1空間(S1)に吐出された流体を第2空間(S2)(すなわち圧縮機構(20)と電動機(21)との間及びそれより下方の空間)に流出させるための通路である。連絡通路(75)は、スクロール側通路(76)とハウジング側通路(77)とによって構成されている。スクロール側通路(76)は、固定スクロール(50)の外周壁部(53)の外周縁部を軸方向に上端から下端までのびる溝で構成されている。ハウジング側通路(77)は、第1フレーム(31)の外周縁部を軸方向に上端から下端までのびる溝で構成されている。
【0057】
〈油戻し通路〉
図2に示すように、圧縮機構(20)には、油戻し通路(80)が設けられている。油戻し通路(80)は、圧縮機構(20)の潤滑油を第2空間(S2)に排出して油溜まり部(13)へ戻すための通路である。油戻し通路(80)は、接続通路(81)と油戻し部材(82)とによって構成されている。接続通路(81)は、第1フレーム(31)の第2凹部(31b)から径方向外方へ向かって延びている。油戻し部材(82)は、その流入端が接続通路(81)の流出端に接続されるとともにその流出端が下方を向くように設けられ、接続通路(81)に流入した潤滑油を第2空間(S2)に流出するように構成されている。
【0058】
〈オルダムリング〉
図2,
図6に示すように、オルダムリング(70)は、断面が矩形のリング状に形成されたリング状本体部(73)を有している。オルダムリング(70)のリング状本体部(73)の厚みは、オルダムリング(70)の全周に亘って一定となっている。オルダムリング(70)には、2つの可動側キー(71)と2つの固定側キー(72)とがリング状本体部(73)と一体に設けられている。なお、
図2は、中心より左側を、可動側キー(71)を通る平面で切断し、中心より右側を、固定側キー(72)を通る平面で切断した断面図である。
【0059】
オルダムリング(70)には、それぞれがオルダムリング(70)の径方向外方へ向けて突出する4つの突出部分が等間隔(90°間隔)で周方向に設けられている。そして、オルダムリング(70)の4つの突出部分のうち互いに対向する2つの突出部分に、軸方向の一方へ突出する2つ(一対)の可動側キー(71)がそれぞれ形成され、残りの2つの突出部分に、軸方向の他方へ突出する2つ(一対)の固定側キー(72)がそれぞれ形成されている。
【0060】
《可動側キー》
可動側キー(71)は、オルダムリング(70)の可動スクロール(60)側(
図2では上側)に突出している。具体的には、可動側キー(71)は、概ね直方体状に形成された突起であり、オルダムリング(70)の可動スクロール(60)と対向する面(
図2では上面)に設けられている。2つの可動側キー(71)は、オルダムリング(70)の中心軸を挟んで互いに対向している。すなわち、一方の可動側キー(71)は、オルダムリング(70)の中心軸を挟んで他方の可動側キー(71)の反対側に配置されている。なお、オルダムリング(70)の可動側キー(71)が形成された面は、
図2において可動側鏡板(61)の背面(下面)と摺接する面であり、平坦面となっている。
【0061】
《固定側キー》
固定側キー(72)は、オルダムリング(70)の第2フレーム(32)側(
図2では下側)に突出している。具体的には、固定側キー(72)は、概ね直方体状に形成された突起であり、オルダムリング(70)の第2フレーム(32)と対向する面(
図2では下面)に設けられている。2つの固定側キー(72)は、オルダムリング(70)の中心軸を挟んで互いに対向している。すなわち、一方の固定側キー(72)は、オルダムリング(70)の中心軸を挟んで他方の固定側キー(72)の反対側に配置されている。なお、2つの固定側キー(72)の対向方向は、2つの可動側キー(71)の対向方向と直交する方向となっている。また、オルダムリング(70)の固定側キー(72)が形成された面は、
図2において第2フレーム(32)の上面と摺接する面であり、平坦面となっている。
【0062】
〈可動側キー溝〉
図2,
図5に示すように、可動スクロール(60)の可動側鏡板(61)には、
図2においてオルダムリング(70)と対向する面(下面)に、2つ(一対)の可動側キー溝(64)が設けられている。2つの可動側キー溝(64)には、オルダムリング(70)の2つの可動側キー(71)がそれぞれ摺動可能に嵌め込まれている。なお、可動側鏡板(61)がオルダムリング(70)と対向する面は、
図2においてオルダムリング(70)の上面と摺接する面であり、平坦面となっている。
【0063】
可動側鏡板(61)の可動側キー溝(64)は、可動側鏡板(61)を径方向に延びて可動側鏡板(61)の外周に開口している。可動側鏡板(61)の2つの可動側キー溝(64)は、可動スクロール(60)の中心軸を挟んで互いに対向している。すなわち、一方の可動側キー溝(64)は、可動スクロール(60)の中心軸を挟んで他方の可動側キー溝(64)の反対側に配置されている。
【0064】
〈固定側キー溝〉
図2,
図4に示すように、第2フレーム(32)には、
図2においてオルダムリング(70)と対向する面(上面)に、2つ(一対)の固定側キー溝(35)が設けられている。2つの固定側キー溝(35)には、オルダムリング(70)の2つの固定側キー(72)がそれぞれ摺動可能に嵌め込まれている。なお、第2フレーム(32)がオルダムリング(70)と対向する面は、
図2においてオルダムリング(70)の下面と摺接する面であり、平坦面となっている。
【0065】
第2フレーム(32)の固定側キー溝(35)は、第2フレーム(32)を径方向に延びて第2フレーム(32)の外周に開口し、固定側キー溝(35)の径方向内側の端部は閉塞されている。第2フレーム(32)の2つの固定側キー溝(35)は、第2フレーム(32)の中心軸を挟んで互いに対向する位置に(可動スクロール(60)の偏心回転運動の軸心を挟んで)配置されている。なお、2つの固定側キー溝(35)の対向方向は、2つの可動側キー溝(64)の対向方向と直交する方向となっている。
【0066】
〈オルダムリング作動空間の油を排出する構造〉
上記ハウジング(30)の第2フレーム(32)は、オルダムリング(70)を支持するオルダムリング支持面(36)を有し、このオルダムリング支持面(36)はオルダムリング(70)の下面と摺接する面により構成されている。
【0067】
ハウジング(30)の第1フレーム(31)は、上記オルダムリング(70)の外周に位置して該オルダムリング(70)との間に環状空間(45)を区画する外周壁(37)を有している。
【0068】
上記ハウジング(30)の第2フレーム(32)には、上記環状空間(45)と、上記固定スクロール(50)と上記オルダムリング支持面(36)との間の排油空間(46)とに連通する空間連通部(40)が形成されている。この空間連通部(40)は、上記ハウジング(30)の固定側キー溝(35)の外周側端部から周方向へのびる第1連通部(41)と、該第1連通部(41)に連通し且つ上記オルダムリング支持面(36)に開口する第2連通部(42)(軸方向孔(32c))とを備え、環状空間(45)の油を上記排油空間(46)へ排出するように構成されている。
【0069】
上記第2フレーム(32)には、上述したように、該第2フレーム(32)を六角孔付きボルトで上記第1フレームに固定するための座ぐり部(32c)が形成されている。上記第1連通部(41)は、第2フレーム(32)の外周面(44)に、固定側キー溝(35)の両隣に形成された座ぐり部(32c)同士に連通するように形成された円弧状の周方向溝(47)で構成されている。第2連通部(42)は、第2フレーム(32)の上方に向かって開口した固定側キー溝(35)の両隣の座ぐり部(32c)により、つまり、上記固定スクロール(50)と上記オルダムリング支持面(36)との間の排油空間(46)に対して開口した、固定側キー溝(35)の両隣の座ぐり部(32c)で構成されている。第1連通部(41)は、第1端部(41a)が上記固定側キー溝(35)の外周側端部(開口側端部)に連通し、第2端部(41b)は第2連通部(42)を介して上記排油空間(46)に連通している。
【0070】
上記周方向溝(47)により形成された第1連通部(41)は、上記第1フレーム(31)の外周壁(37)の内周面(43)と第2フレーム(32)の外周面(44)とが嵌合する部分に形成されている。
【0071】
〔スクロール圧縮機の運転動作〕
次に、スクロール圧縮機(1)の運転動作について説明する。
【0072】
電動機(21)が作動すると、圧縮機構(20)の可動スクロール(60)が駆動軸(22)によって回転駆動される。可動スクロール(60)は、オルダムリング(70)によって自転を規制されつつ、駆動軸(22)の主軸部(22a)の軸心を中心として偏心軸部(22b)の偏心量を半径とする旋回軌道上を公転する。可動スクロール(60)が公転(偏心回転運動)を行うと、吸入管(11)から圧縮機構(20)の吸入ポート(図示を省略)を通じて流体(例えば低圧ガス冷媒)が圧縮室(S20)に吸入されて圧縮される。圧縮室(S20)において圧縮された流体(例えば高圧ガス冷媒)は、固定スクロール(50)の吐出口(54)を通じて第1空間(S1)へ吐出される。第1空間(S1)に吐出された高圧の流体は、固定スクロール(50)およびハウジング(30)に設けられた連絡通路(75)を通じて第2空間(S2)に流入する。第2空間(S2)に流入した高圧の流体は、吐出管(12)を通じてケーシング(10)の外部へ吐出される。
【0073】
〔運転動作における潤滑油の流れ〕
次に、スクロール圧縮機(1)の運転動作における潤滑油の流れについて説明する。
【0074】
電動機(21)が作動して駆動軸(22)が回転すると、油溜まり部(13)の潤滑油は、吸入ノズル(22e)の容量ポンプ作用(潤滑油を汲み上げる作用)によって給油通路(22d)に吸い込まれ、駆動軸(22)と圧縮機構(20)や軸受部材(14))とが摺動する摺接部分に供給される。具体的には、給油通路(22d)を流れる潤滑油は、給油通路(22d)から径方向に延びる分岐通路(図示を省略)を通じて、駆動軸(22)と軸受部材(14)との間の摺接部分と、駆動軸(22)の主軸部(22a)と第1フレーム(31)の膨出部(31c)(軸受メタル(31d))との間の摺接部分と、駆動軸(22)の偏心軸部(22b)と可動スクロール(60)のボス部(63)との間の摺接部分など、複数の摺動部分に供給される。なお、給油通路(22d)の上端から流出した潤滑油は、別の給油通路(図示を省略)を通じて固定スクロール(50)の外周壁部(53)と可動スクロール(60)の可動側鏡板(61)との摺接部分に供給される。
【0075】
可動スクロール(60)のボス部(63)と駆動軸(22)の偏心軸部(22b)との間の摺動部分に供給された潤滑油は、第2フレーム(32)の内周空間(シールリング(32b)の内周側の空間)と収容空間(S30)とにより構成される油溜め空間に流入して貯留される。油溜め空間に貯留された潤滑油は、油戻し通路(80)を通じて第2空間(S2)に流入し、電動機(21)の固定子(21a)に設けられたコアカットを通じて油溜まり部(13)に戻る。
【0076】
また、油溜め空間に貯留された潤滑油の一部は、可動スクロール(60)とオルダムリング(70)とが摺接する部分(
図2では可動側鏡板(61)の下面とオルダムリング(70)の上面との間)と、第2フレーム(32)とオルダムリング(70)とが摺接する部分(
図2ではオルダムリング(70)の下面と第2フレーム(32)の上面との間)に供給される。例えば、油溜め空間に溜まり込んだ潤滑油の一部は、可動側キー溝(64)および固定側キー溝(35)を通じて可動スクロール(60)とオルダムリング(70)との間の摺接部分および第2フレーム(32)とオルダムリング(70)との間の摺接部分にそれぞれ供給される。そして、可動スクロール(60)とオルダムリング(70)との間の摺接部分および第2フレーム(32)とオルダムリング(70)との間の摺接部分の潤滑に利用された潤滑油は、シールリング(32b)の外周側の空間に流入する。この潤滑油は、オルダムリング(70)の外周の環状空間(45)に溜まる。
【0077】
〔環状空間からの油の排出〕
次に、環状空間(45)に溜まる油が排出される流れについて説明する。まず、
図7を参照して、圧縮機構(20)の動作中の可動スクロール(60)とオルダムリング(70)の挙動を説明する。なお、
図7では、オルダムリング(70)の挙動を理解しやすくするために、オルダムリング(70)にドットを付している。また、
図7の例では、可動スクロール(60)が反時計回り方向に公転するものとし、
図7において可動スクロール(60)が最も右側に位置しているときの駆動軸(22)の回転角を基準角度(0°)としている。
【0078】
駆動軸(22)が基準角度から反時計回り方向へ90°回転すると、
図7においてオルダムリング(70)が第2フレーム(32)に対して固定側キー溝(35)に沿って上方へ可動範囲の上端まで移動し、可動スクロール(60)はオルダムリング(70)に対して可動側キー溝(64)に沿って左方向へ可動範囲の中央(可動範囲の1/2の位置)まで移動する。このとき、可動スクロール(60)は、第2フレーム(32)に対するオルダムリング(70)の相対的な動作とオルダムリング(70)に対する可動スクロール(60)の相対的な動作の2つの動作が合成されて、自転をせずに反時計回り方向へ90°公転する(
図7の90°の位置)。
【0079】
駆動軸(22)がさらに反時計回り方向へ90°回転すると、
図7においてオルダムリング(70)は可動範囲の上端から中央まで移動し、可動スクロール(60)は可動範囲の中央から左側端まで移動する。このとき、可動スクロール(60)は、2つの動作が合成されて、自転をせずに反時計回り方向へさらに90°公転する(
図7の180°の位置)。
【0080】
駆動軸(22)がさらに反時計回り方向へ90°回転すると、
図7においてオルダムリング(70)は可動範囲の中央から下端まで移動し、可動スクロール(60)は可動範囲の左側端から中央まで移動する。このとき、可動スクロール(60)は、2つの動作が合成されて、自転をせずに反時計回り方向へさらに90°公転する(
図7の270°の位置)。
【0081】
駆動軸(22)がさらに反時計回り方向へ90°回転すると、
図7においてオルダムリング(70)は可動範囲の下端から中央まで移動し、可動スクロール(60)は可動範囲の中央から右側端まで移動する。このとき、可動スクロール(60)は、2つの動作が合成されて、自転をせずに反時計回り方向へさらに90°回転する(
図7の0°の位置)。
【0082】
以上のように、駆動軸(22)が回転して可動スクロール(60)が公転するときに、オルダムリング(70)は、
図7において、固定側キー溝(35)に沿って可動範囲の上端と下端の間を往復する動作を繰り返す。オルダムリング(70)が
図7において可動範囲の上端へ移動するとき、オルダムリング(70)の周囲に形成されている環状空間(45)は、該オルダムリング(70)の上方の部分において小さくなって行く。特に、
図7の上側の固定側キー溝(35)では、その中を図の上方へ移動する固定側キー(72)によって内部の容積が小さくなるため、環状空間(45)に溜まっている潤滑油が、固定側キー溝(35)の中で圧縮されるような力を受ける。
【0083】
これに対して、本実施形態では、固定側キー溝(35)に連通する空間連通部(40)を第2フレーム(32)に形成しているので、圧縮される力を受けた潤滑油は、容積が小さくなった環状空間(45)や固定側キー溝(35)から第1連通部(41)及び第2連通部(42)(座ぐり部(32c))を通って排油空間(46)へ抜けて行く。このため、環状空間(45)や固定側キー溝(35)内の潤滑油がオルダムリング(70)の動作の抵抗になるのが抑制される。
【0084】
このことは、オルダムリング(70)が
図7において可動範囲の下端へ移動するときも同様であり、オルダムリング(70)の周囲に形成されている環状空間(45)が、該オルダムリング(70)の下方の部分において小さくなり、
図7の下側の固定側キー溝(35)の内部の容積が小さくなっても、潤滑油は、環状空間(45)や固定側キー溝(35)から第1連通部(41)及び第2連通部(42)(座ぐり部(32c))を通って排油空間(46)へ抜けて行く。したがって、環状空間(45)や固定側キー溝(35)内の潤滑油がオルダムリング(70)の動作の抵抗になるのが抑制される。
【0085】
−実施形態1の効果−
以上説明したように、この実施形態1のスクロール圧縮機は、上記ハウジング(30)が、上記オルダムリング(70)を支持するオルダムリング支持面(36)と、上記オルダムリング(70)の外周に位置して該オルダムリング(70)との間に環状空間(45)を区画する外周壁(37)と、上記オルダムリング(70)の固定側キー(72)が摺動可能に嵌合する固定側キー溝(35)と、第1端部(41a)が上記固定側キー溝(35)の外周側端部に連通するとともに第2端部(41b)が上記固定スクロール(50)と上記オルダムリング支持面(36)との間の排油空間(46)に連通する空間連通部(40)とを備えている。
【0086】
そして、この実施形態1では、可動スクロール(60)の偏心回転時にオルダムリング(70)が上記固定側キー溝(35)に沿って動作することにより、
図7で説明したように上記環状空間(45)が小さくなると、この環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油は、固定側キー溝(35)の外周側端部に第1端部(41a)が連通して第2端部(42b)が排油空間(46)に連通する空間連通部(40)を通って、排油空間(46)へ排出される。このように、本実施形態によれば、圧縮機構(20)が動作するときに、固定側キー溝(35)の中の潤滑油が排油空間(46)へ排出されるため、潤滑油に圧縮される力が作用するのが抑制される。したがって、圧縮機構(20)が動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなるから、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる。
【0087】
また、この実施形態1では、上記空間連通部(40)が、上記ハウジング(30)の固定側キー溝(35)の外周側端部から周方向へのびる第1連通部(41)と、該第1連通部(41)に連通し且つ上記オルダムリング支持面(36)に開口する第2連通部(42)とを備えている。そして、第2連通部(42)として、第2フレーム(32)を第1フレーム(31)に固定するための六角孔付きボルトを取り付ける座ぐり部(軸方向孔)(32c)を利用している。
【0088】
したがって、ハウジング(30)に第1連通部(41)と第2連通部(42)を形成する簡単な構成で圧縮機の構成低下を抑制でき、しかも第2連通部(42)に座ぐり部(32c)を利用することにより、構成を簡素化できる効果を得ることが可能となる。
【0089】
また、この実施形態1では、上記ハウジング(30)を、上記外周壁(37)を有する第1フレーム(31)と、該外周壁(37)の内周面(43)に嵌合する外周面(44)と上記オルダムリング支持面(36)とを有する第2フレーム(32)とを用いて構成し、上記第1連通部(41)を、上記第2フレーム(32)の外周面(44)に形成された周方向溝(47)を含んだ構成にしている。
【0090】
このように、この実施形態1ではハウジング(30)を2つの部材に分けて、第1連通部(41)を、第2フレーム(32)の外周面に形成した周方向溝(47)を用いて簡単に形成することができるから、可動スクロール(60)の偏心回転時にオルダムリング(70)が潤滑油の抵抗になるのを抑制する構成を容易に実用化できる。
【0091】
《実施形態2》
図8に示した実施形態2について説明する。
【0092】
この実施形態2は、空間連通部(40)の構成が実施形態1とは異なるように構成したものである。
【0093】
実施形態2の空間連通部(40)は、第1連通部(41)が、一対の固定側キー溝(35)の一方から他方まで連通する円弧状の周方向溝(47)により構成されている。この実施形態2の周方向溝(47)は、実施形態1の周方向溝(47)が固定側キー溝(35)とその隣の座ぐり部(32c)の間に形成された周長が短い溝であるのに対して、固定側キー溝(35)の一方から他方まで連通する周長が長い溝である。
【0094】
第2連通部(42)は、実施形態1では固定側キー溝(35)の隣の座ぐり部(32c)により構成しているのに対して、この実施形態2では、一対の固定側キー溝(35)の一方から他方まで連通する円弧状の周方向溝(47)を第1連通部(41)として設ける構成において、固定側キー溝(35)の他方により構成されている。つまり、
図8において上側に位置する固定側キー溝(35)の中の潤滑油を排出する場合は、同図の下側の固定側キー溝(35)が第2連通部になり、逆に
図8において下側に位置する固定側キー溝(35)の中の潤滑油を排出する場合は、同図の上側の固定側キー溝(35)が第2連通部になる。
【0095】
その他の構成は実施形態1と同じであるため、具体的な説明は省略する。
【0096】
この実施形態2においても、駆動軸(22)が回転して可動スクロール(60)が公転するとき、オルダムリング(70)は、既に動作を説明した
図7において、固定側キー溝(35)に沿って可動範囲の上端と下端の間を往復する動作を繰り返す。オルダムリング(70)が
図7において可動範囲の上端へ移動するとき、オルダムリング(70)の周囲に形成されている環状空間(45)は、該オルダムリング(70)の上方の部分において小さくなって行く。特に、
図7の上側の固定側キー溝(35)では、その中を図の上方へ移動する固定側キー(72)によって内部の容積が小さくなるため、環状空間(45)に溜まっている潤滑油が、固定側キー溝(35)の中で圧縮されるような力を受ける。
【0097】
この実施形態2では、固定側キー溝(35)に連通する空間連通部(40)を第2フレーム(32)に形成し、上側の固定側キー溝(35)で潤滑油が圧縮される力を受ける場合は下側の固定側キー溝(35)が第2連通部になるようにしているので、潤滑油は、容積が小さくなった環状空間(45)や固定側キー溝(35)から第1連通部(41)及び第2連通部(42)(下側の固定側キー溝(35))を通って排油空間(46)へ抜けて行く。このため、環状空間(45)や上側の固定側キー溝(35)の中の潤滑油がオルダムリング(70)の動作の抵抗になるのが抑制される。
【0098】
このことは、オルダムリング(70)が
図7において可動範囲の下端へ移動するときも同様であり、オルダムリング(70)の周囲に形成されている環状空間(45)が、該オルダムリング(70)の下方の部分において小さくなり、
図7の下側の固定側キー溝(35)の内部の容積が小さくなっても、潤滑油は、環状空間(45)や下側の固定側キー溝(35)から第1連通部(41)及び第2連通部(42)(上側の固定側キー溝(35))を通って排油空間(46)へ抜けて行く。したがって、環状空間(45)や下側の固定側キー溝(35)の中の潤滑油がオルダムリング(70)の動作の抵抗になるのが抑制される。
【0099】
−実施形態2の効果−
この実施形態2では、可動スクロール(60)の偏心回転時にオルダムリング(70)が上記固定側キー溝(35)に沿って動作することにより、
図7で説明したように上記環状空間(45)が小さくなると、この環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油は、固定側キー溝(35)の一方から、第1連通部(41)である周方向溝(47)と第2連通部(42)である固定側キー溝(35)の他方を通って、排油空間(46)へ排出される。このように、実施形態2においても、圧縮機構(20)が動作するときに、固定側キー溝(35)の中の潤滑油が排油空間(46)へ排出されるため、潤滑油に圧縮される力が作用するのが抑制される。したがって、この実施形態2の構成を採用した場合でも、圧縮機構(20)が動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなるから、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる。
【0100】
また、この実施形態2では、上記第1連通部(41)を、上記一対の固定側キー溝(35)の一方から他方に連通する通路により構成し、上記第2連通部(42)を、上記一対の固定側キー溝(35)の他方により構成している。このように、実施形態2では、一対の固定側キー溝(35)の他方を第2連通部(42)に利用しているので、構成を簡素化できる点で高い効果を得ることが可能となる。
【0101】
《実施形態3》
図9に示した実施形態3について説明する。
図9は、実施形態3に係るスクロール圧縮機の第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)の構成を示す平面図である。
【0102】
この実施形態3では、第2フレーム(32)には、該第2フレーム(32)に形成される固定側キー溝(35)を含む部分が径方向外方へ突出する凸部(38)が形成されている。第1フレーム(31)には、該凸部(38)を受容する凹部(39)が形成されている。
【0103】
上記凸部(38)の外周面に、第1連通部(41)を構成する第1周方向溝(47a)が形成されている。第2フレーム(32)には、凸部上記(38)を平面から見て左右両側に、第2周方向溝(47b)が形成されている。第1周方向溝(47a)及び第2周方向溝(47b)は、
図4Bの周方向溝(47)と同様に、第2フレーム(32)において固定側キー溝(35)を通過する(横切る)高さに形成されている。
【0104】
上記凸部(38)と凹部(39)は、ぞれぞれ、固定側キー溝(35)が形成されている2箇所の位置に形成されている。凸部(38)の周方向の長さは、凹部(39)の周方向の長さよりも短く、嵌まり合った凸部(38)と凹部(39)の間に、空隙(48)が形成されている。空隙(48)は、各凸部(38)の周方向の左右両側に形成されている。
【0105】
この実施形態3では、実施形態1と同様に、固定側キー溝(35)を挟んだ両側に形成されてオルダムリング支持面(36)に開口する軸方向孔である座ぐり部(32c)が第2連通部(42)を構成している。上記第1連通部(41)の一部である第2周方向溝(47b)は、固定側キー溝(35)から第1周方向溝(47a)及び空隙(48)を介して第2連通部(42)まで、上記ハウジング(30)の周方向へのびるように形成されている。
【0106】
この実施形態3では、上記空隙(48)は、その上端が排油空間(46)に連通している。したがって、空隙(48)は、第1連通部(41)の一部を構成するだけでなく、第2連通部(42)の一部も構成している。
【0107】
なお、上記凸部(38)と凹部(39)のそれぞれの周方向長さは、第1周方向溝(47a)と第2周方向溝(47b)が連通する限り、適宜変更してもよい。つまり、各空隙(48)の周方向幅が小さくても第1周方向溝(47a)と第2周方向溝(47b)とが連通していればよく、例えば第1周方向溝(47a)と第2周方向溝(47b)とを直接に連通させて、空隙(48)が実質的に存在しない構成にしてもよい。この場合、空隙(48)は第2連通部(42)の一部を構成しなくなる。
【0108】
その他の構成は、実施形態1と同様であるため、具体的な説明は省略する。
【0109】
この実施形態3においても、第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)からなるハウジング(30)に第1連通部(41)と第2連通部(42)とを形成しているので、圧縮機構(20)が動作するときに、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油が、空間連通部(40)である第1連通部(41)と第2連通部(42)を通って、排油空間(46)へ排出される。したがって、圧縮機構(20)の動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなり、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる構成を容易に実現できる。
【0110】
−実施形態3の変形例−
〈変形例1〉
図10は、実施形態3の変形例1に係るスクロール圧縮機の第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)の構成を示す平面図である。
【0111】
この変形例1において、第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)の基本的な形状は、
図9の実施形態3と同じである。一方、第1連通部(41)は、
図8の実施形態2と同様に、一対の固定側キー溝(35)の一方から他方に連通する通路により構成されている。具体的には、第1連通部(41)は、対向する固定側キー溝(35)の間で連続して配置された第1周方向溝(47a),第2周方向溝(47b),第3周方向溝(47c),及び第2周方向溝(47b)を有している。
【0112】
第2連通溝(42)は、各座ぐり部(32c)と各空隙(48)とにより構成されている。そのため、この変形例1の第2連通溝(42)の流路断面積は、
図9の第2連通溝(42)の流路断面積より大きい。
【0113】
その他の構成は、
図9の実施形態3と同じである。
【0114】
この変形例1においても、第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)からなるハウジング(30)に第1連通部(41)と第2連通部(42)とを形成しているので、圧縮機構(20)が動作するときに、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油が、空間連通部(40)である第1連通部(41)と第2連通部(42)を通って、排油空間(46)へ排出される。したがって、圧縮機構(20)の動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなり、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる構成を容易に実現できる。また、第2連通溝(42)の流路断面積が
図9の実施形態3よりも大きいため、潤滑油が排油空間(46)に排出されやすくなる。
【0115】
〈変形例2〉
図11は、実施形態3の変形例2に係るスクロール圧縮機の第1フレーム及び第2フレームの構成を示す平面図である。
【0116】
この変形例2は、第1連通部(41)を第1フレーム(31)と第2フレーム(32)の両方にまたがって形成した例である。具体的には、第1連通部(41)は、
図10の変形例1と同じく第2フレーム(32)の凸部(38)に形成された第1周方向溝(47a)と、
図10の変形例1とは異なり第1フレーム(31)の外周壁(37)の内周面に形成された第4周方向溝(47d)とで構成されている。
【0117】
その他の構成は、
図9の実施形態3と同じである。
【0118】
この変形例2においても、第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)からなるハウジング(30)に第1連通部(41)と第2連通部(42)とを形成しているので、圧縮機構(20)が動作するときに、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油が、空間連通部(40)である第1連通部(41)と第2連通部(42)を通って、排油空間(46)へ排出される。したがって、圧縮機構(20)の動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなり、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる構成を容易に実現できる。また、第2連通溝(42)の流路断面積が
図9の実施形態3よりも大きいため、潤滑油が排油空間(46)に排出されやすくなる。
【0119】
〈変形例3〉
図12は、実施形態3の変形例3に係るスクロール圧縮機の第1フレーム及び第2フレームの構成を示す平面図である。
【0120】
この変形例3は、
図9の実施形態3において、第2周方向溝(47b)を形成せず、第1連通部(41)を第1周方向溝(47a)のみで構成した例である。この構成では、第2連通部(42)は空隙(48)により構成される。
【0121】
その他の構成は、
図9の実施形態3と同じである。
【0122】
この変形例3においても、第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)からなるハウジング(30)に第1連通部(41)と第2連通部(42)とを形成しているので、圧縮機構(20)が動作するときに、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油が、空間連通部(40)である第1連通部(41)と第2連通部(42)を通って、排油空間(46)へ排出される。したがって、圧縮機構(20)の動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなり、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる構成を容易に実現できる。
【0123】
《実施形態4》
図13に示した実施形態4について説明する。
図13は、実施形態4に係るスクロール圧縮機の要部を示す断面図である。
【0124】
この実施形態4では、周方向溝(47)からなる第1連通部(41)と座ぐり部(32c)からなる第2連通部(42)を空間連通部(40)として用いず、その代わりに、第1フレーム(31)の外周壁(37)の内面に、第2フレーム(32)に形成される固定側キー溝(35)の外周端と上記排油空間(46)とを、第1フレーム(31)の軸方向に沿って連通する第3連通部(49)を形成し、この第3連通部(49)を空間連通部(40)として用いている。
【0125】
第1フレーム(31)の外周壁(37)は、厚肉部(37a)と薄肉部(37b)とを有している。厚肉部(37a)は、図における外周壁(37)の下側部分に形成され、薄肉部(37b)は、厚肉部(37a)の上方に形成されている。厚肉部(37a)は、第2フレーム(32)が嵌合する内径の上記第1凹部(31a)の外側に形成されている。薄肉部(37b)は、第1凹部(31a)の内径よりも大きな内径で形成された円形凹部か、もしくは一対の固定側キー溝(35
)の部分のみが第2フレーム(32)の外周面と空間を隔てる形状の縦溝により構成されている。
【0126】
上述したように、上記厚肉部(37a)は上記第2フレーム(32)の外周面と嵌合している。一方、上記薄肉部(37b)と上記第2フレーム(32)との間には、上記円形凹部又は縦溝により空間が形成されていて、この空間が上記第3連通部(49)を構成している。
【0127】
この実施形態4において、第3連通部(49)の下端は、固定側キー溝(35)の底面より高く、固定側キー溝(35)の上端(オルダムリング支持面(36))より低い位置に設定されている。第3連通部(49)の下端は、オルダムリング支持面(36)と同じ高さ、またはそれより低い高さで固定側キー溝(35)と連通し、且つその下方に厚肉部(37a)が形成されるようになっていればよい。
【0128】
その他の構成は、上記各実施形態と同様であるため、具体的な説明は省略する。
【0129】
この実施形態4においても、第1フレーム(31)及び第2フレーム(32)からなるハウジング(30)に第3連通部(49)を形成しているので、圧縮機構(20)が動作するときに、環状空間(45)や固定側キー溝(35)の中の潤滑油が、空間連通部(40)である第3連通部(49)を通って排油空間(46)へ排出される。したがって、圧縮機構(20)の動作中にオルダムリング(70)の往復運動に対して潤滑油が抵抗になりにくくなり、圧縮機の効率低下を抑制することが可能になる構成を容易に実現できる。また、第1フレーム(31)と第2フレーム(32)の形状を簡素化でき、第1フレーム(31)と第2フレーム(32)が一体のハウジング(30)を構成することも容易である。
【0130】
−実施形態4の変形例−
図13の実施形態4は、第1連通部(41)である周方向溝(47)と第2連通部(42)である軸方向孔(32c)を空間連通部(40)として用いずに、第3連通部(49)のみを空間連通部(40)として用いる例であるが、第1連通部(41)及び第2連通部(42)と第3連通部(49)を併用してもよい。
【0131】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0132】
例えば、上記各実施形態1〜3においては、基本的に第1連通部(41)を第2フレーム(32)の外周面(44)に形成しているが、第1連通部(41)は、
図11に示した実施形態3の
変形例2のように、第1フレーム(31)の外周壁(37)の内周面(43)に形成してもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、ハウジング(30)を第1フレーム(31)と第2フレーム(32)とに分割し、環状空間(45)から排油空間(46)へ潤滑油を逃がす空間連通部(40)を、第1フレーム(31)の内周面(43)と第2フレーム(32)の外周面(44)が嵌合する部分に形成した第1連通部(41)を用いた構成にしているが、空間連通部(40)は、潤滑油が圧縮される作用を受ける環状空間(45)や固定側キー溝(35)から排油空間(46)へ排油できる構成になっていればよく、上記各実施形態の構成に限らず適宜変更してもよい。例えば、潤滑油を環状空間(45)や固定側キー溝(35)から排油空間(46)へ排油する構成になっているのであれば、実施形態4において説明したように、ハウジング(30)を第1フレーム(31)と第2フレーム(32)とが一体になった構造にしてもよい。
【0134】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能である。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。