【解決手段】内燃機関から排ガスG1が導かれる主排気流路20Aを有したバイパス部20と、バイパス部に隣接して配置され、排ガスと熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器111を有した熱交換部10と、バイパス部から熱交換部に排ガスが流入する排ガスの上流側に配置されるガス流入口11と、熱交換部からバイパス部に排ガスが流出するガス流入口より排ガスの下流側に配置されるガス流出口12と、ガス流出口より排ガスの下流側に配置され、バイパス部を開閉する弁体135を有するバルブ30とを備え、排ガスが主排気流路からガス流入口を通って分岐され、排ガスがガス流出口を通過して主排気流路に戻る熱交換流路を有して、熱交換流路には、熱交換部を通過した排ガスがガス流出口に向かって流れるリターン流路17が設けられている。
前記ガス流入口より下流側には、前記主排気流路と前記熱交換流路との間に断熱空気層が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の排熱回収装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る排熱回収装置1を示す断面図、
図2は、排熱回収装置1の外観を示す斜視図である。
【0012】
[第1の実施の形態]
(排熱回収装置の全体構成)
本発明の第1の実施形態に係る排熱回収装置1は、内燃機関の排気管の途中に配設されて、内燃機関から排出される排ガスの熱を回収するための装置であり、排ガスの熱回収を行う熱回収モードと、熱回収を行わない熱非回収モードとを有する。
【0013】
なお、説明の便宜上、
図1上において、排熱回収装置1の上側を上部、下側を下部と定義する。
【0014】
図1に示すように、実施形態に係る排熱回収装置1は、図示しない内燃機関から排ガスG1が導かれるバイパス部20(なお、排ガスG1が熱交換器111をバイパス(迂回)するという意味で「バイパス部」と称する)から成る主排気流路20Aと、排ガスG1が主排気流路20Aからガス流入口11を通って分岐され、排ガスG1がガス流出口12を通過して主排気流路20Aに戻る熱交換部10で構成される熱交換流路10Aと、熱交換流路10A内に配置され、排ガスG1と冷却水等から成る熱媒体Wとの間で熱交換を行う熱交換器111と、ガス流入口11より下流位置の主排気流路20Aに配置され、この主排気流路20Aを開閉する弁体135を有するバルブ30(所謂フラップ型のバルブ)とから構成されている。
【0015】
また、ガス流出口12から主排気流路20Aに戻る排ガスG1eは、閉位置P1の弁体135に閉塞されない補助流路155を通ってバルブ30の上流側からバルブ30の周囲を抜けて主排気流路20Aに戻るように構成されている。
【0016】
このような構成により、バルブ30の弁体135が閉じられた熱回収モードでは、内燃機関から排出された排ガスG1a、G1bが熱交換流路10Aを通り、熱交換器111で熱媒体Wとの熱交換が行われて排熱を回収することができる。
【0017】
また、バルブ30の弁体135が開かれた熱非回収モードでは、内燃機関から排出された排ガスG1fは、熱交換器111に対するバイパス路となる主排気流路20Aを通って排ガスG1g、G2として排出される。この際に、主排気流路20Aは、バルブ30の上流側が高圧に、下流側が低圧となり、上流側に配置された補助流路155も高圧となる。
【0018】
これにより、排ガスG1a、G1bが熱交換流路10Aを流れることを効果的に抑制することができる。したがって、熱非回収モードでは、熱交換器111による熱回収を確実に抑制することができる。
【0019】
なお、バルブ30の弁体135が、後述するようなサーモアクチュエータ200等で開閉される場合には、アクチュエータの経年劣化等によってバルブ開度にバラツキを生じる場合があるが、本実施形態に係る排熱回収装置1によれば、バルブ開度にバラツキが発生した場合であってもバルブ開度差により熱交換器流路の差圧が変動しないため熱非回収モードにおける熱交換器111による熱回収を確実に防止することができる。
【0020】
また、バルブ30の弁体135が開かれた熱非回収モードでは、熱交換流路10Aの排ガスG1aの流入も僅かとなるが、流入した排ガスが該補助流路155を通して前記バルブ30の上流側に戻って、該バルブの開度劣化の影響を受けるので、熱交換器流路10Aの差圧が変動し難くなるため、熱非回収モードにおける熱交換器111による熱回収を確実に防止することができる。また、補助流路155が断熱空気層として機能するので、バイパス部20側からの熱の伝達を抑制することができる。これにより、熱非回収モードにおける熱交換器111による熱回収をより確実に抑制することができる。
【0021】
また、熱交換流路10Aには、熱交換器111の側面(
図1上は上面)の主排気流路20A側に、熱交換器111を通過した排ガスG1dがガス流出口12に向かってUターンして流れるリターン流路17が設けられている。
【0022】
このような構成により、バルブ30の弁体135が開かれた熱非回収モードでは、リターン流路17に排ガスG1dが流れないため、リターン流路17が熱交換器111と主排気流路20Aとの間に介在される断熱空気層として機能する。これにより、主排気流路20Aを流れる高温排ガスG1f、G1gの熱が熱交換器111に伝達されるのを極力避けることができ、熱非回収モードにおける熱交換器111による熱回収をより確実に抑制することができる。
【0023】
また、バルブ30の弁体135が閉じられた熱回収モードでは、リターン流路17を流れる排ガスG1eが熱交換器111との間で再度熱交換を行い、残熱回収できるので、熱交換効率を向上することができる。
【0024】
さらに、ガス流入口11より下流側には、主排気流路20Aと熱交換流路10Aとの間に断熱空気層125が形成されている。
【0025】
これにより、バルブ30の弁体135が開かれた熱非回収モードでは、主排気流路20Aを流れる高熱が熱交換流路10Aに伝達されるのを極力避けることができ、熱非回収モードにおける熱交換器111による熱回収をより確実に抑制することができる。
【0026】
(バイパス部の構成)
図1および
図2に示すように、主排気流路20Aを構成するバイパス部20は、例えば金属材により中空の筒状(例えば、角筒状や円筒状など)に成形され、車両の前後方向に延設されるバイパス部本体120を備える。
【0027】
このバイパス部本体120は、排ガスG1の取り入れ側に設けられる筒状のガス導入口121と、排ガスG2の排出側に設けられる筒状のガス排出口122とを備える。
【0028】
バイパス部本体120の略中央には、バルブ30の一部を構成する弁用筒部35が配置されている。
【0029】
弁用筒部35の排ガスG1の下流側の端部には、下方側に行くに従って排ガス下流側に突出する傾斜部が形成されている。この傾斜部が、バルブ30の弁体135が当接する着座部31を構成している。
【0030】
なお、着座部31を構成する傾斜部の傾きは、特には限定されないが、例えば10〜60度程度とすることができる。
【0031】
(バルブの構成)
バルブ30は、回動自在な回動軸140と、この回動軸140に一端部が固定された弁体135と、回動軸140を回動するアクチュエータ200(
図2参照)とを備える。
【0032】
弁体135の先端部135aは、熱交換部10の排ガスG1(G1c)の出口12より下流側に形成されている。
【0033】
また、弁体135の他端部135bは、回動軸140よりも排ガスG1の上流側に位置するようにできる。
【0034】
弁体135は、アクチュエータ200の駆動による回動軸140の回動に伴って、着座部31に当接した閉位置P1と、着座部31から離間した開位置P2との間をD10方向に揺動するように構成されている。
【0035】
ここで、上述のように、弁体135が当接する着座部31は傾斜部を有している。そのため、着座部が排ガスG1の直進成分G1eに対して垂直な端面で構成される場合に比して、排ガスの直進成分G1fの弁体135に対する受圧面積を広くすることができる。
【0036】
これにより、弁体135を閉位置P1から開位置P2へ回動させる際のアクチュエータ200の負荷を小さくすることができ、バルブ30の開弁性能を向上させることができる。
【0037】
したがって、熱回収モードから熱非回収モードへの切り換えを迅速に行うことが可能となる。
【0038】
なお、弁体135は、バネ等の弾性体により着座部31側に付勢されている。これにより、熱回収モード時に、弁体135をより確実に閉位置P1に保持することができる。
【0039】
また、弁体135の排ガス下流側の表面には、ウェイト136が設けられているので、ウェイト136の質量により排気脈動に起因する共振を抑えることができる。
【0040】
(熱交換部の構成)
図1に例示するように、熱交換器111を備える熱交換流路10Aを構成する熱交換部10は、バイパス部本体120の下部に一体的に取り付けられる金属製の筐体10aを備える。
【0041】
筐体10a内には、複数層に亘って配置されて排ガスG1cが流通するガス通路部から成る排気通路100と、熱媒体(例えば、冷却水)Wが循環する複数の熱媒体流路101から成る熱媒体流路部110とから構成される熱交換器111が設けられている。
【0042】
図1上、筐体10aの排ガス上流側の上部には、バイパス部本体120と連通して排ガスG1(G1a)を筐体10a内に導入するガス流入口11が形成されている。
【0043】
また、筐体10aの略中央の上部には、筐体10a内に導入されて排気通路100を通り抜けた排ガスG1dを再びバイパス部本体120内に戻すガス流出口12が形成されている。
【0044】
熱交換部10の排ガスG1aのガス流入口11および排ガスG1eのガス流出口12は、バルブ30の上流側に配置されている。
【0045】
ガス流入口11の近傍には、熱交換部10に流入した排ガスG1aを各排気通路100に排ガスG1cとして分岐させるガス分岐部15としての空間が形成されている。
【0046】
また、排気通路100の下流側の端部付近には、各排気通路100を流通した排ガスG1cを排ガスG1dとして合流させるガス合流部16としての空間が形成されている。
【0047】
さらに、図上、最上部の排気通路100と、バイパス部本体120の底面との間には、ガス流出口12とガス合流部16とに連通するリターン流路17が形成されている。
【0048】
バルブ30の弁体135が開かれた熱非回収モードでは、リターン流路17に排ガスG1dが流れないため、リターン流路17が熱交換器111と主排気流路20Aとの間に介在する断熱空気層として機能し、バイパス部20と熱交換部10との間の断熱効果を向上させることができ、熱非回収モード時における熱交換器111による熱回収を抑制させることができる。
【0049】
また、ガス合流部16で合流された排ガスG1dは、リターン流路17により各排気通路100を流通する排ガスG1cとは逆方向のB1方向に導かれ、ガス流出口12からバイパス部本体120内のB2方向に補助流路155を介して排ガスG1eとして排出される。
【0050】
排ガスG1cは、リターン流路17を介して、B1方向(
図1上、右側から左方向)へと、Uターンするように導かれる。
このように、排ガスG1cをB1方向にUターンさせることにより、排気通路17を流れる排ガスG1dの残熱を排気通路100の端面100Aを介して回収することができ、熱回収効率を向上させることができる。
【0051】
また、排ガスG1cをリターン流路17を介してUターンさせる構成により、排熱回収装置1の長手方向(排ガスの流路方向)の寸法を小さくすることができ、排熱回収装置1全体の小型化を図ることができる。
【0052】
また、
図2に示すように、熱交換部10の筐体10aの外側には、熱媒体流路101に熱媒体(例えば、冷却水)Wを導入する導入管220が設けられている。
【0053】
この導入管220は、筐体10aに開口された熱媒体入口221に溶接等により固定されている。
【0054】
さらに、熱交換部10の筐体10aの外壁側には、アクチュエータ(例えば、サーモアクチュエータ等のセルフ開閉式のアクチュエータ)200が設けられている。
【0055】
(アクチュエータについて)
アクチュエータの一種としてのサーモアクチュエータ200は、ロッド収容部203に収容される熱膨張体としてのワックス(図示せず)と、そのワックスの膨張、収縮に応じて前進、後退するピストン状のロッド(図示せず)等を収容するロッド収容部203と、ロッドの先端に有って、回動軸140側の突起状の作動子145と係合して回動軸140を回動させる係合部204とを備える。
【0056】
シリンダ部200aの下端部は、熱交換部10の筐体10aに開口された熱媒体出口222に溶接等により固定されている。また、シリンダ部200aの中間位置には、熱媒体出口222から供給されてシリンダ部200a内を流通した熱媒体Wを排出する排出管202が一体的に設けられている。
【0057】
また、サーモアクチュエータ200のシリンダ部200aは、金属製のブラケット部材201により熱交換部10の筐体10aに保持、固定されている。
【0058】
サーモアクチュエータ200のシリンダ部200aとロッド収容部203とは、フランジ部205a、205bをボルト206とナット207で螺合して接合されている。
【0059】
(排熱回収装置の動作)
以上のような構成を備える排熱回収装置1は、弁体135が付勢力により着座部31に当接した閉位置P1に保持された熱回収モードでは、排ガスG1(G1e)は、バイパス部本体120(主排気流路20A)内への流通が弁体135によって阻止される。そして、排ガスG1(G1a)は、熱交換部10のガス流入口11から熱交換部10内に流入して、排気通路100を排ガスG1cとして流通する。
【0060】
これによって、熱媒体流路101を流通する熱媒体Wと、排気通路100を流通する排ガスG1cとの間で熱交換が行われ、排ガスG1の熱が回収される。
【0061】
一方、アクチュエータ200の作動により、弁体135が回動されて着座部31から離間した開位置P2(なお、閉位置P1から開位置P2までの中間位置も含む)に変位された熱非回収モードでは、排ガスG1(G1f、G1g)は、バイパス部本体120(主排気流路20A)内を流通して、ガス排出口122から排ガスG2として排出される。
【0062】
ここで、ガス流入口11とガス流出口12とは共にバルブ30の上流側にあるため、バルブ30の開度がばらついてもガス流入口11とガス流出口12間は同じ差圧になる。このように、バルブ開度差により熱交換器流路10Aの差圧が変動しないため熱非回収モードにおける熱交換器111による熱回収を確実に防止することができる。
【0063】
また、着座部31は、下方側に行く程、排ガス下流側に突出する傾斜部で構成されているので、弁体135を閉位置P1から開位置P2に回動する際の変位角度(回動する角度)を比較的小さくすることができ、バルブ30の開弁性能を向上させて、熱非回収モード時における熱交換器による熱回収を抑制させることができる。
【0064】
また、排ガスG1の直進成分G1eの弁体135に対する受圧面積を広くすることができるので、弁体135を閉位置P1から開位置P2へ回動させる際のアクチュエータ200の負荷を小さくすることができ、アクチュエータ200を小型化できると共に、バルブ30の開弁性能を向上させることができる。
【0065】
さらに、傾斜部を設けることによりバルブ30が開いた際の開口面積を広くとることができ、ガス抵抗を下げることができる。
【0066】
[第2の実施の形態]
図3および
図4を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る排熱回収装置1Aについて説明する。
【0067】
なお、第1の実施の形態に係る排熱回収装置1と同様の構成については、同一符号を付して重複した説明は省略する。
【0068】
第2の実施の形態に係る排熱回収装置1Aにおいて、第1の実施の形態に係る排熱回収装置1と異なる点は、リターン流路517が、バイパス部20の熱交換部10側の内壁520に配置されている点である。
【0069】
より具体的には、
図4に示すように、一方のみに開口部300bを有する排気用プレート部材300を金属板の折曲げ加工等により作製し、その排気用プレート部材300を
図3に示すように、バイパス部20の熱交換部10側の内壁520上に、リブ300aを介してロウ付けして固定した構成となっている。
【0070】
また、排熱回収装置1Aでは、ガス合流部16の上方にガス流出口512が形成されている。
【0071】
これにより、排気通路100を通り抜けた排ガスG1dは、ガス流出口512から排気用プレート部材300内の空間300cに放出される。
そして、空間300cに放出された排ガスG1hは、排気用プレート部材300と内壁520との間に形成されるリターン流路517をB11方向に流れて、開口部300bからバイパス部20内に放出される。
【0072】
さらに、バイパス部20内に放出された排ガスG1iは、排気用プレート部材300の上部と弁用筒部35との間の隙間を介して、B12方向に流れて、排ガスG2として排出される。
【0073】
以上述べたように、本実施の形態に係る排熱回収装置1、1Aによれば、バルブ30の開弁性能および断熱性を向上させて熱非回収モード時における熱交換器による熱回収を抑制させることができる。
【0074】
なお、上述のように説明の便宜上、
図1上において、排熱回収装置1の上側を上部、下側を下部と定義したが、排熱回収装置1を車両等に取り付ける際などには、上下の方向等は代わり得るので、この方向の定義には拘束されない。
【0075】
また、熱交換器111とバイパス部20等の位置関係も上下方向に限定されない。
また、バルブ30の弁体135が開かれた熱非回収モードでは、熱交換流路10Aの排ガスG1aの流入も僅かとなるが、流入した排ガスが該補助流路155を通して前記バルブ30の上流側に戻って、該バルブの開度劣化の影響を
ので、熱交換器流路10Aの差圧が変動し難くなるため、熱非回収モードにおける熱交換器111による熱回収を確実に防止することができる。また、補助流路155が断熱空気層として機能するので、バイパス部20側からの熱の伝達を抑制することができる。これにより、熱非回収モードにおける熱交換器111による熱回収をより確実に抑制することができる。