前記触媒劣化検出手段において前記燃料改質触媒の劣化が検出されない場合には、空燃比が特定の範囲にあるストイキ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスが前記燃料改質触媒に供給され、前記燃料改質触媒の劣化が検出された場合には、空燃比が特定の範囲にあるリッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと空燃比が特定の範囲にあるリーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとが交互に前記燃料改質触媒に供給されるように、内燃機関に供給される燃料含有ガスの空燃比を制御する空燃比制御手段と、
前記空燃比制御手段において、前記リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと前記リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとがそれぞれ0.1〜10.0秒の一定の周期で交互に前記燃料改質触媒に供給されるように、内燃機関に供給される燃料含有ガスの周期を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料改質装置。
前記空燃比制御手段において、前記リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと前記リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとがそれぞれ0.5〜5.0秒の一定の周期で交互に前記燃料改質触媒に供給されるように、内燃機関に供給される燃料含有ガスの周期を制御することを特徴とする請求項2に記載の燃料改質装置。
前記空燃比制御工程において、前記リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと前記リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとがそれぞれ0.1〜10.0秒の一定の周期で交互に前記燃料改質触媒に供給されるように、内燃機関に供給される燃料含有ガスの周期を制御することを特徴とする請求項4に記載の燃料改質装置の制御方法。
前記空燃比制御工程において、前記リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと前記リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとがそれぞれ0.5〜5.0秒の一定の周期で交互に前記燃料改質触媒に供給されるように、内燃機関に供給される燃料含有ガスの周期を制御することを特徴とする請求項5に記載の燃料改質装置の制御方法。
【背景技術】
【0002】
排気再循環(EGR)システムに燃料改質装置と燃料供給手段(燃料噴射弁)とを増設した燃料改質エンジンシステムは、再循環させる排ガスに燃料の一部を添加して燃料改質を行うため、通常のEGRシステムに比べて熱効率が大幅に向上する。具体的には、燃料改質装置に配置された燃料改質触媒によって排ガス中の水蒸気(H
2O)や二酸化炭素(CO
2)が燃料と反応して水素(H
2)や一酸化炭素(CO)に変換される。このH
2OやCO
2と燃料との反応は水蒸気改質反応やドライリフォーミング反応といった吸熱反応であるため、H
2やCOが生成する際に排気熱が回収される。このようにして生成したH
2やCOは元の燃料に比べて発熱量が多く、気筒内で多くの仕事をするため、熱効率が大幅に向上する。また、このような燃料改質エンジンシステムでは、生成したH
2がエンジンの燃焼特性を改善するため、通常のEGRシステムに比べてEGR率を高く設定することができ、熱効率を更に向上させることができる。
【0003】
また、このような燃料改質エンジンシステムにおいては、燃料改質装置の大きさに制限があるため、高い活性を有する白金族金属(例えば、白金、イリジウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等)を活性種とする燃料改質触媒が用いられ、特に、ロジウムを活性種とする燃料改質触媒が広く用いられている。しかしながら、このような白金族金属、特にロジウムは、ガソリン等の燃料や改質ガスに含まれる硫黄分によって被毒すると、燃料改質触媒としての性能が低下するため、従来の燃料改質エンジンシステムは、その性能の持続性が十分なものではなかった。
【0004】
このため、従来から、燃料改質触媒の硫黄被毒による劣化を防止するために、様々な方法が検討されている。例えば、特開2014−113518号公報(特許文献1)には、触媒金属と、この触媒金属を支持する担体に、シリカを含有させることによって、硫黄被毒による劣化が防止された燃料改質触媒が得られることが記載されている。しかしながら、この燃料改質触媒においては、担体への硫黄成分の付着は抑制されるものの、触媒金属への硫黄成分の付着は十分に抑制されず、触媒金属の硫化物が生成して安定化するため、硫黄被毒による劣化は必ずしも十分に防止されているとは言えなかった。
【0005】
また、特開2014−030778号公報(特許文献2)には、アルミナ粒子の表面にバリウム化合物等を形成し、この化合物の表面にロジウム等の触媒成分を担持させることによって、硫黄被毒による劣化が防止された燃料改質触媒が得られることが記載されている。しかしながら、この燃料改質触媒においては、硫黄成分がオキソ酸イオンとしてアルミナ粒子の表面に蓄積するため、これが飽和するまでは触媒成分への硫黄成分の付着は抑制されるものの、アルミナ粒子表面への硫黄成分の蓄積が飽和状態になると、硫黄成分が触媒成分に付着し、触媒成分の硫化物が生成して安定化するため、硫黄被毒による劣化は必ずしも十分に防止されているとは言えなかった。
【0006】
さらに、特開2009−121296号公報(特許文献3)には、改質制御を行う温度領域を燃料中の硫黄濃度に応じて適切に設定することによって、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化が防止できることが記載されている。しかしながら、改質制御を行う温度領域を適切に設定した場合でも、硫黄成分は燃料改質触媒上に徐々に蓄積するため、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化は必ずしも十分に防止されているとは言えなかった。
【0007】
また、特開2003−215082号公報(特許文献4)には、燃料中の硫黄成分を除去する脱硫触媒を有する脱硫器を備える燃料改質装置が記載されている。この燃料改質装置においては、脱硫器で燃料中の硫黄成分を除去することによって、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化が防止されるものの、脱硫性能が低下した脱硫器を交換する必要があるため、長期使用において利便性が大きく損なわれるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化を十分に防止することが可能な燃料改質装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、硫黄被毒した燃料改質触媒に、空燃比が特定の範囲にあるリーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと空燃比が特定の範囲にあるリッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとを交互に供給することによって、硫黄被毒した前記燃料改質触媒が再生され、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化が十分に防止されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の燃料改質装置は、燃料改質触媒と、
前記燃料改質触媒に内燃機関で生じた排ガスを供給する排ガス供給流路と、
前記燃料改質触媒に燃料を供給する燃料供給手段と、
前記燃料改質触媒の硫黄被毒による劣化を検出する触媒劣化検出手段と、
前記触媒劣化検出手段において前記燃料改質触媒の劣化が検出されない場合には、空燃比が理論空燃比に対して0.99倍超過1.01倍未満のストイキ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスが前記燃料改質触媒に供給され、前記燃料改質触媒の劣化が検出された場合には、空燃比が理論空燃比に対して0.90倍以上0.99倍以下のリッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと空燃比が理論空燃比に対して1.01倍以上1.10倍以下のリーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとが交互に前記燃料改質触媒に供給されるように、内燃機関に供給される燃料含有ガスの空燃比を制御する空燃比制御手段と、
前記燃料改質触媒に前記ストイキ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスが供給されている場合には、前記燃料改質触媒に前記燃料供給手段から燃料が供給され、前記燃料改質触媒に前記リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと前記リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとが交互に供給されている場合には、前記燃料改質触媒に前記燃料供給手段から燃料が供給されないように、前記燃料供給手段を制御する燃料供給制御手段と、
を備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の燃料改質装置の制御方法は、燃料改質触媒及び前記燃料改質触媒に燃料を供給する燃料供給手段を備える燃料改質装置の制御方法であって、
前記燃料改質触媒の硫黄被毒による劣化の有無を検出する触媒劣化検出工程と、
前記触媒劣化検出工程において前記燃料改質触媒の劣化が検出されない場合には、空燃比が理論空燃比に対して0.99倍超過1.01倍未満のストイキ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスが前記燃料改質触媒に供給され、前記燃料改質触媒の劣化が検出された場合には、空燃比が理論空燃比に対して0.90倍以上0.99倍以下のリッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと空燃比が理論空燃比に対して1.01倍以上1.10倍以下のリーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとが交互に前記燃料改質触媒に供給されるように、内燃機関への燃料含有ガスの空燃比を制御する空燃比制御工程と、
前記燃料改質触媒に前記内燃機関から前記排ガスを供給する排ガス供給工程と、
前記燃料改質触媒に前記ストイキ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスが供給されている場合には、前記燃料改質触媒に前記燃料供給手段から燃料が供給され、前記燃料改質触媒に前記リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと前記リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとが交互に供給されている場合には、前記燃料改質触媒に前記燃料供給手段から燃料が供給されないように、前記燃料供給手段を制御する燃料供給制御工程と、
を含むことを特徴とするものである。
【0013】
このような燃料改質装置及びその制御方法においては、前記リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと前記リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとがそれぞれ0.1〜10.0秒(より好ましくは、0.5〜5.0秒)の一定の周期で交互に前記燃料改質触媒に供給されるように、内燃機関に供給される燃料含有ガスの周期を制御することが好ましい。
【0014】
なお、本発明によって、硫黄被毒した燃料改質触媒が再生され、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化が防止される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、燃料や改質ガスに含まれる硫黄成分は、燃料改質触媒のロジウム等の白金族金属に付着しやすく、白金族金属上における排ガス中の水蒸気(H
2O)や二酸化炭素(CO
2)と燃料との水蒸気改質反応やドライリフォーミング反応の進行を阻害する。このような燃料改質触媒に付着した硫黄成分は、リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスを供給した還元雰囲気では白金族金属の硫化物(例えば、硫化ロジウム(Rh
2S
3))を形成して安定化する。また、燃料を添加していない空気やリーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスを供給した酸化雰囲気では硫黄のオキソ酸イオン(例えば、硫酸イオン(SO
42−))を形成して担体上で安定化する。
【0015】
一方、リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスを供給した酸化雰囲気からリッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスを供給した還元雰囲気へと切り替える際の僅かな時間や前記還元雰囲気から前記酸化雰囲気へと切り替える際の僅かな時間においては、硫黄成分の燃料改質触媒への付着力が弱まり、燃料改質触媒に付着した硫黄成分がSO
2として燃料改質触媒から脱離することを本発明者らは見出した。このため、本発明のように、硫黄被毒した燃料改質触媒に、リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとリーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとを交互に供給することによって、硫黄被毒した燃料改質触媒が再生され、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化が防止されると推察される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化を十分に防止することが可能な燃料改質装置及びその制御方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
先ず、本発明の燃料改質装置及びその制御方法について説明する。本発明の燃料改質装置は、燃料改質触媒と、
前記燃料改質触媒に内燃機関で生じた排ガスを供給する排ガス供給流路と、
前記燃料改質触媒に燃料を供給する燃料供給手段と、
前記燃料改質触媒の硫黄被毒による劣化を検出する触媒劣化検出手段と、
前記触媒劣化検出手段において前記燃料改質触媒の劣化が検出されない場合には、空燃比が理論空燃比に対して0.99倍超過1.01倍未満のストイキ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスが前記燃料改質触媒に供給され、前記燃料改質触媒の劣化が検出された場合には、空燃比が理論空燃比に対して0.90倍以上0.99倍以下のリッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと空燃比が理論空燃比に対して1.01倍以上1.10倍以下のリーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとが交互に前記燃料改質触媒に供給されるように、内燃機関に供給される燃料含有ガスの空燃比を制御する空燃比制御手段と、
前記燃料改質触媒に前記ストイキ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスが供給されている場合には、前記燃料改質触媒に前記燃料供給手段から燃料が供給され、前記燃料改質触媒に前記リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと前記リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとが交互に供給されている場合には、前記燃料改質触媒に前記燃料供給手段から燃料が供給されないように、前記燃料供給手段を制御する燃料供給制御手段と、
を備えるものである。
【0020】
また、本発明の燃料改質装置の制御方法は、燃料改質触媒及び前記燃料改質触媒に燃料を供給する燃料供給手段を備える燃料改質装置の制御方法であって、
前記燃料改質触媒の硫黄被毒による劣化の有無を検出する触媒劣化検出工程と、
前記触媒劣化検出工程において前記燃料改質触媒の劣化が検出されない場合には、空燃比が理論空燃比に対して0.99倍超過1.01倍未満のストイキ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスが前記燃料改質触媒に供給され、前記燃料改質触媒の劣化が検出された場合には、空燃比が理論空燃比に対して0.90倍以上0.99倍以下のリッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと空燃比が理論空燃比に対して1.01倍以上1.10倍以下のリーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとが交互に前記燃料改質触媒に供給されるように、内燃機関への燃料含有ガスの空燃比を制御する空燃比制御工程と、
前記燃料改質触媒に前記内燃機関から前記排ガスを供給する排ガス供給工程と、
前記燃料改質触媒に前記ストイキ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスが供給されている場合には、前記燃料改質触媒に前記燃料供給手段から燃料が供給され、前記燃料改質触媒に前記リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと前記リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとが交互に供給されている場合には、前記燃料改質触媒に前記燃料供給手段から燃料が供給されないように、前記燃料供給手段を制御する燃料供給制御工程と、
を含む方法である。
【0021】
〔燃料改質触媒〕
本発明に用いられる燃料改質触媒としては、内燃機関で生じた排ガスと燃料とから水素を含む改質ガスを生成することが可能な燃料改質触媒であれば特に制限はなく、例えば、酸化物担体に白金族金属を担持した公知の燃料改質触媒が挙げられ、触媒活性が高いという観点から、ジルコニア系酸化物担体(特に好ましくは、酸化イットリウムや酸化ランタンを含むジルコニア系酸化物担体)に白金族金属(特に好ましくは、ロジウム(Rh))を担持した燃料改質触媒が好ましい。
【0022】
本発明の燃料改質装置において、この燃料改質触媒は、排ガス供給流路によって内燃機関と接続されており、この排ガス供給流路を通して、内燃機関で生じた排ガスが燃料改質触媒に供給される。前記内燃機関としては、例えば、ガソリンエンジン、天然ガスエンジン、ディーゼルエンジン等が挙げられる。また、内燃機関で生じた排ガスには、通常、消費されなかった燃料が残存している。
【0023】
〔燃料改質触媒用燃料供給手段〕
本発明の燃料改質装置には、前記燃料改質触媒に燃料を供給する燃料供給手段が設置されている。この燃料供給手段から燃料を供給することによって、排ガスと燃料が混合され、前記燃料改質触媒において、排ガス中の水蒸気(H
2O)や二酸化炭素(CO
2)と燃料供給手段から供給された燃料や排ガス中に残存する燃料との間で水蒸気改質反応やドライリフォーミング反応が進行し、水素(H
2)や一酸化炭素(CO)が生成する。
【0024】
〔触媒劣化検出手段及び触媒劣化検出工程〕
本発明の燃料改質装置及びその制御方法に用いられる触媒劣化検出手段及び触媒劣化検出工程としては、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化を検出できる手段及び工程であれば特に制限はなく、例えば、以下に示す、温度センサー、H
2ガスセンサー、COガスセンサー等の各種センサーを用いた触媒劣化検出方法を利用した手段及び工程が挙げられる。
【0025】
温度センサーを用いた触媒劣化検出方法としては以下の方法が挙げられる。すなわち、予め、燃料改質触媒の入ガス温度(T
IN)と出ガス温度(T
OUT)の温度差ΔT=T
IN−T
OUTと触媒活性(例えば、H
2生成濃度やCO生成濃度)との関係を求め、この関係に基づいて、燃料改質触媒が劣化していないと判断できるΔTの下限値ΔT
minを設定する。稼働中の燃料改質装置の触媒入ガス温度(T
IN)と触媒出ガス温度(T
OUT)をそれぞれ温度センサーを用いて測定し、その温度差ΔT=T
IN−T
OUTを求める。ΔT≧ΔT
minの場合には燃料改質触媒は劣化していないと判断し、ΔT<ΔT
minの場合には燃料改質触媒は劣化していると判断する。
【0026】
また、H
2ガスセンサーやCOガスセンサーを用いた触媒劣化検出方法としては以下の方法が挙げられる。すなわち、予め、燃料改質触媒が劣化していないと判断できる燃料改質触媒の出ガス中のH
2濃度の下限値やCO濃度の下限値を設定する。稼働中の燃料改質装置の触媒出ガス中のH
2濃度やCO濃度をH
2ガスセンサーやCOガスセンサーを用いて測定し、これらの濃度が、設定した前記下限値以上の場合には燃料改質触媒は劣化していないと判断し、前記下限値未満の場合には燃料改質触媒は劣化していると判断する。
【0027】
〔空燃比制御手段及び空燃比制御工程〕
本発明の燃料改質装置及びその制御方法に用いられる、内燃機関へ供給される燃料含有ガスの空燃比制御手段及び空燃比制御工程は、以下に示す、内燃機関へ供給される燃料含有ガスの空燃比の制御方法を利用した制御手段及び制御工程である。
【0028】
本発明に用いられる内燃機関へ供給される燃料含有ガスの空燃比の制御方法は、前記触媒劣化検出手段又は前記触媒劣化検出工程において前記燃料改質触媒の劣化が検出されない場合には、空燃比が特定の範囲にあるストイキ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスが前記燃料改質触媒に供給され、前記燃料改質触媒の劣化が検出された場合には、空燃比が特定の範囲にあるリッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと空燃比が特定の範囲にあるリーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとが交互に前記燃料改質触媒に供給されるように、内燃機関に供給する燃料含有ガスの空燃比を制御する方法である。このように内燃機関に供給する燃料含有ガスの空燃比を制御することによって、前記燃料改質触媒が劣化していない場合には、内燃機関で生じた排ガスの一部に燃料改質触媒用燃料供給手段から燃料を添加して前記燃料改質触媒に供給することによって、燃料供給手段から添加した燃料及び排ガス中に残存する燃料の改質反応(燃料改質反応)を進行させることができ、一方、前記燃料改質触媒が硫黄被毒により劣化した場合には、前記燃料改質触媒が酸化雰囲気と還元雰囲気に交互に曝されるため、硫黄被毒した燃料改質触媒が再生され、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化が防止される。
【0029】
本発明において、前記ストイキ雰囲気における空燃比は、理論空燃比に対して0.99倍超過1.01倍未満であり、前記リッチ雰囲気における空燃比は、理論空燃比に対して0.90倍以上0.99倍以下であり、前記リーン雰囲気における空燃比は、理論空燃比に対して1.01倍以上1.10倍以下である。前記燃料改質触媒の劣化が検出された場合に、空燃比が理論空燃比に対して0.99倍を超えるリッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと空燃比が理論空燃比に対して1.01倍未満のリーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとを交互に、硫黄被毒された燃料改質触媒に供給しても、触媒の再生が進行しにくく、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化を防止することが困難となる。
【0030】
さらに、このような空燃比の制御方法においては、前記リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと前記リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとがそれぞれ0.1〜10.0秒(より好ましくは0.5〜5.0秒、さらに好ましくは0.5〜2.5秒、特に好ましくは1.0〜2.0秒)の一定の周期で交互に燃料改質触媒に供給されるように、内燃機関に供給される燃料含有ガスの周期を制御することが好ましい。これにより、硫黄被毒した燃料改質触媒が十分に再生され、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化が十分に防止される。
【0031】
〔燃料供給制御手段及び燃料供給制御工程〕
本発明の燃料改質装置及びその制御方法に用いられる、前記燃料改質触媒に燃料を供給する燃料供給手段の制御手段及び制御工程は、以下に示す、前記燃料供給手段から前記燃料改質触媒への燃料供給を制御する方法を利用した制御手段及び制御工程である。
【0032】
本発明に用いられる前記燃料供給手段から前記燃料改質触媒への燃料供給の制御方法は、前記燃料改質触媒に前記ストイキ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスが供給されている場合には、前記燃料改質触媒に前記燃料供給手段から燃料が供給されるように、また、前記燃料改質触媒に前記リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと前記リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとが交互に供給されている場合には、前記燃料改質触媒に前記燃料供給手段から燃料が供給されないように、前記燃料供給手段を制御する方法である。このように前記燃料供給手段から前記燃料改質触媒への燃料の供給を制御することによって、前記燃料改質触媒に前記ストイキ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスが供給されている場合には、前記排ガスとともに前記燃料供給手段から燃料が前記燃料改質触媒に供給され、前記燃料供給手段から供給された燃料及び前記排ガス中に残存する燃料の改質反応(燃料改質反応)を進行させることができ、一方、前記燃料改質触媒に前記リッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと前記リーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとが交互に供給されている場合には、前記燃料改質触媒には、前記燃料供給手段から燃料は供給されず、前記排ガスのみが供給され、前記燃料改質触媒が酸化雰囲気と還元雰囲気に交互に曝されるため、硫黄被毒した燃料改質触媒が再生され、硫黄被毒による燃料改質触媒の劣化が防止される。
【0033】
次に、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について更に詳細に説明するが、本発明は前記図面に限定されるものではない。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する場合もある。
【0034】
以下、
図1を参照しながら、本発明の燃料改質装置を備える燃料改質エンジンシステムについて説明する。本発明の燃料改質装置は、燃料改質触媒1と、排ガス供給流路2と、触媒劣化検出手段(
図1の場合は温度センサー3a及び3b)と、内燃機関に供給される燃料含有ガスの空燃比を制御する空燃比制御手段(図示なし)と、排ガス供給流路2に設置された燃料供給手段4と、燃料供給手段4から燃料改質触媒1への燃料供給を制御する燃料供給制御手段(図示なし)とを備えるものである。
【0035】
また、前記燃料改質エンジンシステムは、本発明の燃料改質装置のほかに、内燃機関(例えば、エンジン等)5、吸気配管6、排気配管7、排気再循環(EGR)配管8を備えており、EGR配管8にはEGRクーラ9が設置されており、吸気配管6とEGR配管8はEGRバルブ10を介して接続されている。
【0036】
内燃機関5には吸気配管6が接続されており、この吸気配管6から内燃機関5に空気が、燃料供給手段11から燃料が、空燃比制御手段で制御して所定の空燃比となるようにそれぞれ供給される。また、内燃機関5には排気配管7が接続されており、この排気配管7を通して内燃機関5において燃焼により生成したガスが内燃機関5から排出される。
【0037】
排気配管7には排ガス供給流路2が接続されており、この排ガス供給流路2を通して内燃機関5で生じた排ガスの一部が燃料改質触媒1に供給される。燃料改質触媒1に供給される排ガスには、燃料供給制御手段で制御することにより、必要に応じて燃料供給手段4から燃料を添加することができる。
【0038】
燃料改質触媒1にはEGR配管8が接続されており、改質ガス等の燃料改質触媒1から排出されるガスは、EGRクーラ9で冷却された後、EGR配管8を通してEGRバルブ10において吸気配管6に供給され、吸気配管6から空気とともに内燃機関5に供給される。
【0039】
次に、このような燃料改質エンジンシステムを
図2に示すフローチャートに従って制御する方法について説明する。先ず、内燃機関5に、空燃比制御手段で制御しながら、吸気配管6から空気を、燃料供給手段11から燃料をそれぞれ供給して、空燃比が特定の範囲にあるストイキ雰囲気において内燃機関5の運転を開始する(ステップS0)。
【0040】
次に、内燃機関5の回転数と負荷からなるEGR制御マップに基づいてEGR率(EGRバルブ開度)を決定する(ステップS1)。EGR率=0の場合には排気再循環(EGR)運転を行なわずに前記ストイキ雰囲気における内燃機関5の運転を継続する。一方、EGR率>0になった場合には、EGRバルブ10を調整して、決定したEGR率(EGRバルブ開度)で排気再循環(EGR)運転を実施しながら前記ストイキ雰囲気における内燃機関5の運転を継続する(ステップS2)。このとき、燃料改質触媒1の入ガス温度(T
IN)を温度センサー3aを用いて測定し、以下のように燃料改質処理の可否を判断する(ステップS3)。
【0041】
すなわち、触媒入りガス温度(T
IN)が予め設定した燃料改質処理が可能な温度の下限値(T
ref)未満の温度の場合(T
IN<T
ref)には、燃料改質処理を行わずに前記ストイキ雰囲気における内燃機関5の運転を継続する。一方、触媒入りガス温度(T
IN)が燃料改質処理が可能な温度の下限値(T
ref)以上の温度の場合(T
IN≧T
ref)には、以下の燃料改質処理を実施しながら内燃機関5の運転を継続する。
【0042】
燃料改質処理においては、内燃機関5の回転数とEGRバルブ開度から燃料供給量を決定し(ステップS4)、燃料供給制御手段で制御することにより、決定した量の燃料を燃料供給手段4から排ガス供給流路2の排ガスに添加する(ステップS5)。これにより、排ガス中の水蒸気(H
2O)や二酸化炭素(CO
2)と添加した燃料や排ガス中に残存する燃料との間で水蒸気改質反応やドライリフォーミング反応が進行し、水素(H
2)や一酸化炭素(CO)が生成し、改質ガスが得られる。また、前記燃料改質処理中においては、燃料改質触媒の硫黄被毒による劣化の有無を、例えば、以下のように判断する(ステップS6)。
【0043】
先ず、触媒入ガス温度(T
IN)と触媒出ガス温度(T
OUT)をそれぞれ温度センサー3a及び3bを用いて測定し、その温度差ΔT=T
IN−T
OUTを求める。ΔTが予め設定した燃料改質触媒が劣化していないと判断できるΔTの下限値ΔT
min以上の温度(ΔT≧ΔT
min)の場合には、燃料改質触媒が劣化していないと判断し、前記ストイキ雰囲気における内燃機関5の運転を継続し、この内燃機関5で生成した排ガスの一部を燃料供給手段4から添加した燃料とともに燃料改質触媒1に供給して、燃料供給手段4から添加した燃料及び排ガス中に残存する燃料の改質処理(燃料改質処理)を実施する(燃料改質触媒の再生処理は実施しない)。一方、ΔTが燃料改質触媒が劣化していないと判断できるΔTの下限値ΔT
min未満の温度の場合(ΔT<ΔT
min)には、燃料改質触媒が硫黄被毒により劣化したと判断し、触媒入ガス温度(T
IN)が燃料改質触媒の再生処理が可能な温度に達しているかを判断(ステップS7)した上で、燃料改質触媒の再生処理を実施する(ステップS8)。
【0044】
すなわち、触媒入りガス温度(T
IN)が予め設定した燃料改質触媒の再生処理が可能な温度の下限値(T
reg)未満の温度の場合(T
IN<T
reg)には、前記ストイキ雰囲気における内燃機関5の運転を継続し、この内燃機関5で生成した排ガスの一部を燃料供給手段4から添加した燃料とともに燃料改質触媒1に供給して、燃料供給手段4から添加した燃料及び排ガス中に残存する燃料の改質処理(燃料改質処理)を実施する(燃料改質触媒の再生処理は実施しない)。一方、触媒入りガス温度(T
IN)が燃料改質触媒の再生処理が可能な温度の下限値(T
reg)以上の温度の場合(T
IN≧T
reg)には、空燃比が特定の範囲にあるリッチガスと空燃比が特定の範囲にあるリーンガスとを一定の周期で交互に内燃機関5に供給して内燃機関5の運転を実施し、この内燃機関5で生成した排ガスの一部を燃料改質触媒1に供給する(このとき、燃料供給手段4から燃料が添加されないように、燃料供給制御手段を制御する。)。これにより、硫黄被毒した燃料改質触媒1が酸化雰囲気と還元雰囲気に一定の周期で交互に曝されるため、燃料改質触媒1から硫黄成分が脱離し、燃料改質触媒1が再生される。
【0045】
このような燃料改質触媒1の再生処理を所定時間実施した後、再び、前記ストイキ雰囲気における内燃機関5の運転を開始する。触媒の再生処理の時間は特に制限はないが、通常0.1〜30分間であり、1〜20分間であることが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
<燃料改質触媒の調製>
先ず、硝酸ジルコニル、硝酸イットリウム、硝酸ランタン及び硝酸アルミニウムの混合水溶液にアンモニア水を添加して沈殿物を生成させ、この沈殿物を遠心分離により上澄み液を除去することにより回収し、150℃で7時間乾燥させた後、600℃で5時間焼成して、酸化ジルコニウム(76質量%)、酸化イットリウム(9質量%)、酸化ランタン(5質量%)及び酸化アルミニウム(10質量%)からなる複合酸化物を得た。この複合酸化物92質量部に固形分換算で8質量部のアルミナゾルを添加し、湿式アトライタを用いて20分間攪拌してスラリーを調製した。このスラリーをコージェライト製ハニカムモノリス基材(直径23mm×長さ25mm)にモノリス基材1L当たりの前記複合酸化物のコート量が240g/Lとなるようにコートした後、500℃で3時間焼成した。
【0048】
次に、この複合酸化物がコートされたモノリス基材に所定量のロジウムが溶解している硝酸ロジウム水溶液を含浸させ、選択吸着法により硝酸ロジウムを付着させた後、500℃で3時間焼成することによりロジウムを担持して、モノリス基材1L当たりのロジウムの担持量が4.8g/Lの燃料改質触媒(担持ロジウム触媒)を得た。
【0049】
<触媒劣化検出条件の設定>
燃料改質用モデルガスとして、ガス流量9.2L/分のCO
2/N
2混合ガス(CO
2濃度:14%)にガソリンを流量1.35ml/分で、イオン交換水を流量1.09ml/分でそれぞれ液体ポンプを用いて添加し、これらを気化させることによって得られたガス(水蒸気/カーボン比(S/C):0.80)を使用した。また、硫黄被毒用モデルガスとして、前記燃料改質用モデルガスに60ppmのSO
2を添加したガスを使用した。
【0050】
前記担持ロジウム触媒に、触媒入ガス温度(T
IN)600℃、ガス流量10.8L/分(空間速度:約60000hr
−1)の条件で前記燃料改質用モデルガスを10分間供給して燃料改質反応を行い、触媒出ガス中のH
2及びCOの濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。その結果、H
2生成濃度は13.9%、CO生成濃度は9.9%であった。また、触媒出ガス温度(T
OUT)を測定したところ、497℃であり、触媒入ガスと触媒出ガスの温度差はΔT=T
IN−T
OUT=103℃であった。なお、触媒出ガス温度(T
OUT)が触媒入ガス温度(T
IN)に比べて100℃以上低かったことから、吸熱反応である水蒸気改質反応やドライリフォーミング反応が進行したことがわかった。
【0051】
また、前記担持ロジウム触媒に、触媒入ガス温度(T
IN)600℃、ガス流量10.8L/分(空間速度:約60000hr
−1)の条件で前記硫黄被毒用モデルガスを15分間供給し、触媒出ガス中のH
2及びCOの濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。その結果、H
2生成濃度は0.31%、CO生成濃度は0.21%であり、前記担持ロジウム触媒が硫黄被毒により劣化したことが確認された。また、触媒出ガス温度(T
OUT)を測定したところ、581℃であり、触媒入ガスと触媒出ガスの温度差はΔT=19℃となった。このことから、硫黄被毒によって、触媒入ガスと触媒出ガスの温度差が小さくなることがわかった。
【0052】
以上の結果から、燃料改質触媒の入ガス温度(T
IN)と出ガス温度(T
OUT)を測定し、その温度差ΔTによって、燃料改質触媒の硫黄被毒による劣化の有無を検出できることが確認された。具体的には、予め、燃料改質触媒のH
2生成濃度及びCO生成濃度とΔTとの関係を求め、この関係に基づいて燃料改質触媒が劣化していないと判断できるΔTの下限値ΔT
minを設定し、稼働中の燃料改質装置におけるΔTの測定値がΔT
min未満となったとき、燃料改質触媒が劣化したと判断し、燃料改質触媒の入ガス温度(T
IN)が触媒の再生処理が可能な温度であれば、燃料改質触媒の再生処理を実施する。以下の実施例及び比較例では、前記担持ロジウム触媒のΔT
minを40℃に設定し、触媒の再生処理が可能な触媒入ガス温度(T
reg)を600℃以上に設定した。
【0053】
(実施例1)
図1に示す燃料改質エンジンシステムの燃料改質装置を
図2に示すフローチャートに従って制御することを想定して燃料改質試験を実施した。先ず、燃料としてガソリンを含有する空燃比が14.70(理論空燃比)のストイキガスをガソリンエンジンに供給し、ストイキ雰囲気でガソリンエンジンを稼働させ、その排ガスに所定量のガソリンを添加した後、燃料改質装置に配置した前記担持ロジウム触媒に触媒入ガス温度(T
IN)600℃で供給して、添加したガソリン及び排ガス中に残存したガソリンの改質処理(燃料改質処理)を実施した。このとき、前記担持ロジウム触媒の入ガス温度(T
IN)と出ガス温度(T
OUT)を測定し、その温度差ΔTが40℃以上の場合には、前記担持ロジウム触媒は劣化していないと判断し、ストイキ雰囲気でのガソリンエンジンの稼働と燃料改質処理を継続した。
【0054】
一方、ΔTが40℃未満となった場合には、前記担持ロジウム触媒が硫黄被毒により劣化したと判断し、表1に示すガソリンエンジンの運転条件で以下の触媒再生処理を実施した。すなわち、燃料としてガソリンを含有する、空燃比が15.29(理論空燃比の1.04倍)のリーンガスと空燃比が14.11(理論空燃比の0.96倍)のリッチガスとをそれぞれ0.5秒の一定の周期で交互にガソリンエンジンに供給し、リーン雰囲気で稼働させたガソリンエンジンで生じた排ガスとリッチ雰囲気で稼働させたガソリンエンジンで生じた排ガスとをそれぞれ0.5秒の一定の周期で交互に硫黄被毒した前記担持ロジウム触媒に触媒入ガス温度(T
IN)600℃で10分間供給し、触媒の再生処理を実施した。
【0055】
その後、燃料としてガソリンを含有する空燃比が14.70(理論空燃比)のストイキガスをガソリンエンジンに供給し、ストイキ雰囲気でガソリンエンジンを稼働させ、その排ガスに所定量のガソリンを添加した後、再生処理を施した前記担持ロジウム触媒に触媒入ガス温度(T
IN)600℃で20分間供給して、添加したガソリン及び排ガス中に残存したガソリンの改質処理(燃料改質処理)を実施した。この触媒の再生処理後の燃料改質処理において生成したH
2及びCOの濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。その結果を
図3に示す。
【0056】
(実施例2)
表1に示すように、リーンガスとリッチガスとをそれぞれ1.0秒の一定の周期で交互にガソリンエンジンに供給し、リーン雰囲気で稼働させたガソリンエンジンで生じた排ガスとリッチ雰囲気で稼働させたガソリンエンジンで生じた排ガスとをそれぞれ1.0秒の一定の周期で交互に硫黄被毒した前記担持ロジウム触媒に触媒入ガス温度(T
IN)600℃で10分間供給して触媒の再生処理を実施した以外は、実施例1と同様にして燃料改質試験を実施した。触媒の再生処理後の燃料改質処理において生成したH
2及びCOの濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。その結果を
図3に示す。
【0057】
(実施例3)
表1に示すように、リーンガスとリッチガスとをそれぞれ2.0秒の一定の周期で交互にガソリンエンジンに供給し、リーン雰囲気で稼働させたガソリンエンジンで生じた排ガスとリッチ雰囲気で稼働させたガソリンエンジンで生じた排ガスとをそれぞれ2.0秒の一定の周期で交互に硫黄被毒した前記担持ロジウム触媒に触媒入ガス温度(T
IN)600℃で10分間供給して触媒の再生処理を実施した以外は、実施例1と同様にして燃料改質試験を実施した。触媒の再生処理後の燃料改質処理において生成したH
2及びCOの濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。その結果を
図3に示す。
【0058】
(実施例4)
表1に示すように、リーンガスとリッチガスとをそれぞれ5.0秒の一定の周期で交互にガソリンエンジンに供給し、リーン雰囲気で稼働させたガソリンエンジンで生じた排ガスとリッチ雰囲気で稼働させたガソリンエンジンで生じた排ガスとをそれぞれ5.0秒の一定の周期で交互に硫黄被毒した前記担持ロジウム触媒に触媒入ガス温度(T
IN)600℃で10分間供給して触媒の再生処理を実施した以外は、実施例1と同様にして燃料改質試験を実施した。触媒の再生処理後の燃料改質処理において生成したH
2及びCOの濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。その結果を
図3に示す。
【0059】
(実施例5)
表1に示すように、リーンガスの空燃比を14.99(理論空燃比の1.02倍)に、リッチガスの空燃比を14.41(理論空燃比の0.98倍)に変更して触媒の再生処理を実施した以外は、実施例1と同様にして燃料改質試験を実施した。触媒の再生処理後の燃料改質処理において生成したH
2及びCOの濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。その結果を
図3に示す。
【0060】
(実施例6)
表1に示すように、リーンガスとリッチガスとをそれぞれ0.1秒の一定の周期で交互にガソリンエンジンに供給し、リーン雰囲気で稼働させたガソリンエンジンで生じた排ガスとリッチ雰囲気で稼働させたガソリンエンジンで生じた排ガスとをそれぞれ0.1秒の一定の周期で交互に硫黄被毒した前記担持ロジウム触媒に触媒入ガス温度(T
IN)600℃で10分間供給して触媒の再生処理を実施した以外は、実施例1と同様にして燃料改質試験を実施した。触媒の再生処理後の燃料改質処理において生成したH
2及びCOの濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。その結果を
図3に示す。
【0061】
(比較例1)
表1に示すように、リーンガスとリッチガスとを交互に供給する代わりに、燃料としてガソリンを含有する空燃比が14.70(理論空燃比)のストイキガスのみをガソリンエンジンに供給し、ストイキ雰囲気で稼働させたガソリンエンジンの排ガスを硫黄被毒した前記担持ロジウム触媒に触媒入ガス温度(T
IN)600℃で10分間供給して触媒の再生処理を実施した以外は、実施例1と同様にして燃料改質試験を実施した。触媒の再生処理後の燃料改質処理において生成したH
2及びCOの濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。その結果を
図3に示す。
【0062】
(比較例2)
ガソリンエンジンの一般的な運転条件における排ガスを硫黄被毒した前記担持ロジウム触媒に供給して触媒の再生処理を実施した以外は、実施例1と同様にして燃料改質試験を実施した。すなわち、表1に示すように、燃料としてガソリンを含有する、空燃比が14.76(理論空燃比の1.004倍)のリーンガスと空燃比が14.64(理論空燃比の0.996倍)のリッチガスとをそれぞれ0.1秒の一定の周期で交互にガソリンエンジンに供給し、リーン雰囲気で稼働させたガソリンエンジンで生じた排ガスとリッチ雰囲気で稼働させたガソリンエンジンで生じた排ガスとをそれぞれ0.1秒の一定の周期で交互に硫黄被毒した前記担持ロジウム触媒に触媒入ガス温度(T
IN)600℃で10分間供給して触媒の再生処理を実施した以外は、実施例1と同様にして燃料改質試験を実施した。触媒の再生処理後の燃料改質処理において生成したH
2及びCOの濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。その結果を
図3に示す。
【0063】
(比較例3)
表1に示すように、リーンガスとリッチガスとを交互に供給する代わりに、燃料としてガソリンを含有する空燃比が15.29(理論空燃比の1.04倍)のリーンガスのみをガソリンエンジンに供給し、リーン雰囲気で稼働させたガソリンエンジンの排ガスを硫黄被毒した前記担持ロジウム触媒に触媒入ガス温度(T
IN)600℃で10分間供給して触媒の再生処理を実施した以外は、実施例1と同様にして燃料改質試験を実施した。触媒の再生処理後の燃料改質処理において生成したH
2及びCOの濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。その結果を
図3に示す。
【0064】
(比較例4)
表1に示すように、リーンガスとリッチガスとを交互に供給する代わりに、燃料としてガソリンを含有する空燃比が14.11(理論空燃比の0.96倍)のリッチガスのみをガソリンエンジンに供給し、リッチ雰囲気で稼働させたガソリンエンジンの排ガスを硫黄被毒した前記担持ロジウム触媒に触媒入ガス温度(T
IN)600℃で10分間供給して触媒の再生処理を実施した以外は、実施例1と同様にして燃料改質試験を実施した。触媒の再生処理後の燃料改質処理において生成したH
2及びCOの濃度をガスクロマトグラフ法により測定した。その結果を
図3に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
図3に示したように、空燃比が特定の範囲にあるリーン雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスと空燃比が特定の範囲にあるリッチ雰囲気で稼働している内燃機関で生じた排ガスとを交互に燃料改質触媒に供給することによって、硫黄被毒により劣化した燃料改質触媒が再生され、燃料改質によって生成するH
2やCOの量が増加することが確認された。