特開2019-203589(P2019-203589A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-203589(P2019-203589A)
(43)【公開日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】電磁弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20191101BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20191101BHJP
   F25B 41/06 20060101ALI20191101BHJP
   F16K 1/32 20060101ALI20191101BHJP
【FI】
   F16K31/06 305H
   F16K31/06 305L
   F16K31/06 305J
   F16K47/02 D
   F25B41/06 T
   F16K1/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-100624(P2018-100624)
(22)【出願日】2018年5月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 龍介
(72)【発明者】
【氏名】横田 健久
【テーマコード(参考)】
3H052
3H066
3H106
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA33
3H052CA02
3H052CA17
3H052CB02
3H052CD02
3H052EA16
3H066AA01
3H066BA32
3H066BA38
3H106DA07
3H106DA13
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC02
3H106DD07
3H106DD18
3H106EE19
3H106GC10
3H106GC11
3H106KK01
3H106KK31
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で弁閉時に生じる衝撃荷重を軽減することができる電磁弁及び該電磁弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供する。
【解決手段】圧縮ばね7が弁体6に弁閉力を付与するとともに、弁体6が当接面431に当接した第1当接状態と、弁体6が規制部材44に当接した第2当接状態と、の間において、弁体6とプランジャ4とがZ方向に相対移動可能である。これにより、弁体6が着座してからプランジャ4のZ方向下方への移動が規制されるまでの間に、プランジャ4の運動エネルギーが消散される。従って、簡単な構成で弁閉時に生じる衝撃荷重を軽減することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を形成する弁本体と、該弁本体に接続される筒状のプランジャチューブと、前記プランジャチューブ内に配置されるプランジャと、前記弁室内に配置される弁座と、前記プランジャを挟んで前記弁座の反対側に配置されて前記プランジャチューブに固定される吸引子と、を備えた電磁弁であって、
前記プランジャの前記弁座側の端部に設けられて該弁座に着座及び離座する弁体と、
一端側において前記吸引子を押圧するとともに他端側において前記弁体を押圧することで該弁体に弁閉力を付与する圧縮ばねと、を備え、
前記プランジャは、前記圧縮ばねが挿通される貫通孔と、該貫通孔に対して前記弁座側に配置されるとともに前記弁体を収容する弁体収容部と、を有し、
前記弁体収容部は、前記吸引子側から前記弁体に当接する吸引子側当接部と、前記弁座側から前記弁体に当接する弁座側当接部と、を有し、
前記弁体は、前記吸引子側当接部に当接した第1当接状態と、前記弁座側当接部に当接した第2当接状態と、の間において、前記プランジャと開閉方向に相対移動可能であることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記弁体は、前記弁座に当接する着座部と、前記吸引子側当接部に当接する荷重受け部と、を有し、
前記着座部と前記荷重受け部とは、前記開閉方向から見て重ならない位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記弁室内を液体が通過することを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁弁。
【請求項4】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、パッケージエアコンやルームエアコン等の空気調和機の冷凍サイクルシステムにおいて、電磁弁が膨張弁として用いられることがある。このような電磁弁として、プランジャと吸引子と復帰ばね(圧縮ばね)とを備えることで開閉動作するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電磁弁では、復帰ばねの端部がプランジャに接続されるとともに、弁体がプランジャ先端に設けられている。吸引子を励磁すると、プランジャが吸引子に引き寄せられて弁体が弁座から離座して弁開し、吸引子を消磁すると、復帰ばねの弁閉力によってプランジャが弁座側に移動し、弁体が弁座に着座して弁閉するようになっている。このとき、弁体がばねを介してプランジャに接続されていることにより、弁体と弁座との衝突音の低減が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−44684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された電磁弁では、衝突音を低減することはできても、弁閉時に生じる衝撃荷重を軽減することは困難であった。即ち、弁体とプランジャとの間にばねが設けられていることで衝撃荷重は多少軽減されるものの、復帰ばねがプランジャに当接していることから、弁閉時にプランジャが移動を停止した際にも復帰ばねの復元力がプランジャに作用することにより、プランジャの運動エネルギーによる衝撃荷重と弁体の運動エネルギーによる衝撃荷重とが略同時に弁座に加わることになり、大きな衝撃荷重が生じやすかった。
【0005】
本発明の目的は、簡単な構成で弁閉時に生じる衝撃荷重を軽減することができる電磁弁及び該電磁弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電磁弁は、弁室を形成する弁本体と、該弁本体に接続される筒状のプランジャチューブと、前記プランジャチューブ内に配置されるプランジャと、前記弁室内に配置される弁座と、前記プランジャを挟んで前記弁座の反対側に配置されて前記プランジャチューブに固定される吸引子と、を備えた電磁弁であって、前記プランジャの前記弁座側の端部に設けられて該弁座に着座及び離座する弁体と、一端側において前記吸引子を押圧するとともに他端側において前記弁体を押圧することで該弁体に弁閉力を付与する圧縮ばねと、を備え、前記プランジャは、前記圧縮ばねが挿通される貫通孔と、該貫通孔に対して前記弁座側に配置されるとともに前記弁体を収容する弁体収容部と、を有し、前記弁体収容部は、前記吸引子側から前記弁体に当接する吸引子側当接部と、前記弁座側から前記弁体に当接する弁座側当接部と、を有し、前記弁体は、前記吸引子側当接部に当接した第1当接状態と、前記弁座側当接部に当接した第2当接状態と、の間において、前記プランジャと開閉方向に相対移動可能であることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、弁体の運動エネルギーによる衝撃荷重とプランジャの運動エネルギーによる衝撃荷重とは、以下に説明するように弁座に加わる。吸引子が消磁された際、弁体は、圧縮ばねの弁閉力によって弁座側に移動する。このとき、弁体は、プランジャの弁座側当接部に当接している(第2当接状態)。これにより、プランジャが弁体に追従して弁座側に移動する。その後、弁体は弁座に着座するが、第1当接状態と第2当接状態との間において弁体とプランジャとが開閉方向に相対移動可能であることから、弁体の着座後においても、プランジャは慣性によって弁座側への移動を続ける。その後、プランジャの吸引子側当接部が弁体に当接し(第1当接状態となり)、プランジャは停止する。プランジャは、弁体が弁座に着座した後は、圧縮ばねの弁閉力が付加されないため、プランジャの移動停止時、即ち、第1当接状態となる時には、プランジャの慣性力は、プランジャに対し圧縮ばねの荷重が直接的に加わった場合と比べ小さくなる。
【0008】
また、第2当接状態と第1当接状態との間においてプランジャが移動する際、弁室内の流体が抵抗となって運動エネルギーが消散される(即ちダンパー効果が得られる)。特に、弁室のうち弁体側の空間が一次側(高圧側)である場合、弁体が弁座に着座することによって流体の流れが遮られ、内圧が上昇してダンパー効果が大きくなる。その後、プランジャの吸引子側当接部が弁体に当接し(第1当接状態となり)、プランジャの移動が規制される。このようにプランジャの移動が規制される際に、プランジャの運動エネルギーによる衝撃荷重が、弁体を介して弁座に加わるものの、この運動エネルギーは低減されている。従って、簡単な構成で弁閉時に生じる衝撃荷重を軽減することができる。
【0009】
この際、本発明の電磁弁では、前記弁体は、前記弁座に当接する着座部と、前記吸引子側当接部に当接する荷重受け部と、を有し、前記着座部と前記荷重受け部とは、前記開閉方向から見て重ならない位置に形成されていることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、プランジャの運動エネルギーによって弁座に加わる衝撃荷重を低減することができる。即ち、弁体がプランジャから荷重を受ける部分である荷重受け部と、弁体が弁座に荷重を加える部分である着座部と、が開閉方向から見てずれており、弁体にはせん断応力が作用する。これにより、弁体の弾性を利用して撓み変形等を生じさせ、衝撃荷重を弁体に吸収させることができ、弁座に加わる衝撃荷重が低減される。
【0011】
また、本発明の電磁弁では、前記弁室内を液体が通過することが好ましい。このような構成によれば、弁体が弁座に着座してからプランジャが移動する際の抵抗を大きくすることができる。特に、弁室のうち弁体側の空間が一次側(高圧側)である場合、弁体が弁座に着座することによる内圧上昇を大きくすることができる。従って、プランジャの運動エネルギーを低下させやすく、弁閉時に生じる衝撃荷重をさらに軽減することができる。
【0012】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、上記いずれかに記載の電磁弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。このような本発明によれば、上記のように弁閉時に生じる衝撃荷重を軽減することができ、弁体および弁座が損傷しにくい。従って、流体の漏れを生じにくくし、冷凍サイクルシステムの運転効率の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電磁弁によれば、圧縮ばねが弁体に弁閉力を付与するとともに弁体とプランジャとが開閉方向に相対移動可能であることで、弁閉時に生じる衝撃荷重を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る電磁弁を示す断面図である。
図2】前記電磁弁において吸引子を励磁した場合の様子を示す断面図である。
図3】前記電磁弁において前記吸引子を消磁した直後の様子を示す断面図である。
図4】前記電磁弁において弁体が弁座に着座した様子を示す断面図である。
図5】前記電磁弁において前記弁体によってプランジャの移動が規制される様子を示す断面図である。
図6】前記電磁弁が用いられる冷凍サイクルシステムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の電磁弁1は、弁本体2と、プランジャチューブ3と、プランジャ4と、吸引子5と、弁体6と、圧縮ばね7と、電磁コイル8と、一次継手9と、二次継手10と、を備える。本実施形態では、弁体6の開閉方向(動作方向)をZ方向とし、Z方向に略直交する2方向をそれぞれX方向およびY方向とする。
【0016】
弁本体2は、Z方向に延びる円筒状に形成されるとともに、その内側に弁室2Aを形成する。弁本体2には、プランジャチューブ3が挿通されて接続される開口がZ方向一方側(以下、上側とする)に形成され、一次継手9が挿通されて接続される開口が側面に形成され、二次継手10が挿通されて接続される開口がZ方向他方側(以下、下側とする)に形成されている。
【0017】
弁本体2は、弁室2A内に弁座21を一体に有する。弁座21の弁ポート211は二次継手10に連通している。弁座21に弁体6が着座することにより、弁室2Aは、一次継手9に連通する空間と、二次継手10に連通する空間と、が区画される。また、弁座21の先端には、Z方向上側から見て円環状の突起部212が形成されており、突起部212の上面が弁座面となる。尚、本実施形態では突起部212の内径と弁ポート211の内径とが略等しいものとするが、突起部212の下部の弁ポート211の内径部に、例えば段差部やテーパ部を形成し、突起部212の内径と弁ポート211の内径とが異なる構成としてもよい。また、本実施形態では、弁座が弁本体と一体に形成されているものとするが、弁本体と別体に形成された弁座が弁室内に収容される構成としてもよい。
【0018】
プランジャチューブ3は、Z方向に延びる円筒状に形成されており、プランジャ4をZ方向に沿って移動するように案内する。プランジャチューブ3の下端は弁本体2に接続される。プランジャチューブ3の上端は、吸引子5が取り付けられることで開口が塞がれる。
【0019】
プランジャ4は、Z方向に延びる円柱状に形成されるとともに、プランジャチューブ3の内径よりも若干小さい外径を有する。プランジャ4の中央部には、Z方向に沿って延びる貫通孔41と、貫通孔41に連通して外周面まで延びる連通孔42と、が形成されている。即ち、プランジャチューブ3内におけるプランジャ4よりも上方の空間は、貫通孔41と、連通孔42と、プランジャ4の外周面とプランジャチューブ3の内周面との隙間と、によってプランジャ4よりも下方の空間(弁室2A)と連通している。
【0020】
プランジャ4の下端部には、弁体6を収容する円筒状の弁体収容部43が形成されている。弁体収容部43の内径は貫通孔41の内径よりも大きく、弁体収容部43における下側を向いた当接面431が、Z方向上側(吸引子5側)から弁体6に当接し、吸引子側当接部となる。また、弁体収容部43の下端部には、円環状の規制部材44がカシメ固定されており、規制部材44が、Z方向下側(弁座21側)から弁体6に当接し、弁座側当接部となる。プランジャ4の上端部は、中央部の方が外周部よりも上方に突出した段差形状を有している。
【0021】
吸引子5は、プランジャチューブ3の上端の開口を塞ぐキャップ状に形成されており、その外側に配置された電磁コイル8に通電することで励磁され、通電を停止することで消磁される。吸引子5は、励磁されることでプランジャ4に対する吸引力を生じる。尚、電磁コイル8には、圧縮ばね7の弁閉力よりも大きな弁開力を生じさせるような大きさの電流が流れる。
【0022】
吸引子5の下面には、中央部に凹部51が形成されており、凹部51には、例えばPTFE等の樹脂製の消音部材52が固定されている。弁開時において、プランジャ4の上端部は、段差形状の中央部において消音部材52に当接するようになっている。
【0023】
弁体6は、例えばPTFE等の樹脂によって形成されるとともに、上部の大径円板部と下部の小径円板部とから構成される。大径円板部の下面61の中央部から凸部611が突出しており、この凸部611が小径円板部となる。弁体6の大径円板部の外径はプランジャ4の弁体収容部43の内径よりも若干小さく、弁体収容部43に収容された弁体6は、Z方向に沿って移動するように案内される。弁体6の下面61のうち凸部611の周囲に位置する周辺部612は、プランジャ4の規制部材44に当接する。凸部611は、その外径が規制部材44の内径よりも小さいことから規制部材44の開口を通過可能であり、弁座21の突起部212に当接する着座部613を有する。弁体6の上面62は、弁体収容部43の当接面431に当接する荷重受け部621を有する。
【0024】
弁体6のうち周辺部612を含む部分の厚さ(大径円板部のZ方向寸法)L1は、プランジャ4の当接面431と規制部材44とのZ方向における間隔L2よりも小さい。従って、弁体6は、弁体収容部43において当接面431と規制部材44との間でZ方向に移動することができる。即ち、弁体6は、当接面431に当接した第1当接状態と、規制部材44に当接した第2当接状態と、の間において、プランジャ4とZ方向に相対移動可能となっている。
【0025】
プランジャ4の貫通孔41の内径よりも、弁座21の突起部212の外径の方が小さい。即ち、弁体6の着座部613は荷重受け部621よりも径方向内側に位置しており、着座部613と荷重受け部621とがZ方向から見て重ならない配置となっている。
【0026】
圧縮ばね7は、Z方向を軸方向として延びるコイルばねであって、上端である一端71が吸引子5下部の消音部材52に当接し、下端である他端72が弁体6の上面62に当接する。即ち、圧縮ばね7は、一端71側において吸引子5を押圧するとともに他端72側において弁体6を押圧する。尚、圧縮ばね7は、吸引子5および弁体6に対し、直接当接してもよいし、間に他の部材が挟み込まれてもよい。圧縮ばね7は、弁体6が弁座21に着座した状態において自然状態から圧縮された状態となる。これにより、圧縮ばね7は、弁体6に弁閉力(Z方向下方への力)を付与する。圧縮ばね7の外径は、プランジャ4の貫通孔41の内径よりも若干小さい。尚、Z方向が鉛直方向と略一致するように電磁弁1が使用される場合には、プランジャ4及び弁体6には弁閉方向の重力が作用するが、以下では説明の都合上、弁閉力は圧縮ばね7によってのみ生じるものとする。
【0027】
以上のような電磁弁1の動作の詳細について説明する。電磁コイル8に通電して吸引子5を励磁すると、プランジャ4が吸引子5に引き寄せられる。即ち、弁開力(Z方向上方への力)が生じ、プランジャ4がZ方向上方に移動する。プランジャ4の規制部材44が弁体6に当接することにより、弁体6がプランジャ4に追従してZ方向上方に移動する。このとき、弁体6には圧縮ばね7による弁閉力が作用しているが、プランジャ4及び弁体6は、この弁閉力に逆らってZ方向上方に移動する。プランジャ4は、上端部が消音部材52に当接することで上方への移動を停止し、電磁弁1は図2に示すように完全に弁開した状態となる。また、弁体6は、完全に弁開した状態において、規制部材44に当接して第2当接状態となっている。
【0028】
次に、電磁コイル8への通電を停止して吸引子5を消磁すると、吸引子5の吸引力がなくなり(又は弱くなり)、プランジャ4を介して弁体6に加わっていた弁開力がなくなる(又は弱くなる)。従って、弁体6は、図3に示すように、圧縮ばね7の弁閉力によってZ方向下方に移動する。弁体6がZ方向下方に移動すると、規制部材44と弁体6とが当接していることにより、プランジャ4は弁体6に追従してZ方向下方に移動する。このように、弁体6及びプランジャ4がZ方向下方に移動する際、第2当接状態が維持される。
【0029】
弁体6は、Z方向下方に移動することで図4に示すように弁座21に着座し、弁体6の運動エネルギーによる衝撃が弁座21に加わる。弁体6が弁座21に着座すると、一次継手9側から二次継手10側に向かう流体の流れが遮られ、弁室2Aのうち弁体6側の空間の内圧が上昇する。弁体6とプランジャ4とがZ方向に相対移動可能であることで、弁体6の着座後もプランジャ4は慣性によってZ方向下方への移動を続ける。このとき、プランジャ4は、圧縮ばね7の弁閉力を受けず、弁室2A内の流体の抵抗により、移動に伴って運動エネルギーが消散される。さらに、弁室2Aのうち弁体6側の空間の内圧が上昇していることから、流体の抵抗が大きくなり、運動エネルギーが消散されやすくなっている。
【0030】
プランジャ4がZ方向下方に移動すると、図5に示すように、当接面431が弁体6に当接して第1当接状態となり、プランジャ4の移動が規制され、電磁弁1が弁閉した状態となる。このとき、プランジャ4の運動エネルギーによる衝撃が弁座21に加わるが、弁体6が着座した時点から第1当接状態(プランジャ4の停止状態)となるまでの間は、プランジャ4に圧縮ばね7の力が付与されないこと及びプランジャ4が弁室2A内の流体の抵抗を受けることから、弁体6及び弁座21に加わるプランジャの衝撃力は軽減される。以上のように電磁コイル8への通電のオンオフを切り換えることにより、弁体6が弁座21に着座及び離座し、弁開状態と弁閉状態とが切り換えられる。
【0031】
電磁弁1は、図6に示すように、例えばパッケージエアコンやルームエアコン等の空気調和機の冷凍サイクル100に設けられる。図6において、符号200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。電磁弁1、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、及び圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。尚、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。冷凍サイクル100では、電磁弁1は膨張弁として機能するため、入口側は液冷媒が循環するようになっている。即ち、電磁弁1の弁室2Aを液体が通過するようになっている。
【0032】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、圧縮ばね7が弁体6に弁閉力を付与するとともに、弁体6とプランジャ4とがZ方向に相対移動可能であることで、弁体6が着座してからプランジャ4のZ方向下方への移動が規制されるまでの間に、プランジャ4の運動エネルギーが消散される。従って、簡単な構成で弁閉時に生じる衝撃荷重を軽減することができる。
【0033】
また、弁体6の着座部613と荷重受け部621とがZ方向から見て重ならない位置に形成されていることで、プランジャ4の運動エネルギーによって弁座21に加わる衝撃荷重を低減することができる。即ち、弁体6がプランジャ4から荷重を受ける部分である荷重受け部621と、弁体6が弁座21に荷重を加える部分である着座部613と、がZ方向から見てずれており、弁体6にはせん断応力が作用する。これにより、弁体6の弾性を利用して撓み変形等を生じさせ、衝撃荷重を弁体6に吸収させることができ、弁座21に加わる衝撃荷重が低減される。
【0034】
また、弁室2A内を液体が通過することで、弁体6が弁座21に着座してからプランジャ4が移動する際の抵抗を大きくすることができる。さらに、弁室2Aのうち弁体6側の空間が一次側であることから、弁体6が弁座21に着座することによる内圧上昇を大きくすることができる。従って、プランジャ4の運動エネルギーを低下させやすく、弁閉時に生じる衝撃荷重をさらに軽減することができる。
【0035】
また、弁閉時に樹脂製の弁体6と弁座21とが衝突するとともに、樹脂製の弁体6とプランジャ4とが衝突しており、即ち、金属部材同士の衝突によって移動を規制する構成でないことから、金属音の発生を抑制することができる。
【0036】
また、プランジャ4が、第1当接状態と第2当接状態との間において弁体6とZ方向に相対移動可能であることで、弁開動作時にプランジャ4の空走距離を確保し、キック動作を生じさせることができる。即ち、電磁弁1が弁閉している際、図5に示すように第1当接状態となっており、吸引子5が励磁されてプランジャ4がZ方向上方に移動する際に、プランジャ4は圧縮ばね7の荷重を受けずに所定距離だけ移動してから規制部材44が弁体6に当接する(第2当接状態になる)。Z方向上方に移動するプランジャ4の勢いを利用して(キック動作によって)弁体6を離座させることで、弁開動作を良好なものとすることができる。
【0037】
また、弁体6が弁座21に荷重を加えるタイミングと、プランジャ4が弁座21に荷重を加えるタイミングと、がずれており時間差が存在することで、弁座21に一度に加わる衝撃荷重を低減することができるとともに、衝突音を小さくすることができる。
【0038】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0039】
例えば、前記実施形態では、弁体6の着座部613と荷重受け部621とがZ方向から見て重ならない位置に形成されているものとしたが、プランジャ4の運動エネルギーが充分に消散される場合や、弁体がZ方向において圧縮変形しやすく衝撃荷重を吸収しやすい場合等には、着座部と荷重受け部とはZ方向から見て重なりを有していてもよい。
【0040】
また、前記実施形態では、弁室2A内を液体が通過するものとしたが、弁室内を気体が通過する構成としてもよい。即ち、使用される流体は、冷凍サイクルシステムの用途等に応じて適宜に選択されればよい。
【0041】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1 電磁弁
2 弁本体
21 弁座
2A 弁室
3 プランジャチューブ
4 プランジャ
41 貫通孔
431 当接面(吸引子側当接部)
44 規制部材(弁座側当接部)
5 吸引子
6 弁体
613 着座部
621 荷重受け部
7 圧縮ばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6