特開2019-203592(P2019-203592A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-203592(P2019-203592A)
(43)【公開日】2019年11月28日
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/847 20060101AFI20191101BHJP
   B60T 5/00 20060101ALI20191101BHJP
   F16D 65/00 20060101ALI20191101BHJP
【FI】
   F16D65/847
   B60T5/00 A
   F16D65/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-100757(P2018-100757)
(22)【出願日】2018年5月25日
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝山 智徳
(72)【発明者】
【氏名】平田 聡
(72)【発明者】
【氏名】杉谷 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 悠介
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA58
3J058AA69
3J058AA78
3J058AA87
3J058BA37
3J058BA62
3J058BA67
3J058CC15
3J058CC62
3J058CC76
3J058DE02
3J058DE04
(57)【要約】
【課題】例えば、ブレーキロータの回転抵抗をより低減することが可能な新規なブレーキ装置を得る。
【解決手段】ブレーキ装置は、例えば、ブレーキステータと、ブレーキステータと相対回転するシャフトと、シャフトとともに回転するブレーキロータと、ブレーキステータとブレーキロータとをシャフトの軸方向に相対的に接近させてブレーキステータとブレーキロータとを摺動させることによりシャフトの回転を制動するアクチュエータと、シャフトおよびブレーキロータのうち少なくとも一方に固定されて回転することにより空気流を生じるファンと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキステータと、
前記ブレーキステータと相対回転するシャフトと、
前記シャフトとともに回転するブレーキロータと、
前記ブレーキステータと前記ブレーキロータとを前記シャフトの軸方向に相対的に接近させて前記ブレーキステータと前記ブレーキロータとを摺動させることにより前記シャフトの回転を制動するアクチュエータと、
前記シャフトおよび前記ブレーキロータのうち少なくとも一方に固定されて回転することにより空気流を生じるファンと、
を備えた、ブレーキ装置。
【請求項2】
前記ファンが前記シャフトおよび前記ブレーキロータのうち少なくとも一方に固定されて回転する連動状態と、前記ファンが前記シャフトおよび前記ブレーキロータとともに回転しない非連動状態と、を切り替える状態切替機構を備えた、請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記状態切替機構は、前記ブレーキステータに固定され前記ファンを回転可能に保持する基部を有し、前記アクチュエータにより前記ブレーキステータが前記ブレーキロータに接近すると前記ファンが前記シャフトおよび前記ブレーキロータのうち少なくとも一方に接続されて回転するように構成された、請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記ファンと前記シャフトおよび前記ブレーキロータのうち少なくとも一方との間に設けられ、前記ブレーキステータと前記ブレーキロータとが前記軸方向に離れた非制動状態において、前記基部の前記軸方向での移動に応じて、前記ファンと前記シャフトおよび前記ブレーキロータのうち少なくとも一方とを接続して前記連動状態を実現する接続状態と、前記ファンと前記シャフトおよび前記ブレーキロータとを切り離して前記非連動状態を実現する切離状態と、を切り替える接続機構を備えた、請求項3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記接続機構は、
前記シャフトおよび前記ブレーキロータのうち少なくとも一方と接続し一体に回転する伝達部と、
前記接続状態において前記伝達部と接触するとともに前記切離状態において前記伝達部から前記軸方向に離間し前記接続状態で前記伝達部から回転トルクが伝達される被伝達部と、
前記接続状態において前記基部の前記軸方向への移動に応じて前記軸方向に弾性的に伸縮可能な伸縮部材と、
を有した、請求項4に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記シャフト、前記アクチュエータ、前記状態切替機構、および前記ブレーキステータと前記ブレーキロータと前記ファンとを収容するケースのうち少なくとも一つに、前記空気流の通路が設けられた、請求項2〜5のうちいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却液を作用させることによりブレーキロータとブレーキステータとの摩擦熱による温度上昇を抑制する油冷式(液冷式)のブレーキ装置が、知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−155761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のブレーキ装置では、ブレーキロータが冷却液に常時浸されているため、冷却液の粘性によってブレーキロータの回転抵抗(引き摺りトルク)ひいては駆動源のエネルギロスが増大しやすいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、ブレーキロータの回転抵抗をより低減することが可能な新規なブレーキ装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のブレーキ装置は、例えば、ブレーキステータと、上記ブレーキステータと相対回転するシャフトと、上記シャフトとともに回転するブレーキロータと、上記ブレーキステータと上記ブレーキロータとを上記シャフトの軸方向に相対的に接近させて上記ブレーキステータと上記ブレーキロータとを摺動させることにより上記シャフトの回転を制動するアクチュエータと、上記シャフトおよび上記ブレーキロータのうち少なくとも一方に固定されて回転することにより空気流を生じるファンと、を備える。
【0007】
このような構成によれば、例えば、空冷式の冷却機構を備えたことにより、液冷式の冷却機構を備えた構成に比べて、ブレーキロータの回転抵抗を低減することができる。また、ファンをシャフトまたはブレーキロータと一体に回転させることにより、ファンを別個に回転する機構を設けた場合に比べて、装置構成が簡素化あるいは小型化されたり、エネルギロスを低減できたりといった利点が得られる。
【0008】
また、上記ブレーキ装置では、例えば、上記ファンが上記シャフトおよび上記ブレーキロータのうち少なくとも一方に固定されて回転する連動状態と、上記ファンが上記シャフトおよび上記ブレーキロータとともに回転しない非連動状態と、を切り替える状態切替機構を備える。このような構成によれば、例えば、ファンがシャフトまたはブレーキロータと連動する連動状態と連動しない非連動状態とを切り替えることにより、ファンが常時シャフトまたはブレーキロータと連動して回転する構成に比べて、エネルギロスを減らすことができる。
【0009】
また、上記ブレーキ装置では、例えば、上記状態切替機構は、上記ブレーキステータに固定され上記ファンを回転可能に保持する基部を有し、上記アクチュエータにより上記ブレーキステータが上記ブレーキロータに接近すると上記ファンが上記シャフトおよび上記ブレーキロータのうち少なくとも一方に接続されて回転するように構成される。このような構成によれば、例えば、連動状態と非連動状態とを切り替える状態切替機構とブレーキ機構とでアクチュエータを共用することができる。
【0010】
また、上記ブレーキ装置では、例えば、上記ファンと上記シャフトおよび上記ブレーキロータのうち少なくとも一方との間に設けられ、上記ブレーキステータと上記ブレーキロータとが上記軸方向に離れた非制動状態において、上記基部の上記軸方向での移動に応じて、上記ファンと上記シャフトおよび上記ブレーキロータのうち少なくとも一方とを接続して上記連動状態を実現する接続状態と、上記ファンと上記シャフトおよび上記ブレーキロータとを切り離して上記非連動状態を実現する切離状態と、を切り替える接続機構を備える。このような構成によれば、例えば、制動状態よりもシャフトおよびブレーキロータの回転速度が高い非制動状態でファンを回転させることができるため、ブレーキステータまたはブレーキロータをより効果的に冷却することができる。
【0011】
また、上記ブレーキ装置では、例えば、上記接続機構は、上記シャフトおよび上記ブレーキロータのうち少なくとも一方と接続し一体に回転する伝達部と、上記接続状態において上記伝達部と接触するとともに上記切離状態において上記伝達部から上記軸方向に離間し上記接続状態で上記伝達部から回転トルクが伝達される被伝達部と、上記接続状態において上記基部の上記軸方向への移動に応じて上記軸方向に弾性的に伸縮可能な伸縮部材と、を有する。このような構成によれば、例えば、伸縮部材の伸縮により接続機構の接続状態において基部の移動を許容し、当該基部によってブレーキ機構における非制動状態と制動状態とを変化させることができる。よって、伸縮部材を有した比較的簡素な構成の接続機構によって、アクチュエータを、状態切替機構とブレーキ機構とで共用しやすくなる。
【0012】
また、上記ブレーキ装置では、例えば、上記シャフト、上記アクチュエータ、上記状態切替機構、および上記ブレーキステータと上記ブレーキロータと上記ファンとを収容するケースのうち少なくとも一つに、上記空気流の通路が設けられる。このような構成によれば、例えば、ブレーキ装置の構成部品を利用して空気流の通路を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図であって、ブレーキ機構の非制動状態かつファンの非連動状態を示す図である。
図2図2は、第1実施形態のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図であって、ブレーキ機構の非制動状態かつファンの連動状態を示す図である。
図3図3は、第1実施形態のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図であって、ブレーキ機構の制動状態を示す図である。
図4図4は、第1実施形態の変形例のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図であって、ブレーキ機構の非制動状態かつファンの連動状態を示す図である。
図5図5は、第2実施形態のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図であって、ブレーキ機構の非制動状態かつファンの非連動状態を示す図である。
図6図6は、第2実施形態のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図であって、ブレーキ機構の非制動状態かつファンの連動状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0015】
また、以下に開示される実施形態および変形例には、同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0016】
また、以下では、シャフト12の回転中心Axの軸方向を、単に軸方向と称し、回転中心Axの径方向を、単に径方向と称し、回転中心Axの周方向を、単に周方向と称する。また、以下の説明では、便宜上、図1〜3の左方を軸方向の一方または前方と称し、図1〜3の右方を軸方向の他方または後方と称する。図中には、軸方向の前方を向く矢印Xが示されている。
【0017】
[第1実施形態]
図1〜3は、ブレーキ装置100の構成図であって、図1は、ブレーキ機構10の非制動状態かつファン30の非連動状態を示し、図2は、ブレーキ機構10の非制動状態かつファン30の連動状態を示し、図3は、ブレーキ機構10の制動状態を示している。図1に示されるように、ブレーキ装置100は、ブレーキ機構10と、アクチュエータ20と、ファン30と、接続機構40と、を備えている。
【0018】
ブレーキ装置100は、ブレーキ機構10において、車両の駆動源から車輪に至る回転伝達経路に含まれる回転体(不図示)と連動して回転するディスクロータ13を摩擦制動することにより、車両を減速する。すなわち、ブレーキ装置100は、車両用の制動装置である。アクチュエータ20は、押圧部材22を軸方向に動かすことにより、ブレーキ機構10におけるディスクロータ13の制動状態(図3)と非制動状態(図2)とを切り替える。また、本実施形態では、アクチュエータ20によって押圧部材22を軸方向に動かすことにより、ファン30の連動状態(図2)と非連動状態(図1)とを切り替える。ファン30は、非制動状態における連動状態(図2)においてシャフト12に固定されて当該シャフト12と一体に回転することにより、ディスクロータ13および摩擦材14に作用する空気流Wを生じる。これにより、ディスクロータ13と摩擦材14との摩擦熱に伴う温度上昇を抑制する。図1における押圧部材22の位置は初期位置とも称され、図2における押圧部材22の位置は第一位置とも称され、図3における押圧部材22の位置は第二位置とも称される。押圧部材22は、状態切替機構の基部の一例である。
【0019】
図1に示されるように、ブレーキ機構10は、ケース11と、シャフト12と、ディスクロータ13と、摩擦材14と、付勢部材16と、を有している。
【0020】
ケース11は、円筒状に構成されている。ケース11は、前壁11aと、後壁11bと、周壁11cと、を有する。前壁11aおよび後壁11bは、いずれも、軸方向と交差(直交)する方向に沿って延びており、軸方向に間隔をあけて互いに平行に設けられている。前壁11aおよび後壁11bは、円板状に構成されている。前壁11aおよび後壁11bは、端壁とも称されうる。
【0021】
周壁11cは、前壁11aの外縁と後壁11bの外縁との間で軸方向に延びている。周壁11cは、円筒状に構成されている。周壁11cは、側壁とも称されうる。なお、周壁11cの中心線は、回転中心Axと略一致しているが、これには限定されない。また、ケース11の材料は、例えば、アルミ二ウム合金のような金属材料であるが、これには限定されない。
【0022】
ケース11の内部には、前壁11a、後壁11b、および周壁11cによって囲まれた収容室Rが設けられている。収容室Rには、シャフト12や、ディスクロータ13、摩擦材14、アクチュエータ20、ファン30、接続機構40等が収容されている。シャフト12の一部は、収容室Rよりも軸方向の前方に突出し、アクチュエータ20の一部は、収容室Rよりも軸方向の後方に突出している。
【0023】
シャフト12は、前壁11aに設けられた貫通孔11a1を貫通し、軸方向に延びている。シャフト12は、回転中心Ax回りに回転可能にベアリング15aを介して前壁11aに支持されている。
【0024】
ディスクロータ13は、軸方向に所定の厚さを有した円盤状に構成されている。ディスクロータ13の中央部には、回転中心Axに沿う貫通孔13cが設けられている。シャフト12は、貫通孔13cを貫通している。ディスクロータ13は、例えば、スプライン嵌合構造を介して、シャフト12と結合されている。すなわち、ディスクロータ13は、周方向にはシャフト12と一体的に回転するとともに、軸方向にはシャフト12に対して相対的に移動可能である。
【0025】
摩擦材14は、前側パッド14aと、後側パッド14bと、を有している。前側パッド14aは、ディスクロータ13の前方に位置され、後側パッド14bは、ディスクロータ13の後方に位置されている。前側パッド14aは、ケース11の前壁11aに固定され、後側パッド14bは、押圧部材22に固定されている。前側パッド14aおよび後側パッド14bは、それぞれ、ディスクロータ13の外周部に沿って円環状に配置されている。摩擦材14は、ブレーキステータの一例である。
【0026】
また、ディスクロータ13は、前側パッド14aと面した被制動面13aと、後側パッド14bと面した被制動面13bと、を有している。被制動面13a,13bは、互いに軸方向の反対側を向いている。被制動面13a,13bは、前側パッド14aおよび後側パッド14bのそれぞれと周方向に摺動可能である。ディスクロータ13は、ブレーキロータの一例であり、被制動部材とも称されうる。なお、摩擦材14は、ディスクロータ13に設けられてもよい。その場合、摩擦材14は、ブレーキロータの一例となり、前壁11a(ケース11)および押圧部材22は、ブレーキステータの一例となる。
【0027】
付勢部材16は、前壁11aとディスクロータ13との間に設けられている。付勢部材16は、例えば、軸方向に弾性的に圧縮可能な圧縮ばねである。付勢部材16は、ディスクロータ13を前壁11aおよび前側パッド14aから離れる方向に付勢し、ブレーキ機構10における制動解除時すなわち非制動時にディスクロータ13を前側パッド14aから後方に離間させる。
【0028】
アクチュエータ20は、モータ21と、モータシャフト21aと、押圧部材22と、を有している。モータシャフト21aは、軸方向に延びている。モータシャフト21aの回転中心と、シャフト12の回転中心Axとは、軸方向に並んでいる。モータ21は、供給された電力によりモータシャフト21aを回転させることができる。
【0029】
押圧部材22は、軸方向に所定の厚さを有した円盤状に構成されている。押圧部材22の中央部には、回転中心Axに沿う貫通孔22aが設けられている。モータシャフト21aは、貫通孔22a、および後壁11bの中央部に設けられた貫通孔11b1を、軸方向に貫通している。モータシャフト21aは、回転中心Ax回りに回転可能にベアリング15bを介して後壁11bに支持されている。
【0030】
また、押圧部材22は、ディスクロータ13の後方、すなわち前側パッド14aとは軸方向の反対側に位置されている。押圧部材22は、モータシャフト21aの回転を当該押圧部材22の直動に変換する運動変換機構23を介して、モータシャフト21aと接続されている。
【0031】
運動変換機構23は、雄ねじ21a1と、雌ねじ22a1と、回転制限部23aと、を有する。雄ねじ21a1は、モータシャフト21aの外周に設けられている。雌ねじ22a1は、押圧部材22の貫通孔22aの内周に設けられ、雄ねじ21a1と噛み合う。回転制限部23aは、例えば、ケース11の周壁11cに設けられ、後側パッド14bおよび押圧部材22の回転を制限するとともに、軸方向への移動を案内する。なお、回転制限部23aは、周壁11cの軸方向に延びた平面(内面)であるが、これには限定されない。回転制限部23aは、案内部とも称されうる。
【0032】
運動変換機構23により、モータシャフト21aの所定方向への回転が、押圧部材22の前壁11aに近付く軸方向の前方への直動に変換される。他方、モータシャフト21aの所定方向とは反対方向への回転が、押圧部材22の前壁11aから離れる軸方向の後方への直動に変換される。なお、運動変換機構23は、互いに噛み合う雄ねじ21a1および雌ねじ22a1を含むねじ機構を有するものには限定されない。また、アクチュエータ20は、本実施形態では、モータ21を含む構成であったが、これには限定されず、例えば、流体圧のピストン(シリンダ)を有するものであってもよい。
【0033】
また、モータ21およびモータシャフト21aの中央部には、回転中心Axに沿う貫通孔25が設けられている。貫通孔25の前端部は、ケース11内のファン30に臨み、貫通孔25の後端部は、ケース11外の空間に臨んでいる。貫通孔25は、ファン30とシャフト12との連動状態(図2)において、空気流Wの導入通路または排出通路として機能する。貫通孔25は、通路の一例である。
【0034】
また、周壁11cには、径方向に沿う貫通孔11dが設けられている。貫通孔11dは、ディスクロータ13の径方向の外方に位置され、貫通孔11dとディスクロータ13とは、径方向に並んでいる。貫通孔11dは、リング状のスリットであってもよいし、周方向に間欠的に設けられてもよい。貫通孔11dは、ファン30とシャフト12との連動状態において、空気流Wの導入通路または排出通路として機能する。貫通孔11dは、通路の一例である。なお、貫通孔11dは、この例には限定されず、例えば、前壁11aにおける前側パッド14aと付勢部材16との間に設けられてもよい。
【0035】
ファン30は、例えば、軸流式のプロペラファンである。ファン30の回転中心と、シャフト12の回転中心Axとは、軸方向に並んでいる。ファン30は、回転中心Ax回りに回転可能にベアリング15cを介して押圧部材22に支持されている。ファン30は、周方向には押圧部材22に対して相対回転可能であるとともに、軸方向には押圧部材22と一体的に移動可能である。ベアリング15cおよび押圧部材22は、状態切替機構の一例である。
【0036】
接続機構40は、接続プレート41と、スプリング42と、を有している。接続プレート41は、軸方向と交差(直交)した円板状に構成されている。接続プレート41は、押圧部材22の軸方向への移動に応じて、シャフト12の後端面12aと接触した接続位置P2(図2)と、後端面12aと離間した切離位置P1(図1)と、の間で移動可能である。接続位置P2では、後端面12aから接続プレート41に回転トルクが伝達されることにより、シャフト12とファン30とが一体に回転する連動状態が得られる。他方、切離位置P1では、後端面12aから接続プレート41が後方に離間することにより、シャフト12とファン30とを切り離した非連動状態が得られる。後端面12aは、伝達部の一例であり、接続プレート41は、被伝達部の一例である。
【0037】
スプリング42は、接続プレート41とファン30との間に介在している。スプリング42は、例えば、軸方向に弾性的に圧縮可能な圧縮ばねである。スプリング42は、接続プレート41を後端面12aに近付く方向に付勢し、これにより接続位置P2において接続プレート41と後端面12aとの間の面圧を高めている。また、スプリング42は、ブレーキ機構10における非制動状態(図2)と制動状態(図3)との間で弾性的に伸縮することにより、接続機構40における接続状態を維持したまま、ブレーキ機構10における制動状態(非制動状態)を変化させることを可能としている。スプリング42は、伸縮部材の一例である。
【0038】
このような構成のブレーキ装置100にあっては、アクチュエータ20が押圧部材22を前壁11aに近付けると、ファン30は押圧部材22に押され前壁11aに近付くように軸方向の前方に移動する。この場合、ファン30は、図2に示されるような、接続プレート41と後端面12aとが接触した連動状態となる。他方、アクチュエータ20が押圧部材22を前壁11aから遠ざけると、ファン30は、前壁11aから遠ざかるように軸方向の後方に移動する。この場合、ファン30は、図1に示されるような、接続プレート41と後端面12aとが離間した非連動状態となる。
【0039】
ファン30とシャフト12との連動状態(図2)において、ファン30の所定方向への回転により、貫通孔25からケース11内に導入されディスクロータ13と摩擦材14との間を経由して貫通孔11dからケース11外に排出される空気流Wが生成される。他方、ファン30の所定方向とは反対方向への回転により、貫通孔11dからケース11内に導入されディスクロータ13と摩擦材14との間を経由して貫通孔25からケース11外に排出される空気流Wが生成される。なお、ファン30は、軸流式のプロペラファンには限定されず、遠心式のシロッコファンやターボファン、斜流式のプロペラファン等であってもよい。
【0040】
また、アクチュエータ20がファン30の連動状態(図2)から押圧部材22を前壁11aに向けてさらに近付けると、ディスクロータ13が押圧部材22に押され前壁11aに近付くように軸方向の前方に移動する。この場合、ディスクロータ13は、摩擦材14によって軸方向に挟まれる。ディスクロータ13の被制動面13a,13bが摩擦材14と摺動することにより、ブレーキ機構10は、図3に示されるような、ディスクロータ13が摩擦制動された制動状態となる。他方、アクチュエータ20が押圧部材22を前壁11aから遠ざけると、ディスクロータ13は、付勢部材16の付勢力により、前壁11aから遠ざかるように軸方向の後方に移動する。この場合、ブレーキ機構10は、図2に示されるような、ディスクロータ13の摩擦制動が解除された非制動状態となる。
【0041】
図3の制動状態においては、ディスクロータ13と摩擦材14との摩擦摺動により、摩擦熱が発生する。この場合、ファン30はシャフト12およびディスクロータ13と連動して低速で回転するかあるいは回転が停止する。他方、ブレーキ機構10における制動が解除され図2の非制動状態になると、ファン30はシャフト12およびディスクロータ13と連動して図3の制動状態よりも高速で回転する。これにより、ディスクロータ13と摩擦材14とに作用する空気流Wを生じ、摩擦熱に伴う温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0042】
以上のように、本実施形態では、ブレーキ装置100は、シャフト12に固定されて回転することにより摩擦材14(ブレーキステータ)とディスクロータ13(ブレーキロータ)とに作用する空気流Wを生じるファン30を備える。このような構成によれば、例えば、空冷式の冷却機構を備えたことにより、液冷式の冷却機構を備えた構成に比べて、ディスクロータ13の回転抵抗を低減することができる。また、ファン30をシャフト12と一体に回転させることにより、ファン30を別個に回転する機構を設けた場合に比べて、ブレーキ装置100の構成が簡素化あるいは小型化されたり、エネルギロスを低減できたりといった利点が得られる。
【0043】
また、本実施形態では、ブレーキ装置100は、ファン30がシャフト12に固定されて回転する連動状態と、ファン30がシャフト12とともに回転しない非連動状態と、を切り替える押圧部材22(状態切替機構)を備える。このような構成によれば、例えば、ファン30がシャフト12と連動する連動状態と連動しない非連動状態とを切り替えることにより、ファン30が常時シャフト12と連動して回転する構成に比べて、エネルギロスを減らすことができる。
【0044】
また、本実施形態では、押圧部材22(基部)は、摩擦材14に固定されるとともにファン30を回転可能に保持し、アクチュエータ20により摩擦材14がディスクロータ13に接近するとファン30がシャフト12に接続されて回転するように構成されている。このような構成によれば、例えば、連動状態と非連動状態とを切り替える押圧部材22とブレーキ機構10とでアクチュエータ20を共用することができる。
【0045】
また、本実施形態では、ブレーキ装置100は、ファン30とシャフト12との間に設けられ、非制動状態において、押圧部材22(基部)の軸方向での移動に応じて、ファン30とシャフト12とを接続して連動状態を実現する接続状態と、ファン30とシャフト12とを切り離して非連動状態を実現する切離状態と、を切り替える接続機構40を備える。このような構成によれば、例えば、制動状態よりもシャフト12およびディスクロータ13の回転速度が高い非制動状態でファン30を回転させることができるため、摩擦材14およびディスクロータ13をより効果的に冷却することができる。また、非制動状態において連動状態と非連動状態とを切り替えることにより、例えば、センサによる検出温度が閾値以上となった場合に連動状態として摩擦材14およびディスクロータ13を冷却することができるので、常時連動状態となる構成と比較してファン30の回転によるエネルギロスを低減することができる。
【0046】
また、本実施形態では、接続機構40は、接続状態において後端面12a(伝達部)と接触するとともに切離状態において後端面12aから軸方向に離間し接続状態で後端面12aから回転トルクが伝達される接続プレート41(被伝達部)と、接続状態において押圧部材22の軸方向への移動に応じて軸方向に弾性的に伸縮可能なスプリング42(伸縮部材)と、を有する。このような構成によれば、例えば、スプリング42の伸縮により接続機構40の接続状態において押圧部材22の移動を許容し、当該押圧部材22によってブレーキ機構10における制動状態と非制動状態とを変化させることができる。よって、スプリング42を有した比較的簡素な構成の接続機構40によって、アクチュエータ20を、押圧部材22(状態切替機構)とブレーキ機構10とで共用しやすくなる。
【0047】
また、本実施形態では、アクチュエータ20およびケース11に、空気流Wの貫通孔25,11d(通路)が設けられている。このような構成によれば、例えば、ブレーキ装置100の構成部品を利用して空気流Wの通路を構成することができる。
【0048】
[第1実施形態の変形例]
図4は、本変形例のブレーキ装置100Aの構成図である。ブレーキ装置100Aは、上記実施形態のブレーキ装置100と同様の構成を備えている。よって、ブレーキ装置100Aは、当該同様の構成に基づく上記第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0049】
ただし、本変形例では、図4に示されるように、シャフト12および接続プレート41のそれぞれに回転中心Axに沿う貫通孔12b,41aが設けられている点が、上記実施形態と相違している。貫通孔12bおよび貫通孔41aは、軸方向に並んでいる。貫通孔12bの後端部は、貫通孔41aを介してケース11内のファン30に臨み、貫通孔12bの前端部は、ケース11外の空間に臨んでいる。貫通孔12bの前端部は、例えば、シャフト12の径方向の外方に向けて開放されている。貫通孔12b,41aは、ファン30とシャフト12との連動状態(図4)において、空気流Wの導入通路または排出通路として機能する。貫通孔12b,41aは、通路の一例である。
【0050】
このような構成では、ファン30の所定方向への回転により、貫通孔12b,41aからケース11内に導入されディスクロータ13と摩擦材14との間を経由して貫通孔11dからケース11外に排出される空気流Wが生成される。他方、ファン30の所定方向とは反対方向への回転により、貫通孔11dからケース11内に導入されディスクロータ13と摩擦材14との間を経由して貫通孔41a,12bからケース11外に排出される空気流Wが生成される。このように、本変形例によっても、ブレーキ装置100Aの構成部品を利用して空気流Wの通路を構成することができる。
【0051】
[第2実施形態]
図5,6は、本実施形態のブレーキ装置100Bの構成図であって、図5は、ブレーキ機構10の非制動状態かつファン30の非連動状態を示し、図6は、ブレーキ機構10の非制動状態かつファン30の連動状態を示している。ブレーキ装置100Bは、上記実施形態や変形例と同様の構成を備えている。よって、ブレーキ装置100Bは、当該同様の構成に基づく上記実施形態や変形例と同様の作用および効果を得ることができる。
【0052】
ただし、本実施形態では、図5,6に示されるように、押圧部材22に開口部22bが設けられている点が、上記実施形態および変形例と相違している。開口部22bは、略L字状の断面を有し、一端が押圧部材22の径方向の内方に向けて開放され、他端が押圧部材22の軸方向の後方に向けて開放されている。また、ケース11の後壁11bには、軸方向に沿う貫通孔11eが設けられている。開口部22bの後端部は、貫通孔11eに臨んでいる。他方、開口部22bの前端部は、ファン30の非連動状態(図5)ではモータシャフト21aに覆われて隠れるとともに、ファン30の連動状態(図6)ではモータシャフト21aから露出してファン30に臨む。貫通孔11eおよび開口部22bは、ファン30とシャフト12との連動状態(図6)において、空気流Wの導入通路または排出通路として機能する。貫通孔11eおよび開口部22bは、通路の一例である。
【0053】
このような構成では、ファン30の所定方向への回転により、貫通孔11eからケース11内に導入され開口部22bおよびディスクロータ13と摩擦材14との間を経由して貫通孔11dからケース11外に排出される空気流Wが生成される。他方、ファン30の所定方向とは反対方向への回転により、貫通孔11dからケース11内に導入されディスクロータ13と摩擦材14との間および開口部22bを経由して貫通孔11eからケース11外に排出される空気流Wが生成される。このように、本実施形態によっても、ブレーキ装置100Bの構成部品を利用して空気流Wの通路を構成することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0055】
例えば、ファンおよび接続機構は、シャフトに接離可能に設けられたが、これには限定されず、ディスクロータに接離可能に設けられもよいし、シャフトおよびディスクロータの双方に接離可能に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0056】
100,100A,100B…ブレーキ装置、10…ブレーキ機構、11…ケース、11d,11e…貫通孔(通路)、12…シャフト、12a…後端面(伝達部)、13…ディスクロータ(ブレーキロータ)、14…摩擦材(ブレーキステータ)、15c…ベアリング(状態切替機構)、20…アクチュエータ、22…押圧部材(状態切替機構、基部)、25,12b…貫通孔(通路)、30…ファン、40…接続機構、41…接続プレート(被伝達部)、42…スプリング(伸縮部材)、Ax…回転中心、W…空気流、X…軸方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6