【課題】簡素かつ小規模な構成で、TE及びTMの各々に対応可能な偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティング及び偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティングを用いたレーザレーダを提供する。
との正負が反対となるように構成された回折格子40と、回折格子40で受信光から分離されたTEが伝播する導波路32Eと、回折格子40で受信光から分離されたTMを伝播する導波路32Mと、通電により導波路32E、32Mを通過する光の位相を変化させる移相器であるヒータ38AE、38BE、38AM、38BMと、を備える。
直交偏波の回折角の絶対値と平行偏波の回折角の絶対値とが等しく、かつ前記直交偏波の回折角と前記平行偏波の回折角との正負が反対となるように構成された回折格子と、
前記回折格子で受信光から分離された直交偏波が伝播する直交偏波用導波路と、
前記回折格子で受信光から分離された平行偏波を伝播する平行偏波用導波路と、
加熱又は通電により前記直交偏波用導波路を通過する光の位相を変化させる直交偏波用移相器と、
加熱又は通電により前記平行偏波用導波路を通過する光の位相を変化させる平行偏波用移相器と、
を備えた偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティング。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自然光は、位相が異なる偏光が混在しているが、自然光に含まれる偏光の代表的なものとして、TE波(直交偏波:Transverse Electric Wave)とTM波(平行偏波:Transverse Magnetic Wave)とが存在する。TE波(以下、「TE」と略記)は、電界成分が入射面に対し横向きであり、TM波(以下、「TM」と略記)は、磁界成分が入射面に対し横向きである。
【0005】
一般に、上記のようなアンテナは、1の回折格子に、1の導波路を有し、導波路を加熱又は通電することによって導波路の屈折率を変化させることにより、アンテナで受光した光の位相を変化させる。しかしながら、TE及びTMは屈折率等の光学特性が各々異なるので、TEとTMとでは、導波路における伝播定数が異なり、TMに対してTEと同様の位相変化を与えることができず、上記のようなアンテナは、TE又はTMのみが受光できるようになっている。
【0006】
上記のアンテナは、レーザ光源に偏光フィルタを適用することにより、回折格子から投光するレーザ光をTEのみ、またはTMのみ、とすることが可能であるが、例えば、TEが対象物で反射した結果、TMが反射光としてアンテナに戻ってくる場合がある。従って、TE又はTMのみ受光可能に構成されたアンテナでは、偏光の反射光を正確に受光できない問題がある。
【0007】
かかる問題を解消するために、TE及びTMの各々を受光可能なアンテナを備えたレーザレーダ装置が考えられるが、アンテナを構成する回折格子をTE専用及びTM専用で各々備えることを要し、装置が大型化すると共に、製品の製造コストが嵩むという問題があった。
【0008】
本発明は、上記に示した問題点を鑑みてなされたものであり、簡素かつ小規模な構成で、TE及びTMの各々に対応可能な偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティング及び偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティングを用いたレーザレーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティングは、直交偏波の回折角の絶対値と平行偏波の回折角の絶対値とが等しく、かつ前記直交偏波の回折角と前記平行偏波の回折角との正負が反対となるように構成された回折格子と、前記回折格子で受信光から分離された直交偏波が伝播する直交偏波用導波路と、前記回折格子で受信光から分離された平行偏波を伝播する平行偏波用導波路と、加熱又は通電により前記直交偏波用導波路を通過する光の位相を変化させる直交偏波用移相器と、加熱又は通電により前記平行偏波用導波路を通過する光の位相を変化させる平行偏波用移相器と、を備える。
【0010】
請求項2に記載の偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティングは、波形発生源で生成された送信信号が伝播する送信用導波路と、加熱又は通電により前記送信用導波路を通過する光の位相を変化させて前記回折格子に入射させる送信用移相器と、を更に備える。
【0011】
請求項3に記載のレーザレーダは、請求項2記載の偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティングと、前記送信信号と、前記直交偏波用移相器により位相が変化した光を表す受信信号との周波数差に基づいて、対象物までの距離を算出し、前記送信信号と、前記平行偏波用移相器により位相が変化した光を表す受信信号との周波数差に基づいて、前記対象物までの距離を算出し、それぞれ算出された前記対象物までの距離に基づいて、前記対象物までの距離を計測する演算部と、を備える。
【0012】
請求項4に記載のレーザレーダは、請求項2記載の偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティングと、前記直交偏波用移相器により位相が変化した光を表す受信信号に基づいて、前記受信光に含まれる前記直交偏波の強度を算出し、前記平行偏波用移相器により位相が変化した光を表す受信信号に基づいて、前記受信光に含まれる前記平行偏波の強度を算出し、それぞれ算出された強度の比に基づいて、対象物への送信光の入射角を算出することにより、前記対象物の形状を計測する演算部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、簡素かつ小規模な構成で、TE及びTMの各々に対応可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1(A)は、本実施の形態に係る偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティング10に含まれる回折格子40の一例を示した概略図であり、
図1(B)は、回折格子40と組み合わされる導波路32の一例を示した概略図である。
図1(A)に示すように、回折格子40は、入射したTE、TMを各々別方向に分離し、TEは導波路32Eに、TMは32Mに、各々伝播させる。
【0016】
図2は、回折格子40における、TEの回折角θ
TE及びTMの回折角θ
TMの一例を示した説明図である。
図2に示したように、TEが回折角θ
TEで、TMが回折角θ
TMで各々回折格子40に入射すると、TE及びTMは同一方向に伝播する。
【0017】
図2において、回折角θ
TE及び回折角θ
TMの各々を、回折格子40の受光面の法線ベクトルN
Vに対する角度として定義する。
【0018】
|回折角θ
TE|=|回折角θ
TM|となり、かつ回折角θ
TEと回折角θ
TMとの正負が反対となるように、すなわち法線ベクトルN
Vを中心に回折角θ
TE及び回折角θ
TMが対称となるように回折格子40を構成すると、TE及びTMが同一方向から回折格子40に入射した場合、TE及びTMは、
図1(A)に示したように、各々別方向に分離される。
【0019】
また、回折格子40は、ヒータ38AE、38BE、38AM、38BMを備え、ヒータ38AE、38BMは、導波路32Eを、ヒータ38AM、38BMは、導波路32Mを各々加熱する。ヒータ38AE、38BE、38AM、38BMに通電して導波路32E、32Mを加熱することにより、導波路32E、32Mを伝播する光の屈折率を変化させることができる。以下では、ヒータ38AE、38BE、38AM、38BMを一括して「ヒータ38」と称する場合がある。
【0020】
図3は、回折格子40と導波路32とヒータ38AE、38BE、38AM、38BMとが組み合わされた偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティング10の一例を示した概略図である。導波路32Eは、回折格子40が分離したTEを、複数の導波路32E−1〜32E−8に伝播させるが、導波路32E−1〜32E−8は、最終的には1本の導波路32Eに収束する。導波路32Mも、回折格子40が分離したTMを、複数の導波路32M−1〜32M−8に伝播させるが、導波路32M−1〜32M−8は、最終的には1本の導波路32Mに収束する。以下では、導波路32E−1、32M−1から導波路32E−8、32M−1を一括して「導波路32E、32M」と称する場合がある。
【0021】
ヒータ38AE、38AMは、導波路32E−1、32M−1から導波路32E−8、32M−8に向かうに従って、導波路32を加熱する面積が大きくなるような形状を有する。一例として、
図3ではヒータ38AE、38AMが三角形の形状である場合について示した。逆に、ヒータ38BE、38BMは、導波路32E−1、32M−1から導波路32E−8、32M−8に向かうに従って、導波路32を加熱する面積が小さくなるような形状を有する。一例として、
図3ではヒータ38BE、32BMが逆三角形の形状である場合について示した。ヒータ38AE、38BE、38AM、38BMは、Si基板上にチタン、白金等の導電率が比較的低い金属を蒸着して生成してもよいし、P型半導体又はN型半導体等の不純物半導体で構成してもよい。
【0022】
導波路32を構成するSiO
2の光の屈折率は、導波路32に供給される熱量(ヒータ38AE、38BE、38AM、38BMの発熱量)に比例して増大する。従って、ヒータ38AE、38BE、38AM、38BMにより導波路32が加熱されると、ヒータ38AE、38BE、38AM、38BMの発熱量に対して導波路32を通過する光の位相が線形的に変化し、結果的に、ヒータ38AE、38BE、38AM、38BMは光の位相を変化させる移相器として機能する。受信光として回折格子40で受光した光はTEとTMとに分離され、TEは導波路32E−1〜32E−8に伝播し、TMは導波路32M−1〜32M−8に伝播するが、導波路32E−1〜32E−8がヒータ38AE、38BEにより加熱されることにより、導波路32E−1〜32E−8を伝播するTEの位相が変化する。同様に、導波路32M−1〜32M−8がヒータ38AM、38BMにより加熱されることにより、導波路32M−1〜32M−8を伝播するTMの位相が変化する。本実施の形態では、TE用の移相器であるヒータ38AE、38BEと、TM用の移相器であるヒータ38AM、38BMとを備えることにより、TE及びTMの各々に対し、各々の特性に応じた別個独立の位相変化を与えることが可能である。
【0023】
導波路32E(32E−1〜32E−8)、及び導波路32M(32M−1〜32M−8)の各々は、上述のように受信光のみならず、後述するレーザ光源が出力したレーザ光も伝播する。レーザ光源が出力したレーザ光は導波路32Eを介して、回折格子40に導かれ、回折格子40からレーザ光に含まれるTEが送信光として各々外界に投光される。なお、レーザ光源が出力したレーザ光は導波路32Mを介して回折格子40に導かれ、回折格子40からレーザ光に含まれるTMが送信光として外界に投光されるようにしてもよい。
【0024】
ヒータ38AE、38BEは、レーザ光源が出力したレーザ光が伝播する導波路32E−1〜32E−8を加熱することにより、回折格子40から送信光として外界に投光されるTEの位相を変化させる。また、ヒータ38AM、38BMは、レーザ光源が出力したレーザ光のTMが伝播する導波路32M−1〜32M−8を加熱することにより、回折格子40から送信光として外界に投光されるTMの位相を変化させる。これにより、送信光として投光されるTEの方向が変化する。また、導波路32E−1〜32E−8の各々の加熱度合いを変えることにより、位相の変化度合いが各々異なり、送信光として投光されるTEの方向が異なることとなる。これによって、送信光として投光されるTEを走査させることが可能となる。
【0025】
図4(A)は、TE用グレーティングの一例を、
図4(B)は、TM用のグレーティングの一例を、
図4(C)は、TE用グレーティングとTM用グレーティングを重ね合わせた場合の一例であり、
図4(D)は、本実施の形態に係る回折格子40の一例を、各々示した説明図である。
図4に示したように、本実施の形態では、TE用グレーティングとTM用グレーティングを重ね合わせることにより、TE及びTMの各々に対応する回折格子40のグレーティングを設定する。
【0026】
図5は、本実施の形態に係る偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティング10を含んだレーザレーダ装置100の構成の一例を示したブロック図である。
図5に示したレーザレーダ装置100は、主には、偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティング10と、プロセッサ50とで構成され、プロセッサ50は、波形発生部14でレーザ光源12が出力するレーザ光の波形に係る信号を生成する。波形発生部14は、発振周波数が自動的に一定の割合で連続的に変化する一種の掃引発振器であり、周波数が連続的に変化するレーザ光の波形に係る信号をデジタル信号として出力する。
【0027】
波形発生部14が出力したデジタル信号は、DAコンバータ16Aでアナログ信号である電圧の変化に変換され、レーザ光源12は、DAコンバータ16Aから入力された信号の電圧変化に応じて周波数及び波形が変化するレーザ光を偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティング10に出力する。レーザ光源12は、回折格子40を偏光フィルタとして用いることにより、出力するレーザ光をTEのみ、又はTMのみに限定することができる。レーザ光源12が出力したレーザ光の一部は送信信号60として、後述するFMCW(Frequency−Modulated Continuous Wave:周波数変調連続波)による距離の検出に用いられる。
【0028】
偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティング10に出力されたレーザ光は、導波路32を介して回折格子40から外界に送信光として投光される。
【0029】
送信光が対象物で反射されると、受信光として偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティング10に入射してくる。受信光がTEの場合は、導波路32Eに受信光が伝播し、フォトダイオード18Eによって、受信光の強弱の変化が電流の変化の信号に変換される。受信光がTMの場合は、導波路32Mに受信光が伝播し、フォトダイオード18Mによって、受信光の強弱の変化が電流の変化の信号に変換される。また、送信信号60も、フォトダイオード18E、18Mによって、各々電流の変化の信号に変換される。
【0030】
フォトダイオード18E、18Mが出力した電流は、トランスインピーダンス増幅回路(TIA)20E、20Mによって電圧変化に変換され、ADコンバータ22E、22Mにより、各々がデジタル信号に変換される。
【0031】
周波数解析部24E及び距離換算部26Eは、受信したTEでFMCWによる距離検出を行い、周波数解析部24M及び距離換算部26Mは、受信したTMでFMCWによる距離検出を行う。
【0032】
図6は、FMCWによる距離検出の原理の一例を示した説明図である。レーザレーダ装置100は、
図6において横軸で表した時間に対して例えば三角波状に周波数変調された送信信号を送信する。送信信号が距離dだけ離れた対象物で反射されると、受信信号となってレーザレーダ装置100に戻り、受信される。
【0033】
送信信号と受信信号とを時間軸に沿って表すと、受信信号は送信信号より遅延時間τだけ遅れる。この遅延時間τが対象物までの距離dの情報を含んでいる。しかしながら、遅延時間τを高精度で直接検出するのは困難なので、本実施の形態では、周波数解析部24E、24Mで、送信信号と受信信号との周波数差δfを検出し、距離換算部26E、26Mで、周波数差δfに基づいて遅延時間τを算出し、さらに距離dを算出する。本実施の形態では、送信信号の位相及び受信信号の位相が、
図6に示したような時間軸上で比較できるように、移相器であるヒータ38AE、38BE、38AM、38BMによって、送信信号の位相及び受信信号の位相の少なくともいずれかが変更される。
【0034】
なお、
図6に示す送信信号、受信信号の波形は一例であって、他の波形、例えば鋸歯状の波形を有する送信信号、受信信号であってもよい。
【0035】
距離換算部26E、26Mによって算出された距離dは、出力統括部30Aで統括されて出力される。例えば、距離換算部26E、26Mによって算出された距離dの平均値が出力される。
【0036】
また、プロセッサ50は、スキャン制御部28を備えている。スキャン制御部28は、移相器として機能するヒータ38AE、38BE、38AM、38BMを制御して、送信光及び受信光の位相を変化させることにより、送信光及び受信光の方向を走査する。これにより、出力統括部30Aは、方向毎に、距離dの平均値を出力する。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態に係る偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティング10は、回折角θ
TEの絶対値と回折角θ
TMの絶対値とが等しく、かつ回折角θ
TEと回折角θ
TMとの正負が反対となるように構成された回折格子40と、回折格子40で各々分離されたTE、TMが伝播する導波路32E、32Mと、通電により導波路32E、32Mを通過する光の位相を変化させる移相器であるヒータ38AE、38BE、38AM、38BMと含む簡素かつ小規模な構成で、受信したTE及びTMの各々に対応可能となっている。
【0038】
従って、本実施の形態に係る偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティングは、TE専用の回折格子及びTM専用の回折格子を各々備えることを要しないので、装置が小型化でき、製品の製造コストを抑制できる。また、TE用の導波路32E及び移相器であるヒータ38AE、BEと、TM用の導波路32M及び移相器であるヒータ38AM、BMと、を各々備えることにより、TE及びTMの各々に対し、各々の特性に応じた別個独立の位相変化を与えることが可能である。
【0039】
さらに、本実施の形態に係る偏波ダイバーシティフェーズドアレイグレーティングを用いたレーザレーダ装置100は、送信光と受信光との周波数差に基づいて、対象物までの距離を計測でき、車両の自動運転制御において、適切な加速及び減速の制御に資することができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
続いて本発明の第2の実施の形態について説明する。
図7は、本実施の形態に係るレーザレーダ装置200の構成の一例を示したブロック図である。
図7に示したレーザレーダ装置200は、距離換算部26Eが出力した、受信したTEの反射強度と、距離換算部26Mが出力した、受信したTMの反射強度とを比較して、対象物における入射角を推定する強度比較部34を有し、出力統括部30Bは、方向毎に、強度比較部34が推定した入射角と、距離換算部26E、26Mによって算出された距離dと、を出力ことにより、対象物の形状とする点において第1の実施の形態と相違するが、その他の構成は第1の実施の形態と同一なので、その他の構成には第1の実施の形態と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。本実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、送信信号(送信光)の位相及び受信信号(受信光)の位相が、
図6に示したような時間軸上で比較できるように、移相器であるヒータ38AE、38BE、38AM、38BMによって、送信光の位相及び受信光の位相の少なくともいずれかが変更される。さらに本実施の形態では、受信光に各々含まれるTE及びTMの反射率の比の算出が容易になるように、移相器であるヒータ38AE、38BE、38AM、38BMによって、当該TEの位相及び当該TMの位相の少なくともいずれかが変更される。なお、移相器であるヒータ38AE、38BE、38AM、38BMは、第1の実施の形態と同様に、スキャン制御部28によって制御される。
【0041】
レーザ光源12から円偏光を送信した場合、p偏光(TM)の反射率をr
pとし、s偏光(TE)の反射率をr
sとすると、r
pとr
sとには、下記の式(1)の関係が存在する。式(1)中のtanψは試料表面におけるp、s成分の振幅反射率比を表し、Δはp、s成分の反射による位相差を表している。
【0042】
さらに式(1)の右辺は、下記の式(2)のように表される。
【0043】
式(2)中のφは入射角、Nは対象物の屈折率、n
aは空気の屈折率である。従って、対象物の材質がある程度推定できる場合、式(1)の左辺の反射率r
pとr
sとの比は、距離換算部26E、26Mに各々伝播する光の強度の比によって算出可能なので、式(1)、(2)によれば、送信光の対象物への入射角φが算出できる。
【0044】
図9に示したように、送信光70の入射角φは、対象物80の形状によって変化する。
【0045】
図8は、入射角φと、ψと、Δとの対応関係を示した説明図であり、対象物はアルミニウムを想定している。対象物の形状把握においては、式(1)、(2)を用いて入射角φを、その都度算出するのが原則であるが、プロセッサ50の演算負荷が大きくなるので、本実施の形態では、
図8に示したような対応関係を予め算出しておいて、プロセッサ50がアクセス可能な記憶媒体に記憶しておき、プロセッサは
図8に示したようなデータを参照して、入射角φを決定する。
【0046】
図7に示した構成と、
図8に示したデータとを用いることにより、送信光の入射角φを決定でき、
図10に示したように、方向毎に決定した入射角φ及び距離に基づいて、対象物102、104の形状を推定することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態によれば、p偏光の反射率とs偏光の反射率とに基づいて、対象物102、104への送信光の入射角φを算出し、方向毎に算出した入射角φ及び距離に基づいて対象物102、104の形状を推定することでき、さらには、対象物102、104の形状から、対象物が如何なるものであるかを推定することが可能となる。
【0048】
対象物102、104の形状、さらには対象物102、104が何であるかを推定することにより、車両の自動運転制御において、適切な回避行動等が可能になる。
【0049】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能であることはいうまでもない。