【課題】端子に対し可動ハウジングと固定ハウジングが一体成形でき、固定ハウジングにより固定部材に対して位置出しできる回路基板用電気コネクタおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】端子30は、固定側被保持部31と、可動側被保持部33と、弾性部34Aとを有し、固定側被保持部より固定ハウジング10から突出する接続部32が設けられているとともに、可動側被保持部の露呈部分に接触部33Aが設けられ、弾性部34Aはコネクタ幅方向Yにて嵌合部21の外周面21Bよりも内方の位置でコネクタ高さ方向Zに直状をなして延びており、固定ハウジング10は、弾性部34Aが収容される収容空間12が形成された周壁11を有し、可動ハウジング20の嵌合部21が周壁11に対しコネクタ高さ方向で間隔をもって位置し、周壁11の内周面11Aが嵌合部21の外周面21Bに対しコネクタ幅方向で間隔をもってコネクタ幅方向Yで外側に位置している。
一端側に回路基板へ接続のための接続部と他端側に相手接続体との接触のための接触部とを有する端子と、複数の該端子を配列保持するハウジングとを備えており、該ハウジングは上記端子を介した回路基板への取付けのための固定ハウジングと該固定ハウジングに対して可動な可動ハウジングとを有しており、上記可動ハウジングには回路基板に対し直角なコネクタ高さ方向を嵌合方向として上記相手接続体との嵌合を行う嵌合部が設けられている回路基板用電気コネクタにおいて、
上記端子は、一体成形により上記固定ハウジングで保持されている固定側被保持部と、一体成形により上記可動ハウジングで保持されている可動側被保持部と、上記固定側被保持部と上記可動側被保持部とを連結していて弾性撓み変形可能な弾性部とを有しており、上記固定側被保持部より固定ハウジングから突出した部分に上記接続部が設けられるとともに、上記可動側被保持部の露呈部分に上記接触部が設けられ、上記弾性部はコネクタ幅方向にて上記嵌合部の外周面よりも内方の位置でコネクタ高さ方向に直状をなして延びており、
上記固定ハウジングは、上記弾性部が収容される収容空間が形成された周壁を有し、
上記周壁の内周面と上記弾性部とは非接触の状態となるように配置され、
可動ハウジングの嵌合部が上記周壁に対しコネクタ高さ方向で間隔をもって位置し、周壁の内周面が嵌合部の外周面に対しコネクタ幅方向で間隔をもってコネクタ幅方向外側に位置している、
ことを特徴とする回路基板用電気コネクタ。
上記凸壁部は端子配列方向の端部に被規制部を有し、固定ハウジングは端子配列方向の端部に位置して周壁の一部をなす端壁部に上記被規制部との間に隙間をもって該被規制部を受け入れる溝状の規制部を有し、該規制部がコネクタ幅方向及び端子配列方向の少なくとも一方向で上記被規制部の移動を規制可能であることとする請求項2に記載の回路基板用電気コネクタ。
上記凸壁部は端子配列方向の中間部位置に突出した被規制部を有し、固定ハウジングは端子配列方向の端部に位置して周壁の一部をなす規制部を有し、該規制部が端子配列方向での上記被規制部の移動そして上記被規制部が端子の弾性撓み変形量を規制可能であることとする請求項2に記載の回路基板用電気コネクタ。
一端側に回路基板へ接続のための接続部と他端側に相手接続体との接触のための接触部とを有する端子と、複数の該端子を配列保持するハウジングとを備えており、該ハウジングは上記端子を介した回路基板への取付けのための固定ハウジングと該固定ハウジングに対して可動な可動ハウジングとを有しており、上記可動ハウジングには回路基板に対し直角なコネクタ高さ方向を嵌合方向として上記相手接続体との嵌合を行う嵌合部が設けられている回路基板用電気コネクタの製造方法において、
一体成形により上記固定ハウジングで保持されている固定側被保持部と、一体成形により上記可動ハウジングで保持されている可動側被保持部と、上記固定側被保持部と上記可動側被保持部とを連結していて弾性撓み変形可能な弾性部とを有しており、上記固定側被保持部より固定ハウジングから突出した部分に上記接続部が設けられるとともに、上記可動側被保持部の露呈部分に上記接触部が設けられ、上記弾性部はコネクタ幅方向にて上記嵌合部の外周面よりも内方の位置でコネクタ高さ方向に直状をなして延びている端子を形成し、上記弾性部が収容される収容空間が形成された周壁で、上記端子の固定側被保持部を保持するように一次金型を用いて、固定ハウジングと端子とを一次成形により一体成形し、上記周壁の内周面と上記弾性部とが非接触の状態で、可動ハウジングの嵌合部が上記周壁に対しコネクタ高さ方向で間隔をもって位置し、周壁の内周面が嵌合部の外周面に対しコネクタ幅方向で間隔をもってコネクタ幅方向外側に位置するようにして、二次成形金型を上記間隔に挿入配置して、可動側被固定部を保持するように、可動ハウジングと端子とを二次成形により一体成形することを特徴とする回路基板用電気コネクタの製造方法。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタにあっては、相手コネクタ等の相手接続体との嵌合が回路基板の面に沿って正規位置から多少ずれた状態で行われても、そのずれを吸収するフローティング構造のコネクタが知られている。かかるコネクタとしては、例えば、特許文献1に開示されているコネクタが知られている。
【0003】
特許文献1のコネクタは、回路基板上に配される固定ハウジング(特許文献1では、「プリント基板側接続部分」、以下、特許文献1で用いられている用語を同様に「」で表示)と、固定ハウジングに対し離間し上方に位置する可動ハウジング(「相手コネクタ側接続部分」)と両ハウジングを連結している端子(「コンタクト」)とを有している。固定ハウジングは、平板矩形枠状をなし、その長手方向を端子配列方向とした二列で複数の端子の下部を一体成形で保持し、可動ハウジングは、上記固定ハウジングの上方位置で上方に開口する有底矩形筒状をなし、固定ハウジングから上方へ延びる端子の上部を可動ハウジングとの一体成形により保持している。端子は可動ハウジングの底壁から突出し上記固定ハウジングに至る範囲が上下に延びる直状の弾性部を形成している。該端子は、可動ハウジングの内周壁で露呈する部分が相手コネクタと接続される接触部を形成し、固定ハウジングに埋設保持されL字状に屈曲されて、該固定ハウジングから側方に延出する部分が回路基板との半田接続のための接続部を形成している。かくして、端子は、上記固定ハウジングと可動ハウジングとの間の弾性部が弾性撓み変形可能で、可動ハウジングが固定ハウジングに対しフローティングすることを可能としている。
【0004】
特許文献1では、上記固定ハウジングに対し、スペーサを取り付けることとしている。このスペーサは、上記端子の弾性部における弾性撓み変形量が過度とならないように規制する機能を有する。該スペーサは、固定ハウジングの端子配列方向での両端部のそれぞれに取り付けられ、平面視形状が略「π」字をなし、金具(「金属製ホールドダウン」)によって上記固定ハウジングに固定される。上記スペーサは、固定ハウジングよりも高い寸法を有し、一対をなす二つの腕部が二列の端子の弾性部に対し、端子配列方向に対し直角なコネクタ幅方向にて、外側に位置している。かくして、腕部が上記弾性部の過度な弾性撓み変形量を規制する。特許文献1の記載によると、スペーサのサイズの変更により、上記弾性部での弾性撓み変形量を適宜設定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にあっては、固定ハウジングに対し金具により固定されるスペーサは、該固定ハウジングが取り付けられる固定部材、例えば機器の筺体に対する固定ハウジングの位置出し、すなわち取付位置精度の確保には貢献しない。したがって、固定ハウジングに保持される端子の位置と、上記固定部材との間の位置精度が確保できない。これは、相手コネクタ等の相手接続体がコネクタ接続時に固定部材により案内される場合、相手接続体の端子の位置が正規位置からずれてしまう可能性があることを意味している。
【0007】
上記スペーサは、端子の弾性撓み変形量を規制するものの、固定ハウジングが取り付けられる固定部材との間で当接しないので、固定部材に対する位置出しに係ることがなく、さらに、スペーサが金具を介して固定ハウジングへ取り付けられる時点で、金具の寸法精度、固定ハウジングの嵌合孔との間のガタに起因して固定ハウジングに対する位置が一定しないので、仮にスペーサが固定部材に対して当接可能に設計しても、該スペーサが固定部材に対する精度の高い位置出しをできない要因となる。
【0008】
さらに、上記スペーサは、金具により固定ハウジングに対して固定されることとしており、それだけコネクタとしての部品が増え、ひいては組立てが面倒となる。仮に、スペーサを固定ハウジングと一体成形により形成しようとしても、特許文献1の図からも判るように、コネクタ高さ方向でスペーサと可動ハウジングの間に実質的に隙間がなく、金型が進入する余地がないので、一体成形もできない。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑み、端子に対し可動ハウジングのみならず固定ハウジングが一体成形でき、かつ、固定ハウジングにより固定部材に対する位置出しのできる回路基板用電気コネクタおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る回路基板用電気コネクタは、一端側に回路基板へ接続のための接続部と他端側に相手接続体との接触のための接触部とを有する端子と、複数の該端子を配列保持するハウジングとを備えており、該ハウジングは上記端子を介した回路基板への取付けのための固定ハウジングと該固定ハウジングに対して可動な可動ハウジングとを有しており、上記可動ハウジングには回路基板に対し直角なコネクタ高さ方向を嵌合方向として上記相手接続体との嵌合を行う嵌合部が設けられている。
【0011】
かかる回路基板用電気コネクタにおいて、本発明では、上記端子は、一体成形により上記固定ハウジングで保持されている固定側被保持部と、一体成形により上記可動ハウジングで保持されている可動側被保持部と、上記固定側被保持部と上記可動側被保持部とを連結していて弾性撓み変形可能な弾性部とを有しており、上記固定側被保持部より固定ハウジングから突出した部分に上記接続部が設けられるとともに、上記可動側被保持部の露呈部分に上記接触部が設けられ、上記弾性部はコネクタ幅方向にて上記嵌合部の外周面よりも内方の位置でコネクタ高さ方向に直状をなして延びており、上記固定ハウジングは、上記弾性部が収容される収容空間が形成された周壁を有し、上記周壁の内周面と上記弾性部とが非接触の状態で、可動ハウジングの嵌合部が上記周壁に対しコネクタ高さ方向で間隔をもって位置し、周壁の内周面が嵌合部の外周面に対しコネクタ幅方向で間隔をもってコネクタ幅方向外側に位置していることを特徴としている。
【0012】
このような構成の本発明によれば、端子は固定ハウジングとの一体成形により該固定ハウジングにより保持されるようにした後に、可動ハウジングとも一体成形されることができる。可動ハウジングの嵌合部が固定ハウジングの周壁との間にコネクタ高さ方向で間隔をもっているとともに、周壁の内周面に対しコネクタ幅方向に間隔をもって外側に位置しているので、端子に対して固定ハウジングと一体成形した後に、上記コネクタ高さ方向そしてコネクタ幅方向の間隔に金型を挿入して、上記端子に対して可動ハウジングをも一体成形できる。
【0013】
したがって、固定ハウジングの周壁と端子は一定した位置関係にあり、しかも周壁はコネクタ高さ方向での寸法の大小に係りなく正確な寸法精度で作れるので、固定ハウジングが固定的に取り付けられる機器の筐体等の固定部材に対して、周壁の外周面を当接することで、端子と固定部材との間の位置出しを正確に行える。すなわち、相手接続体を可動ハウジングと嵌合させる際に、可動ハウジングに対して相手接続体がずれることはあっても、可動ハウジングと固定ハウジングにより上記ずれが増長されたりバラついたりすることはなく、この可動ハウジングに対する相手接続体のずれは、端子の弾性部のみで十分に吸収でき、安定したコネクタ接続位置精度を確保できる。
【0014】
本発明において、上記端子は、コネクタ幅方向で対向する位置で二列をなして設けられており、上記可動ハウジングは二列の端子の間で嵌合部の底壁部から回路基板側に向けて突出する凸壁部を有し、該凸壁部は二列の端子とは非接触の状態で上記収容空間へ進入していることが好ましい。
【0015】
こうすることで、可動ハウジングが相手接続体との嵌合のために該相手接続体を受け入れる嵌合凹部の底壁部を薄く、すなわちコネクタ高さ方向寸法を小さくしても、該底壁の強度を確保できる。しかも、凸壁部は固定ハウジングの収容空間に進入しているので、コネクタ全体としてのコネクタ高さ方向寸法が増大することもない。
【0016】
本発明において、上記凸壁部は端子配列方向の端部に被規制部を有し、固定ハウジングは端子配列方向の端部に位置して周壁の一部をなす端壁部に上記被規制部との間に隙間をもって該被規制部を受け入れる溝状の規制部を有し、該規制部がコネクタ幅方向及び端子配列方向の少なくとも一方向で上記被規制部の移動を規制可能であることが好ましい。このような形態によれば、上記可動ハウジングの凸壁部に設けられた被規制部が固定ハウジングの周壁における端壁部に形成された溝状の規制部とコネクタ幅方向及び端子配列方向の少なくとも一方向で当接可能であり、可動ハウジングの過度な移動、すなわち端子の弾性部における過度な弾性撓み変形量を規制できる。その際、端子には固定ハウジングから何ら当接力を受けないので端子を損傷することはない。
【0017】
また、本発明において、上記凸壁部は端子配列方向の中間部位置に突出した被規制部を有し、固定ハウジングは端子配列方向の端部に位置して周壁の一部をなす規制部を有し、該規制部が端子配列方向での上記被規制部の移動そして上記被規制部が端子の弾性撓み変形量を規制可能であるようにすることもできる。こうすることで、端子の過度な弾性撓み変形量をも規制できる。
【0018】
また、本発明の回路基板用の電気コネクタは、本発明に係る次の方法により製造することができる。
【0019】
本発明に係る回路基板用電気コネクタの製造方法は、一端側に回路基板へ接続のための接続部と他端側に相手接続体との接触のための接触部とを有する端子と、複数の該端子を配列保持するハウジングとを備えており、該ハウジングは上記端子を介した回路基板への取付けのための固定ハウジングと該固定ハウジングに対して可動な可動ハウジングとを有しており、上記可動ハウジングには回路基板に対し直角なコネクタ高さ方向を嵌合方向として上記相手接続体との嵌合を行う嵌合部が設けられている。
【0020】
かかる回路基板用電気コネクタの製造方法において、本発明では、一体成形により上記固定ハウジングで保持されている固定側被保持部と、一体成形により上記可動ハウジングで保持されている可動側被保持部と、上記固定側被保持部と上記可動側被保持部とを連結していて弾性撓み変形可能な弾性部とを有しており、上記固定側被保持部より固定ハウジングから突出した部分に上記接続部が設けられるとともに、上記可動側被保持部の露呈部分に上記接触部が設けられ、上記弾性部はコネクタ幅方向にて上記嵌合部の外周面よりも内方の位置でコネクタ高さ方向に直状をなして延びている端子を形成し、上記弾性部が収容される収容空間が形成された周壁で、上記端子の固定側被保持部を保持するように一次金型を用いて、固定ハウジングと端子とを一次成形により一体成形し、上記周壁の内周面と上記弾性部とが非接触の状態で、可動ハウジングの嵌合部が上記周壁に対しコネクタ高さ方向で間隔をもって位置し、周壁の内周面が嵌合部の外周面に対しコネクタ幅方向で間隔をもってコネクタ幅方向外側に位置するようにして、二次成形金型を上記間隔に挿入配置して、可動側被固定部を保持するように、可動ハウジングと端子とを二次成形により一体成形することを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上のように、可動ハウジングの嵌合部が固定ハウジングの周壁との間にコネクタ高さ方向で間隔をもっているとともに、周壁の内周面に対しコネク幅方向に間隔をもって外側に位置するように構成されているので、端子に対して固定ハウジングを一体成形した後に、上記コネクタ高さ方向そしてコネクタ幅方向の間隔に金型を挿入して、上記端子に対して可動ハウジングをも一体成形でき、その結果、コネクタを完成する際に部材組立という作業がなくなり、部材点数が減るとともに容易に製造でき、生産性が向上することに加え、部材間の位置精度が向上する。
【0022】
したがって、一体成形できるので、固定ハウジングの周壁と端子は一定した位置関係にあり、しかも周壁はコネクタ高さ方向での寸法の大小に係りなく正確な寸法精度で作れるので、固定ハウジングが固定的に取り付けられる機器の筐体等の固定部材に対して、周壁の外周面を当接することで、端子と固定部材との間の位置出しを正確に行える。すなわち、相手接続体を可動ハウジングと嵌合させる際に、可動ハウジングに対して相手接続体がずれることはあっても、可動ハウジングと固定ハウジングにより上記ずれが増長されたりバラついたりすることはなく、このずれは、端子の弾性部のみで十分に吸収でき、安定したコネクタ接続位置精度を確保できるという効果を得る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0025】
図1は、本実施形態における回路基板用電気コネクタI(以下、「コネクタI」)とこれに嵌合される相手接続体としての他の回路基板用電気コネクタII(以下「コネクタII」)の外観を、嵌合前の状態で示す斜視図である。
図1において、コネクタIとコネクタIIは、
図1における状態で、それぞれの下面で別々の回路基板(図示せず)に取り付けられ、使用に際しては、
図1にて矢印Aで示されるように、コネクタIIが上下反転姿勢で上方からコネクタIへ嵌合される。
図1及び以降の図において、コネクタIおよびコネクタIIについて、方向性を明確にし、そして理解しやすくするために、立体空間座標X,Y,Zを設定する。回路基板の面に沿って延びる端子配列方向(コネクタ長手方向)をX、回路基板の面に平行な面で端子配列方向Xに対し直角なコネクタ幅方向をY、回路基板の面に直角なコネクタ高さ方向をZと定めることとする。
【0026】
コネクタIは、プラグコネクタとして形成されていて、複数の端子と、複数の端子を配列保持する電気絶縁材製のハウジングとを備えている。ハウジングは、端子を介して回路基板に固定される固定ハウジング10と、該固定ハウジング10に対して離間していて可動な可動ハウジング20とを有する。端子30は、固定ハウジング10と可動ハウジング20を連結する金属材製の複数の端子30として構成されている(
図2をも参照)。
【0027】
固定ハウジング10は、コネクタ高さ方向Zから見て、端子配列方向Xに長い矩形枠状をなし、コネクタ高さ方向Zに延びる周壁11を有し、該周壁11の内側に後述の可動ハウジング20の一部を収容する収容空間12を形成している。周壁11は、端子配列方向Xに沿った一対の側壁15と、側壁15同士を連結する一対の端壁13を有する。端壁13には、端子配列方向Xに没する矩形凹溝状の規制部14が形成されている。該規制部14は収容空間12の一部をなしている。
【0028】
固定ハウジング10は、
図2に見られるように、側壁15の下端部15Aが内方に突出し、該下端部15Aにて、後に詳述する端子30の下端部における固定側被保持部31を固定ハウジング10との一体成形により保持しており、端子30は、固定側被保持部31よりもコネクタ幅方向Yで下端部15Aから外方に突出した部分で回路基板への半田接続のための接続部32を形成している。
【0029】
可動ハウジング20は、
図2に見られるように、コネクタ高さ方向Zで固定ハウジング10よりも上方に位置する嵌合部21と、該嵌合部21から下方に向け突出する凸壁部24とを有し、該凸壁部24の下部が固定ハウジング10の周壁11の内周面との間に隙間をもって収容空間12内に進入している。嵌合部21は、短形筒状の嵌合筒状部22と、該嵌合筒状部22の底部をなす底壁部23とを有し、嵌合筒状部22と底壁部23とによりコネクタIIとの嵌合のための嵌合空間21Aを形成している。可動ハウジング20は、後に詳述する端子30の上部に形成された可動側被保持部33を可動ハウジング20との一体成形により保持している。
【0030】
凸壁部24は、コネクタ幅方向Yで底壁部23の中央位置からコネクタ高さ方向Zで下方(回路基板側)に向けて突出し、端子配列方向Xに延びており、端子配列方向Xの両端部は、
図4にも見られるように、固定ハウジング10に形成された凹溝状の規制部14内にまで進入していて被規制部24Aを形成している。この被規制部24Aは、端子配列方向Xでもコネクタ幅方向Yでも規制部14の内面とは隙間をもっており、可動ハウジング20がこれらの方向のそれぞれで過度な移動をしたときには、規制部14に当接してそれ以上の移動が規制される。
【0031】
端子30は、金属帯体から作られていて、コネクタIの端子配列方向Xで所定間隔の複数位置に配されている。該端子30は、
図2において、コネクタ幅方向Yを金属板材の板厚方向として該金属板材を切断して得られた金属帯体をこの板厚方向に屈曲形成して作られている。すなわち、端子30は、コネクタ幅方向Yを板厚方向としているので、これに直角な端子配列方向X(紙面に対し直角方向)が端子30の板面(金属板材の圧延面)をなし、この端子配列方向Xでの寸法が端子幅となり、この板面でコネクタIIの端子との接触面を形成する。
【0032】
端子30は、下端側に形成されて固定ハウジング10で保持される固定側被保持部31と、上端側に形成されて可動ハウジング20で保持される可動側被保持部33と、固定側被保持部31と可動側被保持部33とを連結する連結部34を有する。連結部34は、殆んどの部分がコネクタ高さ方向Zである上下方向で直状に延びており、該連結部34の下部がL字状に屈曲されて横方向(コネクタ幅方向Y)に延びる移行部34Bを経て固定側被保持部31に至っている。
【0033】
固定側被保持部31は、固定ハウジング10の側壁15の下端部15Aで該固定ハウジング10との一体成形により埋設して保持されており、固定ハウジング10の下端部15A内で若干クランク状に屈曲されており、該固定側被保持部31より突出した先端側となる接続部32は回路基板に接面する位置にある。
【0034】
連結部34は、上述のように殆んどの部分が直状をなしてコネクタ高さ方向Zに延びており、この直状部分が弾性部34Aを形成している。弾性部34Aは、弾状撓み変形可能であり、該弾性部34Aの下半部が固定ハウジング10の収容空間12内に位置しており、周壁11(側壁15)の内周面および可動ハウジング20の凸壁部24に対して間隔をもって非接触の状態で配置されている。
【0035】
可動側被保持部33は、連結部34よりも上方部分に形成されており、可動ハウジング20との一体成形により該可動ハウジング20で保持されている。可動側被保持部33は、下方へは、可動ハウジング20の底壁部23を貫通し、上方へは、嵌合筒状部22の内壁面を経て上端面をまわり込んで逆U字状をなして外壁面の上部にまで及んでいる。この可動側被保持部33は、嵌合筒状部22の内壁面、上端面そして外壁面とほぼ同一面に位置するようにして、端子の板厚分だけ嵌合筒状部22へ没入した状態もしくは若干だけ突出した状態で嵌合筒状部22と一体成形されている。可動側被保持部33が嵌合筒状部22の内壁面に位置し露呈する面は、コネクタIIの対応する端子と接触される接触部33Aを形成している。
【0036】
かくして、端子30を下端側で保持する固定ハウジング10の周壁11と上端側で保持する可動ハウジング20の嵌合部21は、コネクタ高さ方向Zで離間して間隔を形成しているとともに、コネクタ幅方向Yでも間隔を形成している。
【0037】
次に、このような形態のコネクタIの製造手順について、
図3にもとづき、簡単に説明する。
図3において、(A)は各工程における部材についてのコネクタ幅方向Yとコネクタ高さ方向Zに平行なYZ面での断面図であり、(B)は端子配列方向Xでの一部の範囲についてのコネクタ高さ方向Zに沿って上方からみた平面図である。なお、図(A),(B)にて、工程順に状態(i),(ii),(iii)として示してある。
【0038】
先ず、キャリア(図示せず)に付いている状態の屈曲加工済みの端子部分30Pを二列に用意する(図にて、端子部分30Pのキャリアとの切り離し予定位置は、Sにて示してある)(
図3(A),(B)状態(i)参照)。なお、まだ上記キャリアが付いている状態の端子部分は、
図2における対応部位に符号Pを付して表わすこととしている。
【0039】
次に、かかる端子部分30Pを、
図3(A)の状態(ii)に見られるように、一次成形のための一次成形金型M1内に配する。一次成形金型M1は、
図3(A)の状態(ii)に示されている形状の上方一次金型M1A、側方一次金型M1B、下方一次金型M1Cから成り、状態(ii)の位置に設定されて端子部分30Pの接続部部分32Pそして移行部部分34BPを保持することで、端子部分30Pを一次成形位置に維持する。このようにして一次成形金型M1で、固定ハウジング10を端子部分30Pの固定側被保持部分31Pに対し一体成形する(
図3(B)の状態(ii)をも参照)。
【0040】
次に、一次成形金型M1、すなわち、上方一次金型M1A、側方一次金型M1B、下方一次金型M1Cを外し、
図3(A)の状態(iii)のように、固定ハウジング10と端子部分30Pの一次成形品を、二次成形金型M2内に配する。二次成形金型M2は、
図3(A)の状態(iii)に見られるように、上方二次金型M2A、側方二次金型M2B、下方二次金型M2Cから成り、端子部分30Pの接続部部分32Pと弾性部部分34APを保持することで、一次成形品を二次成形位置に保持する。このようにして、二次成形金型M2により、一次成形品について端子部分30Pの可動側被保持部33Pに対し可動ハウジング20を一体成形し、しかる後、二次成形金型M2、すなわち、上方二次金型M2A、側方二次金型M2B、下方二次金型M2Cを外して、完成品としてのコネクタIを得る。
【0041】
このようにして完成されるコネクタIは、固定ハウジング10の周壁11の内部に、端子30の弾性部34Aを該周壁11と非接触の状態で収容する収容空間12を形成し、可動ハウジング20の嵌合部21が周壁11に対しコネクタ高さ方向Zで間隔をもって位置し、コネクタ幅方向Yで周壁11の内周面11Aが嵌合部21の外周面21Bに対して間隔をもってコネクタ幅方向Yで外側に位置している。このような構造とすることで、上述した一次成形そして二次成形を可能としている。すなわち、一次成形においては、
図3(A)の状態(ii)に見られるように、上方一次金型M1Aが収容空間12となる域へ上方から進入することが可能であり、側方一次金型M1B、そして下方一次金型M1Cと相俟って、端子部分30Pを保持しつつ固定ハウジング10の一体成形を可能とする。また、二次成形においては、
図3(A)の状態(iii)に見られるように、下方二次金型M2Cが下方から上記収容空間12へ進入そして側方二次金型M2Bが側方から端子部分30Pの弾性部部分34APを上記下方二次金型M2Cとで保持することが可能であり、かかる状態で、上方二次金型M2Aと相俟って、可動ハウジング20の一体成形を可能とする。
【0042】
次に、コネクタIに対して嵌合される相手接続体としてのコネクタIIについて、
図1および
図2にもとづき説明するが、この相手コネクタIIは本発明の特徴を有しているわけではないので、コネクタIとの関連する点についてのみ簡単に説明する。コネクタIIは、レセプタクルコネクタとして作られている。コネクタIIは、ハウジング40と端子50とを有し、該ハウジング40は、コネクタIの可動ハウジング20の嵌合部21の外周面に嵌合する内周面をもつ周壁41と、
図1にて周壁41の下端に位置する底壁42から立ち上がり該周壁41内で島状をなし可動ハウジング20の嵌合空間21A内に嵌合する内方突壁部43とを有している。ここで、コネクタIIにおいても、コネクタIの場合と同様に、端子配列方向をX、コネクタ幅方向をY、コネクタ高さ方向をZとしている。これらの各方向X,Y,Zは、コネクタIIがコネクタIに嵌合された状態で、コネクタIにおけるX,Y,Zとそれぞれ一致する。
【0043】
複数の端子50は、ハウジング40により、端子配列方向Xに配列保持されている。端子50は、コネクタIにおける端子30とは異なり、
図2に見られるように金属板材をその板厚方向に打ち抜いて作られており、金属板材に対する打抜き方向に対して直角な板面(
図2において紙面に平行な面)をそのまま維持している。端子50は、その板厚方向の打抜き面をコネクタIの端子30に対する接触面としている。
【0044】
端子50は、
図2に見られるように、回路基板側に位置する基部51と、該基部51からコネクタIの方へ向けコネクタ高さ方向Zに延びる取付脚部52と、該取付脚部52から延び該取付脚部52と相俟って
図2にて逆U字状をなす弯曲接触腕部53と、基部51からクランク状をなしてハウジング40外へ延出して回路基板と半田接続される接続部54とを有している。端子50は、
図2に見られるようにハウジング40の周壁41にコネクタ高さ方向Zで貫通して形成された端子保持溝41Aへ取付脚部52が底壁42側から圧入され、取付脚部52の縁に設けられた係止突起52Aが端子保持溝41Aに喰い込んで抜けが防止される。また、弯曲接触腕部53は弾性を有し、コネクタ幅方向Yでの弾性撓み変形が可能となっており、その自由端には取付脚部52の方向に突出する接触部53Aが形成されている。接触部53AがコネクタIの端子30の接触部33Aと弾性的に接触する部位となる。
【0045】
このような形態のコネクタIIは、コネクタIに対し、次の要領で嵌合そして接続される。
【0046】
先ず、コネクタI、コネクタIIをそれぞれの回路基板(図示せず)に取りつける。コネクタIにあっては、端子30の接続部32を回路基板の対応回路部へ半田接続し、コネクタIIにあっては、端子50の接続部54を他の回路基板の対応回路部へ半田接続する。
【0047】
かかる状態で、
図1にて矢印Aで示されるように、コネクタIIを上下反転姿勢にしてコネクタIの可動ハウジング20へ嵌合させる。コネクタIIの周壁41はコネクタIの可動ハウジング20の嵌合部21の外周面に対し嵌合され、コネクタIIの内方突壁部43は可動ハウジング20の嵌合空間21Aに嵌合される。このようにコネクタIIがコネクタIの可動ハウジング20に嵌合されると、コネクタIIの端子50はその接触部53AがコネクタIの端子30の接触部33Aと弾性的に接触することとなる。かくして、二つの回路基板は、コネクタIとコネクタIIとにより電気的に接続される。
【0048】
コネクタIIのコネクタIへの嵌合は、嵌合開始時から端子配列方向Xそしてコネクタ幅方向Yのいずれか一方、あるいは両方で正規位置からずれる場合があり、また嵌合後にずれようとする場合がある。いずれの場合も、コネクタI側の回路基板とコネクタII側の回路基板が正規位置から外れるときに生ずる。しかし、本実施形態では、コネクタIの固定ハウジング10と可動ハウジング20とは、両者を連結する端子30に設けられた直状の弾性部34Aが弾性撓み変形可能であるので、上記ずれの方向が端子配列方向Xであってもコネクタ幅方向Yであっても、弾性部34Aの弾性撓み変形によって吸収される。すなわち、コネクタIがいわゆるフローティングコネクタとして機能し、かかる事態に対処可能となる。
【0049】
しかし、ずれ量が弾性部34Aに過度な弾性撓み変形量を生じさせるような場合、その弾性撓み変形量に対して上限を設けることが好ましい。本実施形態では、可動ハウジング20の嵌合部21の底壁部23から下方に突出する凸壁部24が設けられ、該凸壁部24の端子配列方向Xでの端部が被規制部24Aとして形成され固定ハウジング10の凹溝状の規制部14内に進入している。このような構成により、端子30の弾性部34Aに過度な弾性撓み変形量が生じようとするときには、被規制部24Aが端子配列方向Xあるいはコネクタ幅方向Yで規制部14に当接し、端子30の弾性部34Aは過度な弾性撓み変形量を生ずることなく保護される。
【0050】
本発明は、
図1ないし
図4に示された形態に限定されず、変形が可能である。例えば、可動ハウジング20の固定ハウジング10に対する移動量を、可動ハウジング20の凸壁部24の端部に被規制部24Aを設けるとともに、端子30の弾性部34Aの弾状変形量を規制する他の被規制部24Bを凸壁部24に設けることで、可動ハウジング20の移動量を規制することも可能である。例えば、
図5に見られるように、可動ハウジング20の底壁部23から下方へ突出する凸壁部24の下面の一部に、さらにコネクタ高さ方向Zで下方へ突出しコネクタ幅方向で凸壁部24より突出する他の被規制部24Bを、固定ハウジング10の規制部14に近接して設ければ、該被規制部24Bが、端子配列方向Xで該被規制部24Bの範囲に位置する端子30の弾性部34Aのコネクタ幅方向Yでの過度な弾性撓み変形を規制し、さらには、端子配列方向Xでも上記規制部14が上記被規制部24Aと当接するので端子配列方向Xの可動ハウジング20の過度な移動量を規制できる。
【0051】
以上のような、本発明によると、コネクタIの固定ハウジング10および可動ハウジング20が端子30と一体成形できるので、固定ハウジング10の周壁11と端子30は一定した位置関係にあり、しかも周壁11はコネクタ高さ方向で寸法の大小に係りなく正確な寸法精度で作れるので、固定ハウジング10が固定的に取り付けられる機器の筐体等の固定部材に対して、周壁11の外周面を当接することで、端子30と固定部材との間の位置出しを正確に行える。すなわち、相手接続体としてのコネクタIIを可動ハウジング20と嵌合させる際に、可動ハウジング20に対して相手接続体がずれることはあっても、可動ハウジング20と固定ハウジング10により上記ずれが増長されたりバラついたりすることはなく、このずれは、端子30の弾性部34Aのみで十分に吸収でき、安定したコネクタ接続位置精度を確保できる。