【解決手段】移動装置10に設けられたケーブル案内装置20は、ケーブル収容部23から上方へ延びてくるケーブル21を移動装置10の外部へ案内する上部案内部25と、上部案内部25から外部へ延びていくケーブル21を受けることにより、ケーブル21が移動装置10における設定領域Rに進入しないようにケーブル21を案内する進入阻止部27とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0012】
(移動装置の構成)
図2と
図3は、本発明の実施形態によるケーブル案内装置20を適用した移動装置10の一例を示す。
図2は平面図であり、
図3(A)は
図2の3A−3A矢視図であり、
図3(B)は
図3(A)の3B−3B矢視図である。
【0013】
移動装置10は、本体3と、本体3に取り付けられ移動するための移動機構5とを備える。
図2と
図3の例では、移動装置10はクローラ式走行装置である。この場合、移動機構5は、本体3の左右両側に設けられており、各移動機構5は、本体3の左右方向を向く軸まわりに回転する複数の回転輪5aと、複数の回転輪5aに掛けられ、走行面(地表面や路面や階段など)と接触する無端走行帯5bとを備える。複数の回転輪5aの少なくとも1つが回転駆動されることで、この回転方向に回転輪5aに係合する無端走行帯5bが回転する。これにより、クローラ式走行装置10は走行面を走行する。
【0014】
なお、クローラ式走行装置以外の移動装置10にも本発明は適用可能である。本発明が適用される移動装置10は、例えば、移動機構5として車輪を有し、この車輪が走行面に接触して回転駆動されることより走行面を走行する車両であってもよい。
【0015】
移動装置10は、本体3に設けられたマニピュレータ7を有していてもよい。マニピュレータ7は、例えば、
図3(A)のように、互いに回転可能に連結された複数のリンク7aを有している。マニピュレータ7の先端部には、作業実行部7bが取り付けられている。作業実行部7bは、例えば、ハンドもしくはツールである。マニピュレータ7は、後述する動作指令信号に基づいて、本体3に対して相対的に動作する。これにより、作業実行部7bは、例えば、瓦礫や岩石などの障害物撤去作業、砂防、築堤、構造物設置などの復旧作業、または、土砂や岩石などの積載や運搬や運送作業を行ってよい。
【0016】
移動装置10は、本体3に設けられたカメラ9を有していてもよい。カメラ9は、次の(1)と(2)の一方または両方を撮像する位置に配置されている。カメラ9が(1)と(2)の両方を撮像する場合には、(1)を撮像するカメラ9と、(2)を撮像するカメラ9とがそれぞれ別個に設けられてもよい。
(1)移動装置10の進行方向側の領域
(2)マニピュレータ7の作業実行部7bが作業を行う領域
【0017】
なお、移動装置10には、他の画像データ(例えば災害現場の状況を示す画像データ)を取得するカメラ、または、放射線量を計測する放射線計測器が設けられていてもよい。
【0018】
(遠隔操縦)
移動装置10の移動は、
図2のように移動装置10の外部の遠隔操縦エリアXに設けられた遠隔操縦装置11により制御可能である。遠隔操縦装置11は、人が操作可能な操作部11aを有し、操作部11aは、例えばレバーやボタンなどにより構成されている。遠隔操縦装置11は、操作部11aに行われた操作に基づいて移動装置10に対する指令信号を生成する。この指令信号は、移動装置10の移動に関する移動指令信号であってもよいし、マニピュレータ7の動作に関する動作指令信号であってもよい。移動指令信号は、移動方向または移動速度を指令する信号であってよい。動作指令信号は、本体3に対するマニピュレータ7の動作を指令する信号、または、作業実行部7b(例えばハンド)の動作を指令する信号であってよい。遠隔操縦装置11は、生成した指令信号を、後述の通信用のケーブル21を通して移動装置10の移動制御装置13または動作制御装置15へ送信する。
【0019】
移動制御装置13は、遠隔操縦装置11から送信された移動指令信号を受信し、この移動指令信号に基づいて移動装置10の移動(例えば移動方向または移動速度)を制御する。動作制御装置15は、遠隔操縦装置11から送信された動作指令信号を受信し、この動作指令信号に基づいてマニピュレータ7または作業実行部7bの動作を制御する。
【0020】
遠隔操縦装置11は、ディスプレイ11bを有していてよい。ディスプレイ11bは、上述したカメラ9が撮像した画像データを表示する。この画像データは、カメラ9が設けられた移動装置10からケーブル21を通して遠隔操縦装置11へ送信されることによりディスプレイ11bに表示される。人が、ディスプレイ11bに表示された画像データを見ながら操作部11aを操作できるように、ディスプレイ11bと操作部11aは配置されている。
【0021】
移動装置10は、移動装置10を有線で遠隔操縦するための上述のケーブル21を収容したケーブル収容部23を備える。移動装置10の移動に伴って、ケーブル収容部23から、ケーブル21が移動装置10の外部へ繰り出される。移動装置10の外部へ繰り出されたケーブル21の先端は、遠隔操縦装置11に接続されていてもよいし、中継装置に接続されていてもよい。この中継装置は、遠隔操縦装置11とケーブル21の先端との間で通信を中継する。
【0022】
ケーブル21は、本実施形態では光信号を伝える光ケーブルであるが、電気信号を伝える電線ケーブルであってもよい。ケーブル21は、その一端が移動装置10に設けられた移動制御装置13と動作制御装置15とカメラ9などに接続され、その中間部がケーブル収容部23に収容され、その他端側の部分がケーブル収容部23から繰り出し可能になっている。ケーブル収容部23は、
図2と
図3ではリールであるが、ケーブル21が渦巻き状に巻かれた状態で収容される箱であってもよいし、他の構成を有していてもよい。
【0023】
リール23には、ケーブル21が巻かれている。リール23は、ケーブル21を巻き取る巻取方向と巻き出す巻出方向のいずれの方向にも回転可能に本体3に設けられている。移動装置10の移動によって生じるケーブル21の張力により、リール23が回転してリール23からケーブル21が巻き出される。
【0024】
リール23は、回転駆動装置31により回転駆動されてもよい。この場合、図示しないカメラがリール23から延びているケーブル21を撮像し、その画像データをケーブル21を通してディスプレイ11bへ送信してよい。これによりディスプレイ11bに当該画像が表示される。人は、この画像を見て、ケーブル21の巻き出し状況を確認し、操作部11aを操作することで、遠隔操縦装置11は、この操作に基づいてリール23の回転に関する回転指令信号を生成する。この回転指令信号はケーブル21を通して移動装置10のリール制御装置33に送信される。リール制御装置33は、受けた回転指令信号に従って、回転駆動装置31を制御してリール23を回転させる。
【0025】
(ケーブル案内装置)
移動装置10は、ケーブル21を案内するケーブル案内装置20を備える。ケーブル案内装置20は、上部案内部25と進入阻止部27を備える。
【0026】
<上部案内部の構成>
上部案内部25は、本体3およびケーブル収容部23よりも上方に配置されている。上部案内部25は、ケーブル収容部23から上方へ延びてくるケーブル21を、ケーブル収容部23よりも上方の位置から移動装置10の外部へ案内する。したがって、ケーブル収容部23から繰り出されたケーブル21は、上方へ延びて上部案内部25を通って、移動装置10の外部(以下で単に外部ともいう)へ延びていく。本実施形態では、上部案内部25は、ケーブル収容部23からのケーブル21を通過させて外部へ案内する案内穴25a(
図3(B)を参照)を形成している。上部案内部25は、特許文献2に記載の「穴形成体」と同じ構成を有していてもよいし、ケーブル収容部23よりも上方の位置から外部へケーブル21を案内できれば、他の構成を有していてもよい。
【0027】
上部案内部25は、ケーブル収容部23よりも上方に位置するように支持体26を介して本体3に取り付けられている。支持体26は、例えば本体3に取り付けられた支柱であってよいが、これに限定されない。なお、支持体26には、ケーブル21による通信以外の通信手段として、外部と無線通信を行うアンテナ(図示せず)が設けられていてもよい。
【0028】
案内穴25aの出口25a1は、
図2のように、本実施形態では、マニピュレータ7と反対側であって移動装置10の外側(本体3の左右方向の外側)を向いていてよい。これにより、出口25a1からの通信ケーブル21がマニピュレータ7に引っ掛かり難くなる。ケーブル収容部23からのケーブル21は、
図3のように、案内穴25aの入口25a2と出口25a1をこの順で通過するように延びている。
【0029】
なお、上部案内部25は、支持体26に固定されていてもよいし、そうでなくてもよい。例えば、本体3が水平姿勢にある状態で、上部案内部25は、下方から上方を向く軸(例えば鉛直軸)回りに回転可能に支持体26に取り付けられていてもよい。ここで、「本体3が水平姿勢にある状態」とは、本体3の前後方向と左右方向のいずれもが水平方向を向いている状態を意味する。以下で、「後方側」および「後端」という場合には、これらは、それぞれ、本体3の前後方向における「後方側」および「後端」を意味する。
【0030】
<進入阻止部の構成>
進入阻止部27は、上部案内部25から外部へ延びていくケーブル21を受けることにより、設定領域Rに進入しないように案内する。すなわち、本体3aが水平姿勢にある状態で、上部案内部25からのケーブル21が移動装置10の旋回(鉛直軸を中心とする旋回)によって、設定領域R(
図2の破線で囲んだ領域)に進入しようとした時に、当該ケーブル21が移動装置10の水平方向外側から(例えば水平方向に)進入阻止部27に掛かることにより、進入阻止部27は、当該ケーブル21の設定領域Rへの進入を阻止する。
【0031】
設定領域Rは、移動装置10の本体3において、本体3の左右方向両端の中間であって、本体3の前後方向両端の中間に位置する。
図2の例では、設定領域Rの高さ範囲は、本体3の上面3aから上部案内部25までの高さ範囲であってよい。
【0032】
進入阻止部27は、設定領域Rに関して上部案内部25と次の位置関係にあってよい。本実施形態では、上部案内部25は、本体3における後方側(
図2の右側)であって、設定領域Rよりも本体3の左右方向の一端側(
図2の上側)に位置する。この場合、進入阻止部27は、設定領域Rよりも本体3の後方側に位置し、進入阻止部27の少なくとも一部(
図2の例では進入阻止部27の全体)は、上部案内部25よりも左右方向の他端側(
図2の下側)に位置する。
【0033】
なお、
図2では、上部案内部25と支持体26が本体3の後端から前方側にずれて位置している。これにより、移動装置10の移動中に、上部案内部25と支持体26とが、外部の障害物に衝突して損傷する可能性を低くすることができる。
【0034】
進入阻止部27の高さは、上部案内部25の高さとほぼ同じであってよい。すなわち、本体3の上面3aに対する進入阻止部27の高さは、本体3の上面3aに対する上部案内部25の高さとほぼ同じであってよい。ただし、進入阻止部27の高さは、これに限定されず、上部案内部25からのケーブル21が進入阻止部27に掛かる高さであればよい。
【0035】
本実施形態では、進入阻止部27は、
図3のように、本体3に取り付けられ、本体3が水平姿勢にある状態で下方から上方へ(例えば鉛直方向に)延びている複数本の棒状部材である。複数本の棒状部材27は、左右方向に間隔をおいて配置されていてよい。特に、
図2のように、上部案内部25が設定領域Rの後端よりも前方側へずれた位置にある場合には、複数本の棒状部材27が、設定領域Rの後端よりも後方側において左右方向に間隔をおいて配置されてよい。
【0036】
<進入阻止部の機能>
図4と
図5は、移動装置10が旋回した時における進入阻止部27の機能を説明するための図である。
【0037】
図4は、本発明と違って進入阻止部27を移動装置10に設けない参考例の場合を示す。
図5は、本実施形態の場合を示す。
図4と
図5は、当該図の(1)〜(4)の順に移動装置10が階段を上って行く状態を示す平面図である。
【0038】
図6(A)は、
図5の6A−6A矢視図であり、移動装置10が
図5の(1)の位置にある場合を示す。
図6(A)において、Sは、上部案内部25から延びているケーブル21と、移動装置10が接している路面(この図では階段の踊り場の路面)との隙間Sを示す。
図6(B)は、移動装置10が平らな路面に位置する場合において対応する隙間Sを示す。
【0039】
図6(A)のように、移動装置10が階段などの傾斜部やその近傍に位置する場合には、ケーブル21は、自重により、傾斜部に沿うように下方へ延びて、移動装置10よりも下方の位置で傾斜部に支えられる。したがって、例えば
図6(A)のように移動装置10が階段の踊り場に位置する場合の隙間Sは、
図6(B)のように移動装置10が平らな路面に位置する場合の隙間Sよりも小さい。その結果、移動装置10が平らな路面で旋回してもケーブル21が、本体3上の構造物に引っ掛からなくても、移動装置10が傾斜部やその近傍で旋回した場合には、ケーブル21が本体3上の構造物(例えばリール23)に引っ掛かってしまう。この場合、当該構造物の形状によっては、ケーブル21が当該構造物から外れなくなってしまう。
【0040】
すなわち、
図4のように進入阻止部27を設けない場合には、移動装置10が、
図4の(1)から(2)の位置へ90度旋回すると、ケーブル21が、本体3上の構造物(この例ではリール23)を横切ろうとする。
図7(A)は、
図4の7A−7A矢視図であり、移動装置10が
図4の(2)の位置にある場合を示す。さらに、移動装置10が
図4の(2)から(3)の位置へ90度旋回すると、ケーブル21が、本体3上のリール23を横切る。その後、移動装置10が
図4の(4)の位置まで階段を上ると、ケーブル21が、リール23に引っ掛かり、リール23から外れないようになってしまう。このような問題が、次のように、進入阻止部27により防止される。
【0041】
図5では、移動装置10が、(1)から(2)の位置へ旋回すると、ケーブル21は、進入阻止部27に掛かる。これにより、ケーブル21の設定領域Rへの進入が阻止される。
図7(B)は、
図5の7B−7B矢視図であり、移動装置10が
図5の(2)の位置にある場合を示す。その後、移動装置10が、(2)から(3)の位置へ旋回しても、ケーブル21の設定領域Rへの進入が進入阻止部27に阻止されたままになる。したがって、移動装置10は、
図5のように、階段の踊り場で旋回して、(1)〜(4)の位置の順に移動しても、ケーブル21が設定領域Rに進入しないようにすることができる。
【0042】
上部案内部25が、
図2のように本体3aにおける左右方向の右側に配置されている場合には、ケーブル21が本体3aから後方側に延びている時に、この状態から、鉛直上方から見て反時計回りに移動装置10が旋回を開始し、ケーブル21が移動装置10の水平方向外側から進入阻止部27に掛かる。これにより、進入阻止部27は、ケーブル21の設定領域Rへの進入を阻止する。ここで、旋回角度は、
図2のような実施例では、180度以下の範囲内の角度である。なお、
図2の例で、移動装置10が時計回りに旋回する場合、旋回角度は、180度以下であれば、ケーブル21は設定領域Rへ進入しない。
同様に、上部案内部25が、本体3aにおける左右方向の左側に配置されている場合には、ケーブル21が本体3aから後方側に延びている時に、この状態から、鉛直上方から見て時計回りに移動装置10が旋回を開始し、ケーブル21が移動装置10の水平方向外側から進入阻止部27に掛かる。これにより、進入阻止部27は、当該ケーブル21の設定領域Rへの進入を阻止する。
【0043】
<進入阻止部の他の構成例>
上述では、進入阻止部27は、複数本の棒状部材27であったが、他の構成を有していてもよい。以下において、進入阻止部27の他の構成例を説明するが、以下で説明しない点(移動装置10やケーブル案内装置20などの構成)は、上述と同じである。
【0044】
図8(A)は、移動装置10の平面図であり、進入阻止部27の他の構成例を示す。
図8(B)は、
図8(A)の8B−8B矢視図である。
図8の構成例では、進入阻止部27は、本体3に取り付けられ、本体3が水平姿勢にある状態で下方から上方へ(例えば鉛直方向に)延びる板状部材27である。板状部材27は、設定領域Rを、移動装置10の外側から水平方向に覆うように配置されている。
【0045】
板状部材27は、設定領域Rよりも本体3の後方側において、左右方向に延びている部分を有する。この場合、
図8の例では、板状部材27は、左右方向に延びる中間部と、中間部の両端から、左右方向に対して本体3の前側へ傾いた水平方向に延びる両端部とを有している。ただし、板状部材27の形状は、これに限定されない。
【0046】
図9(A)は、移動装置10の平面図であり、進入阻止部27の他の構成例を示す。
図9(B)は、
図9(A)の9B−9B矢視図である。
図9の構成例では、進入阻止部27は、1本の棒状部材27からなる。上部案内部25が、本体3の前後方向において、
図9(A)のように設定範囲Rの後端(例えば本体3の後端)の位置にある場合には、進入阻止部27は1本の棒状部材であってもよい。
【0047】
図8と
図9の構成例でも、上述した進入阻止部27の機能を得ることができる。
【0048】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。